2015年9月5日土曜日

東海大学教授山田吉彦先生が語る「沖縄・尖閣諸島の防衛」

海保法改正で「偽装漁民」撃退を
2014.6.24 03:10 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140624/plc14062403100005-n1.htm

 中国海警局の警備船による尖閣諸島周辺のわが国領海内への侵入が半ば常態化している。海上保安庁は巡視船の数を増やし対処しているが、領土が脅かされる状況は一段と深刻化している。
 政府は集団的自衛権の行使容認と併せ、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応についても議論を進めている。

 ≪尖閣への大量上陸警戒せよ≫

 政府が公表した安保法制の閣議決定案では、離島防衛で警察力が直ちに対応できない場合、手続きを経ているうちに被害が拡大しないように、早期に命令を下し手続きを迅速化する方策を具体的に検討することとしている。
 これは、漁民に偽装した中国の特殊部隊や「海上民兵」が、離島に不法上陸した場合を想定したものである。それらが重武装していて、海上保安庁の装備と能力を超えている場合に備え、自衛隊の迅速な出動を可能にする態勢を整備しておこうというのだ。
 だが、離島に他国の重武装集団が上陸するという想定は現実的ではない。重装備だと、乗り込む船舶は速度も遅くなり、事前にレーダーなどで捕捉でき、海上警備行動を発令してから自衛隊が対応することも可能だからだ。
 むしろ警戒すべきは大量の漁民の上陸である。尖閣を脅かしている中国は、南シナ海では漁民を尖兵(せんぺい)として送り込み、支配海域を拡大する戦略をとってきた。フィリピンが管轄権を唱えているミスチーフ礁やスカボロー礁に対し、中国の漁民を保護するとの名目で進出し、支配海域に組み入れてきたのが、その好例である。
 この5月には、ベトナムが自国の排他的経済水域(EEZ)と主張しているパラセル(中国名・西沙)諸島の海域に、巨大な施設を持ち込んで、一方的に海底油田の掘削を始めた。中国による実効支配がこれ以上進むことを案じたベトナムは艦船を派遣し、中国側に掘削作業の停止と退去を求めた。中国はしかし、掘削施設と作業員の保護を名分に、中国海警局の警備船と軍艦を派遣し、ベトナムに圧力をかけ、以来、中越双方の衝突と対峙(たいじ)が続いている。

 ≪中国は海警で警察権を拡充≫

 自国民の保護を口実に進出し、武力を背景に実効支配態勢を確立する。そして、あたかも歴史的に中国が支配してきたかのように喧伝(けんでん)して、既成事実を作り上げる。中国の常套(じょうとう)手段である。
 数百隻の漁船が日本の領海内に押し寄せて、離島への上陸を試みた場合、洋上でそれを完全に阻止することは不可能だ。漁民たちは中国当局の指示の下に上陸した後は、得意の「人海戦術」で島を占拠するだろう。小火器や刀剣を用いてのゲリラ戦で抵抗することも想定される。こうした場合に、現行の海上保安庁法で対処できるかどうか甚だ疑問である。
 海洋進出に際して、海洋警備機関である中国海警局を前面に押し出しているのも巧妙だ。
 1992年に制定した領海法によって、東シナ海、南シナ海のほぼ全域の島々を自国の領土と勝手に決定した中国は、この国内法を盾に警察権を打ち立てて支配海域の拡大を目論(もくろ)んでいる。
 軍事的に行動しているという国際的な非難をかわすため、法制度の整備を行い、警察権の執行機関を軍並みに充実させてきた。中国海軍が出てこない以上、自衛隊が対処することは難しい。
 国連海洋法条約では、軍艦や非商業目的で運航する他の政府船舶である「公船」は、沿岸国の法執行権が及ばないとされている。前述の中越紛争では、中国の警備船がベトナムの警備船に体当たりするという、実力行使による法の執行に出た。これは、海上警察機関同士が直接ぶつかり合う「戦争」の新たな形態といえる。

