2016年12月12日月曜日

アメリカ新国防長官マティス氏の軍人すぎる素顔

もう1つのニックネームこそふさわしい米国新国防長官

歴戦の勇士、マティス氏を登用するトランプ次期政権の狙いとは

北村淳

ワシントンの議会公聴会に出席するジェームズ・マティス中央軍司令官(当時、201131日撮影、資料写真)。(c)AFP/Chris KLEPONISAFPBB News

ドナルド・トランプ次期米大統領がジェームズ・マティス海兵隊退役大将をトランプ政権の国防長官に指名した。
アメリカ海兵隊関係者からはもとより海軍関係者や陸軍関係者からも、この人選には大いなる支持が集まっている。アメリカの法律には「退役軍人が7年以内に長官職に就任するには7年の期間が必要である」という規定があるが、特例を連邦議会が許可する手続きは順調にクリアしそうである。
 ただし、オバマ政権寄りのメディアなどでは、マティス大将に名付けられた「狂犬」というニックネームを強調して抵抗を示す風潮も見受けられなくはない。
「狂犬」というニックネームの由来
反トランプ陣営のメディアなどは、「『狂犬』マティス海兵隊退役大将」という表記をことさら濫用し、トランプ次期大統領が国防長官に指名しようとしている人物が「乱暴」「危険」であるというイメージを植え付けることに躍起になっている。
 たしかにマティス大将が現役時代に、アフガニスタン戦争やイラク戦争においてテロリストや叛乱分子に対して強硬な発言を繰り返していたことは事実である。
 そして、イラク戦争最大の激戦と言われているファルージャの戦いで第1海兵師団司令官として激戦を勝ち抜いたという戦歴が有名なため、その後の強硬発言と相まって、「極めてタフでしぶとく戦う軍人」という意味合いで「狂犬」というニックネームがつけられた。
 国家への忠誠を第1のモットーに据えているアメリカ海兵隊が、飼い主に忠実な生き物とされる犬にたとえられるのは、実は目新しいことではない。最も有名なのは第1次世界大戦期に誕生した「悪魔の犬たち」という海兵隊のニックネームである。
1次世界大戦後期、フランス軍を中心とした連合軍とドイツ軍が硬直状態に陥っていたフランス戦線に投入されたアメリカ海兵隊は、有名な「ベローの森の戦闘」をはじめドイツ軍と数々の死闘を繰り広げた。多大な犠牲を払いながらも次々とドイツ軍部隊を打ち破ったアメリカ海兵隊部隊の頑強さにドイツ軍は畏敬の念を抱き、アメリカ海兵隊を「悪魔の犬たち」と呼んだ。
 それ以来、海兵隊自身もこのニックネームを用いるようになり、忠実でしぶとい犬であるブルドックを海兵隊の公式マスコットとした。現在に至るまで、海兵隊は公式マスコット犬を代々正式に任命しており、独自のマスコット犬を任命している部隊も少なくない(写真)。
マスコット犬パジェット2等兵をアメリカ海兵隊に授与する英国王立海兵隊(1927年)
君塚陸幕長(2012年当時)にプレゼント(骨)をもらう海兵隊公式マスコット犬チェスティXIII伍長
第三海兵遠征軍 「海兵隊讃歌」
アメリカ海兵隊公式行進曲「忠誠」 陸上自衛隊中央音楽隊
一般社会とはかけ離れていたイラクの戦地の状況
 以上のような経緯でマティス大将には「狂犬」というニックネームがつけられたわけだが、敵、それもアフガニスタンやイラクにおけるテロリストや叛乱分子に対する強硬な発言をもって「乱暴」あるいは「危険」な人物とのイメージを抱くのは誤りである。
 第1海兵師団司令官であったマティス大将(イラク戦争当時は少将)直属の指揮官としてファルージャでの先鋒部隊であった第1連隊戦闘団を率いたトゥーラン中将(イラク戦争当時は大佐)が直接筆者に語ったところによると、ファルージャはじめイラクの戦地では毎日が“OK牧場の決闘”のような状態だったという。
つまり、大きな戦闘が発生していない“平穏な日々”においても、司令部や兵舎から一歩街路に出ると、至近距離から叛乱分子による発砲を受けるため、こちら側も必死に撃ち返すという日々の連続であったというのだ。
