2018年7月2日月曜日

新たな米中による「冷戦」への時代の中で

近づく「セカンド・コールド・ウォー」の足音

斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

20世紀後半の世界は「米ソ」冷戦時代だった。そして今世紀に入り、じわじわと「米中」両国の対立がヒート・アップしてきた。「第2次冷戦時代」が近づいてきている。
 世界的ベストセラー『文明の衝突』の著者サミュエル・ハンティントン博士(故人)に筆者がインタビューしたのは、今から23年前のことだった。
 当時、ハーバード大学政治学部長の要職にあった教授を研究室に訪ね、2時間近くにわたり、現代文明の将来についてじっくり話をうかがったが、その中で、彼が吐露したある衝撃的な予言が今も脳裏に鮮明に焼き付いている。
 「これまで世界は、米国とソ連という東西2超大国の対立に振り回されてきたが、ソ連崩壊により冷戦時代にピリオドを打った。だが、21世紀には『第2次冷戦時代』がやってくる。それは米国と、新たに台頭してきた中国との対立だ」
 奇しくもこの博士の予言通り、21世紀とくにトランプ共和党政権発足以来、米ソに代わって米中関係の様々な面できしみが生じ始めており、世界を巻き込んだ「第2次冷戦時代」到来への警戒感も広がりつつある。
 つい最近では今月に入り、世界第1位の米国と第2位の中国との間の「関税戦争」がエスカレートしてきた。
 まず、トランプ米大統領は2018年6月15日、知的財産権の侵害を理由に、制裁措置として米国向け中国製品818品目に対し500億ドル(5.5兆円)相当の輸入関税を課すと発表した。すると中国は翌16日、対抗措置として米国からの農産品、自動車など659品目に対し計500億ドル相当の輸入関税上乗せを発表した。
 これを受けて、トランプ大統領はさらに18日、「中国に不公正な取引を変えさせるためにさらなる措置が必要だ」として、ライトハウザー米通商代表に対し、新たに中国製品に対し2000億ドル(22兆円)相当の追加課税措置を取るべくその対象品目の検討を指示した。
 中国も黙っていない。翌19日ただちに、中国商務省が声明を発表「米国が追加制裁すれば、中国も、量と質を組み合わせた総合的な措置を取り、強く反撃する」と強調した。
 両国の応酬がさらにどこまで続くのか、先行き不透明のままだ。
 だが、このような米中間のさや当ては、貿易・経済関係にとどまらない。それ以上に懸 念されるのが、政治、軍事そして地政学的な戦略面での相克だ。

キッシンジャーの警告

 この点に関してはすでに、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が去る20111月、ワシントンポス紙に「米中冷戦を回避するために」と題する論考を寄稿、次のように警告していた。
 「米中間の冷戦は、核拡散、環境、エネルギー、地球温暖化などの諸問題に包括的かつグローバルに取り組まなければならない時に、多くの地域で各国を論争の中に巻きこんでしまうことになりかねない。それだけに両国は互いの国家主義的な野望を自制し、世界秩序確立のために協力し合う必要がある」
 ところが実際には、今世紀に入り、両国とも世界秩序より国益最優先の政策を推進する姿勢が鮮明化してきている。とくに目立つのが、中国の軍事拡張だ。中でも太平洋全域における海軍プレゼンス強化の勢いは止まらない。
 「AsiaTimes」紙によると、それは具体的には、2011年に始まった。この年、中国はアラビア海に面したパキスタンの小さな漁港グワダールを25000万ドルを投じて軍事利用可能な近代的な貿易港への改造に着手、そして2015年には習近平国家主席が同港から中国西部にかけての3200キロに及ぶ道路、鉄道、石油パイプラインのための「中国パキスタン経済回廊」建設構想を明らかにし、そのために460億ドルもの巨費を投じると発表した。
 中国政府はその後、公式には軍事的意図に関しては何も言及してこなかったが、パキスタン海軍が翌2016年になって、グワダール港に軍事施設を設置、すでに中国から寄贈された戦艦2隻も他の艦船とともに配属されていることを明らかにしている。
 同じく2016年、中国は太平洋に面しアフリカ東端のソマリアとエチオピアにまたがる半島「アフリカの角」のジブチに主要海軍施設の建設に着手、アラブ産油国への足がかりを確保すると同時に、インド洋でも中間地点に位置するスリランカとの間で、数10億ドルに達する対中借款帳消しと引き換えに、戦略軍事拠点となるハンバントタ港の割譲を受けることで合意済みという。
 
