リムパック不参加の中国海軍に見せたかったもの
ノーマルな状態に戻った一方で、残念な事態も
北村淳
2018.7.12(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53537
中国遼寧省大連の港を出る中国初の国産空母「001A型」(2018年5月13日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News〕
2年に一度、アメリカ海軍が主催して太平洋沿岸諸国を中心とした多数の諸国の海軍が参加してホノルルを中心に行われる多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)」が、2018年6月27日から開催された。
RIMPACを引っかき回した中国海軍
今年のRIMPAC(RIMPAC-2018)にまつわる最大の話題は、RIMPAC-2014とRIMPAC-2016に参加して艦隊を派遣してきた中国が、直前になって“除名”されたことである。
RIMPAC参加国の変遷
トランプ政権が誕生した昨年(2017年)春には、オバマ政権によってRIMPACに招待された中国海軍をRIMPACから追い出そうという動きが浮上した。というのは、アメリカ海軍が主催するRIMPACは、太平洋沿岸地域のアメリカの同盟諸国や友好諸国の海軍の相互理解を醸成しつつ共同作戦能力などを涵養するというのが本来の趣旨だからだ。ところがオバマ政権下では、中国に対するいわゆる関与政策(ある程度の妥協には目をつぶってでも、中国をできる限り民主主義陣営引き入れようとする政策)派が国務省だけではなく国防総省でも力を得ていた。彼らの「太平洋沿岸国である中国をRIMPACに参加させることにより、アメリカ海軍とその同盟諸国・友好諸国の海軍と中国海軍との間に信頼関係を生み出させ、海洋における不慮の衝突を防止するだけでなく、中国の侵攻主義的海洋政策にブレーキをかけさせよう」という、まさに関与政策的理由によって、海軍上層部もペンタゴンも、中国海軍をRIMPACに招待したのであった。
しかし、RIMPAC-2014に参加した中国海軍は、多国籍海軍合同演習に正式参加した艦艇以外にも電子情報収集艦を演習海域に派遣して、アメリカ空母をはじめとする演習参加国艦艇の各種情報収集にあたらせた。まさに、RIMPACに参加した“海軍仲間”の信義を踏みにじったのである。
続いてRIMPAC-2016に参加した中国海軍は、またもや問題を起こした。RIMPACでは、合同演習に参加している各国海軍が自国の艦艇でのレセプションに参加国代表たちを招待し合うことが慣例になっている。だが、中国海軍は中国軍艦でのレセプションに海上自衛隊代表を招待しようとしなかった。主催者であるアメリカ海軍がその情報をキャッチし、事前に中国側に厳重注意をしたため、結果的には海上自衛隊も招待されることとなった。この事件に対してアメリカ海軍は、海軍の風上にも置けない中国海軍の態度に激怒した。RIMPAC-2014に引き続きまたもや海軍の信義則を蔑ろにした中国海軍のRIMPAC参加は打ち切るべきであるとの声が、連邦議会からも上がった。
しかしながらRIMPAC-2016閉幕後、オバマ政権そしてペンタゴンは再び中国海軍を次回のRIMPAC-2018へ招待した。アメリカ海軍内外の対中強硬派は「いい加減にしろ」と激怒したものの、トランプ政権が誕生したからといってオバマ政権が発した中国海軍への招待が取り消されることはなかった。
ところが、中国がRIMPACに参加し始めた2014年から、人工島の建設をはじめとする中国の露骨な南シナ海侵略は勢いを増す一方であった。アメリカ海軍の対中強硬派たちは「RIMPACに中国海軍を参加させることによって、南シナ海や東シナ海での中国海軍の傍若無人な行動は収まるどころか、ますます周辺諸国を圧迫し続けており、国際海洋法原則なども紙切れに書いた文字になりつつある」と主張していたが、まさにその批判が実証されることとなったのである。そして今年春になって、対中強硬派で側近を固めたトランプ大統領は、ようやく中国との対決姿勢を明確に打ち出すに至った。その結果、中国海軍による南シナ海での侵略的行動を理由として、中国海軍に対するRIMPACへの招待をついにキャンセルしたのである。
中国“除名”でRIMPACの注目度が低下
