胸をなでおろす北朝鮮と中国
北村淳
2019.3.7(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55670
フォール・イーグルに参加中の米海軍強襲揚陸艦ワスプ
アメリカ国防総省は、毎年春に実施してきたアメリカ軍と韓国軍の大規模合同軍事演習「フォール・イーグル」と、それと並行して行われてきた米韓合同図上演習「キー・リゾルブ」を中止することを決定したと発表した。
北朝鮮にとっては最大の軍事的脅威
フォール・イーグルは、1997年から毎年韓国で開催されてきた世界最大規模の軍事演習の1つである。アメリカ軍側も韓国軍側も海軍、海兵隊、陸軍、そして空軍の部隊を参加させて実施される米韓統合軍総合軍事演習である。2008年からは、指揮官レベルの高度なコンピューターシミュレーションによる合同図上演習、キー・リゾルブも同時に開催されてきている。
フォール・イーグルに参加中の米韓海兵隊上陸部隊
いまだに国際法上は休戦状態にある朝鮮半島の警戒監視にあたり、米韓軍事同盟の責務を果たすために韓国に駐留を続けている在韓米軍にとって、フォール・イーグルとキー・リゾルブは突出して重要な軍事訓練である。
また、大規模な統合部隊を実戦さながらに機動させるフォール・イーグルは、アメリカ軍にとっても貴重な機会である。またアメリカとしては、大規模部隊展開能力を北朝鮮や中国に見せつけることによって抑止効果を生み出そうという目論見もある。
もちろん北朝鮮にとっては、アメリカ海軍空母部隊やアメリカ海兵隊上陸部隊などが参加して、朝鮮半島で世界最大規模の軍事演習を繰り広げるフォール・イーグルは、軍事的挑発以外の何物でもない。それどころか、軍事演習を口実にして大軍を集結させ戦争に突入した事例は少なくないため、まさに北朝鮮にとっては最大の軍事的脅威なのである。
フォール・イーグルに参加中の米空母カール・ビンソンと米韓艦艇
米軍首脳は中止したくなかった
このようにフォール・イーグルは、在韓米軍にとってだけでなくアメリカ国防当局にとっても戦略的に極めて重要な軍事演習である。しかしトランプ大統領は、莫大な経費がかかるこの種の軍事演習は中止すべきであるとの考えを表明していた。
昨年(2018年)には、2月に平昌オリンピック・パラリンピックが開催され、また6月には米朝首脳会談の開催も予定されていたため、外交的見地からフォール・イーグルとキー・リゾルブの開催が危ぶまれた。
しかしながら、米国防当局には中止する考えはなく、時期を調整するとともに規模を若干縮小して実施することとなった。
昨年11月、マティス国防長官は、「2019年春に予定されているフォール・イーグルならびにキー・リゾルブは継続して実施するが、アメリカと北朝鮮の外交関係の進展に水を差さないように、規模を若干縮小して継続する」との方針を表明した。国防当局にとっても、北朝鮮の非核化はぜひとも実現させたい目標である。そうである以上、北朝鮮にとって最大の軍事的脅威の1つであるフォール・イーグルを若干控えめに実施することは、マティス長官にとっても妥当な方針であったのだ。
米軍首脳は、米朝交渉が始まっても北朝鮮軍の脅威は決して低下しておらず、米韓合同軍事演習を継続する必要性があると考えていた。
第2回米朝首脳会談前、在韓米軍司令官を兼ねる太平洋陸軍司令官、ロバート・エイブラムス陸軍大将は、「北朝鮮の軍事力の変化は皆無、あるいは極めてわずかである」と連邦議会で証言した。また、エイブラムス司令官は、北朝鮮の軍事システム開発は、アメリカ、韓国、そして周辺地域の同盟国に対して極めて危険な脅威となっていると指摘した。実際に北朝鮮軍がこの冬に実施した冬季軍事演習はこれまでにない大規模なものであった。
これ以前の連邦議会公聴会でも、エイブラムス大将は「(2018年8月の)米韓合同軍事演習(ウルチ・フリーダム・ガーディアン)を中止したことによって、在韓米軍の即応性がわずかなものではあるとはいっても低下した」と証言している。したがって、在韓米軍司令部としては、これ以上在韓米軍の即応性が低下し、米韓同盟の抑止力が低下することを防ぐためにも、マティス国防長官が表明したように「フォール・イーグルならびにキー・リゾルブは継続するべきである」とホワイトハウス側に釘を刺したものと思われる。
しかしながら、そのホワイトハウスでは、すでに2018年末に、ともに海兵隊大将という職歴があり、フォール・イーグルのような大規模軍事演習の価値を熟知しているジョン・ケリー大統領首席補佐官ならびにマティス国防長官が辞任してしまった。そのため、在韓米軍司令官の警告にもかかわらず、「大金がかかる大規模軍事演習は中止」というトランプ大統領のかねてよりの持論が、「北朝鮮の非核化の可能性に水を差す挑発的な大規模軍事演習は差し控えるべきである」という外交的論理と相まって、実現してしまったのであろう。
米韓軍事演習が復活する条件
