「中国は朝鮮半島や沖縄も影響圏に…」京都「正論」懇話会
村井友秀・東京国際大教授が講演
2015.9.28 19:20更新 http://www.sankei.com/west/news/150928/wst1509280069-n1.html
京都「正論」懇話会の第48回講演会が28日、京都市上京区の京都ブライトンホテルで行われ、東京国際大教授の村井友秀氏が「『中華民族の偉大な復興』とは何か」と題して講演。中国について「世界一の大国というイメージを持っており、歴史的に朝貢国だった朝鮮半島や沖縄県までは影響圏に置きたいと考えている」と分析した。
村井氏は、安全保障に関して「集団的自衛権というのは攻撃された他国を見捨てずに助ける“いい国”になることだと国際的には考えられている。国連憲章にも記載されており、国連加盟国にとって義務ともいえる」と述べた。
安保関連法が成立したことについては「自衛隊員が戦争に行くリスクは確かに高まったが、東シナ海での米国のプレゼンスが高まり、日本が直面する戦争の可能性を減らした」と評価した。
《維新嵐コメント》めざめてください!日本国民のみなさん
安全保障関連法は、アメリカ合衆国の軍事力を共産中国以外のアジア各国の軍事抑止力として担保するとともに、我が国の「国防軍」たる自衛隊が、我が国の国防線ならびにアメリカの西側の国防線を防衛するための法律と考えていいでしょう。いくらアメリカ追随が嫌だ、といってもアメリカの軍事力なしにアジアの海洋、資源、領土権益を防衛することはできません。まさに我が国の「国益」を守り、「侵略戦争」をおこさせないための法律枠なのです。
人工島に軍用滑走路出現、南シナ海が中国の手中に
米国の批判も時すでに遅し、誕生しつつある南沙基地群
ファイアリークロス礁での基地施設建設状況(写真:CSIS/AMTI)
9月に入ってから撮影された南沙諸島の航空写真(CSIS/AMTI発表)によると、中国が南沙諸島に建設している人工島のファイアリークロス礁とスービ礁、それに中国が以前より占拠しているミスチーフ礁の3カ所で、軍用基地として使用可能な3000メートル級滑走路がそれぞれ建設されているのが確認された。
これまでのところ、人民解放軍の南シナ海に対する前進拠点は、西沙諸島の「永興島」であった。
永興島は、軍・政府関係者ならびに漁業関係者をはじめとする民間の人々も居住して1500名ほどの人口を抱え、南シナ海の“中国の海洋国土”を管轄する三沙市行政機関が設置されている。
そして、人民解放軍海軍部隊と武装警察部隊が常駐しており、2700メートルの滑走路を有する航空施設(ちなみに沖縄の米海兵隊普天間基地の滑走路も2740メートルである)と5000トン級の艦船が接岸できる港湾施設が設置されている。
したがって、中国海軍の各種戦闘機はすべてこの航空施設を利用することができ、中国海軍フリゲートやコルベットも永興島港湾施設を前進拠点とすることができる。
このように、海南島の海軍基地や航空基地からはおよそ400キロメートル、そして中国本土広東省の航空基地からはおよそ600キロメートル南シナ海に前進した永興島は、海軍の前進拠点と考えることはできた。
しかし、その前進拠点からでも南沙諸島の中心海域までは750キロメートル(400海里)前後はある。そのため、万一フィリピン沿岸域にアメリカ空母が展開した場合には、人民解放軍戦闘機は圧倒的に「距離の不利」に直面してしまう。また軍艦、とりわけコルベットやミサイル艇など小型軍艦の場合、永興島から南沙諸島まで急行しても半日以上かかる。このように南沙諸島での作戦行動には、何と言っても「距離の制約」がつきまとっていた。
したがって、中国海軍や海軍よりも頻繁にパトロール活動を展開することになる中国海警(沿岸警備隊)にとっては、南沙諸島に前進拠点を確保することは絶対に必要であり、それも急務とされていたはずだ。
本コラムでも2013年以来しばしば南シナ海問題を取り上げてきたが、中国による人工島建設を直接取り上げたのは2014年6月であった。それは、「ジョンソンサウス礁での埋め立て作業が確認され、ファイアリークロス礁での埋め立て計画も明らかになった」という状況であった(本コラム、2014年6月26日「着々と進む人工島の建設、いよいよ南シナ海を手に入れる中国」)。