 それだけではない。海兵隊と共同で戦っていたイラク国軍将兵などがテロリストや叛乱分子に拉致され、残虐な拷問を受けて殺害されてしまう事件も少なくなかった。トゥーラン司令官と共にテロリストや叛乱分子と戦っていたイラク国軍部隊の指揮官であったスレイマン大佐という有能で勇敢な人物は、テロリストに拉致され、残虐に拷問されたあげく首を切り落とされ道ばたにうち捨てられてしまった。その残虐行為の一部始終がビデオに撮られ、トゥーラン司令官のもとに送りつけられたというのだ。
 このような残虐行為を平気で行うテロリストや叛乱分子と戦わなければならない海兵隊将兵に向けて、海兵隊のリーダーが「敵に対する過激とも思える発言」をすることは、一般社会では異常に映るかもしれないが、日常とはかけ離れた戦場のスタンダードに照らせば、なんら異常ではない。むしろこれからそのような戦場に身を置かねばならない戦闘員たちにとっては心強い言葉となるのである。
イラク戦争の戦場で海兵隊員たちに訓示するマティス大将(当時は少将)
 もっとも過去半世紀以上にわたって、極めて幸いなことに“人が人を殺すことが異常ではない戦場”に自衛隊を送り込んだ経験がない日本社会では、このような論理は極めて奇異に受け取られるかもしれない。
 しかしながら、海兵隊に限らずアメリカ軍は、恒常的に世界各地で戦闘を継続している。そして、トランプ次期政権は大統領選挙期間中「IS撃滅」を公約としてきた。つまり、場合によっては海兵隊や陸軍の地上戦闘部隊もISとの戦闘に投入される可能性が生じてきたのである。
 実際に戦闘を経験したことがない軍事組織の長と違って、トランプ次期政権下のアメリカ軍を束ねる国防総省のトップは「狂犬」と呼ばれるくらいタフな人物でなければ務まらないのだ。
もう1つのニックネーム「戦う修道士」
マティス海兵隊退役大将は「狂犬」というニックネームがある一方で、「海兵隊員の中の海兵隊員」「海兵隊と国家に全てを捧げてきた男」とも称されている。
 マティス大将の右腕として活躍した上記トゥーラン中将によると、マティス大将の人物像を一言で表現するならば「極めて冷静沈着で学者肌の人物」ということである。
 現に、米軍においてマティス大将のニックネームとして「狂犬」よりも浸透しているのが「戦う修道士」である。
 トランプ次期大統領に批判的なメディアが、「戦う修道士」よりも「狂犬」を多用しているため、日本のメディアでも「戦う修道士」というニックネームは用いられてはいないようだ。しかし、実際には「狂犬」以上に普及している「闘う修道士」というニックネームを併記しないようでは、メディアによるイメージ操作とみなされても致し方ない。
 マティス大将は歴戦の勇士としてだけではなく、読書家としても有名であり、とりわけ古今の戦史に精通していることは幅広く知られている。また、トゥーラン中将が言うように、剛毅なだけでなく沈着冷静な人柄でもあるうえ、人生の全てを海兵隊と戦史や戦争論の研究に掲げてきたストイックな生活態度(さらに彼は独身である)から、かつてのテンプル騎士団、ドイツ騎士団、聖ヨハネ騎士団などに属した騎士=修道士になぞらえて「戦う修道士」のニックネームで呼ばれているのである。
同盟国も防衛力強化が求められる
トランプ次期大統領がマティス退役海兵大将を国防長官に据えるということは、トランプ次期政権にとっては選挙公約とも言える「IS殲滅」のための本格的戦闘が開始されることを意味している。そのため、トランプ政権発足後当面の間は、アメリカの軍事的関心は中東方面に集中することになるであろう。
 一方で、本コラムでもたびたび紹介しているように、ランディ・フォーブス議員がおそらく海軍長官に就任するため、中国海軍の拡張戦略に対抗するべくアメリカ海軍再建の努力もIS撃滅戦と平行して推し進められるものと思われる。

