ケリー米国務長官、広島慰霊碑で歴史的な献花
BBC News 2016年04月11日(Mon) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6534
ジョン・ケリー米国務長官は平成28年4月11日、広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花した。広島が世界初の原爆攻撃を受けた都市になって以来、最も高位の米政府関係者による訪問となる。ケリー長官は、主要7カ国(G7)外相会合のために広島を訪れている。
米メディア報道によると、5月に三重県で開かれるG7首脳会議に出席するオバマ大統領も、広島および原爆死没者慰霊碑の訪問を検討しているという。実現すれば、現職大統領として初の広島訪問になる。ホワイトハウス関係者は米メディアに、今回の国務長官訪問を参考に、大統領が5月に訪問するかどうか判断すると話しているという。
米・英・加・仏・独・伊・日・欧州連合(EU)の外相たちは、公園内の広島平和記念資料館(原爆資料館)も訪れた。
ケリー長官は今回の訪問を通じて、オバマ大統領が掲げる「核なき世界」のビジョンを強調する方針。オバマ氏が2009年にノーベル平和賞を受賞したのは、「核なき世界」を目指すと表明したことが理由の一つだった。
米政府はその一方で、ケリー氏が原爆投下を謝罪するつもりはないと方針を明確にしている。
《維新嵐》 原爆投下を謝罪してアメリカの国際地位低下を招くリスクはとらないということでしょうか?それよりは、「核兵器のない世界」実現にむけて新たな核戦略を駆使していく、そういう方向性であるように感じます。
「オバマ広島訪問」の焦点は、核軍縮の加速だ
~元軍縮大使が注目する歴史的訪問の「成果」~
© 東洋経済オンライン オバマ大統領は、広島訪問によって核の「非人道性」を実感するはずだ(撮影:大隅 智洋)
2016年5月10日、ホワイトハウスは、オバマ米大統領がG7伊勢志摩サミット(5月26~27日)終了後の27日に広島を訪問することを発表した。米国の大統領として初めての被爆地訪問であり、第二次大戦後の歴史において画期的な出来事だ。
厳しい日程の関係だろうが、長崎への訪問はない。今回は広島だけだ。しかし、オバマ大統領は広島訪問中に長崎について言及すると大統領府の報道官が言っている。長崎も広島と等しく重要であることは認識されていると思う。今回は広島だけの訪問になるのはやむを得ないだろうが、米国大統領の長崎訪問も早期に実現することを期待したいものだ。
オバマ大統領は広島で被爆者と面会するか。何らかの形で実現すれば素晴らしいが、これも日程上可能かということになるのだろう。いずれにしてもオバマ大統領の意向を踏まえて日米両政府が決めることであり、かりに実現しなくても今回の訪問の歴史的意義は変わらないと思う。
米国の大統領が被爆地を訪問すれば謝罪を求められると懸念して訪問に反対する声もあるが、広島市も長崎市も、また日本政府も要求しておらず、「謝罪」をするかどうかが問題にならないことはすでにはっきりしている。
オバマ大統領の広島訪問の主要な意義は、「原爆による犠牲者の追悼」と「核兵器(核)の削減・廃棄(核軍縮)の推進」にある。
オバマ大統領は平和記念公園を訪れ、犠牲者の霊に献花し、また、平和記念資料館を視察することになるだろう。このほかにも関連の重要施設があり、日程の許す限り足を運んでもらいたいものだ。
核軍縮は、米国とロシアの対立により進捗状況は芳しくない。それだけに、オバマ大統領の広島訪問により弾みがつくことを期待する声が高い。
オバマ大統領は就任後間もない2009年4月、プラハ(チェコ)での演説で、「核のない世界」の実現を目指すと力強く宣言し、世界に核軍縮への期待を抱かせた。
その後実際にどの程度進展したかについてはさまざまな見方があり、期待外れだという意見も少なくない。現在米ロ両国が保有している核弾頭の数は約1万5000発と推定されており、これは冷戦時代最も多かった時の6万発以上に比べると確かに減少しているが、現在の世界ではそのような数も必要ないと考えられているからだ。
