2020年8月28日金曜日

我が国の「敵地攻撃論」について ~政府の思惑の本音はまず法整備か?~

平和が続く日本で高まる「敵地攻撃論」の想像以上の危うさ

 田岡俊次
© ダイヤモンド・オンライン 提供 日本のミサイル防衛は、弾道ミサイルに対して、イージス艦の「SM3」ミサイルや航空自衛隊の「ペトリオットPAC3」(写真)で迎撃する体制 出典:航空自衛隊ホームページ


 815日の全国戦没者追悼式で天皇陛下は「終戦以来75年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき誠に感慨深いものがあります」と述べられた。
 第2次世界大戦以後の75年間、世界各地で戦争、内乱、軍のクーデターなどが絶えず、ほとんどの国が戦争をしてきたことを思えば、日本が平和を維持してきたのは例外的で慶賀すべきことだ。
 だが一方でそのために、戦争を現実に起こり得るものとして、具体的に考える能力を欠き戦争の危険を軽視する「楽観的防衛論」が台頭する要因にもなっている。

戦後75年間、平和を謳歌 直接戦闘を回避できてきた日本

 米国は1950年に始まった朝鮮戦争以後、戦争をしなかった年はまれだ。アジア、中南米、中東・北アフリカ、バルカン半島に出兵して戦い続け、その同盟国、友好国も協調出兵を迫られた。
 朝鮮戦争では米軍、韓国軍側を支援して英、仏、カナダ、豪州など15カ国も参戦、北朝鮮軍、中国軍と激戦し、ソ連も技術者、教官などを派遣した。米国の占領下にあった日本からは海上保安庁の掃海艇が米軍の上陸地点で機雷除去を行い、1隻が爆沈した。
 ベトナム戦争では1964年から本格的に南ベトナムに出兵した米軍側に韓国、豪州、タイ、フィリピン、ニュージーランド軍が加わり、北ベトナム側には中国、ソ連は対空部隊や多数の技術者などを送り込んだ。

 1991年の湾岸戦争では米軍主体の多国籍軍に英、仏、伊、カナダやエジプト、シリアなど14カ国軍が加わり、他にソ連を含む18カ国が多国籍軍への非戦闘支援を行い、日本も停戦後にペルシャ湾に掃海艇を派遣した。

 2001年に米、英が行ったアフガニスタン攻撃は長期のゲリラ戦となり、米軍主導の国際治安維持部隊(ISAF)には北大西洋条約機構(NATO)の28カ国の他に、非加盟国のスウェーデン、フィンランドなど15カ国も加わった。日本は補給艦、護衛艦を派遣、8年間米国などの艦艇に給油を行った。

 2003年に始まったイラク戦争では米、英、豪、ポーランド軍が侵攻したが、その後の治安維持に42カ国が参加。日本も陸上自衛隊約600人、C130輸送機を出し、学校、道路の補修や医療支援を行い、輸送機は米兵の輸送も行った。
 補給や占領地での民衆の懐柔も戦争で重要な要素だから日本もその一端を担ったが、直接の戦闘は辛うじて避けられたから、日本は「75年間平和を保った」と言うこともできなくはない。

陸上国境、人種や宗教対立なく 一方で「楽天的な防衛論」

 世界で大多数の国が近隣諸国との武力紛争や独立戦争、内戦、海外派兵などで、多数の死傷者、難民を出し、経済、財政に重大な損失を招いてきた中、日本がほぼ3世代戦禍を免れてきたのは、いくつかの要因が考えられる。

1)島国で陸上国境がないため紛争が起こりにくいこと
2)世界的制海権を持つ米国に占領され、その同盟国となったため他の国の侵攻を受けにくいこと
3)人種、宗教間の対立が少ないこと
4)憲法による規制があり、第2次世界大戦での惨敗、それを招いた軍の横暴の経験から、国民に戦争、軍事問題に対する忌避感が強かったこと――などだ。