 こうした中長期的軍事拠点づくりを中心としたいわば静かな軍拡と対照的なのが、南シナ海、東シナ海そして西太平洋への展開を視野に入れた中国海軍の力ずくの示威行動だ。
 南シナ海に関しては、20167月、中国国務院発表の白書の中で、領有権をめぐりフィリピン、ベトナムなど近隣諸国で係争中のスプラトリー諸島に滑走路や「街」を建設するなど軍事拠点化の動きが活発化している。
 これと並行してとくに空母戦力の強化にも拍車がかかり始めた。

アメリカはどう対峙するのか?

 20129月、ウクライナから買い受けた空母の船体を改造した「遼寧」が初就航以来、今度は大連で純粋な国産本格空母の建造を開始、当初、2020年とされた就航も予定より早まる見通しで、近々にも初の試験航行が行われるという。
 これに続いて上海で、より性能の優れた3隻面の通常型空母、そして4隻目の原子力空母建造計画もすでに公表されている。
 空母は実戦配備となった暁には、米軍の場合、通常、駆逐艦、巡洋艦、フリゲート艦からなる複数の護衛艦のほか、攻撃型潜水艦と補給艦合わせ6隻で編成される「空母打撃軍」(略してCSG)として行動する。中国も今後、同様の行動様式を踏襲するとみられ、実際に3隻目、4隻目が登場した場合、その存在は極めて威圧的で大きなものとなる。そして米国防総省関係者の間では、このまま中国海軍の増強が進めば「2030年までに南シナ海全体が中国の湖となる」との不吉な予測まで出始めている。
 とくに、中東からの石油に依存する日本にとって、南シナ海から東シナ海にかけてのシーレーン(海上輸送路)の安全確保は今後将来的に死活的に重要となるだけに、中国海軍の動きをとくに注視していく必要があることはいうまでもない。
 ではこうした中国の軍事攻勢に対し、アメリカはどう対峙しようとしているのか。
 実はオバマ前政権発足当初から、米政府内でも対中警戒論が高まり、着々と対応策を講じてきた。
 20143月、オバマ大統領自らがオーストラリア国会で米軍戦略の「アジアへの転換」を基調とする重要演説を行い、南シナ海に面する同国ダーウィン基地への米海兵隊1個大隊本格投入を発表、さらにその1か月後には、フィリピンとの間で、同国5カ所の軍事基地への米兵力駐留を認める防衛協力協定の締結にこぎつけている。
 さらに同政権下で、在日米軍施設についてもフィリピン・スービック、豪ダーウィンそしてシンガポール各基地との統合運用体制も確立、南シナ海をにらんだ同盟の鎖構築に取り組んできた。
 トランプ政権下では、マティス国防長官が今年618日、海軍大学での講演の中で、ロシアの台頭と並んで中国が米国のライバルとなってきたことに触れ「中国は現存する世界秩序の書き変えという長期的野望を抱いている」として、その対応策として①より致命的破壊力のある戦力増強②軍事同盟関係の強化③国防総省の効率の良い組織への改編3点を挙げた。
 気がかりなのは、マティス国防長官も力説した日本、韓国、オーストラリアなど同盟諸国との関係強化だ。トランプ大統領は就任以来、「アメリカ・ファースト」を前面に打ち出し、NATO(北大西洋条約機構)軽視発言、アジアの新たな同盟の柱になるはずだったTTP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、日、豪、韓同盟諸国に対する貿易制裁など、自ら同盟関係に水を差す言動を繰り返してきている。このままでは、中国との「第2次冷戦」の前途は多難と言わざるを得ない
〈管理人より〉「アメリカ・ファースト」政治、経済、軍事、外交で「強い」アメリカが世界を主導する、という思想がみえるように感じますが、アメリカは仮想敵国に対して、どう影響力を行使していくのでしょうか?