筆者も、オバマ大統領の広島訪問が核軍縮を再活性化し、強力に進める原動力になってほしいと願っているが、具体的な核軍縮の方策や計画、たとえば核弾頭の削減目標が示されたり、あるいはロシアに対する新たな交渉の呼びかけが行われたりするとは思えない。客観的に見てそのような表明をする状況にないし、オバマ大統領の広島訪問には別に重要な目的があるからだ。
それは、核の恐ろしさ、「非人道性」を被爆地、広島で「実感」してもらうことだ。
これには説明が必要だろう。
まず、核は「非人道的」ということが今まで確立されていないことを指摘したい。他の兵器、いわゆる通常兵器の中には、非人道的だと断定されているものがある。それらは、また、使用が禁止されている。
時代はかなりさかのぼるが、一部の兵器はあまりにむごたらしく人を殺傷し、苦しめるので19世紀の終わりころから使用を禁止しようとする動きが起こった。
それと並行して、国連などでは、「非人道性」とは、「過度に」あるいは「無差別に」人を殺傷することだということが明確化された。そしてそのような性格を持つ毒ガスや対人地雷は条約で禁止されることになった。つまり、すべての兵器は本来人を殺傷するものだが、なかでもとくに「非人道的」な兵器は禁止されたのだ。
核は70年前広島と長崎に投下された時から恐ろしい兵器だと思われてきた。だから、核軍縮が始められ、核の2大保有国である米国とロシアによって冷戦時代から戦略核削減交渉が行われてきた。核の拡散を防止する条約(NPT)も作られた。
しかし、核は禁止されていない。違法として禁止しようとする努力も行われているが、それは実現していない。それどころか、核が「非人道的だ」ということさえ確立していない。
ここには一種矛盾した状況が生じている。核は、「過度に」かつ「無差別に」に人を殺傷し、しかも、「多数の市民を」殺傷するという問題まであるのは明らかなのに、毒ガスや対人地雷のように「非人道的だ」と断定されることも、禁止されることもない状態にあるのだ。
なぜこのような状況が続いているかと言えば、核は、現実の国際政治において「抑止力として必要」という考えが強いからだ。
そこで、核を直ちに禁止するのは無理だとしても、まず「核の非人道性」は確立しなければならないという考えが強くなった。数年前から始められた「核の非人道性」に関する国際的運動はそのための一つの試みだ。
これには前哨戦があり、1996年、国際司法裁判所は「核の使用は原則として国際人道法に反する」という趣旨の判断を下した。しかし、これは「勧告」であり、各国に対して拘束力はなかった。
新たに展開されている運動は、国際司法裁判所の勧告をさらに進め、「核の非人道性」について各国の合意を形成しようとするものである。しかし、核の禁止について前述したのと同様、「核の非人道性」を確立する運動にも核の抑止力の影が及んでおり、最終的な結論はまだ得られていない。
一方、日本はこの運動に参加しつつ、世界の指導者に対し被爆地を訪問し、被爆の実態を「実感」することを勧めている。「核の非人道性」を確立する国際運動は、いわば、「言葉」で目的を達成しようとしているのに対し、被爆地訪問は「実感」することにより核の非人道性を確立しようとするものだと言えよう。
「実感」することと「言葉」で「核の非人道性」を理解することには大きな差がある。4月に開かれたG7外相会合がよい例であった。被爆地を訪問したケリー米国務長官ら各国の外相は、被爆の実相を「実感」して強い衝撃を受けるとともに、「驚いた」ことを率直に表明していた。つまり、被爆地で見、聞きしして「実感」したことは「言葉」で理解していたこととあまりにも違っていたのだ。
筆者は以前、軍縮大使であった関係上、広島や長崎で欧米諸国の人と一緒に被爆状況を展示している資料館を訪問したことがあり、彼らが想像を絶する強い衝撃を受けたのをこの目で目撃している。ある人は、訪問が終わると、どんなにひどく叱責されるか、おびえるまなざしで筆者を見ていたことを思い出す。
