2015年8月1日土曜日

自衛隊唯一の海外基地ジプチとソマリア沖海賊対処 ~共産中国もジプチに拠点作り!?~

【米国が危機感アフリカの小国に中国が

軍事基地設置

軍事的要衝の地「ジブチ」に日本を見習い拠点を確保

ソマリア沖の海賊を制圧したCF-151(海賊対処専門の第151合同任務部隊)所属のアメリカ海軍駆逐艦(写真:米海軍)

 オバマ米大統領がケニアとエチオピアを訪問した。アメリカのメディアでは初訪問ということで何かと話題が尽きないようである。
 一方、軍事関係者の間では、エチオピアと国境を接するジブチと中国の関係が関心の的となっている。というのは、これまで親米路線を売り物にしてきたジブチのゲレ大統領が、中国に対してジブチ国内に軍事拠点を設置することを認めたからである。
“基地依存国家”のジブチ
 ジブチ(ジブチ共和国)は、マンダブ海峡に面する軍事的要衝の地である。マンダブ海峡はジブチとイエメンを両岸とし、最も狭い地点の幅はおよそ29キロメートルという狭い海峡である。紅海とアデン湾を結ぶこの海峡には、2海里(およそ3.7キロメートル)幅の航路帯が往復それぞれ1本ずつ設定されており、地中海~スエズ運河~紅海~アデン湾~アラビア海~インド洋を航行する船舶・艦艇にとってのチョークポイントとなっている。



