ロシアのサイバー攻撃の恐ろしさ
2017年3月30日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9194
ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、2017年2月23日付の同紙で、ロシアの情報工作が西側民主主義にとって深刻な脅威となっていることを警告しています。要旨は次の通りです。
ロシアのハッカーが米大統領選に介入
2017年1月6日の米国情報機関の報告によれば、「ロシアは、ヨーロッパ全域の選挙に影響を及ぼそうとしている」。米国の大統領選挙への干渉は、ロシアの大規模な隠密行動の一部である。そこでは、トランプ陣営は恐らく道具だったのである。放置すれば、西側民主主義に対する「存在に関わる脅威」となるとフランスの駐米大使ジェラール・アローは言う。
トランプ陣営とロシアの関係が、FBIと議会の調査で解明されることを希望する。そのことが、ロシアが侵入を企てる大西洋を跨ぐ政治的空間を回復する努力を後押しすることになる。米国と同盟国は結束する必要がある。
ロシア人は情報空間における達人である。彼等の情報機関はヨーロッパと米国に小細工を仕掛けるために「偽ニュース」と盗んだ情報を一世紀以上にわたって使って来た。過去との違いはデジタル技術によって事実という風景を変えることが可能になったことである。
大統領選挙への介入はロシアの情報工作の「新常態」の合図であると2017年1月6日の報告は述べている。「ロシアは大統領選挙を標的とするキャンペーンから得た教訓を今後の米国および世界における情報工作に応用するであろう」。
9月にはドイツの議会選挙が行われるが、ロシアのサイバー攻撃があり得る、連邦議会自体が標的になり得るとドイツ政府は警告している。2016年5月と8月の連邦議会と政党に対するサイバー攻撃にはロシアが直接的に関与したことが報告されている。連邦情報庁のカール長官は「犯人は民主的プロセスの正当性を損なうことに関心を有する」と述べている。サイバー攻撃の他にも、ドイツにはモスクワを代弁する多数のビジネス関係者が存在する。
フランスの大統領選挙もロシアにとってのチャンスである。2014年にモスクワを本拠とする銀行がルペンの政党に融資をしたことがある。ルペンは大っぴらに親ロシアである。2015年4月にテレビ局に対する大掛かりなハッキングがあったが、背後にロシアの存在があったと見られている。2016年10月にはフランスの情報機関が政党に対しハッキングの脅威を説明している。反ロシアの有力候補であるエマニュエル・マクロンについて噂話が出回っているが、ロシアの関与が疑われている。マクロン陣営の幹部は陣営のウェブサイトに対する攻撃はロシア国境の方角から来たものだと述べた。ロシアのプロパガンダ機関はマクロンがホモだという話を流したことがある。
ハッキングの問題は「策略」だとトランプは先週言ったが、そうではない。それはロシアが政治を妨害する手法である。彼等はそのことに長けている。もし、米国と同盟国が抵抗しなければ、ラブロフ外相のいう「脱西側」の時代が本当にやって来る。
出 典:David Ignatius ‘Russia’s assault on America’s elections is just one example of a global threat’(Washington Post, February 23, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/russias-assault-on-americas-elections-is-just-one-example-of-a-global-threat/2017/02/23/3a3dca7e-fa16-11e6-9845-576c69081518_story.html?utm_term=.d71185f9b0a9
出 典:David Ignatius ‘Russia’s assault on America’s elections is just one example of a global threat’(Washington Post, February 23, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/russias-assault-on-americas-elections-is-just-one-example-of-a-global-threat/2017/02/23/3a3dca7e-fa16-11e6-9845-576c69081518_story.html?utm_term=.d71185f9b0a9
