2016年3月31日木曜日

【米中戦争の様相⑤】南シナ海の権益を確実にする共産中国vsアメリカの先進的?対中戦略

中国が16年南シナ海支配を強化する理由
岡崎研究所
20160325日(Fri)  http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6364

 米シンクタンクCSISのポリング研究員が、2016218日のCSISのサイトで、2016年は、中国がますます南シナ海における実効支配を強化しようとするため、緊張は一層激化するだろう、と指摘しています。要旨は、次の通りです。
中国建国記念以外での軍事パレードの模様
国際的な無法者と化す中国

 南シナ海問題に関する中比仲裁裁判は、今年5月下旬頃には、中比両国に法的拘束力を持つ判決を下すとみられている。
 15からなる訴訟内容は複雑であり、最終的に裁判所がどのような結論を出すのかは明らかになっていない。しかし、中国の「9段線」主張には説得力がなく、中国は国連海洋法条約が定める以上の領海、EEZ、大陸棚を主張しうる根拠を有していないとの判決が下されるのは、ほぼ確実であろう。もっとも、この判決は南シナ海で係争中の島・岩に対する中国の領有権主張に影響を及ぼすこともなければ、広範な海洋権益主張をやめさせることにもならないかもしれない。しかし判決は、中国の地形から生じる海洋主張の内容を、地図上の曖昧な点線ではない形で明確にするよう命じるものとなるはずである。
 中国は裁判所に命令されたからといって、急に主張を明確化することはないだろうが、2013年初頭にフィリピンが仲裁裁判に提訴した時から、中国は提訴を取り下げるよう躍起になってきた。判決が出て、中国が国際的な無法者として評判を落とすコストを自覚しているからである。このコストは、中国が政治的妥協を検討する一因となっている。すなわち、中国は歴史的権利を主張するのではなく、国連海洋法条約に基づく形で「9段線」を再定義し、フィリピンが提訴を取り下げることと共同経済開発に合意することを条件に、本格的な交渉に取り組む可能性がある。こうした政治的妥協を促進するために、米比は裁判所判決に対する国際的な支持を取り付けるキャンペーンを張る必要がある。判決に対する支持は、豪州、日本、欧州の他、東南アジア諸国からも取り付ける必要がある。
南シナ海で中国が軍事力を増強させる2016
 2015年末、中国はスプラトリー諸島で民間機の試験飛行を行い、運用可能な滑走路を確立した。スビ礁とミスチーフ礁の滑走路もまもなくそうなるはずであり、このまま何もしなければ2016年前半にも軍用機の試験飛行が実施されよう。その他4つの人工島でも、中国は海空軍のための港湾施設、レーダーの整備などを継続している。さらに、永興島で地対空ミサイルを配備したように、2016年に南シナ海で中国の軍事力が増強されることは明白である。
 南シナ海における中国の海空能力の向上は、東南アジア諸国に域外国の関与を求める声を大きくさせ、米国が当該海域における航行の自由作戦の頻度を上げているように、既に豪州も東南アジア海域の哨戒活動を拡大しつつある。
 日本でも豪州やフィリピンをはじめとする地域パートナー国との防衛協力を拡大するとともに、新日米ガイドラインを通じて南シナ海の哨戒活動における役割を拡大するかどうか議論されている。また、インド海軍も、ベトナムに対して装備を提供したり、日米豪と安全保障パートナーとなったりしている。

