2015年9月22日火曜日

《今さら聞いても大丈夫!》【安全保障関連法】あらゆる事態想定~切れ目のない防衛法制とは?

2015.5.14 21:53更新 http://www.sankei.com/politics/news/150514/plt1505140049-n1.html

【本文】

 日本の防衛法制には、いくつもの「切れ目」が存在してきた。
14日に閣議決定した新たな安全保障法制の主眼は、この「切れ目」をふさぎ、あらゆる事態に対しても国家と国民を守れる防衛体制を構築することだ。背景には中国や北朝鮮が軍事的膨張を続け、東アジア情勢を緊迫させているほか、地球規模で国際テロや紛争が起きるリスクが高まっていることがある。新法制で何ができるようになるのか。「有事」発生まで事態の深刻度を3段階に分けて整理する。

レベル1▼平時 在外邦人の救出など

 日本に脅威が差し迫っていない「平時」に、国外でテロが発生した場合、課題となるのが在外邦人の保護だ。
 その一例が、平成25年1月のアルジェリア人質事件だ。政府は事件を機に在外邦人の陸上輸送を可能としたものの、より危険な任務となるテロ組織に拘束された邦人の救出任務は手付かずだった。武器使用権限が正当防衛や緊急避難など「自己保存型」に限られるからだ。
 新法制では、自衛隊が在外邦人を救出する任務に必要となる武器使用を認める。武装集団などを排除する「任務遂行型」として、国際標準の使用基準に近づけた。


政府が想定する邦人救出は、8年のペルー日本大使公邸占拠事件のように在外公館がテロ組織に占拠されるケースや、治安悪化によって国外退避する邦人を警護するケースなどだ。救出任務の実行には当該国が同意しているほか、当該国の権限がその地域に及んでいることなど3つの要件を満たす必要がある。

 ▼PKOなど
 国連平和維持活動(PKO)に派遣される自衛隊の役割も拡大させる。自衛隊が武装勢力に襲われた遠方の非政府組織(NGO)などを助ける「駆け付け警護」を可能にするほか、現地住民を混乱から保護する「安全確保業務」を追加する。
 PKOと異なり、国連が統括しない国際協力にも参加できるよう「国際連携平和安全活動」を新設する。
 活動の正当性を確保するため、PKOに自衛隊を派遣する際の「参加5原則」を満たした上で、国連の総会や安全保障理事会、経済社会理事会の決議などを必要とした。政府は、イラク復興支援特別措置法に基づき、自衛隊が16~20年に派遣されたイラクでの人道復興支援活動のようなケースを想定している。


▼国際平和共同対処事態
 新法の「国際平和支援法案」では、自衛隊の他国軍への後方支援を随時可能にする。13年のアフガニスタン戦争に参加した米軍など有志連合軍に対する自衛隊による後方支援は、時限立法のテロ対策特別措置法で対応してきた。必要な事態が生じてから法律を制定するために迅速な反応は難しかった。

レベル2▼グレーゾーン

 新法制をめぐって、憲法解釈の見直しを伴う集団的自衛権の行使容認とともにクローズアップされたのが「グレーゾーン事態」への対処だ。
 グレーゾーン事態とは、自衛隊に防衛出動が命じられる「有事」ではないが、治安維持を担う海上保安庁や警察による対処は困難という“隙間”の事態のことだ。例えば、(1)武装集団による離島への不法上陸、占拠(2)外国軍艦が日本領海に侵入(3)公海上で日本の民間船舶が攻撃される-といった日本の主権が侵害されるケースが主な例だ。
 これらの事態で自衛隊が「治安出動」「海上警備行動」を迅速に行うため、閣僚に電話で了解を取り付ける閣議決定の方式を導入する。自衛隊に対して発令する意思決定の時間を短縮するのがねらいだ。

