2018年8月23日木曜日

台湾・蔡英文政権の独立をかけた仁義なき戦い

島を守るために知恵を絞る台湾、何もしない日本
中国の軍事的優勢に対して台湾が非軍事的反撃
北村淳
南シナ海に面する台湾・高雄港。高雄市は東沙諸島と南沙諸島を管轄している(資料写真)
 台湾政府は、南シナ海の大半で中国が圧倒的に優勢な状況をつくり出している状況に対抗して、南シナ海の東沙諸島と南沙諸島で非軍事的な反撃に取りかかった。すなわち、台湾が施政権を維持している東沙諸島の「東沙島」の研究施設を充実させると同時に、南沙諸島の「太平島」では気象観測施設を充実させようというのである。太平島は、中国が軍事的支配権を確立させつつある南沙諸島のど真ん中にありながら、台湾が実効支配を堅持している島である。

東沙島:科学研究施設をさらに充実

 南シナ海の北部に位置する東沙諸島は第2次世界大戦終結後に中華民国領となり、現在に至るまで台湾政府が施政権を維持している(下の図)。これに対して、台湾そのものが中華人民共和国の一部であるとしている中国政府にとっては、当然のことながら東沙諸島も中国領である。ただし、軍事的な緊張が高まるような領有権紛争は生じていない。
東沙島の位置
3つの環礁(東沙環礁、北衛灘環礁、南衛灘環礁)で構成されている東沙諸島は、東沙環礁最大の島である東沙島以外は満潮時には水没してしまう。そのため、中国のように人工島を建造しない限り、人間が居住できるのは東沙島だけである。
 東沙島には台湾本島との交通を確保するために、1550メートル滑走路を有する東沙空港が設置されている。現在のところ、台湾空軍の輸送機が就航しているほか、沿岸警備隊が民間航空機をチャーターしているだけで、一般の人々のための航空便はない。港湾施設は建設されておらず、小型船が使用できる桟橋があるだけである。このような東沙島には、常駐している台湾軍ならびに沿岸警備隊の施設以外にも、国立中山大学の研究施設(生物学、生物化学、海洋学)や公共図書館が設置されている。このほど、その研究施設の装置や施設そのものを充実させるための予備調査が実施された。これは、2022年までの4年計画で南シナ海での科学研究施設を充実させるという台湾政府が打ち出した政策に則るものであり、明らかに中国の南シナ海掌握行動に一矢報いようという非軍事的反撃とみなすことができる。

太平島:海洋気象観測施設をさらに充実

 本コラムで継続的に紹介しているように、南沙諸島はまさに中国が軍事的に制覇する寸前の状態になりつつある。
 実は台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムは、中国が7つの人工島を建設して王手をかける以前から南沙諸島にそれぞれ1カ所ずつ飛行場を確保していた。すなわち、中国はかつては南沙諸島の軍事的コントロール競争に出遅れていたわけである。しかし、着々と準備を進めていた中国は、2014年から人工島の建設を開始し、あっという間に7つもの人工島を誕生させ、それら全てに軍事関連施設を設置してしまった(下の図)。
南沙諸島に建設された中国の人工島
そして、そのうちの3カ所にはあらゆる軍用機と大型旅客機などの発着が可能な3000メートル級滑走路まで完備させている。台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシアは依然として飛行場を維持しているものの、軍事的には完全に中国に圧倒されてしまっている状況だ。だが、南沙諸島の多数の島嶼環礁の中で、台湾が実効支配している唯一の陸地がある。台湾が滑走路を設置している拠点、太平島だ(下の図)。
中国の人工島基地に取り囲まれている太平島
 この島には台湾海軍陸戦隊と台湾沿岸警備隊が常駐しているが、太平島そのものが軍事機密となっており、詳細情報は明かされていない。2007年には1200メートル滑走路を有する太平島空港が完成し、台湾軍輸送機(C-130ハーキュリーズ)が台湾本島との交通手段となっている。ただし、滑走路が短距離であるため、戦闘機の発着はできない。また2016年には3000トン級の沿岸警備隊巡視船が着岸できる埠頭が完成した。沿岸警備隊船艇以外にも、20日ごとに民間商船が生活用品を供給するために太平島に寄港している。
台湾は太平島に軍事拠点として使用可能な施設を設置して実効支配を続けているが、中国の南沙諸島軍事支配の勢いに押されて、太平島は厳しい軍事環境に直面している。太平島からわずか70キロメートル北北西にはスービ礁があり、中国は人工島化して3000メートル滑走路や港湾施設を設置している。また太平島の135キロメートル東南東にはミスチーフ礁があり、やはり中国が人工島化して2644メートル滑走路や港湾施設をはじめとする軍事設備を設置している。そして太平島の185キロメートル西南西にはファイアリークロス礁が位置しており、この環礁も3125メートル滑走路や港湾設備が完備する中国人工島軍事施設と化してしまっている。
 このように、台湾が実効支配を続けている太平島の周辺には、中国軍の戦闘機や攻撃機それに爆撃機も発着可能な空港や駆逐艦やフリゲートが着岸できる港湾施設を擁した人工島が誕生し、太平島はいつでも中国の軍事攻撃の餌食になってしまう状況に晒されている。
 そこで台湾政府は、軍事的に対抗する策ではなく、太平島の海洋気象観測施設を充実させるという非軍事的抵抗策を実施することにした。いくら太平島の海軍陸戦隊員を増強し、対艦ミサイルや防空ミサイルそれに対地攻撃ミサイルなどを設置して、中国人工島基地群に軍事的に対抗しても、中国軍がその気になれば一撃で太平島は火の海となり守備隊や沿岸警備隊は全滅してしまう。しかし、太平島の気象観測所や海洋研究施設で民間人である研究者が多数常駐し研究に従事していれば、中国軍といえども、太平島にミサイルや誘導爆弾を撃ち込むことは躊躇せざるを得なくなるというわけだ。