 ≪25条変え行動できる態勢に≫

 海上保安庁法には、「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」(第25条)との規定がある。だが、中国の海洋進出攻勢をはじめとする今の東アジアの安全保障環境は、海保の能力も相応の水準に引き上げざるを得ないようなありさまだ。「グレーゾーン事態」に効果的に対処するには、海保が行動しやすい法整備が必須なのである。
 防衛出動などが発令された場合、海上保安庁は防衛大臣の指揮下に入ることになる。ただし、海保は後方支援をすることしかできない。海上保安庁法第25条が現行のままでは、日本の海域を守るためには欠くべからざる、海保と海上自衛隊の本質的な連携ができないのだ。
 今後、海保が海賊対処行動や国連平和維持活動(PKO)を行うに当たり、業務を遂行し海上保安官が自らの安全を守るためにも、25条の改正は避けて通れないと考える。日本が自国防衛、国際貢献の両面で責務を果たしていくためには、海保も必要な能力を持たなければならない。米沿岸警備隊などがその参考になろう。
 海上の安全を守る態勢は大きな変革の時を迎えている。(やまだ よしひこ)


「海の安全」守る精神を涵養せよ 
2014.7.21 03:18 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140721/plc14072103180004-n1.htm

 日本は、海に囲まれた島国である。海によって世界の国々とつながっている。人の移動は航空機により高速化が進み、情報は通信衛星、インターネットの普及などによって世界を瞬時に結びつけている。だが、日本人の生活を支える貿易物資の輸送の99・7%は、今も海運に依存している。シーレーンと呼ばれる「海の道」は日本の生命線なのである。

 ≪今に生きる海国兵談の警告≫

 「細かに思えば江戸の日本橋より唐、オランダまで境なしの水路也」
 これは、江戸時代の経世家、林子平が1786年に書いた『海国兵談』の一節である。江戸幕府による鎖国政策下においても、日本は海によって世界と結びついているということが認識されていた。そして、海から迫り来る危機を警告したのが本書である。
 現在、子平の時代と似た状況にわが国は置かれている。国民の多くは与えられた平和に酔いしれ、世界の争乱に、迫り来る危機に目を向けようとしない。国際情勢を理解する能力が衰えてしまったのだろうか。幕府の安定した統治の下、平和ボケした江戸時代後期の人々に通ずるものを感じる。
 1994年発効の国連海洋法条約で排他的経済水域(EEZ)の制度が導入され、沿岸国の海洋権益が認められるようになった。すると中国のように管轄海域の拡大への野心を持つ国が現れ、既存の海洋秩序を守ろうとする国々と対立しだした。日本は既存秩序派の代表格であり、安倍晋三政権は東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国やオーストラリアなどとアジア海域の秩序維持のための協力関係を築こうと動いている。

 ≪海洋秩序めぐる日中の攻防≫

 海洋権益の拡大へと邁進(まいしん)する国の代事力、経済力を背景に強硬外交を展開している。習近平国家主席は、「偉大なる中華民族の復興を目指す」と公言し、「中華思想」を基軸に置いて支配領域の拡大を進めている。南シナ海では、ベトナム、フィリピンに対し実力を行使する態勢に入った。東シナ海においてもいずれ、力をむき出しにした行動に踏み出すと予測される。
 中国が絡んだ海洋権益争い以外にも、シリア、イラク、ウクライナでは内戦ないしは内戦一歩手前の状況にあり、表格、中国は、領有権を争う相手国と一対一での交渉しか認めようとせず、強大化した軍世界は極度に不安定化している。好むと好まざるとにかかわらず、その影は日本人の生活にも忍び寄っている。それらに対処して日本の平和を守る手段のひとつが、集団的自衛権行使である。風雲急を告げる世界情勢の中で日本が平和であり続けるために、何が必要で何を行うべきかを確認することは、政府のみならず国民の責務であると考える。
 安倍首相は、14日の衆議院予算委員会の集中審議で、集団的自衛権行使の3要件が満たされるのであれば、中東のホルムズ海峡における機雷掃海は可能であるとの見解を示した。ペルシャ湾の玄関口に当たるホルムズ海峡は、日本人が利用する原油の8割が通過する海の要衝である。中東情勢の混迷もあって、すでに原油価格は高騰しており、日本経済にも暗雲が立ち込めている。

