2018年7月28日土曜日

【RIMPAC2018】新たな海洋軍事大国の復権をめざせ!

【RIMPAC 2018】

海上自衛隊のみならず陸上自衛隊も参加中…
https://www.youtube.com/watch?v=ETSa3ro5hbQ


陸自が地対艦ミサイルで米海軍戦車揚陸艦を撃沈

リムパックで初の地対艦ミサイル演習を実施、米軍の狙いとは?

北村淳
陸上自衛隊の地対艦ミサイル(対艦誘導弾)システム「12式地対艦誘導弾」(資料写真、出所:Wikipedia
 2018627日からホノルル周辺海域を中心に開催されている多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)-2018」で、RIMPAC史上初めて陸軍部隊による洋上の軍艦を攻撃する演習(SINKEX)が実施された。この演習こそ、前々回の本コラムで紹介した、中国海軍の目の前で実施したかった自衛隊によるパフォーマンスであった。

RIMPACで初めて実施された地対艦ミサイル演習

 2018年714日に実施されたSINKEXは日本、米国、オーストラリアの3カ国による合同演習である。内容は、オアフ島の隣にあるカウアイ島内に陣取った陸上自衛隊ミサイル部隊ならびにアメリカ陸軍ミサイル部隊が、オーストラリア空軍のP-8ポセイドン哨戒機の上空からの誘導により、カウアイ島北55海里沖洋上に浮かぶアメリカ海軍退役軍艦「Rachine」を、それぞれ地対艦ミサイルを発射して撃沈するというものだ。
 ちなみに陸上自衛隊はメイドインジャパンの12式地対艦ミサイルシステムを使用し、アメリカ陸軍はノルウェー製の対艦ミサイルを米陸軍のミサイル発射車両から発射した。長い歴史を誇るRIMPACで、今回初めて地上軍(陸上自衛隊、米陸軍)が地対艦ミサイルを用いて洋上の軍艦を攻撃する訓練が実施された。
SINKEXで陸上自衛隊が12式地対艦ミサイルを発射した瞬間(写真:米海軍)
SINKEXで米陸軍がノルウェイ製地対艦ミサイルNSMを発射した瞬間(写真:国防総省)
中国の「積極防衛戦略」とは
 今回、初めて地対艦ミサイル演習を実施した最大の理由は、南シナ海と東シナ海における中国の海洋戦力の拡張に、アメリカ海軍を中心とする同盟諸国海軍が伝統的海洋戦力(各種軍艦と航空機)だけで対抗することが困難な状況になりつつあるからである。
 現在、中国海軍が依拠している防衛戦略(ただし核戦略は別レベルである)は「積極防衛戦略」と称されており、アメリカ軍などでは「接近阻止・領域拒否戦略」(A2AD戦略)とも呼称されている。この防衛戦略を一言で言うならば、東シナ海や南シナ海から中国に(核攻撃以外の)軍事的脅威を加えようとする外敵(主としてアメリカ海軍、それに海上自衛隊をはじめとするアメリカの同盟国海軍)を、中国本土沿岸からできるだけ遠方の海上で撃破して中国に接近させないというアイデアである。このように接近を阻止するための目安として中国海軍戦略家たちが設定しているのが、第一列島線と第二列島線という概念である。
第一列島線と第二列島線(白:日米海軍拠点、赤:中国海軍拠点)
「積極防衛戦略」を推し進めるためには、どうしても海軍力と航空戦力の強化に最大の努力を傾注することが必要となる。なぜならば、中国に接近を企てる外敵は、軍艦や軍用機によって海洋を押し渡ってくることになるからである。そのため、中国海軍は次から次へと軍艦の建造に邁進し、海軍と空軍は戦闘機や爆撃機をはじめとする航空戦力の強化も猛スピードで推し進めた。
 ただし、中国軍戦略家たちは、そのような伝統的な海洋戦力だけで、強大なアメリカ海軍やその弟分である海上自衛隊を迎え撃とうとはしなかった。なぜならば、軍艦や軍用機の開発、建造・製造、それに乗組員や整備要員の養成には長い時間がかかるからである。そこで、多数の軍艦や軍用機を生み出しそれらの要員を鍛え上げ、強力な伝統的海洋戦力を構築するのと平行して、比較的短時間で大量に生産することができ、運用要員の育成も容易な、様々な種類の対艦ミサイルの開発にも努力を傾注した。