その後、中国による南沙諸島での環礁埋め立て、すなわち人工島建設は急速に進展し、2014年10月にはファイアリークロス礁に加えてジョンソンサウス礁、そしてガベン礁での人工島建設が確認された(本コラム2014年10月16日)。それから半年後には、さらにクアテロン礁、そしてヒューズ礁でも人工島建設が確認された。そして、ファイアリークロス礁には3000メートル級滑走路や港湾施設が建設されるであろうとの予測も紹介した(本コラム、2015年3月12日「人工島建設で南シナ海は中国の庭に」)。
引き続き2015年4月にはスービ礁でも人工島建設が確認され、南沙諸島での中国による人工島建設は6カ所に達した。この他、人民解放軍が占拠しているミスチーフ礁でも埋め立て作業が活発になっている状況も確認され、中国による7カ所の人工島建設作業が確認されたのだ。
もちろん、中国にとっては“外野からの雑音”など何の影響も与えることにはならず、人工島建設は急ピッチで進められた。しかし、ファイアリークロス礁に建設されていた滑走路が着々と完成に近づき、その他の人工島でも滑走路や港湾施設それにヘリパッドなどが次々と建設されつつある状況に業を煮やしたアメリカ海軍が、CNN取材陣を搭乗させて「人工島建設状況の実況中継」をするや、ようやくアメリカ政府も強く中国を批判するに至った(本コラム、2015年5月28日「中国の人工島建設に堪忍袋の緒が切れつつある米軍」)。
それからしばらくすると、中国政府は人工島建設打ち切りの意向を表明したが、実際にはほぼ完成に近づいていたのである。
その後も人工島内の航空施設や港湾施設それに格納庫をはじめとする様々な建造物の建設が続けられ、冒頭で述べたように9月上旬に撮影された航空写真には、3つの人工島にそれぞれ滑走路が誕生しつつある状況が確認された。中でもファイアリークロス礁の航空施設は滑走路や格納エリアなど稼働が間近に迫っているのが明らかである。
いずれも3000メートル級滑走路であるため、人民解放軍の戦闘機や爆撃機それに哨戒機や早期警戒機などあらゆる航空機の発着が可能である。それらの環礁・人工島には、航空施設と同時に港湾施設も建設されており、少なくとも3カ所の統合海洋基地が出現することになるのは確実だ。
また、他の人工島にもヘリパッドや小型機用の滑走路と港湾施設が建設されているため、人工島をネットワーク化することにより、極めて強力な「人民解放軍南沙基地群」が誕生する運びとなるであろう。
「南沙基地群」を拠点として幅広い活動を展開するのが、沿岸警備隊である中国海警の巡視船ということになるであろう。
そして、巡視船の背後で睨みをきかせるのが中国海軍だ。中国海軍は「南沙基地群」にコルベットや高速ミサイル艇それに哨戒機などを配置して、南シナ海中部から南部にかけての海洋統制力が格段に強化するものと思われる。
また、中国空軍の早期警戒機も配備され、人工島に設置されるレーダー施設とあいまって、南シナ海全域の航空統制力も確実に中国優位になるものと考えられる。米軍関係者の多くは「中国が南シナ海の広範囲にわたる空域に中国版ADIZを設定するのは時間の問題」と覚悟を決めている。
北村04
このように人民解放軍が「南沙基地群」という前進拠点を手にすることにより、南シナ海はますます名実ともに“中国の海”と化すことは避けられない。
そして有事においては、人民解放軍のミサイル爆撃機や戦闘攻撃機が南沙基地群を拠点にすることにより、フィリピンやインドネシアはもとよりオーストラリア北西部も攻撃圏内に収めることとなる。そのため、それらの海域のシーレーン(日本にとっては南シナ海シーレーンの迂回航路)も完全に人民解放軍のコントロール下に入ってしまうこととなる。
このように、南沙諸島の人工島に姿を表しつつある「南沙基地群」の誕生によって、南沙諸島をめぐり中国と紛争中の諸国のみならず、日本やアメリカにとっても南シナ海は極めて厄介な海となることは確実である。
「北の海」に進出した中国海軍艦艇 その意図は?
日本の備えは?
