中国空軍が編隊飛行で牽制「南シナ海に近寄るな」
11機が宮古水道上空を飛行、爆撃機で日本を牽制
北村 淳
2015.12.3(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45408
H-6Kミサイル爆撃機(写真:防衛省)
11機の各種航空機からなる中国空軍航空機編隊が、宮古島と沖縄島の間のいわゆる宮古水道上空を西太平洋に抜けて飛行した。編隊は再び東シナ海上空に戻り、一部の航空機は尖閣沖や奄美大島沖上空に接近してから中国に帰投した。
航空自衛隊は編隊に対して戦闘機を緊急発進させ警戒に当たったが、領空侵犯を企てるといった行為は発生しなかった。防衛省は、航空自衛隊が撮影した中国軍機の写真と飛行経路図を公表した。一方、中国人民解放軍当局は「今回の編隊飛行は長距離戦闘能力を向上させるための訓練である」と発表した。
中国航空機編隊が飛行した経路(図:防衛省)
8機のミサイル爆撃機と早期警戒機、2機の情報収集機
この航空機編隊を形成していたのは、轟炸6K型(H-6K)ミサイル爆撃機8機、空警200型(KJ-200)早期警戒機1機、運輸8電偵型(Y-8DZ)電子情報収集機1機、ツポレフ154M型(TU-154M)情報収集機1機であった。
H-6Kミサイル爆撃機は、古くから人民解放軍が使用しているH-6型爆撃機ファミリーの一種であり旧式機との誤解を受けやすいが、2011年に1号機が就役したH-6爆撃機の新型バリエーションである。
この爆撃機は主翼に6基の大型ミサイルを装着できるようになっており、最大積載量は12トンと言われている。そのため、長剣10型(CJ-10)長距離巡航ミサイルを6基装着することができ、日本はもちろん西太平洋地域のアメリカ軍にとっては、恐るべき爆撃機である。ちなみにCJ-10巡航ミサイルの射程圏は少なくとも1500キロメートル以上と考えられているため、上海東方沖400キロメートル上空から東京を攻撃することが可能である。
H-6Kの主たる任務は、長距離対空ミサイルによって西太平洋上空の自衛隊と米軍の早期警戒機や早期警戒管制機を攻撃することにあると言われている。また、対艦攻撃ミサイルにより、やはり西太平洋に展開する自衛隊や米軍の艦艇を攻撃することも重要な任務とされている。
今回の訓練では、航空自衛隊が撮影した写真で明らかなように、H-6Kの主翼には当然のことながらミサイルは装着されておらず、ミサイル装着ポイントを鮮明に見ることができる。もっとも、ミサイルを装着したH-6Kミサイル爆撃機が領空に接近してきたならば、“専守防衛”の自衛隊といえども撃墜対象としなければならないのは軍事常識である(アメリカ軍ならば当然そうする)。
8機のミサイル爆撃機にKJ-200早期警戒機が同行したのは「長距離戦闘能力の訓練」である以上当然であるが、Y-8DZ電子情報収集機とTU-154M情報収集機を同行させたのは興味深い。
Y-8DZ電子情報収集機は、自衛隊や米軍の航空機や艦艇から発せられている「ELINT」と呼ばれる通信以外の各種電子情報を収集するためのハイテク情報収集機である。また、TU-154M情報収集機は合成開口レーダー(SAR)開発テスト用とされている高性能情報収集機である。航空自衛隊の写真でも明らかなように、旅客機扱いで登録されているTU-154Mには国際民間機番号(B-4029)が付せられている。
KJ-200早期警戒機(写真:防衛省)
T-8DZ電子情報取集機(写真:防衛省)
Tu-154M情報収集機(写真:防衛省)
「A2/AD戦略」実施のための機動訓練
このような多数の爆撃機編隊による長距離機動訓練は、人民解放軍の対米軍戦略である「接近阻止/領域拒否(A2/AD)戦略」の一環であることは明らかである。そのため、この種の中国軍機の動向に、アメリカ海軍をはじめとする米軍関係者たちはピリピリしている。
すなわち人民解放軍は、第2列島線と第1列島線に囲まれる海域のアメリカ海軍艦艇(もちろん自衛隊艦艇も)に対して、DF-21D対艦弾道ミサイルによって攻撃を仕掛けるとともに、空軍のH-6Kミサイル爆撃機や海軍航空隊のH-6Gミサイル爆撃機などによってもミサイル攻撃を実施して、第1列島線への敵艦の接近を阻止しようというのである。
第1列島線と第2列島線
南沙諸島での米海軍の活動への牽制
また今回の編隊飛行は、A2/AD戦略実施のための訓練という意味合いに加えて、南沙諸島でのアメリカ海軍の動きを牽制するという意味合いも持っている。なぜならば、今回爆撃機編隊が進出した西太平洋空域への中国大陸からの距離は、海南島の航空基地から南沙諸島の中国人工島周辺空域までの距離に対応しているからだ。