南シナ海における米国の情報・監視・哨戒能力は、今年1月フィリピン最高裁で米比拡大防衛協力協定が合法化されたことで確実に増強されよう。
 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まることが予想されるが、中国のさらなる侵略を抑止し、東南アジア諸国の権利を支援し、紛争管理のための政治的妥協を目指す多国間キャンペーンを行っていく余地があろう。
出典:Gregory B. Poling ‘A Tumultuous 2016 in the South China Sea’(CSIS, February 18, 2016
URL
http://csis.org/publication/tumultuous-2016-south-china-sea
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 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まりそうである、と米シンクタンクCSISのポリングが述べています。
 習近平政権は、「南シナ海は古代以来中国の領土である」との独善的な領土拡張の主張をくり返し、一部パラセル諸島において、地対空ミサイルを配備しつつあります。本年には、中国とフィリピン、マレーシア、ベトナムなどの間で、漁民、石油探索船、航空機の活動などをめぐって、局地的衝突が起こる可能性が強いとの本論評の予測は当たっているように思われます。
オバマ大統領の任期中を好機とみる中国
 米国の活動については、「航行の自由作戦」の頻度が上がりつつあると本論評は述べていますが、これまでのところ、2カ月に一度程度の頻度で、中国の主張する島嶼の領海や接続水域の中を米艦船が航行する程度にとどまっています。それに対し、中国はそのような米軍の活動の前で、さらに島嶼拡張工事、ミサイル配備など軍備強化に向かいつつあります。
 中国としては、オバマ大統領の任期中が南シナ海での拡張を図る好機と見ている可能性もあります。
 最近行われたASEAN首脳とオバマ大統領との会談においては、踏み込んで具体的に中国の対応ぶりを非難するには至りませんでした。中国からの働きかけがあったのでしょうが、ASEAN10カ国の足並みが一部国家のために揃わなかったことが露呈しました。
 ハーグの仲裁裁判所が中比間の仲裁結果を5月にも公表すると報道されていますが、中国は同裁判所の管轄権そのものを拒否するのではないかと思われます。中国としては、あくまでも各個撃破の形で、自らのペースで南シナ海の問題処理を目指すとの方針に変わりはなさそうです。

 日本としては、米国、ASEANの主要国と歩調を合わせた形で、国際ルールにのっとり本件を処理する方向で、これら国々と引き続き協力する必要があります。
《維新嵐》 さらに共産中国の南シナ海の南沙諸島、西沙諸島の「要塞化」にむけての動きは北村淳氏により、詳しく論じられています。我が国も安全保障関連法を施行したくらいで国家安全保障が万全になったなどと安心してる場合ではありませんよ。「戦争抑止法」である安全保障関連法を法改正などを行い、より深化させていく必要があるかと思います。わが日本も尖閣諸島を共産中国に狙われていることを夢にも忘れてはいけないですね。

すでに地対艦ミサイルも配備されていた南シナ海

ますます強化される中国の「自衛」戦力

西沙諸島・永興島(ウッディー島)の航空写真(2012727日撮影、資料写真)。(c)AFPAFPBB News

2016年2月中旬、中国が西沙諸島の永興島(ウッディー島)に地対空ミサイル部隊を展開させたことが、米軍側によって確認された。永興島は、中国が南シナ海における「海洋国土」確保の前進拠点としている島である。
 筆者は本コラムなどで、「人民解放軍が西沙諸島の永興島および南沙諸島に建設中の7つの人工島に、地対空ミサイルに加えて地対艦ミサイルを配備する日は間近であろう」と指摘してきた。ところが、“間近”どころではなかった。すでに永興島には地対艦ミサイルも配備されていたことが確認されたのだ。
地対艦ミサイル「YJ-62」を発射
中国のインターネットに掲載された写真

2016年321日、中国のインターネットに永興島らしき場所で地対艦ミサイルらしきミサイルが試射されている写真が流された。その写真を米軍関係機関やシンクタンクなどが分析した結果、ミサイルが発射されていた場所は背景などから明らかに永興島であること、そして発射されたミサイルは鷹撃62型地対艦ミサイル(YJ-62)であることが確認された。
YJ-62にはいくつかのバリエーションがあるが、いずれも地上移動式発射装置(TEL)に3基搭載され、そのTELから発射されてはるか海上を航行する艦艇船舶を攻撃する。最大射程距離は基本型のYJ-62280キロメートル以上(中国公称値)、改良型のYJ-62A400キロメートル(推定値)とされている。
水平線の彼方の艦艇船舶を攻撃するため、YJ-62ミサイルは衛星測位システム(アメリカのGPSと中国の北斗システム)を利用して海面すれすれの低高度(710メートル)を飛翔して攻撃目標に接近し、目標の直近(10キロメートル~5キロメートル)からはミサイル本体に搭載された目標捜索装置を作動させて目標の艦艇船舶に突入する。
YJ-62の最高飛翔速度はマッハ0.8程度と考えられており、対艦巡航ミサイルとしては比較的“低速”の部類に属する(とは言っても脅威ではないというわけではない)。ただし人民解放軍は、YJ-62より高速で飛翔するYJ-82や、YJ-62より高速で飛翔するだけでなく目標に突入する段階では超音速になると言われているYJ-83も保有しており、やがてそれらの地対艦ミサイルも永興島や南沙諸島人工島に配備されるものと考えられる。
YJ-62地対艦ミサイル射程圏