ロシアがヨーロッパと米国に一世紀以上も前から情報工作を仕掛けていたということは知りませんでしたが、今や、デジタル技術によって高度化したその工作が常態化した「新常態」の時代に我々はあるのだと、イグネイシャスは強く警告しています。ロシアの選挙介入によって米国社会が混乱する危険があったことを考えれば、彼の危機感には理由があると思われます。米国と同盟国は結束して防御に当たるべきでしょう。
偽ニュースの流布
フランスではエマニュエル・マクロンがロシアの工作の対象とされている可能性があります。マクロン陣営のスポークスマンは「ロシアは非常に簡単な理由でフィヨンとルペンを選択した。彼等は強いヨーロッパを望んでいない。弱いヨーロッパを望んでいるのだ。従って、国営メディアを通じて二人を後押ししている」と非難しました。マクロンはホモだという噂がSNSを通じて流布されていたらしいですが、ニュースサイトSputnikがマクロンはゲイのロビーの支援を受けているという共和党議員のインタビュー記事を掲載したことが引き金になったようで、2017年2月6日、マクロンは「(もしマクロンがホモだという話を聞いたなら)それは逃げ出したホログラムに違いない、自分である筈はない」と集会で否定したそうです。
「偽ニュース」の流布に対しては西側社会には相当の抵抗力があると思いますし、そもそもロシアに止めさせることが可能とも思われませんが、民主党全国委員会のコンピューターへの侵入のような妨害・破壊工作の類は阻止されなければなりません。ロシアを念頭に置いたサイバーセキュリティの協力を始めるとすれば、米国の主導に俟つことになるでしょうが、トランプに持ちかけられる性格の事案ではないのでしょう。トランプとの関係でデリケートではありますが、ティラーソンやマクマスターに提起してみることが考えられないでしょうか。
《維新嵐》さらにロシアによるSIGINTによるインテリジェンス戦略をみていきましょう。
米国家情報長官、ロシアによるサイバー攻撃の根拠提示を約束
ジェイムズ・クラッパー米国家情報長官は2017年1月5日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、ロシアによるサイバー攻撃がウラジーミル・プーチン大統領の指示の下で行われたとする根拠を、来週提示すると約束した。しかし、クラッパー長官は「戦争行為」だったとの見方を示すには至らなかった。
ロシアは、米大統領選に影響を及ぼす目的で民主党全国委員会などをハッキングしたとの見方を否定しているが、米国は報復措置としてロシア政府高官に対する制裁を発表している。
米情報機関は5日に、ロシアによるサイバー攻撃に関する報告書をオバマ大統領に提出した。
ドナルド・トランプ次期米大統領への報告は6日に予定されている。機密情報を除いた報告書の内容は来週公表される予定。
米情報機関は、ヒラリー・クリントン前国務長官よりトランプ氏の大統領就任が望ましいと考えたロシア政府が大統領選に介入したとみている。
クラッパー長官は公聴会で、サイバー攻撃がプーチン大統領の指示によるものだったか、との議員の質問に対し、「指示があったと考えている」と述べた。
同長官は、ロシアが「複数の方法」を使って介入したと述べ、「従来のプロパガンダや虚偽情報、偽ニュース」が主な手法だと語った。
情報機関が共同で軍事委員会に提出した証言文では、ロシアには先進的なサイバー攻撃体制があり、米国の権益を幅広く損なう脅威になっていると指摘した。
証言文は、「ロシアは、米国の政府、軍、外交、商業、重要インフラの各方面で脅威となる、全面的なサイバー空間の行為主体になっている」と述べた。
証言文には、クラッパー長官のほか、国防総省のマーセル・レター次官(情報担当)、国家安全保障局マイケル・ロジャース局長が名前を連ねた。
公聴会の冒頭に発言したジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は、公聴会の目的は「大統領選挙の結果に疑義を呈すること」ではないと述べた。
クラッパー長官は、ロシアの介入によって「票数といったようなことが改ざんされたとは言えない」とし、ロシアの動機は複数あった可能性もあると語った。同長官は、「選挙での選択に対する(中略)影響は、計測できるものではない」と述べた。
マケイン議員がロシアの介入は「戦争行為」かと質問したのに対し、クラッパー長官は、「非常に重い政策的な判断であり、情報機関がすべきものとは思わない」と答えた。
トランプ氏は、クリントン氏の選挙運動で委員長を務めたジョン・ポデスタ氏や民主党全国委員会のコンピューターをロシア政府がハッキングしたとの見方を、繰り返し否定してきた。