アメリカ海軍などの対中強硬派は、RIMPACが「参加国にとって最大の仮想敵である中国海軍が参加しない」ノーマルな姿に立ち返ったことに胸をなで下ろしている。しかしながら、中国を“除名”したことで2つほど残念な事態が生じた。
その1つは、国際社会のRIMPACへの関心が薄れたことだ。
異分子であり(そもそも仮想敵が合同演習に加わるという異常事態なのであるから、中国海軍は異分子以外の何物でもなかった)かつトラブルメーカであった中国海軍が参加していないため、一般のメディアにとってRIMPAC-2018は「普通の多国籍海軍合同演習」にしかすぎなくなってしまった。そのため、「中国の排除」というニュース以降、RIMPAC-2018に対する注目度は極めて低調になった(もちろん、軍事演習であるRIMPACにとって、本来はメディアや一般の人々の注目度は関係ないのであるが)。
中国に見せたかった日本の地対艦ミサイルの威力
2つ目は、日本の強力な地対艦ミサイルの実力を中国海軍に見せつけることができなくなったことである。
RIMPACは多国籍海軍の合同演習としてスタートしたが、参加国や演習内容の拡大につれて、海兵隊や海軍陸戦隊をはじめとする水陸両用作戦に関与する陸上部隊も組み込まれるようになった。これまで海上自衛隊だけを参加させてきた日本も、水陸両用作戦能力の構築に踏み切ったために、RIMPAC-2014からは陸上自衛隊を参加させるようになった。
そして、南シナ海や東シナ海で戦力増強著しい中国海軍と対峙するためには海軍力に加えて地対艦ミサイルや多連装長距離ロケット砲などの地上軍も投入しなければならないと考え始めたアメリカ大平洋軍司令部は、陸上自衛隊が運用しているメイド・イン・ジャパンの地対艦ミサイルシステムに目を付けた。そこで、RIMPAC-2018に陸上自衛隊が地対艦ミサイルを持ち込み「敵艦撃沈演習」を実施するよう、日本側に提案した。
陸上自衛隊の12式地対艦ミサイルの命中精度の高さに、米軍側は舌を巻いている。米海軍や米海兵隊の対中強硬派は、RIMPACに参加する中国海軍の目の前で、そうした日本の超高性能な地対艦ミサイルが仮想敵艦(日本にとっての仮想敵艦は中国軍艦である)を海底に叩き込む演習を実施するのはこのうえもなく「痛快」であり、「中国側も日本の地対艦ミサイルの威力を思い知るであろう」と、大いに期待していた。しかし、中国海軍がRIMPAC-2018から排除されたことで、その期待は泡と消えた。
日本にとっても、メイド・イン・ジャパンの地対艦ミサイルの威力を直接中国側に見せつけられなかったことは残念至極であった。高精度の地対艦ミサイルシステムを九州から与那国島までずらりと並べることで、中国海軍が東シナ海から西太平洋へは自由に抜け出ることができなくなるという警告を突きつけることができる(拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』講談社+α新書、参照)。だが、残念ながらその機会が失われてしまったからである。
陸上自衛隊・12式地対艦ミサイル
RIMPAC2018 12式対艦ミサイル発射映像
〈管理人より〉我が国が誇る陸自の12式対艦ミサイルについては、人民解放軍にとっては、「脅威」となる兵装であるがゆえに当然データを収集し、兵装としての効果について分析していることでしょう。そうした我が国防衛の切り札となる兵装について、わざわざ「仮想敵国」にみせてやる必要はないでしょう。むしろ非公式に把握されているであろうことが予想される分、「秘匿」しておくべきかと思います。詳しくはみせたくないしろものです。
【「過熱化」する米中サイバー戦争】
アメリカも共産中国のシステムインフラや機密文書にハッキングしているから、むこうからハッキングされるとわかる、ということもあるんでしょう。
米軍無人機「リーパー」の文書、闇サイト販売 サイバー攻撃で窃取
2018.7.12
11:51更新http://www.sankei.com/world/news/180712/wor1807120018-n1.html
米軍の無人攻撃機の訓練に関する手順書などがサイバー攻撃で窃取され、闇サイトで販売されていたことが2018年7月11日、米情報分析会社の調査で分かった。無人機に関する最新技術などが悪用される可能性があるという。米軍も調査している。
