2018年7月20日金曜日

ステルス戦闘機F-35をめぐる諸問題

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか

F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

北村淳
ベルギー・ブリュッセルで行われたNATO首脳会議後に記者会見するドナルド・トランプ米大統領(2018712日撮影)。(c)AFP PHOTO / Brendan SMIALOWSKIAFPBB News

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。
 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。
 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?
その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。
↓F-35Aの日本向け1号機(写真:ロッキード・マーチン社)

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。
 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。
 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。
要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。
F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-3511カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。
 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。
 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35B138機調達することになっている。
F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)
「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35A60機、F35B30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35A72機)、カナダ(F-35AベースのCF-3565機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35A27機)、ノルウェイ(F-35A52機)、トルコ(F-35A100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35I50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。
しかしながらNATOEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。
 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35A40機調達予定)だけである。
 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。
上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。
 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。
【我が国の海空防衛戦略
鹿児島・馬毛島を海・空自拠点に 
中国脅威防衛強化 F15戦闘機展開
馬毛島 種子島の西約12キロにあり、面積約8平方キロ、周囲約16キロの無人島。土地が平らで大規模な造成が不要な上、開発会社がX字形に滑走路2本を造成している。政府は平成23年から土地買収について開発会社と交渉してきたが、会社側が賃貸契約を求めたり、政府の想定を相当上回る売却額を提示したりしたため合意に至っていない。
陸上離着陸訓練(FCLP) 米空母艦載機が陸地の滑走路を空母甲板に見立てて離着陸する訓練で、パイロットの空母着艦資格の取得に不可欠。昭和57年から厚木基地(神奈川県)で行われていたが、騒音の深刻化で代替施設が確保されるまでの暫定措置として平成3年から硫黄島(東京都)で実施され、恒久措置として馬毛島への移転が検討されている。
防衛省が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている鹿児島県西之表(にしのおもて)市の馬毛(まげ)島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めたことが平成307月14日、分かった。中国の脅威を踏まえた南西防衛強化の一環で、訓練に加え、有事での空自戦闘機の分散配置の拠点にする。馬毛島の土地買収に向けた調整と並行し、活用方法の検討を加速させる。
 現行の態勢では米軍横須賀基地(神奈川県)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンの洋上展開前に、FA18戦闘攻撃機などの艦載機パイロットが陸上離着陸訓練を行う。艦載機は3月、厚木基地(同県)から岩国基地(山口県)に拠点を移しており、岩国基地から馬毛島に展開し実施する。期間は年間2週間程度で残りは滑走路が空く。
 そのため防衛省は海・空自の航空機訓練に活用。海自は鹿屋(かのや)航空基地(鹿児島県)のP3C哨戒機、空自は新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)のF15戦闘機が馬毛島に展開し、離着陸や防空などの訓練を行うことを想定する。
 空自は短距離滑走離陸・垂直着陸が可能なF35Bを導入し、新田原基地に配備することを検討。海自もヘリ搭載護衛艦いずもをF35Bの離着艦可能な空母に改修することを検討しており、F35Bといずもが馬毛島を拠点に訓練をすることも視野に入れている。
南西防衛では空自戦闘機の拠点を増やすことが課題。南西方面で唯一の拠点の那覇基地の滑走路が破壊されれば現状では代替拠点がないためで、馬毛島を代替拠点とする。事前にF15を馬毛島に分散配置すれば那覇基地が攻撃されてもF15の壊滅を避けられる。
 一方、沖縄県の基地負担軽減で、米軍普天間飛行場のオスプレイの訓練の一部を馬毛島に移す案もある。
 防衛省は馬毛島を買収する方針だが、土地を所有する開発会社との交渉は難航。開発会社は債権者から破産を東京地裁に申し立てられ、地裁は先月15日付で保全管理命令を出した。今月中にも破産手続きを始めるか判断する。防衛省は破産手続きに入れば買収の実現可能性が高まるとみている。

【強化される我が国の離島防衛!?】
「離島奪還」ではなく、「離島へ展開」して敵の上陸を阻止する、という戦略こそ陸上自衛隊のとるべきスタンスでしょう。上陸を企む侵攻勢力に上陸させないために、電子戦、サイバー戦の能力をあわせて戦略的に組み込み、向上させるべきですね。
【速報版】16式機動戦闘車MCV LCACから上陸!陸上自衛隊&海上自衛隊 https://www.youtube.com/watch?v=0t4g4GB2j2M
 74式戦車の姿勢制御を初めて見る米陸軍兵士達 
https://www.youtube.com/watch?v=On1Hn0UlydE

太平洋を挟んでむきあうアメリカ合衆国との「海洋国家」としての政治的、軍事的な連携は不可欠です。

【F-35A戦闘機に早くも「制空」ライバルが出現】
ロシア最新鋭ステルス機「SU57」来年配備へ 
日本の頼みの綱「F35」より優位に?

