2020年12月23日水曜日

日本外交官の情報戦 ~冷戦末期のソビエト連邦分析~

  令和二年(2020年)1月に外務省は、前年末に在ソ連日本大使館の外交官が書いた冷戦末期のソ連に関する分析報告書を公開した。執筆者の一人で大使館でソ連政治の情報収集を担う政務班長だった角崎利夫さん(71)と当時大使館員だった作家の佐藤優さん(59)に現地での情報収集活動について聞いた。

元大使館政務班長 角崎利夫さん編

 活動の内容は、ソ連人の研究者やジャーナリスト、他国の駐ソ外交官らと週に数日会いました。レストランなどでは、隣の客や店員が会話を聞いていたら当局に情報が抜けるかもしれない。「例の件で」とか「Aさんが」「Bさんが」と言っていました。

 もっと大事な話をするときは、必ず歩きながら「箱」と呼んでいた日本大使館内にある特別な盗聴防止設備が施された部屋の中で話すこともありました。

 常に盗聴や監視の危険がつきまとう。

 ある西側陣営の国の在ソ連大使館で職員の手が壁に当たった時、音の響きが違うので壁をはがしてみると、中から盗聴器が出てきた。館員が電話していると、音声に聞きなれない言葉が混じることもありました。盗聴側の声が誤って混じったとうわさされていました。

 ある日本大使館員は、ウクライナのホテルでのレセプションで女性から社交ダンスに誘われた。続いて日本語を話す男が、「彼女とこれから別荘にいこう。別の女友達もくる。」と声をかけてきました。断って帰った部屋にも何度も男から電話がきたそうです。ハニートラップの一種でしょう。

 1987年の帰国後に「ソ連在勤を終えて」と題した報告書でゴルバチョフ書記長が進めたペレストロイカが「空回りしている」と記しましたね。

 インテリ層に見られたペレストロイカへのやる気が、一般市民になかった。ゴルバチョフ氏が進めた節酒政策への反感が強かったと思います。

 当時のソ連人からはこんなジョークを聞きました。酒を買う行列に並んでいた男が「もう我慢できないゴルバチョフを殺してやる」とクレムリンに出かけていく。ところがすぐに戻ってきて男は「だめだ、あっちも行列だった。」

元大使館員・作家 佐藤優さん

 1988年~1995年にモスクワの日本大使館に勤め、1989年ごろから政務班員としてソ連高官の家を夜に訪ねる「夜回り」でソ連政治の情報収集をしていた。

 新聞記者から教わって始めた方法です。-20℃にもなる厳寒の中、高官宅前で帰りをじっと待つ。帰宅した高官が「寒いのによく待っていたな」と家に入れてくれ、一緒にお酒を飲みながら「ここだけの話だぞ。」と教えてくれるんです。

 経済危機が続き、物不足だったので、ペットの餌が買えず困っている高官が多かった。ストックホルムからペットフードを大量に買い、プレゼントしていました。栄養ドリンクも喜ばれました。ソ連の官僚も夜遅くまで仕事をしているのですが、コーヒーや紅茶以外にカフェインをとれるものがなかった。日本から大量に取り寄せ、情報交換をするときに手渡していました。

 あとはカップ麺。シーフード味が非常に受けましたね。向こうは代わりにキャビアをくれました。エビでタイを釣るような感じでしたね。私の家はいつもキャビアがあふれていました。

 高官たちが話してくれたこと。

 北方領土は戦争でソ連がとったもので日本に返してもいいが、返し方が問題だと話していました。領土問題で日本にいったん譲ってしまうと、他の国との領土問題が再燃しかねない危険があると言っていました。

(令和二年1月9日付朝日新聞より)

関連動画

「戦争は情報戦からはじまる」確かにそうですね。至言でしょう。特に各国の経済での相互依存関係がズブズブになっている現代ではなおさらでしょう。
確かに「国際情報」「国際軍事・安全保障」という専攻学科があってもいいですよね。

※外交官のみなさんは国益のために日夜技を磨いてがんばっておられることがよくわかります。「北方領土問題」は、ロシア側の事情も考慮しながら案を提示しなければ解決するものではないでしょう。外交は「win-win」が原則とすれば、ロシア側のメンツがたつように解決しなければなりません。安倍前首相の「新しいアプローチ」である北方領土での共同経済活動は、粛々と確実に進めていくべきでしょう。

2020年12月11日金曜日

「諜報の神様」と呼ばれた男。

 「諜報の神様」と呼ばれた男

ヤルタ密約をつかんだ日本の軍人がいた。

 

小野寺 信(おのでら まこと)明治30年(1897年)919日生 昭和63817日逝去)は、旧陸軍少将。翻訳家。

 明治30年(1897年)、岩手県胆沢郡前沢町(現在の奥州市)出身。町役場助役小野寺熊彦の長男として生まれる。12歳の時に熊彦が病死し、本家筋の農家・小野寺三治の養子となる。遠野中学校、仙台地方陸軍幼年学校、陸軍中央幼年学校を経て、大正8年(1919年)5月、陸軍士官学校(31期、歩兵)を卒業し見習士官(陸軍歩兵曹長)。同年12月、陸軍歩兵少尉に任官し、歩兵第29連隊附となる。翌大正11年(1920年)に発生した尼港事件を受けてニコラエフスクを保障占領し、大正10年(1921年)、第29連隊はアムール河口地帯守備のために尼港に派遣される。小野寺も最初で最後の戦場での勤務を行い、現地でロシア語を習得する。昭和3年(1928年)12月、陸軍大学校(40期)を卒業し歩兵第29連隊中隊長となり、会津若松へ赴任する。

 当初はドイツ駐在を希望して外国駐在試験を受けていたが、ロシア語の能力を見込まれて翌昭和5年(1930年)3月、陸軍歩兵学校教官として千葉に転任。上官の小畑敏四郎大佐に目をかけられ、赤軍研究を集中的に行い、ロシア専門家としての道を歩み始める。昭和7年(1932年)3月、小畑の人事異動に従って陸大教官に転身。ここでも本来の講義と別に個人で赤軍研究を継続する。研究を経て、ロシア革命後に機械化を進めた赤軍に対する脅威を主張するようになる。陸大在任半年で参謀本部第2部ロシア班に引き抜かれた。作戦課長として参謀本部に配属されていた小畑の手引きで、昭和8年(1933年))5月、ハルビンへ赴任。語学研修の傍らで国境視察なども行い、赤軍の作戦などについてレポートをまとめている。帰国後の昭和9年(1934年)8月、陸軍歩兵少佐に進級する。

 昭和10年(1935年)12月、ラトビア公使館附武官に発令され、翌昭和11年(1936年)1月、首都リガに着任。ラトビアを含むバルト三国は西欧の対ソ最前線であり、各国の諜報活動が盛んであった。小野寺が赴任した当時の日本公使館は補佐官もいない小所帯であったが、バルト三国の重要性を認識した小野寺は本国にかけ合い、隣国のエストニア・リトアニア公使館附武官を兼務するようになる。三国の参謀当局は地の利はあったが資金面から諜報範囲が限られていたため、日本側が必要な諜報活動費を援助した。また、当時ベルリンの駐独大使館には参謀本部直属の諜報工作組織(馬奈木敬信機関)があり、対ソ工作員を養成していた。工作員はエストニアからペイプシ湖を通してソ連に送り込んでいたため、エストニアにかけ合って送り込むための高速船の手配も行った。昭和12年(1937年)11月、陸軍歩兵中佐に昇進。

 昭和13年(1938年)6月、参謀本部ロシア課に復帰、直後に発生した張鼓峰事件の対処にあたったのち、同年10月、中支那派遣軍司令部附として上海に派遣される。当時中国大陸で進行中であった日華事変の収束策として、参謀本部の支那課は汪兆銘政権の樹立による和平交渉を検討していたが、ロシア課は対ソ防衛のためには事変を早期終結させるべきと考えており、小野寺は武漢に籠る蒋介石との直接の交渉を企図する。小野寺は市内のアスターハウスホテルに事務所を置き、自前の特務機関を構えた。メンバーには軍人は一人も含まれず、共産党転向者を中心に20人ほど採用した。1939年(昭和14年)5月、香港において板垣征四郎陸相と国民党の呉開先組織部副部長との直接会談を行う根回しを行うが、汪兆銘工作を進めていた影佐禎昭の巻き返しにあい、通らなかった。6月には本国へ戻された上で陸大教官に就任、事実上の左遷となった。同年8月、陸軍歩兵大佐に進級した。

 昭和15年(194011月、スウェーデン公使館附武官に発令され、翌411月、ストックホルムに着任、12月に太平洋戦争を迎えた。諜報活動の他に、クリプトテクニク社(現・クリプトA.G.)から最新の暗号機械を買いつけたり、ピアノd戦とボールベアリングを調達しドイツ経由で本国に送っている。昭和18年(1943年)8月、陸軍少将に進む。この頃からSD国外諜報局長であるヴォルター・シュレンベルグと共に和平工作に従事する。

 小野寺の送った機密情報は「ブ情報」と呼ばれ、海外からの貴重な情報源となった。「ブ情報」の「ブ」は、ミハウ・リビコフスキ(Michał Rybikowski)の上官ブジェスクフィンスキの頭文字である。大戦最末期にはヤルタ会談での密約につき、ドイツ降伏から約3ヶ月後にはソ連が日ソ中立条約を破棄、対日参戦するとの最高機密情報を日本に打電している。陸軍中枢はその情報を信じずアメリカとの和平の仲介をソ連に期待し続けた。

敗戦後の昭和21年(1946年)3月に日本に帰国復員したが、同年7月まで戦争犯罪人として巣鴨プリズンに拘留された。

 

戦後は妻百合子と共に、主にスウェーデン語の翻訳業に従事する傍ら、スウェーデンの文化普及活動に努めた。最晩年に『NHK特集 日米開戦不可ナリ 〜ストックホルム・小野寺大佐発至急電〜』で取材インタビューが行われ、昭和60年(1980年)12月に放映された。この番組は第12回放送文化基金賞を受賞し、小野寺の大戦中の活動に照明が当てられた。


エピソード


  • 陸軍士官学校では、同期の成績上位5名に軍刀が下賜されていた。小野寺は卒業試験はトップだったがその前の成績が10番以下であったのが響いて総合で6番となり、拝受を逃した。代わりに、旧主の南部利淳から刀を拝領しており、この軍刀は後にストックホルム引き揚げの際に政府に寄贈した。
  • 著述の才能に恵まれていて、対赤軍戦術をまとめた参考書は「赤本」と呼ばれていた。参謀本部ロシア班に配属後、ロシア班として中華民国や米国も含めた研究書『隣邦軍事研究』を偕行社から出版すると青年将校の間でベストセラーになる。収益でロシア班はタイピスト2人雇うことができたが、直属の上司(第二部長)であった永田鉄山大佐から「儲けすぎだ」と叱責を受けたという

動画
小野寺信氏とは?

