超高額イージス・アショア購入は誰のためなのか?
日本防衛の負荷が減り懐が潤う「願ったり叶ったり」の米国
北村淳
2018.8.2(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53724
2018年7月30日、小野寺五典防衛相はイージス・アショアの取得経費を発表した。写真は都内の防衛省でジェームズ・マティス米国防長官と握手する小野寺防衛相(2018年6月29日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Tomohiro Ohsumi〔AFPBB
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日本国防当局がアメリカからの輸入を決定していた地上配備型弾道ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の本体価格が、防衛省が見積もっていた1セットあたり800億円から1340億円へと跳ね上がった。約1.7倍の増加である。価格が跳ね上がるのは、秋田県と山口県に配備することになるであろうイージス・アショアに、最新のレーダーシステム「LMSSR」(Lockheed Martin Solid State Radar)を搭載するためである。さらに、それぞれのイージス・アショアを設置するための施設取得建造費や教育訓練費などを加えると、防衛省が手に入れようとしている2セットで5000億円ほどになるものと考えることができる。
LMSSRのイメージ(出所:ロッキード・マーチン社)
540億円で飛躍的に広がる監視範囲
540億円で飛躍的に広がる監視範囲
1セットにつき1340億円(ただしアメリカの武器輸出戦略の通例としてさらに値上げされる可能性が少なくないのだが)を支払い、高性能LMSSRを採用することで、確かにより広範囲を監視できるようになる。
たとえば日本政府が予定しているように山口県と秋田県の日本海沿岸地域にイージス・アショアを設置した場合、朝鮮半島全域だけでなく、ロシアの沿海州、中国の遼寧省東部、吉林省南東部、黒竜江省南部、などの監視が(理論上は)可能となる。そのため、北朝鮮の弾道ミサイルだけでなく中国の弾道ミサイルに対してもイージス・アショアで対抗することが可能となる。
LMSSRを山口県と秋田県に設置した場合の探知圏
北朝鮮でも中国でも、日本攻撃用弾道ミサイルは地上移動式発射装置(TEL)から発射される。動き回るTELの補足は困難だが、自衛隊がLMSSRを採用すると北朝鮮全域がLMSSRのカバー圏内にすっぽり収まってしまうため、イージス・アショアの対北朝鮮弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に高まることになる。
一方、中国人民解放軍ロケット軍が手にしている対日攻撃用弾道ミサイル東風21(DF-21)の射程圏は(搭載する弾頭によって変化するものの)1500~2200kmである。そのためLMSSR探知圏外から、日本側に発射状況を感知されることなく対日攻撃が可能だが、イージス・アショアのレーダー探知圏が600~1100km程度へと延長されれば、30秒程度でも早く対処することが可能になる。満州地方から発射された弾道ミサイルが日本列島に到達するのには10分前後であり、自衛隊が迎撃ミサイルを発射するための持ち時間は最大3~4分であるため、30秒の時間短縮は貴重である。
コストパフォーマンスは精査されているのか?
コストパフォーマンスは精査されているのか?
こうして日本政府は、イージス・アショア2セット、そしてイージス駆逐艦も弾道ミサイル防衛用に改修したり、弾道ミサイル防衛用を新造したりして、合わせて8隻も保有することによって、北朝鮮や中国の弾道ミサイルに対抗しようとしている。多数の自衛隊員、それに駆逐艦をはじめとする超高額防衛装備をつぎ込むことで、国防費は莫大な金額に達する。だが、国防当局自身はもとより、シビリアンコントロールの責務を担っている国会において、弾道ミサイル防衛にそれらの防衛アセットを惜しげもなく投入することのコストパフォーマンスが、果たして真剣に検討されているのであろうか?
イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍
イージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退く米海軍
アメリカ海軍は、弾道ミサイル防衛能力を保持したイージス駆逐艦やイージス巡洋艦を日本海に展開させて、北朝鮮や中国からグアム方面や日本の米軍基地(そして日本)へ発射される弾道ミサイルを探知し、場合によっては撃破する任務を帯びている。
しかし、ちょうど1カ月前の本コラム(「日本周辺の弾道ミサイル防衛、米海軍の大きな負担に」)で紹介したように、アメリカ海軍はそうした任務がもはや「極めて大いなる負担」であると言い出した。そして、日本周辺だけでなくヨーロッパにおいても、軍艦ベースのイージス弾道ミサイル防衛を地上ベースの弾道ミサイル防衛に置き換えるべきであると主張している。
日本周辺を地上ベースの弾道ミサイル防衛システムで防衛する場合、日本列島にイージス・アショアを設置することになる。その場合、もちろん、アメリカ海軍がイージス・アショアを購入して、日本で土地を借り受けて設置して、日本周辺の弾道ミサイル防衛を行うわけではない。日本が、高価なイージス・アショアを購入して、北朝鮮や満州方面から発射され日本やグアムに飛来する弾道ミサイルに備えなければならなくなるのだ。
アメリカにとっては「願ったり叶ったり」
アメリカにとっては「願ったり叶ったり」
このようにアメリカ側で、イージス艦による弾道ミサイル防衛を(日本が日本に設置する)イージス・アショアに切り替えるという話が持ち上がり、それに対応するように、防衛省がアメリカから調達することになっているイージス・アショアに最新鋭高性能レーダーシステムを搭載することが決定された。日本周辺でのイージス艦による弾道ミサイル防衛から手を退くアメリカにとっては、日本ができるだけ高性能なイージス・アショアを配備してくれればそれに越したことはない。