中国が永興島でミサイルを発射するまで
中国側によると、永興島には海南省三沙市政府機関が位置しており、それら政府機関の民間人のみならず漁業や商業に従事する三沙市民も多数居住している。そうした永興島に島嶼防衛用の地対空ミサイルや地対艦ミサイルを配備するのは、「アメリカの軍事的威嚇に対処するための完全に防衛的な自衛措置」ということになる。
南シナ海における領有権紛争は今に始まった話ではない。中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、そして台湾による、数々の島嶼環礁とそれらの周辺海域をめぐる領有権紛争は長きにわたって続いてきた。ただし、アメリカはこれまで「第三国間の領土・領海をめぐる紛争には直接関与しない」という外交鉄則を掲げ、南シナ海での領有権紛争に直接口出しすることは控えてきた。しかしながら、中国が南沙諸島に7つもの人工島を建設していることが確認されると、アメリカ海軍を中心とした対中牽制派の人々から「アメリカも何らかの形で南シナ海問題に関与すべきである」との声が上がり始めた。そして、3つの人工島に軍用飛行場が誕生することが確実になるや、オバマ政権もようやく中国に対する牽制行動にゴーサインを出すこととなった。
南沙諸島で中国が建設する人工島
 そして、実施されたのが「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)である。昨年(2015年)10月、第1FONOPとして人工島の1つスービ礁周辺にアメリカ海軍駆逐艦と哨戒機が派遣された(JBpress遅すぎた米国『FON作戦』がもたらした副作用2015115日)。
 ただし、中国による人工島の各種施設の建設スピードが緩むことはなかった。今年の正月には人工島の1つであるファイアリークロス礁に建設されていた飛行場(あらゆる軍用機が使用可能な3000メートル級滑走路)に大型旅客機が発着し、人工島飛行場第1号の運用が開始された(「中国が人工島に建設した滑走路、爆撃機も使用可能に2016114日)。
 それに対してアメリカは、第2回目のFONOPを実施する。今回は駆逐艦を西沙諸島(中国とベトナムが領土紛争中)の中建島(トリトン島)周辺海域に派遣して12海里内海域を通航させた(「それでも日本はアメリカべったりなのか?201624日)。
 すると中国軍は、西沙諸島が脅かされたことを口実にして、西沙諸島の中心である永興島に地対空ミサイル部隊を展開させた(「中国の国営メディア、『米艦艇に発砲せよ』と息巻く2016225日)。
 それに対してアメリカ海軍は、空母打撃群を南シナ海に派遣し、中国に対し海軍遠征投射能力のデモンストレーションを行った(「米国の空母打撃群派遣を中国は間違いなく逆手に取る2016310日)。
すると、上記のように中国のインターネットに、永興島で地対艦ミサイルが南シナ海に向けて試射されている状況が映し出されたのだ。
 アメリカによるFONOPは、中国の南沙諸島や西沙諸島に対する領有権の主張に対して直接的に反対するためのものではなく、「南シナ海において船舶が自由に航行できる状態を確保するためのデモンストレーション」という建前になっている。しかし、中国はそれを逆手にとって「アメリカが中国の“海洋国土”に軍事的脅威を加えている」として、「自衛措置を強化せざるをえない」という論法なのだ。
伝統的海軍戦略ではもはや対抗できない
このように南シナ海での米中衝突が“いたちごっこ”の様相を呈している中、オバマ政権の国防費大削減によって海洋戦力の低下という現状に直面しているアメリカ軍としては、日本やオーストラリアを南シナ海での対中牽制活動に引っ張り出そうと動き始めている。
 実際に、海上自衛隊と米海軍それにオーストラリア海軍が南シナ海で合同訓練をしたり、海上自衛隊の潜水艦がフィリピンに寄港したり、同じく駆逐艦がベトナムに寄港したり、オーストラリア海軍艦艇が南シナ海での定期パトロールを開始したり、日本政府が海上自衛隊の中古練習機をフィリピン軍に供与したり、といった状況が現実のものとなっている。
 また、海上自衛隊の中古P-3C哨戒機をフィリピン軍に供与するとともに、海上自衛隊自身もフィリピン・パラワン島の航空基地をベースに南シナ海のパトロールを実施する方向で準備が進んでいる。海上自衛隊哨戒機が、アメリカ海軍哨戒機やアメリカ海軍やオーストラリア海軍艦艇とともに南シナ海をパトロールする日もそう遠くはない。
 実際にアメリカ海軍では、「安倍首相や統幕長が、南シナ海への自衛隊派遣をアメリカ側に確約したのであるから、自衛隊駆逐艦あるいは哨戒機の派遣は当然である」と理解されている。
 だが、アメリカが自衛隊やオーストラリア軍を巻き込んで中国側に圧力をかければかけるほど、人民解放軍の南沙諸島や西沙諸島への各種ミサイル配備や、航空基地並びに海軍拠点の充実がますます強化されることは自明の理である。
 また、アメリカや日本そしてオーストラリアが、軍艦や航空機を繰り出して中国側を威嚇(威嚇になるかどうかは疑問であるが)しても、中国に人工島の建設や軍用滑走路の更地化などを強要することなど不可能である。
 アメリカ海軍は依然として「海洋戦力には海洋戦力で」という方針を振り回そうとしているが、永興島や7つの南沙人工島、そしてスカボロ礁にまで陸上軍事拠点を設置しつつある南シナ海の人民解放軍戦力(プラス中国海警戦力)に対しては、そうした伝統的な方針だけでは対抗しきれない状況に立ち至ってしまっている。