南沙諸島の中国人工島に3カ所建設されている3000メートル級滑走路(いずれもH-6爆撃機が使用可能)はいまだに航空基地として稼働が始まっていないため、南沙諸島周辺にアメリカ艦隊が展開した場合には、人民解放軍は海南島や西沙諸島の航空基地を本拠地にした戦闘攻撃機や爆撃機によって攻撃することになる。
今回の訓練には、戦闘攻撃機は同行しなかったが、8機ものミサイル爆撃機を繰り出しての訓練には「アメリカ海軍の南沙人工島周辺海域での活動に対する牽制」という目的があるのは明らかである。
日本に対する警告、威嚇という側面も
アメリカの南シナ海での行動への牽制と同時に、巷で取りざたされている、日本政府が海上自衛隊の航空機や艦艇を南シナ海へ派遣することに対して警告を発したという側面があることも否定できない。
いくら機動訓練と言っても、ミサイル爆撃機8機というのは数が多すぎる。米軍関係者には「日本政府が南シナ海問題でアメリカに同調して、実際に哨戒機でも派遣したならば、人民解放軍は調子に乗って10機どころか30機の爆撃機編隊による“長距離機動訓練”を実施しかねない」と中国側によるエスカレートを予測している。
また、西太平洋上空での訓練の帰途、1機の情報収集機が尖閣諸島空域に接近し、爆撃機1個編隊が沖縄島沖から奄美大島沖空域を北上してから帰投したことは、安倍政権が南西諸島防衛強化にゴーサインを出したことに対応するデモンストレーションであると考えられる(これは逆に言えば、人民解放軍は南西諸島に地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が配備されることを嫌っているということの何よりの証左であろう)。
このような日本政府に対する威嚇的意味合い以外にも、Y-8DZ電子情報収集機とTU-154M情報収集機を同行させたということは、自衛隊とこの地域における米軍と自衛隊の対電子戦(ECM)能力の確認とELINT収集という実体的任務もこなしたと考えられる。
日本へのアメリカの圧力はますます強まる
今回の多数のミサイル爆撃機による機動訓練だけでなく、人民解放軍は、対アメリカ軍のA2/AD戦略を実施するために、潜水艦や水上艦艇に加えて各種航空機を西太平洋に展開させるノウハウの涵養に多大なる努力を払い始めている。
その主敵であるアメリカとしては、なんとしてでも中国軍機や艦艇の動きを第1列島線内に封じ込めておきたいと考えるのは当然である。
しかし、人民解放軍はDF-21D対艦弾道ミサイルにとどまらず、ミサイル爆撃機や戦闘攻撃機から発射する各種ミサイルを質・量ともに飛躍的に強化してきている。そのため、かつてはせいぜい中国潜水艦に警戒する程度で比較的安全に第1列島線付近に展開可能であった米海軍空母打撃群による作戦も、厳しい状況になりつつある。
アメリカ政府はますます日本政府対して南西諸島防衛を強化するよう様々な形で圧力をかけてくることになるだろう。
ただし、アメリカにとっての南西諸島防衛と、日本自身の南西諸島防衛とは、若干意味合いが違う。日本政府がアメリカ政府や、いわゆる「ジャパンハンドラー」(日本を操る人たち)の言う“南西諸島防衛強化”に唯々諾々と従っているだけでは、日本国民に対する責務を果たせないことは明確に認識すべきである。
《維新嵐こう思う》
一連の人民解放軍の牽制の呼び水になった一つの原因がアメリカ海軍によるFON作戦ですね。
「航行の自由作戦」継続へ 米国は妥協許すな
岡崎研究所
2015年12月01日(Tue)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5656
2015年10月27日、米国は南シナ海において「航行の自由作戦」の実行に踏み切りました。それに関して、ワシントン・ポスト紙とウォールストリート・ジャーナル紙が社説を掲げ、この作戦の実施を支持しています。要旨は以下の通りです。
ワシントン・ポスト「ラッセンの定期的な通航を」
10月27日、イージス艦ラッセンは南沙諸島の礁の近傍を通航した。予想された通り、中国外務省はその領域の侵害であるとして「強い不満と断固たる反対」を表明し、「必要な全ての措置をとる」と述べた。潜在的な衝突のリスクが高まったように聞こえるが、オバマ政権の決断は正しく、そもそもとっくに行われて然るべきことであった。
南シナ海における不埒で法的根拠を欠く領有権の防衛のための中国の挑発的行動に領有権を争う諸国は警戒感をつのらせていたが、これら諸国は米国が対応しようとしないことに同様警戒感を有していた。米国海軍はかねて中国の挑戦に対応すべきことを論じていたが、首脳会談を控えて、オバマ大統領が許可を留保していた。首脳会談で習近平国家主席はこれら人工島を軍事化しないと怪しげな約束をしたが、この約束は実際に試される必要がある。