 日本が平和を謳歌し繁栄したのは結構この上ないが、その結果、戦争はめったに起きないように感じ、戦争の危険を軽視した楽天的な防衛論が台頭することは寒心に堪えない。
 その一つは北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対処するため、敵のミサイル基地を攻撃する能力を持つべきだとする「敵基地攻撃論」だ。

「敵地攻撃論」の非合理 ミサイル「発射」の把握困難

 敵ミサイル基地攻撃を唱える人々の主張には、軍事知識や戦争の現実についての認識の「欠落」がある。
 小銃射撃や砲撃でも、攻撃をするには目標の位置を知ることが不可欠であるのは自明のことだが、敵基地攻撃を唱える人々は「どのようにして相手のミサイルを探知するのか」を考えていない様子だ。
 偵察衛星は地球をほぼ南北方向に約90分で周回する。地球は東西方向に自転するからおよそ1日に1回、世界各地の上空を高度200キロ程度、時速約29000キロで通過する。
 カメラの首振り機能を生かしても北朝鮮を撮影できるのは1日に数分でしかない。夜間や雲がある場合には光学カメラは使えないから、精密レーダー衛星があるが、解像度は劣る。
 偵察衛星は飛行場や造船所など、固定目標を撮影するには有効だが、移動目標を探知し、監視するにはほとんど役に立たないのだ。

 米軍は光学カメラを搭載した光学衛星5機、レーダー衛星7機(他に実験中の小型衛星5機)を持つ。日本は光学衛星2機、レーダー衛星5機を持つが、故障しているものもあり、実質的には計5機と思われる。
 常時監視をしようとすれば偵察衛星が数分置きに1地点上空を通るよう、百数十機を上げておく必要がある。

「静止衛星で見張れるのではないか」と言う人も少なくないが、それも不可能だ。
 静止衛星は地球の直径の3倍に近い高度約36000キロで赤道上空を周回する。この高度だと衛星の速度と地球の自転の速度が釣り合って、地球から見て止まっているように見える。だから電波の中継などには活用されるが、この距離からはミサイルのような小さい物体を撮影することは不可能だ。
 弾道ミサイル発射の際に出る大量の赤外線は探知できるから、「発射」の第一報を出し、ミサイル防衛(迎撃)には有効だが、敵基地攻撃の役には立たないのだ。

ミサイルの「破壊」も難しい 移動式や即時発射能力向上

 北朝鮮の弾道ミサイルは移動発射機に搭載し、北部の山岳地帯などのトンネルに隠され、燃料を注入したまま待機できる「貯蔵可能液体燃料」を使用、新しい物はさらに即時発射が可能で、移動も楽な固体燃料になってきている。
 これはトンネルから出てきて、ミサイルを立て、発射まで15分程との推定もあるから、ジェットエンジン付きの大型グライダーのような「グローバル・ホーク」など無人偵察機を北朝鮮上空で常に旋回させてもトンネルから出て来たところを攻撃することも困難になっている。
 しかも北朝鮮は、旧ソ連製の「S200」や国産の「ボンゲ(稲妻)5」など高度3万メートルに達する対空ミサイルを持っているから、偵察機が上空で旋回していれば撃墜される公算が大きい。

 隠れている弾道ミサイルを発見、破壊するのは米軍にも容易ではない。
 1991年の湾岸戦争ではイラク軍の「アル・フセイン」(スカッド改)弾道ミサイルに対し、米軍は1日平均64機を「スカッド・ハント」に投入、発射地域の上空で監視、攻撃させたが、イラクは停戦の2日前までイスラエルや米軍基地にミサイル発射を続けた。
 停戦後に米軍が調べると、空軍機が破壊したと報告したのは、実はカラのミサイル発射機やトラックなどだったことが分かった。
 発射前に破壊できたのは、夜間に特殊部隊を運んでいたヘリコプターが偶然ミサイル発射の火柱を目撃、そちらに向かってみると、もう一発が発射準備中だったため、ヘリコプターのドアからの機銃射撃で壊した例だけだった。
 その後、約30年間で対地攻撃用の精密レーダーや赤外線探知装置の性能は進歩したが、他方で弾道ミサイルの機動性や即時発射能力も飛躍的に向上したから、その破壊は容易ではない。

