2020年10月4日日曜日

21世紀の侵略戦争の一例 ~「ハイブリッド戦争」の実態~

  2016年のアメリカ議会で明らかになったことであるが、2014年にウラジミール・プーチン大統領率いるロシア連邦が、黒海北部に突き出したウクライナ領であるクリミア自治共和国に侵攻しました。

 マレーシア航空の旅客機がウクライナ上空でロシア軍の地対空ミサイルブークに撃墜され、多くの乗客がなくなり、その犠牲者の中には幼い子供たちが多くいたことから、未だ記憶に新しい事件であろうと思います。このマレーシア航空機の撃墜事件もウクライナという国の政治的信用を貶めるためのロシア側の自作自演といえるでしょうが、ロシアの論理からすれば、みえすいた戦略を使ってまでほしいエリアがクリミア自治共和国であったということでしょう。

 このロシア連邦が隣国ウクライナに対してしかけて領土の一部をかすめとった侵略戦の顛末をみながら、核兵器が兵器として使えない時代の対外戦の在り方、現代における侵略戦争がどういう形であるのか、について考えていければ幸いと考えております。

① ロシア軍が「電子戦」において、ウクライナ軍のレーダーを使用不能にする。

② ハッキングで発電所、メディアの機器、を乗っ取る。

GPSが使えなくなった偵察用のドローンは自分の位置を評定できなくなり、地上へ降下したまま動かせない状態にされてしまった。

③ ロシア軍がウクライナ軍の砲弾の電子信管を作動できなくする。また携帯電話を一時的に使用不能にして、機能が回復した時には、数多くのフェイクニュースをメールなどで大量に配信する。 ~これによりウクライナの住民は混乱へ陥ることになった。

④ 錯綜した情報を与えられた市民によるデモ隊がインフラ設備に押し寄せ、占拠することによって、電源が落ちてしまう事態も発生する。停電状態の中で、ラジオ局もデモ隊に占拠された状態となり、ラジオからはフェイクニュースが流し続けられました。

 後にラジオ局などインフラ設備を占拠したデモ隊は、実はロシア軍であることが判明している。かくしてロシア軍はウクライナから「クリミア自治共和国」の主権を奪うという戦争目的を達成したのである。

ハイブリッド戦争の本質

 「ハイブリッド戦争」を簡潔に表現すれば、サイバー攻撃により国家機能を麻痺させ、その間に特殊部隊などによって、政治経済の中枢部、都市部でのインフラ設備などの重要施設を迅速に占領してしまう戦争形態であるといえる。

 従来的な情報と火力の優越によって敵を撃破する、という段階から発展し、敵の情報と火力を機能させず、相手国民を混乱させ、正常な判断ができない状態にして戦争目的をはたす新たな戦争形態が出現したのである。

 この「ハイブリッド戦争」という戦争形態は、大量の人的犠牲を伴うことはありません。例えば、化学兵器工場の破壊、テロ組織主要幹部の殺害、一部の地域のみを占領するといった限定的な戦争目的ならば多くの損害を出さずとも迅速に達成できるはずです。

 そのため今までよりも戦争をおこすハードルが低くなる可能性がある。「ハイブリッド戦争」に対応するためには、宇宙からの攻撃やサイバー攻撃への対応機能を整備するとともに、相手国に狙われやすいインフラ設備などの重要施設を防護することもこれまで以上に重要になってきています。


ウクライナ危機で凄惨を極めた戦場の真実/映画『ウクライナ・クライシス』予告編 https://www.youtube.com/watch?v=wKjLg92h7Yo

ついにロシアのウクライナ侵攻が映画化されました。新しい戦争の形がどういうものなのか、自衛隊の装備を最新にしておけばよし、と考えている方は認識を改めるべきでしょうな。

他動画編

ロシアのクリミア併合から3年。


マレーシア航空機撃墜事件 ~オランダ安全委員会調査~

ウクライナ出身でロシアの侵攻を体験した方の講演

















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