 ≪「生命線」かかる機雷除去≫

 日本の海上保安庁と海上自衛隊は、第二次大戦終戦後の日本沿岸での掃海活動、朝鮮戦争時の掃海活動などで7000基を超す機雷を除去してきた実績がある。1991年の湾岸戦争直後には、海自部隊が各国海軍と協力して、クウェート沖海域で約1200基の機雷の除去を行っている。しかし、一度まかれた大量の機雷をすべて取り除くのは難しい。実際、商船三井が運航するタンカーが2010年にホルムズ海峡近くで、浮遊機雷に接触した可能性が高いとみられる爆発を受けて船体を損傷する事故が起きている。
 仮に、イラクの反政府過激派勢力、あるいはそれを支援する組織が、外国の介入を排除するためにペルシャ湾に機雷を敷設したとしたら、たとえ争乱状態の下であっても掃海作業を行う必要がある。日本の経済を防衛し、ようやくソマリアの海賊に襲われる危険から解放されつつある外国航路の船員をはじめ、日本国民の安全を守らなければならないからだ。
 機雷の危険は重要なシーレーンが縫う南シナ海にも及び得る。中国が保有しているとされる10万基の機雷が万一、海底油田の開発など同国による一方的な海洋行動を阻止しようとするベトナム、フィリピンに対して使われた場合、南シナ海を漂って日本の商船の安全を脅かすことも懸念される。
 海で世界と結ばれている島国の国民であるわれわれは、世界の海の安全に貢献する精神を涵養(かんよう)すべきである。それには、世界の海の現状を国民が正確に把握することから始めなければならない。

 今日は「海の日」である。「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う」日である。その繁栄のため、日本として世界の海の安定に向けて果たすべき役割があることを銘記する日としたい。(やまだ よしひこ)

沖縄知事選では「中国」も問え
2014.9.19 05:01 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140919/lcl14091905010001-n1.htm

 ≪基地の単一争点化に違和感≫

 沖縄県知事選挙が11月に行われる。沖縄の地元紙は、知事選の争点を米軍の普天間基地の辺野古移設の是非のみに絞っているようである。基地問題が重要であるのは確かだが、この議論だけに選挙の帰趨(きすう)がかかってきそうな方向にあることには違和感がある。
 在日米軍の問題は、沖縄だけではなく日本全体で考え、外交、防衛政策とも関係するから総合力をもって取り組むべき事項だ。安倍晋三政権も国家主要課題の一つとして取り組み始めている。
 沖縄知事選はそれ以上に、海洋国家、日本の行く末を左右する重要な意味を持つ。そこに多くのメディアは目を向けようとしない。沖縄は中国が強い関心を示す地政学的な位置にもあるのだ。
 沖縄近海には魅力的な海底資源も眠っている。石油天然ガス・金属鉱物資源機構は昨年3月、沖縄本島北西約100キロの伊是名海域に金、銀、銅などの資源量が340万トンを超える海底熱水鉱床が存在していると報告した。この海域に眠る資源を地金換算すると約5兆円になると推定される。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140919/lcl14091905010001-n2.htm

 さらに、今年7月には、海洋研究開発機構が、その50キロほど北の伊平屋沖に大規模な熱水鉱床があると発表した。このほかにも沖縄ではいくつかの海底熱水鉱床が発見されている。尖閣諸島周辺海域には埋蔵量豊富な油田が存在することも知られており、沖縄は海底資源の宝庫といっていい。
 沖縄県は、クロマグロ、キハダマグロ、メバチマグロの3種類に関して全国第3位の水揚げ高を誇る。希少価値のあるマグロを水揚げする県としての経済的価値の維持、資源量の保護など水産分野でも対処すべき課題は多い。
 沖縄の魅力はサンゴ礁をはじめ多様な海洋の自然にもある。沖縄県には昨年、658万人もの観光客が訪れている。目的としては、海岸景勝地の探索や保養、マリンレジャーなど海洋にかかわる観光が圧倒的に多い。これらの観光客が沖縄にもたらす観光収入は、年間約4000億円であり、沖縄県内総生産の10分の1ほどを占めている。沖縄経済は多分に海洋観光に依存しているといえる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140919/lcl14091905010001-n3.htm