通常の閣議決定では、閣僚を招集している間に事態が悪化するおそれがある。現在も閣僚の署名を順次集める「持ち回り閣議」の方式がある。ただ、閣僚が地方にいる場合やグレーゾーン事態が深夜や未明に発生した場合、迅速な決定ができないと指摘されていた。
 さらに自衛隊法の改正で、米軍など他国軍が自衛隊との共同演習や警戒監視活動など日本防衛に役立つ活動をしている際に攻撃を受けた場合、その武器や艦艇の防護を可能にする。具体的には北朝鮮による弾道ミサイル発射に対処している米軍などを想定している。

 ▼重要影響事態
 事態を放置すれば日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある朝鮮半島有事や台湾海峡有事などを想定した周辺事態法を「重要影響事態法」に改める。
 自衛隊の活動範囲に対する地理的制約がないことを明確化。「重要影響事態」と判断されれば日本の安全保障に資する活動をする他国軍に後方支援できるようにした。
 周辺事態法では米軍のみを支援対象としていたが、重要影響事態法案では日本のために活動している他国軍であればどの国でも後方支援できる。

支援メニューも弾薬の提供や発進準備中の戦闘機への給油をできるように改め、質量ともに活動の幅を広げる。

レベル3▼有事 存立危機事態

 日本に対する侵攻が起きた「有事」には、日本は自衛権を発動し自衛隊が防衛出動する。現行法制では、日本が直接武力攻撃を受ける「武力攻撃事態」での「個別的自衛権」の行使しか認められていない。日本と密接な関係にある他国が武力行使を受けた際に、日本が武力行使して助ける集団的自衛権の行使は認められていなかった。
 新法制では、他国への攻撃により、日本の存立や国民の権利が根底から覆される明白な危険があるケースを「存立危機事態」とし、この場合には集団的自衛権を行使できることにした。
 想定するのは戦時下のホルムズ海峡での機雷掃海や、米国に向かう弾道ミサイルの迎撃などだ。
 機雷掃海やミサイル防衛は、4月に日米両政府が合意した「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定にも、集団的自衛権を行使する分野として盛り込まれた。

集団的自衛権は国連憲章でも認められる権利だが、日本の歴代政権は集団的自衛権の行使を憲法解釈で禁じてきた。しかし、集団的自衛権を行使できないなら、戦地から脱出する邦人を輸送する米艦艇が攻撃されても自衛隊は武力行使できない。
 首相は昨年7月、これまでの解釈を見直し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行った。「武力行使の3要件」を定め、「必要最小限度」の範囲で行使できるよう改めた。
 一方で「存立危機事態」は、新たな3要件を反映しているが、一部には「厳格すぎる」という指摘もある。自衛隊の行動が遅れれば、より厳しい戦闘を強いられ、国民への悪影響が増大しかねないからだ。

 一部野党はこの法制を「戦争法案」と批判する。国会審議を前に耳目を集めやすく、刷り込みやすい言葉で“宣伝戦”を仕掛けようとしているのだ。
 国民の安全を守る法制の必要性を考慮すれば、新法制でも、諸外国に比較して制約が厳しいことは確かだ。野党の批判は単なるレッテル貼りにすぎないともいえる。

佐瀬昌盛防衛大教授
安全保障関連法について語ります。

民主党は鵺なのか?「抑止力強化」立証の時を待て

防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛

2015.9.22 05:01更新 http://www.sankei.com/column/news/150922/clm1509220001-n1.html

 平成27年9月16日、所用があって国会図書館に出かけました。ところが迂闊なことに休館日だったので、国会正門の方へ回ってみました。午後5時半ごろでしたが「戦争反対」デモの群衆が集まっていたからです。陽気なもので、一群がなぜか「起(た)て、飢えたる者よ、いまぞ日は近し」とインターナショナルを高唱しています。もっとも飢えていない若者たちはこの革命歌を知らないらしく、テキストと首っ引きでスピーカーから流れ出る合唱に合わせていました。

