2016年6月25日土曜日

【共産中国の軍事的脅威にどう対処するのか?】アメリカのFON作戦を逆手にとる共産中国 ~ 日本政府は国際海洋法を盾に領海侵入を阻止できるか?

日本の接続水域と領海を航行した中国海軍の狙い
日米の失策が招いてしまった中国の対日「FONOP
日米印合同海軍演習「マラバール2016」。日本の領海に侵入した中国海軍のスパイ艦は合同訓練の情報収集に従事していた(写真:アメリカ海軍)

201668日から9日にかけて、中国海軍フリゲートが尖閣諸島周辺の日本接続水域内を航行した。そして引き続き15日には、中国海軍情報収集艦(スパイ艦)が口永良部島周辺の日本領海内を航行し、翌日16日には同艦が北大東島周辺の日本接続水域内を航行した。
統幕長の声明の数日後にスパイ艦が領海に
日本政府は、1回目の事案に関しては外務次官が夜中に駐日中国大使を呼びつけて厳重な抗議を行ったが、2回目と3回目の事案に対してはアジア大洋州局長が駐日中国公使に懸念を伝達するにとどめた。
 また、1回目の事案を受けて自衛隊のトップである統幕長は(接続水域内航行よりも日本にとってさらに深刻な脅威である)領海内航行といった事態が生じた場合には、中国艦艇に対して断固たる姿勢で対処すると明言した。この統幕長の声明は、「海上警備行動」の発令を防衛大臣に求め海自艦艇や航空機を出動させて中国艦の日本領海内航行を妨害することを意味する。
 しかしながら、このような声明を発した数日後に、中国海軍スパイ艦が実際に日本領海内を航行する事態が生じた。その際、「海上警備行動」は発令されなかったし、海自艦艇や航空機が中国海軍スパイ艦の日本領海内航行を妨げようとする試みもなされなかった。
日本領海を航行した中国海軍東調級電子偵察船(写真:防衛省)

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで中国海軍スパイ艦の写真をご覧いただけます。共産中国の情報収集艦
“虎の威”ではなくなりつつある米海軍
中国海軍スパイ艦が日本領海内を航行する前日の14日、防衛大臣はアメリカ太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官と東京で会談し、東シナ海での活動を活発化させる気配を示している中国海軍艦艇に対して、日米の連携を強化することを確認し合ったばかりであった。
 もっとも、スウィフト司令官にとっての「日米連携」とは、「日米共同訓練などをさらに充実させることによって、日米両海軍の連携を強化させ、その結果として中国海軍に対処していこう」といった米軍側の基本姿勢を意味していた。それに対して日本側は、「アメリカ軍という“虎の威”を借りて中国海軍の動きを抑止しよう」といったこれまで通りの期待を込めての「日米連携」であったようである。
 しかしながら、南シナ海や東シナ海をもはや“ホームグラウンド”としつつある中国海軍にとって、アメリカ海軍はもはや“虎の威”とは映っていない。
 アメリカ太平洋艦隊は、中国海軍を“脅かす”目的を持って空母2隻を中心とする強力な艦隊をフィリピン海に展開させていた。それにもかかわらず、中谷防衛大臣とアジア太平洋海域を統括するスウィフト司令官の会談の直後に、中国海軍のスパイ艦が日本の領海内を航行した。そのスパイ艦は、明らかに日本・アメリカ・インド海軍により実施されていた合同訓練の情報収集に従事していた。
中国政府を正面切って批判できないアメリカ
日本のみならずアメリカまでもが中国海軍に“なめられた”形となってしまったわけだが、アメリカは中国海軍の日本接続水域内航行や領海内航行に対しては、日本政府の肩を持って中国海軍や中国政府を正面切って批判できないジレンマに直面している。
なぜならば、アメリカ政府は南シナ海において中国をターゲットにした「FONOP」(航行自由原則維持のための作戦)を実施しているからだ。
本コラムで幾度か取り上げたように、アメリカ政府は第三国間の領域紛争には介入しないことを外交鉄則に掲げている。そのため、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島に対する中国の領有権主張に直接反対することは差し控えている。その代わりにアメリカ政府は、中国政府の「南沙諸島や西沙諸島の周辺の“中国領海”に接近あるいは進入しようとする外国艦船は、事前に中国政府の許可を得なければならない」という主張に対して、「そのような中国政府の方針は、国際海洋法の大原則である航行自由原則を踏みにじるものである」と主張する。その主張に基づいて、航行自由原則を中国側に遵守させるためのFONOPを太平洋艦隊に実施させているのである。
 具体的には、アメリカ軍艦や哨戒機を、南沙諸島や西沙諸島の“中国領海”内の海域や空域を通航させて、中国側を威圧し国際法を遵守させようというものだ。201510月、20161月と5月の合計3回ほど実施されている。
 しかし、中国に対して遠慮がちなオバマ政権は、米海軍などの対中強硬派が主張するように「中国側を威圧して国際法を遵守させる」作戦には難色を示し、「軍事的威圧にはならないように、国際法に則った『無害通航権』を行使するレベルでの示威行動」に限定してしまった。そのため、対中FONOPはさしたる効果を上げていない。
それどころか、中国はこのような中途半端なFONOPを逆手に取り、日米同盟切り崩しの“対日FONOP”を開始した。
日本政府も国際海洋法を一部制限、口を閉ざす米国
69日から16日にかけての中国軍艦の接続水域航行、領海内航行に対して、日本政府は次のような対応を見せた。
1)日本政府は、少なくとも中国軍艦に対しては国際法上の航行自由原則ならびに無害通航権を国際法上の条件ではなく日本政府の判断のもとで制限する方針である。
2)それらの制限は尖閣諸島周辺海域では著しく強化され、日本政府は同海域の日本領海内では中国軍艦の無害通航権は一切認めない。
3)同様に、日本政府は尖閣諸島周辺海域の日本接続水域内では、中国軍艦に対しては航行自由原則をも制限する。
 つまり、日本政府が国際海洋法を一部制限する姿勢が明らかになったのだ。
 もちろん、これは尖閣諸島の領有権を巡って日中間が紛争中であるために、日本政府が尖閣諸島周辺海域での中国軍艦の動きにとりわけ神経をとがらせている結果であることは、アメリカ側としても十分理解できる。
 しかしながら、そのような日本政府の姿勢は、一見したところ、南シナ海での中国政府による国際海洋法の一部制限と類似している。そのため、南シナ海で中国に対して圧力をかけようとしているアメリカ側の「正当化の根拠」と真っ向から衝突してしまう。そもそも南シナ海におけるアメリカのFONOPは、国際海洋法の大原則である航行自由原則を中国政府が認めないことに対抗して実施されているのだ。
 だからこそ、南シナ海でのアメリカ海軍のFONOPを苦々しく思っている中国は、日本の接続水域や領海にまで軍艦を乗り入れることにより、日本よりも、FONOPを実施しているアメリカを困惑させようとしたのであろう。
 実際に、今回発生した一連の日本接続水域や日本領海での中国軍艦の活動に対しては、アメリカ政府は口を閉ざしている状態だ。