 海軍再建には莫大な予算と長い時間が必要である。しかし、予算は限られており、悠長に時間をかけているわけにもいかない。そのため、ますますアメリカにとっても同盟関係が重要になる。ただしその同盟関係は、相手の同盟国が、自国の経済規模に応じた防衛力を手にしていることが前提になることを日本は改めて心得ておくべきである。

“戦う修道士”マティス・アメリカ国防長官


の思想

 マティス米国防長官には「マッド・ドッグ」(狂犬)のほかに、もう1つ愛称がある。「ウォリアー・モンク」(戦う修道士)。独身で禁欲的な戦略家というイメージが浮かぶ。
 閣僚候補を品定めしていたトランプ氏は昨年11月、テロ容疑者への尋問手法「水責め」をどう思うかとマティス氏に聞いた。
 「有効だとは思いません。たばこ1箱とビール2本があれば拷問より良い結果が得られます」
 トランプ氏には、持論を否定した回答が驚きだった。オバマ前大統領との間では、その率直な物言いが軋轢(あつれき)を生んだ。2010年8月、イラクやアフガニスタンの作戦を統括する中央軍司令官に就いたばかりのマティス氏に最優先課題を尋ねたときのことだ。
 「第1にイラン、第2にイラン、第3にイランです」。予定より半年早く任を解かれたのは、外交を重視するオバマ氏の不快感が原因だという。

「アフガンにはベールを着けないという理由で5年間も女性をたたく男がいる。そういうやつらを撃つのはとても楽しい」

「礼儀正しく、プロであれ。だが、会う人は誰でも殺す計画を立てておけ」
指揮官として発した言葉から「狂犬」だと誤解されるが、米軍関係者は精強な部隊を作ることが犠牲を防ぐという信念に基づく発言だと理解している。
 戦史や哲学など約7000冊の蔵書を持ち、古代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスの「自省録」を持ち歩いた。部下にも読書を通じて歴史から教訓を学ぶよう勧めた。
「武器を使う前に頭脳を使え」。

第1海兵師団を率いた03年のイラク開戦の直前には、サダム・フセイン体制下で苦しめられたイラク国民への同情を忘れないよう、こう呼びかけた。(ワシントン 加納宏幸)


アメリカ海兵隊 上陸戦能力
海岸線へのビーチングと内陸部上陸地点への空中機動による「立体的上陸作戦」

新たなトランプ政権の樹立とその安全保障政策。アジア政策の転換は、まさに経済能力に応じた自主防衛能力の向上には、うってつけの機会であるといえるでしょう。
 単に水陸機動団をたちあげ、着上陸作戦を可能にするだけではなく、自衛隊の既存の組織体制のあり方にまで目を向けた改革と強化が必要です。
 陸、海、空の三軍にこだわることなく、予算の増額がなされればサイバー戦部隊の確立や近代化装備の開発にも投資していくべきです。既存のサイバー防衛隊にとらわれず、役割と機能を拡大し、新たな戦闘教義の開発に資することが重要と考えます。
 今後の戦争のあり方は、どうしたら人が死なないか、ミニマムに抑え込めるか?戦わずに相手に影響をどう及ぼすのか?が命題になっています。しかし大前提となっているのは、国民の国家意識、安全保障に対する思考をどう深めていくのか、日常生活レベルまで落とし込めるか、ということでしょう。

暴走が懸念されるトランプ軍事チーム

海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

2016125http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8384

今回のテーマは「トランプ政権の人事構想を読み解く」です。共和党ドナルド・トランプ次期米大統領は、中西部オハイオ州で支持応援をしてくれた有権者を対象に「感謝集会」を開催しました。そこで同氏は、国防長官にジェイムズ・マティス退役大将を起用すると発表しました。次の注目は国務長官の人事です。本稿では、これまでのトランプ政権の人事構想から見える同氏の思考と手法を中心に述べます。
反「チーム・オブ・ライバルズ」