 いわゆる「北方領土問題」は、確実なことは確かにあります。それは外務省の方針でいう「北方4島一括返還」をいえばいうほど、ロシアの態度は硬直化し、返還は絶望的になっていくということです。それともう一つ、「北方4島一括返還」をいうほど南樺太の不法占領は忘れられていくということです。
 大事なことは、二度とオホーツク海を血に染めないこと、ロシアと「平和友好条約」を締結し、経済パートナーとして、良好な隣国関係を構築すること、です。平和友好条約を締結した時に色丹島と歯舞群島の返還を実現するのです。そして経済投資を促進し、ロシアとwinwinの関係構築に努めることです。

2020年10月17日土曜日

南西諸島の防衛の実態。

 与那国島

陸上自衛隊 沿岸監視部隊約150名

石垣島

陸上自衛隊 警備・地対艦ミサイル部隊約500~600名

宮古島

陸上自衛隊 警備・地対艦ミサイル部隊約700~800名

沖縄本島

海上自衛隊 潜水艦増強 P-1哨戒機を配備

航空自衛隊 1個飛行隊 → 2個飛行隊へ増強

奄美大島

警備・地対艦ミサイル部隊約550名

 国防の南の最前線である与那国島に沿岸監視隊をおくことにより、侵略軍の動きを早期確認する狙いがあるのであろう。

 地対艦ミサイル部隊配備は、アメリカのグレートバリア戦略に沿った戦略配置であると考えられるが石垣、宮古、奄美と配備されたのなら、沖縄本島にもできれば奄美の半数は配備して地対艦ミサイルの切れ目をなくした方が、侵攻軍の航行をより阻害することになるのではないだろうか?

 南西諸島は広大なエリアに島嶼が切れ目なく配置しているのでこの広大なエリアを防衛するのは、艦艇だけでは足りない。地対艦誘導ミサイルと攻撃型潜水艦の運用が欠かせない。

 尖閣諸島は国有化されているが、これが逆に共産中国の地雷をふんだようである。彼らは漁船と漁業監視船として大船団を送り込んでくるおかげで、尖閣諸島周辺近海は「中国の海」状態で占拠されているようなものである。

 漁船員は元人民解放軍兵士なのだろうが、退役して民間人だとしたら、自衛隊は防衛出動ができない。漁業監視船も中国海警の船だとしたら、正規軍はでられない。この周辺海域は日中の海洋法規の戦いとなっている様相である。仮に自衛隊を出動させると向こうは人民解放軍の精鋭部隊である陸戦隊を送り込んでくる口実を与えてしまうから、軽挙妄動は慎まなければならない。

 南西諸島防衛は沖縄本島、石垣、宮古を中心に戦力をおいて、実動戦力として海上保安庁の巡視船による監視行動を強化するという「海上警察力」の戦いが主戦となっているように感じる。法律戦である。


南西諸島防衛の現状・動画でみる

指揮権と補給の問題




2020年10月12日月曜日

THE COCKPIT  ~第二次世界大戦の記憶~

 第二次世界大戦は人種偏見、大量殺戮、核兵器など人類にとって迷惑なだけの多くの負の遺産ばかり残してきました。

 戦後に旧植民地の多くが民族自決の精神に目覚めて、欧米の宗主国から独立を果たし、人種偏見が解決に向かい、戦略爆撃論に裏打ちされた大量殺戮はその意味付けを喪失し、象徴たる原子爆弾そのものの維持コストや高レベル放射性物質の被害への恐怖から、核兵器本来の使用が変質し、電磁パルス攻撃という新たな核兵器の運用により、大量殺戮ではない新たな兵器としての価値を見だしつつあります。

 時代は進化し、戦略は変化し、戦争の在り方も変化していきます。

いつまでも核兵器が地上の最恐兵器ではありません。現在世界の国々の首脳クラスで核兵器を積極的に国際紛争解決に使用しようという国はなく、核兵器は今後は電磁パルス兵器や宇宙開発への使用にシフトしていくのではないでしょうか?

 核兵器の持つ巨大かつ非人道的な破壊力は昭和20年の広島と長崎への原爆の投下により、悲しいくらい実証され、人類の大きなトラウマになったことも間違いないのではないでしょうか?

 政治的なイデオロギー、国家の利益抜きで我々は世界平和を語ることなどできません。なぜなら人類はそれぞれが固有の言語、文化を持つ民族に分かれ、国家という共同体にわかれて世界は成り立っているからです。そして国家こそが世界を構成する単位であるからであり、国家を運営するために政治があるからです。

松本零士氏(故人)の作品には独特の深みが感じられます。戦争に対しても単純に「反戦」ということではなく、肯定する中で理不尽さを認めていません。だからこそ視聴者の側で作品の意味付けを考えてしまうのでしょう。


動画

音速雷撃隊 

※つくづく思うのですが、当時にアクティブホーミングの空対空ミサイルが開発されていれば、人間が戦闘機を操縦して体当たり攻撃をしなくてもすんだのに。
 そう思ってもどうしようもないことですが、ただいえることは第二次大戦後に戦争の在り方も大きく変化しています。サイバー攻撃やプロパガンダによる情報戦、ハイブリッド戦争と人が直接死なない戦争は進化しました。今後ロボットが戦場に投入され、AIにより戦場で自律的に運用されるように進化していくのでしょう。
 その時に「特攻」による戦争の在り方はどうとらえられていくのでしょうね。
成層圏気流 
鉄の竜騎兵 


特攻とは関係ないように思えますが、当時の日本人の子供たちを守るために兵隊さんは戦地で戦ったわけです。その子供たちがアメリカの潜水艦の攻撃で大勢亡くなりました・・。戦争は子供でさえ容赦のないものだということを後世に伝えるべきです。

ミャンマーでもウクライナでも21世紀になってもまだ子供たちが亡くなる戦争の悲劇は止まっていません。人類はいつになったら次世代を担う子供たちが理不尽な目に合わないような世の中を実現できるんでしょうか?

【鎮魂、8月22日沈没】ドキュメンタリーアニメ『対馬丸ーさようなら沖縄ー』 (1982) 






 管理人は戦中は日本軍の本土防衛の最前線に立たされ、戦後は頼みもしないアメリカによる軍政統治を受け入れ、女性や子供への暴行という米兵の傍若無人さに耐えながら本土復帰をはたした沖縄の人たちに大きな敬意をもっています。

本来ならば「ノーベル平和賞」を沖縄県がいただいてもいいくらいであると思います。

現在は、共産中国の尖閣諸島への侵攻や政治的な不手際である沖縄米軍基地問題という課題を抱えて苦しんでいるようにもみえます。

対馬丸は児童疎開船として本土へ沖縄の子供たちを連れて航行する途中で、米海軍バイフィン号潜水艦の放った魚雷で子供たちもろとも海の底に消えました。戦争に名を借りた理不尽な虐殺の起こらない時代にしていくために、人類は今後たゆまぬ進化を続けることになるのでしょう。

ちなみに児童疎開船対馬丸を沈めてくれた潜水艦バウフィン号は現在、ハワイ・オアフ島のアリゾナメモリアル隣の記念館に展示されています。潜水艦内部と展示館を有料で見学できます。日本人にとっては複雑な心境の場所ですね。


2020年10月11日日曜日

呉鎮守府101特別陸戦隊 ~B29の出撃拠点マリアナ諸島を攻撃せよ!~

 大日本帝国を壊滅させた爆撃機

 1944年6月に日本の敗戦を決定づける爆撃機が本土上空に飛来する。「超空の要塞」の異名をとるアメリカ陸軍の新型爆撃機B29である。最大航続距離約9700km、最大約9tの爆弾搭載量を持ち、当時の迎撃戦闘機では迎撃困難な高度(10000m)を飛行可能な爆撃機である。

 B29の完成により、アメリカ軍は日本本土の直接攻撃が可能になったが、中国大陸からの基地から攻撃していた当初は、爆撃の被害は九州の一部に留まっていた。しかし1944年9月に占領が完了したマリアナ諸島へ爆撃部隊が展開すると、本土の主要都市のほぼ全てが爆撃の射程レンジ内に収まることになった。

 日本軍も新型の防空を目的とした局地戦闘機や高射砲での迎撃を行うが、高高度から無限に出現するB29爆撃隊に対しては効果は薄かった。その結果、国民の生命・財産は奪われインフラ施設は焼失し、我が国の生産力は着実に喪失していった。

 そうした状況の中でB29爆撃機を打撃する秘密作戦が実行されつつあった事実はあまり知られてはいない。作戦目標は、爆撃隊ではなく、爆撃機の出撃基地であるマリアナ諸島そのものである。そして作戦の主力とされていたのが、海軍特殊工作部隊「呉鎮守府第101特別陸戦隊」であった。

海軍の陸上用部隊

 陸戦隊とは、海軍内に設けられた陸上での戦闘を想定した歩兵部隊である。創始は明治の海軍創設時まで遡る。既に陸戦部隊は創設されていたのだが、陸軍の規模の拡大に伴い、1876年に一旦廃止されていた。しかし上陸戦や海岸沿いの地域などで陸上兵力が必要となるたびに随時編成されていた。日中戦争当時は「上海海軍特別陸戦隊」が組織され、中国大陸沿岸部や海南島で戦った。

 海軍陸戦隊は、状況に応じて艦船乗員や非番の兵員を招集して編成される臨時部隊でしかなく、アメリカ海兵隊のような常備兵力ではない。日米開戦前年に上陸戦用の常備戦力整備を求める意見が出されたといわれるが、結論的には、艦隊決戦用の艦船拡充が優先されたといわれている。

 呉鎮守府第101陸戦隊は、こうした中でも異様な部隊であり、体格のいい海兵が集められ、隊員の外見や訓練内容がアメリカナイズされていたのである。

 隊員は必ず英語や英会話の授業を受講しなければならず、服装も米軍の軍服に酷似していた。頭髪も当時禁止されていた長髪も許可されていた。この規格外の意味は、隊員が米軍陣地での活動を目的としていたことによる。

 隊長の山田大二少佐の名前から「山岡部隊」とも呼ばれたこの部隊は、潜水艦などで敵地へ進入し、日系人に偽装して各地へ潜伏し、遊撃戦(ゲリラ戦)によって米軍を疲弊させることになっていた。遊撃戦術を身に着けるために、戦闘訓練は夜間の山岳地帯で実施されたといわれる。しかし既に戦局は劣勢となり、進入作戦に使用できる潜水艦はほとんどなく、制海権も米軍にとられていた。米本土への進入も計画されたといわれるが、結局実行されることはなかった。そうした折に101陸戦隊にB29の壊滅を目指す機密作戦への参加が命じられることになる。

マリアナ諸島への特攻作戦

 半年以上の本土防空戦によって軍部は防空戦でのB29の撃退は不可能であると判断する。そして決死の反撃作戦を1945年春に承認する。それはB29の出撃基地であるマリアナ諸島を攻撃して、B29の出撃を阻止しようという作戦であった。

 ところが当時の日本軍には、日本本土とマリアナ諸島の間を往復できる航空機はなかった。往復できたとしても護衛機をつけられないので爆撃による基地の無力化は不可能とされていた。そこで作戦ソリューションとしての案が、航空機で夜間にマリアナ諸島へ強行着陸を行い、工作部隊の破壊活動にて基地能力を無力化する、という作戦だった。

 この作戦は「剣作戦」と名付けられた。工作部隊は101陸戦隊が選ばれた。しかしいかに夜間とはいえ、かなりの迎撃が予想される作戦である。仮に工作部隊を送り込めたとしても回収できる可能性は極めて低い。作戦終了後は玉砕するしかないだろう。