過去数カ月間、ロシアの介入を指摘する情報機関の言い分に反論してきたトランプ氏は5日に、自分は情報機関の「大ファン」だと語った。
トランプ氏は先週、ハッキング疑惑に関する情報を「火曜日(3日)か水曜日(4日)」に発表するとしていたが、発表は行われなかった。
国土安全保障省は先月末に、ロシアが米大統領選に影響を及ぼそうとしていたと指摘する報告書を発表している。
オバマ政権はさらに、ロシアの外交官35人を国外退去処分とし、ロシアの情報機関が米国内で使用していたとされる2施設を閉鎖した。
しかし、リンジー・グレアム上院議員(サウスカロライナ州選出)は公聴会で、オバマ大統領が取った措置は不十分だと述べた。同議員は、「今投げるべきなのは、小石ではなく、岩だ」と語った。
トランプ氏の政権移行チームは5日、米メディア各社に対し、トランプ氏が次期国家情報長官に元インディアナ州上院議員のダン・コーツ氏を指名すると明らかにした。
《維新嵐》そしてロシアによるサイバー攻撃だということがバレましたね。
ロシア軍の情報機関、米投票システムにハッキングか?
2017年6/6(火) 10:19配信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170606-00000010-jij_afp-int
【AFP=時事】ロシア軍の情報機関に所属するハッカーらが2016年の米大統領選の投票日直前まで、米国の投票システムへ繰り返し侵入を試みていたことが明らかになった。米国家安全保障局(NSA)の機密報告書を入手した米調査報道サイト「インターセプト(Intercept)」が2017年6月5日報じた。
報告書は、ロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)と密接な関係がある作戦について記述。作戦では米国の民間企業を標的とし、2016年11月8日の大統領選投票日の数日前まで、数か月にわたって有権者登録のシステムや機器にハッキングを仕掛けていたという。
インターセプトによると、報告書ではハッカーらの活動が実際に大統領選に影響を与えたのか、目的が達成されたのかについては触れていない。
大統領選ではドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が大方の予想を裏切って勝利した。米情報当局者らはこれまで、ハッカーらによる影響はなかったとの見方を示してきた。
だがNSAはこの報告書で、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が、大統領選でトランプ氏が有利になるようにハッキングや偽情報の流布などを指示したとする米側の主張について言及。
「ロシアの軍参謀本部情報総局のアクターらが、2016年8月に米国企業に対してサイバー諜報作戦を行った。それは明らかに選挙に関連するソフトウエアやハードウエアの情報を入手するためだった」と述べている。
その後、手に入れた情報を用いて、米国の地方自治体を狙って有権者登録に関する内容を装ったフィッシング詐欺を行った可能性が高いという。
米大統領選へのロシアの干渉をめぐっては、プーチン大統領が疑惑を否定したばかりだった。【翻訳編集】 AFPBB News
インターセプトによると、報告書ではハッカーらの活動が実際に大統領選に影響を与えたのか、目的が達成されたのかについては触れていない。
大統領選ではドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が大方の予想を裏切って勝利した。米情報当局者らはこれまで、ハッカーらによる影響はなかったとの見方を示してきた。
だがNSAはこの報告書で、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が、大統領選でトランプ氏が有利になるようにハッキングや偽情報の流布などを指示したとする米側の主張について言及。
「ロシアの軍参謀本部情報総局のアクターらが、2016年8月に米国企業に対してサイバー諜報作戦を行った。それは明らかに選挙に関連するソフトウエアやハードウエアの情報を入手するためだった」と述べている。
その後、手に入れた情報を用いて、米国の地方自治体を狙って有権者登録に関する内容を装ったフィッシング詐欺を行った可能性が高いという。
米大統領選へのロシアの干渉をめぐっては、プーチン大統領が疑惑を否定したばかりだった。【翻訳編集】 AFPBB News
《維新嵐》プーチン氏はとんだくわせ者ですな。もっともサイバー攻撃を公表するおバカはいませんから、「常識的」な方とはいえますがね。
アメリカへのサイバー攻撃をプーチン氏が指示した!?