もっとも、フォール・イーグルが開始される1997年以前にも、アメリカ軍と韓国軍の間では大規模な合同軍事演習が行われていた。「チーム・スピリット」という米韓合同演習が1976年から93年まで実施され、フォール・イーグル同様に北朝鮮にとっては最大の軍事的威嚇となっていた。しかし、アメリカと北朝鮮との外交関係の進展が期待されたため94年から96年にかけては大規模な米韓軍事演習は中断されたのだ。
フォール・イーグルに参加中の米空軍B2ステルス爆撃機
このような前例もあるため、フォール・イーグルが中止されたとはいっても、アメリカ当局が「北朝鮮との真剣な外交交渉は無意味である」という判断を下した場合には、再びフォール・イーグル以上の規模の米韓軍事演習が復活するかもしれない。
しかしながら、チーム・スピリットが中止された際には、大統領から「莫大な費用がかかる軍事演習は中止すべきだ」といった声が上がったことなどなかった。一方、今回の米韓軍事演習の中止は、少しでも北朝鮮の非核化の気配が存続する限り、そしてトランプ政権が存続する限り、継続される可能性がある。
いずれにせよ、当面の間は、北朝鮮そして中国にとって好ましからざる大規模軍事演習が2つ消えたことだけは事実である。
空母からみた緊迫の米韓合同軍事演習
【米韓合同演習中止の措置】アメリカの深謀遠慮であるという見方もできます。
米朝首脳会談は、北朝鮮にとっては、経済制裁を解除してもらえなかったわけですから、意義が薄いかもしれませんが、アメリカにとっては朝鮮半島の非核化を達成する上でその思想を今一度確認するという意味で意義ありの会談ではなかったでしょうか?
米韓合同軍事演習そのものが北朝鮮にとって「脅威」であるとしたら、これを取り除くことにより、金正恩政権に対し、軍事的圧力を軽くすることになると思います。つまり次なる米朝会談の下地を作るための、少なくともアメリカの配慮という意味があったように思います。
【振り返る米朝首脳会談】
2回目の米朝首脳会談、合意に至らなかった本当の理由
海野素央 (明治大学教授、心理学博士)
2019年3月1日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15513
今回のテーマは、「2回目の米朝首脳会談、合意に至らなかった本当の理由」です。今回の米朝首脳会談後、ドナルド・トランプ米大統領は記者会見で、会談決裂の理由を「北朝鮮が完全な制裁解除を求めてきたので応じられなかった」と説明しました。しかし、それのみでしょうか。本稿では合意に至らなかった本当の理由について述べます。
米朝の「高い要求レベル」
2回目の米朝首脳会談の交渉に影響を及ぼしたのは、同日にワシントンで開催されたトランプ大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告の議会証言です。トランプ大統領はベトナムのハノイに到着すると、早速「コーエンは刑期を減らすためにうそをついている」と自身のツイッターに投稿しました。コーエン被告の公聴会にかなり神経質になっている様子が窺えました。
コーエン被告は公聴会で、ロシアのハッカー集団が盗み出したクリントン陣営の情報を、告発サイト「ウィキリークス」が大量に流すことを、トランプ大統領は事前に認識していたと証言しました。
さらに、2016年米大統領選挙の際中、コーエン被告がトランプ大統領が不倫した女性に「口止め料」を立て替えて支払い、同大統領が小切手で11回にわたり返済したことも明らかになりました。
コーエン被告はトランプ大統領の署名入りの小切手を証拠として、米議会に提出しました。これで同大統領が選挙資金法違反の罪を問われる可能性が高まりました。
このような状況下で、トランプ大統領はコーエン被告の証言いよるダメージを減し、批判をかわすために米朝首脳会談でより高いレベルの非核化を実現しようと考えたのでしょう。
記者会見でトランプ大統領は、「ニョンビョン核施設のみならず、多くの核施設廃棄を求めた」と述べています。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄、核施設リストの提出及び行程表の作成も含め、北朝鮮に対する要求レベルが、コーエン被告の証言を受けて一気に高まったとみてよいでしょう。
一方、北朝鮮はコーエン被告の証言を分析した結果、完全な制裁解除を要求しても、証言によって傷つけられたトランプ大統領は譲歩してくると判断したのでしょう。北朝鮮は完全に読み間違えました。
トランプ大統領にとって、経済制裁は北朝鮮との交渉を有利に交渉を進めていくためのレバレッジ(てこの力)であり、取引材料ではありませんでした。
結局、コーエン被告の公聴会が影響し、米朝が互いに高いレベルの要求を行ったために、譲歩ができなくなり、会談は決裂したといえます。
会談と公聴会が同日になったワケ
トランプ大統領は記者会見で、コーエン被告の公聴会に関して「すべて観なかった」と語り、「フェイク(偽)な公聴会だ」とレッテル貼りをして批判しました。そのうえで、「この重要な首脳会談を行ているときに、公聴会を開催した。2日後、あるいは来週に行うことができたはずだ」と、不満をぶちまけました。