 一応は通常作戦となっていたが、「剣作戦」の実態は特攻作戦であった。

未遂に終わったマリアナ諸島攻撃

 「剣作戦」の実行は1945年7月末を予定されていた。101陸戦隊は、青森県三沢基地への移動を命じれらた。作戦決行日には30機の一式陸上攻撃機に分乗して出撃することになっていた。ところが7月14日に三沢基地が米機動部隊の空襲をうけてしまい、作戦用の機体を多数破壊されてしまった。そのため機体の不足で作戦は延期を余儀なくされ、決行日は8月20日前後とされた。

 作戦延期に伴い、海軍は機体をかき集めると同時に投射兵力を拡充する。陸軍の空挺部隊約300名、「銀河」爆撃機約70機で編成された。支援用爆撃隊の参加も決定した。

 さらに1945年8月6日9日の原子爆弾投下を考慮して、米軍の核貯蔵施設の捜索と破壊も任務に加えられた。既にマリアナ諸島周辺の状況は捕虜からのヒアリング調査により把握されていた。懸念された基地への再空襲もなく、後は作戦決行を待つだけであった。

 1945年8月15日に日本政府がポツダム宣言を受諾し、終戦の大詔が下った。これにより101陸戦隊がマリアナ諸島で実戦を戦うことはなくなった。その後部隊は解散となったわけである。

一式陸上攻撃機

銀河爆撃機

上海海軍特別陸戦隊の戦闘記録


一式陸上攻撃機のある風景 / Scenery with G4M「Betty」 https://www.youtube.com/watch?v=1peV2Yqazrg

2020年10月8日木曜日

モサド ~世界最強といわれる諜報機関~

 イスラエル総理府諜報特務局(通称モサド)

「モサドこそが最強の諜報機関だ。」

「モサドほど極悪非道な工作を仕掛ける組織はない。」

 世間の評価は辛辣、正直ともいえる。

最強諜報機関モサドの成立

  個々の諜報部員の工作スキルにおいて秀でた存在である。モサドの諜報員たちは、他国の諜報部員を凌ぐ「鉄の意思」と「国家への無条件の忠誠」を持ち合わせているからである。

  1917年にイギリス政府がパレスチナでのユダヤ人国家建設に賛成を示した意見書である「バルフォア宣言」を受けて、ユダヤ人たちはパレスチナの地に集まり、定住を始めた。

 しかしイギリス政府は一方で、オスマントルコの支配下にあったアラブ人の独立を支援する約束を結んでいた。

 このイギリスのダブルスタンダードが、現在のパレスチナ問題の一因であるのだが、このようにしてユダヤ人とアラブ人の長期にわたる対立が始まることとなった。

 ユダヤ人たちは、事あるごとにアラブ人やパレスチナ人から襲撃をうけた。そこでユダヤ人共同体である「イシュヴ」のリーダーたちは、秘密組織を結成し、自衛のための手段とすることを決定した。秘密組織のメンバーたちは、アラブ人、パレスチナ人の穏健派を探し出し、金を渡して襲撃の予定をはじめとする様々な情報を聞き出すことに成功した。

 さらにユダヤ人たちは「ハガナ」という義勇軍を結成し、武力による自衛も開始する。秘密組織イシュヴと義勇軍ハガナこそが、後世に最強と恐れられた「モサド」の原型である。

 やがて義勇軍ハガナ内部に「情報部」が誕生する。イシュヴとハガナは凄まじい諜報戦に暗躍したが、そのターゲットには、アラブやパレスチナだけではなく、イギリスも含まれていた。


最強諜報機関モサドの発展期

 1948514日にイギリスのパレスチナ委任統治が終了する。ユダヤ人たちは、「パレスチナ分割決議」(パレスチナをおよそ半分に分割し、半分をユダヤ人が、あとの半分をアラブ人が統治し、両者にとって聖地であるエルサレムは国際管理とする)を根拠にしてユダヤ人の国家であるイスラエルを建国した。

 義勇軍ハガナは、イスラエル国防軍となり、アマン(国防軍作戦部情報課)、シンベット(国防省保安局)、外務省政治局という3つの情報機関が創設された。

 このうち外務省政治局の諜報活動の評判は芳しくなく、強固な中央集権的諜報機関の創設が叫ばれるようになり、1949年にモサドがこれに代わる形で発足した。

 やがてモサドはイスラエルを代表する諜報機関に成長する。現在のイスラエルには複数の諜報機関が存在しており、各機関はインテリジェンスコミュニティーと呼ばれる定例会議で交流を図っており、議長はモサド長官が務める。

  モサドを世界に冠たる諜報集団へと整備したのが、「伝説のスパイマスター」と呼ばれたイッサー・ハレル氏だった。1953年に2代目モサド長官に就任したハレル氏は、身長150㎝足らず、何も聞き逃さない大きな耳が特徴であり、長官就任の最初の挨拶は「仲間以外と口を聞くな!」だった。ハレル氏は短気な反面、部下思いであり、アラブ諸国での工作活動に対しても自ら最前線に赴くことを好んだといわれる。ハレル氏は、モサドの協力者に仕立てる者を一人一人面接し、アラブ諸国、欧州、アフリカに巨大なモサドネットワークを築いた。

 ハレル氏の功績において無視できないことは、CIAとの連携に成功したことである。ハレル氏は1954年に渡米し、「CIA中興の祖」とされるアレン・ダラス氏と密談する。

 「CIA・モサド」のホットラインを作ることに成功した。モサドはこの連携によって、最新の盗聴部、探知機、カメラを入手した。


モサド関連動画


北芝健氏「モサド」
池上彰「モサド」

モサドの組織構成

  イスラエルは、周囲を敵に囲まれている。そのためモサドの諜報活動の成否は国家の存亡に直結する死活的な問題であった。その活動は主にアラブ諸国の監視、反イスラエルを標榜するテロ組織の監視及び主要メンバーの暗殺、国外に居住するユダヤ人を秘密裏にイスラエルに帰国させることであった。

 モサドが抱える諜報員の数は2000人程度(2008年当時)と推定されているが、黎明期のモサドは、人員、資金、装備には恵まれてはいなかった。そのため「少数精鋭のモットー」が導き出されたのである。ただモサドには大きな強みがあった。それは海外に居住するユダヤ人協力者たちの存在であった。彼らは「サヤン」と呼ばれ、モサドが世界中の国々で秘密工作を行う時の大きな助けとなった。

 モサドでは工作員を「カッツァ」と呼ぶ。これはCIAにおける「ケースオフィサー」と考えていいだろう。暗殺を専門とする工作員は、「キドン」と呼ばれ、あらゆる暗殺術をマスターしている。作戦が決行される時は、対象国のイスラエル大使館に駐在するモサドの指揮官の下、現地のカッツァ、場合によってはキドンのチームが召集される。

 モサドは、好戦性の高い組織である。敵対者には容赦なく死を与え、時にはMI6CIAKGBといった大国の諜報機関をも相手に回し、出し抜いてきた。

 モサドの世界に知らしめることになった事件としては、「ミグ21奪取作戦」「A・アイヒマン誘拐作戦」「ミュンヘンオリンピック事件への報復作戦」など数知れない。


モサドを支える秘密チーム

 サヤン・・・海外に暮らすユダヤ人のモサド協力者。中国共産党に協力している華僑に似ている。

カッツァ・・・モサドの工作員。様々な秘密活動を実行する現場のスパイ。

キドン・・・モサドが秘匿する暗殺チーム。殺人のパターンは様々で各国の諜報機関に恐れられている。

 

モサドのリクルート活動

  モサドは「一本釣り」によるスパイ獲得を行っている。リクルーターと呼ばれる採用担当者は、採用候補者をみつけたら、数年かけて対象の身辺調査を行うのである。

 社交性、思想、マナーに加え、友人の評価、運動神経、性癖なども徹底的に調査される。これらの調査をクリアすると正式に勧誘し、仲間として迎えられるといわれる。


『アイヒマンを追え!ナチスが最も恐れた男』映画予告編 





2020年10月4日日曜日

サイバー戦争を想起させる映画。

 1981年に公開された映画で、『ウォーゲーム』という作品です。

 米ソ核戦争ゲームを子供同士で遊ぶという内容ですが、それだけならわざわざ映画化されることはないでしょう。子供たちのゲームがアメリカ国防総省?のシステムとリンクしてしまい、子供たちの核シュミレーションゲームの画面が実際のシステム画面として国防総省に映し出されてしまいました。

 およそありえない内容ですが、だからこそおもしろい。

 まだまだハッキングが一般的に知られていない時代ですが、サイバー攻撃を予知するような作品だったかな?とは思えます。

 子供のテレビゲームだとあなどるなかれ。今や格闘技やサッカーのゲームは「eスポーツ」という反応速度を競うスポーツになり、スポンサーがついて賞金をかけて争うような時代になっています。

 ストリートファイターというゲームセンターのゲームが世界大会で競われるようになるなんて、1980年代には予想だにできないことでしょう。

 時代の価値観、思想は変化します。仕事も時代によって変わります。鎌倉時代の白拍子が今やアイドルとして地位が確立しています。1960年代のエレベーターボーイという職業は今や完全に過去の遺産。

 核戦争のゲームも過去の戦争のゲームとしてリアルに進化するかもしれません。

では、戦争シュミレーション映画の草分けともなる映画をみてみましょう。

ウォーゲーム WarGames 1983 

https://www.youtube.com/watch?v=yhrz2BGy77M&t=39s  
WarGames (1/11) Movie CLIP - Asexual Reproduction (1983) HD https://www.youtube.com/watch?v=LwDbgE54QYE&list=PLZbXA4lyCtqpGOS2KC1mAAKaGwbup-DQt

使われているPCの機種も明らかに時代を感じさせるのに十分なものですが、しかし当初はハッキングという行為は、この映画にみられるように「遊び」の延長から始まったように思います。

意図的に国防総省のコンピューターに侵入して、核ミサイルをシュミレーションとはいえ、操作しているわけですから、制御コンピューターをハッキングすることにより、核兵器さえも意のままにできるのかもしれません。

このような事態が進展してくると、核保有国にとって自国の核兵器が「脅威」となる時代が到来するのかもしれませんね。核保有が国家のクライシスとなる時代、どうなんでしょうね?

WAR GAMES オープニング 
https://www.youtube.com/watch?v=WuipiBKRl04

SNS上でのいさかい、喧嘩が凶悪な殺人事件に発展したというケースがあります。現代における「虐殺」ですが、個人がSNSで友人や身内に攻撃的な言動を繰り返すことも「サイバー攻撃」としていいのではないでしょうか?

SNSが発端となり発生した怖い話(LINE事件) 
https://www.youtube.com/watch?v=cHm7xuUWLmE

ささいなことから人間仲良くなったり、ののしりあったりするのは常のことでしょうが、これを顔がみえないSNS上でやられると、どういう感情になるのでしょう。疑心暗鬼の相乗効果になるのではないでしょうか?