さまざまな消極的意見を克服して被爆地、広島を訪問することを決意したオバマ大統領は原爆の実相を「実感」するだろう。そのことは、今後、核軍縮を積極的に推進する大きな力となるはずだ。具体的にどのような行動がとられるか。それは次の段階の問題だが、「核の非人道性」を本当に知ると知らないでは、「核の廃絶」を推進する力も違ってくると信じている。
以上がオバマ大統領の広島訪問の意義を具体的な核軍縮提案の有無で測るべきでない理由だ。提案の発表は他の場所でもできるが、核の非人道性を「実感」することは広島と長崎でしかできない。オバマ大統領の歴史的な被爆地訪問の最大の意義はこの点にあると思う。
《維新嵐》 アメリカ・オバマ政権の「核兵器のない平和な世界の実現」戦略は、ただ戦略核をなくせばいいというものではありません。第二次大戦後の冷戦時代の核兵器開発競争から大国で肥大した戦略核兵器は、アメリカ以外の国でも保有と配備は継続しています。そんな中でアメリカだけ戦略核兵器を全廃することは、はっきりいって自殺行為でしょう。戦略核兵器は、相互に国家間で削減していくしかないでしょうね。オバマ政権下でも核兵器の更新プランは存在しています。
オバマが目論む核戦力更新計画
岡崎研究所
2016年03月10日(Thu) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6277
核兵器廃絶を掲げてきたオバマ政権だが、1兆ドルの核戦力の更新を計画している、と2016年1月23-29日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は、以下の通りです。
LRSOが核使用の敷居を低める
オバマ政権は今後30年かけて米国の核戦力を更新しようとしている。その一環である新型長距離巡航ミサイルLRSOの開発に対し、核軍縮派のペリー元国防長官らが異を唱えている。LRSOは米国の空爆作戦を牽引してきた核攻撃型巡航ミサイル、トマホークの後継だ。敵は核巡航ミサイルで攻撃されても、それが通常弾頭だったのか、核弾頭だったのかわからない、LRSOがなくても米国の核抑止力は損なわれないというのがペリーらの言い分である。
他方、オハイオ級原子力潜水艦や地上発射ミサイル、大陸間弾道ミサイル(ミニットマンIII)の後継の開発については、反対はほとんどない。ロシアが新START条約の許す限度の700基のミサイルと爆撃機を保有している現在、やはり必要というのが大方の見方だ。
そこで、議論の焦点はLRSOや自由落下核爆弾B61-12の開発になるが、これらは、主として次期爆撃機B-3に搭載されることになっている。既にノースロップ・グラマン社が開発を請け負い、2025年には就役する。
実は、この新型爆撃機の登場が、LRSOの正当性を主張する立場を弱くしている。加えて、B-3に搭載される新型爆弾が、核威力の拡大と縮小(広島型の3倍~2%)が可能で、命中精度も30メートル内と、これまでのミサイルよりはるかに高性能である。反対論者たちは、命中精度が高く、核威力を非常に小さくできるために、司令官たちがミサイル発射に踏み切る敷居が低くなる、と主張する。
一方、支持者たちは、反対論者は過去に囚われている、イランとは核合意が成立したが、複数のならず者国家が核を獲得する可能性がある今、同盟国に提供する抑止力に信頼性を持たせるには、小型で標的識別能力のある核爆弾が必要だと主張する。それにロシアも米国の通常戦力の優位を相殺すべく低威力の核兵器に力を入れている。要するに、国防総省の懸念は、使えるミサイルが全て大型で強力だと、米国は敵からの限定核攻撃への対応を「自己規制」してしまうのではないかということだ。
反対論を抑えて新型ミサイル・核は開発されるだろうと思える理由は他にもある。専門家は、核戦力の更新を約束していなければ、オバマ大統領は2010年に上院を説得して新START条約を批准させることはできなかっただろう、と指摘する。また、ロシアが同様の戦力を持てる状況にあって、LRSOも小型の通常弾頭ミサイルも搭載可能な次期爆撃機の開発を米国大統領が見送るとは思えない。