吉富望 (日本大学総合科学研究所教授)
2015年09月22日(Tue) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5397
米国防省は9月2日、アラスカ州沖のベーリング海の公海上で中国海軍艦艇5隻を確認したと発表し、その後、この中国艦隊がアリューシャン列島周辺の米国領海12カイリ内を通航したことを明らかにした。近年、中国の海洋進出はアジアの枠を超えて活発化しているが、日本では(米国でも)東シナ海、南シナ海およびインド洋という「南の海」における中国の活動が関心の的となっている。
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その虚を突くように突如、ベーリング海という米国本土に隣接する「北の海」に初めて出現した中国艦隊の行動に込められた意図は何か、そして日本(日米)が中国海軍の「北の海」への進出を踏まえて講じるべき備えとは何か、考えてみたい。
アリューシャン列島地図(iStock)
まず、ベーリング海に進出した中国艦隊の内訳はミサイル駆逐艦1隻、フリゲート2隻、揚陸艦1隻および補給艦1隻とみられる。これら5隻は8月20日から28日までの間、日本海でロシア海軍との共同訓練に参加した後、8月29日に宗谷海峡を東航してオホーツク海に入ったことが海上自衛隊によって確認されている。
中国艦隊はその後、カムチャツカ半島とアッツ島との間の海域を北上してベーリング海に入り、9月3日の夜にアリューシャン列島を通過(南下)して北太平洋に入る際に米国領海内を通航した。中国側は本領海内通航について米国側に事前に通知していないが、米国防省は本領海内通航を無害通航とみなし、国際法上の問題は無いと述べている。なお、中国艦隊がベーリング海で行動した時、オバマ大統領はアラスカを訪問中(8月31日~9月3日)であった。
この中国艦隊の行動に関する中国国防省のコメントは「通常の訓練としてベーリング海に入ったものであり、特定の国に焦点を当てた訓練ではない」である。ちなみに、中国艦隊が米国領海内を通航した9月3日は北京の天安門広場で大規模な軍事パレードが実施された日でもある。
中国艦隊の行動に込められた意図とは
米国は現在、安全保障分野で中国に対する苛立ちを強めている。その背景は中国による南シナ海での大規模な埋め立てと基地建設の動き、および米国政府機関や企業に対するサイバー攻撃である。中国の習近平国家主席は9月22日から28日まで米国を訪問するが、この際には安全保障分野でオバマ大統領との厳しい応酬が予想されている。
そのオバマ大統領がアラスカに滞在しているタイミングで中国艦隊がベーリング海に進入し、米国領海内を航行することは、国際法上は問題が無いとはいえ米国の苛立ちを逆撫でしかねない。加えて、9月3日の軍事パレードで米本土を攻撃できる大陸間弾道弾を誇示すると同時に米本土近くで海軍艦艇が示威的な行動を行うことは、一種の挑発と言える。
習近平の意図か、海軍の単独行動か?
こうした挑発的な行動に込められた意図に関しては様々な見方ができる。まず、訪米前に安全保障問題での強硬姿勢を暗示して米国を牽制しようとする習主席自身の意図の反映との見方ができる。
他方、もし今回の中国艦隊の行動が軍の独断で行われたのであれば、軍の対米強硬姿勢を習主席に見せつけ、安全保障分野での対米譲歩を許さないとする政治的圧力であったとも受け取れる。また、中国軍が米本土近海でも行動できることを米国に見せつけ、中国近海における米軍の行動を控えるよう促す意図があったとの見方もできる。さらに見方を変えれば、9月3日の軍事パレードでの海軍の露出度が小さいため、政治指導部、軍中央、あるいは海軍が海軍だけのアピールの場を設けたとも想像できる。
こうした外交的、内政的、組織的意図とは別に、今回の中国艦隊の行動は北極海への進出に向けた中国の動きの一環との見方もできる。近年、地球温暖化によって北極海の結氷海面は徐々に減少し、それに比例して中国にとっての北極海の経済的価値は徐々に高まっている。
第一の価値は北極海航路である。北極海航路は欧州と中国との間をスエズ運河経由の南回り航路に比べて短い距離で結ぶため、運航コストの削減が期待できる。また、南回り航路が政情不安、テロ、海賊、領土を巡る紛争などの危険を孕んだ海域を通航する一方、北極海航路は比較的安全性が高い。そして、第二の価値は埋蔵されている資源である。米国地質学研究所は、地球上の未発見資源の22%の石油と天然ガスが北極に眠るとの調査報告を2008年にまとめている。