21世紀の侵略戦争の一例 ~「ハイブリッド戦争」の実態~

  2016年のアメリカ議会で明らかになったことであるが、2014年にウラジミール・プーチン大統領率いるロシア連邦が、黒海北部に突き出したウクライナ領であるクリミア自治共和国に侵攻しました。

 マレーシア航空の旅客機がウクライナ上空でロシア軍の地対空ミサイルブークに撃墜され、多くの乗客がなくなり、その犠牲者の中には幼い子供たちが多くいたことから、未だ記憶に新しい事件であろうと思います。このマレーシア航空機の撃墜事件もウクライナという国の政治的信用を貶めるためのロシア側の自作自演といえるでしょうが、ロシアの論理からすれば、みえすいた戦略を使ってまでほしいエリアがクリミア自治共和国であったということでしょう。

 このロシア連邦が隣国ウクライナに対してしかけて領土の一部をかすめとった侵略戦の顛末をみながら、核兵器が兵器として使えない時代の対外戦の在り方、現代における侵略戦争がどういう形であるのか、について考えていければ幸いと考えております。

① ロシア軍が「電子戦」において、ウクライナ軍のレーダーを使用不能にする。

② ハッキングで発電所、メディアの機器、を乗っ取る。

GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自分の位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状態にされてしまった。

③ ロシア軍がウクライナ軍の砲弾の電子信管を作動できなくする。また携帯電話を一時的に使用不能にして、機能が回復した時には、数多くのフェイクニュースをメールなどで大量に配信する。 ~これによりウクライナの住民は混乱へ陥ることになった。

④ 錯綜した情報を与えられた市民によるデモ隊がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源が落ちてしまう事態も発生する。停電状態の中で、ラジオ局もデモ隊に占拠された状態となり、ラジオからはフェイクニュースが流し続けられました。

 後にラジオ局などインフラ設備を占拠したデモ隊は、実はロシア軍であることが判明している。かくしてロシア軍はウクライナから「クリミア自治共和国」の主権を奪うという戦争目的を達成したのである。

ハイブリッド戦争の本質

 「ハイブリッド戦争」を簡潔に表現すれば、サイバー攻撃により国家機能を麻痺させ、その間に特殊部隊などによって、政治経済の中枢部、都市部でのインフラ設備などの重要施設を迅速に占領してしまう戦争形態であるといえる。

 従来的な情報と火力の優越によって敵を撃破する、という段階から発展し、敵の情報と火力を機能させず、相手国民を混乱させ、正常な判断ができない状態にして戦争目的をはたす新たな戦争形態が出現したのである。

 この「ハイブリッド戦争」という戦争形態は、大量の人的犠牲を伴うことはありません。例えば、化学兵器工場の破壊、テロ組織主要幹部の殺害、一部の地域のみを占領するといった限定的な戦争目的ならば多くの損害を出さずとも迅速に達成できるはずです。

 そのため今までよりも戦争をおこすハードルが低くなる可能性がある。「ハイブリッド戦争」に対応するためには、宇宙からの攻撃やサイバー攻撃への対応機能を整備するとともに、相手国に狙われやすいインフラ設備などの重要施設を防護することもこれまで以上に重要になってきています。


ウクライナ危機で凄惨を極めた戦場の真実/映画『ウクライナ・クライシス』予告編 https://www.youtube.com/watch?v=wKjLg92h7Yo

ついにロシアのウクライナ侵攻が映画化されました。新しい戦争の形がどういうものなのか、自衛隊の装備を最新にしておけばよし、と考えている方は認識を改めるべきでしょうな。

他動画編

ロシアのクリミア併合から3年。


マレーシア航空機撃墜事件 ~オランダ安全委員会調査~

ウクライナ出身でロシアの侵攻を体験した方の講演

















2020年9月24日木曜日

日本が「ファイブアイズ」に加盟する日。 米英諜報ネットワークの一端を担える存在足り得るか?

 【スパイ天国】日本は「ファイブ・アイズ」に入れるか【WiLL増刊号#281

https://www.youtube.com/watch?v=iQ_V5t1vJuE


 イギリスのジョンソン首相が先ごろ我が国に重要なご提案をされたこと。米国&英国連邦で構成される「ファイブアイズ」諜報ネットワークに日本も加盟してはどうか?

 巷でもさまざまな論議が沸騰してきています。かつては北朝鮮による日本人拉致、朝鮮総連のような組織による拉致支援を許してしまった悔やみきれない経験、昨今では世界中からのサイバー攻撃による国内インテリジェンスの窃取ですね。ビッグデータが原油と同じくらいの価値を持つことになった時代背景の中、世界レベルとなった諜報戦への戦争に対処して、私たちはこのイギリスからの提案をどう受け止め、考えて新たな方向付けを目指していくべきなのか?

日本のファイブアイズ加入に対して懸念する深田萌絵氏の主張はこちらです。深田氏は慎重ですね。

日本のファイブ・アイズ加盟が危険な理由

https://www.youtube.com/watch?v=lGFsvaiBg94

上念司氏のファイブアイズ加入についての思想。国内法規など整備されることをあげ肯定的な考え。スパイ防止法の制定がしやすくなるのではないか。防諜後進国の脱却をはかる打開策。なるほど確かに国内に潜伏する諜報工作員をあぶりだすきっかけにはなるかもな。

国内のスパイが丸裸?日本のファイブアイズ加入でアジア情勢に大激震 超速!上念司チャンネル ニュースの裏虎

https://www.youtube.com/watch?v=8wTCf6T77wM


政府の見解はわかりませんが、与党政治家の一部は前向きな発言がみられます。

そもそも「ファイブアイズ」とはどういうものなのでしょうか?

河野太郎氏が防衛大臣のころに示した「日本が世界の諜報戦国家として脱皮する」ための思想。

日本もスパイ協定に?河野防衛相が接近するファイブ・アイズとは

8/21() 9:32配信https://news.yahoo.co.jp/articles/bc558299540a501e30ab4a49cd43b0a183536c79

黒井文太郎1963年、福島県いわき市生まれ。週刊誌編集者、月刊「軍事研究」特約記者、「ワールド・インテリジェンス」編集長などを経て軍事ジャーナリスト。ニューヨーク、モスクワ、カイロを拠点に紛争地を取材多数、雑誌、テレビなど各メディアで活躍中。著書・編著に「北朝鮮に備える軍事学」「日本の情報機関」「イスラムのテロリスト」(以上、講談社)「紛争勃発」「日本の防衛7つの論点」「自衛隊戦略白書」(以上、宝島社)、漫画原作に「満洲特務機関」「陸軍中野学校」(以上、扶桑社)など

 日本は、主要国ではおそらく突出してインテリジェンス(情報収集・分析)能力が弱い。なにせ専門の「対外情報機関」もない。そんな日本が中国や北朝鮮の脅威に備えなければならない厳しい状況のなか、814日付「日本経済新聞」電子版が、河野太郎・防衛相の興味深いインタビュー記事を掲載した。 河野防衛相は、米英が主導する機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」との連携に意欲を示し、「日本も近づいて『シックス・アイズ』と言われるようになってもいい」と語ったのである。

 ◆ファイブ・アイズとは何か?

米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5か国が共同で、安全保障にかかわる情報を共同で収集しようという協定がある。UKUSA協定という。 このUKUSA協定加盟5か国は、日本や他のNATO加盟国などとは一線を引いた深い情報共有を行っている。なにせ米英主体だから、その情報力は圧倒的だ。その5か国の情報共有の連携ぶりが、各国当局内やメディアなどでは通称で「ファイブ・アイズ」と呼ばれているのだ。 しかし、ファイブ・アイズという名称の協定はない。正式にはUKUSA協定だが、UKUSAよりはファイブ・アイズのほうが通りがいい。ちなみにこのファイブ・アイズは「5つの目で監視する」という意味ではなく、彼らがやり取りする機密情報が「5か国でのみ閲覧可」つまり5つの目にしか見せない「5アイズ・オンリー」だったことから来ているという。

◆5か国の意味するもの では、なぜこの5か国なのか。

これらの国々は、国際政治のなかできわめて強固な同盟関係にあるからだ。5か国はいずれも英語圏、すなわちアングロサクソン系という「近さ」がまずあるが、とくに米英の同盟は、単にNATOで結びついているだけでなく、両国同士が「特別の関係」とみなすほど深い。 UKUSA協定は、もともと第2次世界大戦中の米英の対ドイツ通信傍受作戦の枠組みを、終戦後に対ソ連・東欧に振り替えたものだった。UKUSAUKUSA、すなわち「英米」協定という意味だが、その後、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。東西冷戦が地球規模に広がり、通信傍受も地球規模で行う必要性が高まったからである。 衛星通信が発達すると、ますます地球規模の通信傍受が重要になった。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドはそれぞれ地理的に傍受に役立つ場所にあったため、冷戦期を通じて徐々に役割が増した。 ちなみにこの「UKUSA」、日本では専門家含めて「ウクサ」と読む人が多いが、米国情報機関の2010年の公式文書に「読み方はユークーサ」と明記されている。ただ、海外の報道機関や専門家は「ユーケーユーエスエー」協定と呼ぶことが多い。 もっとも、ファイブ・アイズ5か国は「平等」ではない。情報の世界は、同盟国といえどもギブ&テイクの世界である。貢献度に応じて上下関係が生じる。ファイブ・アイズでは米国が圧倒的に上位にあり、次に英国となる。他の3か国はその下になり、必ずしも米英レベルの機密情報を共有させてもらえるわけではない。 とくに、グローバルな通信が衛星通信から光ファイバー通信に移行してくると、海底ケーブルの陸揚げ拠点の重要性が増してきた。今でも電波傍受は重要ではあるが、それ以上に有線ケーブルの盗聴が重要になった。そこで基幹ケーブルが集まる米国の東西の海岸と、英国南西部が、地球規模の通信傍受工作でますます存在感を増している。 さらに通信傍受機関は、現在、かつてのアナログ電波の傍受だけではなく、デジタル情報の収集・分析に軸足を移している。電子メールや暗号化されたメッセージの盗聴、あるいは標的を絞ったハッキング工作、さらにはメタ・データの解析などだが、これはもう圧倒的に米国の技術が高い。 したがって、ファイブ・アイズといっても、加盟国内での情報格差はかなり大きくなっているのが現状なのだ。 UKUSA協定はもともと通信傍受工作の協定だから、参加するのは各国の通信傍受機関だった。前述したように、現在はますます米国の立場が突出しているが、その米国の担当部局は国防総省の通信傍受機関「国家安全保障局」(NSA)になる。 ファイブ・アイズは元来、NSAを司令塔に計5か国が情報共有して連携する枠組みだが、NSAはそれ以外にも同盟国の情報インフラを取り込むべく、ファイブ・アイズよりも連携レベルの低い多国間の協力の仕組みをいくつも作っている。