これが、定期的な通航が今後も継続されるべき理由の一つである。もう一つの理由はこれが国際法の下で疑いもなく合法だということである。人工島は12海里の領海を有しない。領域が侵されたという中国の主張は9段線の主張に依拠するが、この主権の主張と米艦のパトロールに対する異議を根拠づけるものは何もない。
習近平は中国がこの地域の物理的現状を変更する間、米国にブラフをかけて傍観させておくことが出来ると結論付けていたらしい。そうではないことを習近平に解らせるためにはラッセンの行動のような更なる行動を必要とするだろう。
ウォールストリート・ジャーナル「作戦日常業務に」
ラッセンにスビ礁とミスチーフ礁の人工島の12海里内の海域を通航させたオバマ大統領の決定は正しい。これら人工島の周囲の海域、空域に対する中国の主権の主張に根拠のないことを明確にするためには更に多くのこの種のパトロールが必要となる。これら二つの礁は低潮高地であり、領海を有しない。
驚くべきは中国の動きに挑戦するまでの遅延である。習近平の訪米の雰囲気を壊すことを怖れてホワイトハウスは逡巡した。遅延は高価についた。この間に中国は埋め立てを加速させ、中国海軍は主権の侵害には「正面からの一撃」をもって臨むと脅かした。27日、中国外務省は米国の行動は「違法」だと言い、中国艦船がラッセンを追尾した。
中国の今後の出方は判らないが、米国が更に通航を続けなければその努力は損なわれる。作戦は日常業務とされるものであり、疑いを持たれている米国の気迫を証明するためには一回のミッションでは充分でない。また、特に価値があるのは豪州、日本、フィリピン、そしてもしかしてインドネシアとともに行う合同パトロールであろう。インドネシアが参加すればマレーシアとシンガポールも参加するかも知れない。
出 典:Washington Post‘Obama was right to order a sail-by in the South China Sea’(October 27, 2015)
https://www.washingtonpost.com/opinions/islands-of-trouble/2015/10/27/d8b6f5f6-7cc0-11e5-beba-927fd8634498_story.html
Wall Street Journal‘South China Sea Statement’(October 27, 2015)
http://www.wsj.com/articles/south-china-sea-statement-1445986915
https://www.washingtonpost.com/opinions/islands-of-trouble/2015/10/27/d8b6f5f6-7cc0-11e5-beba-927fd8634498_story.html
Wall Street Journal‘South China Sea Statement’(October 27, 2015)
http://www.wsj.com/articles/south-china-sea-statement-1445986915
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「航行の自由作戦」に替わり得るものはない
上記2つの社説が言っていることに違いはありません。やっとオバマ大統領は決断したかということであり、遅きに失したとはいえ、この決断を支持しています。
中国を不必要に刺激しないためでしょうか、カーター国防長官の口は重いようです。ホワイトハウスも何も言いたがりません。米国は今回の作戦の全貌を説明していません。通航したのはスビ礁だけなのか、ミスチーフ礁も含むのかも明らかではありません。また、米国は今回の作戦の国際法との関係における性格も説明していません。国務省は、「公海(international waters)を通航することは挑発的ではない」と言っているのみです。米国の認識として「ラッセン」は無害通航の態様で通航したのか、それとも無害通航でない態様で通航したのかも明らかではありません。