尖閣諸島:日本は実効支配のアピールをせず

 こうして台湾政府は、東沙島と太平島の研究施設を充実強化して科学者・研究者を送り込りこむことにより、中国軍による軍事攻撃を抑止しようとしている。軍事的に圧倒的に劣勢な中国との領域紛争において、中国の軍門にひれ伏さずに実効支配態勢を維持し続けるための非軍事的対抗策である。軍事的には勝負にならなくとも、なんとか知恵を絞って自国の領域を守り抜こうという姿勢の表れと言えるだろう。一方、このような台湾政府の自主防衛努力と対照的なのが、尖閣諸島を巡る中国との領域紛争における日本政府の無策である。
日本が自衛隊を繰り出して軍事的に尖閣諸島周辺から中国海軍や中国海警の勢力を駆逐してしまうことは、確かに愚策であるだけでなく現状では不可能である。
 だが日本政府は、中国を刺激することで中国国内で日系企業に対する打ち壊しが起きたり、中国との経済交流が停滞することなどを極度に恐れ、目に見える形での実効支配態勢を国際社会に対してアピールしようとはしない。魚釣島に漁船の避難施設を設置する、本格的な灯台を設置する、海洋気象測候所を設置するといった非軍事的方法を実行する意思すらもまったくないようだ。

 現在、日本政府による唯一の対抗姿勢は、大統領をはじめとするアメリカ政府高官や米軍首脳などに「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用範囲である」と言わせて、中国を牽制しているつもりになっているだけである。これでは、国際社会で「日本はアメリカの単なる属国にすぎない」との共通認識が定着する日も遠くはないであろう。
尖閣諸島の歴史 ~ここは我が国固有の領土で疑いなし~
〈管理人より〉尖閣諸島に自衛隊を駐屯させよ、と主張する政治家は、太平洋戦争での旧陸海軍の轍を踏むということに考えが及んでいません。現状でも尖閣諸島周辺の海からは「安全」を名目に我が国の漁船はしめだされ、共産中国の違法漁船が堂々と漁をする始末です。我が国の尖閣諸島領有の根拠は、海上保安庁の定期的な巡視のみ。事実上周辺海域は共産中国にとられているも同然でしょう。こんな状態で例えば陸自部隊を送れば、間違いなくガダルカナルの二の舞ですよ。
尖閣諸島の領有の我が国の主張は、「平和国家の主張」ですべき。例えば一度つぶされましたが、海上保安庁の「海難救助施設」=ヘリポート&港&管理施設を魚釣島、大正島、久米島などにおくべき。人道支援施設や学術研究施設をおくことが大前提です。
【台湾に外交戦をしかける共産中国】
資本提携など経済力を背景に、台湾と国交のある国々と国交を開き、台湾と断交させています。台湾の国際的な孤立を露骨に狙っています。
台湾に断交圧力 地域の安定損なう動きだ
中国が、中米エルサルバドルとの国交を樹立した。これに伴いエルサルバドルは、外交関係のあった台湾と断交した。台湾の孤立化を狙う中国が仕掛けた、露骨な圧力外交の結果だ。
 台湾を外交承認する国は17カ国と過去最少を更新した。蔡英文政権下での断交は5カ国にのぼる。今年はすでに3カ国という異常なペースだ。世界2位の経済力を外交カードに台湾の外交関係を奪う戦術といえる。
 蔡総統が談話で「両岸(中台)の平和への脅威だけでなく、世界的な不安定を生み出している」と反発したのは当然である。地域の安定を損ないかねない中国の行動を強く懸念する。
 日本と台湾に正式な外交関係はない。ただ、民主主義の価値観を共有する台湾への圧力に日本は無関心であってはならない。中国に自制的に振る舞うよう働きかけるべきである。
 エルサルバドルの場合、台湾はラ・ウニオン港の開発に多額の資金援助を要請されていた。だが台湾は同国の債務状況を勘案し、要請を断ったという。
 これに対して中国の王毅国務委員兼外相は、同国との国交樹立について「いかなる(経済的な)前提もない」と述べた。だが、果たしてそうなのか。
習近平政権の広域経済圏「一帯一路」構想の対象国の中には、中国の援助でインフラ整備を進めた結果、過大な債務負担を強いられる例が後を絶たない。採算を度外視した援助をテコに勢力圏を拡大する。同様の手法で台湾との断交を促すのなら問題が大きい。
 とりわけ最近の中国の強引な外交は目に余る。
 台中で来年開催する予定だった東アジアユース競技大会が、北京での臨時理事会で取り消された背景にも中国の意向がちらつく。外国航空会社に台湾の名称表記変更を求めた問題もあった。
 今回の断交は、蔡総統が中南米歴訪から戻った直後に起きた。蔡氏のメンツを潰す狙いがあったのは明白ではないか。
 台湾に閉塞(へいそく)感を与えて政権与党の民主進歩党に打撃を与えるのが目的だ。2018年11月に実施される台湾の統一地方選への揺さぶりもあろう。だが、露骨な圧力で、台湾の民心が中国になびくわけではあるまい。むしろ対中感情を悪化させる現実を認識すべきである。
台湾は、我が国の重要な国防圏です。「生命線」といってもいい。中台関係の問題は我が国にとって決して対岸の火事ではありません。
【共産中国のあせりともなっているか?対中外交を強硬化させるアメリカ】
明確な対中批判、揺るぎない米豪関係