米朝首脳会談と同日にコーエン被告の公聴会が開催されていなければ、人道支援、連絡事務所の相互開設、ニョンビョン核施設の廃棄など低レベルの非核化で合意を得たのかもしれません。北朝鮮も開城工業団地及び金剛山観光の再開における特例のみを要求し、完全な制裁の解除までは求めなかったでしょう。
そもそもコーエン被告の公聴会は2月7日に開催予定でした。ところが、コーエン被告がトランプ大統領と同大統領の弁護士チームの1人であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長によって、家族が脅迫を受けていると主張し、公聴会は同月末に延期になりました。
そこで、ナンシー・ペロシ下院議長とイライジャ・カミングス下院監視・政府改革員会委員長は、米朝首脳会談の注目度を下げるためにコーエン被告の公聴会を会談と同日に開催したのです。その結果、トランプ大統領は米朝首脳会談が全米に生中継されるのを期待していましたが、コーエン被告の公聴会に奪われてしまいました。
ペロシ議長とカミングス委員長の狙いは的中しました。記者会見で2人の術中に陥ったトランプ大統領は、非常に不快そうな表情を見せていました。
2020年米大統領選挙の新たな意味
トランプ大統領は記者会見で、「次の会談は約束をしていない」と述べました。20年米大統領選挙で再選を目指す同大統領は、北朝鮮の非核化を進展させなければ、ライバルの民主党候補から攻撃を受けることは間違いありません。
以前述べましたが、同年秋に大統領候補テレビ討論会が始まるので、遅くともそのころまでに非核化において目に見える成果が出ないと、北朝鮮核問題がトランプ大統領にとってマイナス要因になる可能性が高まります。従って、金委員長との良好な関係の継続は不可欠です。
記者会見でトランプ大統領は、交渉では「いつでも退室する準備はできている」と主張し、悪いディールをしなかった点を強調しました。しかし帰国すれば、議会民主党から2回目の米朝首脳会談は「大失敗だった」と批判されることは避けられません。
米情報機関のトップであるダン・コーツ国家情報長官が2回目の米朝首脳会談の前に議会公聴会で、「北朝鮮は核兵器を放棄する公算は低い」と証言しました。正しくその通りになったわけです。
ペロシ下院議長は今回の会談決裂について、「トランプ大統領は米情報機関を信頼するべきだ」とコメントを出しました。
加えて、前で触れましたがコーエン被告の証言によりトランプ大統領は選挙資金法違反に問われます。ロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官の最終報告書で、トランプ大統領の選挙資金法違反が明記され、しかも20年大統領選挙で敗れた場合、起訴される可能性が出てきました。つまり、トランプ大統領にとって次の大統領選挙の意味がまったく変わってきたのです。
【米朝首脳会談の真実!?】
帰り支度のトランプを緊急提案で引き留めた北朝鮮
それによると、両国の事前の実務者協議ではもともと熾烈な駆け引きが続いており、合意には至っていなかったようだ。
ただし、これまでとは違う前向きな材料があった。北朝鮮側が初めて、寧辺の一部の核施設の閉鎖をカードとして切っていたことだ。北朝鮮側は、そのカードと引き換えに、制裁の主要部分の解除を要求していた。これに対し、アメリカ側はそれを渋っていた。おそらく南北経済活動の一部を認めるなどの小さな見返りに留まっていたものと思われる。
米朝双方の要求の隔たりは大きかったが、とくに北朝鮮側からすれば、寧辺の核施設の一部閉鎖という大きなカードを出せば、アメリカもおそらく最後はそれなりの規模の制裁解除に応じるだろうとの期待もあったのではないかと思われる。
事前の実務者協議、北朝鮮は強気だった
事前にトランプ政権側からさかんに「首脳会談は成果が期待できる」との見通しが発信されていた。そのため、北朝鮮側は「トランプ大統領はとにかく合意したがっている」と受け止めたのだろう。北朝鮮の交渉はかなり強気なもので、実務者協議の過程で、北朝鮮側が「交渉は中止だ」と脅すことも何度かあったという。
しかし、事務方の事前協議では、互いの条件は合意に達していない。寧辺の核施設の廃棄については、北朝鮮側が廃棄する「寧辺の核施設」の中身を具体的に明言していなかった。おそらく昨年(2018年)12月から使用していない「原子炉」は入るが、それ以上については不明である。
また、逆に北朝鮮側が求める制裁解除は、具体的にみると、軍事物資以外のほとんどの禁輸を解くような内容で、アメリカ政府が呑めるものではなかった。したがって、アメリカ側としては、最初から大きな取引の合意はほとんど期待していなかったようだ。
米CNNによると、実は首脳会談の直前、先乗りしていたポンペオ国務長官が、事前協議のために北朝鮮側のカウンターである金英哲・副委員長との会談を申し入れていたが、断られたとのこと。首脳会談直前まで続けられた実務者協議でも進展はなく、首脳会談前夜には、アメリカ側はもう合意そのものに期待はほとんどなかったらしい。
トランプ流のビジネス手法で席を立つ
