2015年12月30日水曜日

中国人民解放軍による台湾侵攻作戦が現実味? ~【野口裕之の軍事情勢】より~

中国人民解放軍による台湾侵攻作戦が現実味?
米ランド研究所による米中戦力逆転分析の衝撃

台湾有事の際、米軍の最前線基地となる沖縄県の嘉手納基地。米ランド研究所の米中戦力分析では、緒戦の中国のミサイル攻撃で基地は一旦閉鎖を余儀なくされるという

2015.12.28 14:00更新 http://www.sankei.com/premium/news/151228/prm1512280020-n1.html

台湾に潜水艦の技術を!

《金融緩和しながら増税するのはアクセルとブレーキを同時に踏むようなもの》との政権批判があるが、国家滅亡は招かない。ところが、米国が安全保障戦略でアクセルとブレーキを踏み違えると、影響は巨大津波と化し太平洋を渡り、アジアの同盟国に襲い掛かる。

衝撃の米中戦力逆転分析

 《台湾は不沈空母である》

 連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー米陸軍元帥(1880~1964年)のメッセージに、アクセルとブレーキの操作を間違えた米国の失政が透ける。米国の「運転ミス」は後述するとして、今や不沈空母であるべき台湾は沈没の危機にある。これもまた、米国の運転ミスに端を発する。大東亜戦争(1941~45年)前より今日に至る連続運転ミスのツケは、米ランド研究所が発表した最新の米中戦力判定《米中軍事スコアカード》に現れた。恐ろしいことに、中国人民解放軍(PLA)の台湾侵攻時、台湾防衛を担う《沖縄の嘉手納基地など米軍航空基地に対するPLAのミサイル攻撃力は、2010年に迎撃する米軍と互角に、17年にはPLAが優位に立つ》。《対艦弾道ミサイルや潜水艦による対水上艦戦闘力でも17年にPLA有利になる》。


話を元帥のメッセージに戻す。朝鮮戦争勃発2カ月後の1950年8月、《米国海外戦争復員兵協会》の総会に伴い、東京発で打電したメッセージに《台湾=不沈空母》なる表現が含まれていた。
 いわく-
 《第二次世界大戦で、米国の戦略的前線は米本土や(ハワイなど)飛び地を離れ、フィリピンへと一挙に前進。太平洋全域が米国という城を守る堀に成った。アリューシャン~マリアナ列島線を軍事確保していれば、アジアで自由主義国を占領せんともくろむソ連・中共陣営の奇襲攻撃は有り得ぬ。しかし、列島線を失えば戦争は不可避だ》
 台湾有事で来援する?米空母打撃群を迎え撃つ、PLAの防衛線《第一・二列島線》に一部だぶる戦略概念だが、運転ミスとも関係する。50年1月、ディーン・アチソン米国務長官(1893~1971年)は「西太平洋における防衛線はアリューシャン~日本列島~沖縄に至る線だ」と発言し、韓国は防衛圏外との間違ったシグナルをソ連や北朝鮮、中国に送り、朝鮮戦争を引き起こす一因となった。元帥のメッセージは続く。


《陥落した台湾は敵の突出陣地と成り、沖縄への空爆力は中国本土を出撃する作戦に比し2倍の威力に増大される》

ミサイルで嘉手納は閉鎖

 今次本題はここから。
 《台湾陥落は不沈空母及び不沈潜水母艦が敵の手に有るに等しい。沖縄とフィリピンをにらむ敵の理想的出撃拠点に、同時に米軍が沖縄やフィリピンを出撃し中国大陸を攻撃する際の一大抵抗拠点にも成る》
 中国にとり、台湾の現行価値は1950年代に比べ飛躍的に高まった。資源欲しさに、東シナ海では沖縄県・尖閣諸島占領を狙い、南シナ海でも人工島を造成し軍事基地化している。東/南シナ海を分ける要衝が台湾である。中国の軍事支配を食い止めるべく、日米で戦力拡大すべき重大局面だが、ランドは《中国本土に近い台湾海峡の軍事バランスは、米軍に年々厳しく推移している》と言い切った。
 米軍航空基地攻撃力+対水上艦戦闘力の対米優勢に加え、PLAは在日米軍基地を含む日本全土を射程に収める準中距離弾道ミサイルも増強。ランドによれば《命中精度=半径必中界は90年代の数百メートルが5~10メートルへと飛躍的向上を遂げている》。


