2016年3月18日金曜日

【アメリカ海兵隊からの提言】大規模災害に備えて日本海兵隊ドクトリンを構築すべきだ!

張り子の虎にしてはいけない日本の水陸両用能力
装備だけ調達しても海兵隊にはなれないと危惧の声
北村 淳  2016.3.17(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46349
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)等がある。


トモダチ作戦で揚陸艇に乗り込み気仙沼大島に着岸した31MEU救援部隊(写真:米海軍)

3月を迎えると、「トモダチ作戦」に参加した海兵隊将校たちとの間で日本と水陸両用戦能力というテーマがしばしば話題に上る。彼らは次のように語る。
「大震災当時、もし日本に海兵隊的能力、少なくとも水陸両用能力が存在していたならば、かなり多くの人々の命を救うことができたにちがいない」
「さらに残念なのは、たまたま『31MEU』(第31海兵遠征隊)が東南アジアで作戦中で不在だったことだ。31MEUが緊急展開できていただけでも2000名の命を救うことができたと思う」
本に海兵隊的能力が存在していれば・・・
 東日本大震災が発生した当時、沖縄を本拠にしていたアメリカ海兵隊の実働部隊本隊である31MEUは東南アジアで活動中であった。そのため、被災地救難支援活動へ緊急展開できたのは、ヘリコプターや輸送機を中心とする留守部隊であった。
 留守部隊は翌日の312日から支援活動を開始し、14日には仙台に前進司令部を設置し、海軍や空軍とも協力して本格的支援活動を開始した。いわゆるトモダチ作戦である。
16日には、海兵隊と嘉手納から派遣された空軍特殊戦術飛行隊によって仙台空港が使用できるようになり、17日には東南アジアから揚陸艦に分乗して急行してきた31MEUも秋田沖に到着し、支援活動を開始した。やがて太平洋側に回り込んだ31MEUは揚陸艦から被災地に揚陸艇やヘリコプターでアクセスして、本格的な救援支援活動に従事した(拙著『写真で見るトモダチ作戦』並木書房)。
 
 このトモダチ作戦に参加した海兵隊将校たちが「イラクやアフガニスタンの戦場とは直接比較はできないが、破壊規模という点ではレベルが桁違いなほどで、歴戦の海兵隊将校といえどもこれまでになく大きな衝撃を受けていた」と口々に言う。
 それに加えて、冒頭で紹介したように、日本に海兵隊的能力が存在していたならば、より多くの人命を救うことができたとの感想を口にするのだ(もちろん、この種の感想はあくまで仮定の話であり、日本に海兵隊的能力が存在していたならば数千人の人命が救われたのかどうかは分からない)。
悔しさを口にする背景
なぜ「海兵隊的能力があれば、多くの人命を救えたにちがいない」という声が上がるのか?
 じつは、トモダチ作戦が実施されるより数年前から、アメリカ海兵隊では「島国国家、日本の防衛にはアメリカ海兵隊的な能力を有した組織が必要である」といった意見を日本側に向けて発信していた。筆者もその意見には賛成であり、推進活動の一環として『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房出版、2009年)を上梓したり、『米軍が見た自衛隊の実力』(宝島社、2009年)で海兵隊側の構想を紹介したりした。
 そして、2010年春にはNHK沖縄の取材チームを太平洋海兵隊司令部に案内した(取材班は2週間にわたって緻密な取材を実施した)。その際、海兵隊の司令官はじめ幹部将校たちはインタビューに答え、「我々海兵隊の各種能力は、もちろん戦闘のためのものではあるが、日本のような島国における大規模自然災害に際しては、まさに獅子奮迅の働きをする。日本は海兵隊的能力を構築することが急務であると考える」といった趣旨の話をしていた。
しかしながら、そのような海兵隊の声は日本政府や国会などに届きようがなく、日本は海兵隊的能力を保持しないまま「3.11」を迎えてしまったのだ。
このようなバックグラウンドがあるため、多くの海兵隊将校たちが「海兵隊的能力があれば、多くの人命を救えたにちがいない」との声を上げているのである。


