2019年3月28日木曜日

共産中国の情報戦の脅威 ~「バックドア」という兵器~


バックドアとは何か?
クラッカーやウイルスがホストに不正侵入をするために作る「裏口」のことを指す。クラッカーがホストへの侵入に成功すると、次回以降は同じ侵入手順を踏まずに再侵入を簡単にする目的で、再侵入専用のサーバープログラムをそのホストに保存する。そしてクラッカーはこのバックドアを使って何度も侵入し、攻撃の足がかりにする。ウイルスが何らかの方法で自動的にバックドアを設置するという手法もある。https://kotobank.jp/word/%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%89%E3%82%A2-7382#SCII.jp.E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E7.94.A8.E8.AA.9E.E8.BE.9E.E5.85.B8
【管理人】日本人が今まで気づかなかった、というより、みようとしなかった中国共産党の情報戦のあからさまな実態が明らかになっています。国際社会では、仮想敵国の様子を知り、国家戦略の策定に役立つインテリジェンスを積み上げることは、様々な戦いを有利に進めるためにも重要な作業です。アメリカのトランプ政権の対中戦略でこれまで見過ごされてきた中国共産党の情報戦の本当の危険について、数多久遠氏の論文をご紹介することにより認識として、国民共有していければ、と思います。

ファーウェイ製品、危ないのは端末より基地局だ


バックドアが仕込まれる危険性が高い2つの場所とは

数多久遠

中国深セン市にある華為技術(ファーウェイ)の本社(201936日撮影)。(c)WANG ZHAO / AFPAFPBB News
(数多 久遠:小説家、軍事評論家)
 アメリカ政府が華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品排除を決定し、日本も政府調達からの除外を決定しました。アメリカは、NATO諸国などにも同様の措置を求めています。その背景は、米中間の「5Gの覇権争い」や「貿易戦争」であるなどと言われています。
 しかし、大前提である安全保障上の脅威がどのようなものであり、なぜ脅威が生まれるのかという点について、正しく理解されているとは思えません。筆者は自衛官時代にマイクロ通信回線の敷設や通信機器の設置などに携わったことがあります。以下ではそうした経験を踏まえて、ファーウェイ製品に潜む安全保障上のリスクについて論じていきたいと思います。
2015年に抱いた疑念とは
 私はファーウェイが中国政府ベッタリなことは相当以前から認識していましたが、この問題に本格的に注目し始めたのは、実は日本国内のある出来事に関して疑問を抱いたからでした。
 今日、日本で島嶼の防衛が注目されていますが、その最前線である離島では、自衛隊員や海上保安庁などの職員が働き、暮らしています。特に太平洋戦争の激戦地ともなった硫黄島は、今でも安全保障上の重要ポイントとなっています。
 硫黄島は、絶海の孤島です。そのため、携帯電話を使えるようにするには非常に大きなコストがかかります。利用者が支払う携帯利用料だけでは、絶対に赤字です。補助金が出ているそうですが、そんなものでまかなえるはずがありません。
硫黄島に携帯電話が開通したのは2015年でした。携帯事情に詳しい人なら、当然、携帯キャリアはドコモだろうと予想するでしょう。ドコモは、電電公社に源流を持ち、いわゆる人口カバー率だけでなく、携帯の通じない「不感地域」を極力なくすよう努力しています。田舎や山岳地での信頼性では誰しもドコモが一番だと言うでしょう。
 ドコモに続いて不感地域の解消に積極的なのはauです。そして、後発なこともあり、人口密集地での速度などを重視する一方で、不感地域をなくすとことについては二の次としてきたのがソフトバンクです。
 ところが、硫黄島に携帯電話基地局を設置して最初に携帯を開通させたのはソフトバンクでした。絶対に赤字であるにもかかわらず・・・(現在では他のキャリアも使えます)。
 なぜだろうと調べ始めたところ、ソフトバンクがファーウェイと密接な関係を持っていることを知りました。「これは小説のネタとして使えるのでは?」と思ったのが、この件に注目し始めたきっかけでした。
もしもアメリカが指摘するようにファーウェイ製品にバックドアが仕込まれているのだとしたら、硫黄島に勤務する自衛官などから情報を収集しようとしている可能性があるのではないか──。これが、私の疑念だったのです。
バックドアはどこに?
 ファーウェイのバックドア問題をネットで検索すると、「ファーウェイの携帯電話に怪しいチップがあった」といった噂とともに、「今売られている携帯自体は安全だ」というような記事も多数ヒットします。その多くは、ファーウェイが発注した記事広告(記事の体裁を装った広告)の可能性がありますが、私はこれが嘘だとも思いません。
 ファーウェイがバックドアを仕込む際、その効率、コスト、(ファーウェイにとっての)安全性を考えた際、携帯端末にバックドアを設置するのは最も非効率的だからです。携帯電話を分解することで詳細に調べられますし、ファーウェイ端末が相当のシェアを持たないと、十分な情報を入手することができません。では、バックドアを仕込むとしたら、どこが最も効率的で安全でしょうか?
1)インターネットとの接続機器
 その1つは、パケット交換機やゲートウェイと呼ばれるインターネットとの接続機器です。携帯電話とインターネットを接続するために欠かせない重要な機器であり、2012年に発生したドコモの障害や昨年(2018年)末にソフトバンクで発生した大規模障害(この時の機器はエリクソン製のもの)は、これらの機器障害が原因となっていました。
 こうした機器は現在ファーウェイがトップ企業であり、ソフトバンクは大規模に採用しているようです。そして、今後5Gではファーウェイがヨーロッパのメーカーを圧倒する可能性があるとも言われています。
 これらの機器は携帯電話とインターネットの中継点となるため、携帯やパソコンから発信された情報および逆にインターネットから携帯やパソコンに流れていく情報が全て通過します。そのため、ここにバックドアを仕込むことは非常に効率的です。機器自体が大型であり、無理に小型化する必要もないので、コストもそれほどかからないでしょう。
そして、何よりバックドアを運用する者にとって安全です。
 こうした機器は、安定稼働が絶対的に求められるので、作動状況がメーカーによって常時モニターされています。また、ログ情報なども記録されています。バックドアを設置している場合、この稼働状況のモニター情報に、バックドアから入手した極秘情報を混ぜ込んでメーカーに送ることが可能となります。
 海外では実際に、ファーウェイ製の機器から本来必要なモニター情報を上回る多量の情報が送信されていたケースが報じられています(ファーウェイは機器の稼働状況をモニターしていただけだと意に介さなかったそうです)。
 こうしたモニタリングは通信にとって不可欠なので止めさせることはできませんし、モニター内容はメーカーにとっては企業秘密であり、公開させることもできません。メーカーにしらを切られてしまえば、確認はほぼ不可能です。
 また、バックドアから入手した情報を外部に出力せず、機器のログ情報とともに保管しておき、定期的なメンテナンスの際に回収すれば、抜き取られたことを確認することさえできません。定期的なメンテナンスはファーウェイもしくは関連会社が行うしかないからです。
2)携帯電話基地局の通信機器
 バックドアを仕込む場所として効果的なもう1つのポイントは、携帯電話基地局(以下、基地局)と呼ばれるものです。
 たとえば、北海道と沖縄の間で携帯を使用して通話した際、その間を直接電波が飛ぶわけではありません。北海道から電話をかけると、まず道内で近隣のビル屋上などにある基地局のアンテナに電波でつながり、そこから光ケーブルやマイクロ送信施設を経由して、最後は沖縄にある基地局から携帯端末に電波で信号が飛ぶのです。
 この基地局も、上記で述べたパケット交換機などと同様の中継点です。よって、効果的かつ安全にバックドアを仕込める場所となります。さらには、パケット交換機などのインターネット機器と異なり、音声通話による音声も収集することが可能です。
 ここで注意が必要なのは、基地局は中継点であるため、電話をかけた側であろうと受けた側だろうと、どちらかの携帯キャリアがソフトバンクであれば必ずソフトバンクの基地局を通るということです。つまり、自分がドコモで買ったiPhoneを使用していても、通話相手の携帯キャリアがソフトバンクならば、ファーウェイ製の機器を通過する確率が高いということです(auの基地局も一部にファーウェイ機器を導入しているため、その可能性があります)。
 日本政府は政府調達からファーウェイ製品の除外を決定したため、政府要人、例えば首相の携帯電話(私物ではなく政府としての支給品)は、おそらくキャリアはドコモで、端末も日本製もしくはiPhoneなどの欧米製でしょう。しかし、上記のような危険性があるため、首相が電話する相手がどこの携帯キャリアを使用しているのか、関係部署は調べているはずです。
こうしたバックドアによる危険性はあくまで可能性があるということであり、それらを実際に行っていたとしてファーウェイが非難されているわけではありません。もし行っていれば、違法行為として訴追されているはずです。ファーウェイも絶対に行わないとアナウンスしています。
 しかし、中国政府は国家情報法によりファーウェイに「やれ」と命じることが可能です。それに従わなければ処罰されるため、中国政府が意図したらファーウェイは100パーセント実施するでしょう。
 そして、その時に備えてファーウェイはほぼ間違いなくバックドアを仕込んでいると思われます。現在は稼働していないかもしれませんが、いつ政府から命じられてもいいように準備だけはしているはずだということです。
5Gを中国に支配される危険性
 今回の排除決定によって、ファーウェイが5Gを完全に制覇する可能性はほぼなくなりました。しかし、中国と関係が強い国やヨーロッパの一部の国では、ファーウェイによって通信インフラが作られることになるでしょう。
もしも、そうした国で紛争が発生した際、中国政府が一方に肩入れして、バックドアによって情報を抜き取るだけでなく、5Gに支えられているIoTの全てを無力化することが可能となります。
 つまり、生活の全てが5Gによって支えられるであろう将来において、ファーウェイ製の通信インフラを導入することは、安全保障の命脈を中国に完全に握られることになるのです。
苦境のソフトバンク
 現状では、ファーウェイがバックドアを稼働させているかどうかは分かりません。しかし、前述したように首相に限らず政府関係者は通話相手の携帯キャリアを気にしているはずです。もし、あなたがビジネスの相手から携帯キャリアを確認されたことがあるならば、上記の波及が及んでいる証拠かもしれません。
 こうした波及を最も懸念しているのは、間違いなくソフトバンクでしょう。交換機や基地局の機器をすべてファーウェイ以外の製品にすればいいのですが、4Gでは大々的にファーウェイ機器を導入しているため、一気にこれを切り替えることは困難だとの情報が出ています。恐らく、5Gへの移行の際に他社製機器を採用し、徐々に移行させると予想されます(企業や一般利用者の「ソフトバンク離れ」が今後どれくらい出てくるかにもよると思われます)。
なお、冒頭で言及した硫黄島への携帯通話を開通させたのは、ファーウェイではなくソフトバンクです。そのため、本記事を読んで「ソフトバンクもファーウェイによる情報抜き取りに関与しているのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、筆者はその可能性はないと考えています。
 曲がりなりにもソフトバンクは多数の日本人が働く日本の企業です。社長の出自を取り沙汰していろいろ言う人もいるようですが、ソフトバンクが自分たちからファーウェイに協力するとは思えません。
 それよりも、硫黄島への基地局の設置費用やメンテナンス費用に関してファーウェイが利益度外視の見積もりを出せば、ソフトバンクは他のキャリアよりはるかに容易に硫黄島をサービスエリアとすることが可能です。2015年にソフトバンクがいち早く硫黄島に携帯を開通させた背景は、そうしたことなのではないかと推測しています。