岡崎研究所
2018724日、米豪の外務相・国防相は米カリフォルニア州で、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開催、インド太平洋戦略、北朝鮮問題、テロ対策などについて協議した。まず、今回の2プラス2の共同声明より、インド太平洋戦略に関する部分を中心に、要点を紹介する。
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 両国は、インド太平洋への強く深い関与を強調する。両国は他のパートナー国とともに、開放的で、包摂的で、繁栄し、ルールに基づいたインド太平洋を構築すべく協働する。
 米豪は、同盟国やパートナー国とともに、国際的なルールに基づく秩序の支持に優先順位を置く。そうした秩序がインド太平洋において長年、安定、民主主義、繁栄を下支えしてきた。両国は、ASEAN主導の地域構造を支持する。最近のシンガポールでの米豪印日によるインド太平洋に関する協議を歓迎する。両国は引き続き、建設的で有益な対中関与に高い優先順位を与える。インド太平洋における米豪防衛協力の重要性を強調、米海兵隊の豪ダーウィンへのローテーション配備と両国空軍の協力強化の価値を強調。できるだけ早期にダーウィンへの海兵隊の配備を2500人(注:現在は約1600人)まで増員する。インド太平洋における考えを同じくする国々との二国間安全保障パートナーシップを強化する。
 科学技術分野における防衛協力の強化にコミットし、サイバー能力向上のための了解覚書に署名する。安全保障と繁栄は相互に強化し合うことに鑑み、インド太平洋における二国間および多国間の経済発展協力へのコミットを強化。両国は、パートナー国とともに、地域における、原則に則った持続可能なインフラ開発を支持すべく協働する。
 南シナ海における係争地形の軍事化が平和的発展への地域の希望に反することを強調、航海と上空飛行の自由、その他、国際法に合致した合法的な海洋の利用を尊重する義務があることを繰り返す。両国は、UNCLOS(国際海洋法条約)など既存の国際法と整合的な「南シナ海行動規範」の策定を求める。太平洋島嶼国の安全、安定、強靭性、発展を促進するための協力の緊密化を支持する。同地域における情報共有、海洋安全保障、領域認識の強化の重要性を強調。両国は、パートナー国とともに、太平洋島嶼国のための持続的な能力構築活動の調整にコミットする。
出典:‘Joint Statement Australia-U.S. Ministerial Consultations 2018’, July 24, 2018, U.S. DEPARTMENT OF STATE Office of the Spokesperson
上記声明は、自由で開かれた、国際的ルールに基づいたインド太平洋の構築を求めており、それとは反する行動を止めない中国を、名指しこそしないものの強く批判する内容である。これまでの米豪の立場にいささかの揺るぎもない。
 南シナ海問題については、上記声明でも立場を明確にしている他、今回の2プラス2に際しての共同記者会見で、マティス国防長官は、米豪が航行の自由作戦等の軍事作戦で協力することを明言している。南シナ海における航行の自由には、米豪だけでなく、英国やフランスなども急速に関心を示すようになってきている。歓迎すべき動きである。こうした流れの中で、今後、日本としては、米国等の航行の自由作戦を歓迎し支持を表明するだけでよいのか、よく検討しなければならない場面が出てくるかもしれない。
 豪州内では、最近、中国を念頭に、外国勢力の政治への干渉や、安全保障上機微なインフラへの外国投資を排除できるよう、法整備が進みつつある。米海兵隊がローテーション配備されているダーウィンの港湾にも中国が投資している。米海兵隊の配備が強化されるにしたがい、豪州と中国との間で、これは深刻な問題ともなり得る。豪州の中国に対する警戒感の大きな原因の一つは、豪州の「裏庭」に当たる太平洋島嶼国への中国の進出である。上記声明において、太平洋島嶼国への支援における協力を謳っている他、「原則に則った持続可能なインフラ開発を支持」とあるのは、そういう文脈にも沿っている。つまり、中国の「無原則で持続可能ではない」インフラ支援を批判している。既に、米国の海外民間投資公社(OPIC)が日豪のカウンターパートとの良質なインフラ輸出について合意するなど、日米豪のインド太平洋における良質なインフラ支援での協力は進んでいる。島嶼国側には、豪州が「宗主国」のように振る舞うことに反発もあり、丁寧に進めなければ、島嶼国をかえって中国側につかせることになりかねない。太平洋島嶼国と良好な関係にある日本の果たすべき役割は大きいと言えるだろう。
 米豪関係は、戦略的環境が大きく変わるとは思われない以上、安全保障を中心に協力強化が一層進むと見てよいであろう。

EU、対中露戦略という「共通利益」

岡崎研究所

 2018725日、米EU首脳会談を終えて共同記者会見に臨んだトランプ大統領は、上機嫌だった。ホワイトハウスのローズ・ガーデンで、出席していた上院議員、下院議員の名前を一人一人呼んだ後に、次のように述べた。
「とても良い日だ。とにかくいい日だ。米国とEUとの関係は、新しい段階に入った。親密な友情の、そしてWIN-WINの強い貿易関係、協力して世界の安全保障と繁栄に尽くし、共同でテロに対抗する、という段階である。
 米国とEUを合わせると、83千万人の人口を抱え、世界のGDP50%以上を占める。別の言い方をすれば、米国とEUで貿易の50%以上を占める。私達がチームを組めば、この地球は、より良くより安全に、より繁栄した場所になる。既に今日、米国とEU1兆ドルの貿易関係がある。世界で最大の経済関係である。我々はこの貿易関係を更に強化して米国及び欧州市民の利益になるようにしたい。本日、我々はまず協力し、関税も非関税障壁も、そして非自動車産業製品への補助金もゼロにして行くことで合意した。
 我々はまた、障壁を減らし、サービス、化学、薬品、医療品及び大豆の貿易を増やすことでも協力する。大豆は大きな取引だ。EUは早速、多くの大豆を買ってくれる。EUは大きな市場だ。まずは米国中西部の農家から多くの大豆を買ってくれる。この点、ジャン=クロード(ユンケル委員長)に感謝する。

 このことで、市場は農家や労働者に開放され、投資が増え、米国にもEUにも繁栄がもたらされる。貿易もより公正で相互的なものとなる。私の大好きな言葉、「相互的」である。
 二つ目に、我々は本日、エネルギーに関する戦略的協力を強化することで合意した。EUは、米国から液化天然ガス、LNGを輸入したいということである。EUはとても大きな買い手になる予定だ。」
 「三つ目の合意は、貿易をしやすく、行政手続きの障害を減らし、コストを大幅に下げるために、基準に関する緊密な対話を開始することである。

