簡単にいえば、「国防」とは「軍事力」だけに限るものではありません。
「国防」(=自衛権)は国家を構成する国民、地域を支える住民自らが自然発生的に持っている権利なのです。
だから自衛隊やアメリカ軍だけが担えばいいというものではなく、国民、地域住民が、日々の生活を送るために、それぞれの生業とする仕事そのものが「国防」になるのです。
スーパーで働く従業員であれば、店長からパート従業員まで、「日本の店舗」を守りぬいているという意味で「国防」を全うしていることになるのです。
日本国憲法は第9条において、国家が戦争を行う権利を「交戦権」という形で認めています。日本国は、独立国として自衛、国防のための戦争を行う権利を有しています。ただ国の「交戦権」が認めない戦争があり、これが「侵略戦争」になります。
学校におけるいじめを例にするとわかりやすい、というか個人レベルでも「防衛戦争」の覚悟があれば、いじめは跳ね返せるとは思うのですが、いじめられた個人に自らの立場、パーソナリティ、家族を戦ってでも守り抜くぞ!という覚悟や気持ちがあれば、いじめを気にして自殺することもないように思います。これは自衛権の行使、いわゆる個別的自衛権の行使になりますね。
さらにそうやって個人にとって理不尽ないじめと闘っている姿をみて、周囲のクラスメイトがそれぞれ次は私たちがアブナイのではないか、と危機感を募らせていって、クラス全体で協力していじめを排除しようという空気を作ったり、いじめとむきあう状況ができていけば、少なくとも学校でのいじめがエスカレートすることもないのではないでしょうか?
クラスの仲がよかったり、いじめはだめよ的な雰囲気が強い学級経営がされていれば、それがいじめの抑止につながります。いわゆる集団的自衛権の行使ですね。
ところが現代の義務教育段階のいわゆる「戦争教育」は、そういった意味での「自衛権の行使」や「自衛戦争」が自然なものである、正当な行為なんだという意義すら教えず、原爆投下や東京大空襲などの大量虐殺という有事社会における「戦争犯罪」を示して、戦争を全面否定する教え方しかしないために、子供たちがいざ争いごとに巻き込まれた時に、効果的な身の守り方や戦い方がわからずにつぶされてしまうケースが発生するように考えるのです。
第二次安倍晋三内閣がすすめるいわゆる「安全保障関連法案」自体に全面的に賛同できるものではありませんが、少なくとも日本人が自らの民族のアイデンティティや文化、権利を自衛するための意識をもつための転換点になるのではないか、と思います。
「戦う覚悟」なくしてどうやって個人の権利や生活、民族の誇りや伝統文化、価値感を守れるというのでしょう。
話し合い、外交はそういう「戦う覚悟」の上に戦略として存在するものなのです。
共産中国のアジアを席捲し、自国の国防圏を確立するための「政治」「外交」戦略については、以下の論文をご参照ください。
「戦いに勝つ」とは、実弾が飛び交うリアルな戦争に勝つということが本質ではありません。国益を追求、達成するために国家政治戦略があり、政治戦略を達成するために外交戦略、軍事戦略があるといえます。自国の国益追求のための手段について「敵から学んで」みましょう。
アジアにおける米国の支配を挫く中国の基本計画
岡崎研究所
2015年08月14日(Fri)http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5235
ニコラス・グヴォスデフ米海軍大学教授が、7月11日付のナショナル・インタレスト誌に「アジアにおける米国の支配を挫く中国の基本計画」と題する論説を書いています。グヴォスデフ教授の論旨は、次の通りです。
すなわち、中国の戦略目標は米国のアジア・太平洋地域へのリバランスを挫くことである。最近、ロシアのウファでのBRICSと上海協力機構(SCO)の首脳会議で、習近平は3つのアプローチを示した。
第1は、ロシアの衰退を止めること。米国の安保関係者がロシアはいまや米国の主要な脅威と言うのを中国は注目している。これは欧州への軸足移動を意味し、太平洋での米国のプレゼンスの希薄化を意味するからである。中国はエネルギーや貿易取引やロシア国債購入でロシアを助け、プーチンがウクライナでの立場を維持できるようにしている。ロシアが西側とパートナーを組み、中央アジアに米国のプレゼンスができることは中国にとり好ましくない。ウクライナ危機は、ロシアと西側の関係を決裂させ、ロシアと中国の関係を近づけた。
第2は、インドを中立に保つこと。米国のアジアへの軸足移動は、アジア諸国との連携があってこそ効果がでる。日本だけでは不十分で、インド、豪州、ベトナムやフィリピンとの協力が必要である。
インドは中国の脅威を意識しているが、米国の代わりに中国と戦う気はない。習近平はインドのモディ首相との関係に配慮し、領土問題や中国のパキスタン支持などの摩擦の原因を押さえて、インドと一時的な和解を作ろうとしている。