情報分析会社「レコーデッド・フューチャー」によると、盗まれたのは米軍のMQ9無人機リーパーの手順書や無人機の運用に関わる要員のリストなどで、先月に闇サイトで売り出されていた。
手順書などはリーパーが配備されている米西部ネバダ州の空軍基地に所属する米兵のコンピューターから盗まれたとみられ、同社は真正の米空軍の文書であることを確認したという。脆弱性のあるネットワーク機器を通じてデータ窃取されたとみられる。
米軍の機密窃取が最近相次いで明らかになっており、米海軍が導入を目指す対艦ミサイルに関する機密を中国政府のハッカーが窃取したと報じられていた。(ワシントン 共同)
【こちらもさらに過熱化!?米中経済戦争】
米中の国家戦略の狭間で、双方の生産農家や関連事業者は泣きたい気持ちでしょうね。いや悲鳴をあげているかも・・・。
米中関税戦争、ハイテクをめぐる覇権争いも
岡崎研究所
2018年7月11日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13269
2018年6月15日、トランプ政権は、中国からの輸入品 1,102 品目、500億ドル相当に対して、25%の制裁関税を課すと発表した。まず 7月6日に340 億ドル分に関税を課し、残りの160億ドル分については、後に関税を課すとしている。
注目されるのは、4月に発表された原案と比べて、ハイテク関連品を重視したものとなっていることである。原案からテレビなどの消費者向け汎用品などを削除し、その代わりに、光ファイバー、計測機器、電子部品の製造装置などハイテク産業関連品目が追加された。
これは、「中国製造2025年」(「メイド・イン・チャイナ 2025」)を念頭に置いてのことと報じられている。
「中国製造2025年」は、中国政府が2015 年に発表した産業高度化に向けた長期戦略である。低コストで大量生産する現在の「製造大国」から、2025年に「製造強国」、建国百周年の 2049年に「世界トップ級の製造強国」を目指すとしている。トランプ政権は、「中国製造2025年」を、ハイテク分野で米国に追い付き追い越そうとしている戦略とみなしている。USTRのライトハイザー代表は、そのために中国政府がハイテク企業に補助金を出したり、外国企業から先端技術を奪おうとしたりしているのは問題である、と批判した。
6月15日に米国が追加した制裁関税対象品目は、中国が「中国製造2025年」で重点投資する分野の産業関連である。
このように、トランプ政権の対中制裁関税付与は、当初の貿易赤字削減から、ハイテク分野での米中の覇権争いの様相を呈してきている。
トランプ政権は「中国製造2025年」自体を批判しているが、産業政策それ自体は批判されるべきものではない。欧州諸国も日本も実施してきた。問題は、その手段として、巨額の補助金を交付したり、知的所有権を侵害したり、中国に進出した外国企業に技術移転を強要したりすることである。これらの不正な手段は批判されるべきである。
実際、この中国の不正なやり方に関しては、日本や欧州諸国も認識を共有している。7月3日付の当コラムでも、「日米欧三極が表明した中国への懸念」と題して取り上げた。
しかしながら、中国への対抗措置として、関税を使うのは、報復を招くことも含み賢明なこととは思えない。理想的には、中国の不正手段によるハイテク産業育成について、共通の利害を持つ欧州、日本やカナダなどの諸国と米国が協力して、中国に働きかけるのが望ましいだろう。もちろん、日米欧三極通商大臣会合等の試みはあるが、トランプ政権は、貿易問題となると、協力どころか、鉄鋼・アルミニウムに対する関税付与などで同盟諸国とも対立している。
いずれにしても、米中の関税戦争は、貿易赤字問題に加えて、ハイテクをめぐる米中の覇権争いの要素が加わり、妥協は容易ではない。米中両国とも関税戦争の弊害は理解していても、当分の間は、話し合いによる落としどころの探り合いをしながらも、貿易戦争の回避は難しいだろう。
2018年7月31日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13477
トランプ政権は、中国の米国からの技術取得に焦点を当て、中国が米国の知的財産権を不当に侵害していたとして、通商法301条に基づき、中国のハイテク関連商品を含む対米輸出品に報復関税を課するとともに、中国の米ハイテク企業への投資規制のみならず、米国の対中技術輸出の規制も図ろうとしている。
