2018年8月19日日曜日

陸上自衛隊を改革せよ! ~常設の災害専門部隊の編成などいかが?~

米戦略家たちの常識は「陸自は縮小が必要」

余剰人員で「災害救援隊」を創設せよ
北村淳
静岡県御殿場市にある東富士演習場で実施された陸上自衛隊「富士総合火力演習」の予行で、ヘリコプターから懸垂下降する隊員(2017824日撮影、資料写真)。(c)AFP/Toshifumi KITAMURAAFPBB News
 日本では言うまでもなく昭和20815日が第2次世界大戦の終戦記念日とされている。だが、イギリスではその1945815日が対日戦勝記念日とされており、アメリカでは日本が降伏文書に署名した194592日が対日戦勝記念日とされている。いずれにせよ、戦争に勝利した側も敗北を喫した側も、戦史から教訓を学び取ることは将来にわたって平和を維持していくために不可欠である。教訓といっても、自らの成功や失敗だけでなく相手方の成功や失敗からも多くを学び取らねばならないし、自らが関与しない古今東西の戦例からも様々な教訓を得ることが可能である。

生かされていない教訓「陸戦は避けよ」

 周辺の軍事情勢が厳しさを増している今日、日本が第2次世界大戦から学び取り現在に生かさなければならない様々な教訓のうち国防の基本方針に関わる筆頭は、「外敵の軍事的脅威は海洋で打ち払わなければいけない」ということである。
 この教訓は、沖縄や大平洋の多数の島嶼や樺太などで繰り広げられた陸上戦(とりわけ多数の民間人を巻き込んだ沖縄や樺太の地上での戦闘)のような陸上での防衛戦を前提としてはならない」と言い換えることができる。
沖縄で日本軍を攻撃する米軍(写真:米国防総省)
しかしながら、今日の日本国防当局が必ずしもこの教訓を生かしているとは思えない。というのは、陸上自衛隊は日本国内の陸上での防衛戦を前提としているからである。もちろん、日本国内に立てこもって玉砕するまで戦い抜くという意味ではない。アメリカの日本救援軍が来援して外敵を蹴散らしてくれるまで抵抗するのが陸上自衛隊にとって最後の防衛戦ということになっている。
 だが興味深いことに、日本政府や防衛当局が期待している救援軍を編成するかもしれない米海軍や海兵隊関係者たちの中には、陸上自衛隊の存在目的に対して疑問を呈する戦略家たちが少なくない。

陸自の妥当な規模は最大で5万~6万名

 米軍関係者の一部は、近年頻度を増した陸上自衛隊との合同訓練や情報交換などによって日本の防衛態勢ならびに陸上自衛隊の現状を理解するにつれ、以下のような意見を口にするようになった。
「今日、日本が置かれている軍事的環境ならびに日本の国防予算規模から判断すると、陸上自衛隊の人的規模、兵力およそ15万名は大きすぎると思われる。反対に、中国海洋戦力(海軍・空軍・ロケット軍)の飛躍的増強に鑑みれば、海上自衛隊と航空自衛隊の規模はあまりにも小さすぎる」
「日本にとって妥当と思われる防衛戦略(これ自体、戦略家ごとに様々なアイデアがあるのだが)から導き出せる『陸上自衛隊が果たすべき役割』を土台にして必要兵力を算定すると、5万~6万名といったところが最大規模ということになる。反対に、海上自衛隊と航空自衛隊の戦力(艦艇、航空機そして人員)は相当思い切った増強が必要になり、最小兵力はそれぞれ10万名前後ということになる」
「純粋に軍事戦略的視点から冷徹に判断すると、陸上自衛隊は8万~10万名近い余剰人員を抱えており、それを削減することが日本の防衛態勢を正常化し強化する第一歩となる。このような大出血を伴う改革を、強い反発や恨みを買うことを覚悟して自ら唱道するのは難事だろう。しかしながら、陸上自衛隊の人員大削減を実施しなければ、日本の国防に未来はない」

