2017年6月25日日曜日

我が国は「自主防衛」のために防衛費を増額できるのか?

日本と大違い、カナダが国防費大増額を決めた経緯

あくまでも自国防衛の必要性から導き出された増額計画

北村淳
NATO軍の任務としてウクライナ軍を指導するカナダ軍将校たち

 トランプ政権によるNATO(北大西洋条約機構)諸国に対する国防予算増額要求がますます強められている。その中で、NATOの一員でありアメリカの隣国でもあるカナダが、カナダ史上最も大規模な国防予算増額計画を打ち出した。
 ただし、トランプ政権の圧力を受けたためではない。あくまでもカナダの安全保障に関する基本戦略を達成するために導き出された大増額である。
NATO加盟国が掲げた目標値
 オバマ政権による国防予算の大削減によってアメリカの軍事力が低下したため、NATO総体としての戦力も低下せざるを得なくなった。その一方で、対IS作戦をはじめとする対テロ戦争は、収束の目途が全く立たない。また、ロシアによるクリミア併合以降、NATOにとっては原点回帰とも言える対ロシア防衛態勢を強化しなければならなくなった。こうした状況から、NATOの戦力強化の必要性は目に見えて増大しているのである。
 ところが、アメリカ軍自身が戦力低下をきたしているため、かつてのようにNATOの戦力低下をアメリカ軍が補うことはできなくなっている。要するに、アメリカだけに期待する時代は過ぎ去ってしまったのだ。
 そこで2014年、NATOは、全加盟国が個々の軍事力を強化することによってNATO総体の戦力を強化する方針を採択した。
具体的には、全てのNATO加盟各国は「10年以内に国防予算をGDP2%以上に引き上げる、そして国防支出のうち20%以上は兵器装備調達費に割り当てる」という目標値を達成することとなった。
 言うまでもなく国ごとに国防予算規模が異なるのは当然である。そのため各国の国防努力の質を「国防費のGDP比」だけで計測することはできない。しかしながら、世界各国の国防費の国際平均値は過去数年間を通しておおよそ「GDP2%」となっている。それを踏まえて、「NATO加盟諸国は少なくとも国際水準であるGDP2%にすべきである」という論理で、目標値は2%に設定されたのだ。

NATO加盟国と日本の国防費のGDP(%)

 また、いくら国防予算を拡大しても、例えばそれらが人件費や施設費などに投入されただけではNATOの戦力強化には結びつかない。したがって、個々の加盟国がNATOに拠出することができる戦力を確実に強化するために、兵器装備調達費の目標値も設定された。
だが、NATOとして戦力強化のための目標値をこうして設定したものの、2年以上経過しても目標値達成のための具体的計画を打ち出した加盟国は少なかった。そこで、トランプ政権はアメリカの国防費のGDP比を4%以上(現在は3.4%)に押し上げる方針を打ち出すと同時に、NATO諸国に対しても、速やかに2%に近づける具体的努力を開始するよう強く圧力をかけ始めたのである。
国民への問いかけを経たカナダの国防費増額
そうした中で、カナダの大規模な国防予算増額計画が打ち出された。
2016年のカナダのGDP(名目GDP)は15292USドル(日本は49386USドル)で、国防予算はおよそ155USドル(189億カナダドル、日本は461USドル)である。
 国防費のGDP比はおよそ1%強(日本は1%弱)であり、NATO加盟27カ国中23位と、国際水準値もNATO平均値も共に下回る状態が続いている。この比率は、NATO加盟国でかつG7参加国の中では最下位ということになり、トランプ政権に言わせれば「全く話にならない水準であり、可及的速やかに真剣な国防努力をなすべきだ」と言うことになる。
 しかしながら、今回、カナダ政府が打ち出したカナダ史上最大規模の国防費増額10カ年計画は、トランプ政権の機嫌をとるためになされたわけではない。もちろんNATO加盟国である以上、NATOの申し合わせを達成する努力をなす義務はあるのだが、あくまでカナダの防衛ならびにNATOをはじめとする国際社会への貢献を達成するために必要な戦略を打ち出し、そのために必要な国防費を推計した結果誕生した国防費増額計画なのだ。
 カナダ国防当局は既に20164月に、カナダ国民に対して国防政策案に対する意見や提言を公募するための報告書「Defence Policy Review Public Consultation Paper」を公表して、国防態勢改革のための最終調整に入っていた。その結果、誕生したのが今年の67日に公表された国防政策の基本計画「Strong, Secure, Engaged: Canada’s Defence Policy」である。その中で「現在189億カナダドルの国防費を段階的に押し上げて20262027年度には327億カナダドルにする」という国防費大増額計画が明示されたのだ。
この基本計画では、カナダ自身を防衛するための基本戦略、北米大陸の安全をアメリカと共に確保していく戦略、NATOや多国籍軍それに国連の諸活動などに参加してカナダのプレゼンスを高めることでカナダ自身の安全保障を強化する戦略、そして、それらの戦略遂行に必要な人的資源や兵器装備などに関する基本計画が述べられている。これらの計画の実現ために、国防費を大幅に増額しなければならないというわけだ。
 要するに、「アメリカに言われたから国防費をGDP2%に近づけるポーズを示さなければならない」といった外圧に突き動かされたのではなく、あくまでも自国の防衛の必要性から導き出された国防費大増額計画と言うことができる。
日本に対する2%要求も時間の問題
トランプ政権が、NATO諸国に対してと同様の国防費増額──おそらくは「少なくともGDP2%という国際水準を達成すべきである」といった大増額要求を日本政府にも突きつけてくることは時間の問題である。
 日本政府、そして国会は、そのような外圧に踊らされるべきではない。「自らの国防戦略達成のための必要性」といった観点から国防予算計画を策定し、もし必要な予算がGDP1.5%で十分ならば「1.5%」を目標値に掲げれば良い。仮にGDP2%でも不足するようならば、さらに高い目標値を達成するための方策をひねり出さねばならない。