第3は、インドとの「上海プロセス」がうまく行けば、中国は領土・海洋紛争を外交的に解決する意思があると、アジア諸国に示し得ることである。加えて、陸と海のシルクロード構想やAIIBなどで、地域の成長・繁栄をはかり得ると説得できることである。
中露両国にとり、ウファ首脳会議は世界で地政学的変動が起こっていることを示すものになった。プーチンにとっては、ロシアは西側の言うように孤立などしていないことを示すものになった。
しかし、中国とロシアは、ガス価格で合意できず、インフラ・プロジェクトへの資金提供の問題も解決されなかった。新しい開発銀行と外貨準備金基金は合意されたが、新しいインフラ・プロジェクトの発表はなかった。
ウファでは、印パ首脳会談、会談もあった。インドとパキスタンは上海協力機構の加盟国になった。
ウファでは決定的なことは起こらなかったが、アジアでのパワー・バランスの変化への基盤が作られた。習近平とプーチンは今後の力関係について自信を付けてウファを後にしただろう、と述べています。
出 典:Nikolas Gvosdev‘China's Master Plan to Thwart American Dominance in Asia’(National Interest, July 11, 2015)
http://www.nationalinterest.org/feature/chinas-master-plan-thwart-american-dominance-asia-13310
http://www.nationalinterest.org/feature/chinas-master-plan-thwart-american-dominance-asia-13310
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この論説は、BRICS首脳会議とSCO首脳会議に臨んだ中国の意図についてよく描写しています。ロシアを更に抱き込もうとしたこと、これまで反対してきたインドのSCO加盟をパキスタンの加盟と抱き合わせで実現し、インドとの関係改善を図ろうとしたことはそのとおりです。それが米国のアジアでの軸足移動を念頭に行われたことも疑いありません。しかし、これでアジアでのパワー・バランス変化への基盤が作られたというのは、過大評価でしょう。
中ロ関係については、ロシアは、経済的苦境、国際的孤立のなか、中国のジュニア・パートナーになることへの大きな心理的抵抗を乗り越えて、中国に擦り寄らざるを得ない状況だったでしょう。しかし、中印関係については、そういう事情はなく、パキスタン問題、領土問題などを考えると、関係の改善はそう簡単にはいかないと思われます。
開発金融、インフラ金融の分野で、中国はブレトン・ウッズ体制に挑戦するようなことをAIIB設立などでしています。BRICS首脳会議やSCO首脳会議がそういうことを推進する場になってきています。ウファの会合の意味を過大評価してあわてる必要はありませんが、今後の動向にはそれなりの注意を払う必要があります。
インド、パキスタンがSCOの加盟国になったことはそれなりに重要なことです。SCOは主としてユーラシア諸国を対象とする機関でありましたが、それがインド亜大陸をも対象とすることになりました。世界人口のかなりの部分がカバーされます。インドとパキスタンとの関係に及ぼす影響を含め、その影響を幅広く考えてみる必要があるでしょう。
周辺国を味方につけ、自国の損耗、損害がでないように、経済的に密接なつながりのある国家に対してもいたづらに軍事力を行使して破壊するのではなく、国民やインフラを破壊せずに無傷で影響力を行使できる状態にしていく、戦いの在り方、戦争のスタイルそのものが変化してきたといえるでしょう。国益追求の手段が進化した、といえるかもしれませんね。
【国防討論】日本をどう守る!国防大討論[桜H27/8/1]
2015/08/01 に公開
◆日本をどう守る!国防大討論
パネリスト:
惠谷治(ジャーナリスト)
河添恵子(ノンフィクション作家)
川村純彦(川村研究所代表・岡崎研究所副理事長・元海将補)
石平(評論家)
瀧澤一郎(国際問題研究家・元防衛大学校教授)
福山隆(元陸将)
ペマ・ギャルポ(桐蔭横浜大学教授・チベット文化研究所名誉所長)
司会:水島総
パネリスト:
惠谷治(ジャーナリスト)
河添恵子(ノンフィクション作家)
川村純彦(川村研究所代表・岡崎研究所副理事長・元海将補)
石平(評論家)
瀧澤一郎(国際問題研究家・元防衛大学校教授)
福山隆(元陸将)
ペマ・ギャルポ(桐蔭横浜大学教授・チベット文化研究所名誉所長)
司会:水島総
【国防討論】日本をどう守る!国防大討論[桜H27/8/1]Ⅱ
【国防討論】日本をどう守る!国防大討論[桜H27/8/1]Ⅲ
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