 ≪お祭り気分だった反対デモ≫

 「倒せ! 安倍、NHK」なるプラカードもあります。それを掲げる若者に、安倍晋三首相を倒せは分かるけれど、なぜNHKが打倒の対象なのかと尋ねると、受信料引き上げの動きがあるからだとの答えでした。まるでミソもクソも一緒くた。お祭り気分です。「60年安保闘争」当時の悲壮感は皆無でした。
 55年前の反安保闘争は殺気立っていました。東大女子学生が死亡したほどですから。反対デモの指導者も真剣そのもの。清水幾太郎、香山健一、志水速雄、西部邁といった人々には今のデモ隊の参加者のお祭り気分が微塵(みじん)も認められませんでした。だからでしょうか、運動が挫折すると彼らは悩み抜き、転向します。清水幾太郎が1980年に書いた「日本よ国家たれ-核の選択」はその所産。類似例はまだまだあります。


しかし、転向するには時間と苦悶が必要です。同じように、「戦争法案」と呼ばれていたものがその実、正反対の「抑止力強化」法案であると判明するには、少なからぬ時間の経過が必要でしょう。短くても5年。歴史はそのことを教えてくれます。
 岸信介政権が結んだ日米安全保障条約の第10条には「…この条約が一〇年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する」とあります。
 つまり、1970年には条約が終了する可能性もあったのです。

 ≪政府が安堵した世論調査≫

 ところがどうでしょう。10年後の70年に政府の「自衛隊に関する世論調査」が発表されてみると、日本は安全確保の方法として「現状通り、(日米)安保体制と自衛隊で日本の安全を守る」(補足は引用者)のがよいとする回答は断トツの40・9%を占めました。因(ちな)みに「安保条約をやめて、自衛隊も縮小または廃止する」は9・6%どまり。政府が安堵したことは言うまでもありません。


実はこれが安保・防衛についての初の政府世論調査でした。というのも、60年反安保闘争のトラウマに悩む政府は、国民の反日米安保、反自衛隊感情の横溢(おういつ)を恐れて、この種の世論調査を実施しようとはしなかったからです。が、この結果に勇気づけられて、3年ごとの実施が定着しました。
 この事実は何を教えているのでしょうか。時間の経過がことの当否を決めてくれます。ただし時間は強情者で、圧縮して早送りという注文に応じてはくれません。5年は5年、10年は10年なのです。だから安倍政権の新安保法制が「戦争法制」でないと立証されるまで、われわれは5年、7年、10年と待たねばならないでしょう。

 ≪5年、7年、10年後を見よ≫

 だから最大野党たる民主党に忠告しておきます。今日の報道では、この寄せ集め政党は一致結束しているかに見えます。とんでもない。いまの執行部が結束しているだけの話です。数年前の民主党政権で要職にあった人々、たとえば野田佳彦元首相、前原誠司元外相、渡辺周元防衛副大臣、長島昭久元防衛副大臣といった面々は、棒を呑んだような岡田克也代表、枝野幸男幹事長らとはひと味違う柔軟派なのであって、今日の政府の新安保法制に賛成票を投じても何ら不思議はありません。


 もう一人、重大人物を忘れていました。鳩山由紀夫「宇宙人」元首相で、「新憲法試案」(PHP研究所)なる迷書を書いた人です。その70ページをひもときましょう。そこには「集団的自衛権の概念を極端に縮小」してきた従来の内閣法制局見解が手厳しく批判されています。もっとも、同書の著者が本当に鳩山氏である保証はどこにもありませんが。
 私の目には民主党なる政党が鵺(ぬえ)と映ります。かつて日本の非武装中立を唱えた社会党には、それなりのバックボーンがありました。いま背骨を感じさせる野党は日本共産党あるのみです。もっともこの党は70年近く昔のそれとは似ても似つかぬ猫なで声を使っていると思えてなりません。なぜなら「革命」論議を止めたからです。

 繰り返します。我に課すに5年、7年、10年の歳月をもってせよ、です。それは長いようで、短いのかもしれません。そのあかつきに、行司軍配はどちらに上がっているでしょうか。自明です。(させ まさもり)

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