≪アジアのハブ化への潜在力≫

 外国からの観光客も近年は増えており、60万人を超えている。特徴的な現象として、大型外航客船の那覇港、石垣港への入港数の増加が挙げられる。両港とも年間70隻を超え、国内トップクラスの旅客船港になっている。多くは台湾を経由しての入港で、1隻当たり1500人ほどの台湾からの観光客が乗船しているという。
 沖縄県は日本の南の玄関口に当たる。那覇市と東京の距離は約1500キロである。那覇を基点に同じ長さの半径の円を描くと、マニラ、ソウル、上海なども円内に入ってくる。地理的にみて、沖縄はアジアの中心都市の一つになり得るのである。グローバル化が進む中で、那覇は将来的に、アジアのハブ(拠点)空港、ハブ港になり得る潜在力を秘めている。
 問題は、そのような沖縄が中国の目にさまざまな観点から魅力的に映っているという点だ。
 この4月、日本の排他的経済水域(EEZ)内にある久米島沖の海底熱水鉱床海域付近で、中国調査船が日本の中止要請を無視して調査を強行した。尖閣近海でも中国公船が9月から4隻に増強されほぼ常駐化している。中国から海路で世界を目指すと沖縄諸島を横切らなければならない。中国にとり沖縄周辺は是が非でも影響圏に組み入れたい海域なのだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140919/lcl14091905010001-n4.htm

≪影響圏化の野望を警戒せよ≫

 中国の習近平国家主席は「中華民族の偉大なる復興」をスローガンに掲げて外交防衛戦略を進めている。そこに、周辺地域をかつての朝貢国のように影響圏化しようとの野望も見え隠れする。
 折も折、この5月に、琉球独立論を唱えるグループが、中国の北京大学、中国社会科学院で、沖縄発行の新聞を示しながら日本からの独立を唱え、中国当局に称賛されたという。さらに、かつて琉球からの朝貢使節が通った道を実際に歩いてきたともいう。
 沖縄を日本から切り離そうという中国による試みは、ごく少数の琉球独立派をクローズアップすることで静かに進められている。その伝達手段として沖縄の新聞が使われているのであれば重大だ。第二の朝日新聞「従軍慰安婦報道」にしてはならないと思う。
 知事選では、沖縄県民が言葉だけの「平和」ではなく真の安全を確保し、幸福に暮らせる社会を作り、子弟に教育を施して未来を築いていくには、どうすればいいかが争点になることを望む。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140919/lcl14091905010001-n5.htm
そのためには、沖縄県民のみならず、日本国民全体が、沖縄最大の財産である「海洋」に目を向けることだ。政府の沖縄振興策のテーマを海洋開発、海洋環境保全などの海洋事業を柱に設定し、沖縄という日本最南の地方を、海洋国家、日本を代表する「海洋都市」として創生するのである。
 海洋都市こそが、独立論よりも遥かに沖縄のアイデンティティーを高めることになるのだ。(やまだ よしひこ)

サンゴ密漁の真の狙いは尖閣だ   
 2014.11.6 05:02http://www.sankei.com/column/news/141106/clm1411060001-n1.html

   海洋国家・日本に迫り来る脅威は、尖閣諸島周辺ばかりではない。小笠原諸島および伊豆諸島周辺海域に大量の中国漁船団が出没し、縦横無尽に動き回っている。目的は1キロ当たり150万円以上の価値がある赤サンゴの密漁のためだ。
 姿を現し始めたのは9月からだが、10月30日に海上保安庁は、この海域に212隻の漁船が展開していることを確認した。漁船団は小笠原諸島父島からも見え、島民は恐れ、上陸などの不測事態に備え警戒態勢にある。また、漁業やホエールウオッチングなど観光産業への影響が懸念される。島民の生活を脅かす由々しき事態だ。しかし、海上保安庁は水産庁とともに、5隻の船舶により密漁の警戒に当たるのが限界だ。