中国は1990年代以降に北極での科学的調査を本格化させ、2004年には北極研究所をノルウェーのスバールバル諸島に設置した。2012年に中国は北極評議会の常任オブザーバー資格を取得し、同年には中国の砕氷調査船が北極海航路を航行してアイスランドとの間を往復した。他方、中東からの原油輸入を含む貿易面で、中国にとって南回り航路が最も重要であることに変わりはない。資源開発に関しても、中国海洋石油総公司が2013年にアイスランドの企業と石油・天然ガス開発の共同企業体を設立したが、開発の成否は不透明である。
日本(日米)が講じるべき備えとは
今回の中国艦隊の行動に込められた意図の特定は困難であるが、日本(日米)は今後想定される様々な可能性に対処できるよう備えておく必要があろう。まず、中国の意図が米国への対抗意識の表明である場合には、米国自身が引き続き地域の平和と安定に関与する意志と能力を強調することが重要であり、日本としては米国を強力に支える姿勢を示すべきだ。この点で、日本が安全保障分野で米国とより密接に協力する根拠となる平和安全法制が成立した意義は大きい。
一方、中国の意図が北極海への軍事的関与の序曲である場合、日本(日米)の備えはより具体的なものとなる。もちろん、中国の軍事的関与が北極海の安全保障に資するものであれば歓迎できる。しかし、東シナ海や南シナ海での高圧的で一方的な中国の海洋活動を見れば、その北極海での軍事的関与を楽観視はできない。
では、日本(日米)の北極海の安全保障に関する方針を確認してみよう。米国は「包括的な北極政策」(2009年)、「北極圏での作戦と北西航路に関する報告書」(2011年)、「北極圏国家戦略」(2013年)などの文書で北極圏の安全保障への関与を明示し、軍や沿岸警備隊が警戒・監視等を実施している。
日本では「国家安全保障戦略」が北極海について「航路の開通、資源開発等の様々な可能性の広がりが予測されている(中略)同時に、このことが国家間の新たな摩擦の原因となるおそれもある」との認識を示しているものの、具体的な取り組みへの言及は無い。また「平成26年度以降に係る防衛大綱」の中には「北極海」の文言も見当たらない。これらが示すように日本は北極海での安全保障に関して方針も具体的な備えも欠いている。
中国軍の北極海への軍事的関与を見据えた場合、日本としても自衛隊に何らかの備えをさせる必要性が浮上する。まず北極海とその周辺に係る情報収集・分析能力の向上が課題となる。この分野では米国との協力が鍵だ。
また、自衛隊がこの地域でプレゼンスを示し、作戦能力を高めることも重要となる。航空自衛隊はアラスカで毎年実施される米軍主催のレッドフラッグ演習に継続的に参加しており、2015年8月の同演習では航空自衛隊に加えて陸上自衛隊(第1空挺団)も初めて参加した。海上自衛隊にも当該海域で米軍との共同訓練等を行うことを期待したい。なお、北極海航路のチョークポイントであるベーリング海峡は機雷等で封鎖された場合の影響が甚大であることから、同海峡の安全確保について米国、ロシア等の関係国と協議し、訓練を行うことも検討に値する。
他方、中国本土と北極海を結ぶシーレーンは、バシー海峡を通航する場合を除き日本周辺の海峡(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡、大隅海峡、宮古海峡など)を経由することとなる。特に、宗谷海峡と津軽海峡は中国本土と北極海を短時間で結ぶ重要な海峡である。日本がこの地政学的アドバンテージを生かすためには常続的に警戒・監視を行い、敵対的な通航を拒否できる態勢が不可欠だ。
近年、自衛隊の体制は南西諸島方面へのシフトが顕著であるが、中国軍が「北の海」にも目を向けるのであれば、宗谷・津軽両海峡の防衛を含む「北の備え」は今後重要になる。加えて、日本周辺海域から北極海に至る経路のオホーツク海と北太平洋において海空自衛隊が米軍とともに警戒・監視等を行える体制を構築することも必要となる。
こうした「北の海」を睨んだ体制は自衛隊に更なる活動範囲の拡大と新たな能力の保有を求めることとなる。日本政府はまず、米国等と協調しつつ北極海の安全保障に関する方針を確立し、それに基づいて自衛隊への資源配分を適切に行う必要がある。同時に、自衛隊にも統合の進展および陸海空各自衛隊の合理化・効率化を推進し、資源を捻出する努力が求められる。
中国が東シナ海や南シナ海で高圧的で一方的な海洋活動を行っている現実を踏まえれば、日本としては北極海での中国の活動に警戒感を持たざるをえない。他方、中国の平和的な海洋活動については大いに歓迎し、これと協力する姿勢も重要である。同時に、航行の自由を確保するための国際的な取り組みに中国を巻き込み、国際協調へと誘う努力も忘れてはならない。グローバルな海洋国家である日本は、こうした硬軟取り混ぜたアプローチによって相応の役割を果たすべきだ。