【管理人】ソフトバンクは、一企業としてファーウェイと業務提携した、ということだけでしょう。そこを中国共産党は、戦略情報の収集のために利用したということですね。むしろ中国共産党は、国家戦略に利用するデータ収集のために自国民間企業を活用する、ということを熟知すべきでしょう。ファーウェイやZTEが元来、中国共産党の出資で設立されたという背景があれば、なおさらです。


【動画でもバックドアについて掘り下げてみましょう】

【佐藤優】身近なファーウエイのスマホもLINEもバックドアが!! https://www.youtube.com/watch?v=deV-Qs9RpS0
佐藤氏は、スマホとSNSにバックドアがしかけられているとします。
第19回セキュリティのアレ「バックドアとは?」
https://www.youtube.com/watch?v=UvI8yNoX0JQ

【関連リンク】
バックドアとは?被害例と感染経路から見る効果的なセキュリティ対策

これは、中国からの攻撃なんでしょうかね??

Windowsセキュリティシステムが破損していますの警告で”更新”を押してみた【検証動画】
https://www.youtube.com/watch?v=2h_FeDZ19l8

2019年3月24日日曜日

対中覇権に対して「軍事抑止」を準備しはじめた防衛省 ~スタンドオフミサイルの行方~


【第1章】ようやく対中防衛策の第一歩を踏み出した防衛省

最大射程400キロ以上の空対艦ミサイルを開発

北村淳
空対艦誘導ミサイル(XASM-3)。射程を400キロメートル以上に延伸する新たな開発が行われる。写真は超音速空対艦誘導弾用推進装置に関する研究時のもの(出所:防衛装備庁ホームペー
 防衛省が最大射程距離400キロメートル以上の航空機発射型空対艦ミサイルを開発する方針を決定したと報じられている(参考「『相手の射程外から攻撃可能』戦闘機ミサイル開発へ」読売新聞、など)。遅ればせながら、スタンドオフミサイル(敵のミサイルの最大射程圏の外側から敵を攻撃するミサイル)の取得に踏み切るわけである。
 日本は空対艦ミサイル(ASM)のみならず可及的速やかにスタンドオフミサイルを手にしなければならない状況に陥っているのであるから、国防当局の決定は極めて妥当であるといえよう。ただし、スタンドオフ空対艦ミサイルを日本で開発した方が早く手にすることができるのか? 輸入した方が早く手にすることができるのか? という問題は別の論点である。
直視されてこなかった中国海洋戦力の脅威
 スタンドオフASMを手に入れる決定を防衛省が行ったということは、中国海洋戦力が「張子の虎」などではなく深刻な脅威になっていることを公式に認めたということを意味する。
 中国海洋戦力が「虚仮威し(こけおどし)にすぎない」と考えたがる傾向は日本だけでなくアメリカ軍当局者たちの間にも存在していた。
中国海洋戦力の情報分析を主たる任務にしている米海軍情報局関係者の多くは、すでに10年ほど前から中国海洋戦力(海軍艦艇、空軍航空機、海軍航空機、ミサイル、海軍陸戦隊、海警局巡視船、海上民兵)が強化されている状況を機会あるごとに警告してきた。筆者が属するグループを含めて少なからぬシンクタンクなどでも、中国海洋戦力が自衛隊はもとより米海軍などにとっても極めて深刻な脅威となるとの予測分析を提示し続けきた。