首脳会談は2月27日の夕方から始まった。2人きりの短い会談の後、側近2人ずつを交えての夕食会となったが、その席で、金正恩委員長が「寧辺の一部核施設を廃棄するので、見返りに国連制裁11項目のうちの5項目を解除してほしい」と持ち出した。それに対して、トランプ大統領は、制裁を解除するためには「すべての核施設の廃棄」というビッグディールの提案で応じた。当然、金正恩委員長は呑めない。
こうして第1ラウンドは、互いに要求を高く「ふっかけ」るところからスタートした。要求の差はきわめて大きく、合意がほぼ不可能なことは明らかだった。
しかし、ホワイトハウスはそれでも、翌日の午後2時から合意文書の調印式を行うと公式に発表した。すでに合意の可能性はほとんどなかったが、それでも北朝鮮側に圧力をかけたのであろう。
翌28日午前、いよいよ本番となる首脳会談が始まったが、すでに前夜に要求を出し合っており、互いに妥協することもなく、合意見送りに終わった。
しかし、トランプ大統領が会談場所のメトロポールホテルで帰り支度をしている時、北朝鮮の崔善姫・外務次官がアメリカ代表団のところに駆けつけ、「寧辺の核施設廃棄の見返りに制裁の一部解除はどうか」との金正恩委員長のメッセージを届けた。アメリカ代表団側は、「寧辺の核施設の具体的な中身が不明確なので、明確にしてほしい」と答えた。
崔善姫・外務次官はすぐに金正恩委員長のところに取って返し、「寧辺のすべての核施設」との金正恩委員長の返事を得て、それをアメリカ代表団に伝えた。つまり、この時点で初めて、北朝鮮は寧辺のすべての核施設を廃棄するというカードを切ったのである。
それでもアメリカ側は、制裁解除にはまだまだ不十分だとして、交渉の継続を拒否した。北朝鮮が土壇場でこのカードを切ったことで、北朝鮮が容認しようとしていた条件が明らかになったわけだが、それではトランプ政権が考える取引にはまだまだ不足していた。
しかし、これで北朝鮮側がまだ協議を続けたがっていると、アメリカ側は認識した。会談決裂後、ポンペオ国務長官と記者会見に臨んだトランプ大統領は、それでも会談の雰囲気が悪くなかったことに言及し、北朝鮮側を特に非難することもなく、今後の協議への期待を語った。
こうした経緯をみると、トランプ大統領の側は、最初から今回の会談での合意見送りは選択肢の1つだったといえる。北朝鮮が一向に実のある非核化措置に応じないなか
首脳会談という大舞台で大きな要求を突きつけることで、北朝鮮側に大きな圧力を加え、今後の交渉への布石としたのだろう。簡単に妥協せずに、要求を突きつけたままいったん席を立ってみせるという、トランプ流のビジネス手法といえるだろう。
実際、アメリカ側ではその後、ポンペオ国務長官が早期の協議再開を模索するなどの動きに出ている。3月7日には国務省高官が記者会見で、今後の協議への期待を表明した。
浮上した第3のウラン濃縮施設の存在
なお、首脳会談でトランプ大統領が金正恩委員長に対して、「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分で、すべての核施設の廃棄が必要だ」と言った際に、唐突に名前を挙げた「未公表の寧辺以外の核施設」については、トランプ大統領は会見では具体的にどこだとは言及しなかったが、報道ではいくつかのウラン濃縮施設の存在が浮上している。
1つは、昨年から米ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェフリー・ルイス東アジア核不拡散プログラム部長や、米シンクタンク「科学国際安保研究所(ISIS)」のデービッド・オルブライト所長らが衛星写真分析などから指摘してきた平壌郊外の千里馬に建設された「カンソン発電所」と呼ばれる施設である。ただし、この施設はすでにかなり広く報道されているもので、トランプ大統領が会見で「誰も知らない施設を我々は知っている」「それを名指しした時、北朝鮮側は驚いているように見えた」と語っている部分とは一致しない。
2つ目は、韓国紙「中央日報」が3月5日に報じた寧辺隣接地の分江(プンガン)の施設。ただし、こちらは寧辺の施設群の一部と見なすことができ、トランプ大統領が交渉材料の「寧辺以外のウラン濃縮施設」として持ち出すのはやはりしっくりこない。
前出のミドルベリー国際大学院のルイス部長などは、「米政府はウラン濃縮施設が3カ所あるとみている。うち2つは寧辺とカンソン」「3つ目の場所については米政府が厳しく秘匿していることから、寧辺とはまったく別の場所と考えられる」と発言している。もしかしたら、このまだ報道されていない第3のウラン濃縮施設を、トランプ大統領は金正恩委員長に突きつけたのかもしれない。
北朝鮮がICBMを増産していると事態は深刻
最後に、米朝首脳会談後の北朝鮮の動きについて、いくつか気になる情報を列記しておきたい。
まず、アメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」と米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が3月5日、衛星画像の分析から、北朝鮮北西部の東倉里のミサイル発射場の復旧が進んでいることを公表した。復旧作業自体は米朝首脳会議の前から始められていたとみられる。もっとも、この施設は実質的にはテポドンを使った宇宙ロケットの発射場で、非核化とはそれほど関係のない施設である。