コストも大きな問題にはならないだろう。専門家は、歳出強制削減は今やほぼ放棄され、さらに、2027年の支出ピーク時でも核近代化計画は国防予算の5%を占めるだけだと言う。
出 典:Economist ‘Cruise control’(January 23-29, 2016)
http://www.economist.com/news/united-states/21688862-barack-obamas-administration-which-began-vision-get-rid-nuclear-weapons-has
http://www.economist.com/news/united-states/21688862-barack-obamas-administration-which-began-vision-get-rid-nuclear-weapons-has
***
限定戦争エスカレートさせる懸念
オバマ政権による核戦力更新計画の中で、空中発射型巡航ミサイルの後継の空中発射長距離スタンドオフ・ミサイル(LRSO)の開発が論議を呼んでいます。
米国の洋上発射型巡航ミサイルからはすでに核弾頭がすべて取り除かれていますが、空中発射型にはいまだ核・非核の双方が配備されています。したがって相手は攻撃されても、それが通常弾頭なのか、核弾頭なのか分からないので、状況を不安定化させる恐れがあり、危険であるというのが反対論です。
これは、冷戦期の核戦略理論の中での柔軟反応戦略、限定核戦争に通じるもので、エスカレーション・コントロールが難しく、限定戦争がエスカレートする危険が大きいとするものです。
LRSOの他に、B61-12という新型核爆弾の開発も含まれています。B61-12は、核能力を広島型の3倍からわずか2%と、拡大縮小することが可能で、命中精度も30メートル以内と、極めて高性能であると言われます。このように核能力を極めて低くできると、核の敷居が低くなり、核が使われやすくなる懸念があります。
支持論は、ならず者国家が核を獲得するかもしれず、ロシアが米国の通常戦力の優位に対抗するため小型核爆弾の開発に力を入れているので、限定核攻撃の可能性に備える必要があると言います。特に同盟国の拡大抑止に信頼を持たせるために、小型の核爆弾が必要であると考えます。
限定核攻撃の可能性高まる中、米国はどう
すべきか
つまり論点は、限定核戦争の危険を排除すべきか、相手による限定核攻撃に備える必要があるか、です。確かにLRSOやB61-12の開発は、限定核戦争の危険をはらみますが、米国が自制しても相手が限定核戦争を仕掛けてくることには、備えなければなりません。
ペリーらは、LRSOが無くても米国の核抑止力は損なわれないと言っていますが、限定的核攻撃に対する抑止力まで含めて言っているのかは疑問です。
ペリーらはまた今後開発される次世代ステルス爆撃機LRS-Bで、敵の防空網を掻い潜って攻撃することが可能なはずであるから、これまでのような空中発射型巡航ミサイルは要らないと言っていますが、各国でステルス機を探知する「カウンター・ステルス」能力を追求しているなど、未開発のLRS-Bに過度に依存するリスクは高いです。
現在の世界では、イランの核合意は成立したとはいえ、核拡散への動きが広まり、限定的核攻撃の可能性が無視できなくなっています。したがって米国が核を含めたエスカレーション・コントロールの柔軟性を追求し続けるのが賢明です。とくに拡大抑止の信頼性と関連してくれば、日本としてもオバマの核戦力更新計画を支持すべきです。
ケリー長官は、広島出身で広島第1区選出の衆議院議員でもある岸田文雄外相に対して、「私の広島訪問は、両国関係の力強い結びつきにとって、そして戦争の厳しい時代から両国がいかに前に進んできたかにとって、特別な意味を持つ」と語った。さらに自身の広島訪問は「過去についてではなく、現在や未来についてのものだ」と付け加えた。