ミサイル防衛「中国が仮想敵」と明言しない日本政府

北朝鮮ミサイルの脅威が遠ざかり、矛盾が噴出

北村淳
中国北京の天安門広場で行われた軍事パレードに登場した対艦弾道ミサイル(201593日撮影、資料写真)。(c) AFP/ANDY WONGAFPBB News

 シンガポールでの米朝首脳会談後の記者会見において、トランプ大統領は米韓合同軍事演習を取りやめる方針を公言した。それだけではなく、米韓合同軍事演習は挑発的であり金がかかりすぎるとまで言い切った。

大統領の発言に驚愕した国防総省

 突然トランプ大統領が表明したこの意向は、マティス長官が率いる国防総省にとっては、まさに寝耳に水であった。
 しかしながら、全米軍の最高指揮官である大統領が、国際社会の注視する米朝首脳の合同記者会見の席上で公言してしまったのだから、いわば国際公約的な決定事項である。そうである以上、国防総省としても尊重せざるを得なくなった。
 結局、毎年2回実施され続けてきた米韓合同軍事演習の1つで、来る8月に実施されることになっていた「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」が中止されることとなった。この合同演習では、金正恩をはじめとする北朝鮮首脳を一挙に葬り去る作戦の訓練なども行われるため、朝鮮半島の非核化に向けての米朝交渉が始まる時期には確かに不適当な演習と言わざるをえない。合同演習の一方当事者である米軍側が中止を通告した以上、韓国軍としてはどうしようもない決定であった。
 2018年4月の南北首脳会談を受けての軍事的緊張緩和に向けての動きの一環として、南北両軍当局は、それぞれが国境線周辺地帯に密集配置している長射程砲を撤収させる交渉もスタートしていると言われている。もし南北双方の軍当局が長射程砲の撤収に合意した場合には、在韓米軍の第210砲兵旅団(ATACMSと呼ばれる強力な対地攻撃ミサイルを装備している)も撤収せざるを得なくなるであろう。
 このような動きは、在韓米軍そのものの撤収の先駆けともなりかねない。そして、これこそ、北朝鮮そしてその後ろ盾となっている中国にとって理想のシナリオということになる。日本にとって最大の軍事的脅威である中国を利する上記のような動きは、日本にとっては由々しき事態である。

北朝鮮による対日弾道ミサイルの可能性は低下

 朝鮮半島の軍事的緊張緩和の動きは、日本のミサイル防衛に議論を呼び起こしている。
 というのも、今後米朝交渉が継続し再び決裂しない限りは、アメリカによる対北朝鮮予防戦争の発動はない。予防戦争が実施されないということは、北朝鮮による対日弾道ミサイル攻撃も考えにくいことを意味する。なぜならば、北朝鮮が日本に弾道ミサイルを発射する引き金となるのは、日本が軍事力を行使して北朝鮮から日本人拉致被害者を救出する作戦を実施する以外には、アメリカによる北朝鮮に対する軍事攻撃だけだからである。
 北朝鮮による対日弾道ミサイル攻撃の危険性が薄まったことにより、イージス・アショア地上配備型弾道ミサイル防衛システムを安倍政権が導入を急ぐ姿勢に対する疑義が再浮上している。たとえば、イージス・アショアの配備地の1つとされている秋田県では、防衛当局に対して配備についての再説明を求めた。
 それに対して小野寺五典防衛大臣は、「米朝首脳会談の結果朝鮮半島の非核化への方向性が打ち出されたとはいうものの、北朝鮮は日本を射程圏に収めている弾道ミサイルを数百発保有しており、その脅威が消えたわけではない」と説明した。
 しかし秋田県の住民の間からは、「日本政府は、一方では北朝鮮からの弾道ミサイル発射の危険性が過ぎ去ったとして住民のミサイル避難訓練を中止し、一方では北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は変わってはいないという。これでは理解しようがない」といった声が上がっているという。そして秋田県知事も、国防当局の「ともかく配備ありき」という姿勢に対して不快感を表明している。