iStock
 読者の皆さんはチームを形成するとき、自分とものの見方や考え方が類似した仲間をメンバーに入れたいと思いませんか。価値観や意見が異なる競争相手をチームメンバーに加えようとしますか。
 オバマ米大統領は、2008年民主党候補指名争いでライバルであったヒラリー・クリントン氏を国務長官に任命しました。それに加えて、ブッシュ前政権の国防長官であったロバート・ゲイツ氏並びに本選を戦ったマケイン陣営のジョン・ハンツマンユタ州元知事を自分のチームに入れて驚かせたのです。オバマ大統領は、「ライバルはチームメンバーに加えて自分の手元に置く」というリンカーン元大統領のとった手法を取り入れたのです。尊敬するリンカーン元大統領のライバルで構成されたチームを作るという「チーム・オブ・ライバルズ」のアイデアに基づいて、同大統領は閣僚人事を進めたのです。
 それに対して、共和党ドナルド・トランプ次期米大統領は新政権における人事において「チーム・オブ・ライバルズ」を重視しているとは言えません。右派のニュースサイト会長スティーブン・バノン氏を大統領主席戦略官兼上級顧問、ジェフ・セッションズ上院議員(共和党・アラバマ州)を司法長官、マイケル・フリン元国防情報局長を国家安全保障問題担当の大統領補佐官にそれぞれ任命しました。3氏はライバルどころか、共和党候補指名争いにおいてトランプ氏に対して忠誠心が高かった人物です。しかも3氏の思考は白人優先、反移民及び親ロシアで、トランプ氏のそれと類似点が多く存在しているのです。
集団思考の罠と新政権
 チームの形成において「チーム・オブ・ライバルズ」のアイデアにはどのようなメリットが存在するのでしょうか。ホワイトハウスでの記者会見で、オバマ大統領はメディアから元ライバルをチームに加えた理由について尋ねられたとき、「集団思考の罠」を阻止するためだとその意図を説明したのです。集団思考は、エール大学の社会心理学者アーヴィング・ジャニスの概念です。
 ジャニスによりますと、集団思考とは「凝集性の高い集団でみられ、集団内の意見の一致を重視するあまり、とりうる可能性のあるすべての行動を評価しなくなる思考様式のこと」です。集団思考の罠にはまった凝集性の高いチームでは、メンバーを互いにひつけあう力が過度に働いており、次のような病的現象が観察できるというのです。
① 不敗神話並びに無敵幻想を持つ
② 決定の正当化を過度に行う
③ 決定についての倫理観を検討しない
④ 敵は悪魔であるような極端なステレオタイプ(固定観念)を用いる
⑤ 反対者に対しては、集団的に同調をするように直接圧力をかける
⑥ チームのコンセンサスから逸脱していないか自己検閲を行う
⑦ 他のメンバーの沈黙を同意と誤解し、全員一致の幻想を持つ
⑧ 集団性を維持するために、反対者が反対意見を出さないように阻止する役割を担うメンバーが存在する
 集団思考の概念を借りれば、たとえば軍事力増強を目指すトランプ氏率いる安全保障チームは過激派組織「イスラム国」(IS)に対し無敵幻想を抱き、プーチン・アサド両政権と協力して本格的に壊滅作戦に出る可能性は否定できません。その際、テロリストとイスラム教徒を同等に扱い、すべての同教徒を悪魔のように扱うのです。テロ対策としてイスラム系移民の登録制度の導入に関しても過度に正当化を行い、その倫理観について検討しない危険が充分あります。
 次に経済チームです。トランプ氏は米財務長官にゴールドマン・サックス出身のスティーブン・ムニューチン氏、米商務長官に投資家のウィルバー・ロス氏を起用しました。両氏とも白人の超富裕層です。さらに米メディアによりますと、ゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者(COO)ゲーリー・コーン氏を米行政管理予算局(OMB)局長に起用することが検討されています。仮に同氏が行政管理予算局局長に任命されますと、バノン氏並びにムニューチン氏を含めてゴールドマン・サックスの経験者が3人も主要ポストに就くことになります。
 仮に多様性に欠けた経済チームが集団思考の罠にはまりますと、通商政策において保護主義的な立場を過度に正当化するようになります。チームの求心力を維持するために、保護主義的な政策はグローバルな利益をもたらさないという反対議論を出さないようにする役割を果たすメンバーが出てくるのです。反対意見を出すメンバーに対しては同調するように圧力をかけて従わせるのです。その結果、集団思考の罠にはまったチームでは健全な議論ができないのです。トランプ新政権は、無敵幻想、過度な正当化、倫理観の軽視、極端なステレオタイプ並びに同調圧力により、かなり極端な立場をとり間違った方向に米国を導く可能性があります。
ロムニーのリスク
 トランプ新政権における国務長官の候補に2012年米大統領選挙の共和党候補ミット・ロムニー氏の名前が挙がっています。選挙期間中、ロムニー氏は不法移民対策として「自主退去」を提案しました。州の移民法を厳しくすれば不法移民は自主的に国外へ退去するというのです。16年米大統領選挙ではトランプ氏は米国とメキシコの国境における壁の建設を一貫して主張してきました。対中政策では、ロムニー・トランプ両氏とも中国を為替操作国として批判しています。不法民及び中国との通商問題に関して両氏は強硬派で共通点が存在しています。
 一方、対ロシア政策に関してはトランプ・ロムニー両氏の間にかなりの温度差が存在しています。トランプ氏とは異なり、ロムニー氏は反ロシアの立場をとってきました。仮にトランプ氏が党内融和を最優先して国務長官の職をロムニー氏に与えた場合、同氏は国家安全保障問題担当の大統領補佐官フリン氏と衝突し、ロシア政策を巡って「ホワイトハウス対国務省」の構図が明確になるでしょう。ロムニー氏の国務長官起用には高いリスクが伴っているのです。