 日頃の偵察衛星の画像や通信傍受で弾道ミサイルの展開地域は分かっても、攻撃するには精密な地点の緯度、経度のデータが必要だ。
 特に山腹のトンネルに隠されると、出入り口は分かってもダミーも多いし、トンネルが地下でどちらに曲がったり、枝分かれしたりしているかは分からない。地中貫通用の大型爆弾でも数十メートルの深さにしか届かないから、山の上空から攻撃するのは困難だ。
 敵基地攻撃を唱える人々は、北朝鮮の「テポドン」の発射のテレビ映像などを見て、それをミサイル基地だと思っている人も少なくないようだ。
「テポドン」は高さ65メートルもある巨大な櫓の側で、何週間もかけて組み立てられ、北朝鮮はその発射を事前に公表している。

 201212月と162月の2回、人工衛星と称する物体を周回軌道に乗せることに成功したが、衛星は故障したのか電波は出ていない。
「弾道ミサイルと人工衛星打ち上げ用のロケットは技術的には同じ」と言われることが多いが、これは「大型旅客機と戦闘機は基本的には同じ」と言うような粗雑な論だ。
 1957年にソ連が初の人工衛星を打ち上げ、翌年に米国もそれに続いて競い合った時代には、双方とも軍用のミサイルを転用した。だがそれ以来60年以上の歳月に、弾道ミサイルと人工衛星用ミサイルは別の方向に進化した。

 弾道ミサイルはたて穴に入れるか、潜水艦や車両に積んで移動するからなるべく小型にすることが望ましく、即時発射機能が必要だ。米国の主力ICBM「ミニットマン」は固体燃料を使い全長18メートル、重量35トンになった。
 一方、人工衛星は大型の反射望遠鏡やレーダー、送信機など多くの電子装備を搭載、寿命を長くするため大量の姿勢制御用燃料も積みたいからどんどん大型化し、「スペース・シャトル」は2000トンを超す大型となった。人工衛星を打ち上げる場合は、即時発射の必要はないから推力の強い液体燃料が使われた。
「テポドン」のように全長が10階建てのビル並みの30メートル、重さは80トンもあり、移動も即時発射もできないものは、戦時では簡単に破壊されるから弾道ミサイルの適性を欠く。現実にいまは人工衛星の打ち上げに使用されている。

日米韓の連携どこまで 北朝鮮への抑止効果は疑問

 米軍、韓国軍との密接な情報交換で、移動発射のミサイルが山腹のトンネルなどから出て来た位置をつかんで攻撃できるようなことを言う自衛隊幹部もいる。
 だが、もし米、韓国軍がその情報を得れば、11秒を争うからただちに自分が攻撃するはずだ。日本に教えて手柄を譲ることはないだろう。
 また自衛隊が巡航ミサイルによる攻撃を朝鮮半島で行う場合には、味方討ちや誤爆を避けるために米韓合同司令本部の許可が必要だ。韓国軍がそれを歓迎することも考えにくい。
 また敵基地攻撃を唱える人々は「外国がいままさに日本に向けてミサイルを発射しようとしている際には、それを攻撃するのは自衛権の行使に当たる」と言う。
 法的にはそれにも一理はあるが、仮にミサイルの発射準備が行われていることを知っても、それが日本に向けて発射されるのか、単なる日常の訓練か、海に向かって試射するのか、他の国を狙うのかは、まず分からない。
 日本がミサイル攻撃を受けた後に、平壌などの固定目標に巡航ミサイルを発射するなら可能だが、核ミサイル攻撃の能力を持つ相手に、火薬弾頭の巡航ミサイルなどで対抗するのは破壊力が段違い。大砲に対して弓矢で立ち向かうようで抑止効果は無きに等しい。