姑息な説明を繰り返す日本防衛当局

 このような国民の疑問に対して、なぜ安倍政権は「自衛隊がすでに配備し、さらに配備を進めようとしている弾道ミサイル防衛システム(BMD)の主たる警戒目標、すなわち主仮想敵は中国人民解放軍の弾道ミサイルである」と明言しないのであろうか?
 これまでも日本国防当局は、アメリカの意向にしたがって各種BMDをアメリカから輸入調達してきたが、北朝鮮による弾道ミサイルの脅威は言い立てても、それよりもはるかに大きな脅威である中国の弾道ミサイルには触れようとはしてこなかった。日本国防当局は対決する前から中国を恐れ、怯えているのであろうか?
 中国の弾道ミサイルは、北朝鮮の弾道ミサイルに比べると極めて高性能である。また、北朝鮮の弾道ミサイルは、アメリカによる北朝鮮に対する予防戦争が実施された場合のみ日本に発射されるが、中国の弾道ミサイルが日本に発射される(より厳密には、発射をちらつかせて脅迫する)シナリオは複数存在する。
中国ロケット軍の対日攻撃用弾道ミサイルの射程圏
 したがって日本国防当局は、秋田県はじめ日本国民に対してイージス・アショアだけでなく各種BMDを導入する際に「主敵は中国の極めて危険な弾道ミサイルである」という事実を説明すべきである。
 さらに、ここに来て日本国防当局にとって不都合な事態が持ち上がった。すなわち、アメリカ海軍首脳が「日本に前方展開させているイージス巡洋艦ならびにイージス駆逐艦による弾道ミサイル防衛態勢は、アメリカ海軍にとってはもはや耐えられないほどの負担になっており、抜本的転用を推し進めねばならない」と語ったのである。この件に関しては稿を改めさせていただく。
〈管理人より〉米中が冷戦状態となれば、アメリカの同盟国である我が国にとっても共産中国は「仮想敵国」でしょう。現在の「戦略的互恵関係」の見直しが求められます。その時に対中ODAでいい思いをした政治家は、政策の変更に耐えられるでしょうか?

中国を排除した世界最大演習「リムパック」
 
米軍は「陸自から学びたい」
2018.6.15 01:00 http://www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150006-n1.html

リンク:中国艦艇に備える 地対艦モサイルを配備

米海軍主催で2018年6月下旬からハワイ沖で開かれる世界最大規模の海軍演習「環太平洋合同演習」(リムパック)に、中国海軍が直前になり招待を取り消される事態となった。中国の南シナ海での軍事拠点化に米政府の堪忍袋の緒が切れたためだが、今回のリムパックで最も注目されるのが陸上自衛隊の「地対艦誘導弾(SSM)」を使った日米初の共同訓練だ。中国排除により対中牽(けん)制(せい)の色合いがいっそう強まった形だ。(社会部編集委員 半沢尚久)
対中融和から転換
 リムパックは米国の同盟国など20カ国以上の軍が参加する合同演習で、1971年からおおむね1年おきに実施されている。今回は6月27日から8月2日にかけて行われる予定だ。
 中国は2014年と16年の2回、リムパックに参加している。米国のオバマ前政権の中国に対する融和的な政策のひとつとされた。
 ところが、米国防総省は5月23日、今回のリムパックで中国海軍の招待を取り消すと発表した。理由として中国が南シナ海で人工島の軍事拠点化を続け、「地域を不安定化させている」ことを挙げた。