対米交渉を計算して持ち札を増やす目的なのか、あるいは今後、「ミサイルではなく、宇宙ロケットだ」として発射を行うつもりなのかは不明だ。可能性は非常に低いが、仮に後者の場合、アメリカはミサイル発射と見なして厳しい措置を取ることになるだろう。
それより気になるのは、韓国の「国家情報院」の徐薫長官が3月5日に国会で「平壌郊外山陰洞(サンウムドン)のICBM開発製造施設でも活動が再開」と報告したことだ。こちらは東倉里などとは違い、実際に火星15などを製造した施設なので、活動がこのまま本格化した場合、北朝鮮がICBMを増産している可能性があることになる。あるいは山陰洞で新型宇宙ロケットを作って東倉里から打ち上げるかもしれない。いずれにせよ事態は深刻となるだろう。
また、3月4日にはIAEA(国際原子力機関)が、米朝首脳会談にもかかわらず「北朝鮮がウラン濃縮施設での活動を続けている」ことを公表している。
こうした北朝鮮側の不穏が動きに対し、アメリカ側はまだ静観の構えだ。たとえば前述の東倉里のミサイル発射場復旧のニュースに、トランプ大統領は「まだ初期段階の報告だ。(事実なら)金正恩委員長にひどく失望するだろうが、そうはならないと思う」と語っている。
他方、北朝鮮の側は3月7日、朝鮮中央通信が、米韓が3月4日から実施している小規模な合同軍事演習「同盟」について、「敵対関係解消と軍事的緊張緩和を確約した朝米共同声明や北南宣言に対する乱暴な違反」「朝鮮半島の平和と安定を望む同胞と国際社会の願いに対する全面的な挑戦だ」と激しく批判した。
米朝交渉はいったん仕切り直しだが、こうした状況からすると、トランプ大統領が狙ったような押したり引いたりの駆け引きによる交渉は、そう簡単に動き出すこともなさそうだ。
【米朝首脳会談の真実!?】
帰り支度のトランプを緊急提案で引き留めた北朝鮮
黒井 文太郎
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e5%b8%b0%e3%82%8a%e6%94%af%e5%ba%a6%e3%81%ae%e3%83%88%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%97%e3%82%92%e7%b7%8a%e6%80%a5%e6%8f%90%e6%a1%88%e3%81%a7%e5%bc%95%e3%81%8d%e7%95%99%e3%82%81%e3%81%9f%e5%8c%97%e6%9c%9d%e9%ae%ae/ar-BBUBAl2?OCID=AVRES000#page=2
(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)
平成31年2月27、28日にベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談の経緯、その舞台裏が、米政府を取材する米メディア各社の報道によってかなり明らかになった。それによると、両国の事前の実務者協議ではもともと熾烈な駆け引きが続いており、合意には至っていなかったようだ。
ただし、これまでとは違う前向きな材料があった。北朝鮮側が初めて、寧辺の一部の核施設の閉鎖をカードとして切っていたことだ。北朝鮮側は、そのカードと引き換えに、制裁の主要部分の解除を要求していた。これに対し、アメリカ側はそれを渋っていた。おそらく南北経済活動の一部を認めるなどの小さな見返りに留まっていたものと思われる。
米朝双方の要求の隔たりは大きかったが、とくに北朝鮮側からすれば、寧辺の核施設の一部閉鎖という大きなカードを出せば、アメリカもおそらく最後はそれなりの規模の制裁解除に応じるだろうとの期待もあったのではないかと思われる。
事前の実務者協議、北朝鮮は強気だった
事前にトランプ政権側からさかんに「首脳会談は成果が期待できる」との見通しが発信されていた。そのため、北朝鮮側は「トランプ大統領はとにかく合意したがっている」と受け止めたのだろう。北朝鮮の交渉はかなり強気なもので、実務者協議の過程で、北朝鮮側が「交渉は中止だ」と脅すことも何度かあったという。しかし、事務方の事前協議では、互いの条件は合意に達していない。寧辺の核施設の廃棄については、北朝鮮側が廃棄する「寧辺の核施設」の中身を具体的に明言していなかった。おそらく昨年(2018年)12月から使用していない「原子炉」は入るが、それ以上については不明である。
また、逆に北朝鮮側が求める制裁解除は、具体的にみると、軍事物資以外のほとんどの禁輸を解くような内容で、アメリカ政府が呑めるものではなかった。したがって、アメリカ側としては、最初から大きな取引の合意はほとんど期待していなかったようだ。