陸自「削減」の必要性を暗に認めている日本政府

 日本政府は、海上自衛隊ならびに航空自衛隊の人員不足を少しでも補うために、海上自衛隊や航空自衛隊の施設警備などの地上任務の一部を陸上自衛隊に移管する検討を開始したという。
 海上自衛隊や航空自衛隊の基地をはじめとする施設は、それぞれ481カ所、392カ所存在し、現在、それらの警備などは海上自衛隊と航空自衛隊が自ら実施している。このような警備をはじめとする各種地上任務を陸上自衛隊が実施することになれば、海上自衛隊も航空自衛隊も、兵員数を増加することなく、艦艇や航空機に関係する要員を(若干とはいうものの)増加させることができるというアイデアである。
 日本政府がこのような「クロスサービス」を検討しているということは、上記の米軍戦略家たちと同じく、陸上自衛隊兵力は多すぎ、海上自衛隊と航空自衛隊の兵員数は少なすぎると考えていることを意味する。

常設「災害救援隊」創設というアイデア

 とはいえ、陸上自衛隊によるクロスサービスを、海上自衛隊や航空自衛隊の移籍可能なポジションへの移動という形で実現したとしても、そのような新設ポジションは3万名程度といったところである。そのため、上記のように8万~10万名もの人員削減を実施するとなると、5万~7万名近い人々が陸上自衛隊から去らねばならないことになる。
 そこで、とりわけ「トモダチ作戦」にも参加した経験のある米海軍や海兵隊の人々が口にするのが、「退役陸上自衛隊将兵を母体とした災害救援隊の創設」というアイデアである。すなわち、陸上自衛隊から離れることになる5万~7万名前後の人々を中心にして「災害救援隊」を編制するのである。
もちろん「災害救援隊」はもはや軍事組織ではないため、防衛省の管轄下にはない。近頃石破茂・元防衛大臣や全国知事会などが提唱している「防災省」のような機関が直轄する実働部隊となる。
 ただし、新設される災害救援隊は、陸上自衛隊が保持する能力のうち災害救援に活用できる能力を保持するので、両隊の災害救援能力はオーバーラップすることになる。そのため、「陸上自衛隊から分離独立させる必要はなく、これまで通り必要に応じて自衛隊から救援部隊を派遣すべきである」といった反対意見が出てくるであろう。
 しかし、災害救援活動に特化した装備を身につけ、専門の訓練を施すことになる「災害救援隊」は、災害救援でも活躍可能というレベルの陸上自衛隊の救援部隊よりも強力な災害救援部隊となるのは自明の理である。
 また、常設災害救援隊の設置に関して、「災害救援を専門とする組織は、消防組織や警察組織や軍事組織と違って、大規模災害が発生しない平時において訓練以外の任務がないではないか」という批判も加えられるかもしれない。しかし、軍隊もその本務は「外敵との戦闘に打ち勝つ」ことにあるのであって、戦闘や戦争が発生していない平時にあっては訓練が任務となっているのである。

災害救援隊の創建を即刻検討すべき

 もちろん、上記の米軍関係者たちが自衛隊や防衛省の人々に対して、
「陸上自衛隊は効率的な組織改革を実施すれば、5万名で十分である」
「陸上自衛隊が米軍側と繰り返している合同訓練には軍事的には疑問符が付せられるものが多い。陸上自衛隊の存在意義をアピールするために無理矢理バカバカしいシナリオを作り出しているとしか考えられない」
といった本音を公的に口にすることは絶対にあり得ない。そのため、何らかの理由で自衛隊の戦力がアメリカ軍にとっても本当に必要にならない限り、上記のような提言が日本側に対してなされることはないであろう。

 しかしながら、頻発する大規模自然災害と、強化すべき海洋戦力という現状に鑑みるならば、「陸上自衛隊から削減するべき人員を母体として災害救援隊を組織する」というアイデアは、即刻真剣に検討されてしかるべきアイデアである。
〈管理人より〉陸上自衛隊の形は、第二次大戦後に我が国を実質占領したアメリカ合衆国の国防圏を防衛するために、日本列島を「戦場」にすることを前提として編成されています。それでアメリカ本国が守られればいい、といういわばアメリカ主体の防衛戦略となっています。基本的には陸上だけではなく、海上でも空でも同じことです。だから海上自衛隊には正規空母がなく、戦略は潜水艦部隊の抑止が主体、航空自衛隊については、列島自体が空母という前提なんでしょう。戦闘機による迎撃に特化、爆撃機はもたされませんでした。本土が戦場になることが前提ですから、陸上自衛隊はその基本戦略として採用したのが、昭和20年の旧陸軍による「決一号作戦」いわゆる「本土決戦構想」です。我が国をとりまく安全保障環境は大きく変化しました。いい加減「本土決戦構想」から脱却すべきなんですがね。
陸上自衛隊第一空挺団