ロシアの最新鋭ステルス戦闘機「SU57」が来年にも軍に配備される見通しだ。露政府系メディア「RT」は平成30年6月30日、「クリボルチコ国防副大臣が『初量産の12機のSU57の引き渡し契約が結ばれ、来年にも配備される』と述べた」と伝えた。これに合わせるようにRTは同月25日、「(米国の最新鋭ステルス機)F35とSU57、どちらが優れている?」と題した記事を掲載。日本も導入するF35は今後の国防の要であり、日本人として気にならないわけはない。露メディアの目から見た両機の優劣は-。(外信部 小野田雄一)

高性能をアピール
 SU57は露航空機メーカー「スホイ」が開発した戦闘機で、開発段階では「PAK-FA(パクファ)」「T50」などとも呼称。旧式化しつつある主力戦闘機「SU27」や「MiG29」の後継機として、2000年代から開発が進められていた。
 SU57は、レーダーでの捕捉が困難なステルス性能を備える「第5世代ジェット戦闘機」に分類される。現在、ステルス機の国産開発に成功したのは米国と中国のみとされ、SU57が配備されれば、ロシアは3番目の国産ステルス機保有国となる(イランも国産開発に成功したと主張しているが、専門家は疑問視)。
RTが軍事ジャーナリストや軍関係者の話として伝えたところでは、SU57は高いステルス性能、高性能レーダーと超音速クルーズ機能を備える上、高い機動性を持ち、どんな高度や距離での戦闘もこなせる。さらに敵の迎撃圏外から攻撃できる専用ミサイルも搭載。搭載兵器の性能は前世代から1・5~2倍向上しているという。
 さらに同じ空域にいる他の戦闘機とネットワーク化され、「(僚機が発射したミサイルの誘導など)作戦空域内のプラットホームの役割も果たせる」とした。
F35を圧倒?
 こうした性能が事実なら、ロシアの脅威を感じつつもステルス機を持っていない国々には脅威となる。
 旧西側諸国内で対抗できる戦闘機と目されているのは、米軍が開発した最新鋭ステルス機であるF22とF35だ。ただ、F22は世界最強との呼び声が高いものの、軍事機密保持などの観点から米国外に輸出されておらず、生産ラインも既に閉鎖。再生産の可能性は低い。
 一方、F22よりも新型で、電子装備面で優れるとされるF35は一定の開発が既に終わり、輸出も順次行われている。日本も計42機(一部は既に配備済み)の導入を決定しているほか、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州諸国にも配備が進められていく見通しとなっている。
 RTもこうしたF35に注目しており、6月25日、F35とSU57を比較する記事を掲載した。記事の執筆者は退役大佐という。
同大佐は軍事ウオッチャーの話として、「両機体はコンセプトが全く異なる。F35は低コストの軽戦闘機であり、(高性能だが高価な)F22を補完する戦闘機だ。一方、SU57は制空用の大型戦闘機として設計されており、速度・高度・各種センサー・武装搭載量・航続距離・機動性でF35を上回っているとみられる」と述べた。
「情報が足りない」
 一方で、この記事は謙虚ともいえる姿勢も見せている。
 記事によると、現代の空戦では、第一次世界大戦や第二次大戦時のような戦闘機同士のドッグファイト(接近戦)は行われない以上、機動性や武装搭載量は往年ほど重要ではないとも指摘。「本当に重要なのは武装搭載量と射程のバランス、レーダー性能などだが、第5世代戦闘機にはそれらに関して公開されたデータが存在しない」とした。
 さらに現代の戦闘機の能力は、早期警戒レーダーや人工衛星とのデータリンクなど支援環境によっても大きく左右されるが、それらに関する確たるデータも存在しないとした。
 記事の結論は「そうしたデータが公にされることは決してない以上、両機の優劣に関しては推測しか可能ではなく、メディアで比較するのは適切ではない」と、いささか拍子抜けともいえるものとなっている。
人類にとって最良は
 ただ、これまでにも軍事専門家やインターネット上のマニアらの間では、両機の優劣に関する議論が盛んに行われてきた。
 西側の軍事ウオッチャーの間では一般に「ステルス機開発で長い歴史を持つ米国に比べ、ロシアの歴史は浅い。仮にF35が単純な性能でSU57に劣っても、運用環境や電子装備性能などの総合力でF35の方が優位に立つ」という見方が大勢を占めているようだ。
 結局のところ、RTの記事が指摘するように、どちらの戦闘機が総合的に優秀かは実際に戦闘が起きなければ分からないのが実情だ。しかし、それが判明するときは世界のどこかで戦争や紛争が起きているということでもある。世界最強の戦闘機をめぐる議論には一種のロマンがあるが、人類にとっては、その答えは永遠に出ない方がよさそうだ。

【F-35Aのデータを盗られたかな?】


ロシアハッカーが日本攻撃 
2018年5月、複数の物流企業をターゲット 予行演習か
米情報セキュリティー会社「ファイア・アイ」は平成30719日、ロシア政府が支援しているとみられるハッカー集団「サンドワームチーム」が5月初旬に、日本の複数の物流企業に対し、サイバー攻撃を仕掛けていたとする分析を発表した。企業名や攻撃が成功したかどうかなどは明らかにしていない。
 ファイア・アイによると、ロシア傘下のハッカー集団による日本攻撃が明確になったのは初めて。このハッカー集団は、主にウクライナに挑発的な攻撃を繰り返しており、これまでに電力供給が停止する事態も起きている。近年は、攻撃対象を米国やほかの欧州諸国にも広げているという。
 日本を狙った動機は不明。第三国の別の対象を攻撃する「踏み台」として利用しようとしたのか、今後の日本攻撃のための「予行演習」など複数の可能性が考えられるとしている。
【管理人より】予行演習にしろ、本番にしろ機密情報をハッキングしようとしたわけですから、由々しき事態です。やはり仮想敵国より外交、軍事で優位にたとうとするには、国家機関によるサイバー攻撃により、中枢部を狙われます。
対サイバー攻撃「防御」訓練




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