海兵隊的能力とは何を意味するのか?
ところで、海兵隊将校たちが口にしている「海兵隊的能力」とは何を意味しているのか。
 それは、「揚陸艦などをベースにして海から陸にアクセスする水陸両用能力」「陸上・航空・海上の戦闘・補給資源(装備・人材)による統合運用能力」、それに「様々な突発事案に即応した緊急展開能力」の3つのカテゴリーの軍事的能力である。
3.11当時の日本にそれらの能力があったのかというと、水陸両用能力はほぼゼロ、水陸両用能力と密接に関連する統合運用能力も極めて低調であり、緊急展開能力のうちでもアメリカ海兵隊CBIRF(化学兵器、生物兵器、放射性物質兵器、核兵器、爆発物事案に対処する即応部隊)のような対放射能汚染対処即応能力もほぼゼロという状況であった(本コラム「米国『トモダチ作戦』が照らし出す日本の有事対応能力の限界」「なぜもっと早く米軍『CBRNE』部隊へ支援要請しなかったのか」「被災地で自衛隊がアメリカ海兵隊に後れを取った理由」参照)。
 このため、太平洋海兵隊をはじめとする海兵隊側は、トモダチ作戦を通してだけでなく、その後も機会あるごとに日本国防当局に対して海兵隊的能力構築の必要性を強調し続けた。
陸自がひときわ力を入れる強襲上陸作戦能力
そうした海兵隊側の呼びかけも後押しとなり(もちろんそれだけではないが)、日本国防当局は海兵隊的能力の構築に向けて大きく舵を切り始めた。
 ただし、日本側が「飛びついた」のは水陸両用能力の構築である。とりわけトモダチ作戦以来アメリカ海兵隊が直接コンタクトを強化している陸上自衛隊が、熱心に水陸両用能力の習得に励んでいる。

今年もカリフォルニアで開催された海兵隊と陸上自衛隊の合同訓練IRON FIST 2016(写真:米海兵隊)


 陸上自衛隊がひときわ習得に力を入れているのは、水陸両用戦の“花形”である強襲上陸作戦能力である(揚陸艦から敵勢力が陣取っている海岸地域に揚陸艇や水陸両用装甲車で殺到して橋頭堡を確保し、引き続き揚陸用ホバークラフトやヘリコプターそれにオスプレイなどで増強部隊を送り込み海岸地域を占領し、大規模な陸軍部隊の受け入れ態勢を整える)。
 しかしながら、地対艦ミサイルや対戦車ミサイルが発達した現代において、敵が待ち受けている海岸線に、揚陸艇や水陸両用装甲車に分乗した海兵隊が殺到する強襲作戦などは起こりえないと考えられている。アメリカ海兵隊自身も、「敵の防御が欠落している“ギャップ”を見つけて、迅速に上陸を敢行することこそ、現代の上陸作戦(強襲ではなく襲撃と呼ばれる)の主たる姿である」と考えている。
 とはいっても、沖合の揚陸艦などから揚陸艇や水陸両用装甲車、それにヘリコプターやオスプレイなどで海岸地域に殺到する上陸能力は、島国日本における大規模自然災害での緊急救援作戦には極めて威力を発揮する。したがって、「戦闘よりも災害救援に投入される度合いが大幅に多い自衛隊にとっては、必要なステップと言ってもよい」という海兵隊側からの指摘はあながち間違いとはいえない。
装備を調達すれば海兵隊になれるのか?
 ただし海兵隊から見て、自衛隊の取り組みを高く評価すると同時に、若干の危惧が存在していることもまた確かである。
 他国の軍隊の状態について、海兵隊側が公式に自衛隊側に危惧の念を伝えることはもちろんないが、同盟軍の戦力を評価する会合やプライベートな場などでは、数々の問題点が指摘されている。

たとえば「水陸両用能力は、高度な統合運用能力なしには発揮し得ない。陸上自衛隊と海上自衛隊それに将来的には航空自衛隊との緊密な統合運用能力が構築されなければ、真の水陸両用作戦は実施できない」といった声は頻繁に耳にするところである。
 それよりも深刻と言えるのは、装備調達優先の姿勢である。海兵隊側は次のように指摘する。
「オスプレイや水陸両用装甲車を調達したら海兵隊化されると勘違いしてしまうのは大きな誤りだ。それらの装備を何のために、どのように使用するかのノウハウや、より大きく言うならば日本における水陸両用組織のドクトリン(行動哲学)が定まっていなければ、形だけのまさに張り子の虎のようなものになってしまう」