   このような軍事的要衝のジブチには、フランス軍、アメリカ軍、それに自衛隊の基地が設置されている。ジブチ経済にとって、アメリカ、フランスそれに日本から得ている基地使用料やそれらの基地での雇用が生み出している収入は2014年度には16億ドルであった。そのためジブチは“基地依存国家”と呼ばれている。
これら3カ国の基地は、いずれもジブチの首都ジブチ市にあるジブチ国際空港に隣接して設置されている。旧宗主国であったフランスは、ジブチとの条約に基づいてジブチ防衛のための兵力およそ2000名と戦闘機やヘリコプターなどを駐留させている。
 キャンプレモニアと呼ばれるアメリカ軍基地は国際空港よりも広大であり、アフリカ大陸にただ1つ設置されているアメリカ軍基地である。アメリカ軍将兵や民間軍事会社関係者などおよそ4500名の米軍関係者がキャンプレモニアに滞在しており、この地域における情報活動や特殊作戦、それに東アフリカ諸国軍に対する軍事訓練の拠点となっている。
 唯一の自衛隊海外基地であるジブチ自衛隊基地には、2機の海上自衛隊P-3哨戒機が派遣されている。そして、それらの哨戒機を運用する海自航空部隊と、司令部の運営や基地の警備などに当たる支援部隊(海自・陸自)とから構成される海賊対処部隊が、2011年以来常駐している。この海賊対処部隊は、2008年以来、国際社会が協力して実施しているソマリア沖海賊鎮圧活動に参加している自衛隊部隊の1つである。
ソマリア沖の海賊に対処する多国籍海軍
 2005年頃からソマリア沖では海賊が横行し始め、2006年にはアメリカ海軍駆逐艦まで海賊に襲撃された。2007年には日本関係のタンカーを含む多くの大型船が海賊に乗っ取られ、その猛威は納まるところを知らなかった。
 20084月にフランスの豪華ヨットまで海賊に襲われると、国際社会が協力してソマリア沖海賊を鎮圧しようという機運が盛り上がった。そして同年6月、国連安保理で国連加盟国が武力を行使してソマリア沖の海賊を鎮圧するという内容の安保理決議1816号が採択された。
ヨーロッパ連合(EU)は国連決議を実施するため、200812月からアタランタ作戦を開始。ソマリアEU海軍部隊を結成してソマリア沖に各国軍艦を派遣し、海賊鎮圧を実施している。また、中東地域で対テロ戦争を継続中のアメリカが主導する多国籍軍の海上部隊である多国籍軍合同海上部隊(CMF)は、20091月に海賊対処専門の第151合同任務部隊(CTF-151)を編成し、ソマリア沖海賊の鎮圧活動を強化した。
 ソマリアEU海軍部隊やCTF-151以外にも、自衛隊、中国海軍、ロシア海軍、韓国海軍などをはじめとする各国の海軍が国連安保理決議1816号に基づくソマリア沖海賊鎮圧活動に艦艇などを送り込んでおり、時として相互に協力し合い、商船や航路帯の保護、海賊の鎮圧や捕縛、それに海難救助活動などを実施している。
ソマリアEU海軍部隊に参加し海賊対処活動中のスウェーデン哨戒機(写真:EUNAVFOR
高く評価されている海自の海賊対処活動
 ジブチ基地を本拠地にしている海自航空部隊は、20117月にジブチ自衛隊基地が開設される以前の20095月から、ジブチのアメリカ軍基地に間借りする形で現在と同じジブチ国際空港を拠点に活動を開始していた。また、それに先立つ20093月からは、2隻の海上自衛隊護衛艦をアデン湾に派遣し、海賊対処活動を開始していた。
 これらの海上自衛隊による海賊対処活動は、2008年に採択された国連安保理決議1816号に基づく国際協力活動として、また国内法的には海上警備行動の発令を受けて始められた(なお、日本の特異な国内法の制約により、海自艦艇には海上保安官も乗り込んでいる)。
 そして、自衛隊の海上部隊と航空部隊の活動が開始された後の20096月には、「海賊対処法」(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律)が成立し、それ以降はこの法律に基づいて自衛隊部隊が派遣されている。
 こうしてすでに6年以上にもわたって日本が展開させている海自P-3哨戒機による空からの警戒監視活動は、自衛隊艦艇のみならずCTF-151をはじめとする各国艦艇の海賊対処活動にとって極めて重要な監視情報を提供し続けており、日本のプレゼンスを大きく示している。
 201312月からは海上自衛隊海賊対処部隊も直接CTF-151の作戦に艦艇を編入させて作戦行動を実施しており、20142月からは海自P-3哨戒機もCTF-151の作戦に参加し始めた。これにより、アメリカが主導する多国籍海軍と一体化して情報の相互共有も図られ、日本による国際海賊対処活動は極めて効果的となった。
 そして20155月からは、CMFの海賊対処活動を統括するCTF-151司令官を海上自衛隊の伊藤弘海将補が勤めており、ソマリア沖国際海賊鎮圧活動において、日本の影響力がますます高まった。
CTF-151司令官に就任した海上自衛隊の伊藤海将補(写真右:CMF