購入予定だった「SM348発は イージス艦搭載が効果的

 いまの日本のミサイル防衛は、弾道ミサイルに対して、イージス艦の「SM3」ミサイルや航空自衛隊の「ペトリオットPAC3」で迎撃する体制だが、完全な防衛とはならず、突破される公算が大だ。
 それでも飛来する弾道ミサイルの一部でも阻止できればその分だけ被害が減じるという、せめてもの効果は期待できる。ただ現状はミサイル防衛は実は形だけのものと言わざるを得ない。
 近く8隻になるイージス艦は、各艦の垂直発射機に90発ないし、96発のミサイルが入り、対航空機用ミサイル16発、対潜水艦ミサイル16発を積んでも、「SM3」ミサイルを58発ないし64発収納できる。
 だが1発約40億円もするから、各艦はそれぞれ8発ずつしか積んでいない。北朝鮮は核付き弾道ミサイルを約20発、火薬弾頭付きは約200発持つと推定されている。
 相手が核付きと火薬弾頭付きの弾道ミサイルを交ぜて発射してくれば、日本のイージス艦は最初の8発だけに対処すれば、「任務終了、帰港します」とならざるを得ない。
 短射程の「ペトリオットPAC3」も同様で、34両の移動式の発射機には各16発を積めるが4発しか搭載していない。
「イージス・アショア」は、イージス艦と「PAC3」の体制に加えて、秋田と山口の2カ所に配備する計画だった。
 費用は米国への支払いが4614億円、その「SM3」ミサイルが48発で約1900億円、日本側の用地買収、施設建設を含むと7000億円以上かかるとみられていた。
 その計画は中断されたが、ミサイル48発だけは買い、交代で日本海などに出動して警戒配置につく2隻のイージス艦に24発ずつ追加搭載させれば、1隻で計32発を積むことになり、ミサイル防衛能力は一気に4倍になる。

具体的に考える能力欠如 法律整備に傾いてきた議論

 以上のことを考えれば、イージス・アショア計画を中断したから、代わりに全く役に立たない「敵基地攻撃能力」を保有しようとするのは、非合理なことが明らかだ。
 日本人は幸い75年も平和の中に暮らし、軍事問題から目を背けてきたため、戦争を現実に起こり得るものとして、具体的に考える能力を欠いている。
 しかも憲法問題があったから、防衛政策の論議は、憲法の規定との整合性や専守防衛の解釈などに偏ることになり、軍事知識を必要としない法律論に傾いてきた。
 これは、あたかも企業が新事業に乗り出すか否かを役員会で討議する際、技術的な難点や市場、資金、採算などを論じるよりも、会社の定款に合致するかどうかを議論するような格好だ。
 だがこうした防衛に関する現実感の欠如は、防衛の専門家と思われている人や自衛隊の幹部にも見受けられる。

 防衛庁はテポドン登場当初には詳細が分からないから「弾道ミサイル実験」と称し、いまもそれを変えずにいる。
 だから防衛政策に関与する国防族のなかからも、北朝鮮の西海衛星発射場の映像を見て「ミサイル基地を攻撃して潰せる」との甘い考えを抱く議員も出るのではないか。
 西海発射場は米国のケネディ宇宙センターの廉価版のような施設だから、それを叩いても相手のミサイル戦力を奪えるわけではない。