水陸両用装甲車AAV-752両調達しただけでは海兵隊にはならない(写真:米海兵隊)


 大震災から5年を経た現在、被災地復興においてもかさ上げ地造成や防潮堤建設という「ハードウエア」重視で、被災者の心のケアやコミュニティ形成といった「ソフトウエア」の立ちおくれが指摘されている。それと同じく、自衛隊における水陸両用能力の構築も「なぜ水陸両用能力が必要なのか?」「どのようにして水陸両用能力を用いるのか?」といった「ソフトウエア」の側面に対する再検討が必要である。

《維新嵐》 陸上自衛隊の併用戦能力については、本州の陸上自衛隊の師団、旅団にそれぞれオスプレイと機動戦闘車を配備することで、空中機動にての上陸投射が可能なあたり、新たな海兵隊のドクトリンをふまえているものと考えられます。水陸機動団だけでなく陸自全体が「海兵隊」としての存在に生まれ変わっていくものととらえています。
 ただ人民解放軍を抑止するだけの併用戦能力のドクトリン、大規模災害における陸自の併用戦能力のドクトリンは具体的に完成されていないものと考えられます。今後の課題ですね。災害は待ってはくれないわけですから、大規模災害における支援ドクトリンの開発は急を要するでしょう。
 北村氏は併用戦能力と日本海兵隊の必要性についての論文を以下にあげておきます。

【被災地で自衛隊がアメリカ海兵隊に後れを取

った理由 美談だけで済ませてはいけない「震

災と自衛隊」

北村淳
本稿は、平成24年3月15日JBPressに掲載されたものを転載したものです。

(論文出典:http://www.jpsn.org/special/eq311/156/より)