しかしながら米軍当局や多くのシンクタンクなどでは、「どうせ中国の艦艇や航空機などは見せかけだけで、米海軍や米空軍と比較するにも及ばない代物に違いない」と考えられており、中国の海洋戦力が米海軍とその同盟軍にとって深刻な脅威になると分析していた「対中強硬派」の警告には、あまり耳を貸そうとはしなかった。
 何と言っても、その当時、アメリカの主敵はアルカイダなどのイスラム原理主義テロ集団であった。そのため、ワシントンDCの軍首脳や政府首脳それに政治家にとって、中国海洋戦力の脅威などは関心ごとではなかったのだ。
 そのような状況であったからこそ、太平洋沿岸のアメリカの同盟国や友好諸国の海軍が2年ごとにハワイを中心に集結して実施されている多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)」に、仮想敵海軍である中国海軍を参加させることになってしまったのである。
(本コラム2013718日「『中国封じ込め』にブレーキをかけるアメリカ海軍」参照)。当然「対中強硬派」は猛反発し、公の場で中国による対日攻撃「短期激烈戦争」の可能性まで公表するに至ったが、無駄であった(本コラム2014227日「『中国軍が対日戦争準備』情報の真偽は?足並み揃わない最前線とペンタゴン」参照)
しかし、リムパックでの中国海軍の行動や、南シナ海に人工島まで築いて軍事化を強化する動きなど、さすがのアメリカ国防当局や政府首脳も中国海洋戦力の強大化に危惧の念を抱き始めた。
さらに2017年には東アジア海域で米海軍艦艇が続けて4件も衝突事故を起こし多数の死傷者を出すに至って、アメリカの海軍力は大丈夫なのか? という危惧が表面化してきた。それと連動するように、「対中強硬派」を煙たがっていた陣営も、中国海洋戦力の強大化が「張子の虎」などと言っていられない状況に至っていることをいよいよ受け入れざるをえなくなってきたのである。
中国海軍など「張子の虎」!?

 このような米軍関係者たちの中国海洋戦力に対する認識の変化が日本国防当局が伝染したのかどうかは定かでないが、スタンドオフASMの開発という方針は、もはや現在の自衛隊海洋戦力では中国海洋戦力に対応しきれないと判断したからに他ならない。
 もっとも、中国の隣国である日本では、アメリカ以上に中国海洋戦力を「見かけ倒しの虚仮威し」とみなす、というよりはみなしたがる傾向が強い。そのような感情は、軍事音痴の多くの政治家たちや国民の間に幅広く浸透してしまっているようである。
 そのため、中国軍の新鋭艦艇や新鋭航空機をはじめとする各種装備は「アメリカの兵器の猿真似で、外観はそれらしいが、中身は空っぽのようなもので恐るるに足りない」「いくら中国が多数の戦闘機や軍艦を作り出しても稼働率が低い上、将兵の練度も低い。練度も高く稼働率も高い自衛隊の相手ではない」といった論調がまことしやかに語られ、拍手喝采されている。
 しかし、すでに中国海洋戦力の脅威を真剣に直視し出した米軍関係者やシンクタンクなどでは、「中国軍艦や中国軍用機の稼働率」あるいは「中国軍将兵の練度」などが話題に上がることは皆無に近い。
かつて日本と戦った際、「猿真似の日本軍戦闘機などまともに飛べるのか」とバカにしていたマッカーサーの米フィリピン防衛軍は日本軍に完膚なきまでに叩きのめされ、米軍史上最大の敗北を喫した。このような歴史の教訓をもとに、米軍では敵の稼働率や練度などは米軍と同等と考えているのだ。
それでも「攻撃兵器」などと言っていられるのか
 スタンドオフASMの開発に踏み切る日本国防当局の方針に対して、おそらく日本では、またぞろ長距離ミサイルなどは「周辺諸国に脅威を与える」「専守防衛に合致しない攻撃的兵器だ」といった批判が向けられるであろう。
しかし、そのような批判を口にする前に、2020年のオリンピック・パラリンピック終了時期における日中の戦力差を直視すべきである。その頃、日本の航空自衛隊の戦闘機保有数はF-35A20機ほど、F-287機、F-15J(近代化された機体)が102機、F-15J(近代化できない機体)が99機、合計308機である。それに対して中国軍は、空自の近代化できないF-15Jと同等以上の性能を有する戦闘機(戦闘攻撃機、戦闘爆撃機を含む)を空軍が少なくとも898機、海軍が少なくとも320機、合計1218機以上保有していることになる。
 現代戦では重要性が著しく高まっている無人航空機に関しては、中国軍と自衛隊では比較することすらできない状況だ。現代の国際標準では軍用無人航空機とは呼べないレベルの無人ヘリコプターしか保有していなかった自衛隊は、ようやく無人航空機の重要性に気がつき、アメリカから無人偵察機グローバルホークを3機調達することになった。これに対して中国では数百社にのぼるベンチャー企業が無人航空機の開発と売り込み競争を繰り広げており、中国軍は少なくとも6000機以上の無人偵察機と無人攻撃機を保有している。
 戦闘機や無人機だけではない。早期警戒機、電子戦機、空中給油機、爆撃機、それに潜水艦、攻撃原潜、航空母艦、中国版イージス駆逐艦、ミサイルフリゲート、高速ミサイル艇などが航空自衛隊や海上自衛隊の戦力を圧倒しているだけでなく、日本各地を灰燼に帰すことができる長距離巡航ミサイルと弾道ミサイルを6000発以上手にしているのだ。
中国軍による対日短期激烈戦争の概念図
 このような状態でも、スタンドオフASMの開発が「周辺諸国に脅威を与える」「攻撃的兵器」などと本気で口にすることができるのであろうか?
防衛省の方針はベストな方策の1
 すでに中国軍に大差をつけられてしまっている軍用機や軍艦の戦力を挽回し、逆転するにはかなりの年月と莫大な予算が必要だ。その間、中国海洋戦力の脅威に対抗するためにベストな方策の1つは、今回防衛省が打ち出したスタンドオフミサイルを身につける方針である。
 ただし、スタンドオフASMだけでは、戦闘攻撃機数がわずか87機と少ないために、不十分である。陸上自衛隊にもスタンドオフ地対艦ミサイルを装備させ、海上自衛隊にもスタンドオフ艦対艦ミサイルを装備させ、国防当局が打ち出したスタンドオフミサイル戦力を身につける方針をより徹底して実施していくことが急務といえよう。

【管理人より】「相手(仮想敵国)に脅威を与える」兵器装備でなければ効果的な「抑止力」にはなりません。
軍事兵器の性能だけの問題ではなく、要は優れた軍事兵器を担保にして、いかに政治、外交に活用するのかが重要であると思います。
共産中国(人民解放軍)や朝鮮人民軍を侮るなかれ。
軍事組織は、兵器の性能よりも、持てる兵器装備を活用してどのような合理的な戦術を駆使してくるのか、厳正な規律を保持徹底できて、一貫した行動をとることができるのか、が強さの基準になるかと思います。我が国自衛隊は、なぜか「国防軍」というネーミングを許そうとすると意味不明な批判が国会で起きてきて案がつぶされますが、国防軍として必要な規律や軍事組織としての行動は備えています。そう信じたいです。組織として完結した軍隊は、そう簡単に崩れません。
必殺技(戦闘ドクトリン)の研究、開発を怠らない。
かつて戦国時代の風雲児といわれる織田信長は、有名な桶狭間の戦いの前哨戦である村木城攻撃の際に、当時新兵器の火縄銃を連続射撃で攻城兵器として運用するドクトリンを開発し実践していました。それから時が経ち、武田勝頼と雌雄を決することとなる長篠の戦いにおいて、信長は火縄銃を攻城兵器としてだけでなく、陣地防御としての運用(防御兵器」として運用するドクトリンを開発して挑んでいました。
どんなに優れた戦闘ドクトリンでも、時代によって「賞味期限」があるものです。いつも同じやり方で確実にターゲットを始末できる必殺仕事人のようにはいかないでしょう。いつも新しいアイディアを出し合い、研鑽を重ねることが不可欠となります。