◆情報共有する多国間協定はいくつもある

たとえばファイブ・アイズにフランスやオランダなど欧州4か国を加えた「9アイズ」。その9アイズにさらにドイツやイタリアら5か国を加えた「14アイズ」などがある。また、ファイブ・アイズに韓国、タイ、シンガポール、インド、フランスが加わった「10アイズ」もある。 さらにそれ以外にも、NSAは個別にイスラエルや日本とも深く連携している。 機密情報のやりとりをめぐる組織は、各国が複雑に入り乱れているのだ。 日本で通信傍受を行っているのは防衛省情報本部だが、日本の情報活動としては例外的にその傍受能力は高く、ロシア、中国、北朝鮮などの電波信号を傍受し、分析し、データを蓄積している。通信傍受による情報は日本が持つ数少ない独自情報だが、これは情報のギブ&テイクで、米国とやり取りされている。日本はファイブ・アイズなどの多国間協定には参加していないが、日米間の情報協力は緊密に行われているのだ。 そんな日本が、ファイブ・アイズを中心とする多国間協力の枠組みに参加するアイデアは、主に3つの観点から出てきた。ひとつは、近年、ロシアや中国のサイバー・スパイ活動が強化されていることに対し、いわゆる西側の主要国が連携して対抗しようという話。2つめは、ファイブ・アイズの5か国を中心に、中国産の資源に頼らない経済的な多国間協力を進めていこうという話。そして3つめは、中国の勢力拡大を受けて、多国間で中国包囲網を作ろうという話だ。

◆対中国情報戦の連携を模索

中国包囲網にはすでに日米台だけでなく、オーストラリア、カナダ、東南アジア諸国、インド、英国、フランスなどが参画している。とくに英国は空母をアジアに常駐させる計画があるとも報じられており、今後、中国海軍と直接対峙する可能性がある。 こうした国々は、日本が持つ中国軍の情報が欲しい。日本は米国とは深い部分まで情報の連携を行っているが、それ以外の国々とは限定的だ。 ただし、ファイブ・アイズは強固な5か国だけの排他的枠組みなので、日本がその正式メンバーになることはまず難しい。協力は可能であるし、おそらく今後はその方向に向かうと思われるが、日本が持つ有効な情報で、他国に提供しても構わないものは、すでに米国と共有されているので、日本はそれほど強い立場に立てるわけでもない。 逆に、日本が対中国軍の局面で、情報分野での大きな利益が見込めるかというと、それもあまり期待できない。日本周辺の軍事情報であれば、やはり米国からの情報が圧倒的であり、ファイブ・アイズの他の国々はそれほど独自情報を持っていないからだ。

◆日本にとって、得なのか、損なのか

結局、日本が提供する情報と受け取る情報の損得バランスは、持ち出し過多になる可能性が高い。ただ、目的は中国軍の封じ込めなので、いずれにせよ中国包囲網の強化になれば、日本の安全保障にとってプラスとはいえるだろう。 それともう一点、大切なことがある。情報の世界での多国間協力の経験が乏しい日本にとって、ファイブ・アイズの「お友達」になること自体は、悪いことではない。 ファイブ・アイズ5か国は、扱う情報の機密度は限定的ではあるものの、今では通信傍受情報だけでなく、もっと全体的な情報共有を行っている。そこにオブザーバー的に参加できれば、こうした情報の世界と接する機会をより多く持つことになる。 ファイブ・アイズの末席に非公式に「参加させてもらった」としても、第一級の機密情報が簡単に手に入るとか、日本の情報能力が一気に高まるなどというほど、インテリジェンスの世界は甘くない。しかしそれでもいくらかは、通信傍受以外の情報活動のノウハウを吸収できるかもしれない。日本は、この分野ではまだ初級者だ。一歩ずつ進んでいくしかないだろう。

ファイブ・アイズとは 英語圏5カ国で機密情報共有
2020/8/15https://www.nikkei.com/article/DGXKZO62677940U0A810C2EA2000/

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▼ファイブ・アイズ 米英などアングロサクソン系の英語圏5カ国によるUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組みの呼称。米英が立ち上げ、1950年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。米国以外は英連邦の構成国である。

米国を中心に「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集、分析しているとされる。参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用する。長らく公式に存在を認めていなかったが、2010年の関連文書の公開で活動の一端が明らかになった。

日本は5カ国と安全保障面で協力を進めている。米国は日米安全保障条約に基づく同盟関係に基づいて連携する。英豪などとの関係は「準同盟国」とも呼ばれ、情報保護協定や物品役務相互提供協定(ACSA)などを結んでいる。


ファイブ・アイズ調査報告

疾病調査


研究員調査

※管理人としては、エシュロンという国際監視ネットワークを有するファイブ・アイズへの加盟への提言がイギリスからまずあった、という点が重要であろうと思えます。イギリスからしてみれば、日本というよりもその背後に同盟国として存在するアメリカとの連携強化という側面もあるように思えます。元々アメリカ、イギリス、日本は同じ「海洋国家」ということを考えると、大陸国家から権益を守ろうという点で考えると自然な成り行きという見方もできるのではないでしょうか?


【ぼくらの国会・第37回】ニュースの尻尾「日本がファイブアイズに加盟?」

2020年9月14日月曜日

世界が認めたスパイ映画。

黒沢清監督、映画『スパイの妻』でベネチア国際映画祭銀獅子賞蒼井優&高橋一生が祝福

 ORICON NEWS
© 2020 NHK, NEP, Incline, C&I 黒沢清監督の映画『スパイの妻』がベネチア国際映画祭銀獅子賞

 女優の蒼井優が主演で、黒沢清氏が監督を務めた映画『スパイの妻』が、92日(現地時間)よりイタリアで開催されている第77回ベネチア国際映画祭で、銀獅子賞(監督賞)を受賞。これを受け、蒼井、高橋一生、黒沢監督から喜びのコメントを寄せた。
 同作の舞台は1940年、満州で恐ろしい国家機密を知ってしまった優作(高橋)は、正義のために、この秘密を世に知らしめようとする。妻の聡子(蒼井)は、反逆者と疑われる夫を信じスパイの妻とののしられようとも、ただ愛する夫と生きることを心に誓う。しかし、太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく
 2018年のジャック・オーディアール(『ゴールデン・リバー』)、19年のロイ・アンダーソン(『ホモ・サピエンスの涙』)に続いて、ベネチア国際映画祭の最優秀監督賞にあたる銀獅子賞の受賞は、日本映画としては2003年の北野武監督『座頭市』以来、17年ぶりの快挙。溝口健二監督が『雨月物語(53)と『山椒大夫』(54)で2度、黒澤明監督が『七人の侍』(54)、熊井啓監督が『千利休 本覺坊遺文』で受賞、と日本では5人目の受賞者となった。
 今回の快挙を受け、黒沢監督は「スタッフと俳優の力が最高のかたちで組み合わさった結果だと思っています。映画の可能性は無限なのだと、この歳になって実感しました」とコメント。蒼井も「黒沢監督、銀獅子賞受賞おめでとうございます。ケイト・ブランシェットさんから監督のお名前が呼ばれた瞬間、現場の片隅で、モニターを静かに並んで見つめられていた、監督と奥様の後ろ姿を思い出しました。たくさんの映画仲間から連絡が入り、みんなとても興奮し、感動し、喜んでいます。黒沢監督、本当におめでとうございます。これからも監督の映画を楽しみにしています」と呼びかけた。
 高橋は「ベネチア国際映画祭監督賞受賞、心からお祝い申し上げます。この作品が世界で評価されることをうれしく思います。黒沢監督のもと、あの空間、あのスタッフ、キャストとともに作品を作り上げていく時間は、最高の体験でした。これからも素晴らしい作品を楽しみにしております。おめでとうございます」と祝福した。
 審査員のひとりである、クリスティアン・ペッツォルト監督(『未来を乗り換えた男』)は「大好きな作品です。オペラ的なリズムと画作りで政治ドラマを描く。このような作品には久しく出会っていませんでした。3040年代の伝統的な世界を現代のスタイルで表現しています」と本作を絶賛している。

映画『スパイの妻』予告編

映画公開スペシャルトークセッション


※どうも単にスパイが活躍するという映画ではなく、知りえた重大な国家機密に違和感を感じてこれにむきあっていくという内容のような気がします。
 国家機密を知りえたときに人間はどう考え、どう動くのか。興味は深いです。

スパイとは何か?

CIA(猫諜報機関)深田より視聴者の皆様へ(^▽^)/スパイ解説 
https://www.youtube.com/watch?v=MVVlE_KikTM
  
【スパイの分類】 
国家スパイ~国家機関に雇われて工作活動を行う。パスポートを複数持つ。 
産業スパイ~民間人が多いが、国に雇われている人もいる。ハニートラップを行う。 
民間諜報機関によるスパイ~メディア、省庁、検察、警察OBで構成されていることが多い。ハニトラ、罪、不祥事の捏造、小さなことを大きく煽り警察を動かす。汚れ仕事を行う。

髙橋洋一チャンネル 第64回 スパイ防止法がないのはやっぱりマスコミのせい&ハニートラップの真実 
https://www.youtube.com/watch?v=uJH7gMKoOOE
 「特定秘密保護法」は、スパイ防止法よりも罰則が軽い。これがないとアメリカが重要な機密をくれないから成立させたもの。この法律に反対する野党とマスメディアは、外国のスパイ組織とつながりがあるため反対している?
 スパイ防止法は80年代に自民党が国会に法案を提出しているが、野党の反対により不成立となった。そして第二次安倍内閣のころに「特定秘密保護法」という不完全な形で成立、施行されるに至る。
 ハニートラップは一番コストの安いスパイ戦術!?
海外に政治家が訪問するときに、ファーストレディを同伴するのは、ハニートラップ防止のため。女性を近づけるのはやめてくれ、という意思表示。
 つまり国際外交は、それだけで情報戦だということですかね。

2020年9月4日金曜日

共産中国の「超限戦」に我が国はどう立ち向かうか?

21世紀における新しい戦争のスタイルを認識するのに、考えさせられる動画をみつけました。私たちは国防を自衛隊まかせにしてしまっている状態でこの先はたして大丈夫なんでしょうか?

日本のような世界経済に影響の大きい国にはもはや軍事攻撃するような愚かなことはどこの国でもやらないでしょう。影響下にある政治家や官僚をおさえて、「戦わずしてこの国をコントロールする」戦略の方が、国益に資するということです。

日本はいつまでも大国の軍事戦略下におかれるような国ではありません。サイバー戦略やAI戦(アルゴリズム戦)でも技術面、製造業での技術とを積極的に融合させて、他国が真似できないようなものを作り出し、開発したインフラを海外に投資するのです。

日本は、技術立国、技術覇権国をめざしましょう。


【中国】ネット工作部隊「五毛党」の正体【WiLL増刊号#266】 https://www.youtube.com/watch?v=H88tA6xApmM
 保守系論者の吊し上げ、保守系論者の輿論誘導など共産中国の輿論戦の先兵ですね。建設的な議論などは全くしないわけですから、ネット上での議論が成立しなくなったら、こうした連中は相手にしないことでしょうね。共産中国は「超限戦」の国だということを忘れるべからず。 サイバー戦はハッキングや標的型ウイルス攻撃だけではありません。我が国はこうした「超限戦」にどう立ち向かって国防を果たしていくのか?

インターネットの世界は3層構造。深みにはまるほど人間の欲望の巣窟となっています。
ちなみにインターネットは、戦後ロズウェルに墜落した異星人の高度なテクノロジーを入手、解析したことがきっかけで、軍用の通信インフラとして実用化されたもの。

今やインターネットは利便性で発展し、これがないと生活できない状況になっています。

【閲覧注意】ダークウェブで行われていた美人女性モデル人身売買事件 https://www.youtube.com/watch?v=5yxOO5jnFzI

2020年8月28日金曜日

アメリカは共産中国との「情報戦」に勝利できるか?