 今年4月、中国は南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島に造成した人工島で通信やレーダーなどの電波を妨害する装置を設置したと伝えられた。同諸島の人工島では3千メートル級の滑走路や戦闘機の格納庫なども整備されている。
 5月にはパラセル(中国名・西沙)諸島で初めて爆撃機を離着陸させた。

http://www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150006-n2.html

 こうした中国の南シナ海での軍事拠点の強化と活動の活発化を受け、米政府は開催直前にリムパックから中国を締め出した。オバマ前政権の対中融和政策からの転換点と位置づけられそうだ。
日米初の地対艦弾訓練
 中国不在となるリムパックでは、海上部隊ではない陸自と米陸軍が陸自の最新鋭SSM「12式」を使った共同訓練を初めて実施する。目的は中国海軍艦艇への抑止力と対処力を強化するためだ。
 SSMは沿岸防衛用で地上から発射され、洋上に出ても低空で飛行する。12式の射程は約200キロで、発射機1両から6発が発射できる。
 12式は中国海軍艦艇の脅威を踏まえた陸自の南西防衛強化の柱だ。鹿児島県の奄美大島や沖縄県の宮古島などに配備する計画を進めている。
 一方、太平洋と大西洋で脅威対象から距離的に離れている米国には沿岸防衛用のSSMは不要とされてきたため、米軍はSSMを保有していない。
 ただ、ここにきて米軍はSSMの運用に意欲を示し始めた。防衛省幹部は「南シナ海での対中シフトにSSMが欠かせないと認識しているからだ」と指摘する。
 その認識を象徴するのが太平洋軍のハリス司令官(当時)が昨年5月に東京都内で行った講演だ。
 「列島線防衛の新しい方策を検討すべきで、(米陸上部隊に)艦艇を沈める能力の強化を指示した」
 ハリス氏はそう発言し、SSMを念頭に「陸自から学びたい」とも述べている。

http://www.sankei.com/premium/news/180615/prm1806150006-n3.html

中国の眼前でも

 米軍は共同訓練を通じSSMの装備・運用のノウハウを陸自から習得し、将来的には自衛隊が東シナ海で進めている南西防衛を南シナ海に援用することを視野に入れている。
 ハリス氏が講演で言及した列島線とは九州から沖縄、フィリピンなどに至る第1列島線を指す。その防衛で列島線沿いに位置する同盟国や友好国のフィリピンやインドネシアなどと連携してSSMを配置し、中国海軍艦艇ににらみを利かせる。
 それにより中国海軍艦艇を第1列島線の内側に封じ込める狙いがある。
 米陸上部隊に海上防衛を担わせることは「マルチ・ドメイン・バトル(複数領域での戦闘)」という米軍の新たな構想の一環でもある。
 それに向け米軍は一昨年からSSMを使った共同訓練を自衛隊に打診してきており、今回のリムパックで実現することになった。
 自衛隊幹部はリムパックに中国が不参加となったことについて「中国海軍の目の前で12式の能力をみせつけるつもりだったが…」と語る。
 「東シナ海で訓練を重ね、日米の抑止力と対処力を知らしめることも重要」(防衛省幹部)であることを踏まえれば、12式を使った共同訓練を中国の眼前で行う日も遠くはないだろう。

〈管理人より〉元々太平洋の利権をめぐって「対立」する関係の米中が、共同軍事演習するのはナンセンスでしょう。共産中国はRIMPACに参加しても参加国の海軍のデータを諜報していくだけでしょう。

フォールイーグル2017


米韓演習中止は日本とも協議を
 
ジェームス・ズムワルト元米国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)