 航空自衛隊は対地攻撃の訓練を三沢の射爆場で行っているが、定まった位置にはっきり見える標的を設置して行うから、どこに隠されているか不明確な目標を探して攻撃する困難さの実感がなく、攻撃兵器さえ充実すればミサイル陣地を破壊できるように感じているようだ。
 海上自衛隊も護衛艦、潜水艦から発射する巡航ミサイルを欲しがるが、相手の移動式ミサイル発射機がトンネルから出て来てごく短時間で発射するなら、こちらが洋上から巡航ミサイルを発射しても間に合わない。
 このため「巡航ミサイルは北朝鮮のミサイルに対しては役立たないとしても、中国軍の基地などの固定目標攻撃に効果がある」との説も出る。
 だが尖閣諸島を巡って戦争が起きれば、仮に一時的に日本が優勢になったとしても「尖閣戦争」でおさまらず、真珠湾攻撃で日米戦争が始まったのと同様、日中全面戦争の第一幕となる公算が大きいことを考えておかねばなるまい。(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)


ここからは管理人のコメント

確かに理解できる「敵地攻撃論」
 北朝鮮が我が国方向にミサイルを発射するたびに悶々とする思いをされている方は私だけではないかと思います。
 いいようもない不安感が小さくないですし、なんとか発射基地を何とかならないものか、と思います。はっきりいってうっとうしいことをしてくれますよね。

 だからこそどうしたら北朝鮮の外交の切り札の一つであるミサイルを「無力化」し、飛ばせないようにするか、具体的な戦略を検討しながら法整備をしていかなくてはならないと思います。つまり「超限戦」の戦争スタイルでしかけてくるこの時代に、自衛隊まずありきの戦略だけ細切れで検討しても意味がないということ。

 例えば北朝鮮の脅威は、ミサイルだけではありません。

北がサイバー攻撃再開 米FBIが警戒喚起


【ワシントン=住井亨介】米連邦捜査局(FBI)や国土安全保障省など米政府4機関は26日、北朝鮮が今年2月以降、複数の国の金融機関にサイバー攻撃を再開しているとして警戒を呼びかけた。攻撃は昨年末から止まっていたという。
 4機関の発表によると、サイバー攻撃を行っているのは、米当局から「ビーグルボーイズ」と呼ばれるハッカー集団で、北朝鮮の対外情報工作機関「軍偵察総局」の傘下にあるとみられる。同局管理下にあり、2019年に米国から制裁指定されたハッカー集団「ラザルス」などと共通点があるという。
 ビーグルボーイズは遅くとも14年には活動を始め、15年以降、日本を含む約40カ国・地域の金融機関を標的として約20億ドル(約2120億円)を詐取しようとした。
 4機関は、今年2月以降の被害状況については示していないが、不正に入手された資金について「北朝鮮が核兵器や弾道ミサイル開発につぎ込む可能性がある」と指摘した。

管理人の意見です。
 これ読んだときに、背筋が寒くならない人は相当に鈍感体質でしょう。金融機関へのハッキングにより、人が直接亡くなることはないでしょうが、銀行などに預金してある財産がまるごとハッキングで窃取されてしまえば、人々の生活、経済活動に大きな支障が確実に出ます。中には財産が亡くなって自殺する人も出るかもしれません。
 しかもこサイバー攻撃は攻撃者優位で、ハッカーの任意で世界中のオンラインとサーバーを使ってハッキングが可能です。

 これって「侵略戦争」ではないんでしょうか?
 十分「敵地攻撃論」の議論に含めていける、想定できる事態じゃないでしょうか?
 敵地を攻撃することは、憲法上可能ということは政府の解釈ですが、叩くのはミサイル基地だけではなさそうです。また叩き方、戦い方も時代の推移により検討すべきでしょう。

 今や地球の静止衛星軌道上の人工衛星のプログラムにハッキングできる時代です。核兵器は直接都市を攻撃するより、上空で爆発させて電離層を破壊、都市機能をマヒさせることもできますし、その方が対抗する国への政治的優位性を確保しやすい。(電磁パルス攻撃)

 「超限戦」の戦争形態をとる国は共産中国だけではありません。例えば2014年のロシア。クリミア自治共和国への「侵攻」戦争の主武器は、軍事力ではありません。ハッキングとフェイクニュースという新たな武器です。2016年アメリカ議会で明らかになった侵攻形態は以下のようなものです。