一方、中国外務省は「ラッセンは中国政府の許可を得ることなく違法に南沙諸島の当該島(複数)および礁(複数)の周辺の海域に侵入した」「中国当局はラッセンを監視し、追尾し、警告した」「ラッセンは中国の主権と安全保障上の利益を脅かした」と述べています。この発言振りによれば、中国の認識としては、ラッセンの行動は無害通航ではもとよりあり得ず、そもそも中国は軍艦に対する無害通航権を認めているのかも疑わしい状況です。そういう観点からは、ラッセンの行動は中国の立場を否定する効果を持ったということかも知れません。
2つの社説は「航行の自由作戦」の継続を求めています。適切な判断だと思います。カーター国防長官は今後数週間、数ヶ月継続する方針を表明しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙がいう関係国による合同パトロールは可能ならそれを排除する必要はありませんが、米国単独の「航行の自由作戦」に替わり得るものにはなりようがないでしょう。米中間の緊張の高まりを心配する声もありますが、米国としては下手な妥協はすべきではありません。
人工島の軍事施設建設を抑制させることは恐らく出来ません。関係国間の領有権争いを解決に導くことは、この際二義的なことです。中国の長期的な狙いが西太平洋から米軍を追い出すことにあることは疑いありません。従って、最も重要なことは、中国の脅迫に拘わらず、米軍がこの地域で自由な活動を継続出来るよう、その意思を明白に表現し続けることです。それには負担が伴うだけに、日本が適時、適切に支持を表明することが重要だと思います。
《維新嵐こう思う》
アメリカは、FON作戦により、南シナ海の「公海自由航行」の権利だけは確保しましたが、これを継続していくといっても人民解放軍による南沙諸島の「要塞化」に歯止めをかけることはできないでしょう。さらなる海洋拠点の拡大の阻止を基本戦略として、封じ込めをしていかなくてはいけませんが、その海洋戦略の盟主たるアメリカという国は大丈夫なんでしょうか?
中露の軍事膨張を食い止めろ・紛争招く“世界の警察”の不在
岡崎研究所
2015年11月13日(Fri) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5581
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本研究部長が、10月7日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、最近の紛争のエスカレーションの様相を描写し、それは米国の不在という力の空白を衝いて生じている、と指摘しています。
Getty Imagesより
米国のリーダーシップ欠如で伸張する“侵略者”たち
すなわち、プーチンの空軍は米国が支援するシリアの反体制派を意図的に標的としている。中国は南シナ海で人工島を作り、要塞化している。これがエスカレーションである。オバマ政権は米国の利益に挑戦する侵略的な国家に反応するか、さもなくば、米国の地位を損ない、モスクワと北京との衝突を招くことになる。
大国が侵略者を抑止することに失敗すると彼等はよりリスクのある行動に出る。侵略的な機会主義者は弱さを嗅ぎ取る。オバマ政権は、ロシアには制裁を課している、中国に対してはアジアへのリバランス政策を採用しているというであろうが、事態は明らかに協力と問題解決から遠ざかる傾向にある。右派の保守主義者と左派の進歩主義者は、力強い米国のリーダーシップは国を不必要なコミットメントにいざなう罠だという。
しかし、オバマの舵を失った外交と確信の欠如は最早無視できない。明確な米国の戦略と秩序を維持する決意を示すのでなければ空白を生む。習近平やプーチンの如き機会主義者はこの空白に入り込む。オバマは難しい選択に直面している。世界秩序の更なる浸食を黙認するか、それとも行動するか。いずれにもリスクはあるが、行動しないことによって侵略的なエスカレーションは継続する。
中国にその人工島を要塞化させる一方、米海軍が、中国が主張する虚構の領海内を航行することを控えることは南沙諸島上空の防空識別圏の設定、という更なる要求の拡大に繋がり得る。この海域には領有権を主張するマレーシア、フィリピン、ベトナムもあり、米国が傍観する間に問題は急速に制御不能に陥り得る。
ロシアに米国が支援するシリアの反体制派を破壊することを許し、アサド政権を生き長らえさせることは中東における米国の信用を失墜させ、プーチンとイランを勢いづける。イラクのシーア派の議員はロシアがイラクでもISILを攻撃するよう求めているという。
核兵器配備の可能性も