第32回正論大賞・受章者の喜びの言葉≪新風賞≫
「取り戻したい『日本人の安全保障感覚』」
井上和彦氏

 このたびの受賞は身に余る光栄であり、今は筆紙に尽くせぬほどの感謝の気持ちでいっぱいです。
 これまで私は現場取材をモットーに、本紙および月刊「正論」をはじめ、テレビ番組などあらゆるメディアを通じて難解な軍事・外交・安全保障問題および近現代史の真実を、楽しく痛快に、そして分かりやすく伝えようと努めてまいりました。
 世界は無慈悲なパワーポリティクスで動いており、各国は軍事力を背景に外交を行っているのが実情です。ところが戦後の日本は、政治や外交など諸問題を思考する上で、あろうことか憲法9条に倣って軍事・安全保障という視点を放棄し、その点からのアプローチをタブーとしてまいりました。まして昨今の日本を取り巻く安全保障環境は劇的に変化しつつある今日、国際問題はもとより国内の政治経済など万事を思考する上で軍事・安全保障の重要性はより一層高まっております。
 このような現状では、外交や国際問題の本質を理解できないばかりか、わが国が相手国と対等に渡り合えるはずがありません。


その原因は何なのか。
 憲法問題をはじめ国防・政治・外交など諸問題の軛(くびき)ともいうべき大きな障害となってきたのが、日本の近現代史を醜聞の色に染めてきた自虐史観であることは明白です。これこそが、戦後日本が抱える“慢性疾患”の病根であり、その病巣を摘出し、体質改善しなければ、外交・防衛はもとより国内政治を正常化することはできません。
 そこで私は国内外の政治・安全保障の現場に足を運び、また先人の足跡を辿(たど)ることで客観的事実と生の声を取材するよう努めてまいりました。それは、イデオロギーにいきり立った論調や難解な理論はなかなか大衆に理解されにくいけれども、自ら出向いて取材してきた実相と現場の肉声は大きな説得力を持ち、人々の共感と快哉(かいさい)を呼ぶからです。そしてそれはまた、これまで日本人を蝕(むしば)んできた平和ボケと自虐史観という慢性疾患の“特効薬”となるはずです。
 私は、これからも現場取材をモットーに、安全保障問題および外交問題を国民に分かりやすく伝え、と同時に封印された日本の近現代史を丁寧に開封することで、内外から仕掛けられた歴史戦に挑んでいく所存です。これは、わが国の名誉と尊厳を取り戻すための戦いであり、それはすなわち日本の安全保障の基盤であると信じてやみません。


【プロフィル】井上和彦
 いのうえ・かずひこ 昭和38年、滋賀県生まれ。62年に法政大学社会学部卒後、商社に入社。その後、執筆活動やテレビ番組のコメンテーターとして活躍。「そこまで言って委員会NP」をはじめ、「ニュース女子」「真相深入り!虎ノ門ニュース」「モーニングCROSS」などニュース・バラエティー番組に多数出演、“軍事漫談家”の異名を持つ。サンミュージックプロダクション所属。著書に「日本が戦ってくれて感謝しています」「大東亜戦争秘録 日本軍はこんなに強かった!」「東日本大震災 自衛隊かく闘えり」「パラオはなぜ『世界一の親日国』なのか」など。平成25年から「国民の自衛官」選考委員、27年10月から産経新聞「正論」欄執筆メンバー。国家基本問題研究所企画委員、防衛省講師、航空自衛隊幹部学校講師、商社シンクタンク部門主席アナリスト、東北大学非常勤講師なども務める。


【お祝いの言葉】
ニュースキャスター・辛坊治郎氏「“軍事漫談家”に底流する『人と国家への深い愛情』」
 「軍事」を語れる文化人は、それなりにいるだろう。「笑い」で時代の寵児(ちょうじ)になる芸人もいる。しかし「軍事」を口にして「笑い」のとれる文化人は、私の37年間のテレビ屋生活で、井上和彦氏を置いて他に一人もいない。
 私が担当している番組に「そこまで言って委員会NP」がある。元々(もともと)故やしきたかじん氏が司会をしていた番組で、井上氏の「軍事漫談家」という呼称は、やしき氏の命名だ。
 井上氏の発するメッセージには、ときに商社マンとして得た最先端の軍事知識に裏打ちされた極めて厳しいものがある。そんな「笑ってられない」情報すら、何故「笑い」に換えて人々の心の底に届けられるのか? それは、井上氏の人と国家に対する深い愛情ゆえなのだと思う。











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