 四つ目の合意は、米国とEUが協力して欧米の企業を保護することである。」
 「我々は、密接に協力して、同様の考えの友好国とも共に、WTOを改革し、知的財産の盗取、技術移転の強制、産業補助金、国有企業による歪み及び過剰生産を含む、不公正な貿易慣行をただす。

 我々は、両方の有能な人達で構成するエグゼキュティヴ・ワーキング・グループをすぐに設立することを決定した。彼らは、我々の最も緊密な諮問機関として、共同の議題を取り扱う。更に、このグループは、貿易を促進するための短期的な方策を明らかにし、既存の関税措置を見直し、両者のために何ができるかを諮問する。」

 「我々は、また、鉄鋼アルミニウム関税問題を解決し、報復関税を解決する。」
続いて、ユンケル欧州委員長が、次のように手短に述べた。
 「私がホワイトハウスに招かれた時、私は、米国と合意する目的があった。そして、本日、合意は成立した。

 私達は、協力すべき多くの分野を明らかにした。産業製品については関税ゼロを目指す。これは、私の主要な目的だった。」「私達は、エネルギーに関する協力を強化することを決めた。EUは、米国から液化天然ガスを輸入するためのターミナルを建設する。これは、他諸国へのメッセージにもなる。

 私達は、基準に関する対話の場を設けることで合意した。農業に関しては、EUは米国からより多くの大豆を輸入でき、そうなる。また、私達は、WTOの改革で協力することでも一致した。」
 トランプ大統領はローズ・ガーデンを後にする時に、再び言った。「今日は、自由で公正な貿易のために本当に大事な日になった。本当に、いい日だった。」 と。
参考:White House ‘Remarks by President Trump and President Juncker of the European Commission in Joint Press Statements’ July 25, 2018
 トランプ政権誕生以来、米国と欧州諸国との関係(大西洋)には、亀裂が入ったとよく言われた。それは、トランプ大統領が、環境に関するパリ協定からの離脱、核開発に関するイラン合意からの離脱等、オバマ政権が欧州諸国とともに合意して来た多国間の取り決めを、次々と止めてきたからだ。G7首脳会議でもメルケル独首相との馬が合わず、二人が議論する写真(仲介役に安倍総理が映っている)が世界中に広まった。
 そんな中、71112日のNATO首脳会議では、どうにか2024年までにGDP2%の国防費という目標設定で合意ができ、大西洋の分裂危機は回避できたと言われた。
 そしてここに来て、725日、トランプ大統領とユンケル欧州委員長は「大事な合意」を達成した。世界もこの大西洋の握手に拍手を送り、株価は上昇に反応した。
 上記のトランプ大統領の発言を読むと、様々なことが分かる。まず、114日の中間選挙が近づくに従い、トランプ大統領の頭の中はその事で溢れ、ますますそれを露わにする。今回の発言の冒頭では、上下両院議員の名前を一人一人呼んだ。また発言の中でも、中西部の農民を意識したり、労働者という言葉が出てきたりした。
 もう一つ、上記を読んで理解できるのは、米国とEUの共通利益には、対中国及び対ロシア戦略があることだ。
 WTOの改革は、中国を念頭において行うとのトランプ大統領の意図は明らかである。それに合意したユンケル委員長であり、716日の北京でのEUと中国との首脳会議でのWTO改革の中身が同床異夢であることが明らかになった。トランプ大統領は、米国からの大豆に中国が報復関税を課すことに対して、代わりに輸出先として欧州を選択し、それに成功した。これで、大豆農家の批判も回避できる。
 対ロシアでは、ドイツがロシアからのエネルギー輸入に頼り、ロシアへの依存を深めている。それに対して、米国がロシアの肩代わりをすることでロシアへの依存度を減らし、EU諸国がより団結してロシアに対抗できるようにした。ユンケル欧州委員長が、米国からのLNGの輸入に関して、「これは他の諸国へのメッセージにもなる。」と語っているのは、まさに、この事を念頭に置いているのだろう。
 短いホワイトハウスでの共同発言の中にも、国家間の利益関係が読み取れる。トランプ政権が昨年暮れに打ち出した「国家安全保障戦略」の中で、中国とロシアを対立する国として挙げていたが、そのことは、今も変わっていないようだ。
〈管理人より一言〉固有の領土を守るのは、その国の国民の「任務」です。年金や医療、教育も重要ですが、国際関係で我が国が不利益を被らないように政治家に働いてもらうことは、常に国民は注視していかないければ、「対中ODA」に伴う政治家の権益を守るための対中政策に流れないとは決していえないことでしょう。国政の主役は、名もなき庶民、国民であり、決して政治家や官僚ではありません。20代30代40代の若い世代が、政治への見識を高めていきましょう。新しい時代を作るのは老人ではありません。

中国にボディーブローを与えた台湾軍の

「禁じ手」

中国との協調姿勢をみせる日本とはあまりにも対照的

北村淳
台湾海軍のミサイルフリゲート「成功級フリゲート」の基になった米海軍のオリバー・ハザード・ペリー級フリゲート(出所:米海軍)