もちろん、2セットのLMSSRを装備した最強イージス・アショアの設置費用5000億円は日本国民が全額負担し、アメリカ企業(ロッキード・マーチン社)とアメリカ政府(4%の手数料収入がある)の懐が潤うことになる。日本政府の決断がアメリカにとってはまさに願ったり叶ったりということになるのは言うまでもない。
〈管理人より〉イージス艦艇のすきまを埋めるような感じで地上発射型のイージス・アショアなるものを配備しようとしています。北朝鮮の弾道ミサイルから国民生活を守るためのミサイル、といえば反対しづらくなる。北のミサイルの情報が入れば10分で撃墜までやらないといけないから、迎撃ミサイルの数を揃えることも重要なファクターであろう。
もちろん、2セットのLMSSRを装備した最強イージス・アショアの設置費用5000億円は日本国民が全額負担し、アメリカ企業(ロッキード・マーチン社)とアメリカ政府(4%の手数料収入がある)の懐が潤うことになる。日本政府の決断がアメリカにとってはまさに願ったり叶ったりということになるのは言うまでもない。
〈管理人より〉イージス艦艇のすきまを埋めるような感じで地上発射型のイージス・アショアなるものを配備しようとしています。北朝鮮の弾道ミサイルから国民生活を守るためのミサイル、といえば反対しづらくなる。北のミサイルの情報が入れば10分で撃墜までやらないといけないから、迎撃ミサイルの数を揃えることも重要なファクターであろう。
【陸上イージス】 国民を守る上で不可欠だ
日本をとりまく安全保障環境を考えれば、弾道ミサイルや巡航ミサイルの脅威が消え失(う)せることは当面考えられない。飛来するミサイルに核兵器や化学兵器が仕込まれていれば大惨事となる。
外交努力と並行し、最悪の事態を見据え、国民を守る手立てを講じるのが防衛政策の基本である。そこで政府は秋田、山口両県に地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(陸上イージス)を作る計画を進めている。
ところが米朝首脳会談後の「偽りの緊張緩和」を鵜呑(うの)みにして、導入にブレーキをかける議論が出てきた。だが、実態はどうか。
北朝鮮は、核・ミサイルを放棄していない。今、表面上はおとなしく振る舞っているが、米朝交渉の行方次第で強硬姿勢に戻る恐れはある。米紙ワシントン・ポストは、米当局者の話として、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を製造している兆しがあると報じた。
小野寺五典防衛相は陸上イージスで「弾道ミサイル防衛能力が飛躍的に向上する」と語った。東西2カ所で陸上自衛隊が運用することで、日本全域を24時間365日守り抜く態勢が初めて整う。
陸上イージスの新型レーダーの探知距離は、海自イージス艦と比べ倍以上の千数百キロとなる。専守防衛の日本や同盟国米国にとって、北朝鮮や中露の動向を探る上で極めて有用だ。
現状の態勢の弱点を埋めるものでもある。海上自衛隊のイージス艦は乗組員の休養や訓練、艦船の整備のため港に帰らざるを得ず、切れ目のない防衛は難しい。航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)は拠点防空用で日本全域を守る装備ではない。
北朝鮮だけではない。中露両国は核搭載可能な弾道ミサイル、巡航ミサイルを多数保有している。陸上イージスの能力を高めていき備えるのも当然といえる。
費用の増大が指摘されている。取得費は2679億円だが、運用、教育費などを含め30年間で4664億円かかる。弾(迎撃ミサイル)の調達を合わせ6千億円を超える見通しだ。
一方で、新型イージス艦2隻の30年間の運用費は7千億円である。陸上イージスが突出しているとはいえない。決して安くはないが、国民の安全を重視する観点から、導入を急ぐべきである。
【なぜか??ロシアはイージスアショアに反対!】
ロシア、日本が導入する「イージス・アショア」に反発 日露2プラス2 安全保障分野での接触活発化で一致
【モスクワ=遠藤良介】日本とロシアは2018年7月31日、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)をモスクワで終え、双方は安全保障分野での接触をいっそう活発化させていくことで一致した。2プラス2の「準備会合」として外務・防衛次官級の協議をおおむね年1回のペースで開催することで合意したほか、年内に河野克俊統合幕僚長が訪露する方向で調整する。
2プラス2は2017年3月以来3回目。河野太郎外相と小野寺五典(いつのり)防衛相、ラブロフ外相、ショイグ国防相が出席した。
ロシア側は、日本が導入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、米国が世界的に配備するミサイル防衛(MD)網の一部だとして反発。日本側は小野寺防衛相が「日本国民の生命・財産を守るための完全に防御的なシステムだ」などと説明した。
日本側は、北方領土でのロシア軍の軍備強化などについて「冷静な対応」を求めた。また、北朝鮮の核・ミサイル問題は日本と国際社会に「重大な脅威であり続けている」と訴え、日本人拉致問題の早期解決に向けた協力も要請した。
2プラス2に先だって外務・防衛閣僚の個別会談も行われた。外相会談では、北方領土での共同経済活動に向けた民間事業者の調査団を8月16日~20日に現地派遣することで合意。9月にウラジオストクで予定される日露首脳会談に向け、具体的な共同事業に関する作業を加速させる。
河野外相は2プラス2終了後の共同記者会見で、「国際情勢がきわめて速いテンポで動く中、隣国ロシアと意思疎通を図り、安保分野での相互理解を深めることは重要だと考える」と述べた。
〈管理人より〉日露で共同で共産中国のミサイルに備えることは可能でしょう。
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