米CNNによると、実は首脳会談の直前、先乗りしていたポンペオ国務長官が、事前協議のために北朝鮮側のカウンターである金英哲・副委員長との会談を申し入れていたが、断られたとのこと。首脳会談直前まで続けられた実務者協議でも進展はなく、首脳会談前夜には、アメリカ側はもう合意そのものに期待はほとんどなかったらしい。
トランプ流のビジネス手法で席を立つ
首脳会談は2月27日の夕方から始まった。2人きりの短い会談の後、側近2人ずつを交えての夕食会となったが、その席で、金正恩委員長が「寧辺の一部核施設を廃棄するので、見返りに国連制裁11項目のうちの5項目を解除してほしい」と持ち出した。それに対して、トランプ大統領は、制裁を解除するためには「すべての核施設の廃棄」というビッグディールの提案で応じた。当然、金正恩委員長は呑めない。こうして第1ラウンドは、互いに要求を高く「ふっかけ」るところからスタートした。要求の差はきわめて大きく、合意がほぼ不可能なことは明らかだった。
しかし、ホワイトハウスはそれでも、翌日の午後2時から合意文書の調印式を行うと公式に発表した。すでに合意の可能性はほとんどなかったが、それでも北朝鮮側に圧力をかけたのであろう。
翌28日午前、いよいよ本番となる首脳会談が始まったが、すでに前夜に要求を出し合っており、互いに妥協することもなく、合意見送りに終わった。
しかし、トランプ大統領が会談場所のメトロポールホテルで帰り支度をしている時、北朝鮮の崔善姫・外務次官がアメリカ代表団のところに駆けつけ、「寧辺の核施設廃棄の見返りに制裁の一部解除はどうか」との金正恩委員長のメッセージを届けた。アメリカ代表団側は、「寧辺の核施設の具体的な中身が不明確なので、明確にしてほしい」と答えた。
崔善姫・外務次官はすぐに金正恩委員長のところに取って返し、「寧辺のすべての核施設」との金正恩委員長の返事を得て、それをアメリカ代表団に伝えた。つまり、この時点で初めて、北朝鮮は寧辺のすべての核施設を廃棄するというカードを切ったのである。
それでもアメリカ側は、制裁解除にはまだまだ不十分だとして、交渉の継続を拒否した。北朝鮮が土壇場でこのカードを切ったことで、北朝鮮が容認しようとしていた条件が明らかになったわけだが、それではトランプ政権が考える取引にはまだまだ不足していた。
しかし、これで北朝鮮側がまだ協議を続けたがっていると、アメリカ側は認識した。会談決裂後、ポンペオ国務長官と記者会見に臨んだトランプ大統領は、それでも会談の雰囲気が悪くなかったことに言及し、北朝鮮側を特に非難することもなく、今後の協議への期待を語った。
こうした経緯をみると、トランプ大統領の側は、最初から今回の会談での合意見送りは選択肢の1つだったといえる。北朝鮮が一向に実のある非核化措置に応じないなか
首脳会談という大舞台で大きな要求を突きつけることで、北朝鮮側に大きな圧力を加え、今後の交渉への布石としたのだろう。簡単に妥協せずに、要求を突きつけたままいったん席を立ってみせるという、トランプ流のビジネス手法といえるだろう。
実際、アメリカ側ではその後、ポンペオ国務長官が早期の協議再開を模索するなどの動きに出ている。3月7日には国務省高官が記者会見で、今後の協議への期待を表明した。
浮上した第3のウラン濃縮施設の存在
なお、首脳会談でトランプ大統領が金正恩委員長に対して、「寧辺の核施設廃棄だけでは不十分で、すべての核施設の廃棄が必要だ」と言った際に、唐突に名前を挙げた「未公表の寧辺以外の核施設」については、トランプ大統領は会見では具体的にどこだとは言及しなかったが、報道ではいくつかのウラン濃縮施設の存在が浮上している。1つは、昨年から米ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェフリー・ルイス東アジア核不拡散プログラム部長や、米シンクタンク「科学国際安保研究所(ISIS)」のデービッド・オルブライト所長らが衛星写真分析などから指摘してきた平壌郊外の千里馬に建設された「カンソン発電所」と呼ばれる施設である。ただし、この施設はすでにかなり広く報道されているもので、トランプ大統領が会見で「誰も知らない施設を我々は知っている」「それを名指しした時、北朝鮮側は驚いているように見えた」と語っている部分とは一致しない。
2つ目は、韓国紙「中央日報」が3月5日に報じた寧辺隣接地の分江(プンガン)の施設。ただし、こちらは寧辺の施設群の一部と見なすことができ、トランプ大統領が交渉材料の「寧辺以外のウラン濃縮施設」として持ち出すのはやはりしっくりこない。
前出のミドルベリー国際大学院のルイス部長などは、「米政府はウラン濃縮施設が3カ所あるとみている。うち2つは寧辺とカンソン」「3つ目の場所については米政府が厳しく秘匿していることから、寧辺とはまったく別の場所と考えられる」と発言している。もしかしたら、このまだ報道されていない第3のウラン濃縮施設を、トランプ大統領は金正恩委員長に突きつけたのかもしれない。
北朝鮮がICBMを増産していると事態は深刻
