2015年12月18日金曜日

台湾国防軍は健在なり!【海軍・潜水艦編】

日本の潜水艦を切実に求める台湾海軍

潜水艦供与の約束を果たさないアメリカに我慢の限界

2015.12.17(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45542

海上自衛隊の米国派遣訓練で真珠湾に寄港する「そうりゅう型潜水艦・はくりゅう)」(出所:Wikimedia Commons

 先日、台湾の潜水艦戦力強化プログラムに関するカンファレンスがワシントンDCで開催された(主催はアメリカのシンクタンク「Project-49」)。
 台湾からは、実質的な駐米海軍武官(アメリカに駐在している台湾軍の武官たちは、大使館・領事館に相当する台北経済文化交流署に配属されている)であるデビッド・ヤン海軍少将が参加して基調演説を行った。さすがにアメリカ海軍をはじめとするアメリカ政府・軍当局者は参加しなかったが、中国や台湾を専門とする軍事専門家たちが参加して突っ込んだ討議が行われた。
ヤン海軍少将の口から出た「そうりゅう型潜水艦」の名
この会合での質疑応答の中で日本にとって興味深いのは、ヤン少将が「日本側と『そうりゅう型潜水艦』の買取可能性に関する話し合いをした」と明言したことである。
 台湾側としては、「日本は武器輸出に関する制限を緩和しただけでなく、すでに『そうりゅう型潜水艦』の売り込みをオーストラリアに対して実施していることを鑑みると、日本が台湾に売却する可能性は十二分に期待できる」と見ているのだ。
 これに関連して、アメリカの海軍兵器市場を専門とするシンクタンク(AMI International)の研究者は次のように発言した。
「通常動力の攻撃潜水艦を建造するラインを閉じてしまって四半世紀以上にもなるアメリカが台湾に通常動力潜水艦を供与するとなると、1隻あたり8億ドル程度になると言われている。これに対して日本の『そうりゅう型潜水艦』は1隻あたり5億ドル前後である。日本から購入したほうが経済的にも性能的にも台湾にとって圧倒的に有利といえる」

アメリカが約束している潜水艦供与
台湾海軍の要人が「日本と潜水艦について何らかのコンタクトをしている」と公開のカンファレンスで公言したのは、台湾海軍が新型潜水艦を手に入れたいとの表明と共に、アメリカ政府に対する圧力とも考えられる。
 なぜならば、アメリカは「台湾に通常動力潜水艦8隻を供与する」という国家間の約束を15年近くも履行していないからだ。
 アメリカのブッシュ政権は2001年に台湾に対して大規模な武器供与(輸出)プログラムを約束した。それには、駆逐艦4隻、対潜哨戒機12機、通常動力潜水艦8隻などの“目玉商品”も含まれていた。
 当然のことながら中国は激怒し、猛烈に抗議を繰り返した。そのため、この武器供与プログラムはスムーズには実行されなかったが、どうにかこうにか10年以上の歳月を経てアメリカは約束を果たした。だが、ただ1つ約束を履行していない項目がある。それが潜水艦供与である。
台湾軍はP3-C哨戒機は手に入れた
中国と大きく差がついてしまった台湾の潜水艦戦力
台湾には国産潜水艦建造能力がないため、現在台湾海軍が保有している潜水艦はすべて輸入したものである。保有しているといっても、4隻のうち2隻は第2次世界大戦中にアメリカが建造した骨董品のグッピー級潜水艦であり、稼働しているのが不思議なくらいの代物である。他の2隻は、オランダが1980年代後半に建造した海龍級潜水艦だ。これらもすでに旧式で、海上自衛隊が1996年に退役させた4世代前の潜水艦と似通った旧式艦である。
台湾海軍のグッピー級潜水艦
台湾海軍の海龍級潜水艦
台湾海軍はグッピー級を練習艦として、海龍級を作戦用艦として使用しているが、いつまで経ってもアメリカが供与の約束を履行してくれないため、中国海軍潜水艦戦力に対する劣勢が取り返しがつかないくらい大きくなってしまった。
 アメリカが8隻の潜水艦を台湾に供与する約束をしたのは2001年。当時の台湾の潜水艦戦力は、現在と同じであった。
 一方、当時の中国海軍は旧式国産091型攻撃原潜を5隻、老朽潜水艦を20隻、旧式国産潜水艦を17隻、ようやく自ら建造した“やや近代的”な039型潜水艦が1隻、それにロシアから購入した新型艦であるキロ型潜水艦を4隻保有していた(この他、旧式だが核弾道ミサイルを搭載した戦略原潜も1隻保有していた)。中国海軍は加えてより強力なキロ型潜水艦を追加購入することになっていたうえ、039型潜水艦の建造も加速される見込みであった。
 したがって、戦力になる潜水艦といえば039型潜水艦よりやや旧式の海龍型潜水艦2隻しか保有していなかった(現在も)台湾海軍は、“焦って”アメリカに助けを求めたのであった。
 しかし、15年近く経過した現在も台湾海軍が保有する潜水艦は全く変わっていない。すでに海龍型は戦力とみなすにはあまりにも旧式すぎる。
 これに対して中国海軍は、新型093型攻撃原潜を少なくとも5隻、新鋭095型攻撃原潜を少なくとも1隻、キロ型潜水艦を12隻、新型041型潜水艦を12隻、039型潜水艦を少なくとも13隻、旧式潜水艦(練習艦)を14隻と、攻撃型潜水艦と言われる潜水艦を少なくとも57隻も保有している(この他、戦略原潜を5隻保有している)。
台湾が中国に対抗するために潜水艦は必要なのか?
台湾軍が中国人民解放軍の攻撃潜水艦に対抗するために、多数の潜水艦が絶対に必要であるというわけではない。対潜哨戒機や高性能機雷などを多数取り揃えることによって対抗できなくはない。