【第2章】国防のための重要なチョークポイントとなる宮古島の「軍事要塞化」をめぐるジレンマ
宮古島の軍事要塞化に募る懸念 有事に「島中が敵の標的」リスクも
2019/03/21 17:00
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/宮古島の軍事要塞化に募る懸念-有事に「島中が敵の標的」リスクも/ar-BBV2sn9?ocid=spartandhp


© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 3月中に開所する上野野原の隊庁舎では、軟弱地盤や空洞が見つかっている(撮影/ジャーナリスト・桐島瞬)
 宮古島への陸上自衛隊配備が20193月中に始まる。だが島が軍事要塞化していくことへの島民の懸念は消えない。
*  *  *
32日、平良港に100台ほどの陸上自衛隊車両と50人ほどの隊員を乗せた船が入ってきました。いよいよ来たかという感じです」
 宮古島への陸自配備に反対する市民で作る「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子事務局長は、怒りを含んだ声でそう話した。
 沖縄は名護市辺野古だけでなく、宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている。宮古島など南西諸島への陸自部隊配備は、201312月に閣議決定された防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で打ち出された。中国の海洋活動の強化や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動きを念頭に、空白地域となっている南西諸島に部隊やミサイル配備を進めるのが狙いだ。
 計画では、奄美大島、宮古島、石垣島に、警備部隊、地対艦(空)誘導弾部隊を合わせて合計2千人規模で配備を進める。このほか与那国島には、すでに163月から160人規模の沿岸監視隊が置かれている。
 宮古島に造られるのは2カ所の施設だ。島の中央部に近い上野野原に隊庁舎、東側の保良鉱山跡地に弾薬庫や射撃訓練場を置く。このうちの隊庁舎がほぼ完成し、今月26日には開所式が開かれる予定だ。
 だが、問題も多い。防衛省が調べた建設現場の土質調査結果を琉球大学工学部の複数の研究者などが分析したところ、地盤の硬さを示すN値がゼロでマヨネーズ状だと分かった。同じ軟弱地盤は、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古の建設現場でも表面化し、改良工事を行うことが決まったばかり。
 土質調査資料を分析した土木技術者の奥間政則氏が説明する。
700トンの燃料保管施設が置かれる地下部分に、軟弱地盤と空洞が見つかりました。島には活断層が走り地震が多いため、揺れで施設が傾くなどのリスクがある。島の水源は地下ダムですが、地震で燃料タンクが損傷して油漏れが起これば、深刻な影響を及ぼすことになります」
 また、これから工事が始まる保良地区では、防衛省の住民説明会が行われるより前の1712月に部落会が建設に反対する決議を出している。昨年11月には防衛省との間で交渉が行われたが、納得できる説明は得られなかった。保良地区で基地に反対する住民の会の活動をする下地博盛氏が言う。
「基地から保良の集落まではわずか200メートルほど。弾薬が暴発したら住民が身の危険にさらされます。ところが、防衛省に弾薬の保管量や集落との安全が保たれる保安距離を尋ねても『機密に触れるから具体的な内容は言えない』の一点張り。建設容認など到底できません」
 さらに清水氏は、島の軍事要塞化に危機感を募らせる。
「内閣府は平良港を大型クルーズ船が接岸できるよう整備することにしましたが、これは米軍の護衛艦が接岸できるようにするためだとも言われています。上野野原の隊庁舎には弾薬を保管することも最近分かりました。軍事施設が広がれば有事の際に島中が敵の標的になる。建設容認派は声を上げても変わらない現状に諦めただけで、本音は反対の人が多いのです」
 一方、防衛省は軟弱地盤について、「関係法令に基づいて適切な建設工事をしている」と安全性を強調。隊庁舎の弾薬庫は「警備に必要な小銃弾などを安全に保管するための保管庫。誘導弾を保管する弾薬庫は整備しない」(報道室)と話す。
 沖縄県議で宮古島の自衛隊配備の問題に取り組む亀浜玲子議員が言う。
「防衛省は当初、造成工事だけ進めると話していたが、納得いくような住民説明もしないまま結局は基地を造ってしまった。建設ありきのこうした姿勢を許すことはできません」(ジャーナリスト・桐島瞬)AERA 2019325日号
【管理人】今時誰だってリアルな戦争などしたくないし、家の近所に軍事施設ができるとなると小さからず不安がわきおこるものでしょう。この宮古島の場合が自衛隊・防衛省ですから、原発の場合と同様に基地を作るなら、見返りをもらってもバチはあたらないでしょう。





2019年3月19日火曜日

あらためて「サイバー攻撃」の脅威

 今回は、読売新聞の記事から引用しながら、我が国におけるサイバーセキュリティについて思いを馳せてみたいと思います。我が国は世界の中でみても「技術大国」「経済大国」としてみられている側面が多分にある国です。確かに民間業界における製品技術や経営手法など形のないものにまで、海外から注目される技術は少ないくないかと思いますが、だからこそそれを非合法な手段で窃取する輩が後を絶たない現状があります。

世界では「持っている国は狙われる」のです。


サイバー攻撃の脅威 
~官民連携で防御態勢を築け~

インターネット空間で中央官庁や自治体、民間企業は激しいサイバー攻撃にさらされている。

2017年には、ランサムウェア(身代金)と呼ばれるウイルスが世界中に拡大し、日本でも病院や鉄道、銀行、大手企業が一時的な操業停止などの被害に遭遇した。
政府機関への攻撃は、年間700万件に達している。

政府は近く国と自治体、電力、鉄道、空港などの重要インフラ事業者で作る「サイバーセキュリティ協議会」を設置する。サイバー攻撃の情報を官民で幅広く共有する初の試みである。

参加者に守秘義務を課し、被害を受けた企業が、攻撃された手口を明らかにしやすいようにする。同様の手法による被害の拡大を防ぐことにつながるだろう。

政府や企業が攻撃を探知した場合に、即時に警戒情報を発出し、共有するシステムも検討する。多様な機関が相互に連携し、適切な措置を講じる意義は大きい。

司令塔となる内閣サイバーセキュリティセンターは、欧米各国との情報交換などに基づく知見を企業に提供し、対策作りを主導しなければならない。

様々なものとインターネットがつながるIOTが普及し、身近な機器が情報窃取に悪用されかねないことにも留意が必要である。

政府は2019年度から情報通信機器の調達について、安全保障を考慮した契約方法に改める。不正行為への関与が疑われる中国企業の機器を排除する狙いがある。

重要インフラの事業者に対し、安全保障上の懸念がある企業の部品を使用しないよう促す方針である。サイバー攻撃で通信や金融の機能がマヒすれば、影響は計り知れない。政府の対応は妥当であろう。

6月には主要20ケ国・地域(G20)首脳会議、9月にはラグビーワールドカップ、来年2020年は東京五輪と大きな催しが続く。関係機関が協力し、円滑な運営を目指さなければならない。