フィリピン大統領、南シナ海問題で潜水艦隊
の調達を検討
http://www.msn.com/jajp/news/world/%e3%83%95%e3%82%a3%e3%83%aa%e3%83%94%e3%83%b3%e5%a4%a7%e7%b5%b1%e9%a0%98%e3%80%81%e6%bd%9c%e6%b0%b4%e8%89%a6%e9%9a%8a%e3%81%ae%e8%aa%bf%e9%81%94%e3%82%92%e6%a4%9c%e8%a8%8e%e5%8d%97%e3%82%b7%e3%83%8a%e6%b5%b7%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%a7/ar-BBr70xY?ocid=spartandhp
AFP=時事】フィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領は30日、領有権をめぐって複数の国が対立する南シナ海(South China Sea)における自国の海域を守るために、同国初となる潜水艦隊の調達・運用を行う可能性があると示唆した。
 貧困にあえぐフィリピンは今まで一度も潜水艦を運用したことがなく、これまでは米軍払い下げの艦艇に大きく頼ってきた。だが、中国の軍備拡張に対応するため、フィリピンも最近は国防費を増やしている。
 南シナ海をめぐってはフィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾、ブルネイなどがそれぞれ異なる領有権を主張しており、また中国は南シナ海のほぼ全域に対する領有権を主張している。