島嶼防衛の要 AAV-7水陸両用車両

陸上自衛隊は、本土決戦体制から本土周辺島嶼防衛のために領海周辺へ戦力を投射できる体制に「改革」すべきです。アジアの安全保障環境を考えると転換実現まで時間は多く残されていないように思えます。

【待ってはくれない共産中国】

中国海兵隊、2年後に3倍 台湾・尖閣占拠、視野か 米国防総省の年次報告
 【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省は2018816日、中国の軍事・安全保障の動向に関する年次報告書を公表した。報告によると、中国海軍は、敵前上陸などを担う陸戦隊(海兵隊)について、現状の約1万人規模(2個旅団)を2020年までに3万人規模超(7個旅団)まで拡大させる計画であることが判明した。
 陸戦隊には新たに「遠征作戦」などの任務も付与されるとしており、台湾の軍事的統一や尖閣諸島(沖縄県石垣市)の占拠などを視野に兵力を増大させている可能性がある。
 報告書は、陸戦隊の拡大を「中国海軍に関する昨年の最も重要な変化の一つ」と指摘。中国が広域経済圏構想「一帯一路」を展開し、世界各地への影響力浸透を図る中、海軍力の増強に力を入れている。
 陸戦隊は中国が同構想をにらみ海外に展開する軍事拠点の「先遣部隊」の役割を担うとみられ、昨年8月に北東アフリカのジブチに設置された中国軍初の海外基地で既に活動が確認されたとしている。
 中国海軍は潜水艦の保有数を現行の56隻から20年までに69~78隻に増強させるほか、初のカタパルト装備の空母を今年中に建造を開始する見通し。
 報告書はまた、中国海警局(沿岸警備隊)の船艇が昨年、尖閣諸島の周辺12カイリ内を「10日に1回」の頻度で航行したと指摘。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島では3つの人工島の軍事拠点化が引き続き進行中であるとした。
 報告書はさらに、中国空軍が核兵器運用任務を正式に付与されたとし、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と戦略爆撃機で構成される核運搬手段の「3本柱」が中国で初めて確立されたと指摘した。
 報告によれば、中国空軍は戦略爆撃機による長距離渡洋爆撃が実施可能な範囲を急速に拡大させるとともに、米国や同盟諸国への攻撃を想定した訓練を進めているとした。17年の中国の軍事予算は1900億ドル(約21兆円)超。28年の公式軍事予算は2400億ドル以上になる見通しだとしている。

〈管理人より〉共産中国は、本気で自国の国益伸長のために海洋覇権を確立すべく、戦略を実行してきています。彼らにとって我が国は「大国」です。軍事的に経済的に、国際政治の舞台で共産中国の脅威にならないようにしかけてくるのです。周辺に脅威になる大国を作らせない、という覚悟のうえで国家戦略を有効に進めていかなくては生き残れません。織田信長や豊臣秀吉の対外政策など今の国際政治の範とできるように思うのですが、どうでしょうね。

【関連リンク】

空軍 ~核兵器運用任務を正式に付与
海軍 ~2020年までに潜水艦の保有数を現状の56隻から6978隻に増強。2018年中に初のカタパルト装備の空母の建造開始。
陸戦隊(海兵隊) ~2020年までに現状の約1万人規模を3万人規模超まで拡大。

※これらの目的は、台湾や尖閣諸島の軍事的統一や占拠を視野に入れてのことか?


【襲い来る地球規模の気候変動】
大規模な自然災害に対する備えも今や自衛隊、国防軍の重要な役割でしょう。
仮想敵は、外国の軍事力だけではありませんね。
すべての自衛隊員に災害対処のノウハウを共有していただく、ということが重要です。
常設の災害支援部隊を作るならば、国際支援の時と同じように組織を先に編成し、中身の隊員を定期的に入れ替える、という形でスキル習得をはかるといいのではないでしょうか?
もちろん実践データからスキルアップのために定期的に職務研修を行っていくことはいうまでもありません。

また災害対処のノウハウは、テロ対策にも応用できるのではないでしょうか?
我が国はテロ攻撃にも気を緩めるときではないでしょう。巧妙化、大規模化するサイバー攻撃への対処も含め自衛隊が今後「国防軍化」していくことは時代の要請です。