自衛隊の情報通信網の強化も急務である。専門人材の育成と確保に努めるとともに同盟国であるアメリカとサイバー空間でも協力しあえる環境を整える必要がある。

防衛省は、エストニアにある北大西洋条約機構(NATO)サイバー防衛協力センターに職員を派遣した。サイバー空間の国際ルールの策定にむけ、日本は主体的な役割を果たすべきである。

サイバー攻撃の深刻な脅威から社会や経済のシステムを守る必要がある。政府は態勢構築を急がなければならない。(記事出典:読売新聞2019318日㈪朝刊より)

〈管理人〉生き馬の目を抜くような世界情報大戦の時代に勝つために

高度な情報戦の時代になり、世界は「第三次世界大戦」は光ファイバーケーブルの世界でおきているようなものです。我が国も国民が必死になって働いて創出したアイディア、技術を外国からのハッキングによって奪われる事例が後を絶ちません。
 サイバーセキュリティの体制を強化していくことは、今後の情報大戦への生き残りをかけて不可欠なことですが、サイバー攻撃は「攻める側が圧倒的に有利」という状態は変わっていないように感じます。

 共産中国がいわゆる政府や企業を狙ってスパイ行為をしている「諜報戦国家」であることは今や白日の下にさらされました。台湾の企業が北朝鮮へIT支援をしている実態もあり、親日国だから油断できる状態でもありません。

 我が国政府が自国民間企業に安全保障上懸念のある企業の製品を使用しないよう促すだけではなく、政府機関が特定民間企業と連携して諜報活動を展開する、政治的なインテリジェンスを収集していく体制の確立、官民共同の「攻めの情報戦体制の確立」まで踏み込む必要が不可欠なのではないか、と感じます。

我が国政府は2019227日に第3回の「日印サイバー協議」を開催し、次世代通信規格である5Gについてのサイバー攻撃への対策についてインドと連携していく方針を固めることとなった。狙いは共産中国の華為やZTEなどの製品への安全保障上のリスクを共有し、インド市場を共産中国製品が席捲するのを防止することである。


【衝撃】世界で最も危険なハッカーTOP8
https://www.youtube.com/watch?v=tchjsmNmYE8


ロシアでは「フェイクニュース禁止法案」可決される

ロシアの下院で、インターネット上のフェイクニュースを禁止する法案が可決された。
法案は201937日にロシア下院を通過し、13日に上院において審議が行われ、その後プーチン大統領の署名を経て成立する。

 法案は、社会秩序や治安、ロシア国民の生命、財産に害をもたらす「不確実な情報」をネット上で発言したり、拡散したりすることを禁止している。

 情報がフェイクにあたるかどうかは検察当局が判断を行うことになる。違反すれば法人は最大150万ルーブル(約250万円)、個人は40万ルーブル(約70万円)の罰金が科せられることになる。対象のWEBサイトやSNSは、通信監督当局によって接続を遮断される。
 新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアの報道は対象外となるが、ロシアの有力メディアからも批判の声があがっている。経済紙ペドモスチは、政府に批判的な声を報じるオンラインメディアの報道がフェイクニュースと認定されてしまう恐れがあると伝えた。

 ロシア下院では、同時にロシアの社会や国家、国家の象徴に対するネット上の侮辱を禁止する法案も可決された。「国家の象徴」にはプーチン氏も含まれるという。違反すれば最大15日間拘留される可能性がある。
 プーチン政権はネットの監視を強めており、当局が国内のネットワークを国外から遮断できるようにする法案も審議中である。

 アメリカ誌フォーチュンの電子版によるとフェイクニュースの取り締まりを口実に言論を締め付ける動きはエジプトやマレーシアでも進んでいる。(記事出典:読売新聞2019310日号より)


ロシアではフェイクニュースは「戦略兵器」

〈管理人〉ロシアは「フェイクニュース部隊」が存在するほど、フェイクニュース自体を戦略兵器として位置付けている国です。クリミア併合などは典型例であり、フェイクニュースで獲得したといっても過言ではありません。
 この法案の趣旨はシンプルではないでしょうか?
要は「戦略兵器」であるフェイクニュースをロシア国内から政府にむけてしかけられることを予防する目的があるのでしょう。外国からのフェイクニュースについては、ネットワークの遮断で対抗するということ。
 フェイクニュースは、国家の中枢にしかけられるサイバー攻撃の一形態です。うまく国家戦略に活用できれば有効な武器となりますが、逆に政府内部に外からしかけられると大変な脅威となります。その自衛策を先んじて講じているとみられます。
 我が国のサイバーセキュリティの強化はこうしたフェイクニュースやネットのヘイトスピーチといったサイバー攻撃からも自衛していかなければなりません。
 まさに官民共同の防衛体制が絶対に不可欠です。



2019年3月15日金曜日

「第二次中越戦争」の様相を呈する南シナ海  米朝首脳会談後に一体化が進む米陸軍・海兵隊&陸上自衛隊


【第1章】

中国船、もはや遠慮なくベトナム漁船に体当たり

中国が生きた手本を示している島嶼奪還の困難さ

北村淳
南シナ海に中国が設置した石油掘削施設近くで、ベトナムの船舶に接近する中国の海警艦を監視するベトナム海洋警察(資料写真)。(c)AFP/HOANG DINH NamAFPBB News