 トランプ米大統領が米朝首脳会談後の記者会見で、北朝鮮との対話継続中は米韓合同軍事演習を中止すると明らかにした。実際に決定を発表すれば同盟国に影響を与えるため、米国として韓国と緊密に議論することを希望する。また、地域に展開する米軍に関わる日米同盟上の問題でもあり、日米が事前に協議することも非常に重要になる。
 トランプ氏と安倍晋三首相が会談や電話会談を重ね、強固で頻繁なコミュニケーションを取っていることは非常に良いことだ。軍事演習は同盟の問題であり、北朝鮮と交渉する課題ではないのだから、トランプ氏が首相と協議していることが望ましい。
 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が日米、米韓の同盟関係にくさびを打ち込もうとする試みが成功しないことを望んでいる。その意味で、首相や菅義偉官房長官が米朝首脳会談後に非常に前向きな声明を出したことはプラスだ。日米、米韓の分裂を防ぐには緊密な連携が必要で、引き続きそれができれば、分裂させる試みは成就しないだろう。
 金氏は中国の習近平国家主席、韓国の文在寅大統領とも会談しており、日朝も関与することが適切だ。北朝鮮の核・ミサイルは日米にとり共通の脅威だが、日本人拉致問題は米国には解決できない。拉致問題は個人の自由を奪う基本的人権の侵害であり、米国として日本を支援すべきだが、最終的には日本が直接、取り組む必要がある。(聞き手 加納宏幸)

〈管理人より〉米韓合同軍事演習の中止は、アメリカだけで決められる問題ではないでしょう。北朝鮮の軍事的脅威が完全になくなったわけではありません。北朝鮮から政治的譲歩をひきだすための一時的な中止ですね。朝鮮戦争の終結宣言すらない状態ですからね。

拉致問題は根の深い問題ですが、人権侵害以上に、北朝鮮からしかけられた「侵略戦争」であるという認識は忘れないようにすべきでしょう。我が国は北からの特殊工作員、朝鮮人民軍による国民の拉致を防ぐことができず、国家の発展に大切な人的インフラを他国に奪われたのです。そして拉致の被害にあっていたのは、アメリカ、ロシア、共産中国もおそらく同じです。東欧や中東からも人々が、北朝鮮の国家戦略推進のために拉致されています。拉致は、国際問題であり、国連で解決すべき問題なのです。

米中対立を考えるときに、朝鮮半島の問題はさけて通れません。


朝鮮半島、長期的視点で考える「3つのシナリオ」


岡崎研究所

2018612日、シンガポールにおいて、歴史的な米朝首脳会談が開催された。数か月前には、米朝戦争の危機まで語られ、国交のない米国と北朝鮮の首脳が、世界のメディアを前に握手する姿は、45年以上前に米国と共産党中国が国交正常化を果たした時を思い出すかのように、まさに歴史的瞬間だった。確かに、政治的ショーにすぎないと言う見方もあるが、国際政治を大きく動かすには政治的ショーも必要であり、その「ショー」を繰り広げるにも、それなりの準備がいる。

 この史上初の米朝首脳会談を受けて、世界では、様々な評価、分析がなされた。例えば、米国の主要紙であるワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、ウォールストリート・ジャーナル紙は、それぞれ612日付で社説を掲げ、今回の米朝首脳会談について、金正恩委員長の勝ちであり、トランプ大統領は譲歩しすぎではないか、との論評をした。612日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載された論説では、ヴィクター・チャ元NSCアジア部長が、合意文書は不十分であるとしながらも、戦争を回避した重要な首脳会談であった点では評価できる、としている。また、615日付ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された612日に書かれたナラングMIT(マサチューセッツ工科大学)教授らの論評では、北朝鮮を核保有国として認めることが述べられている。
 このように、短期的に見ると、確かに北朝鮮の外交的勝利のように見えるが、本稿では、今回の米朝首脳会談を受けての状況を、(1)短期的、(2)中期的、(3)長期的と、より長いスパンで分析、思考してみたい。そうしてみると、長期的には主に3つのシナリオ(a‐c)が浮かび上がってくる。