自衛隊の知られざる苦悩
陸上自衛隊第2師団平成30年豪雨被害への災害救助派遣
火山が噴火した時には、なくてはならない化学防護車


【みんな有事の際に活躍する自衛隊を求めています】
【自衛隊の知られざる災害派遣活動】 豪雨でフル回転 地元から感謝の声続々

平成30年7月13日、気温34度を超す猛暑の中、陸上自衛隊の第13旅団司令部付隊(海田市駐屯地=広島県)は、西日本豪雨に見舞われた広島県呉市内の小学校で給水支援に当たっていた。その様子を、小学校低学年くらいの女子児童と、母親と思われる女性が少し離れた場所から眺めていた。
(8月9日にアップされた記事を再掲載しています)
 「暑いのに何をしているのだろう」
 活動中の隊員は疑問に思ったが、給水を希望する被災者への対応を優先した。しばらくして給水希望の人波が途絶えると、2人が隊員に近寄ってきた。
 「これ
 女子児童が恥ずかしそうに差し出してきた筒状の画用紙を広げてみると、ちぎり絵で「ありがとう」。聞くと、豪雨被害で気持ちが落ち込んでいたが、自衛隊が必死にがんばる姿を見て励まされ、ちぎり絵を贈ることにしたという。しばらく様子を眺めていたのは、支援活動の邪魔になってはいけないという配慮からだった。
 「2人とも被災して大変なときなのに」
 隊員は被災者への支援活動への決意を新たにした。
西日本豪雨の発生を受け、自衛隊には1府7県から派遣要請が寄せられ、大雨災害としては過去最大規模の態勢で救援救助に当たってきた。全国約150の陸海空3自衛隊の部隊から、最大3万人以上を投入。元自衛官で民間企業などに勤める「即応予備自衛官」約300人も招集し、広島を中心に生活支援を展開した。即応予備自衛官の招集は平成23年の東日本大震災、28年の熊本地震に続き3回目で、大雨災害では初めてだった。
 防衛省によると、8月5日までに自衛隊が救助した孤立者は約2300人、給水支援約1万9千トン、給食支援約2万食、入浴支援約8万6千人に上る。燃料や水などの物資輸送、がれき処理、道路啓開、水防活動なども実施している。
 猛暑の中での支援活動なだけに、熱中症にかかる隊員が続出するなど、屈強な自衛隊も無傷では済まなかった。それでも、災害派遣は国防と同様、自衛隊に課された重要な任務でもある。短時間での交代制を敷くなどの工夫で乗り切っている。
こうした自衛隊の活動が報道される機会は限定的だが、支援を受けた被災者からは感謝の声が続々と届いている。現場の災害派遣部隊から届いたエピソードの一部を紹介する。
 「通信機材の点検のため倉敷市役所を訪れたところ、10歳くらいのお子さんから笑顔で敬礼を受ける。お母さんから『本当にありがとうございました』との言葉をいただいた。活動を実施する上での活力となった」(陸自第3通信大隊)
 「避難所の衛生状態の改善のため、防疫活動を実施していた。その際、高齢の女性が孫に対して『この人たちに助けてもらったんだよ。お礼をいいましょう』といって、隊員に対して『ありがとうございます!』と言ってくれた」(陸自広域防疫隊)
 「給水活動の際『毎日水をもらいに来ています。水が出ない日々なので大変助かってます』とお話いただいた。逆に私自身が元気づけられた」(空自西部航空方面隊司令部)
 また、入浴支援の利用者が書き残したノートの寄せ書きには、率直な感想が記されている。
「至れり尽くせりの風呂で、神に仏です」
 「あったかい風呂、うれしかったです。初めて被災して不安な気持ちでしたが、ここへ来てほっとしました」
 「こんなことになって初めて自衛隊の方の大切さ、すごさがわかりました」
 「今日ほど自衛隊に感謝の気持ちを感じたことはありません」
 「明日からも作業がありますが、近くにお風呂があると思うだけでがんばれます。自衛官の方の笑顔にとても癒やされました」
 「明日への活力になります。六甲の湯、最高!」
 「お風呂に入っているときだけは家のことを忘れています」
 「被災期間で『自衛隊の風呂に行く』というのが数少ない楽しみの一つでした。いつか何かの形で必ず恩返ししたいと思っています」
 西日本豪雨の発生から1カ月が過ぎた。規模を縮小しつつ自衛隊は現在も支援活動を続けている。 (政治部 石鍋圭)
〈管理人より〉有事のときの入浴サービスは、被災者とともに自衛隊員も一緒に入れるといいですね。お風呂で仲良くなれるのは我が国が世界に誇れる文化です。

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