 トランプ政権が軍事面における対中国強硬姿勢を鮮明にした(たとえば104日に行われたペンス副大統領の演説)直後、安倍首相が「中国と協調関係を構築する」と表明した。アメリカ側にとっては最も安全な(要するに何でも言いなりになる)同盟国である日本の首相がなぜそのような発言をしたのか、アメリカ側では真意を測りかねる雰囲気も生じている。もちろん「どこの同盟国か分からない」と皮肉られている韓国ほどではないものの、日本政府が「あまりにも空気を読まない」対中外交を展開した事実に対する不信感が生じていることは無理もない。一方、日本とは対照的な動きを見せるのが台湾である。台湾は米国にとって日本や韓国のような表だった同盟国ではなく非公式同盟国であるが、トランプによる中国に対する冷戦開始という「空気を読んで」、中国に対する軍事的対抗姿勢を強化している。
アメリカから退役艦を直接輸入
 台湾海軍は118日、2隻のミサイルフリゲート(成功級フリゲート、FFG-1112「銘傳」、FFC-1115「逢甲」)を就役させた。もともと成功級フリゲートはアメリカ海軍が1977年から2015年までにわたって運用していたオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートを基に生産された軍艦である。台湾の造船メーカーがライセンス生産する形で建造が進められ、1990年から2004年にかけて8隻が台湾海軍に引き渡された。台湾海軍は価格や性能などの面でドイツ製フリゲートを手にしたかったのだが、アメリカ海軍の退役艦を自国でのライセンス生産という形で調達した。そのような動きを探知した中国政府がドイツ政府に圧力をかけたため、ドイツからの調達が不可能になってしまったからであった。
また、アメリカ海軍の退役艦を直接移転するという方式も、米中関係を気にするアメリカ国内勢力の存在などで、調達が難航する恐れがあった。そのため、台湾国内でのライセンス生産という手段によって、確実に近代的フリゲートを手にすることになった。このように、アメリカ側も中国に対して若干遠慮していたのが、台湾海軍フリゲートの調達であった。
 だが、今回の9番艦と10番艦の調達は、台湾でのライセンス生産ではなくアメリカからの退役艦の直接輸入という方式がとられた(ちなみにFFG-1112「銘傳」はアメリカ海軍フリゲート「テイラー」であり、FFC-1115「逢甲」はアメリカ海軍フリゲート「ゲイリー」であった)。すなわち、アメリカ側は中国に遠慮することなく中古軍艦を台湾に直接供与し始めた。台湾側も、より迅速に対中防衛態勢を強化するために、中国からのより強い反感を受けることを前提にアメリカからの直接調達に踏み切ったのである。
南沙諸島「太平島」における砲撃訓練
 台湾海軍のフリゲート調達に引き続いて、台湾沿岸警備隊も中国に対する軍事的対抗姿勢を明示する動きを示そうとしている。すなわち、南沙諸島「太平島」における砲撃訓練の実施である。太平島というのは、南沙諸島で唯一台湾が実効支配を続けている島嶼である。台湾は、中国、フィリピン、ベトナム同様に南沙諸島全体の領有権を主張している。しかしながら、台湾が実効支配を続けてきているのは太平島だけである。
台湾が実効支配する太平島の全景(写真:台湾行政院内政部)
太平島の位置(Googleマップ)
 台湾当局は、2007年以来、太平島に軍用輸送機の発着が可能な滑走路を設置しており、警備隊を常駐させている。それとともに、沿岸警備隊の巡視船や補給のための民間輸送船、それに軍用輸送機などが定期的に台湾と太平島を結んでいる。
台湾が実効支配する南シナ海の太平島から海に突き出たY字型の4つの構造物(手前)の画像(2016922日提供)。(c)AFP/OFFICE OF TAIWAN LEGISLATOR CHIANG CHI-CHENAFPBB News
しばしば本コラムで展開状況をアップデートしているように、現在南沙諸島には中国が7つの人工島を建設している。軍用航空施設や港湾施設をはじめとする各種軍事施設、巨大灯台や気象観測所なども設置し、少なくともそれらの人工島の実効支配態勢は確立させている。2014年に人工島の建設を始めるまでは、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシアがそれぞれ1カ所ずつとはいうものの滑走路を設置した島嶼環礁を実効支配していた。中国はそのような島嶼環礁を有していなかった。そのため、軍事的に重要な意味を持つ滑走路という観点からは、中国による南沙諸島の実効支配態勢は後れを取っていたのだ。ところが、人工島・軍事基地群の建設という挙に出た中国は、4年も経たないうちに本格的軍用飛行場3カ所を含む7つの軍事拠点を手にしてしまい、一気にライバルたちの実効支配態勢を決定的に凌駕する強固な軍事的支配態勢を確立してしまった。
中国の人工島に取り囲まれた太平島(作図:CNS

 それに対してアメリカは、トランプ政権が対中強硬姿勢に舵を切ったとはいえ、南シナ海で中国に直接軍事的圧力をかけるだけの攻撃準備補給態勢も整っていない。そのため、南シナ海に関係する同盟友好諸国による対中対決姿勢が何よりも重要になっている。

台湾と日本の好対照の外交能力
 今年の10月下旬から11月上旬にかけて、台湾当局はこのような情勢を自国とって有利に導くため、太平島での島嶼防衛砲撃訓練を実施する予定を公表し、アメリカ海軍艦艇に太平島への寄港を打診した(あるいは「打診した」との情報をリークした)。当然のことながら中国当局は、中国の海である南シナ海の、中国の領土である太平島で中国海軍を打ち払う砲撃訓練を実施することに強烈に反発している。 もしアメリカ海軍艦艇が太平島に寄港した場合、太平島の主権が台湾にあることをアメリカが公式に認めたことになる。それは中国にとっては大打撃である。
 ただしアメリカは、伝統的に第三国間の領域紛争には介入しないことを外交政策の鉄則の1つとして堅持し続けている。そのため、たとえ台湾当局が太平島への米海軍艦艇の寄港を招請したとしても、さすがのトランプ政権でもアメリカ伝統の外交鉄則から離脱することは至難の業といった状況だ。実際に、アメリカ軍艦の太平島寄港というはうやむやな状態になってしまった。しかしながら、台湾による一連の動きが、中国に対して若干ながらとはいえボディーブローを加えたことは間違いない。以上のように、トランプ政権の対中強硬姿勢への方針転換という機を捉えて、反攻態勢を強化しつつある台湾と、このタイミングで「空気」を読まずに中国との協調姿勢を打ち出して「常日頃頼り切っている」同盟国に不信の念を生じさせてしまう日本とは、好対照の外交能力を指し示しているといえよう。