海賊対処で存在感を高める中国海軍
 ソマリア沖周辺海域の海上航路帯における海賊の横行に対して、日本同様に関心が高かった中国も、日本に先立つ20091月からソマリア沖に軍艦を派遣し、アデン湾での海賊対処活動を開始した。駆逐艦あるいはフリゲート2隻と補給艦1隻から構成される人民解放軍海賊対処派遣隊の活動は現在も続けられている。
 アメリカ海軍関係者たちによると「中国の海賊対処艦隊がアデン湾に派遣され始めた当時には、日本やアメリカなどの海軍に比べて様々な分野において中国海軍の練度は確かに低かった。しかし、数年間にわたる海賊対処活動を経験するにつれて、中国海軍の練度は目に見えて向上し、現在は先進海軍に比べても引けをとらないレベルに達している」という。
 また、20113月に発生したリビア内戦に際して、中国政府は35000名にものぼる在リビア中国人をリビアから撤収させるために大量のチャーター機を送り込んだ。同時に、アデン湾に展開していた海軍部隊をリビアに急行させて、わずか数日間で35000名全員を国外に避難させることに成功した。この事例では、中国海軍の実力向上を国際海軍サークルに見せつけることとなった。
 このように、ソマリア沖国際海賊鎮圧活動において、中国海軍も海上自衛隊と同じく、大きな存在感を示しているのである。
中国軍基地の出現を危惧する米軍
 中国は、海賊対処活動による海軍のプレゼンスを示す努力と平行して、アフリカ諸国に対する膨大な額に上る経済的支援やインフラ整備活動を強力に推進している。そして、これまでアメリカに頼りきってきたジブチのゲレ大統領とアメリカの関係がぐらついているのを奇貨として、ジブチに対して急接近を開始した。
 オバマ大統領によるアメリカ国防費大削減に伴い、ジブチのアメリカ軍基地でも雇用削減が打ち出されたため、ジブチの人々の雇用確保問題に発展してしまった。また、1999年以降大統領の地位を占め続けているゲレ大統領は独裁色を強めているとして、オバマ政権は批判を強めている。そのため、アメリカとジブチとの関係はギクシャクしだしているのだ。
 そこに目をつけたのが中国である。これまでのようにアメリカ軍基地を最大のテナントとしていることに不安を覚えはじめたゲレ大統領に対して、海賊対処活動の継続強化に必要な中国海軍の拠点をジブチに設置する話を持ちかけた。アメリカ軍以上の基地テナント料収入、様々な大規模建設プロジェクト、大型の人民解放軍基地での雇用などが見込めるため、ゲレ大統領は中国による基地設置を承認した。
 人民解放軍ジブチ基地は、ジブチ市と海を隔てて近接しているオボックに建設される予定である。オボックには小規模な港と空港があるため、中国が南シナ海での人工島建設で示した海底掘削や埋め立て技術を投入すれば、たちどころにオボックに本格的な港湾施設が誕生してしまい、人民解放軍はインド洋の西端に本格的な拠点を手に入れることになると米軍関係者たちは分析している。
 また、軍港とともに航空施設も整備することは確実であると考えられている。最近になって人民解放軍が開発を進めている海洋哨戒機をジブチ航空基地に持ち込む可能性も視野に入れなければならない。なんといっても、海上自衛隊が2機の哨戒機をジブチに派遣していることが海賊対処活動に大きく役立っていることは各国海軍が認めているのであるから、自衛隊を見習って中国海軍が哨戒機を派遣することに国際社会が異を唱える道理はないのである。
 哨戒機派遣だけでない。人民解放軍ジブチ基地には、中国西部新疆ウイグル自治区南部の航空基地から中国空軍のイリューシン76戦略輸送機がノンストップで到着可能である。人民解放軍が、積載量40トンの大型輸送機で本国との補給を実施できる位置に本格的軍事拠点を開設することは、ジブチのアメリカ軍に対して人民解放軍が優勢な立場を占めかねないと、アメリカ軍関係戦略家たちは大いなる危惧を抱いている。

【自衛隊、ジブチの拠点強化】防衛省、有事にも使用検討
福井悠介、三輪さち子
2015119http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150118002210.html


 アフリカ東部のジブチに海賊対策で設けた自衛隊拠点について、防衛省が中東有事での哨戒機派遣や緊急時の邦人救出など、多目的に使えるよう施設の強化を検討していることが防衛省関係者への取材でわかった。長期間の使用が前提で、中東・アフリカの活動拠点として新たに位置付ける。安全保障法制の審議と並行して検討を進め、2016年度予算に施設建設などに向けた必要経費を計上することを目標にする。
 事実上の「海外基地」(防衛省関係者)で、安倍政権下で進む安保法制の転換によって自衛隊の海外任務が拡大することを見越した動きだ。
 拠点は、ジブチ国際空港に隣接する12ヘクタールをジブチ政府から賃借。約47億円かけて司令部庁舎や隊舎、P3C哨戒機3機分の駐機場と1機分の格納庫などを建設し、11年6月に開設した。