日本は原爆攻撃を受けた世界唯一の国として、原爆投下によるすさまじい人的損失を嘆いてきた。原爆は少なくとも広島市民14万人の命を奪った。1945年8月6日当日には7万人が亡くなったとされる。さらに大勢が数カ月後、数年後に至るまで、けがや放射線の影響で死亡した。
しかし米国など世界各国では、広島と長崎への原爆投下は戦争終結につながったのだから正当化されるという意見もある。ブッシュ元大統領(前大統領の父)が、広島原爆投下について謝罪するのは「ひどい歴史修正主義だ」と批判し、自分は決してそんなことはしないと表明したのは有名だ。
広島で毎年開かれる追悼式典に、米国大使が初めて出席したのは戦後65年後のことだった。そして大統領、副大統領に次いで大統領就任序列3位の現職下院議長としてナンシー・ペロシ氏が2008年に慰霊碑を訪れているが、下院議長職は議員たちが選ぶ政党職のため、米国の行政府を代表しての訪問ではなかった。
アジア地域で中国が台頭し、日本など米国の同盟諸国との領土問題で強硬姿勢を強めるなか、米国と日本は関係強化に力を入れている。ケリー国務長官の原爆慰霊碑訪問は、そのさなかで実現したものといえる。
(英語記事 John Kerry makes historic
visit to Hiroshima memorial)
提供元:http://www.bbc.com/japanese/36012286
《維新嵐》 新型巡航ミサイルの開発、配備にしろ誘導爆弾の開発にしろバラク・オバマ大統領がプラハでの演説で示した「核兵器を戦争で使用した唯一の国としての道義的責任」を掲げて、核兵器を国家戦略として位置付けている覇権主義の国、国家戦略のためなら外国人を拉致することも厭わない無法国家の核戦略に対して、「抑止」のためにアメリカの核兵器を保持することは変わらないでしょう。
アメリカは核兵器のない平和な世界の実現のためにこれからも核兵器を保持する、つまり新たな「核保有宣言」をしたにすぎません。このスタンスでないとイランや北朝鮮、共産中国に対して優位的な政治的立場を保てないと考えられます。
ちなみにイランの核開発を阻止したのは、アメリカの核弾頭ではありませんでした。イランを交渉のテーブルに引き出すために、アメリカがとった攻撃手法は「標的型ウイルス攻撃」というサイバー攻撃でした。当初はイランの各処理施設の遠心分離機を数十台狂わせただけという報道でしたが、実際は、施設の制御システムそのものに大きなダメージを与えていたようです。
ソニーピクチャーズへのサイバー攻撃の報復としてアメリカは、これまでの方針を変更して「疑わしくは罰する」方針で臨みました。
アメリカは本当に限定的核攻撃の恐れありという情報をつかんだときに、はたして自国の核兵器を使うでしょうか?スタクスネットのような高度なマルウェアを開発できるだけの技術力があり、これを運用できるだけのサイバー軍を有する国家ですから、核兵器は表向きの防衛兵器であって、実際はサイバー攻撃や未だ実験段階にありますが、CPGS(通常兵器による全地球即時攻撃)のような宇宙空間からの攻撃に主たる戦略をシフトさせていくように思います。
CPGSの構想には、超高速巡航ミサイルや低軌道通常弾頭ICBMがあり、核兵器に頼らない戦略体系を構築しつつあるように感じられます。
サイバー攻撃にしろ今後どんなマルウェアを開発してくるかわかりませんし、既にイラン・ナタンズの核処理施設への攻撃で、ネットワーク化されていない施設への標的型攻撃を実現しています。
アメリカにしてみれば、他の核保有国の存在の関係上、核兵器を保有しているだけで、実際は核兵器に頼らない抑止力を確立しつつあるのかもしれません。
《維新嵐》 新型巡航ミサイルの開発、配備にしろ誘導爆弾の開発にしろバラク・オバマ大統領がプラハでの演説で示した「核兵器を戦争で使用した唯一の国としての道義的責任」を掲げて、核兵器を国家戦略として位置付けている覇権主義の国、国家戦略のためなら外国人を拉致することも厭わない無法国家の核戦略に対して、「抑止」のためにアメリカの核兵器を保持することは変わらないでしょう。