2018年8月19日日曜日

陸上自衛隊を改革せよ! ~常設の災害専門部隊の編成などいかが?~

米戦略家たちの常識は「陸自は縮小が必要」

余剰人員で「災害救援隊」を創設せよ
北村淳
静岡県御殿場市にある東富士演習場で実施された陸上自衛隊「富士総合火力演習」の予行で、ヘリコプターから懸垂下降する隊員(2017824日撮影、資料写真)。(c)AFP/Toshifumi KITAMURAAFPBB News
 日本では言うまでもなく昭和20815日が第2次世界大戦の終戦記念日とされている。だが、イギリスではその1945815日が対日戦勝記念日とされており、アメリカでは日本が降伏文書に署名した194592日が対日戦勝記念日とされている。いずれにせよ、戦争に勝利した側も敗北を喫した側も、戦史から教訓を学び取ることは将来にわたって平和を維持していくために不可欠である。教訓といっても、自らの成功や失敗だけでなく相手方の成功や失敗からも多くを学び取らねばならないし、自らが関与しない古今東西の戦例からも様々な教訓を得ることが可能である。

生かされていない教訓「陸戦は避けよ」

 周辺の軍事情勢が厳しさを増している今日、日本が第2次世界大戦から学び取り現在に生かさなければならない様々な教訓のうち国防の基本方針に関わる筆頭は、「外敵の軍事的脅威は海洋で打ち払わなければいけない」ということである。
 この教訓は、沖縄や大平洋の多数の島嶼や樺太などで繰り広げられた陸上戦(とりわけ多数の民間人を巻き込んだ沖縄や樺太の地上での戦闘)のような陸上での防衛戦を前提としてはならない」と言い換えることができる。
沖縄で日本軍を攻撃する米軍(写真:米国防総省)
しかしながら、今日の日本国防当局が必ずしもこの教訓を生かしているとは思えない。というのは、陸上自衛隊は日本国内の陸上での防衛戦を前提としているからである。もちろん、日本国内に立てこもって玉砕するまで戦い抜くという意味ではない。アメリカの日本救援軍が来援して外敵を蹴散らしてくれるまで抵抗するのが陸上自衛隊にとって最後の防衛戦ということになっている。
 だが興味深いことに、日本政府や防衛当局が期待している救援軍を編成するかもしれない米海軍や海兵隊関係者たちの中には、陸上自衛隊の存在目的に対して疑問を呈する戦略家たちが少なくない。

陸自の妥当な規模は最大で5万~6万名

 米軍関係者の一部は、近年頻度を増した陸上自衛隊との合同訓練や情報交換などによって日本の防衛態勢ならびに陸上自衛隊の現状を理解するにつれ、以下のような意見を口にするようになった。
「今日、日本が置かれている軍事的環境ならびに日本の国防予算規模から判断すると、陸上自衛隊の人的規模、兵力およそ15万名は大きすぎると思われる。反対に、中国海洋戦力(海軍・空軍・ロケット軍)の飛躍的増強に鑑みれば、海上自衛隊と航空自衛隊の規模はあまりにも小さすぎる」
「日本にとって妥当と思われる防衛戦略(これ自体、戦略家ごとに様々なアイデアがあるのだが)から導き出せる『陸上自衛隊が果たすべき役割』を土台にして必要兵力を算定すると、5万~6万名といったところが最大規模ということになる。反対に、海上自衛隊と航空自衛隊の戦力(艦艇、航空機そして人員)は相当思い切った増強が必要になり、最小兵力はそれぞれ10万名前後ということになる」
「純粋に軍事戦略的視点から冷徹に判断すると、陸上自衛隊は8万~10万名近い余剰人員を抱えており、それを削減することが日本の防衛態勢を正常化し強化する第一歩となる。このような大出血を伴う改革を、強い反発や恨みを買うことを覚悟して自ら唱道するのは難事だろう。しかしながら、陸上自衛隊の人員大削減を実施しなければ、日本の国防に未来はない」

陸自「削減」の必要性を暗に認めている日本政府

 日本政府は、海上自衛隊ならびに航空自衛隊の人員不足を少しでも補うために、海上自衛隊や航空自衛隊の施設警備などの地上任務の一部を陸上自衛隊に移管する検討を開始したという。
 海上自衛隊や航空自衛隊の基地をはじめとする施設は、それぞれ481カ所、392カ所存在し、現在、それらの警備などは海上自衛隊と航空自衛隊が自ら実施している。このような警備をはじめとする各種地上任務を陸上自衛隊が実施することになれば、海上自衛隊も航空自衛隊も、兵員数を増加することなく、艦艇や航空機に関係する要員を(若干とはいうものの)増加させることができるというアイデアである。
 日本政府がこのような「クロスサービス」を検討しているということは、上記の米軍戦略家たちと同じく、陸上自衛隊兵力は多すぎ、海上自衛隊と航空自衛隊の兵員数は少なすぎると考えていることを意味する。