このように、北極海での中国の経済権益は今のところ限定的であり中長期的にも不透明だ。しかし、米国やロシアなどの大国が北極海に目を向ける中、大国を自認する中国が北極海への関与を大国の証と考えても不思議ではない。したがって、中国艦隊が北極海につながるベーリング海に入った意味は、中国が軍事的に北極海に関与する序曲との見方もできる。
【「沖ノ鳥島」を持ち出す中国の暴論】
南シナ海での横暴は棚上げ~権益奪い取ろう
と虎視眈々~
2015.10.1 11:00更新 http://www.sankei.com/west/news/151001/wst1510010001-n1.html
2014年6月に土台の設置が確認された海洋プラットフォーム(第6基)
(防衛省提供)
南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で人工島を造成し、国際的な批判を受けている中国が、日本の沖ノ鳥島を持ち出して反論している。自らの行いを正当化するために、「沖ノ鳥島を『人工島』にしようとしている日本には、われわれ中国を批判する資格はない」といっていることになる。だが、その中国は早くから沖ノ鳥島の戦略的重要性に気がつき、虎視眈々とその権益を奪い取ろうとしているという。
中国が注目する島
「日本はコンクリートで沖ノ鳥島を人工島に仕立て上げ、それを根拠に排他的経済水域を主張している。他国を批評する以前に自分の行いを見つめるべきだ」
今年8月にマレーシアのクアラルンプールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、中国の王毅外相が南シナ海における人工島埋め立てに懸念を表明した日本をこう牽制(けんせい)した。
国連海洋法条約では、島の場合は領海、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を設定できるが、岩の場合は領海は設定できるものの、EEZと大陸棚は設定できない。沖ノ鳥島に関しては、日本が島だとしているのに対し、岩だと反論してきた中国はここにきて、人工島だと言い始めたことになりかねない。
ちなみに人工島の場合は領海は設定できない。王毅外相の発言は、これまでの岩だとする主張を転換し、中国政府が「沖ノ鳥島は人工島だ」との見解に変更する意図があるかは今のところ不明だ。
だが、その中国は沖ノ鳥島の戦略的重要性に誰よりも着目している。沖ノ鳥島は東京から約1700キロ、小笠原諸島の父島から約900キロ離れたわが国最南端の島で、東西約4・5キロ、南北約1・7キロ、周囲約11キロのサンゴ礁だ。
日本政府は沖ノ鳥島の周囲に海洋資源を独占できるEEZを設定しており、その面積は国土面積(約38万平方キロメートル)を上回る約40万平方キロメートルにもなる。漁業資源ばかりでなく、レアメタル(希少金属)などの存在が期待されている。
沖縄本島から1100キロ 軍事的戦略的な価値
ただ、中国が沖ノ鳥島を評価しているのは海洋資源の存在だけでない。むしろ、その軍事戦略的な価値に注目しているといっていい。中国は沖ノ鳥島周辺のEEZで海洋調査活動を続け、2010年4月には計10隻の中国海軍艦艇が沖ノ鳥島西方海域で軍事訓練を実施した。
また、福島の原発事故による放射性物質の影響を調査するということを名目に2011年6月に海洋調査船を沖ノ鳥島周辺に派遣した。この同時期に中国海軍艦艇計11隻が沖ノ鳥島南西海域で射撃や洋上給油などの訓練を行った。
中国は空母機動部隊などを擁する米軍の接近を阻止する「Anti-Access(接近阻止)/Area-Denial(領域拒否):A2AD」という戦略をとっている。
日本列島から台湾、フィリピン、インドネシアなどを結ぶ第1列島線、さらに伊豆・小笠原諸島からグアムを含むマリアナ諸島などを結ぶ第2列島線を設定し、軍事防衛上のラインとしている。
沖ノ鳥島はその第1列島線と第2列島線の間にあり、沖縄本島から約1100キロ、米領グアムから約1200キロとほぼ中間に位置している。沖縄本島と宮古島の間の海峡を通過した中国海軍艦艇がそのまま進むと沖ノ鳥島周辺海域に出ることになる。2004年11月に中国の漢級原潜がグアムへの偵察行動を展開した際には、原潜が沖ノ鳥島近海を通過していることが確認された。
海洋調査→資源採掘→海軍艦艇の派遣という海洋進出パターン
中国の海洋調査は資源探査だけでなく潜水艦の航行に必要な海底の地形、潮流、水温などに関するデータの収集を目的としているという。
中国は2000年代に入って西太平洋で海洋調査を実施しており、すでに十分なデータを収集しているとみられる。
沿岸諸国の非難を無視しての海洋調査、そして資源採掘の強行、さらには資源採掘保護を名目にした海軍艦艇の派遣というのが中国の海洋進出のパターンだ。沖ノ鳥島がその標的にならないという保証はない。