  アキノ大統領は、中国が領有権の主張に強制的に成功してしまえば、フィリピンは自国西岸の全域の支配を失うことになると語った。【翻訳編集】AFPBB News

《維新嵐》 今まで潜水艦に対して一度も関心を示さなかったフィリピンまでもが、潜水艦隊の創設を検討しはじめたことがポイント。目の前で領土をかすめとられ、漁業権益の確保という問題で深刻な状況があるのでしょう。我が国は豪州についで、フィリピンにも潜水艦を通じて対外安保環境を構築できるチャンスですね。この機会を逃さずに政府には機動的に対応してほしい。

米国のハイテクすぎる近未来戦の全容
岡崎研究所
20160330日(Wed)  http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6422

ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、国防副長官と統合参謀本部議長を取材し、米国のハイテクにおける優位を最大限に活かす「第三の相殺戦略」についてのペンタゴンの見解を報告しています。要旨は次の通り。
iStock
先進的“超強力兵士”製作に奔走する米国
 ほとんど注目されていないが、米国防総省は、ロシアや中国を抑止し得る、新奇な武器を追求している。国防総省の当局者は、ロボット兵器、ヒューマン・マシン・チーム、先進的「超強力兵士」を作るための、人工知能や機械学習の最新ツールの利用を公然と語り始めている。当局者たちは、こうしたハイテクシステムがロシア軍や中国軍の急速な発展に対抗する最善策であると言う。
 ワーク国防副長官とセルヴァ統合参謀本部副議長へのインタビューで、これらの革命的な米兵器システムについて説明を受けた。数か月前までは軍の最高度の秘密研究だった内容である。
 ワークは「ハイテクは我々の戦闘ネットワークを強化する。ロシアと中国に十分な不確実性を与え、両国が米軍と戦うことになった場合に、核を使わずに打ち負かすことができるだろう」と言っている。
超ハイテク技術が対中露抑止力回復に資する
 国防総省内では、このアプローチは、「第三の相殺戦略」として知られている。それは冷戦中にソ連の軍事的進歩に対抗した二つの相殺戦略(第一は戦術核、第二は精密誘導通常兵器)に倣うものである。同省は、第三の相殺戦略は、高性能のロボット兵器が、ロシアと中国の技術発展により損なわれている抑止の回復に資する、としている。
 国防総省の2017年度予算には、米海軍への中国の長距離攻撃に対抗する先進的兵器に30億ドル、潜水システムの向上に30億ドル、ヒューマン・マシン・チーム及びドローンの「群れ」による作戦に30億ドル、人工知能を用いるサイバー及び電子システムに17億ドル、ウォーゲームその他の新たなコンセプトに基づく実験に5000万ドルなどが含まれている。オバマ政権は、米国の最善の戦略は技術という最大の長所を用いることだと結論付けたようである。
 ロシアと中国にメッセージを送る意味もある。ワークはロシアを「甦る大国」中国を「長い戦略的チャレンジとなり得る潜在的な技術力を持った台頭国」と表現している。
カーター国防長官は、予算教書において、「戦略的戦力室」による、小型カメラとセンサーを用いたスマート兵器、超高速発射体を用いたミサイル防衛システム、高速で抗堪性の高いドローンの群れ、などの研究を紹介した。
 ワークは、インタビューで、長さ1フィートに満たないマイクロ・ドローンPerdixを見せてくれた。ペンタゴンは、将来はこうしたドローンを組織的に用いる戦闘を考えている。