常設「災害救援隊」創設というアイデア

 とはいえ、陸上自衛隊によるクロスサービスを、海上自衛隊や航空自衛隊の移籍可能なポジションへの移動という形で実現したとしても、そのような新設ポジションは3万名程度といったところである。そのため、上記のように8万~10万名もの人員削減を実施するとなると、5万~7万名近い人々が陸上自衛隊から去らねばならないことになる。
 そこで、とりわけ「トモダチ作戦」にも参加した経験のある米海軍や海兵隊の人々が口にするのが、「退役陸上自衛隊将兵を母体とした災害救援隊の創設」というアイデアである。すなわち、陸上自衛隊から離れることになる5万~7万名前後の人々を中心にして「災害救援隊」を編制するのである。
もちろん「災害救援隊」はもはや軍事組織ではないため、防衛省の管轄下にはない。近頃石破茂・元防衛大臣や全国知事会などが提唱している「防災省」のような機関が直轄する実働部隊となる。
 ただし、新設される災害救援隊は、陸上自衛隊が保持する能力のうち災害救援に活用できる能力を保持するので、両隊の災害救援能力はオーバーラップすることになる。そのため、「陸上自衛隊から分離独立させる必要はなく、これまで通り必要に応じて自衛隊から救援部隊を派遣すべきである」といった反対意見が出てくるであろう。
 しかし、災害救援活動に特化した装備を身につけ、専門の訓練を施すことになる「災害救援隊」は、災害救援でも活躍可能というレベルの陸上自衛隊の救援部隊よりも強力な災害救援部隊となるのは自明の理である。
 また、常設災害救援隊の設置に関して、「災害救援を専門とする組織は、消防組織や警察組織や軍事組織と違って、大規模災害が発生しない平時において訓練以外の任務がないではないか」という批判も加えられるかもしれない。しかし、軍隊もその本務は「外敵との戦闘に打ち勝つ」ことにあるのであって、戦闘や戦争が発生していない平時にあっては訓練が任務となっているのである。

災害救援隊の創建を即刻検討すべき

 もちろん、上記の米軍関係者たちが自衛隊や防衛省の人々に対して、
「陸上自衛隊は効率的な組織改革を実施すれば、5万名で十分である」
「陸上自衛隊が米軍側と繰り返している合同訓練には軍事的には疑問符が付せられるものが多い。陸上自衛隊の存在意義をアピールするために無理矢理バカバカしいシナリオを作り出しているとしか考えられない」
といった本音を公的に口にすることは絶対にあり得ない。そのため、何らかの理由で自衛隊の戦力がアメリカ軍にとっても本当に必要にならない限り、上記のような提言が日本側に対してなされることはないであろう。

 しかしながら、頻発する大規模自然災害と、強化すべき海洋戦力という現状に鑑みるならば、「陸上自衛隊から削減するべき人員を母体として災害救援隊を組織する」というアイデアは、即刻真剣に検討されてしかるべきアイデアである。
〈管理人より〉陸上自衛隊の形は、第二次大戦後に我が国を実質占領したアメリカ合衆国の国防圏を防衛するために、日本列島を「戦場」にすることを前提として編成されています。それでアメリカ本国が守られればいい、といういわばアメリカ主体の防衛戦略となっています。基本的には陸上だけではなく、海上でも空でも同じことです。だから海上自衛隊には正規空母がなく、戦略は潜水艦部隊の抑止が主体、航空自衛隊については、列島自体が空母という前提なんでしょう。戦闘機による迎撃に特化、爆撃機はもたされませんでした。本土が戦場になることが前提ですから、陸上自衛隊はその基本戦略として採用したのが、昭和20年の旧陸軍による「決一号作戦」いわゆる「本土決戦構想」です。我が国をとりまく安全保障環境は大きく変化しました。いい加減「本土決戦構想」から脱却すべきなんですがね。
陸上自衛隊第一空挺団

島嶼防衛の要 AAV-7水陸両用車両

陸上自衛隊は、本土決戦体制から本土周辺島嶼防衛のために領海周辺へ戦力を投射できる体制に「改革」すべきです。アジアの安全保障環境を考えると転換実現まで時間は多く残されていないように思えます。

【待ってはくれない共産中国】

中国海兵隊、2年後に3倍 台湾・尖閣占拠、視野か 米国防総省の年次報告
 【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省は2018816日、中国の軍事・安全保障の動向に関する年次報告書を公表した。報告によると、中国海軍は、敵前上陸などを担う陸戦隊(海兵隊)について、現状の約1万人規模(2個旅団)を2020年までに3万人規模超(7個旅団)まで拡大させる計画であることが判明した。
 陸戦隊には新たに「遠征作戦」などの任務も付与されるとしており、台湾の軍事的統一や尖閣諸島(沖縄県石垣市)の占拠などを視野に兵力を増大させている可能性がある。
 報告書は、陸戦隊の拡大を「中国海軍に関する昨年の最も重要な変化の一つ」と指摘。中国が広域経済圏構想「一帯一路」を展開し、世界各地への影響力浸透を図る中、海軍力の増強に力を入れている。
 陸戦隊は中国が同構想をにらみ海外に展開する軍事拠点の「先遣部隊」の役割を担うとみられ、昨年8月に北東アフリカのジブチに設置された中国軍初の海外基地で既に活動が確認されたとしている。
 中国海軍は潜水艦の保有数を現行の56隻から20年までに69~78隻に増強させるほか、初のカタパルト装備の空母を今年中に建造を開始する見通し。
 報告書はまた、中国海警局(沿岸警備隊)の船艇が昨年、尖閣諸島の周辺12カイリ内を「10日に1回」の頻度で航行したと指摘。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島では3つの人工島の軍事拠点化が引き続き進行中であるとした。
 報告書はさらに、中国空軍が核兵器運用任務を正式に付与されたとし、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と戦略爆撃機で構成される核運搬手段の「3本柱」が中国で初めて確立されたと指摘した。
 報告によれば、中国空軍は戦略爆撃機による長距離渡洋爆撃が実施可能な範囲を急速に拡大させるとともに、米国や同盟諸国への攻撃を想定した訓練を進めているとした。17年の中国の軍事予算は1900億ドル(約21兆円)超。28年の公式軍事予算は2400億ドル以上になる見通しだとしている。

〈管理人より〉共産中国は、本気で自国の国益伸長のために海洋覇権を確立すべく、戦略を実行してきています。彼らにとって我が国は「大国」です。軍事的に経済的に、国際政治の舞台で共産中国の脅威にならないようにしかけてくるのです。周辺に脅威になる大国を作らせない、という覚悟のうえで国家戦略を有効に進めていかなくては生き残れません。織田信長や豊臣秀吉の対外政策など今の国際政治の範とできるように思うのですが、どうでしょうね。

【関連リンク】

空軍 ~核兵器運用任務を正式に付与
海軍 ~2020年までに潜水艦の保有数を現状の56隻から6978隻に増強。2018年中に初のカタパルト装備の空母の建造開始。
陸戦隊(海兵隊) ~2020年までに現状の約1万人規模を3万人規模超まで拡大。

※これらの目的は、台湾や尖閣諸島の軍事的統一や占拠を視野に入れてのことか?


