オバマ大統領の広島訪問でも米国は変わらない
核兵器廃絶どころか「もっと近代化せよ」の声
北村 淳 2016.4.21(木) http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46631
発射されたミニットマン3
ケリー国務長官がオバマ大統領に広島訪問を進言したことにより、ホワイトハウスは大統領の広島訪問を検討し始めている。そして、日本のメディアの多くは、オバマ大統領の広島訪問が核兵器廃絶に向けての大きな推進力になると報道している。
ところが、ホワイトハウスが広島訪問を検討しているその足元で、アメリカでは核廃絶とは大きく隔たった核議論が展開されていることもまた事実である。
議論は、ウィリアム・ペリー元アメリカ国防長官が「アメリカ軍はICBM(大陸間弾道ミサイル)を廃止すべきである」と主張したことに端を発する。
ペリー元長官の発言は、莫大な維持費がかかっているICBMを廃棄して、国防費の大削減による戦力低下に歯止めをかけるべきである、といった意味合いのものであった。しかし、反核活動家たちは「ICBMの廃棄」という点を取り上げ、ペリー元長官の意見に賛同し活動を強化しようとしている。
これに対して、戦略軍関係者や核戦略家などは「ICBMの廃棄など、とんでもない誤りである」と反論を開始した。
1000基のミニットマン3を450基に
ここで話題になっているアメリカ軍のICBMとは、「ミニットマン3(LGM-30)」大陸間弾道ミサイルと呼ばれる長距離弾道ミサイルで、地下に建設されたミサイル発射装置(地下サイロ)から発射される。
アメリカ軍は、一時は1000基のミニットマン3を保有していたが、現在その数を削減しており、2018年までには450基(核武装400基、予備用50基)に減らすことになっている。
ミニットマン3は1970年に誕生したICBMであるが、その後も核弾頭部を中心に近代化改修が続けられ、現在配備中のミニットマン3には最新式核弾頭が搭載されている。それぞれのミサイルに搭載されている核弾頭は300~500キロトンと言われている(広島攻撃に使われた原爆は15キロトン、長崎攻撃用は22キロトンであった)。
これらのICBMはモンタナ州、ノースダコタ州、ワイオミング州の空軍基地に配備されているが、発射態勢を維持したミニットマンが格納されている地下サイロは、敵のミサイル攻撃によって一挙に壊滅されないように、それぞれ離れた位置に点在している。
ミニットマン発射基地とサイロ(青丸印)
このように点在しているからこそミニットマンを廃棄すべきではないというのが、ICBM廃棄反対の人々の主張だ。反対派はこう唱える。
「敵がアメリカを核攻撃する場合、大量の核ミサイルを用いなければアメリカのICBM戦力を沈黙させることはできない。もし、ペリー元長官が言うように、ICBMを廃棄してしまったならば、敵は多数のミニットマン地下サイロを破壊する必要がなくなり、それだけの数の地上攻撃用核ミサイルが、アメリカや同盟国の地上目標めがけて降り注ぐことになる」
「今こそICBMを近代化せよ」との声も
すでに旧式となった地下サイロ発射式のミニットマン3といえども、以上のように敵にミサイルを消費させるという重要な役割を担い続けていることは確かである。
しかし、ミニットマン自体や地下サイロ基地のメンテナンスには莫大な予算が必要なため、ペリー元長官たちは、原潜発射型の核弾道ミサイルによる抑止力で十分であると考えている。さらに、固定基地発射型であるがゆえに、敵の攻撃を間違いなく被る。そんなICBMは廃棄して、その分の予算を他の戦力強化(厳密には戦力レベル維持)に振り向けよう、というのである。
これに対してICBM廃棄に反対する人々は廃棄は論外であると力説する。
「陸上、海中、そして空中からの核反撃能力の維持は絶対に必要である。陸上発射型ICBMは365日24時間常時発射態勢を整え続けることにより敵を威嚇している。原潜発射型核弾道ミサイルは、敵が把握することのできないどこかの海中からのステルス攻撃態勢によって敵を威嚇している。そして、核爆弾を搭載した戦略爆撃機は、潜水艦とは逆に敵の目に見える形で核攻撃が可能な姿を見せ付けることによって敵を威嚇している。こられの違った形態によって、効果的な核抑止力が生じているのだ」