 「自衛隊との連携は概ね大成功であり、今後発動されるであろうアジア太平洋地域における人道支援・災害救助(HADR活動)における日米共同作戦が順調に実施できることを確信している(注:HAHumanitarian AssistanceDRDisaster Relief)。自衛隊は大活躍したと思う。とりわけ、震災津波被災地への10万名の緊急動員に対処した折木統幕長のリーダーシップは極めて優れていた。
 また原発事故対処でも、聞くところによると初期対応に逡巡していた政府を説得して果敢にヘリコプターを出動させた決断は見事で、「彼こそナショナルヒーローとして高く評価されたのだろう?」東日本大震災救援のために自衛隊と実施した共同作戦であるトモダチ作戦に指揮下の第31海兵遠征隊をはじめとする諸部隊を投入したアメリカ海兵隊太平洋海兵隊司令官ティーセン(Thiessen)中将は、このようにトモダチ作戦を振り返って筆者に語った。
 自衛隊とは何の関係もない一個人との私的会話である以上、中将の言葉は「外交辞令」などではなく、強大な太平洋海兵隊を指揮する軍人の率直な感想と考えて差し支えない。このような評価をアメリカ海兵隊最高首脳の1人が口にしているからには、国防総省はもとより国務省やホワイトハウスの高官たちも日本側の「しかるべき人々」に対して同様の評価を口にしているはずである。
 そのような賛辞を受けた日本側は「アメリカ軍も自衛隊の活動を高く評価している」と自衛隊の活躍を再評価することになるのであろうが、災害救援活動それ自体に対する評価と、その後の対応に対する評価とは無関係であることまでは、おそらく誰も口にしないであろう。
 つまり、作戦実施後に教訓を引き出し、それらをもとに将来への備えを開始する過程まで含めて、作戦の評価をしなければならないという軍事常識に従うならば、「東日本大震災に対する救援活動は概ね成功であった」と満足できるのであろうか?
 果たして、教訓を真摯に引き出したのであろうか? 教訓を生かすべき施策が具体的に始動しているのであろうか?
米国の真の軍人が抱く疑問、自衛隊は軍事的教訓を得たのか
 上記のティーセン将軍の評価と似通った感想を、実際にトモダチ作戦に参加し指揮を執った海兵隊や海軍の将校たちは口にする。しかし、そのような賛辞と平行して、救援活動から得るべき教訓や教訓に対する対処状況に関する疑問なども指摘している。
 そしてイラクやアフガニスタンでの戦闘を体験している真の軍人である彼らは、未曾有の大災害に対して空前の規模で出動し大いに活躍した自衛隊の諸活動や救援態勢や組織構造から、日本の国防にとって有用な様々な軍事的疑問を投げかけた。それらの中には、「日本はいかにして防衛すべきなのか」といった大戦略に関するものから具体的な組織論や装備の問題に至るまで幅広い疑問が含まれている。いくつかを例示してみよう。
 (1)防衛当局による軍事的諸判断を待たずに、政府首脳が一方的に10万人動員を命令したが、そうした統制に対する反省はなされているのか?
 (2)自衛隊員に対する食料補給や個人装備の質・量といったロジスティックスが貧弱であり、救援現場の隊員たちの「精神力」と「自己犠牲」に負うところが少なくなかった。これでは、まるで第2次世界大戦中に質・量ともに貧弱な装備と食料・弾薬の欠乏のために悲惨な運命をたどった帝国陸軍兵士の現代版ではないのか?
 (3)ちょうど横須賀を母港とする米海軍空母は震災当時に整備中で出動できなかった。だが、運良く、別の空母が日本近海を通りかかったため、救援活動に参加するとともに、日本周辺に対する睨みを利かせることができた。このような抑止能力の現状についての議論が巻き起こっているのか?
 (4)アメリカ軍の「CBRNE被害管理即応部隊」(CCMRF)のような対放射能汚染攻撃戦能力を保持していない自衛隊には、福島第一原発事故周辺の放射能汚染地域に急行して震災被災者を救出する活動はできず、それらの被災者を見殺しにせざるを得なかった(注:CBRNEとは、化学兵器・生物兵器・放射性物質兵器・核兵器・高性能爆薬を意味する)。自衛隊ではCBRNE事案対処部隊の構築は進んでいるのか?
 (5)「『併用戦能力』(amphibious capability)が全くと言ってよいほど欠落している自衛隊」の救援部隊は、内陸部から沿岸域・海岸線の被災地に到達せざるを得なかった。そのため、本格的救援活動開始には長時間が必要となった。また、孤島化した離島や陸のスポットでの救援活動はアメリカ海兵隊が駆けつけるまで実施されなかった事例もある。日本独自の併用戦能力構築に向けての具体的進捗はあるのか?
 これら以外にも様々な疑問が投げかけられたが、本稿では、最も話題の中心となったアメリカ海兵隊の「お家芸」である併用戦能力に関して引き出すべき教訓についてのみ記述する。
アメリカ海兵隊頼みの「併用戦能力」

 「併用戦能力」とは、海に浮かぶ発進拠点(通常、揚陸艦という軍艦)から揚陸艇、水陸両用強襲車、ヘリコプターなどを用いて陸上戦闘部隊を陸地に到達させて、海岸部から内陸部にかけての陸上作戦を実施する能力を意味する。
 陸上戦闘部隊が陸地にアクセスを開始してから陸上での作戦が完了するまでの期間、海上の軍艦からは敵に対するミサイル攻撃を加えたり、ヘリコプターや攻撃機で敵を攻撃したり、海岸や内陸で活動する部隊に対する補給活動を継続的に加える。
 このように、併用戦能力は、陸上戦闘部隊を目的地沖合まで搬送し、作戦中は部隊を支援する能力を持った海軍部隊と、海上から海と空を経由して陸地にアクセスし、作戦を実施し、自前で補給活動も行う陸上戦闘部隊とから構成されている。
 前者は海軍が担当し、アメリカ海軍の場合は、このような作戦に特化した水陸両用戦隊という部隊を保持している。後者のエキスパートは、国によって呼称は様々であるが、海兵隊、海軍陸戦隊、あるいは海軍歩兵と呼ぶ。
 「海から海と空を経由して陸地にアクセスする」併用戦能力は、海岸線や島嶼を有する国家の防衛にとっては不可欠な軍事力である。したがって、それらの国々の大多数が「海兵隊」「海軍陸戦隊」「海軍歩兵」(以下、総称して海兵隊と記す)を保有している。
 ところが、典型的な島嶼国家であり長大な海岸線と多数の島嶼を保有する日本には、海兵隊という組織はもとより併用戦能力自体が存在していない。その軍事的欠缺を穴埋めするために、沖縄を中心にアメリカ海兵隊第3海兵遠征軍の部隊が駐留している。
 逆説的に言うと、アメリカ海兵隊が日本に存在しているから、日本防衛当局は併用戦能力の構築を怠ってきたことになる。
自衛隊はなぜ海兵隊に後れを取ったのか