アメリカは核兵器のない平和な世界の実現のためにこれからも核兵器を保持する、つまり新たな「核保有宣言」をしたにすぎません。このスタンスでないとイランや北朝鮮、共産中国に対して優位的な政治的立場を保てないと考えられます。
ちなみにイランの核開発を阻止したのは、アメリカの核弾頭ではありませんでした。イランを交渉のテーブルに引き出すために、アメリカがとった攻撃手法は「標的型ウイルス攻撃」というサイバー攻撃でした。当初はイランの各処理施設の遠心分離機を数十台狂わせただけという報道でしたが、実際は、施設の制御システムそのものに大きなダメージを与えていたようです。
ソニーピクチャーズへのサイバー攻撃の報復としてアメリカは、これまでの方針を変更して「疑わしくは罰する」方針で臨みました。
アメリカは本当に限定的核攻撃の恐れありという情報をつかんだときに、はたして自国の核兵器を使うでしょうか?スタクスネットのような高度なマルウェアを開発できるだけの技術力があり、これを運用できるだけのサイバー軍を有する国家ですから、核兵器は表向きの防衛兵器であって、実際はサイバー攻撃や未だ実験段階にありますが、CPGS(通常兵器による全地球即時攻撃)のような宇宙空間からの攻撃に主たる戦略をシフトさせていくように思います。
CPGSの構想には、超高速巡航ミサイルや低軌道通常弾頭ICBMがあり、核兵器に頼らない戦略体系を構築しつつあるように感じられます。
サイバー攻撃にしろ今後どんなマルウェアを開発してくるかわかりませんし、既にイラン・ナタンズの核処理施設への攻撃で、ネットワーク化されていない施設への標的型攻撃を実現しています。
アメリカにしてみれば、他の核保有国の存在の関係上、核兵器を保有しているだけで、実際は核兵器に頼らない抑止力を確立しつつあるのかもしれません。
米露中がしのぎ削る新たな核開発
岡崎研究所
2016年05月25日(Wed) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6826
2016年4月16日付のニューヨーク・タイムズ紙で、同紙ワシントン支局長のデイヴィット・サンガーとウィリアム・ブロード同紙記者が、米露中の3カ国は、新世代の、より小型でより破壊的な核兵器を追求しており、冷戦時代の軍拡競争が再現され、半世紀以上続いた核の平和が脅かされる恐れがある、と述べています。解説記事の要旨は以下の通りです。
新兵器開発に力注ぐ米露中
ロシアは、小型核弾頭を搭載した大型ミサイルを配備し、またロシアの報道によれば、水中で爆発させ、放射能の汚染をまき散らかし、目標の都市に人が住めなくなるような水中ドローンを開発している。
中国は「超音速滑空飛行体(hypersonic glide
vehicle)」と称する新しい弾頭の実験をした。それは従来の長距離ミサイルで宇宙に打ち上げられた後、大気圏で秒速1マイル以上で曲がり疾走する。ミサイル防衛が役に立たなくなり得る。
他方米国も超音速兵器を開発していて、2014年の実験は失敗したが、来年試験飛行が再開される。米政府は核兵器近代化の一環として、5種類の核兵器と運搬手段の改善を計画し、米国の兵力は小型、ステルス、精密の方向にある。
新兵器登場の一つの懸念は、冷戦時代の「相互確証破壊」による抑止理論が有効でなくなるかもしれないということである。精密で、破壊力の少ない新兵器は、使う誘惑にかられるのではないかとの懸念である。
ペリー元米国防長官は、ロシアが包括的核実験禁止条約から脱退するのではないかと心配している。ペリーはロシアが新しい爆弾を開発しているのは間違いなく、実験をするのはプーチン次第だと述べた。
偶発核戦争の危険性も
米国は最新の巡航ミサイルを開発している。この巡航ミサイルは爆撃機から発射され、地上に沿って長距離飛行し、敵の防空網をかい潜って目標物を破壊する。米国はまた、中国に先行して超音速弾頭を開発している。米国の超音速弾頭は非核で、その速さと正確さ、物理的衝撃でミサイル基地などを破壊するものである。非核なので核兵器依存を減らすというオバマの約束を満たすが、その技術にかなわない相手は、核兵器で対抗しようとするかもしれない。