 ウクライナとシリアの戦場で、ロシアの能力が明らかになっている。今回のインタビューやその他の公開の発言で、ワークは、自動化された戦闘ネットワーク、先進的センサー、ドローン、対人兵器、電波妨害機器を含む、ロシアの軍事的前進ぶりを挙げている。ワークは「我々の敵は高度なヒューマン・オペレーションを追求しており、それは我々を大いに震えあがらせる」と警告している。
出典:David Ignatius,The exotic new weapons the Pentagon wants to deter Russia and China’(Washington Post, February 23, 2016
https://www.washingtonpost.com/opinions/the-exotic-new-weapons-the-pentagon-wants-to-deter-russia-and-china/2016/02/23/b2621602-da7a-11e5-925f-1d10062cc82d_story.html
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 第二次大戦後の米国の軍事的優位を支えたのは、米国の技術の優位でした。技術の優位は競争相手国の努力により、次第に弱まります。近年ロシアの軍事技術が著しく高まり、また、中国は20年にわたる軍事予算の大幅な拡大により軍事力を飛躍的に高めました。このように米国の軍事的優位が脅かされるに至ったので、「第三の相殺戦略」でその優位を再確立しようとしているのです。
最先端のハイテク技術でも技術優位には限界
 「第三の相殺戦略」の柱はハイテクです。ハイテクは湾岸戦争で明らかなように「第二の相殺戦略」の柱でもありましたが、さらに最先端のハイテクを駆使しようというのが「第三の相殺戦略」です。具体的には、統制された多数のロボットの編隊(陸上及び海上)、小型レールガン(電磁誘導により音速の7倍で弾丸を発射)、より小型の高性能爆弾、などです。レールガンは従来の高価な迎撃ミサイルに代わって、敵のミサイルの迎撃にも有効とされます。「第三の相殺戦略」は、中国に関しては、A2/ADに対抗するものとしても考えられているといいます。
 「第三の相殺戦略」は、中ロに対する米国の軍事的優位を再確立する重要な戦略であり、米国にとってのみならず、日本を含め同盟国の安全保障にとっても肝要です。
 しかし、「第三の相殺戦略」による米国の軍事的優位がどのくらい続くかという問題があります。中ロはこれに対抗するため必死の努力をするでしょう。技術優位はいずれ弱まるものですが、とりわけ、最近ではサイバー攻撃による技術の窃取があります。特に「第三の相殺戦略」の柱である最先端のハイテク技術の一部は軍・民両用のいわゆるデュアル・テクノロジーであると言われます。米国は国防省のみならず、民間企業もサイバー攻撃に対する備えを万全にする必要があります。
《維新嵐》 この手の話は、第二次大戦の時に大日本帝国やナチスドイツが「最新兵器」を投入して、国力に勝るアメリカに対抗する手段としたこととかぶるように思います。
兵士の損耗率が低い、限りなくゼロに近いような兵装、レールガンやレーザービームなど多くのハイテク兵器、ミステリー的な話しではUFOの技術を応用した戦略爆撃機オーロラなど他国が絶対にまねできない兵装をアメリカは保有しているのでしょうが、要は局面での戦術にどう応用できるか?トータルな意味での戦略にどれだけ有効か?ということが、実践的に検証できた時点で「兵装」としての付加価値が生まれてくるのであろうと考えます。
 ハイテク兵器の運用には、このように疑問がつきまといますが、核兵器に頼ろうとしないアメリカの対外抑止戦略はその点においては、十分評価できるかと思います。