 西沙諸島のディスカバリー礁(華光礁)周辺で操業していたベトナムの漁船が、201936日、中国船に衝突されて沈没した。ベトナムのメディア(Tuoi Tre)によると、漁船に乗っていた5名は漁船の残骸にしがみつき2時間ほど海面を漂っていたところをベトナム漁船によって救助されたということである。
 中国側メディア(中国共産党新聞網)が伝えた中国外交当局者の発表によると、ベトナム漁船から救難信号を受信した中国公船が直ちに現場海域に急行したところ、ベトナム漁船が沈没しつつあったため、中国の海洋捜索救難センターに通報し、中国救助船が派遣されたということである。
 中国当局は、5名のベトナム漁民は救助されたとしているが、ベトナム漁船と衝突した船についての情報や、ベトナム漁船を救助したのは中国救助船なのかベトナム側の報道のようにベトナム漁船なのか、などの詳細については明言していない。
多発する衝突事故
 西沙諸島海域、そして南沙諸島海域でのこの種の衝突事故による沈没事故は近年増加しているという。ベトナム漁船が中国船に衝突されて沈没した事例はしばしば報道されている。だが、報道されている事故は氷山の一角に過ぎない。ベトナムからの留学生(軍事情報研究のために渡米している)が米海軍関係者に語ったところによると、「毎週のように衝突事件が繰り返されていると言っても過言でない状況である」ということだ。
西沙諸島や南沙諸島での領域紛争で軍事的優勢を掌握しつつある中国当局は、これらの海域で海上民兵が操船する漁船を多数操業させ、ベトナム漁船やフィリピン漁船などに脅威を与えている。
 アメリカ海軍などが3の海軍と呼ぶ海上民兵たちは、南シナ海での中国の主権を守る任務に従事することが、自らの漁業権益を確保することに直結するため、積極的に任務を遂行することになるのだ。
 そして海上民兵の漁船群の周辺には、2の海軍である中国海警局の各種巡視船が「安全操業の確保と違法操業の監視」に当たっている。それらの周辺は、1の海軍である中国海軍艦艇が警戒監視に当たっている。
 それだけではない。西沙諸島のウッディー島(永興島)、南沙諸島のファイアリークロス礁(永暑礁)、スービ礁(渚碧礁)、ミスチーフ礁(美済礁)には航空基地が設置されているため、海南島や中国本土から飛来する中国海軍機は心置きなく南シナ海の警戒監視活動を実施できるような状況になっている。
ディスカバリー礁(華光礁)とウッディー島(永興島)の位置
 このように、南シナ海における中国の圧倒的な軍事的優勢がほぼ確立している。そのため、西沙諸島や南沙諸島で毎週のように繰り返されている衝突事故は、報道されないどころか報告すらされない状態になりつつあるとのことである。
なぜならば、ベトナム当局が中国側に強く抗議すると、さらに衝突事故が頻発する結果となってしまうからだ。政府間の対応は八方塞がり状態に陥っているというわけだ。
静観するしかないベトナム当局
 実際にベトナム漁船と衝突事故を起こすのは中国公船ではなく民間の漁船である。その漁船が海上民兵によって操船されていても、偽装漁船でも軍艦でも公船でもなく、あくまでも漁船である。したがって、ベトナム当局が中国側に抗議しても、漁船同士の衝突に関して中国政府には責任はないと言われればそれまでだ。
 おまけに強行に抗議するとさらに衝突事故が起きてしまうため、ベトナム側としては衝突事故を表沙汰にして騒ぎ立てても無意味どころか逆効果である。結果的に静観するしかなくなってしまっているのだ。
もちろん、ベトナム側が中国の海洋戦力に痛撃を加えられるレベルの海洋戦力を保持していれば、中国側としてもベトナム漁民を圧迫する作戦は差し控えざるを得なくなる。
 だが、ベトナムの戦力は地上軍に偏重している。ベトナムは陸続きの中国からの軍事侵攻に備えて比較的強力な地上軍(ベトナム陸軍、国境警備軍)を備えている。中国軍としても、そう簡単にベトナム軍を打ち破ってベトナムに進行できるとは考えていないはずだ。しかしながら、西沙諸島や南沙諸島のように海域で作戦行動を実施する海洋戦力となると、ベトナム側が圧倒的に劣勢であり、手も足も出ないという状態に近いのだ。
島嶼の奪還は至難の技
 1974年に南ベトナム海軍と中国海軍が戦闘を交えて中国側が奪取した西沙諸島は、それ以降、中国による実効支配が続いている。西沙諸島の中心となっているウッディー島(永興島)には軍事拠点だけでなく中国の領域である南シナ海の行政を司る政庁まで設置されており、中国の領土としての体裁が完全に整っている。
 このような状況でベトナムが西沙諸島の主権を取り戻すには、再び中国海軍と戦闘を交えて、力づくで奪い返すしか方法はない。しかし、比較することすら無駄なほど海洋戦力に差が生じてしまっている現状では、そのような可能性はゼロに近い。
西沙諸島での事例は、日本にとって決して対岸の火事ではない。西沙諸島や南沙諸島にしろ尖閣諸島にしても、また中国との間に限らず竹島や千島列島にしても、ひとたび島嶼を完全に占領されてしまうと、それを取り戻すには軍事力を用いて奪還する以外には方法がない。その現実を、中国は南シナ海で、日本をはじめとする国際社会に教示しているのだ。
 そして、島嶼奪還のための戦闘が極めて困難な軍事作戦となるのは必至である。島嶼周辺に限定された局地戦には留まらずに全面戦争に発展しかねないことを覚悟しなければならないのである。
〈東シナ海尖閣諸島沖合 中国漁船衝突事案〉~あの時と同じだぜ~
※何度見ても腸が煮えくり返る場面です。共産中国の「海上民兵」の手口(戦術)ですね。

〈管理人より〉
平成22年の時の東シナ海で我が国海上保安庁の巡視船に中国漁船が体当たり攻撃をしてきた事例が毎日続いていると考えていいですね。
あの時勇気ある海保の職員がとった行動が、時の民主党政権を狼狽させ、共産中国のごまかしを白日の下にさらしました。非軍属を使った海洋侵略の手口は共産中国の常套手段であるということを世界中肝に命じるべきでしょう。
南沙諸島をめぐる「第二次中越戦争」とでも呼んでもいいような海洋有事に対して、海上民兵という非軍属を使って平然と侵略戦争をしかけてくる共産中国に対して、どうベトナムの国益を守るか?
元海保職員の一色氏が東シナ海漁船衝突事案の時に義憤にかられてとられた行動を思い出してみましょう。「インターネットへの情報公開」です。相手国の軍隊に効果的反撃をさせることなく侵略するためには、民間人を活用してくる、という共産中国の侵略戦争の実態を動画におさめてネット動画に投稿していきましょう。相手に言い訳させずにおいつめるのです。共産中国に対しては、情報公開という手段を効果的に駆使した「情報戦」で勝利せよ! 共産中国にファイナルカットを突きつけていきましょう。

共産中国の身勝手な覇権侵略に対して私たちは何ができるというのでしょうか?
中国と粘り強く戦うベトナム、日本ができること
岡崎研究所
2018615http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13023
閉じる
岡崎研究所 (おかざきけんきゅうじょ)
[執筆記事]
2018531日、安倍晋三総理は、国賓として来日中のベトナムのチャン・ダイ・クアン主席と日越首脳会談を行い、その後、日越共同声明が発表された。42項目、約8頁にわたる様々な分野における日越協力を記した共同声明のうち、特に、安全保障分野に関する主要点を紹介する。

海洋国家、日本とベトナム
・両首脳は、日本とベトナムが海洋から非常に貴重な恩恵を受けている海洋国家で あることを認識しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持及び強化を通じて、地域において平和、安定及び繁栄を確保するために協力する決意を共有した。 
・両首脳は、日本国海上保安庁の船艇の寄港等を通じ、海洋安全保障協力を更に強化することを確認した。安倍総理は、ベトナムの海上法執行能力の向上のための支援を継続する日本の意図を表明した。クアン国家主席は、日本による中古及び新造巡視船の供与を高く評価した。安倍総理は、ベトナム側の具体的な要望を踏まえ、総合的な海洋政策についての日本の知見及び経験を共有する用意がある旨を表明した。 
・両首脳は、南シナ海における情勢に対して引き続き懸念を示した。両首脳は、 平和、安全保障、安全並びに航行及び上空飛行の自由の維持、自制及び法的・外交的プロセスの完全な尊重を通じた海洋における紛争の平和的解決、海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)を含む国際法の尊重、並びに南シナ海に関する行動宣言(DOC)全体の完全かつ実効的な履行の重要性を改めて表明した。両首脳はまた、非軍事化の重要性を強調し、現状を変更し、又は南シナ海における状況を複雑化させ得るいかなる一方的行動もとらないよう関係国に求めた。両首脳はまた、南シナ海行動規範(COC)に関する交渉の進展を認識し、包括的かつ実効的なCOCの重要性を強調した。両首脳は、地域の平和及び安定を確保するため、このような外交的取組がUNCLOSを含む国際法の完全な遵守及び平和で安定した南シナ海の実現につながる べきであるとの認識を共有した。 

「自由で開かれたインド太平洋戦略」

・安倍総理は、日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」につき説明した。両首脳は、インド太平洋地域及び世界における法の支配、平和、安定、協力及び繁栄を確保するため、国連憲章及び国際法の遵守並びに国家の独立及び主権の尊重に基礎付けられた自由で開かれた秩序の重要性を強調した。両首脳は、この目的に資する貢献及び取組を歓迎した。安倍総理は、日本がその外交政策においてベトナム及びASEANを重要なパートナーと考えていることを再確認し、協働していくためにベトナム及びASEANを支援していく日本の意図を新たにした。 