最後に、米朝首脳会談後の北朝鮮の動きについて、いくつか気になる情報を列記しておきたい。まず、アメリカの北朝鮮分析サイト「38ノース」と米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が3月5日、衛星画像の分析から、北朝鮮北西部の東倉里のミサイル発射場の復旧が進んでいることを公表した。復旧作業自体は米朝首脳会議の前から始められていたとみられる。もっとも、この施設は実質的にはテポドンを使った宇宙ロケットの発射場で、非核化とはそれほど関係のない施設である。
対米交渉を計算して持ち札を増やす目的なのか、あるいは今後、「ミサイルではなく、宇宙ロケットだ」として発射を行うつもりなのかは不明だ。可能性は非常に低いが、仮に後者の場合、アメリカはミサイル発射と見なして厳しい措置を取ることになるだろう。
それより気になるのは、韓国の「国家情報院」の徐薫長官が3月5日に国会で「平壌郊外山陰洞(サンウムドン)のICBM開発製造施設でも活動が再開」と報告したことだ。こちらは東倉里などとは違い、実際に火星15などを製造した施設なので、活動がこのまま本格化した場合、北朝鮮がICBMを増産している可能性があることになる。あるいは山陰洞で新型宇宙ロケットを作って東倉里から打ち上げるかもしれない。いずれにせよ事態は深刻となるだろう。
また、3月4日にはIAEA(国際原子力機関)が、米朝首脳会談にもかかわらず「北朝鮮がウラン濃縮施設での活動を続けている」ことを公表している。
こうした北朝鮮側の不穏が動きに対し、アメリカ側はまだ静観の構えだ。たとえば前述の東倉里のミサイル発射場復旧のニュースに、トランプ大統領は「まだ初期段階の報告だ。(事実なら)金正恩委員長にひどく失望するだろうが、そうはならないと思う」と語っている。
他方、北朝鮮の側は3月7日、朝鮮中央通信が、米韓が3月4日から実施している小規模な合同軍事演習「同盟」について、「敵対関係解消と軍事的緊張緩和を確約した朝米共同声明や北南宣言に対する乱暴な違反」「朝鮮半島の平和と安定を望む同胞と国際社会の願いに対する全面的な挑戦だ」と激しく批判した。
米朝交渉はいったん仕切り直しだが、こうした状況からすると、トランプ大統領が狙ったような押したり引いたりの駆け引きによる交渉は、そう簡単に動き出すこともなさそうだ。
米朝決裂をどう見るべきか?不敗の交渉と深遠な謀略
立花
聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)
米朝首脳のハノイ会談が決裂した。ワーキングランチまでキャンセルしての繰り上げ解散はいかにもトランプ流だった。大方の報道は「交渉決裂」「交渉失敗」としているが、果たしてそうなのか。交渉を目的とすれば、失敗になるが、交渉を手段、あるいは最終的な戦勝の一小道具として考えれば、結論も違ってくる。
交渉とは?目的と手段の転倒
拙稿「米中交渉の根本的な食い違い、中国を打ち負かす秘策とは?」で述べたように、交渉は必ずしも妥結するためのものとは限らない。民主主義制度の下で、政治家の手腕や実績は在任期間というスパンで評価されている。さらに、再選・続投するために、もっと短いスパンで実績を示さなければならない。
これは何も政治家に限った話ではない。サラリーマン社長や経営幹部も同じ状況だ。企業の永続的繁栄という長期的な視点をもつ者はほんの一握りに過ぎない。これはやむを得ない。個人的利益を無視して完全な滅私奉公を求めるには無理があるからだ。
国際政治の場においては、リーダーがいかに諸外国との交渉を妥結させるかが評価指標になっている。妥結をプラス評価、決裂をマイナス評価とするのが常識になっている。すると政治家は懸命に妥結の落とし所を探し求めるのである。つまり、交渉は手段よりも目的化する。
このような目的と手段の倒錯現象が日常化すればするほど、マスコミも世論も交渉といえば妥結か決裂かにばかり焦点を合わせるようになるし、世の常識と化する。
交渉とは何か?日本語の国語辞典では「特定の問題について相手と話し合うこと」「交際や接触によって生じる関係」などと説明されるが、英語の辞典では「合意に到達することを目指して討議すること」などと説明されている。それに準じて、交渉とは、利害関係が生じている中で、合意点を得るために行われる対話、議論、取引である。その目標は双方が受け入れることができる諸条件を導き出し、それに合意することである(Wikipedia)。
この解釈を見ても、交渉それ自体が目的化されていることが分かる。場合によって、そうした「常識」を「非常識」と捉え、交渉を手段とする運用はできないものか。私から見れば、トランプ大統領は不世出の奇才、あるいは交渉・謀略の鬼才だ。ただ非常識の持ち主であるが故に、世間には奇人変人扱いされるけれど。
「悪」より「無」、交渉ボトムラインが乖離したワケ
英語で「No deal is better than a bad deal」というが、悪い取引より、取引なしのほうがマシだ。悪より無、これがトランプ氏の鉄則になっている。
単体の交渉という次元からいえば、必ずボトムラインを事前に設定しなければならない。いわゆる譲歩や妥協の最低ラインである。最近の日本人ビジネスマンは交渉に先立って、ボトムラインを上司に事前確認しないケースが多い。すると、「本日の件は持ち帰って上司と相談する」の一言で、交渉相手(外国人)に「権限を持たないやつと交渉しても仕方ない」と思われ、一気に信頼を失う。