ロシアがウクライナにしかけた「ハイブリッド戦争」

①ウクライナ軍のレーダーを使用不能にする。(電子戦)
②ハッキングで発電所、メディアの機器をコントロールする。(サイバー戦)
 GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自己の位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状況にされた。
 さらにウクライナ軍の砲弾の信管を作動不能にした。
③携帯電話を一時的に使用不能にして、機能が回復した時には数多くのフェイクニュースをメール等で大量に送信した。

 これによりウクライナ住民は大きく混乱し、錯綜した情報を与えられた市民によるデモ隊(偽装したロシア軍兵士)がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源がおちてしまう事態が発生する。停電状態の中、頼みのラジオ局もデモ隊に占拠された状態になり、ラジオからはフェイクニュースが流し続けられた。

 ロシア軍の軍事力を前面に出しての侵攻ではなく、軍は偽装して、電子戦、サイバー戦、宣伝戦でメディアをコントロールして戦争目的を達成したわけです。

共産中国による尖閣諸島への侵攻
【戦後75年】令和2年8月15日・沈黙の日の丸行進~英霊に感謝し、靖國神社を敬う国民行進[桜R2/8/16]


ご存じ我が国の伝統を守るために日夜戦い続けてくれるチャンネル桜さんが主宰する団体運動ですが、この中で尖閣諸島侵攻について、これからくる的な発言をされています。

これ認識が違います。共産中国による尖閣諸島侵攻はもう始まっています。
多くの日本人が周知するように尖閣諸島は「国有化」されています。これは共産中国からすれば、「日本による尖閣諸島の法的な侵略」なんです。

彼らはこれに対して断固「中国の主張」を通してきています。
まず漁船が大挙して尖閣諸島付近の近海へ出現。尖閣諸島は日本に「占領」されているため、漁船の保護監視を目的に中国海警の巡視船がきますが、実際は漁船を統率しています。漁船の出漁+巡視船により、尖閣諸島周辺海域を面的に抑えて、日本側の漁船を締め出します。その締め出しも中国側がするのではなく、尖閣周辺海域を危険海域とみなした海上保安庁が日本側漁船を遠ざけてくれます。

周辺海域を抑えれば、これは日本人は気づいていませんが、潜水艦が尖閣海域に潜航してきますね。夜陰にまぎれて資材や人員を運び込むこともできますし、侵攻の手順の選択肢が増えるでしょう。

あとは定時巡回してくる海保の巡視船と沖縄からスクランブルしてくる空自の戦闘機にどう対処するかです。これも海保の巡視船は、漁船保護を理由に、中国海警巡視船に偽装した軍用艦艇が活躍するんじゃないかな?
 
空自の戦闘機は、中国本土から軍用でない航空機をとばして、空自の対応をみながら戦闘機や爆撃機を送ってくるように思います。制海権と制空権をまずとるわけです。そして現在は制海権は共産中国に抑えられているように思います。

デモを否定するわけではありませんが、もっと訴えるなら今どきの侵略戦争について語ってほしいと思いました。「敵地攻撃論」など国会で議論するのが無駄だとはいいませんが、今どきの「ハイブリッド戦争」や「超限戦」の侵略に対して、自衛隊がどう対処するのか、国民がどういう認識の下で、国防を固めていくのか、の議論をベースに国防戦略を固めるべきでしょう。

戦争の形態、戦略は日々進化しています。仮想敵国の政治や経済をコントロールするために、あらゆる戦術をしかけてくるでしょう。核兵器を使って仮想敵国を焦土化するような戦争は今や過去のやり方であり、世界がグローバル化した世の中にあわせた戦争の形があるのです。そこをふまえた議論をお願いします。

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戦争はいずれ宇宙覇権を取り合うような戦争になっていくでしょうね。宇宙空間とサイバー空間をめぐる戦争が主戦場になってくるかもしれません。
新型コロナウイルスをめぐる各国のハイブリッド戦争




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