アメリカの「中国人留学生外し」が示す深い確執
留学生大国目指す日本にも対岸の火事ではない
 API地経学ブリーフィング


今後、自由主義諸国は中国からの「ヒト」の流れをどこまで、どのような基準で制限していったらいいのか

 米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。

 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

中国人留学生37万人の影

 米中対立に拍車がかかる今日、アメリカの対中デカップリング(切り離し)の動きは経済上のモノ・サービス・金融の分野だけではとどまりそうにない。約50年間にわたって米中の協調関係を下支えしグローバリゼーションによってさらに深化した、米中間の「ヒト」のつながりにもついに規制の手が及んだ。

 アメリカ政府は61日付で、今後、中国人民解放軍とつながりを持つ大学院レベル以上の中国人留学生・研究者をアメリカに入国させず、すでにアメリカ内にいる対象者のビザは剥奪することを決めた。これにより少なくとも3000人の中国人が影響を受けるという。
 5月には共和党の上院議員からも理系の中国人留学生をすべて入国規制すべきだとする提案が発表され、7月には約9200万人に及ぶ中国共産党の党員とその家族の入国規制が検討されていると報じられた。今後アメリカをはじめとする自由主義諸国は中国からの「ヒト」の流れをどこまで、どのような基準で制限していったらいいのか。2008年以来留学生受け入れ30万人を目指し取り組んできた日本にとっても深刻な問題だ。

 中国が急速な経済発展を遂げるにつれ、そのエリート層の多くは子弟を海外に送り出すようになった。現在アメリカには37万人近くの中国人留学生がおり、この中にはかつてハーバード大に通った習近平の1人娘もいた。こうした中国エリートの子弟は究極的な意味で米中関係の信頼を担保する「人質」であり、裏返せばそれは北京のトップがアメリカやその開かれた大学に一定の信頼を置いているという証しでもあった。莫大な数に膨れ上がった中国人留学生は、アメリカで学ぶ留学生全体の約34%を占め、大学の国際性向上に貢献し、多くの大学の財政を支えている。

 しかし、米中信頼担保の役割を果たしてきた中国人留学生はいまや米中不信の種になってしまった。中国政府がその一部を政治利用し、アメリカの安全保障や価値観を脅かすツールとして用いることが広く認識されてきたからだ。2018年アメリカ連邦捜査局(FBI)は、一部の理系分野の中国人留学生・研究者が「非伝統的な収集者」として知的財産の不正流出に加担していると報告した。

 問題は知的財産の流出だけにとどまらない。中国領事館が中国人学生団体と連携し、各大学における教育・研究活動に中から影響力を行使しようとする事例が数多く報道されている。ダライ・ラマや中国亡命者による講演への妨害行為がその際たる例だが、ほかにも領事館によって中国人留学生の言動が監視されるだけでなく、その監視の目が各国で教鞭をとる大学教員、とくに中国研究者にまで及ぶ可能性に危惧が高まっている。
 すでに中国国内の大学では、習近平体制を批判した大学教授の言動が学生を通じて政府当局者に伝わり、後に逮捕されている。同様の現象が中国人留学生を通じて海外の大学教員に起こらない保証はない。豪州では講義中に中国を批判した教員がSNS上で批判を浴びる事件が起こった。

中国研究者の間に募る懸念

 現に世界の中国研究者の間では、中国政府からの懲罰を恐れた結果広がりかねない自己検閲に懸念が広まっている。今年発表された調査研究では、中国本土以外で活動する中国研究者562人のうち、約7割が中国研究における自己検閲に危機感を示したという。中国当局による長期的な拘束は非常にまれでも、中国への渡航規制や公文書館へのアクセス制限、訪中時に当局者から誘われる「お茶」など、さまざまな圧力が実体験として報告されている。
 一方、中国領事館の留学生に対する介入の度合いには地域間でも差があり、その実態はつかみきれないことから、トランプ政権内では中国人留学生を一緒くたに敵視する声もある。だが、ただでさえ政治の分極化が進むアメリカにおいて、反移民主義的傾向の強いトランプ政権が闇雲に中国人入国規制を行えば、それは必ずや国内外で物議を醸し、アメリカは内部分裂を起こしてしまうだろう。中国系のアメリカ市民に対する差別問題につながる危険性もある。

 すでに中国は最近のアメリカの動きを特定の人種を排除しようとするレッド・スケアの再来と非難しているが、これにはアメリカの国内情勢を見据えた一定の公算がある。近年のアメリカでは人種や性別、性的指向など特定のアイデンティティーに基づく集団の権利をめぐる問題が政治議題として重視され、保守とリベラルの分裂が深刻化している。トランプ氏が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んで批判されたのも、そうした描写がアジア系市民への差別行為を助長するからだった。中国はこうした情勢を巧みに捉え、中国人入国規制を人種差別問題として語る。

 5月に発表したアメリカ政府の対中戦略文書が工夫を凝らしながら本件に警鐘を鳴らすのはこのためだ。この文書は、中国人留学生は「自由の国アメリカ」にいながら自国の政府に監視され政治利用される被害者だと示唆し、アメリカの大学は彼らの権利を守る必要があると訴える。「習近平体制 vs. アメリカで学ぶ優秀な中国人留学生」という構図を作り、アメリカは後者の味方と伝えることで、この対中指針がトランプ政権の単なる排他的アメリカ・ファーストの一環ではないと示す。

 移民たちによる「大いなる実験」を建国精神とし、外国人に門戸を開くことで成長を続けてきたアメリカだからこそ、ヒトをめぐる対中デカップリングでは神経をとがらせている。19世紀後半から20世紀前半にかけてアメリカ国内で中国系移民に続いて日系移民が排斥され、当時の日米関係に影を落とした歴史からも、この問題がはらむデリケートさが読み取れるだろう。

留学生大国を目指す日本に警戒が必要なこと

 中国人留学生問題は日本にとって決して対岸の火事ではない。現在日本には約86000人の中国人留学生がおり、留学生全体の約41%を占める。アメリカで中国人留学生が占める比率34%より大きい数字だ。都内の大学におかれる中国人の学生団体も2018年の72団体から2020年の94団体に増加している。
 米中間の「ヒト」デカップリングの動きを受け、日本はとくに2点で警戒を強めなければならない。
 まず、中国軍関係者や理系の学生など、新たな規制によってアメリカに留学できなくなった中国人の学生が代替先として日本にやってきていること、今後もその数が増えることを見越し、機微情報流出への防衛策を強化する必要がある。日本ではすでに「外国為替及び外国貿易法」に基づき、理工系の大学や学部に対して外国人留学生受け入れの適切な基準を示すなど、機微技術管理の対策を講じているが、その対策はいまだ十分に浸透していない。
 日本の国立大学、医歯薬理工系学部を置く公立・私立大学を対象にした2018年の経済産業省の調査によれば、輸出管理の担当部署や内部規定を設定している大学はまだ半分程度だ。内部規程のない大学では外国人留学生・研究者受け入れ時点で安全保障上の審査を行っているのはわずか6%にすぎなかった。ここ数年における中国人留学生の急増および国際情勢の変化を受け、こうした抜け穴を早急に埋める必要がある。政府は対策実施のための財源やノウハウが不足している大学を中心に支援を拡充し、対策を最大限に強化したうえで優秀な理系分野の中国人留学生を迎えるのが望ましい。

 さらに日本の大学内での言論・学問の自由を保護し、中国を扱う研究者たちが自己検閲せざるをえない状況にならないよう、政府・大学が連携して策を講ずる必要がある。昨年9月、北海道大学の岩谷將教授が中国社会科学院近代史研究所からの招聘による訪中時に反スパイ法違反の嫌疑で拘束され、その後日本政府の働きかけで解放されたことは記憶に新しい。

日本国籍の研究者が2カ月間拘束

 2015年以降、中国では14名もの日本人が拘束され、大手商社の社員を含む9名が有罪判決を受けている。だが今回、日中戦争史を専門とする日本国籍の研究者が2カ月間拘留されるという史上初めての出来事は、日本の中国研究者に大きな衝撃を与えた。
 今後、ほかの日本人中国研究者が訪中時に拘束されるリスクやその他の圧力から研究分野を制限されたり、中国人留学生の面前では率直に意見できない状況になったりすれば、自由主義国の根幹となる言論・学問の自由は次第に腐敗していくだろう。同状況下にある自由主義諸国の大学や研究者等と意見交換を深め、ともに知恵を絞らなければならない。

 留学生大国を目指す日本は、今後とも大学の開かれた言論空間を堅持し、機微情報や知的財産の保護対策を徹底的に強化したうえで、優秀な留学生を歓迎しなければならない。そのためには中国人留学生がもたらす問題が、日本の安全保障、知的財産、そして言論・学問の自由に関わる分野横断的な問題だと認識し、国を挙げて防衛措置を強める必要がある。こうして防衛策を徹底させ潜在的攻撃者を抑止できれば、攻撃の武器として用いられる中国人留学生を守ることにも繋がる。

 一方、今後も中国政府が留学生を利用した政治工作を加速させ、こうした強化措置だけでは対応できなくなれば、日本を含む自由主義諸国は中国人留学生に対して国境を閉じていかざるをえなくなるだろう。また日中の相互理解を支えてきた日本の中国研究者や経済人が安心して訪中できない状況が続けば、日中関係は厚みを失いすさんでいくだろう。そんな日中関係、国際社会が中国の望む世界なのか。留学生をめぐるデカップリングの動きは、北京にそう問いかけている。

 (寺岡 亜由美/プリンストン大学 国際公共政策大学院安全保障学博士候補生)

家庭生活に難のある学生、海外で学ぶ意欲あふれる若者、それぞれの状況に応じてヒューミントの役割を課していくような形でしょうか?