例えば、台湾中国関係の著名な研究者と台中潜水艦問題について話し合った際、「台湾海軍はもちろんアメリカ海軍関係者なども、すぐに潜水艦には潜水艦で対抗しようとする。だが、台湾を取り巻く海洋の状況から判断すると、台湾は巨額の資金を潜水艦取得に投入するよりは、その予算を、多数の高性能機雷の製造購入に振り向けたほうが効果的だ」と指摘していた。
 ただしその研究者は、「台湾海軍軍人たちが潜水艦を欲しがるのは、あまりにも差がつきすぎてしまっている現状からは分からないでもない」とも言う。現状のように潜水艦保有数比率が「574」では台湾海軍将兵が戦う前から士気に影響してしまう、という精神的側面を考えると、機雷戦力の充実だけでなく、やはり潜水艦(もちろん戦力となる新型艦)の数も取り揃えていかなければならないということである。
日米の覚悟が問われる台湾潜水艦問題
台湾海軍が、中国の対台湾潜水艦作戦に対抗するための必要戦力として新型潜水艦を欲しているのか、それとも台湾海軍の士気を高めるための精神的シンボルとして欲しているのかはともかくとして、台湾海軍が8隻の潜水艦を熱望していることだけは間違いない。それも一刻も早くにである。
 そこで台湾はアメリカ政府の決断を急がせるため、「アメリカの供与を待たずに台湾独自で潜水艦を建造する」という国産潜水艦建造計画を立ち上げた。しかし、潜水艦建造技術を一朝一夕で生み出すことは不可能であり、国産計画というアメリカに対する揺さぶりはさして功を奏していない。そこで、日本からの直接輸入を公言したものと思われる。
 もっとも数年前から、アメリカ海軍関係者には以下のようにアメリカの製造能力を疑う者もいた。

「通常動力潜水艦を建造していないアメリカが台湾に8隻も潜水艦を供与するという約束自体、そもそも極めて履行が難しい約束だ。台湾にとってもアメリカにとっても最も理想的なのは、アメリカが三菱重工と川崎重工に8隻の潜水艦を発注して、それを台湾に供与するという方法だ」
 さらにその人物は、こうも語っていた。「武器輸出三原則が存在しているから日本政府がそれを許さないだろうから、日本の技術者にアメリカに移住してもらって、アメリカの新会社で建造するという手段もなくはない。アメリカは原潜しか建造できなくなってしまっているが、これからは最新通常動力潜水艦も必要になるから、台湾への供与という点だけでなく、アメリカにとっても名案と言える」
 そのような状況は安倍政権によって(少なくとも制度的には)一変された。国内法的には海外への潜水艦輸出が一律に禁止されている状況ではないし、実際にオーストラリアへは輸出しようとの働きかけすらした。ただし、日本当局が台湾海軍への「そうりゅう型潜水艦」の売り込みに関してどの程度話を進めているのかは、当然ながら公表されていない。
 しかし、中国の「環球網」の「いくら台湾が日本から潜水艦を輸入したがっていても、日本政府には台湾に潜水艦を売却するほどの覚悟はない」(129日)との論評通り、各種防衛関連法令は変更したものの、実際には腹をくくった国防政策の実施までには歩を進めていない可能性も高い。
 いずれにせよ、台湾の潜水艦問題は、アメリカと日本にとってはまさに国防政策の覚悟が問われる問題である。

潜水艦がほしい台湾海軍

《維新嵐こう思う》
台湾海軍にアメリカが、通常動力型潜水艦を約束通り供給しない理由については、詳細はわからないが、おそらく推測できるところでは、我が国に対するトマホーク巡航ミサイルを対中抑止として売却しない理由と大差ないと考えられる。
例えアメリカ大統領が新日、親台であったとしても議会内に親中派の議員をたくさん抱える状況では、共産中国を刺激することにつながりかねない兵器供与は、どんな兵器であろうと輸出を認めないよう議会工作してくるのではないだろうか?
通常動力型潜水艦(攻撃型潜水艦)の「先進国」である我が国においても、事情はそう変わることはあるまい。
やはり議員の中には、与党にしろ野党にしろ親中派議員たちがだまっていないだろうから、海自の最新鋭潜水艦の供与を決断するような腹のすわった政治家はいないであろう。
ただこういうアイディアで「潜水艦」を台湾に輸出する方法はどうであろうか?
「しんかい2000」を台湾に資源調査目的のために供与するのである。
兵器としての機能をもたない「しんかい」潜水艦なら輸出のハードルは高くないと考えるが、いかがであろうか?
要は輸入した台湾海軍が、我が国の「しんかい」無人潜水艦を精査して、独自に兵器としての潜水艦を建造していくのである。共産中国からどう批判されても「海底探査用」として通しつづければ問題ないし、実際に台湾島近海の資源調査をすればいいかと思う。そのあたりのメンテナンスも含めて日台共同でプロジェクトを進めていけば、将来的に防衛兵器としての「攻撃型潜水艦」開発につなげていけるのではないかと考える次第である。



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