要するに、中国沿海域に押し寄せてくるアメリカ海軍や海上自衛隊の高性能軍艦や航空機に対して、伝統的な海洋戦力で対決するだけでなく、場合によっては中国本土からあるいは本土上空から各種対艦ミサイルを発射して、アメリカ海軍艦艇や海上自衛隊艦艇を撃破し、中国沿岸域、あるいは第一列島線、さらには第二列島線への接近を阻止してしまおうというわけである。
実際に、中国人民解放軍は、中国本土内から発射する多種多様の地上発射型対艦ミサイル(地対艦ミサイル)や、敵の攻撃を受けることのない中国本土上空の航空機から発射する対艦ミサイル(空対艦ミサイル)、それにやはり敵の攻撃を受けることのない中国本土沿海域の軍艦から発射する対艦ミサイル(艦対艦ミサイル)をずらりと取り揃えている。そのため、第一列島線を超えて中国沿岸に接近を企てる敵艦艇は、多数の対艦ミサイルによる集中攻撃を被る恐れが極めて高い状況になっている。そして、対艦ミサイルとともに、接近してくる航空機を撃破するための各種防空ミサイルの配備も伸展している。
アメリカ側にも必要となった「接近阻止戦略」
 このような中国軍の「積極防衛戦略」に立脚した接近阻止態勢に対して、アメリカ海軍(そしてその同盟軍)としては、正面切って空母艦隊をはじめとする艦艇や航空機を突っ込ませるのは自殺行為に近い。そこで、アメリカ軍やシンクタンクの戦略家の間で、別の方法が真剣に検討され始めているのだ。それは、こちらから中国沿海に接近して攻撃するというアメリカの伝統的な「攻撃による防御」戦略ではなく、中国海軍が設定した第一列島線上で中国海洋戦力の接近を待ち構え、中国軍艦艇や航空機の第一列島線への接近を阻止する方法だ。いわば、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」を実施しようというアイデアである。
アメリカ軍が評価する日本の地対艦ミサイル能力
 では、アメリカ軍は第一列島線でどのような戦力で待ち受けるのか。まずは、第一列島線周辺海域に様々な軍艦を展開させ、第一列島線上にいくつかの航空拠点を確保して航空戦力を配備し、第一列島線周辺海域に空母艦隊を展開させて航空打撃力を準備する、といった伝統的海軍戦略にのっとった方策が考えられる。
一方、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」では、第一列島線上に地対艦ミサイル部隊を展開させて、接近してくる中国艦艇を地上部隊が撃破するというオプションが加わることになる。ところが、このような「敵をじっと待ち受ける」受動的な、すなわち専守防衛的な戦略はアメリカ軍は伝統的に取ってこなかった。そのため、専守防衛的な兵器である地対艦ミサイルシステムをアメリカ軍は保有していない。
 地対艦ミサイルを投入しての「接近阻止戦略」が必要であると考え始めたアメリカ海軍や海兵隊それに陸軍の戦略家たちは、地対艦ミサイルの威力を目に見える形でペンタゴンやホワイトハウスに提示する必要に迫られている。そこで登場したのが、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊である。かねてより地対艦ミサイルに特化した部隊を運用している世界でも稀な陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊に、日本が独自に開発し製造している高性能12式地対艦ミサイルシステムをRIMPAC-2018に持ち込んでもらい、大型艦を撃沈するパフォーマンスを実施してもらったというわけだ。

 おそらく、今回のSINKEXを皮切りに、アメリカ陸軍でも、アメリカ海兵隊でも、地対艦ミサイル部隊の創設へと舵を切っていくことになるものと思われる。それに対して、陸上自衛隊は四半世紀前から地対艦ミサイル運用に特化した地対艦ミサイル連隊を保有しているし、日本独自に開発製造している地対艦ミサイルシステムを手にしている。そのため、現在アメリカ軍戦略家たちが検討している中国に対する「接近阻止戦略」(拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』地対艦ミサイル部隊が人民解放軍を殲滅す 講談社+α新書687-2c参照)を推進して行くに当たって、日本の地対艦ミサイル技術やノウハウは、アメリカにとっても大いに有益なものとなることは必至だ。