(1)    短期的見方

 トランプ大統領は譲歩しすぎで金正恩の外交的勝利である。合意文書では、「朝鮮半島の完全な非核化」とされ、「北朝鮮の非核化」でもなければ、「完全かつ、検証可能で、不可逆的な非核化」(CVID)でもない。北朝鮮が求めていた文言通りである。「安全の保証」という言い方も、北朝鮮への攻撃をしないという米国の約束と、北朝鮮の金正恩体制を保証してあげるということになっているようだ。そして、朝鮮半島の休戦協定を平和条約にして米朝国交正常化を果たす。いずれも北朝鮮が求めていたことである。「完全な朝鮮半島の非核化」ということでは、北朝鮮の非核化を行う際に、韓国への米国の核の傘の保証も交渉の対象に入ってしまう。それもあってか、トランプ大統領は、中止する必要のない米韓合同軍事演習を中止し、在韓米軍の縮小・撤退まで言及した。

(2)    中期的状況

 たとえ、米朝間の合意文書はあっても、その内容は抽象的で曖昧であり、同床異夢の可能性は大である。その意味では、全ては、今後の交渉にかかっている。「最大」ではなくても、今後も北朝鮮への制裁を維持し、圧力をかけながら、北朝鮮のCVIDを達成できるか。その過程で、米朝国交正常化交渉が進めば、日朝国交正常化交渉にも影響があるだろう。そうして、国交正常化が果たされれば、日本からも他諸国からも、北朝鮮に多額の資金が流れることになる。貧しい北朝鮮が裕福になる。日本その他の諸国は、お金で北朝鮮の非核化という平和を買うことになるのである。
 トランプ大統領は、記者会見やメディアとのインタビューで、しきりに「金正恩委員長は真剣である、私は彼を信用している。」と言った。これは、金正恩委員長も聞いているはずである。そして、トランプが金正恩を信じれば信じるほど、もしそれを裏切った場合の代償は大きいだろう。その時こそ、戦争になりかねない。そう思えば、トランプの言動は、交渉上の戦略としては、必ずしも悪くないのかもしれない。

(3)    長期的シナリオ

a.    中国型:北朝鮮の将来は、独裁体制を維持しながら(体制保証されながら)、経済的に改革・開放を行い、経済成長を高めて行く。独裁体制を維持するには、非核化をしようがしまいが、ある程度の軍事態勢を維持するだろう。
b.    ドイツ型:韓国の文大統領は、将来的に、南北朝鮮を統一することを模索している。38度線が緊張緩和され、南北の行き来が自由になれば、朝鮮半島が1つの国家となることはあり得る。ただし、民主化の程度は、ドイツと異なるだろう。
c.    ソ連型+α1975年のヘルシンキ合意は、東西冷戦下の緊張緩和の一環として国境の画定を決めた。皮肉にも、その欧州で国境が崩れソ連は崩壊し、ロシアとなり国土を狭めた。北朝鮮は、安全を合意文書で保証されても、国境を開き、日米両国と国交正常化し、韓国と交流促進をする過程で、もしかしたら体制が崩れることもあり得るかもしれない。その場合、一時的に朝鮮半島は、無秩序的に混乱するかもしれない。
 このように、歴史的な米朝首脳会談は無事に開催されても、今後の歴史の道筋は不透明で、不確かである。トランプ大統領自身も述べているように、今回の米朝首脳会談は、プロセスの始まりにすぎない。このプロセスがいかに進むかによって、核、ミサイル、拉致問題のみならず、日本が位置する北東アジア情勢が大きく動く可能性があるのである。

【米軍戦略編】米軍が展開する「太平洋パートナーシップ」とは?