 「日本自身が併用戦能力を欠いている」という実情が日本の国防にとり重大な不安をもたらすということを素人目にも明らかに示したのが、東日本大震災の救援活動であった。
 海岸線のみならず内陸深くまでの沿岸地域の交通網が地震と津波で壊滅したため、内陸部から沿岸部にアクセスする大陸陸軍的能力を特徴とする陸上自衛隊部隊による被災地への救援活動は困難を極めてしまった。
 実際に、離島部や陸の孤島化してしまった地域に自衛隊の本格的な救援部隊が到達するには、長い時日を要してしまった(東日本大震災に際してのアメリカ軍の救援活動に関しては、拙著『写真で見るトモダチ作戦』を参照されたい)。
 例えば、気仙沼市の沖合に浮かぶ気仙沼大島へ本格的な救援部隊が上陸したのは327日であり、その部隊は自衛隊ではなくアメリカ海兵隊第31海兵遠征隊であった。
 実は、震災発生当時、沖縄に駐留しているアメリカ海兵隊の実動部隊である第31海兵遠征隊と、佐世保を母港とするアメリカ海軍の水陸両用戦隊の主力は、東南アジアでの人道支援活動に従事中であった。震災発生翌朝にはマレーシアやシンガポールから日本へ向けて急行を開始したアメリカ海軍水陸両用戦隊・アメリカ海兵隊は1週間後には秋田沖に到着し、ヘリコプターによる救援活動を開始した(これ以前にも、震災発生直後から、在日米海軍、海兵隊、空軍の航空機、艦艇による救援活動であるトモダチ作戦は実施されていた)。
海兵隊部隊は秋田沖から三陸沖に進出して、「海から海と空を経由して陸にアクセスする」併用戦能力を生かした救援活動を実施したが、日本政府側の“調整”が手間取るなどして、海兵隊が気仙沼大島のような孤立地点を“認識”して上陸救援部隊を差し向けたのは327日になってからであった。 これ以前にも、併用戦能力を持たない自衛隊は、北海道に駐屯する陸上自衛隊部隊と多数の軍用車両を、青森県側に海を渡って被災地救援のために移送することができなかった。
 そこで、東南アジア遠征には出動せずに韓国軍との演習のために韓国浦項港に入港していたアメリカ海軍揚陸艦トーテュガ(母港は佐世保)が苫小牧港に急行して(317日)、陸上自衛隊員300名と軍用車両100両を青森県へと搬送した。 要するに、併用戦能力を全く持たない自衛隊には、港湾施設が復旧してフェリーなどが就航するまでは、大部隊の海を越えての移動はもとより、気仙沼大島のような孤島にはある程度の規模の救援部隊を送り込むことができないのである。
 これを軍事的局面に置き換えてみるとどうなるか。外敵侵攻部隊が、例えば宮古島を占拠した場合を想定してみよう。
 気仙沼市から僅か1キロメートルと離れていない気仙沼大島へすら到達できない自衛隊には、那覇港から直線距離でおよそ300キロメートル離れた宮古島へ奪還部隊を送り込むことなどできぬ相談ということになる。もっとも、海上自衛隊並びに陸上自衛隊合同の併用戦訓練を実施していない自衛隊には、戦時下において本格的戦闘部隊を沖縄へ急送することすら不可能と考えざるを得ない。
 このように、防衛省などは「島嶼防衛」の重要性を口にしているものの、現状では、アメリカ軍に全面的に依存している軍事的幼児状態なのである。
日本国防当局は自らの責務を果たせ