 カナダ国防当局の一連の動きは、日本にとっても参考にすべきモデルと言えよう。はじめから「どうせできるわけがない」といった態度では、国防を論ずる資格はない。

《維新嵐》国防費を増額する動機は、この国は十分すぎるくらいあるのではないでしょうか?要はその使い道だと思います。国防についての大戦略が煮詰められていないのに、正面装備にいくらお金をかけたところで「的外れな」防衛体制にしかならず、有効に機能しないのであれば意味はありません。まずは与党も野党も軍事戦略についてのリテラシーを一段高めることが基本でしょう。そしてそのためには国民それぞれがどういう国防戦力が国家の主権と独立を守るために有効な形なのか理解を深める努力をすべきでしょう。

アメリカのトランプ政権からの国防費増額についての要求が出されているのは、カナダだけではありません。

【目前に迫る北朝鮮の脅威】防衛費増額の国会審議を
■加瀬英明(かせ・ひであき) 外交評論家。1936年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、エール大学、コロンビア大学に留学。「ブリタニカ百科事典」初代編集長。福田赳夫内閣、中曽根康弘内閣の首相特別顧問を務める。松下政経塾相談役など歴任。著書・共著に『いま誇るべき日本人の精神』(ベスト新書)、『呆れた哀れな隣人・韓国』(ワック)など多数。

 北朝鮮は、平壌(ピョンヤン)で大規模な軍事パレードを行った2017年4月16日早朝、日本海沿岸からミサイルを試射したが、失敗した。米韓軍合同司令部によれば、中距離弾道ミサイル(IRBM)だった。(夕刊フジ)
 ドナルド・トランプ米大統領は、米国まで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を試射する確証を得たら、先制攻撃を加えると警告している。「アメリカ・ファースト」=「アメリカン・セイフティ(米国の安全)ファースト」なのだ。
 日本が頭から火の粉をかぶることになるが、トランプ政権は、剣道でいえば「肉を斬らせて、骨を斬る」ことになる。肉は日本だ。
 私たちの目のすぐ前で、朝鮮半島に点火する導火線が、火花を散らして燃えている。
 いつ、朝鮮半島に火の手があがることになるのだろうか。
 私は「まだ1年あまりは、時間的な余裕がある」と思う。あるいは、「2年ある」だろうか。
 米国は、中国という龍に北朝鮮に強い圧力を加える芸を、教え込もうとしている。中国が鍵を握っている。だが、中国はホワイトハウスの庭に飼われる、ポチ龍にはなりたくない。
 中国の習近平国家主席は「偉大な5000年の中華文明の復興」、英訳すれば「メイク・チャイナ・グレイト・アゲイン」と叫んで、中国国民の人気を博してきたのに、北朝鮮のおかげで米国に対して威張れなくなった。
 といって、米国のいうままになって、北朝鮮に核開発を放棄するように、真剣に迫ることはしまい。
 北朝鮮が核やミサイル開発を、投げ棄てることはあり得ない。核やミサイル実験を行わなくても、核武装国家のイスラエルの例のように、性能を高めることができる。
 このまま進んでゆけば、米国はいずれ北朝鮮を、攻撃することとなろう。
 国会は与野党が一致して、ミサイル迎撃システムを強化し、北朝鮮のミサイル基地を攻撃する能力を保有するために、防衛費を画期的に増額することを、集中審議すべきだ。
 中国にとって、米国が好戦的な暴力国家としてイメージを大きく損ね、日本がミサイルを浴びて傷つくほど、おいしいことはない。
 72年前に、朝日新聞と狂気に取り憑かれた軍人たちが、日本精神さえあれば「神州不滅」だと叫んで、「一億総特攻」をあおった。
 護憲派が「平和憲法」さえあれば、「日本は不滅」だと説いているが、72年前に「一億玉砕」の道を突き進んでいた、恐ろしい亡霊が全国をさまよっているとしか思えない。
 祈りや精神力だけでは、日本を守れない。