特別なスパイの訓練を経てきている方はそう多くはないでしょう。多くはお金で雇われたエージェントではないかと思えます。


中国人留学生関連動画



仮に相手がスパイであったとしても正直「騙される方も悪い」という考え方もあるかと思います。スパイを罪と断定し、国家に害をなす存在として刑罰を科す対象としていくのは政府の仕事です。特定秘密保護法だけではなく、スパイそのものを取り締まることにできる法律を整備しないとこの国は国際社会で一流国として認められないでしょうね。いつまでもアメリカの保護国、共産中国の準保護国となるだけです。


大国に情報戦で翻弄されれば、国家としての主体性はないです。自衛隊の防衛戦略もそこのところを考えるべきです。市街地戦闘訓練も大事ですが、ヒューミント養成、シギント収集のための体制を整えることですが、まずは日本人の戦争についての認識を変えることが重要でしょうか?
 となると義務教育での「戦争教育」の改革だな。



我が国の「敵地攻撃論」について ~政府の思惑の本音はまず法整備か?~

平和が続く日本で高まる「敵地攻撃論」の想像以上の危うさ

 田岡俊次
© ダイヤモンド・オンライン 提供 日本のミサイル防衛は、弾道ミサイルに対して、イージス艦の「SM3」ミサイルや航空自衛隊の「ペトリオットPAC3」(写真)で迎撃する体制 出典:航空自衛隊ホームページ


 815日の全国戦没者追悼式で天皇陛下は「終戦以来75年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき誠に感慨深いものがあります」と述べられた。
 第2次世界大戦以後の75年間、世界各地で戦争、内乱、軍のクーデターなどが絶えず、ほとんどの国が戦争をしてきたことを思えば、日本が平和を維持してきたのは例外的で慶賀すべきことだ。
 だが一方でそのために、戦争を現実に起こり得るものとして、具体的に考える能力を欠き戦争の危険を軽視する「楽観的防衛論」が台頭する要因にもなっている。

戦後75年間、平和を謳歌 直接戦闘を回避できてきた日本

 米国は1950年に始まった朝鮮戦争以後、戦争をしなかった年はまれだ。アジア、中南米、中東・北アフリカ、バルカン半島に出兵して戦い続け、その同盟国、友好国も協調出兵を迫られた。
 朝鮮戦争では米軍、韓国軍側を支援して英、仏、カナダ、豪州など15カ国も参戦、北朝鮮軍、中国軍と激戦し、ソ連も技術者、教官などを派遣した。米国の占領下にあった日本からは海上保安庁の掃海艇が米軍の上陸地点で機雷除去を行い、1隻が爆沈した。
 ベトナム戦争では1964年から本格的に南ベトナムに出兵した米軍側に韓国、豪州、タイ、フィリピン、ニュージーランド軍が加わり、北ベトナム側には中国、ソ連は対空部隊や多数の技術者などを送り込んだ。

 1991年の湾岸戦争では米軍主体の多国籍軍に英、仏、伊、カナダやエジプト、シリアなど14カ国軍が加わり、他にソ連を含む18カ国が多国籍軍への非戦闘支援を行い、日本も停戦後にペルシャ湾に掃海艇を派遣した。

 2001年に米、英が行ったアフガニスタン攻撃は長期のゲリラ戦となり、米軍主導の国際治安維持部隊(ISAF)には北大西洋条約機構(NATO)の28カ国の他に、非加盟国のスウェーデン、フィンランドなど15カ国も加わった。日本は補給艦、護衛艦を派遣、8年間米国などの艦艇に給油を行った。

 2003年に始まったイラク戦争では米、英、豪、ポーランド軍が侵攻したが、その後の治安維持に42カ国が参加。日本も陸上自衛隊約600人、C130輸送機を出し、学校、道路の補修や医療支援を行い、輸送機は米兵の輸送も行った。
 補給や占領地での民衆の懐柔も戦争で重要な要素だから日本もその一端を担ったが、直接の戦闘は辛うじて避けられたから、日本は「75年間平和を保った」と言うこともできなくはない。

陸上国境、人種や宗教対立なく 一方で「楽天的な防衛論」

 世界で大多数の国が近隣諸国との武力紛争や独立戦争、内戦、海外派兵などで、多数の死傷者、難民を出し、経済、財政に重大な損失を招いてきた中、日本がほぼ3世代戦禍を免れてきたのは、いくつかの要因が考えられる。

1)島国で陸上国境がないため紛争が起こりにくいこと
2)世界的制海権を持つ米国に占領され、その同盟国となったため他の国の侵攻を受けにくいこと
3)人種、宗教間の対立が少ないこと
4)憲法による規制があり、第2次世界大戦での惨敗、それを招いた軍の横暴の経験から、国民に戦争、軍事問題に対する忌避感が強かったこと――などだ。

 日本が平和を謳歌し繁栄したのは結構この上ないが、その結果、戦争はめったに起きないように感じ、戦争の危険を軽視した楽天的な防衛論が台頭することは寒心に堪えない。
 その一つは北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対処するため、敵のミサイル基地を攻撃する能力を持つべきだとする「敵基地攻撃論」だ。

「敵地攻撃論」の非合理 ミサイル「発射」の把握困難

 敵ミサイル基地攻撃を唱える人々の主張には、軍事知識や戦争の現実についての認識の「欠落」がある。
 小銃射撃や砲撃でも、攻撃をするには目標の位置を知ることが不可欠であるのは自明のことだが、敵基地攻撃を唱える人々は「どのようにして相手のミサイルを探知するのか」を考えていない様子だ。
 偵察衛星は地球をほぼ南北方向に約90分で周回する。地球は東西方向に自転するからおよそ1日に1回、世界各地の上空を高度200キロ程度、時速約29000キロで通過する。
 カメラの首振り機能を生かしても北朝鮮を撮影できるのは1日に数分でしかない。夜間や雲がある場合には光学カメラは使えないから、精密レーダー衛星があるが、解像度は劣る。
 偵察衛星は飛行場や造船所など、固定目標を撮影するには有効だが、移動目標を探知し、監視するにはほとんど役に立たないのだ。

 米軍は光学カメラを搭載した光学衛星5機、レーダー衛星7機(他に実験中の小型衛星5機)を持つ。日本は光学衛星2機、レーダー衛星5機を持つが、故障しているものもあり、実質的には計5機と思われる。
 常時監視をしようとすれば偵察衛星が数分置きに1地点上空を通るよう、百数十機を上げておく必要がある。

「静止衛星で見張れるのではないか」と言う人も少なくないが、それも不可能だ。
 静止衛星は地球の直径の3倍に近い高度約36000キロで赤道上空を周回する。この高度だと衛星の速度と地球の自転の速度が釣り合って、地球から見て止まっているように見える。だから電波の中継などには活用されるが、この距離からはミサイルのような小さい物体を撮影することは不可能だ。
 弾道ミサイル発射の際に出る大量の赤外線は探知できるから、「発射」の第一報を出し、ミサイル防衛(迎撃)には有効だが、敵基地攻撃の役には立たないのだ。

ミサイルの「破壊」も難しい 移動式や即時発射能力向上

 北朝鮮の弾道ミサイルは移動発射機に搭載し、北部の山岳地帯などのトンネルに隠され、燃料を注入したまま待機できる「貯蔵可能液体燃料」を使用、新しい物はさらに即時発射が可能で、移動も楽な固体燃料になってきている。
 これはトンネルから出てきて、ミサイルを立て、発射まで15分程との推定もあるから、ジェットエンジン付きの大型グライダーのような「グローバル・ホーク」など無人偵察機を北朝鮮上空で常に旋回させてもトンネルから出て来たところを攻撃することも困難になっている。
 しかも北朝鮮は、旧ソ連製の「S200」や国産の「ボンゲ(稲妻)5」など高度3万メートルに達する対空ミサイルを持っているから、偵察機が上空で旋回していれば撃墜される公算が大きい。

 隠れている弾道ミサイルを発見、破壊するのは米軍にも容易ではない。
 1991年の湾岸戦争ではイラク軍の「アル・フセイン」(スカッド改)弾道ミサイルに対し、米軍は1日平均64機を「スカッド・ハント」に投入、発射地域の上空で監視、攻撃させたが、イラクは停戦の2日前までイスラエルや米軍基地にミサイル発射を続けた。
 停戦後に米軍が調べると、空軍機が破壊したと報告したのは、実はカラのミサイル発射機やトラックなどだったことが分かった。
 発射前に破壊できたのは、夜間に特殊部隊を運んでいたヘリコプターが偶然ミサイル発射の火柱を目撃、そちらに向かってみると、もう一発が発射準備中だったため、ヘリコプターのドアからの機銃射撃で壊した例だけだった。
 その後、約30年間で対地攻撃用の精密レーダーや赤外線探知装置の性能は進歩したが、他方で弾道ミサイルの機動性や即時発射能力も飛躍的に向上したから、その破壊は容易ではない。

 日頃の偵察衛星の画像や通信傍受で弾道ミサイルの展開地域は分かっても、攻撃するには精密な地点の緯度、経度のデータが必要だ。
 特に山腹のトンネルに隠されると、出入り口は分かってもダミーも多いし、トンネルが地下でどちらに曲がったり、枝分かれしたりしているかは分からない。地中貫通用の大型爆弾でも数十メートルの深さにしか届かないから、山の上空から攻撃するのは困難だ。
 敵基地攻撃を唱える人々は、北朝鮮の「テポドン」の発射のテレビ映像などを見て、それをミサイル基地だと思っている人も少なくないようだ。
「テポドン」は高さ65メートルもある巨大な櫓の側で、何週間もかけて組み立てられ、北朝鮮はその発射を事前に公表している。

 201212月と162月の2回、人工衛星と称する物体を周回軌道に乗せることに成功したが、衛星は故障したのか電波は出ていない。
「弾道ミサイルと人工衛星打ち上げ用のロケットは技術的には同じ」と言われることが多いが、これは「大型旅客機と戦闘機は基本的には同じ」と言うような粗雑な論だ。
 1957年にソ連が初の人工衛星を打ち上げ、翌年に米国もそれに続いて競い合った時代には、双方とも軍用のミサイルを転用した。だがそれ以来60年以上の歳月に、弾道ミサイルと人工衛星用ミサイルは別の方向に進化した。

 弾道ミサイルはたて穴に入れるか、潜水艦や車両に積んで移動するからなるべく小型にすることが望ましく、即時発射機能が必要だ。米国の主力ICBM「ミニットマン」は固体燃料を使い全長18メートル、重量35トンになった。
 一方、人工衛星は大型の反射望遠鏡やレーダー、送信機など多くの電子装備を搭載、寿命を長くするため大量の姿勢制御用燃料も積みたいからどんどん大型化し、「スペース・シャトル」は2000トンを超す大型となった。人工衛星を打ち上げる場合は、即時発射の必要はないから推力の強い液体燃料が使われた。
「テポドン」のように全長が10階建てのビル並みの30メートル、重さは80トンもあり、移動も即時発射もできないものは、戦時では簡単に破壊されるから弾道ミサイルの適性を欠く。現実にいまは人工衛星の打ち上げに使用されている。

日米韓の連携どこまで 北朝鮮への抑止効果は疑問

 米軍、韓国軍との密接な情報交換で、移動発射のミサイルが山腹のトンネルなどから出て来た位置をつかんで攻撃できるようなことを言う自衛隊幹部もいる。
 だが、もし米、韓国軍がその情報を得れば、11秒を争うからただちに自分が攻撃するはずだ。日本に教えて手柄を譲ることはないだろう。
 また自衛隊が巡航ミサイルによる攻撃を朝鮮半島で行う場合には、味方討ちや誤爆を避けるために米韓合同司令本部の許可が必要だ。韓国軍がそれを歓迎することも考えにくい。
 また敵基地攻撃を唱える人々は「外国がいままさに日本に向けてミサイルを発射しようとしている際には、それを攻撃するのは自衛権の行使に当たる」と言う。
 法的にはそれにも一理はあるが、仮にミサイルの発射準備が行われていることを知っても、それが日本に向けて発射されるのか、単なる日常の訓練か、海に向かって試射するのか、他の国を狙うのかは、まず分からない。
 日本がミサイル攻撃を受けた後に、平壌などの固定目標に巡航ミサイルを発射するなら可能だが、核ミサイル攻撃の能力を持つ相手に、火薬弾頭の巡航ミサイルなどで対抗するのは破壊力が段違い。大砲に対して弓矢で立ち向かうようで抑止効果は無きに等しい。