 大震災に際して発動されたトモダチ作戦は、確かに日米同盟にとっては明るい話題ではあった。しかし、それ以後も各種軍事作戦やHADR作戦に多数の部隊を投入し続けているアメリカ軍にとっては「One of them」の出来事であり、「トモダチ作戦の成功=日米同盟の深化」といった単純な図式とはほど遠い。
 それよりも、トモダチ作戦実施過程や事後の検討によって得られた教訓を将来に生かせる作業を日米双方が進めることこそが、トモダチ作戦を日米同盟の深化につなげるためには必要である。しかしながら、大震災から1年を経過したにもかかわらず、防衛当局をはじめとする日本政府は震災救援活動から得た軍事的教訓を生かすための施策を示した形跡はなく、国会も大震災と国防を結びつけて国民の安全を図ろうとする努力を欠いている。防衛問題と言えばローカルポリティックスないしは不動産問題と、アメリカ側が考えている普天間・辺野古の問題に終始しているていたらくである。
 いくらアメリカの軍人たちが、東日本大震災後の日本の救援活動を分析して様々な軍事的教訓を導き出しても、それらを日本に教えてくれはしない。日本防衛当局は自からの分析によりそのような教訓を導き出し、将来の国防に生かすべきであり、それこそが戦闘という軍隊の主たる責務を果たす機会に直面したことのない防衛省・自衛隊にとって唯一の軍事的責務の遂行である。
 本稿では、東日本大震災救援活動から得られる軍事的教訓のうち「併用戦能力の欠落」という項目だけを指摘したのだが、「日本が自前の併用戦能力を保持するならば、どのようにして構築すべきなのか?」「どの程度の規模が必要なのか?」といった分析も、日本防衛当局による問題提起がなされていない以上、引き続き紹介しなければなるまい。
 また、これ以外の「東日本大震災から引き出すべき軍事的教訓」も日本の国防にとっては極めて深刻であるため、引き続き稿を改めて論じてみることにしたい。 
《維新嵐》 陸上自衛隊の併用戦能力についての議論がこの北村氏のご指摘から我が国でもさかんになってきたように感じているが、これで悔やまれることは、もしも我が国に1950年代いや少なくとも1960年代に「日本海兵隊」が組織として立ち上げられていたら、これほど多くの邦人のみなさんが北朝鮮に拉致されるような事態にはならなかったのではないか?ということである。政府は、小泉内閣に至るまで北朝鮮の邦人拉致についての動きは拙速すぎたきらいがある。外国の特殊部隊の国内侵入を許し、日本人の同胞を誘拐し、かの国に拉致することは、国際法でも許されることではなく明らかに北朝鮮による国家主権の侵害、侵略戦争をしかけられたに等しい。なぜ政府が主体的に北朝鮮の「侵略」に対抗できなかったのか非常に悔やまれるのである。今後はこのあたりのドクトリンも構築されることを願う次第である。
【日本海兵隊に関するリンク】
※日本海兵隊と同時に民兵による「災害救援部隊」を常置しておき、有事に備えて我が国の地形を利用したゲリラコマンド戦の訓練をしておく、という仮想プランです。本稿はかつてみんなの党の政策コンテストに応募いたしましたが、とりあげられることはありませんでした。

オスプレイ、5月からカリフォルニアの山火事消火に参戦

配信日:2016/03/16 20:55
http://flyteam.jp/airline/united-states-marine-corps/news/article/61120
沖縄キャンプハンセンでの山火事消火のようす(本文とは関係ありません。)
アメリカのカリフォルニア州では、20165月より山火事消火のために新たに海兵隊のMV-22Bオスプレイが使用可能となります。しかし、これまでの航空機とは違うティルトローター機だけに懸念材料も多いようです。Press Enterprise2016315日に報じています。

カリフォルニア州の山火事消火に出動するのは、海兵航空基地(MCAS)ミラマーに配備されているMV-22Bオスプレイです。これまで50マイル離れた地点に16トンの消火剤を散布できるCH-53Eスーパースタリオン・ヘリコプターが州政府の要請により出動していました。