「トランプ氏当選のためロシアがサイバー攻撃」CIAが報告・オバマ大統領、退任までに調査を指示
2016年12月11日 10時02分 JST 更新: 2016年12月11日 14時28分 http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/10/trump-russia-cia_n_13555526.html
アメリカ中央情報局(CIA)は、アメリカ大統領選で共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利するように、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けたという分析結果をまとめた。ワシントンポストが2016年12月9日に報じた。
ワシントンポストに語った情報筋によると、CIAは、ロシアが明らかにトランプ氏勝利を狙って情報操作していたと結論づけているという。
「ロシアの目的は、2人の候補者のうち1人の候補者が有利になること、つまりトランプ氏当選を助けることだったとCIAが分析している」と、政府関係者がワシントンポストに語った。「これが一致した見解だ」
トランプ陣営は9日、アメリカの情報機関はその信頼性に疑問があるため、報告は信用できないと述べた。「今回の報告は、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有している、と発表したのと同じ情報源からきたものだ」と、トランプ氏の政権移行チームは声明を発表した。「選挙は史上最多ともいえる選挙人を獲得し勝利した。はるか昔に終わったことだ。今は前進し、『アメリカを再び偉大にする』時だ」
ロシアのウラジミール・プーチン大統領が、トランプ氏の大統領就任を望んでいるのは驚く話ではない。トランプ氏は選挙期間中、KGB(旧ソビエト連邦国家保安委員会)の後身でロシア連邦保安局(FSB)長官だったプーチン大統領を賞賛していた。トランプ氏はプーチン大統領を、「バラク・オバマよりも優れた指導者だ」と発言していた。
公表された漏えい情報の中で、トランプ氏と共和党に関するものはほとんど含まれていなかった。しかし一方で、クリントン氏と民主党による内部機密や個人のメール通信は多数暴露されていた。
ニューヨークタイムズによると、ロシアは共和党全国委員会を(RNC)をハッキングしたが、情報を公開しない選択肢をとったと、CIAが結論づけているという。
さらに、CIA職員は、少なくとも2州の有権者登録データベースに、ロシア政府関連のハッカー集団が、不法侵入したことを発見していた。
ハッカー集団とロシア政府との関連性は、2016年前半にCIAが把握していた。しかしトランプ氏は、ロシアの関与に関してまともにとりあっていない。今回の分析が明らかになる前から、トランプ氏はCIAの調査結果を、政治的に動機付けられたものであり、確実な証拠に基づいたものではないとして非難した。
「私はそんな話は信じません。(ロシアが)干渉しているとは思いません」と、トランプ氏は、タイム誌の『パーソン・オブ・ザ・イヤー』に選出された時のインタビューで語った。
「そんなことは笑い話にはなっても、真面目に話すことではない。私が何かをするといつでも、彼らは『おお、ロシアが干渉した』って言うんですよ」
ハッキングは、「ロシアの可能性がある。中国の可能性がある。そしてこれは、ニュージャージー州出身の人間(クリントン氏)の可能性がある」と、トランプ氏は語った。
トランプ氏は選挙運動中に行った7月27日の会見で、ロシアにハッキングを求めるような発言をしている。「ハッキングが事実なら、ロシアはおそらくクリントンの3万3000通のメールを持っている。私は彼らが持っていることを願っている」
アメリカのサーバーが別の国家にハッキングされたことを積極的に支持する発言をし、アメリカの行政機関の極めて重要な不文律を破ったこの発言は、激しい論争を呼んだ。トランプ氏は後になって、「皮肉を言っただけだ」と主張していた。