ミサイル配備問題で広がる波紋 米中韓の決着
はつくのか?

岡崎研究所
20160329日(Tuehttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/6413
 豪州戦略政策研究所のライオンが、THAADは短距離ミサイルにも有効であり韓国にはプラスである、米国は既にグアムなどでの配備によって偵察能力を確立し、韓国配備はそれを大きく改善するものではないと2016年223日付National Interestのサイトで主張しています。主要点は次の通りです。
韓国などで配備されているパトリオットミサイル(iStock

THAAD配備問題における二つの誤解
 韓国は、北朝鮮による核実験とミサイル発射を受け、THAADミサイル防衛システムの配備について立場を変え、米国と協議している。これに対し、中国は強く反対している。
 議論には二つの誤解がある。第一は、THAADは中距離ミサイルの阻止に最も適していて、短距離ミサイルの阻止には役に立たないという主張である。第二は、THAADは韓国のためというよりも米国の対中軍事優位の強化に資するものだとの主張である。
 THAADの能力については、飛行試験結果等が短距離ミサイル阻止能力を持っていることを示している。移動式レーダーAN/TPY-2は短距離ミサイルの全航程を補足することができる。韓国はパトリオット2からパトリオット3への更新によりミサイル防衛能力を改善する。しかしパトリオットはポイント・ディフェンス・システムであり、THAADはミサイル防衛を多層化するものである。迎撃ミサイルの数は限られており、状況によってはこれらの二つのシステムでも十分でない事態は容易に起こりうる。
 中国の懸念は、米国に向けた中国の戦略ミサイルが阻止されることにあるのではなく、韓国配備が米の弾道ミサイル防衛システムの対中早期警戒機能を高めること、即ち中国の対米能力が低減されることにある。
THAADによる偵察情報が米大陸の弾道ミサイル防衛システムに組み込まれるとの中国の懸念は正しい。しかし、米国は既に確立した防衛システムを持っている。韓国配備は中国に対する米国の早期追跡能力を改善することはあろうが、実際のミサイル阻止を大きく改善するという訳ではない。大陸間弾道弾は高速度で飛行するし、高度な侵入能力を装備している。
 AN/TPY-2レーダーの配備は韓国にとりメリットがある。全体としてみればTHAAD配備は韓国にとってプラスである。金正恩が核やミサイルの開発に依存すればするほど、THAADの配備には説得力が増す。
出典:Rod LyonThe Hard Truth About THAAD, South Korea and China’(National Interest, February, 23, 2016
http://www.nationalinterest.org/blog/the-buzz/the-hard-truth-about-thaad-south-korea-china-15295
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 この記事は、THAADは北朝鮮からの短距離ミサイル迎撃にも有効であり、また中国の懸念に対しては米国の現在の偵察能力を大きく改善させるものではないと主張します。THAADの韓国への配備は、韓国にとってプラスであると結論づけています。
 米国によるTHAADの韓国への配備構想は、ここ数年韓国で大きな問題となってきました。中国は強く反対し、韓国政府は対中緊密外交政策もあり、米中の間で逡巡し決定を引き延ばしてきました。20147月に訪韓した習近平は配備をしないよう朴槿恵に直接協力を要請したといわれています。しかし、北朝鮮による1月の核実験と2月のミサイル発射等で韓国は考えを大きく変えました。216日の国会演説で朴槿恵はTHAAD配備に決意を示しました。
THAAD巡り事態はさらに複雑化
 THAADの韓国への配備は、北朝鮮の情勢等アジアの厳しい状況を考えれば、粛々と進めるべきものです。それは、韓国の対北朝鮮抑止力にもなりますし、米韓同盟の強化にもつながります。中国が懸念を持っていることは理解できますが、THAADは実体的に「防御的な」ものであり、弾道ミサイルのような「攻撃的な」兵器ではありません。また、アジア太平洋の軍事均衡を大きく変えて不安定化させるものでもありません。
 中国は対韓牽制を続けています。韓国では、中国大使が223日にこの問題で中韓関係は壊れると発言したことが大きな反響を引き起こし、メディアが社説で批判し、外交部が大使を呼び抗議するなど大騒ぎになっています。

 事態はさらに複雑化しています。223日に予定されていた米韓THAAD協議合意の発表が米国の要請で急遽延期されました。その背景には、23日のワシントンでのケリー国務長官・王毅外相会談があるようです。この会談で、米中は、国連安保理で北朝鮮に対する厳しい制裁を行うことで合意するとともに、北朝鮮との対話を再開することでも一致しました。THAAD配備問題が米中の議論の対象になり、中国の賛同を必要とする国連安保理での北朝鮮制裁問題にもリンクされたようです。
《維新嵐》 なるほど朝鮮半島にTHAADを配備することにより、共産中国の中距離弾道ミサイルの抑止機能も持たせられるわけですね。しかし長射程の巡航ミサイルについては、何ら対策がないから、完璧なミサイルディフェンスというわけでもないですね。
しかし韓国は首都ソウルが、北朝鮮との国境からの長距離砲のレンジ内だというのに、このあたりの対策を考えなくていいのかな?短距離ミサイルには弾頭に核兵器は搭載できないでしょう?我が国では、弾道ミサイルの迎撃は、国民の死活問題ですが、韓国の安保はまず北朝鮮国境にあるように思います・





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