 もっと怖い分析を紹介する。台湾から最短距離に在る米空軍基地の《嘉手納基地は、少数のミサイル攻撃で数日、集中攻撃では数週間の閉鎖に陥る》。従って、緒戦で米海空軍は一旦射程圏外に下がり、態勢を整えた上で反撃する。台湾は当然、わが国も米軍反撃まで独力で戦い抜かねばならぬ。もし、日台がだらしのない戦ぶりを見せれば、米軍が来援をためらったり、戦況を注視する東南アジア諸国や韓国も雪崩を打って中国に擦り寄ったり…。
 だが《尖閣領有の日中棚上げ論》に同調する新聞が存在する日本に、土性骨が残っているのか。安全保障法制で「米国の戦争に巻き込まれた」と、戦争中に国会前でデモが行われるかもしれない。イザというとき機能せぬ日米同盟こそ中国の思うつぼ。この種のデモは中国への利敵行為に等しく、民主主義の許容限度を超える。テレビ朝日の報道ステーションやTBSのNEWS23の大ハシャギが目に浮かぶ。元帥のメッセージは、こう締めくくられている。
 《米国が台湾を守ると、中国に嫌われると説く者がおるが、太平洋における宥和主義・退却主義ほど謬論はない》


「6カ条の保証」宣言を

 今の日米両国にも通じる警告だが、米国が対中《宥和主義・退却主義》を生み落とした側面は否定しようもない。
 アクセルとブレーキの話に入る。米国は戦前、中国の謀略に乗せられ、中国を甘やかし(アクセル)日本を追い詰めた(ブレーキ)。戦後はケンポーを日本国民に「布教」し、平和を祈れば祖国の《安全と生存を保持=憲法前文》できるとする「狂信的カルト信者」を大増殖させた。牙をそぎ、再び米国に、西洋に刃向かわぬようブレーキ(洗脳)を掛けたのだ。結果、朝鮮半島の東側は安全保障上の空白となり、前述のアチソン発言もあり、朝鮮戦争を誘発。中国やソ連、北朝鮮が地球の平和をかき乱し、現在も続く。


 オバマ政権の中国甘やかし(アクセル)は目に余る。台湾への4年ぶりの兵器輸出も、中国に異常接近を謀る国民党や中国を警戒する共和党が圧力として機能しただけで、またも消極的対中牽制だった。米国の次期政権は、レーガン政権が83年に発出した《6カ条の保証》を宣言するときだ。すなわち-

(1)台湾への兵器輸出終了期限は設定せず
(2)兵器輸出に関し中国とは事前協議せず
(3)台中仲介はせず
(4)台湾関係法は修正せず
(5)台湾の主権への立場を変更せず
(6)台湾に中国との交渉を慫慂せず。


 中国をここまで傲慢で危ない帝国にした責任の全てが米国ではない。絵に描いたごとき米国の愚民化謀略を受けいれ、戦うべきときに戦えぬ国家に成り下がった日本のふがいなさも大きな要因だ。戦えぬどころか「台湾有事=日本有事」という、眼前の危機にすら気付かない。
(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS




《維新嵐こう思う》
 あまり知られていませんが、1954年に人民解放軍は、台湾の金門島、馬祖島に対し攻撃をしかけていますから、共産中国に台湾を軍事力で併合するという野心があるのはまちがいないでしょう。
 かかる想定ができていて、十分な軍備を備えないという事態はありえません。
アメリカにとっては、台湾を取られれば、沖縄やグアムが直接人民解放軍の脅威にさらされることになりますし、我が国にとっても南西諸島や先島諸島への直接的な軍事的脅威レベルがあがるわけですから、事情はアメリカと変わりません。
 台湾との間にも尖閣諸島領有問題がありますが、台湾国内には親日的な政治勢力もあり、そうした反中勢力を育てながら、友好を深めながら、必要な軍事的支援、具体的には海軍力と空軍力の強化、台湾も周辺離島を抱えている点においては、我が国と変わりませんので、島嶼防衛戦略という観点から共同演習を行われてしかるべきと考えます。
 特に海軍は、台湾海峡を超えさせないだけの戦力が不可欠で、攻撃型潜水艦の更新は台湾にとっては死活問題といえるでしょう。
 近年、豪州に対する潜水艦の共同開発が行われようとしていますが、我が国と戦略を共有していくという点においては、台湾にも海自の攻撃型潜水艦を輸出すべきでしょう。
 同じ国防線を守る側としては、武器の共有は必須条件といえる。
さらに潜水艦には、ぜひトマホーク巡航ミサイルを搭載したい。さすれば、台湾周辺近海から中国大陸内部へむけて巡航ミサイルのレンジ内に収められ、人民解放軍への抑止力となる。
 空軍は、劣勢となっている大陸側への航空優勢を取り戻すことであろう。
戦闘機の更新と戦略爆撃機の保有である。これでかつてのように、福建、浙江、広東などに航空優勢を確保するための措置である。
 何よりIT大国台湾の強みを活かせるならば、標的型のサイバー攻撃により、大陸側のレーダーサイトを無力化するという発想もできる。
 いずれにしろ我が国もまともな安全保障の観点から防衛戦略の中枢である台湾、沖縄へは必要な援助は惜しむべきではない。

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