共和党首脳のミッチ・マコーネル上院院内総務は、9月の機密情報に関する説明会で、ハッキングとロシアの関係についての疑念があると表明していた。マコーネル氏は今回のCIAの分析に関して、ワシントンポストにコメントしなかった。
ワシントンポストによると、ロシアの目的がトランプ氏当選にあったことが「明白だ」とした分析は、先週アメリカ議会の説明会で、主要な上院議員に共有されている。CIA職員はいくつかの情報筋から、ロシア政府と関連のある具体的な個人名を特定している。彼らはウィキリークスに、ハッキングされた数千件のメールを提供したとみられる。
オバマ大統領は議会からの要請を受け、ロシアのハッキングに関して全面的に調査し、2017年1月の退任までに調査報告書をまとめるよう指示したと9日に発表した。議会にも報告書に関して概要説明を行う。
《維新嵐》ハッキングというありふれたサイバー攻撃により、他国の政治システムに干渉するといういわばインテリジェンス攻撃が明らかになりました。ロシアが議会制民主主義で大統領制の国だからというより、「隣国に大国は作らせない。」という基本的な戦略認識の上でなされたこととみられます。
今や先進国の間で、特に核大国の間では「実弾を伴う戦争」などおきようもありません。
いかに相手に刀を抜かせないか、という出方を知り、攻撃の出鼻をくじくような情報戦争が主流なのです。この点は現代戦略の流れとして認識しておかないといけません。まちがって核兵器を実戦に使われたら自国が終わるからです。
ロシアのハッカーは「雇われ」です。
ロシアの雇われハッカーが暗躍、カタール断交、米にも事前に相談
2017年6月12日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9843
ペルシャ湾岸のカタールとサウジアラビアやエジプトなどとの対立は一段と激化してきた。断交の引き金になったカタール首長の発言はロシアのハッカーが暗躍してフェーク・ニュースに仕立てた疑いが濃厚になったほか、トランプ米大統領がサウジなどから事前に相談を受けていたことも分かり、陰謀の様相が一層深まっている。
フリーランスのプロ
(iStock)
この問題を追っている米ニューヨーク・タイムズによると、カタール政府からの依頼で捜査をしていた米連邦捜査局(FBI)や英国のサイバー・テロの専門家は、カタール国営通信QNAのハッキングがコンピューターに外部から侵入され、「バハムト」というフリーランスのロシア人ハッカー集団によって実行されたことをほぼ突き止めた、という。
タミム首長が5月23日に軍士官学校の卒業式で行ったとされる発言が断交の直接的な引き金とされてきたが、その発言自体が仕組まれたものであったことになり、カタール批判を強めるサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)などがこのハッカー集団を極秘に雇ってハッキングさせた可能性も取り沙汰されている。
問題となったタミム首長発言は6月5日の真夜中過ぎにQNAのウエブサイトに掲載された。その内容は、カタールと米国が緊張した関係にあり、トランプ政権が短命かもしれないこと、パレスチナの原理主義組織ハマスの称賛、サウジと敵対するイランとの友好関係の推進など、GCCの一員としては驚くべきものだった。
ニュースの掲載からわずか20分後には、サウジのメディアなどで反カタール・キャンペーンが始まり、識者のインタビューを流す用意周到ぶりで、前もってカタールに対する断交の決定が準備されていたことをうかがわせている。
このロシアのハッキング集団はこれまでにもサイバー攻撃事件で再三にわたって浮上した組織。特定の人間を標的にしたフィッシング詐欺が得意なことで知られていたが、その実態は謎に包まれている。
この偽ニュースの掲載から数日後、今度はUAEのユセフ・オタイバ駐米大使のメールがハッキングされて流出する事件も起きた。同大使はトランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問と近い関係にあり、カタールがイスラム過激派を支援しているとして、ホワイトハウスに売り込んできた人物。今度は逆に、カタールが報復に出たのではないかとの憶測も呼び、さながら“サイバー戦争”の様相すらある。