 ≪密漁船は中国当局の関与?≫

 これほどの漁船団となると単なる密漁とは考え難い。中国から2千キロ以上も離れているため、燃料代だけで300万円ほどになる。また大漁船団で漁を行い過当競争になったのでは採算がとれないだろう。既に海保により密漁と検査忌避罪で5隻が拿捕(だほ)されているにもかかわらず、漁船団はなお出没海域を拡大し活動を続けている。

http://www.sankei.com/column/news/141106/clm1411060001-n2.html

さらに、存在を誇示するかのように地元漁船に近づいて来る。通常、中国の漁船団は基本的に中国海警局の管理下にあり自由に動き回ることはない。日本政府は中国側に密漁船の抑止を求めているが、中国側による密漁抑止の動きは消極的だ。むしろ、中国当局の関与を疑う。
 その伏線には、海保の尖閣警備の強化がある。海保は尖閣諸島警備のための専従チームとして600人の海上保安官と12隻の巡視船を配備することを表明し、先日、2隻の新造警備船が石垣島に到着したばかりだ。
 中国は日本による尖閣諸島管理の強化を恐れ、日中首脳会談開催の条件のひとつとして、尖閣諸島における領土問題の存在を認めることを要求した。時を同じくして、海保の機動力を試すかのように、尖閣から離れた小笠原海域に大漁船団を投入したのであろう。

 ≪五島で起きた漁民不法上陸≫

 いかに海保が勢力を増強しても、大量の漁船を使った中国による攪乱(かくらん)への対処は難しい。実際に尖閣警備のために日本中から巡視船を交代で動員しているため、各管区ともに警備人員、装備ともに余裕はない。中国の要求を受け入れて尖閣の問題を認めなければ、日本の海を混乱に陥れるという脅迫行為とも受け取れる。

http://www.sankei.com/column/news/141106/clm1411060001-n3.html

 中国は以前にも同様の手口を使っている。2012年7月、民主党政権が尖閣諸島の国有化の意思を示した直後、五島列島の入り江に106隻もの漁船を侵入させた。この漁船には2千人以上の中国人が乗船していたと推測され、島民は中国漁民が上陸する可能性に怯(おび)えた。五島では、過去に中国漁民が不法上陸をしたことがあるのだ。しかし、警察、海保、五島市役所は、監視体制をとることしかできなかった。現在の国内法においては、上陸を開始しなければ対応ができないのだ。
 仮に2千人が一斉に上陸を開始したら、島の警察官だけでは身柄を拘束することさえできないだろう。その後、野田政権は中国とのトラブルを避け、尖閣を国有化しても、何も利用しないという道を選んだ一因になったとも考える。

 ≪住民監視が行き届く整備を≫

 同様に小笠原近海に姿を現す中国漁船が、小笠原諸島のいずれかの島に上陸を開始しても阻止することはできない。また、海が荒れた場合、漁船団は緊急避難を名目に港に侵入し、不法に上陸することが考えられる。中には、海賊のように略奪をする者も現れかねない。無人島を占領し勝手に拠点を作ることもあり得る。相手が漁民なので、対処するのは洋上では海保、陸上では警察の役目となる。しかし、海保、警察ともに離島において大量の不法入国者に対処する機動力を持たない。また漁民が武器を行使したとしても、すぐに自衛隊を動かすこともかなわないのだ。これがグレーゾーンだ。

http://www.sankei.com/column/news/141106/clm1411060001-n4.html

 有事体制の整備は不可欠である。さらに有事に発展する前に対処する能力を持つことが重要だ。密漁漁船や不審船の対策において広範囲の監視と機動的な展開が可能な自衛隊と、警察権を持つ海保、警察の連携体制を作ることが必要であり、グレーゾーンに対応する法整備が求められる。
 根本的に日本の沿岸警備体制の見直しを進めなければならない。 既に、海保と海自はソマリア沖海賊対策において、自衛艦に海上保安官が同乗し、法の執行に備えた連携体制をとっている。外国船の密漁に対しても、自衛艦に海上保安官が同乗する施策をとれば、機動的に海洋警備を行うことが可能になるだろう。
 さらに、政府が進める地方創生の中核に離島の振興を置き、インフラや社会システムの整備を進めることで、住民による監視が行き届き、他国が侵入できない環境を作ることも重要だ。国家の総力を挙げて、島そして海を守る体制整備が急務なのである。(やまだ よしひこ)






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