<自衛隊>ジブチ拠点強化へ 機能拡大、防衛大綱に明記

自衛隊がソマリア沖での海賊対処活動のために東アフリカのジブチに置いている拠点に関し、政府は邦人保護や人道支援の機能を追加する検討に入った。年末に改定する防衛政策の指針「防衛計画の大綱」に盛り込む方向だ。ジブチはインド洋西端に位置し、米国と共に推進する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の拠点とする思惑もある。ジブチ政府との借地契約は現行では1年単位で、中長期的な運用を見据え複数年契約に変更する案もある。
 機能強化は安全保障関連法で在外邦人の輸送・保護が自衛隊の新任務となったことを受けたもの。政府はジブチを中東・アフリカでの邦人保護活動の足場と位置づけ、2016~17年に関連訓練を実施。一時滞在施設や物資の集積拠点として活用したい考えだ。
 ジブチはアジアと欧州を結ぶ航路の要衝バブルマンデブ海峡に面する。機能強化には、インド洋で活発化する中国の動きに対抗して日本の存在感を示す思惑もある。中国は経済圏構想「一帯一路」の一環でスリランカやパキスタンでの港湾開発や利権獲得などを推進。並行して潜水艦派遣など軍事面の活動も強化している。昨年7月には人民解放軍初の海外基地をジブチに開設した。
 これに対し日本は、海上自衛隊の艦船がジブチとの間を往来する間に、インド洋や南シナ海の沿岸国との防衛協力などを行う「戦略的寄港」を推進。1~2日には海自艦がオマーンのドゥクム港に寄港し、オマーン海軍と親善訓練を行った。またジブチの機能強化後は、アフリカ諸国に人道支援や災害救助のノウハウを伝える「能力構築支援」に際し、自衛官の派遣拠点とする構想もある。ただ、自衛隊駐留は海賊対処のために日本とジブチが結んだ地位協定が根拠。「活動の幅を広げるには根拠が弱い」との意見もあり、法整備や協定改定も検討する。自衛隊は09年からジブチに駐留し当初は米軍基地施設を借用。11年からジブチ国際空港の隣接地約12ヘクタールを借り、現在は約15ヘクタール。陸上自衛隊の警備要員も含め約170人がいる。【秋山信一】

自衛隊 道内隊員「世界一暑い国」警備に汗 ジブチ(2014/03/21)北海道新聞
2014/03/31 に公開
陸上自衛隊第2師団(旭川市)の第26普通科連隊(留萌市)を中心にした道内の隊員約80人が、アフリカ・ソマリア沖アデン湾の海賊対処活動のための自衛隊拠点に1月末から派遣され、警備や施設整備に当たっている。「世界一暑い国」ジブチへの道内部隊派遣は初。既に気温は45度まで上がった。体調管理に苦労しながら、暑さが増す今後に備えている。(3月24日朝刊に掲載)
Copyright(c)The Hokkaido Shimbun Press.

ジプチとはこんなところ


ソマリア沖海賊対策P3Cルポ 自衛隊 他国と守る海(2014/03/22)北海道新聞
2014/03/28 に公開
アフリカ東部ソマリア沖アデン湾で海賊から商船を守る活動を行っている自衛隊は22日、他国軍と有志連合を形成し海域を分担して共同で防護する「ゾーンディフェンス」の様子などを日本の報道機関に公開した。海上自衛隊の護衛艦や哨戒機は、他国軍と連携することで従来の自国単独方式より効率的な活動が可能になった。一方、有志連合への参加は、安倍晋三政権が目指す集団的自衛権の行使容認に向けた「地ならし」にもみえる。(3­月23日朝刊に掲載)

世界の海の安全を確保せよ!

海上自衛隊・アデン湾の海賊対処活動実績

配信日:2015/08/10 21:35
http://flyteam.jp/airline/japan-maritime-self-defense-force/news/article/53430
防衛省統合幕僚監部は、ソマリア沖アデン湾で海賊対処行動を展開している海上自衛隊P-3Cの、201571日から731日までの飛行状況を発表しました。

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月の飛行回数は20回、飛行時間は約160時間、確認した商船数は約1,700隻でした。

海上自衛隊のソマリア沖での累計飛行回数は1,375回、総飛行時間10,600時間、確認した商船数は約113,300隻となりました。

【関連リンク】


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