トランプ氏も金正恩氏もトップである以上、ボトムラインはそれぞれしかっりもっているだろう。交渉にあたってまず、両者のボトムラインの設定が前哨戦となる。
トランプ氏はある程度の大枠をもっているが、むしろ交渉の妥結を期待しない分には、ボトムラインをそれほど重視せず、いや、ボトムラインよりも、これだけの良い条件なら妥結してやってもいいという上方線を描いていたのではないか。言いかえれば、その上方線が下方に位置すべきボトムラインを幾分も引き上げてしまったのである。
一方で、ハノイでの米朝首脳会談を控え、米国政府がさまざまな形で楽観的な言動を見せた。金正恩氏はすっかりこれにつられて希望的観測の罠に陥ったのではないか。
確証バイアスという概念がある。自分の好きなもの、信じていること、やりたいこと、慣れ親しんでいる価値観・世界観、希望的観測、固定観念、あるいは「自己的結論」を一括りして、現実に起こり得るものと信じ込むのである。
見たいものだけを見て、聞きたいものだけを聞くという状況を作り出すことである。結果・結論ありきで、その「自己的結論」を裏付ける情報を選択的に選び、自分に、「これは確証できる」と言い聞かせる。逆に、その「自己的結論」に反証となるような証拠を無視したり、探そうとも見ようともしない。
独裁者である金正恩氏は確証バイアスのかかりやすい環境にあるか定かではないが、結果的に彼もトランプ氏と同じように、下方に位置すべきボトムラインを幾分も引き上げてしまったのではないかと推測される。
2人が持つべき「理性的な」ボトムラインはこうして過剰に「上方修正」された時点で、現実との乖離が生じ、交渉は妥結するはずもなく、早い段階で決裂する。会場のホテルから走り去る専用車の後部座席に座る金正恩氏の表情は険しかったと報じられる様子も、挫折を味わう普通の青年と何ら変わりもない。
交渉が決裂した後、深遠な謀略とは?
交渉が決裂したことで、さすがに疲れの表情を見せるトランプ氏だが、落ち込んでいたとは到底思えない。予定を前倒しして記者会見に臨んだトランプ氏の発言に「We had to walk away(交渉の席から立ち去るしかない)」「Sometimes
you have to walk(交渉の席から立ち去らざるを得ないときもある)」といった内容が目立った。
挙げ句の果てにトランプ氏は中国との貿易交渉問題に触れ、「I’m never afraid to walk from a deal. And I would do that with
China, too, if it didn’t work out. (私はいつでも、交渉の席から立ち去る準備ができている。交渉の席から立ち去ることを一度も恐れたことがない。交渉がまとまらなければ、中国にも同じことをやる)」と語った。
見せしめだ。金正恩氏との交渉は決裂したけれど、これをプラス思考的に生かす方法もあるのだ。いつでもどこでも交渉の席を立ち去れるという姿勢を習近平氏に見せつけ、より強い姿勢で米中交渉に臨む。もし、トランプ氏が米朝交渉の決裂を予想し、あるいはいささか期待していたのならば、紛れもなく「確信犯」的な謀略といえる。
米朝交渉については、そもそも交渉そのものの成功(目的)を目指すのではなく、米中交渉の前哨戦(手段)と捉えられていたかもしれない。目的と手段の意図的な転倒である。
とはいっても、結果的に米中交渉も不調に終わる可能性が大きい。その場合は、トランプ氏は躊躇なく対中関税を引き上げるだろう。いや、たとえ25%まで引き上げなくても、現状の10%維持だけでも、中国は持ち堪えられない。中国が米中貿易戦争に大敗したところで、トランプ氏はこれを北朝鮮に見せつける。またもや、見せしめだ。どうだろう。もう一回チャンスをやるから、今度こそ三度目の正直、米国の条件を呑まないかと、最終的に第3ラウンドの米朝交渉に持ち込む。
ハノイでは、次の米朝首脳会談の約束はしていないとトランプ氏は言った。しかし、喧嘩別れではない。トランプ氏はいつものように、「彼(金正恩)はいいやつですばらしい指導者だ」とリップサービスを忘れない。それは三度目の首脳会談に含みを残すためであろう。
勇気あるジャーナリストによってかなり内情がわかってきた北朝鮮
あの国が「朝鮮中央通信」というお抱えメディアを通じて公表してくるニュースを誰が信じているでしょうか?北朝鮮にとって都合のいいニュースを世界に流すフェイクニュースメディアといっても過言ではないかもしれません。
北朝鮮の真実は、危険を顧みず彼らの目を盗んで、隙をぬって公開されてくる外国人ジャーナリストの報道をまず念頭にみていくことが重要であろうと思います。
【衝撃】写真家が捉えた!北朝鮮が他国に決して見せたくない実態!思わず二度見する
https://www.youtube.com/watch?v=d8c1cYUt1Lc
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