日印関係蜜月化なるか 安全保障協力にもかかる期待
岡崎研究所
2016年01月14日(Thu) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5837
日印両首脳は、互いを高く評価し、共に中国を警戒し、その友情はアジアの将来に影響を与え得ると、12月12-18日号の英エコノミスト誌が述べています。
日印首脳会談時の安倍首相とインドのモディ首相(Getty Images)
期待高まる日印関係蜜月化
すなわち、インドのモディ首相と安倍総理は、共にナショナリストであり、安保理常任理事国入りを切望し、改革と西側との軍事的絆の強化によって自国を偉大な国にし、中国の軍事的台頭を抑えたいと思っている。そこで、今回の安倍総理の訪印は、両国の関係が単なる友情から、よりコミットした関係へと移行できるかどうかが焦点になろう。
具体的成果として期待されるのは、①日本の新幹線方式の採用、②原子力協力、③日本の救難飛行艇の売却についての合意であり、この内、①は実現する可能性が最も高い。より重要で、それだけに論議を呼ぶのは②と③で、日本がインドで原発を建設することになれば、日本はインドの核保有にお墨付きを与えたことになる。また、インドが日本の救難艇を購入すれば、日本にとって初の軍用プラットフォームの輸出となり、両国の防衛産業間の協力への一歩となる。
日印両国にとって一番重要なのは、対中牽制のためにも、当然米国との関係だが、日印関係も花開きつつある。今年、日本はインド洋での米印合同軍事演習に参加した。豪州も参加を望んでいる。合同演習の復活は、地域の中国への懸念を示すもので、モディ政権は、インドも南シナ海の航行の自由に利害があると宣言した。
ただ、インドには非同盟、日本には平和主義の伝統が残っている。従って、日印は、中国との対立が現実になっても、相手国の救援に行くことはない。ただ、それでも、両国の協力強化は中国にとって不安要因になろう。例えば、マラッカ海峡での中国船の動きについて両国が情報を共有すれば、中国の作戦行動は大きく阻まれる可能性がある。
日印間には、領土紛争や歴史的怨恨等の阻害要因がない。第二次大戦で、日本軍はインドに辿りつく前に進軍を阻まれた。また、インド独立の志士を匿ったことで今も日本を賞賛するインド人は多い。冷戦時代には両国の関係は疎遠になったが、現在、インドは米国との関係を深め、日印も友好な関係にある。もっとも、日印の経済的結びつきはまだ驚くほど乏しい。インドは世界第7位の経済大国だが、日本の対印貿易や投資は約1%でしかない。
しかし、日本との相乗効果へのインドの期待は大きい。日本には技術と資本、インドには未開拓の巨大市場があり、製造業が発展する大きな余地がある。ただ、日本の企業もインドの官僚制と貿易障壁には手こずっており、今も多くの日本企業が、政治的リスクはあってもインドより中国に魅力を感じている、と述べています。
出 典:Economist ‘Come together on the Abe road’(December
12-18, 2015)
http://www.economist.com/news/asia/21679756-leaders-india-and-japan-admire-each-other-and-fear-china-their-friendship-will-affect
http://www.economist.com/news/asia/21679756-leaders-india-and-japan-admire-each-other-and-fear-china-their-friendship-will-affect
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安全保障面での日米印連携を
上記は、安倍総理の訪印直前の英エコノミスト誌の解説記事ですが、日印関係の重要性を客観的に評価しています。
2015年12月の安倍総理の訪印は、インドの新幹線方式の採用、原子力協定の締結合意など、いくつかの大きな具体的成果を上げましたが、最も重要なのは、日印が戦略的パートナーとしての絆を固めたことではないでしょうか。特に、南シナ海について、モディ首相はインドとしても懸念しており、日印共通の大きな課題として取り組んでいきたいと述べました。そのうえ両首脳は、米国との連携の重要性を指摘し、米印海上訓練への日本の定期的参加を歓迎しました。この訓練は、インド太平洋地域の海洋問題に対処するための能力強化に資するものとされます。
これはインドが南シナ海を含むインド太平洋地域で、日米と組んで海洋の自由を守るという戦略的選択をしたことを意味します。日本にとり心強い限りです。今回、日印間で防衛装備品および技術移転協定が締結されましたが、今後とも、安全保障関連の協力を一層進めるとともに、日米印3国間の安全保障面での連携強化に努めるべきです。
なお、原子力協定の締結合意につき、核保有国インドとの合意の平和利用の確認、インドがNPT非加盟国であることへの懸念、インドが核実験をした場合の対応などが問題とされています。平和利用の確認については、そもそも原子力協定の最も重要な目的は平和利用の担保であり、協定を結ぶことによって平和利用は保証されます。インドのNPT非加盟については、NPTは米英仏露中の5か国のみを核保有国としており、インドが加盟しないと言っているのは当然で、インドが現在のNPTに加盟する可能性はありません。
インドが核実験をした場合の対応は、原子力協定の規定になじむ問題ではありません。すでに安倍総理が述べているように、核実験実施の場合には、日本は協力を停止することを宣言し、インドがそれに留意するというのが考えられる対応でしょう。
《維新嵐こう思う》インドも(共産中国の海洋覇権戦略が原因でしょうが)遠洋海軍力の強化と整備に力をいれています。我が国の新幹線や原発の技術導入にも積極的ですね。核弾頭をもちながら、通常戦力装備に難ありのインド、発展途上の海軍力。ブルーウォーターネイビーをめざす大国インドがブラウンウォーターネイビーの海上自衛隊から学ぶということも求めるドクトリンが異なるかもしれませんが、ヘリ専用とはいえ今や空母保有、運用国となった我が国の海軍力とも連携できる部分はあろうかと考えます。特にかつて我が国が国際貢献で実施してきたインド洋での洋上補給活動のノウハウなどは、インドとも共有できるのではないでしょうか?米豪と同じくインドとも合同演習の必要性を強く感じます。
なぜかメディアでは報道されない安倍首相のインドでの国会演説
【安倍外交】インドとの緊密化、次は土露の仲介か[桜H27/12/16]
2015/12/16 に公開。中国の脅威を前に必然とも言える、日本とインドの関係強化。これは、安倍総理とモディ首相が培ってきた個人的信頼関係も大いに作用している事は明かである。その安倍首相は、緊張状態にある土露両首脳ともパイプがあり、両国の仲介役としては打ってつけとの期待もある。安倍総理の進める価値観外交の、新たな展開を期待します。
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