知っていたトランプ
カタールを取り巻く状況に新たな事実も分かってきた。トランプ大統領は9日、サウジなどによるカタール断交について、事前に相談を受けて知っていたとし、米国の了承の下で事態が動いたことを明らかにした。
カタールは米国に、過激派組織「イスラム国」(IS)に対する空爆作戦の拠点であるアルウデイド空軍基地を提供しており、軍事的には極めて重要な役割を演じている。しかし、トランプ氏はこうしたカタールの特別の地位にもかかわらず、サウジなどの支持に回ったことになる。
トランプ大統領は先月のサウジ訪問の際、サルマン国王との個人的な関係を強化しており、国王自身からカタールの「イスラム過激派支援」について相当吹き込まれ、その時点からサウジがカタールとの関係断絶に踏み切ることも知っていたと見るのが合理的だ。
トランプ氏は断交直後からサウジ支持をツイートしたが、9日も「カタールが国家の上層レベルで過激派へ資金を提供してきた」と批判。断交は必要な措置であり、カタールがテロへの支援を止めて責任ある国家に復帰するよう要求した。
しかしこのトランプ大統領の強硬発言はティラーソン国務長官が反カタール陣営にカタールとの対話を呼び掛け、カタールに対する“封鎖”を解除するよう要求したわずか1時間後に行われた。このため、米政府内部が混乱しているのではないかとの憶測を呼んだ。
これについてホワイトハウスの高官は「大統領はテロの抑止に、国務長官は外交に重点をおいて発言しただけ」で、政策は一貫していると弁護した。一部には「グッドコップ(国務長官)、バッドコップ(大統領)の役割を演じている」(米紙)との見方もある。
しかし、ティラーソン国務長官とマティス国防長官は8日、異例なことに朝食を共にし、その後、一緒に大統領に会いにホワイトハウスに向かっており、政権の良識派が制御不能な“トランプ対策”を錬ったのではないかとも見られている。
いずれにしても今回の事態は、サイバー・テロがロシアや北朝鮮のようなサイバー国家の独占ではなく、フリーランスのハッカーに報酬を払って仕掛けることができる可能性を浮き彫りにしたといえる。カタールをめぐるペルシャ湾岸の対立は米国ばかりか、地域大国であるイラン、トルコ、イスラエルをも巻き込もうとしており、その展開から目が離せない。
《維新嵐》確かに自前でハッカーを育成するよりもベテランハッカーを雇い入れた方が人件費的には安いにかもしれませんが、そういう問題か?
アメリカは、ロシアのサイバー攻撃に最大の警戒をしています。
アメリカは、ロシアのサイバー攻撃に最大の警戒をしています。
米上院、対露制裁強化法案を可決
2017.6.15 16:57更新http://www.sankei.com/world/news/170615/wor1706150035-n1.html
【ワシントン=加納宏幸】米上院(定数100)は2017年6月14日の本会議で、ロシアに対する制裁を強化するための法案を97対2の賛成多数で可決した。ロシアの米大統領選干渉疑惑を踏まえ、露政府によるサイバー攻撃に関わった個人などに制裁を科す一方、トランプ政権が制裁を緩和する場合に議会の審査を義務付ける内容となっている。
トランプ米大統領はシリアでのイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討でロシアとの協力を模索し、制裁緩和も視野に入れている。しかし、米議会では対露強硬論が根強いことから、法案にはトランプ政権に歯止めをかける狙いがある。
イランに対する制裁を強化するための法案の一部に対露制裁の強化を盛り込む形を取った。シリアのアサド政権に対する武器の供給やロシアでの人権侵害にも制裁を科している。
法案の成立には下院での可決や、トランプ氏の署名が必要だ。ティラーソン国務長官は14日の議会証言でロシアに対する制裁強化を求める議会側の意見に理解を示しながらも、「大統領は状況に合わせて制裁を調整する柔軟性を持つ必要がある」と主張した。
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