〈管理人より〉我が国は、地対艦ミサイル大国といえそうですね。確かに沿岸から、ホーミングして敵艦に一撃必殺で命中させる点は、防衛戦略の基本といえますね。RIMPACの演習は海軍力だけでなく、陸上自衛隊の着上陸能力、展開力のスキル向上に不可欠の演習になりましたね。



【深まる各国との安全保障関係】

日仏安全保障関係は新たな段階に

岡崎研究所
 2018713日(日本時間14日)、フランスを訪問中の河野太郎外務大臣は、フランスのフロランス・パルリ軍事大臣とともに、「日本国の自衛隊とフランス共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定」(略称:日・仏物品役務相互提供協定(日仏ACSA))に署名した。この協定は、日仏両国の国内手続きを経て、発効する。
この日仏ACSAにより、自衛隊とフランス軍との間で、物品・役務の提供が円滑かつ迅速にできるようになる。具体的には、災害や共同訓練、国連PKO(平和維持活動)の際に、物資や食糧、燃料、弾薬等及びサービスを相互に融通できるようになる。この協定は、自衛隊とフランス軍との間の緊密な協力を促進し、国際社会の平和構築や安全保障に積極的に寄与するのに役立つものである。
参考:外務省「日・仏物品役務相互提供協定(日仏ACSA)の署名」平成30714
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006238.html
 日本は、既に、米国、英国、豪州とACSAを締結している。今回、フランスと締結したことで、日仏間の安全保障関係がより緊密になるとともに、日米豪英仏が共に行う多国間の共同軍事演習等もより円滑にやりやすくなる。
 714日、フランスの革命記念日の軍事パレードに、日本国の代表として、陸上自衛隊が初めて参加して、共に行進をした。フランス全土や世界中から集まった人々が、フランス軍とともに、シャンゼリゼ大通りを行進する自衛隊員に声援と拍手をおくった。フランス政府及びフランス国民は、自衛隊の参加、フランスとの国際協力を積極的に評価した。
 今年は、日仏国交160周年の節目の年であり、文化的行事として、同日、パリ市内では、「ジャポニズム」の開会式も、河野外務大臣出席のもとに開催された。が、意外にも、フランスの一般の人々は、陸上自衛隊が革命記念日の軍事パレードに参加していることは知っていても、日仏交流160周年のことはそれ程知られていなかった。日仏交流の観点からも、フランス人が関心を持ち団結を示し熱くなる革命記念日の軍事パレードに、少人数でも日本の自衛隊が参加したことには、日本の存在を示すのに大きな意義があった。
 もう一つ、自衛隊のフランス訪問が重要だった理由は、今年が第一次世界大戦終結1918年から丁度100周年にあたる年だからだ。日本は、フランスとともに戦い、戦勝国の五大国の一員として、戦後処理や戦後の国際秩序の構築に務めた。革命記念日の前日等にパリの軍事学校内で開催された光のショーのタイトルは、「1918年、新世界」であり、フランスの歴史にとって、第一次世界大戦が重要であることは明らかだった。
 ACSAが日仏関係のみならず、多国間の安全保障協力にとっても重要だと上記したが、今年のフランス外交を振り返っても、その事は明白である。本年1月、マクロン大統領は、インドに国賓として招かれ、仏印共同声明では、仏印防衛協力の強化も謳われた。4月には、米国にもマクロン大統領は国賓として訪問した。さらに、5月、豪州にもマクロンは赴き、ターンブル首相との間で、インド太平洋地域の安全保障協力で仏豪両国が協力することを約束した。
 このようなフランス外交の流れは、日本外交の方向性と一致する。
 2018年126日に東京で開催された日仏外務・防衛閣僚会合(「22」)を受けて、今回のACSA署名に至った。その間、2月には、フランスの軍艦が東京晴海に寄港し、海上自衛隊がホストした。このように、海上でも陸上でも日仏の軍事関係者が協力する時代に、今回のACSAは必要不可欠なものなのだろう。

フランス革命記念日パレード2018
我が国の自衛隊員も参加しました。




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