ペリー元国防長官は、米国の小型核兵器の開発の結果、「考えられないこと」が起こり得る、すなわち核兵器がより使用可能と見られるようになると述べた。
米国の新兵器開発で最も脅威を感じているのは中国である。中国は太平洋の米艦隊の対ミサイル迎撃機を懸念し、新しい誘導爆弾、最新の巡航ミサイル、新しい運搬手段を含む米国の核の近代化に恐れおののいている。中国はすでに長距離ミサイルの多弾頭化など、対応策を講じていて、今後10年間対応し続けるだろう。中国軍部は昨年、核戦力のための戦略早期警戒を改善すると述べた。早期警戒は偶発核戦争の危険を増すとの批判が強い。
核兵器専門家のノースカロライナ大学Mark Gugrudは、超音速の兵器の開発が続けば、操作可能な弾頭は今後10年で世界中で現実のものになるだろう、「世界は核の精霊を瓶に戻すことに失敗した。今や新しい精霊が広まっている」と述べた。
出典:David E. Sanger & William J.
Broad ‘Race for Latest Class of Nuclear Arms Threatens
to Revive Cold War’(New York Times, April 16, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/04/17/science/atom-bomb-nuclear-weapons-hgv-arms-race-russia-china.html
http://www.nytimes.com/2016/04/17/science/atom-bomb-nuclear-weapons-hgv-arms-race-russia-china.html
“相互確証破壊”無効化する恐れ
米露中の3カ国が、最新兵器の開発にしのぎを削っていて、戦略状況が変わりつつあるのは事実です。その一環としての核兵器の小型化が、核使用の敷居を低くする恐れがあるのはその通りでしょう。核兵器の小型化のほかにも、もし米国が中国を超音速弾頭で攻撃した場合、中国が核で反撃する恐れも指摘されています。「相互確証破壊」が有効でなくなるのではないかとの懸念です。
しかし、いくら核兵器が小型化されたからと言っても、そう簡単に使用されるとは思われません。たとえ小型核兵器による破壊が、従来の場合より限定的であっても、使用は戦争状態を意味し、相手は報復する可能性が大きいです。米国が中国を超音速弾頭で攻撃する場合も同様です。その過程で攻撃がエスカレートする恐れが多分にあります。小型核兵器とはいえ、その放射能物質の影響から考えれば、使用のリスクは大きく、核の精霊が瓶を飛び出したという状態ではないのではないでしょうか。
ペリー元国防長官は、ロシアの包括的核実験禁止条約からの脱退を懸念しているとのことですが、ロシアが条約を批准しているのに対し、米国は中国同様、条約を批准していません。ロシアが条約から脱退するとすれば、地下核実験をするためと思われますが、米国はロシアの条約からの脱退を非難する強い立場にはありません。
《維新嵐》 核弾頭が小型化、ステルス化、精密化が進んだとしても「政治的」に優勢を確保するための兵器としてのあり方は変わらないかと考えます。
いくらオバマ政権が、アメリカが「核のない平和な世界の実現」を政治スローガンにしたとしてもアメリカ以外の国々が核弾頭を放棄しなければ、アメリカも核弾頭を廃棄することはあり得ません。
しかし核弾頭の絶大な兵器としての威力が熟知されている限り、核を最終手段として実際は、実弾による戦争、紛争による被害、悪影響をかぶらないように、戦争、紛争をおこさせないような宣戦布告のないステルス的な攻撃が「実質的な軍事攻撃」になっていくのではないでしょうか?
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