北朝鮮問題

・両首脳は、2018年4月に開催された南北首脳会談を含む、朝鮮半島に関する諸懸念の包括的な解決に向けた、最近の前向きな進展を歓迎した。両首脳は、国際的な協力及び関連する国連安保理決議に基づく義務の完全な遵守の重要性を強調するとともに、地域と世界の平和、安全、安定、協力及び発展のため、関係当事者が朝鮮半島の完全な、検証可能な、かつ不可逆的な非核化を含む課題の平和的・外交的解決 を目指す取組を継続することの緊急性を確認した。両首脳はまた、拉致問題を直ちに解決するための協力を強化することに対するコミットメントを再確認した。 

幅広い分野の防衛協力

両首脳は、両国の防衛大臣により201110月に署名された「日本国防衛省 とベトナム社会主義共和国国防省の間の防衛協力及び交流に関する覚書」及び2018年4月に署名された「日本国防衛省とベトナム社会主義共和国国防省の間の次の10年に向けた日越防衛協力に関する共同ビジョン声明」に基づき、防衛分野における協力を強化する意図を共有した。両首脳は、日本国自衛隊の艦船及び航空機のベトナ ム訪問を含む軍種間交流を強化し、人材育成、防衛装備品・技術、航空機による捜索・救難、防衛医学、国連平和維持活動、サイバーセキュリティ、人道支援・災害救援等 の分野における協力を促進することで一致した。
【上記出典:外務省「クアン・ベトナム社会主義共和国国家主席の国賓訪日の際の日ベトナム共同声明 」、2018531日】
 今回のベトナムのクアン主席の国賓としての来日は、昨年の天皇皇后両陛下のベトナムご訪問を受けての返礼でもあり、また日越外交樹立45周年の祝賀の意味合いもあった。
 日本は、自由で開かれ、国際法秩序に基づく海洋を維持するという普遍的価値を米豪英仏等と共有している。そして今、この価値観とヴィジョンを、ベトナムとも共有する。南シナ海で中国と領有権を争っているベトナムであるが、中国は一方的に人工島を建設し、そこを「防衛」という名目で軍事化している。中国を刺激しないように、「中国」という固有名詞こそ上げないが、中国を意識して、日本がベトナムを支援し、ベトナムも日本に感謝していることは、明らかである。
 ベトナムは海洋のみならず、陸でも中国と国境を接している。かつて中越国境紛争もあった。ある時、ベトナムの外交官が話してくれた。山にある中越国境線上に「平和の門」が設置された。中国とベトナムそれぞれの兵士が監視していたが、中国は、毎日、その「平和の門」を少しずつベトナム側に移動させてくる。すなわち、中国は、徐々に徐々に自国の領土を広げてきた。ベトナム側は、負けじと毎日、その「平和の門」を元の位置に戻したと言う。この話を聞いたのは確か1998年頃であり、今より約20年も前である。ベトナム人は辛抱強いのだろう。そして、おそらく、ベトナム戦争で大国の米国を「名誉の撤退」に追いやったように、大国に対しても毅然と戦う粘り強さを持ち合わせているのだろう。

 日本は、そのベトナムを様々な角度から支援している。特に、南シナ海をめぐる海洋安全保障の分野では、すぐに軍事衝突にならないように、海上保安庁の役割が大きくなっている。以前、ベトナムの海上警察はベトナム海軍に入っていたが、それを別組織にして海上保安庁のような組織を創設することは、日本が知見を与えたものである。巡視艇供与はハード面の支援であるが、こういうアイデアを出すというのは、目に見えにくい日本のソフト・パワーであろう。今後も、日本の海洋大国としての知見や経験は、インド太平洋地域の中小諸国に、多々役立つことだろう。そうすることで、国際社会が求める「自由で開かれた海洋」が保たれるのだろう。

【第2章】

脱韓国へ、対中作戦で米陸軍・海兵隊が陸自と一体化

米朝首脳会談後の大きな変化、喫緊に求められる日本の複眼思考

用田 和仁
比首都マニラの北方に位置するサンバレス州サンアントニオで行われた合同訓練で、南シナ海に面した海岸を走行する自衛隊の水陸両用車(2018106日撮影)。(c)TED ALJIBE / AFPAFPBB News

1 日本の生死に無関心でいいのか

 2回目の米朝首脳会談が終わっていろいろな議論があるが、日本では米朝首脳会談が失敗か成功かの論評ばかりが語られ、そこを起点として日本はどう朝鮮半島情勢に対応していくのか、どう中国に立ち向かっていくのかの具体的な議論がなされないのは残念だ。
 相変わらず国会は日本にとって死活的重要なアジア情勢について深く分析し、対応手段を講じようとしない。
 政治家も国民も、米国の庇護の下、この国は未来永劫続くと思っているのならば大きな間違いだ。このような時に必要なのは、複眼思考である。
2 米朝首脳会談の成果とは何か
 米朝首脳会談を評価するうえで、絶対に外してはならないことがある。
1つは、どんなに北朝鮮が騒いでも、北朝鮮問題はインド太平洋地域で起きている米中対決の「前哨戦」に過ぎず、「本丸」は中国だという複眼思考である。
 そして、進行中の朝鮮半島情勢が、混沌とした日清戦争前の状況に近づきつつあるとの認識だ。
 2つ目は、我々は預言者ではないということだ。
 将来を見通すときは1つのシナリオでなく、幅を持った複眼思考で将来を捉える必要がある。そして変化に応じプランAからプランBへ変化させていくことだ。その切り替えが難しい。
 その視点から考えると1回目の首脳会談の最大の成果は、前哨戦たる北朝鮮対処一辺倒から、「本丸」中国対処に米国が本気になり、大きく舵を切ったことである。
 米国が北朝鮮対処に忙殺されている間に、中国は201710月の中国共産党大会で、新たな目標を設定した。
 これまで中国は、2020年までに東・南シナ海を排他的に支配し、2050年までに太平洋を2分割して米国から覇権を奪うことを目標としてきた。
 その中間の2035年までに西太平洋における軍事覇権を確立するとの目標を設定したものであり、その意味するところは極めて重大である。
また、20186月の中央外事工作会議で中国独自の価値観やシステムに基づいて新たな国際秩序を作ると宣言し、中華民族の支配の下、世界に運命共同体を作ると宣言した。
 これに対し米国は、大国間競争の時代に入ったとの認識を前提として国家安全保障戦略(201712月)や国防戦略(20181月)を策定し、まずその手始めとして中国に対して貿易戦争を開始したのも第1回米朝首脳会談の結果を反映していると見ることができよう。
 2回目の首脳会談の成果は、現時点において、北朝鮮は核ミサイルの開発計画を全面凍結する意思がないことが国際社会に明白にされたことであり、金正恩労働党委員長が裸の王様で、国際情勢を正しく理解していなかったことが白日の下に晒されたことである。
 また、今回はお友達感覚でトランプ大統領を籠絡することができるだろうと高をくくっていた認識をへし折り、米国と北朝鮮の格の違いと軍事力や情報の圧倒的な差を再認識させたことだろう。これでまた金正恩は、米国の軍事的脅威の前に立たされることになるだろう。
確かに北朝鮮の非核化の時期は遅くなっただろう。
 しかし、トランプ大統領は、国際社会に北朝鮮が核を真剣に放棄せず、時間稼ぎに入ったことを説明する必要はなく、改めて米国の選択肢に軍事行動を含めることができるようになる。
 今後の展開において、トランプ大統領は韓国に遠慮することなく、北朝鮮が米国はまさか情報を掴んでいるはずがないと考えていた軍事施設を奇襲的に攻撃し、金正恩を強制的に成果のあるテーブルに付かせることもあり得よう。
 一方、トランプ大統領のトップダウンのやり方は、複雑な核廃棄交渉には向かないとして事務レベルに落として詰めの作業から入るべきとの意見もあるが、それは時間稼ぎをしたい北朝鮮や中国の思惑通りになってしまう。
 独裁国家である北朝鮮や中国にはトップダウンで打開をしていかなければ決して解決には結びつかない。日本人流の安易な考えは捨てるべきだ。
3 2回目の会談の負の遺産
 もちろん、負の遺産も明瞭になってきた。
 第1に、米国は、北朝鮮にすり寄り、日本との問題を大きくする韓国を見限ったかもしれない。
 20191月、文在寅大統領政権発足後初めて発表された韓国の国防白書では、「北朝鮮は敵」の文言が削除され、対北朝鮮作戦における「大量反撃報復(KMPR)」などの用語も消えた。
 そのような韓国は、もはや米韓同盟の継続を望んではいないと考えられても仕方があるまい。