ハイテクをめぐる米中の確執
岡崎研究所
2018年7月31日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13477
トランプ政権は、中国の米国からの技術取得に焦点を当て、中国が米国の知的財産権を不当に侵害していたとして、通商法301条に基づき、中国のハイテク関連商品を含む対米輸出品に報復関税を課するとともに、中国の米ハイテク企業への投資規制のみならず、米国の対中技術輸出の規制も図ろうとしている。
最近の代表例は、香港に本社を置くBroadcom社によるQualcomm社買収の差し止めである。Qualcomm社は、スマートフォン向けプロセッサーの世界最大の米半導体メーカーであり、トランプ政権はQualcomm社が中国の手にわたることに危機感を抱き、財務省傘下の対米外国投資委員会が、安全保障上問題であるとして買収を差し止めたものである。
中国の最近の技術革新の進展は著しいが、ハイテク産業の振興には依然として外国、特に米国の技術を必要としている。技術革新の推進は、先進工業国に追いつこうとした日本、韓国、台湾も積極的に行ったが、これら諸国がある段階から開放経済の下で、民間主導で推進したのに対し、中国はあくまで国家主導で行おうとしているのが特徴である。
米国は、中国のハイテク産業の推進を米国に対する挑戦と受け止め、危機感を抱いているが、現状では中国のハイテク関連対米投資は、2017年で、Tencent社によるUberへの80億ドルの投資を含め、130億ドルに過ぎなかった。
また、米国の対中技術輸出も、2017年で300億ドルにとどまった。米国の対中貿易の総額が 7000億ドルを超えることに照らせば、たいした額ではない。
また、中国による米国技術の取得がすべて不正な手段で行われているわけでもない。
しかし、今後ハイテクを巡る米中の確執は高まることが予想される。
焦点の一つは、5Gである。5Gは次世代のワイヤレスの基準で、今後のテレコム分野の動向を左右する基幹技術と見られており、中国は「中国製造2025」で最重要分野の一つと位置づけている。
米関連団体の報告によれば、中国で大手スマートフォンメーカーの華為技術(ファーウェイ)が 5G の研究開発を積極的に進めていること、政府が支援していることから、現時点では5Gで中国がわずかではあるが米国をリードしているとのことである。トランプ政権が危機感を抱くのも無理はない。
Qualcomm社の買収差し止めも、Qualcomm社が5Gの研究開発に巨額の支出をしてきたことが、一つの理由と考えられている。
このような状況を「技術保護主義」というのは行き過ぎの感じがするが(注:6月28日付ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したモルガン・スタンレー社グローバル戦略部長のルシール・シャーマ氏の言葉、)ハイテクを巡る米中の確執が今後も続き、あるいは拡大することは十分考えられる。
技術の戦いは安全保障に関わってくる。日本としては米中の技術の戦いは他人事ではない。日本も、米国同様、自国の先端技術を保護する必要があるだろう。日本の技術が中国に取得されたり、先端技術の企業が中国に買収されたりしたら、それは日本の経済発展にかかわるばかりではなく、日本の安全保障にもかかわって来る。米国の議会は、これらのことに、行政府以上に厳しい態度をとることもある。日本の国会は、過去に、議員立法で科学技術基本法を成立させたが、今後、「技術立国の日本」を守り、維持、発展させることを、より真剣に議論する必要があろう。
【進む宇宙空間の軍事利用・宇宙軍を再編強化したい?アメリカ】
「宇宙軍」を創設したいトランプ
岡崎研究所
2018年7月9日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13270
2018年6月18日、トランプ米大統領は、「米国を守るには宇宙で優越しなければならない」として、国防総省に対し、米軍第6の組織(陸海空、海兵隊、沿岸警備隊に続く)となる「宇宙軍」創設に必要なプロセスを直ちに開始するよう指示した。トランプが「宇宙軍」の創設について言及したのは今年3月、5月に続いて、今回で3回目となる。