ここに来て、ICBM撤廃反対どころか、以下のように、TEL(地上移動式発射装置)発射型へのグレードアップを主張する声も聞かれるようになってきた。
「国防費節約のためにICBMを廃止して地下サイロを撤去するなどというアイデアを出すくらいならば、今こそ地上配備型ICBMも、全てTELから発射できる新型ICBMに取り替えるべきである。ロシアも中国もICBMの多くがTEL発射型に更新されており、極めて生存性が高くなっている。このままでは、アメリカの核抑止力がロシアや中国に対抗しきれなくなってしまう」
三位一体のアメリカの核兵器に守られている日本
冒頭で述べたように、日本ではオバマ大統領の広島訪問といった動きが取り上げられて、あたかも核廃絶に向けてアメリカが歩を進めつつあるかのようなニュアンスが伝えられている。しかし、実際の核戦略に携わっている人々の間で交わされている議論は、核廃絶とは程遠いというのが実情だ。
アメリカ軍はミニットマン3のような陸上発射型以外にも、海中発射型、空中投下型の核兵器を保持している。つまり、3通りの核報復能力によって、敵からの核攻撃を“抑止”しているのだ。
アメリカ海軍が運用している18隻の戦略原子力潜水艦には、それぞれ24基の「トライデント1」(8隻、100キロトン核弾頭)あるいは「トライデント2」(10隻、300~475キロトン核弾頭)弾道ミサイルが搭載されている。これら18隻の戦略原潜全てが出動しているわけではないが、アメリカ海軍は理論的には432基のトライデント核弾道ミサイルを運用しているのだ。
オハイオ級戦略原潜のミサイル格納ハッチ
また、アメリカ空軍は58機のB-52戦略爆撃機、60機のB-1B戦略爆撃機、それに20機のB-2ステルス戦略爆撃機を運用している。これらの戦略爆撃機は、それぞれ16発の核爆弾(B-61型340キロトン、あるいはB-83型1200キロトン)を搭載できるので、アメリカ空軍爆撃機は2208発の核爆弾を運用していることになる。
アメリカの戦略爆撃機(奥からB-52、B-1B、B-2)
皮肉なことに核廃絶を口にしている日本は、アメリカ本土の地下サイロでスタンバイする400基のミニットマン3、アメリカ海軍戦略原潜に搭載されている432発のトライデント、そしてアメリカ空軍戦略爆撃機に積載される2208発の核爆弾によって生み出されている核の傘によって保護されているのである。
《維新嵐》 我が国は、核兵器による防衛戦略の上でもアメリカの西の「国防圏」の中にあるということをまざまざと思い知らされます。日本列島には、アメリカ軍の四軍すべてが駐留していますが、世界大戦で「敗戦」を受け入れることにより、国際的地位が低下し、アメリカの軍事戦略の及ぶ「国防線」の内側の国にとりこまれた点からこの国の防衛を考えていく必要があります。
アメリカの対中ミサイル戦略の現状
《基本認識》
「中国のミサイルも米国に到達するのは、100発前後です。米国はやる気になれば、中国に数千発単位の核ミサイルを叩き込めますから。」~敵国に初弾を叩き込むのは、SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)である。~
バージニア級原子力潜水艦
《共産中国の中距離ミサイル攻撃の現状と対処》
「米海軍とミサイル専門家らの話では、現在おそらく中国は800~900のミサイル発射台を持っています。その内の100~150が在日米軍むけと予想されています。」
「アメリカのミサイルディフェンスの考え方は、フェイズ・ゼロ。つまり発射前の段階でたたきます。」
「第7艦隊の攻撃型原潜には、トマホークが200発搭載されています。当然核弾頭も搭載可能です。因みにどの原潜が何の弾頭を何発積んでいるか、これは最高機密です。
ターゲットリストには、中国の司令部とミサイル発射台100~150の情報すべてが入っています。先に司令部(C2、Command and Control)を潰して、司令系統を分断します。だから、ミサイル発射台の方では、発射の命令がこないので、撃てません。なので潰せます。
米海軍攻撃型原潜のトマホークが正確に飛来して共産中国の発射台は潰されます。
(引用出典:『2020年日本から米軍はいなくなる』 元アメリカ陸軍大尉 飯柴智亮著2014年8月)
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