今後は米海空軍に対する反撃能力を持たない北朝鮮に対しては、軍事的合理性に基づき海空軍を主体とした打撃を柱にするつもりだ。
 従って、在韓米陸軍はいずれ撤収するし、この流れを止めることはできないだろう。
 朝鮮戦争前に米国がアチソンラインという防衛線を日本と朝鮮半島の間に引いたが、それが復活する。そして、日本の防衛は、南西諸島に引き続き、五島列島、対馬にその防衛拠点を拡大しなければならない。
 第2は、核兵器は依然として北朝鮮に残る可能性があるし、また、短・中距離ミサイルの廃棄までは進まない可能性が大きい。しかし、米国を責めても何の意味はない。
 そもそも日本の防衛を他人事として、米国による核の持ち込みすら拒否する日本の態度や、防衛に十分な投資をしなかった日本の責任である。
 北朝鮮や中国に対して日本のミサイル防衛を根本的に解決するには、すでに何度か書いてきたが(「中国の日本侵略への備えを明確にせよ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55316)、防衛大綱にあるサイバー・電磁波兵器(マイクロウエーブ兵器、電波妨害兵器)の早急な開発・装備化・日本全土への展開しかない。
 これが主でありミサイルは最終手段としての従の手段である。
 第3は、2回目の会談にかかわらず極めて大切なことだが、北朝鮮と本丸中国を同時に視界に入れながら、日本防衛を考えなければならないということだ。
 特に複眼思考を持たない日本は、米国が中国に対して本気で戦いを挑んでいるのに対し、日本があたかも第三者として米中の仲介役を気取っているように映ることは、米国をいら立たせることになろう。
再三、中国の軍艦(公船は軍隊の指揮下に入った)が尖閣の領海を侵犯しているのに、安倍晋三首相は、繰り返し中国とは「完全に正常な軌道に戻った」とし、米国と真逆な「競争」から「協調」へと向かうとする見解は異常だ。
 韓国のみならず、防衛力の格段の強化を怠る日本も見捨てられることもあることを認識すべきである。
 そのような中で、昨年から陸上自衛隊と米陸軍は第1列島線沿いに対艦ミサイルによる「壁」を作る戦略と装備のすり合わせを進めている。さらに米海兵隊もこれに参画することになった。
すなわち、固定配置型の陸上主体の3軍種が、機動戦力である海空軍と一体となって、本気で「船を沈めよ」の実現に取り掛かったのである。複眼思考なくしてこの一体化は考えられない。
4 第1列島線の壁の日米による一体化
 くしくもこの3月下旬、奄美大島に対艦ミサイル、防空ミサイル、普通科部隊を中核とする島嶼配置型の部隊が新編される。
 2009年に非公開の陸海空自の統合演習において、対艦ミサイル部隊は初めて海を渡り、奄美大島に展開し、統合訓練を行ったのがすべての始まりだ。そしてクロスドメイン(領域横断作戦)作戦はすでに10年前に始まっていた。
 その後米国では、前米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授によって地上発射型による対艦ミサイル防衛の有効性が広められ、2015年に筆者らがCSBA(戦略予算評価センター)を訪問した時は、クレピナビッチ所長によって、列島線防衛が具体化されていた。
 そこでは、米陸軍は陸自の作戦・編成を学ぶべきだと言っていたが、当時、米陸軍は頑なに拒否していたものだ。
 それが、昨年、陸自と米陸軍の対艦ミサイル部隊が、米海軍のリムパック演習に参加したことは間違いなくCSBAの考えがハリス前太平洋軍司令官に伝わり、新たな海軍戦略である「打撃力の分散」と連動し「船を沈めよ」に集約され、実現したものだ。
出典:米国戦略予算評価センター(CSBA
一方、海兵隊司令官は、上陸作戦一辺倒の考え方を変更し、「シーコントロールの戦いで海軍を支援するため、可及的すみやかに長射程対艦ミサイルを選定し配備したい」と米海軍ニュースに語った。
 それをジョセフ・ハナセック海軍大尉は具体化し、地上兵力はエアシーバトルで価値を持つとして「島の砦(Island Forts)」のタイトルでプロシーディング誌(20192月号)に論文を発表した。
 今後はINF条約が破棄されることから、米陸軍・海兵隊共に長距離対艦ミサイル保有に向かうだろう。
 すでに空自が導入するLRASMは約1000キロの射程を持つF-18空母艦載機用の対艦ミサイルであるが、イージス艦からも発射可能で、また、簡単に地上発射型にも発展させることができる。

 これを日本や台湾、フィリピン、ベトナムなどに配置したら、中国艦隊は東・南シナ海で壊滅するだろう。日本も早急に1000キロ射程の対艦ミサイルに改造すべきである。
出典:プロシーディング誌2019.2 ジョセフ・ハナセック大尉(赤矢印は筆者)

 これは南西諸島防衛の雛形の初歩的な絵ではあるが、特筆すべき点は、対馬に対艦ミサイルを配置している点である。
中国海軍は最近日本海に進出している。
 これは南西諸島を抜けて西太平洋に至るだけではなく、日本海側から東京や米軍施設を攻撃し、あるいは津軽海峡などを抜けて太平洋へ進出する危険な兆候であり、韓国配慮で対馬の対艦拠点化を躊躇してはならない。
5 北朝鮮対処と中国対処は同一線上にある
 北朝鮮対応は、結局、ミサイル防衛とゲリラ(ハイブリッド戦)対処そして、韓国からの邦人救助や避難民への対応措置に集約されるだろう。
 これはすべて対中対処のケースにも含まれる。
 このため、日本は一番厳しい対中国対処を柱として防衛力を至急構築していくことが喫緊の課題である。
 孫子は、その「謀攻篇」で「故上兵伐謀」と言っている。
 これは、「戦いで最も重要なことは、敵の戦略(核心)を攻撃すること」を意味し、その格言の通り、日本の最大の狙いは、中国の拡大覇権戦略の中核である海軍、その「船を沈めよ」である。
 繰り返すが、複眼思考のできない単純な判断だけは避けるべきである。

我が国が誇る88式地対艦誘導ミサイル(SSM-1)

最新・12式地対艦誘導ミサイル

我が国は、地対艦誘導ミサイルに関しては、「先進国」の部類に入るでしょう。南シナ海沿岸国とこれらの地対艦誘導ミサイルを効果的に共有して、抑止力としたいものです。