【襲い来る地球規模の気候変動】
大規模な自然災害に対する備えも今や自衛隊、国防軍の重要な役割でしょう。
仮想敵は、外国の軍事力だけではありませんね。
すべての自衛隊員に災害対処のノウハウを共有していただく、ということが重要です。
常設の災害支援部隊を作るならば、国際支援の時と同じように組織を先に編成し、中身の隊員を定期的に入れ替える、という形でスキル習得をはかるといいのではないでしょうか?
もちろん実践データからスキルアップのために定期的に職務研修を行っていくことはいうまでもありません。

また災害対処のノウハウは、テロ対策にも応用できるのではないでしょうか?
我が国はテロ攻撃にも気を緩めるときではないでしょう。巧妙化、大規模化するサイバー攻撃への対処も含め自衛隊が今後「国防軍化」していくことは時代の要請です。

自衛隊の知られざる苦悩
陸上自衛隊第2師団平成30年豪雨被害への災害救助派遣
火山が噴火した時には、なくてはならない化学防護車


【みんな有事の際に活躍する自衛隊を求めています】
【自衛隊の知られざる災害派遣活動】 豪雨でフル回転 地元から感謝の声続々

平成30年7月13日、気温34度を超す猛暑の中、陸上自衛隊の第13旅団司令部付隊(海田市駐屯地=広島県)は、西日本豪雨に見舞われた広島県呉市内の小学校で給水支援に当たっていた。その様子を、小学校低学年くらいの女子児童と、母親と思われる女性が少し離れた場所から眺めていた。
(8月9日にアップされた記事を再掲載しています)
 「暑いのに何をしているのだろう」
 活動中の隊員は疑問に思ったが、給水を希望する被災者への対応を優先した。しばらくして給水希望の人波が途絶えると、2人が隊員に近寄ってきた。
 「これ
 女子児童が恥ずかしそうに差し出してきた筒状の画用紙を広げてみると、ちぎり絵で「ありがとう」。聞くと、豪雨被害で気持ちが落ち込んでいたが、自衛隊が必死にがんばる姿を見て励まされ、ちぎり絵を贈ることにしたという。しばらく様子を眺めていたのは、支援活動の邪魔になってはいけないという配慮からだった。
 「2人とも被災して大変なときなのに」
 隊員は被災者への支援活動への決意を新たにした。
西日本豪雨の発生を受け、自衛隊には1府7県から派遣要請が寄せられ、大雨災害としては過去最大規模の態勢で救援救助に当たってきた。全国約150の陸海空3自衛隊の部隊から、最大3万人以上を投入。元自衛官で民間企業などに勤める「即応予備自衛官」約300人も招集し、広島を中心に生活支援を展開した。即応予備自衛官の招集は平成23年の東日本大震災、28年の熊本地震に続き3回目で、大雨災害では初めてだった。
 防衛省によると、8月5日までに自衛隊が救助した孤立者は約2300人、給水支援約1万9千トン、給食支援約2万食、入浴支援約8万6千人に上る。燃料や水などの物資輸送、がれき処理、道路啓開、水防活動なども実施している。
 猛暑の中での支援活動なだけに、熱中症にかかる隊員が続出するなど、屈強な自衛隊も無傷では済まなかった。それでも、災害派遣は国防と同様、自衛隊に課された重要な任務でもある。短時間での交代制を敷くなどの工夫で乗り切っている。
こうした自衛隊の活動が報道される機会は限定的だが、支援を受けた被災者からは感謝の声が続々と届いている。現場の災害派遣部隊から届いたエピソードの一部を紹介する。
 「通信機材の点検のため倉敷市役所を訪れたところ、10歳くらいのお子さんから笑顔で敬礼を受ける。お母さんから『本当にありがとうございました』との言葉をいただいた。活動を実施する上での活力となった」(陸自第3通信大隊)
 「避難所の衛生状態の改善のため、防疫活動を実施していた。その際、高齢の女性が孫に対して『この人たちに助けてもらったんだよ。お礼をいいましょう』といって、隊員に対して『ありがとうございます!』と言ってくれた」(陸自広域防疫隊)
 「給水活動の際『毎日水をもらいに来ています。水が出ない日々なので大変助かってます』とお話いただいた。逆に私自身が元気づけられた」(空自西部航空方面隊司令部)
 また、入浴支援の利用者が書き残したノートの寄せ書きには、率直な感想が記されている。
「至れり尽くせりの風呂で、神に仏です」
 「あったかい風呂、うれしかったです。初めて被災して不安な気持ちでしたが、ここへ来てほっとしました」
 「こんなことになって初めて自衛隊の方の大切さ、すごさがわかりました」
 「今日ほど自衛隊に感謝の気持ちを感じたことはありません」
 「明日からも作業がありますが、近くにお風呂があると思うだけでがんばれます。自衛官の方の笑顔にとても癒やされました」
 「明日への活力になります。六甲の湯、最高!」
 「お風呂に入っているときだけは家のことを忘れています」
 「被災期間で『自衛隊の風呂に行く』というのが数少ない楽しみの一つでした。いつか何かの形で必ず恩返ししたいと思っています」
 西日本豪雨の発生から1カ月が過ぎた。規模を縮小しつつ自衛隊は現在も支援活動を続けている。 (政治部 石鍋圭)
〈管理人より〉有事のときの入浴サービスは、被災者とともに自衛隊員も一緒に入れるといいですね。お風呂で仲良くなれるのは我が国が世界に誇れる文化です。

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