岡崎研究所

2018530日に、マティス米国防長官は、ハワイで米太平洋軍司令官の交代式に出席して、「米太平洋軍」を「米インド太平洋軍」に改名することを発表した。その翌日、日米印の海軍はグアム沖で共同軍事演習を行った。そして、62日、マティス国防長官は、シンガポールで開催されたシャングリラ会議で、「米国のリーダーシップとインド太平洋の安全保障への挑戦」と題して講演した。その模様と全文はIISSのホーム・ページで見ることが出来る。
一方、この期間、米軍はシンガポールに程近いベトナムで、地味だが重要なミッション「太平洋パートナーシップ2018」を行っていた。62日に、主に日米越による2週間にわたる訓練等を終え、米海軍の病院船USNS Mercyがベトナムの港から帰路につくところだった。
 そもそも「太平洋パートナーシップ」とは何なのか。今年で13回目となる、すなわち2006年から米軍がイニシアティヴを取って始めた、人道支援・災害救助(HADR: Humanitarian Assistance and Disaster Relief)を目的とした多国間の訓練・研修である。きっかけになったのは、200412月に起こったスマトラ沖の大地震と巨大津波だと言う。太平洋の米軍の同盟諸国やパートナー諸国が協力して、いざという時に備えるという。HADRが目的なので、軍人の他、民間人も参加をし、米国側だけでも800人以上が協力する大規模な合同訓練である。
 今回の「太平洋パートナーシップ2018」では、米海軍の病院船USNS Mercyと運搬船USNS Brunswickが参加をして、ベトナムに寄港し、ベトナムの医療従事者等に研修を行った。日本の海上自衛隊も積極的に参加した。
 このUSNS Mercyは、223日に米国西海岸のサンディエゴの海軍基地を出発してから、ベトナムに到着するまでに、幾つかのパートナー諸国にも寄港している。昨年に引き続き、今年もインド洋まで足を伸ばし、スリランカを訪問し、
 ASEANの大国であるインドネシア、更にはマレーシアには416日に寄っている。ベトナムからの帰途には、日本にも立ち寄る。
 寄港地以外にも、「太平洋パートナーシップ2018」の特徴としては、参加者の国籍の多様性があげられる。ミッションの司令官は米国人だが、副司令官が英国人で、参謀長が豪州人である。参加者も、ホスト国以外に、豪州、カナダ、フランス、日本、ペルー、シンガポール、韓国及び英国出身者が含まれる。アジアというよりは、より広いアジア太平洋諸国となるのだろう。
 「太平洋パートナーシップ」は、各国のHADR能力を向上させるのみならず、パートナー諸国間の相互運用性や信頼を高め、友情を深める効果もある。その意味では、一石二鳥どころか、様々な良い副作用がもたらされるものである。
 昨年から、「太平洋パートナーシップ」に参加する米国の艦船がインド洋のスリランカに寄港するようになった。また、今年、日米越の合同訓練と同時期に、日米印では合同演習を行った。シンガポールのシャングリラ会議に、マティス長官とともに参加したインドンのモディ首相は、シンガポールに来る前に、インドネシアとマレーシアを訪問した。この2国は、偶然にも、「太平洋パートナーシップ2018」に参加したUSNS Mercyが、ベトナムに来る前に寄港した2国である。こうして考えると、来年以降、いずれインドも参加して「太平洋パートナーシップ」が「インド太平洋パートナーシップ」と改名される日が来るかもしれない。
 ベトナムからインドネシア、マレーシアとマラッカ海峡を通って、インド洋のスリランカまで、インド太平洋地域の海洋に、米軍のプレゼンスがあるというのは、たとえ病院船や運搬船であろうと、頼もしい。民主主義や法の支配、国際秩序を遵守するという共通の価値観を共有する諸国が協力して行動することによって、インド太平洋地域は、自由で開かれた地域であり続けられるのだろう。
参考 :‘U.S. Partner Nations Conclude Pacific Partnership 2018 in Vietnam (Department of Defense, June 5, 2018) , ‘USNS Mercy Deploys in Support of Pacific Partnership 2018’ (Department of Defense, February 26, 2018)


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