過去1年のエスカレーションを見れば、プーチンがカリーニングラードやクリミアに核兵器を配備し、或いは、バルト諸国に対して軍事行動に出るかも知れない。習近平がマレーシア(注:インドネシアの間違いか?)をそそのかし、マラッカ海峡近くのナトゥナ諸島に軍事基地を置くことすらあるのではないか。これらの可能性は、クリミアの併合や米国政府に対する図々しいサイバー攻撃に照らせば、奇想天外のことではない。
オバマ政権は、この種のエスカレーションを阻止するために行動すべきである。それには、東欧における米軍のプレゼンス、緊急時のバルト諸国支援のための武器の事前集積がある。北京には航行と飛行の自由の妨害は認められないことを警告すること、また地域的な海上パトロール隊を結成することがあり得よう。
米国に敵対する国は米国の尻込みと優柔不断につけ込む。米国が挑戦に立ち向かう、と説得されるまでは止まることをしない、と述べています。
出典:Michael Auslin,‘This Is What Escalation Looks Like’(Wall Street Journal, October 7, 2015)
http://www.wsj.com/articles/this-is-what-escalation-looks-like-1444257167
出典:Michael Auslin,‘This Is What Escalation Looks Like’(Wall Street Journal, October 7, 2015)
http://www.wsj.com/articles/this-is-what-escalation-looks-like-1444257167
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米国は毅然とした対応を
ここでのオースリンの議論は単純なことで、侵略的意図を有する国の行動はどこかで決然とした態度で拒否しなければエスカレーションは続く、特に、挑戦からの米国の逃避がこの危険を増大し、後により大きな代償を払うことになる、ということです。この議論は目新しいものではありませんが、真実を含むものです。しかし、問題はエスカレーションを遮断するためにどういう現実的な戦略があり得るか、ということです。
我が国にとっては、南シナ海の方がシリアよりも遥かに重大な問題です。人工島が要塞化されても、勝手な防空識別圏が設定されても、米海軍・空軍がこれまで通り自由に活動出来ると米国が考えているならいざ知らず、そうでないならば十分な手段を講じる必要があります。10月26日に米海軍の艦船が南シナ海の人工島の12海里内に立ち入ったのは、まだ十分とは言えないでしょうが、まずは歓迎すべきことです。オースリンが言及している措置は生ぬるいですが、やらないよりは良いでしょう。パトロール隊を組織するという案は検討に値しますが、日本も参加を求められるかも知れません。その時、積極的平和主義の真価が問われることになります。
シリアについては、穏健な反体制派あるいはクルドに対する支援を強化するくらいしか策はないのではないかと思います。10月1日、TVのインタビューで、大統領候補クリントンは穏健な反体制派や一般市民の保護のための「飛行禁止区域」や「人道回廊」をシリアに設定することを提唱しましたが、ロシアが空爆を行い、地対空ミサイルを持ち込んでいる状況でロシアが協力する筈はなく、ロシアの協力なくして「飛行禁止区域」は可能ではありません。ロシアは、米国は決定的な動きには出ないと読んでいるでしょう。米国にとっては手詰まりの状況であり、シリアでは更に泥沼化が進むでしょう。新しい大統領が就任する頃には、情勢は大きく変わっていると思われます。
《維新嵐こう思う》
かつての「世界の警察」といわれたアメリカの軍事力の復活もロシア保守派の台頭や共産中国の遅れた覇権主義を抑止するにたる要素として期待できますが、アメリカ型のグローバルスタンダード(新民主主義)自体で、民族主義やイスラム原理主義のテロ化が進んだこともありますから、一概に過去に戻れという考え方では何も解決しないと思います。やはり真の国際的な抑止機能は、「本当に機能する国連軍」ではないでしょうか?第二次大戦のヤルタ体制からくる現在の国連はもはや機能不全にはまりすぎています。かつてのヤルタ体制を超えた国際体制の構築が急務といえます。そして人類の共存をテーマに各国の力をあわせて宇宙へうってでることです。いささかSFがかっていますが「地球連邦」構想的な新たな協調体制が不可欠かと思います。あくまで理想論ですが、みなさんはどうお考えでしょうか?
やはり新たな国際体制ができたとしても覇権主義と紛争はなくならないかな・・。
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