購入予定だった「SM348発は イージス艦搭載が効果的

 いまの日本のミサイル防衛は、弾道ミサイルに対して、イージス艦の「SM3」ミサイルや航空自衛隊の「ペトリオットPAC3」で迎撃する体制だが、完全な防衛とはならず、突破される公算が大だ。
 それでも飛来する弾道ミサイルの一部でも阻止できればその分だけ被害が減じるという、せめてもの効果は期待できる。ただ現状はミサイル防衛は実は形だけのものと言わざるを得ない。
 近く8隻になるイージス艦は、各艦の垂直発射機に90発ないし、96発のミサイルが入り、対航空機用ミサイル16発、対潜水艦ミサイル16発を積んでも、「SM3」ミサイルを58発ないし64発収納できる。
 だが1発約40億円もするから、各艦はそれぞれ8発ずつしか積んでいない。北朝鮮は核付き弾道ミサイルを約20発、火薬弾頭付きは約200発持つと推定されている。
 相手が核付きと火薬弾頭付きの弾道ミサイルを交ぜて発射してくれば、日本のイージス艦は最初の8発だけに対処すれば、「任務終了、帰港します」とならざるを得ない。
 短射程の「ペトリオットPAC3」も同様で、34両の移動式の発射機には各16発を積めるが4発しか搭載していない。
「イージス・アショア」は、イージス艦と「PAC3」の体制に加えて、秋田と山口の2カ所に配備する計画だった。
 費用は米国への支払いが4614億円、その「SM3」ミサイルが48発で約1900億円、日本側の用地買収、施設建設を含むと7000億円以上かかるとみられていた。
 その計画は中断されたが、ミサイル48発だけは買い、交代で日本海などに出動して警戒配置につく2隻のイージス艦に24発ずつ追加搭載させれば、1隻で計32発を積むことになり、ミサイル防衛能力は一気に4倍になる。

具体的に考える能力欠如 法律整備に傾いてきた議論

 以上のことを考えれば、イージス・アショア計画を中断したから、代わりに全く役に立たない「敵基地攻撃能力」を保有しようとするのは、非合理なことが明らかだ。
 日本人は幸い75年も平和の中に暮らし、軍事問題から目を背けてきたため、戦争を現実に起こり得るものとして、具体的に考える能力を欠いている。
 しかも憲法問題があったから、防衛政策の論議は、憲法の規定との整合性や専守防衛の解釈などに偏ることになり、軍事知識を必要としない法律論に傾いてきた。
 これは、あたかも企業が新事業に乗り出すか否かを役員会で討議する際、技術的な難点や市場、資金、採算などを論じるよりも、会社の定款に合致するかどうかを議論するような格好だ。
 だがこうした防衛に関する現実感の欠如は、防衛の専門家と思われている人や自衛隊の幹部にも見受けられる。

 防衛庁はテポドン登場当初には詳細が分からないから「弾道ミサイル実験」と称し、いまもそれを変えずにいる。
 だから防衛政策に関与する国防族のなかからも、北朝鮮の西海衛星発射場の映像を見て「ミサイル基地を攻撃して潰せる」との甘い考えを抱く議員も出るのではないか。
 西海発射場は米国のケネディ宇宙センターの廉価版のような施設だから、それを叩いても相手のミサイル戦力を奪えるわけではない。

 航空自衛隊は対地攻撃の訓練を三沢の射爆場で行っているが、定まった位置にはっきり見える標的を設置して行うから、どこに隠されているか不明確な目標を探して攻撃する困難さの実感がなく、攻撃兵器さえ充実すればミサイル陣地を破壊できるように感じているようだ。
 海上自衛隊も護衛艦、潜水艦から発射する巡航ミサイルを欲しがるが、相手の移動式ミサイル発射機がトンネルから出て来てごく短時間で発射するなら、こちらが洋上から巡航ミサイルを発射しても間に合わない。
 このため「巡航ミサイルは北朝鮮のミサイルに対しては役立たないとしても、中国軍の基地などの固定目標攻撃に効果がある」との説も出る。
 だが尖閣諸島を巡って戦争が起きれば、仮に一時的に日本が優勢になったとしても「尖閣戦争」でおさまらず、真珠湾攻撃で日米戦争が始まったのと同様、日中全面戦争の第一幕となる公算が大きいことを考えておかねばなるまい。(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)


ここからは管理人のコメント

確かに理解できる「敵地攻撃論」
 北朝鮮が我が国方向にミサイルを発射するたびに悶々とする思いをされている方は私だけではないかと思います。
 いいようもない不安感が小さくないですし、なんとか発射基地を何とかならないものか、と思います。はっきりいってうっとうしいことをしてくれますよね。

 だからこそどうしたら北朝鮮の外交の切り札の一つであるミサイルを「無力化」し、飛ばせないようにするか、具体的な戦略を検討しながら法整備をしていかなくてはならないと思います。つまり「超限戦」の戦争スタイルでしかけてくるこの時代に、自衛隊まずありきの戦略だけ細切れで検討しても意味がないということ。

 例えば北朝鮮の脅威は、ミサイルだけではありません。

北がサイバー攻撃再開 米FBIが警戒喚起


【ワシントン=住井亨介】米連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省など米政府4機関は26日、北朝鮮が今年2月以降、複数の国の金融機関にサイバー攻撃を再開しているとして警戒を呼びかけた。攻撃は昨年末から止まっていたという。
 4機関の発表によると、サイバー攻撃を行っているのは、米当局から「ビーグルボーイズ」と呼ばれるハッカー集団で、北朝鮮の対外情報工作機関「軍偵察総局」の傘下にあるとみられる。同局管理下にあり、2019年に米国から制裁指定されたハッカー集団「ラザルス」などと共通点があるという。
 ビーグルボーイズは遅くとも14年には活動を始め、15年以降、日本を含む約40カ国・地域の金融機関を標的として約20億ドル(約2120億円)を詐取しようとした。
 4機関は、今年2月以降の被害状況については示していないが、不正に入手された資金について「北朝鮮が核兵器や弾道ミサイル開発につぎ込む可能性がある」と指摘した。

管理人の意見です。
 これ読んだときに、背筋が寒くならない人は相当に鈍感体質でしょう。金融機関へのハッキングにより、人が直接亡くなることはないでしょうが、銀行などに預金してある財産がまるごとハッキングで窃取されてしまえば、人々の生活、経済活動に大きな支障が確実に出ます。中には財産が亡くなって自殺する人も出るかもしれません。
 しかもこサイバー攻撃は攻撃者優位で、ハッカーの任意で世界中のオンラインとサーバーを使ってハッキングが可能です。

 これって「侵略戦争」ではないんでしょうか?
 十分「敵地攻撃論」の議論に含めていける、想定できる事態じゃないでしょうか?
 敵地を攻撃することは、憲法上可能ということは政府の解釈ですが、叩くのはミサイル基地だけではなさそうです。また叩き方、戦い方も時代の推移により検討すべきでしょう。

 今や地球の静止衛星軌道上の人工衛星のプログラムにハッキングできる時代です。核兵器は直接都市を攻撃するより、上空で爆発させて電離層を破壊、都市機能をマヒさせることもできますし、その方が対抗する国への政治的優位性を確保しやすい。(電磁パルス攻撃)

 「超限戦」の戦争形態をとる国は共産中国だけではありません。例えば2014年のロシア。クリミア自治共和国への「侵攻」戦争の主武器は、軍事力ではありません。ハッキングとフェイクニュースという新たな武器です。2016年アメリカ議会で明らかになった侵攻形態は以下のようなものです。

ロシアがウクライナにしかけた「ハイブリッド戦争」

①ウクライナ軍のレーダーを使用不能にする。(電子戦)
②ハッキングで発電所、メディアの機器をコントロールする。(サイバー戦)
 GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自己の位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状況にされた。
 さらにウクライナ軍の砲弾の信管を作動不能にした。
③携帯電話を一時的に使用不能にして、機能が回復した時には数多くのフェイクニュースをメール等で大量に送信した。

 これによりウクライナ住民は大きく混乱し、錯綜した情報を与えられた市民によるデモ隊(偽装したロシア軍兵士)がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源がおちてしまう事態が発生する。停電状態の中、頼みのラジオ局もデモ隊に占拠された状態になり、ラジオからはフェイクニュースが流し続けられた。

 ロシア軍の軍事力を前面に出しての侵攻ではなく、軍は偽装して、電子戦、サイバー戦、宣伝戦でメディアをコントロールして戦争目的を達成したわけです。

共産中国による尖閣諸島への侵攻
【戦後75年】令和2年8月15日・沈黙の日の丸行進~英霊に感謝し、靖國神社を敬う国民行進[桜R2/8/16]


ご存じ我が国の伝統を守るために日夜戦い続けてくれるチャンネル桜さんが主宰する団体運動ですが、この中で尖閣諸島侵攻について、これからくる的な発言をされています。

これ認識が違います。共産中国による尖閣諸島侵攻はもう始まっています。
多くの日本人が周知するように尖閣諸島は「国有化」されています。これは共産中国からすれば、「日本による尖閣諸島の法的な侵略」なんです。

彼らはこれに対して断固「中国の主張」を通してきています。
まず漁船が大挙して尖閣諸島付近の近海へ出現。尖閣諸島は日本に「占領」されているため、漁船の保護監視を目的に中国海警の巡視船がきますが、実際は漁船を統率しています。漁船の出漁+巡視船により、尖閣諸島周辺海域を面的に抑えて、日本側の漁船を締め出します。その締め出しも中国側がするのではなく、尖閣周辺海域を危険海域とみなした海上保安庁が日本側漁船を遠ざけてくれます。

周辺海域を抑えれば、これは日本人は気づいていませんが、潜水艦が尖閣海域に潜航してきますね。夜陰にまぎれて資材や人員を運び込むこともできますし、侵攻の手順の選択肢が増えるでしょう。

あとは定時巡回してくる海保の巡視船と沖縄からスクランブルしてくる空自の戦闘機にどう対処するかです。これも海保の巡視船は、漁船保護を理由に、中国海警巡視船に偽装した軍用艦艇が活躍するんじゃないかな?
 
空自の戦闘機は、中国本土から軍用でない航空機をとばして、空自の対応をみながら戦闘機や爆撃機を送ってくるように思います。制海権と制空権をまずとるわけです。そして現在は制海権は共産中国に抑えられているように思います。

デモを否定するわけではありませんが、もっと訴えるなら今どきの侵略戦争について語ってほしいと思いました。「敵地攻撃論」など国会で議論するのが無駄だとはいいませんが、今どきの「ハイブリッド戦争」や「超限戦」の侵略に対して、自衛隊がどう対処するのか、国民がどういう認識の下で、国防を固めていくのか、の議論をベースに国防戦略を固めるべきでしょう。

戦争の形態、戦略は日々進化しています。仮想敵国の政治や経済をコントロールするために、あらゆる戦術をしかけてくるでしょう。核兵器を使って仮想敵国を焦土化するような戦争は今や過去のやり方であり、世界がグローバル化した世の中にあわせた戦争の形があるのです。そこをふまえた議論をお願いします。

進化する戦争形態 関連動画

戦争はいずれ宇宙覇権を取り合うような戦争になっていくでしょうね。宇宙空間とサイバー空間をめぐる戦争が主戦場になってくるかもしれません。
新型コロナウイルスをめぐる各国のハイブリッド戦争