MV-22B
は、これまでの消防機S-2Tより速い時速300マイルで飛行でき、4名のクルーの他に24名の消防士を輸送できます。スーパーヒューイ・ヘリコプターはパイロット1名と消防士10名が搭乗して時速125マイルでした。消火水も660ガロンとスーパーヒューイの2倍搭載できます。

しかし、MV-22Bは強烈なダウンウォッシュを生むため、消火水を飛び散らせずに有効に散布できるか懸念されましたが、100フィートのワイヤーでバケットを吊るすことで大丈夫なことが実証試験で確認されました。また、ダウンウオッシュが炎を煽ったり、高温の排気が地上の消防士や機器を炙らないか心配されています。

MV-22B
を山火事消火に使用するよう提唱した安全保障研究家のクレイグ・フーパー氏は「完璧な消防機などなく、プラスとマイナスの両面がある。運用の工夫で課題を克服できる」と話し、グローバルホーク監視機やK-MAX無人ヘリなどの軍用機にも関心を示しています。

※オスプレイが災害救援に利用できることを評価されてのことです。大規模災害支援においてオスプレイを活用することは「人命救助」の観点から不可欠のことです。

3.11人工地震の証明~日本人が知らねばならない真実~

2016/02/17 に公開
役者の椎名桔平さんが主人公役で映画にもなった『雨の牙』という小説がある。
 ストーリーとしては、主人公のジョン・レインは、日本人の父とアメリカ人の母を持つ日­系アメリカ人で、彼はCIAの工作員であり、そして暗殺者でもある。
 この小説に対して、翻訳家でありジャーナリストでもあるマーク・シュライバーという方­は、次のように書評を書いた。

「東京は、電話が盗聴され、スパイが銃を撃ち合い、電車に乗る時には必ず自分の背後を­確認する必要がある危険な街である」
 『雨の牙』は、フィクション小説ではなく、ノンフィクション小説である。
 なぜなら政治にはウラがあり、平和に暮らす日本人の裏側で、巨大な利益をめぐって激しい争いが繰り広げられているからだ。そしてこれを踏まえて言う。
「東日本大震災は人工地震だった」
 おそらく誰もが「そんなバカな!」と鼻で笑うか、あるいは怒り始めるかもしれない。
 かくゆう私自身も、「3.11震災は人工地震だった」と聞かされた時、
「なに狂ったことを言っているのだろう。もっと常識的に物事を考えるべきだ」と、耳を­傾けなかったものである。
 しかし今、私は、「あの大震災はある者たちが、 悪魔にそそのかされて、人工的に引き起こしたものであり、神仏・天意をもってしても守り切ることはできなかった」と、そう確信せざるをえなくなった。
 しかしその一方で、あの震災によって、愛する家族や友人、恋人を失い、今も心に傷を負った人は多いだろう。
 あるいは未だに仮設住宅に住み、未来に希望を見出せない人もいるだろう。
 まだまだあの震災は過去のものではなく、現在進行形の出来事だ。
 だから「3.11の大震災は人工的な地震と津波だった。ある者たちの悪意によってあの­大震災は起きてしまった」と語るには、最大限の注意と配慮が必要だ。
 しかし真実は真実、事実は事実であり、隠ぺいされた真実を明らかにしてこそ、地上に正­義を打ち立て、悪を薙ぎ払うことができる。
 そして地上に正義を打ち立て、日本に心と物の真なる繁栄をもたらすことが、この世に生­きる我々からの、亡くなった方々への弔いであり、また、未だに未来への希望を見失った方々への福音となるのではないだろうか。私はそう想う。だから私は真実を語る。


 もしこれが本当なら海兵隊の支援作戦どころの問題ではないでしょう。
一体どれだけの方がお亡くなりになったか、生きながらえた方でも大切なご家族や友人、親戚をなくされた方も数多くいらっしゃいます。こういう方に対して日本政府もアメリカ政府もどう説明するつもりなのか?ごめんなさい、ですむ問題ではありませんよ。
 東日本大震災が、一部悪魔的な所業で人工的にひきおこされたものであったとしたら、などと考えたくもありません。ご遺族の心中お察しいたします。また亡くなられた方のご冥福をあらためてお祈りいたします。

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