《維新嵐》まずは北朝鮮のミサイル飽和攻撃という「ありえない」脅威に対する対策。防衛費増額となれば、ミサイル迎撃という観点に特化して検討できますね。

NATOに防衛費増額迫るトランプ政権
日本は恐々、駐留費問題沈静化も「このままでは納得しない」
 トランプ米政権の同盟各国に対する防衛費負担をめぐる温度差が鮮明になっている。北大西洋条約機構(NATO)加盟国に国防費増額を強く迫るトランプ大統領だが、日本などアジアの同盟国には表立った批判を避けている。ただ、トランプ氏の矛先が今後、日本に向く可能性は否定できず、日本政府内には防衛費のさらなる増額は避けられないとの声が漏れる。
 「他のNATO加盟国も、財政上の義務を果たそうとするルーマニアに続き、応分の負担をしてほしい。NATOを強くするためには資金が必要だ」
 トランプ氏は9日、ルーマニアのヨハニス大統領とホワイトハウスで開いた共同記者会見で、NATO加盟国に防衛費の負担増を改めて求めた。
 NATO加盟国は2014年9月の首脳会合で、加盟各国の国防費を10年間で国内総生産(GDP)比2%にすることで合意したが、達成しているのは英米など5カ国のみ。トランプ氏は今年5月のNATO首脳会合で「(残る)23カ国は彼らの防衛のため支払うべき額を払っていない」と指摘したほか、集団防衛義務を定めた北大西洋条約第5条の防衛義務にも言及しなかった。
一方、GDP比1%未満の日本への対応は欧州と対照的だ。昨年の大統領選期間中に主張した在日米軍駐留経費の全額負担は政権発足後に封印。今年2月の日米首脳会談後の記者会見では、在日米軍の受け入れに感謝の意まで表明した。
 背景には、ミサイル発射を続ける北朝鮮や、海洋進出を進める中国に対し、防衛費をめぐり日米同盟がギクシャクしている印象を与えるのは得策ではないとの考えがあるようだ。防衛省幹部も日米同盟の戦略的重要性を指摘し、「米国にとってアジアにはライバルの中国、そして悪者の北朝鮮がいる」ことから、良好な同盟関係をアピールする必要があると分析する。
 対照的に、トランプ氏がNATOに強気な姿勢で臨むのは「中国ほどロシアが明確なライバルではないからだ」(外務省幹部)との見方がある。別の外務省幹部は「NATOはGDP比2%の合意がある。約束を守るよう加盟国に『未払い分を払え』という位置づけだ。日米同盟にはそういう約束はないので『約束違反』ということにはならない」と語る。
ただ、2月の日米首脳会談の共同声明では、日本として「同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」と明記した。日本は第2次安倍内閣発足以降、防衛費を年平均0・8%増額させているが、「そのままの伸び率ではトランプ政権は納得しないだろう」(政府関係者)との見方が少なくない。
 日米両政府は7月中旬には外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)をワシントンで開催する方向で調整している。中国や北朝鮮への対応とともに、日本の「役割と責任」が主要議題となる見通しだ。(杉本康士、千葉倫之、ワシントン 加納宏幸)

《維新嵐》安倍政権になってから、防衛費を年平均0.8%づつ増えていたとは、防衛費が増加傾向にあるのは知っていましたが、具体的に数字でみると納得できます。
 この記事を見る限りでは、我が国の防衛費増額は、アメリカに望まれるままにという要素が強いかなと思わざるをえません。アメリカに求められるままの防衛費増額は、アメリカのための防衛力整備になりかねませんし、我が国の事情にあわせた防衛整備にならないと思います。
 防衛費は3%くらいになっても我が国の経済規模からすれば不思議ではない額かと思います。ただ防衛費の使い道を「国情」にあった執行の仕方をしてほしいと思います。
例えば、各省庁に分立する情報機関を統括するセクションを内閣官房におく。(仮に内閣情報局の設置、ヒューミントの拠点)、防衛省のサイバー防衛隊を陸海空自衛隊に続く「第4」の軍種にする。我が国は「サイバー攻撃」による「侵略」を受ける国です。急迫不正な侵略に対応するならサイバー空間でも同じでしょう。国家の知的財産という「国益」は守らなければいけないかと思います。

サイバーインテリジェンスセンター(CIC)

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