現在、米国では、宇宙における軍事関連活動は、空軍が予算関連を所掌し、統合軍レベルでは戦略軍が運用を担当している。冷戦期には、宇宙は主にソ連の核・ミサイル活動の監視や早期警戒、米国の核ミサイルの指揮統制・ターゲティングなど、主に戦略レベルの運用を主としてきた。冷戦後、宇宙は、GPSを用いた精密誘導攻撃や軍種横断の統合作戦など、戦術レベルの行動においても欠かせない領域となってきている。
宇宙の戦略的・戦術的重要性については中国やロシアがよく理解している。両国は、米国の宇宙における優位を切り崩せれば、米国の戦略・戦術上の優位を覆すことが可能であるという観点から、対宇宙能力に力を注いでいる。中国は制空権の宇宙版ともいうべき「制天権」の概念を掲げ、2007年には衛星破壊実験を実施し、2015年には宇宙の軍事利用やサイバー空間での作戦を行う戦略支援部隊を発足させるなどしている。ロシアも航空宇宙軍を創設し、軍事衛星の打ち上げ、ミサイル防衛などを担っている。
一方、宇宙空間の利用者が増えたことで、衛星軌道が混雑したり、デブリ(宇宙ゴミ)が増えるなどして、宇宙空間の安全な利用を目的とした恒常的な宇宙状況監視(space situational awareness:SSA)の重要性が指摘されている。これらを実施するには宇宙に配備するセンサー衛星の数を増やしたり、それらを支える地上インフラに投資することが必要になる。また、宇宙配備センサーはミサイル防衛にも有効となる。
しかし、宇宙活動を所掌する空軍は、戦闘機や爆撃機などの正面装備の開発取得を重視しており、必ずしも宇宙分野に優先的な投資配分が行われていない。そうした事情に鑑み、空軍から宇宙機能を独立させて、予算や取得、運用にかかる権限の自律性を高めるべし、という議論が出てくる。これは決して不思議なことではない。
他方、「宇宙軍」独立反対論者の主な主張は、既に空軍内で事実上の宇宙軍機能はある、陸海空の統合作戦でも大変なのに「宇宙軍」を増やすと統合化がより難しくなり権限争いになる、独立させても軍内部の指揮権限を整理するだけなので大幅な予算増は望めない、といった点が挙げられる。マティス国防長官をはじめ、国防総省の上層部は慎重な意見であった。
2018会計年度においては、下院が、空軍内部の組織として「宇宙部隊」を組織すべしという条項を盛り込んだ国防授権法案を通したのに対し、上院では「宇宙部隊」を独立させるべきではないという法案を通した。両院調整段階では独立は成立せず、今年中に国防総省が「宇宙軍」独立のための研究とロードマップの策定をするということで妥協した経緯がある。
こうした状況にトランプが業を煮やして今回の指示発表ということになったようである。トランプの発言は、研究とロードマップ作製の作業をより加速させることになろう。しかし、マティス国防長官は、「宇宙軍」の創設について、法制化や綿密な計画が必要で時間と労力がかかるとしている。宇宙の戦略的・戦術的重要性、限られたリソースなどを総合的に勘案して、ベストの解を導きだすには慎重に取り組む必要があると思われる。ただ、癇癪持ちのトランプが、米軍の宇宙への取り組みを加速させることになるのか、かえって混乱させるのか、不安な面がある。
なお、日本の宇宙について考察すると、民生利用者が大きな権限を持っており、安全保障面での取り組みは依然として小さい。自衛隊は今年からようやく、シュリーバー演習という米戦略軍主催の多国間机上演習に公式参加できるようになったが、米側には「日本側には宇宙の軍事活動についてきちんと議論できる人が少なすぎる」という不満があるという。米国の「宇宙軍」創設問題と直接関係があるわけではないが、これを良い機会に、日本でも宇宙の安全保障における利用に関する省庁間協力を加速させ、防衛省に予算と人材をしっかり手当てすることが求められているのではないだろうか。
トランプ政権・宇宙戦争プログラム発動!?
〈管理人より〉アメリカは絶対に認めないでしょうが、いわゆる地球製UFOといわれるTR-3Bアストラに代表される異星人と共同開発?したといわれる兵装が、本当にアメリカのものであるとすると。アメリカは宇宙戦略で優位にたつことに対してエンドレスな予算配分をしているのかもしれません。インテリジェンスに関わるところ、監視、偵察についての宇宙戦略はアメリカの独断場でしょうね。
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