 この期に及んでも日本当局の指導者には「“アメリカと協力”して対処策を打ち出す」といった第三者的態度をとる者が見受けられる。しかし、中国が核兵器を持ち出さない限りは東シナ海沿岸域の防衛は日本自身の問題であり、アメリカが乗り出してくる問題ではないことは、アメリカ政府による今回の対応が雄弁に物語っている。

《我が国政府の対応》
軍艦侵入で中国が勝手に国際法解釈「国際海峡を航行」
中谷防衛相「中国側の独自の主張は受け入れられない」

2016.6.18 10:52更新 http://www.sankei.com/politics/news/160618/plt1606180018-n1.html

 中国海軍が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海での活動を活発化させている。中国側は、国際法を独自に解釈して一連の航行を正当化しようとしており、日本政府内で警戒感が広がっている。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は17日の記者会見で、「一方的にわが国周辺海域での行動をエスカレートさせている中国軍の活動全般について懸念している」と批判。これに対し、中国国防省は17日に談話を発表し、「日本側は、中国海軍艦艇の合法的活動について、理由もなく再三あおり立てており、理解できない」と反論した。
 また、中国側は15日に鹿児島県口永良部島沖の日本領海に侵入したことについて、独自の主張を展開。華春瑩報道官は17日の記者会見で「(航行した)トカラ海峡は国際航行に使われている国際海峡で、国連海洋法条約に基づく通航権を行使した」と正当化。華氏は同海峡が国際海峡である根拠は示さなかったが、「(日本は)国際法をよく勉強すべきだ」とも述べた。
 中谷元(げん)防衛相は同日の記者会見で「国際航行に使用されている海域には該当しない。中国側の独自の主張は受け入れられない」と切り捨て、「通常、領海内に軍艦が入るときには事前の連絡や通報があってしかるべきだ」と指摘した。
 ただ、今回の航行が国際法上認められた「無害通航」に当たるかどうかは「分析中だ。無害通航でないとは言い切れないし、無害通航だとも言い切れない」と述べるにとどめた。

《維新嵐》 我が国政府は、共産1中国の情報監視艦艇の「無害通航権」を認めることになるのでしょうか?我が国政府のスタンスははっきりしていると思います。

《アメリカ海軍の対応》
米、中国牽制へ駆逐艦3隻を派遣
2016.6.25 11:52更新 http://www.sankei.com/world/news/160625/wor1606250038-n1.html

 米海軍は2016624日までに、南シナ海にイージス駆逐艦3隻を派遣し、警戒監視活動を始めたことを明らかにした。南シナ海の領有権争いをめぐっては7月にも国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所の判断が出るとみられている。米国は3隻の派遣により、南シナ海で人工島を造成し、軍事拠点化を進める中国を牽制する狙いとみられる。
 3隻が、中国が領有権を主張する島々の12カイリ(約22キロ)内に艦船を派遣する「航行の自由」作戦を展開するかは不明。米海軍は「海賊行為や不法行為のような国際法に対する挑戦」に関して「海洋安全保障上の作戦を実行する用意がある」としている。
 米海軍によると、今回派遣されたのはイージス駆逐艦の「スプルーアンス」「ディケーター」「マンセン」の3隻。4月27日にハワイの真珠湾を出発し、6月22日までに南シナ海で警戒監視活動を始めた。(共同)

《維新嵐》 南シナ海、東シナ海の自由航行の権利を守るためにアメリカも妥協のないスタンスを貫いていますね。

米バイデン副大統領が習近平国家主席に発言
「日本は一晩で核保有可能」
 【ワシントン=加納宏幸】ジョー・バイデン米副大統領が中国の習近平国家主席に北朝鮮核・ミサイル問題での協力を求めた際、「日本が明日にでも核を保有したらどうするのか。彼らには一晩で実現する能力がある」と発言したことが23日、分かった。
 バイデン氏が米公共放送(PBS)のインタビューで語った。

 習氏との協議の時期は明らかにしなかったが、習氏が「中国軍は米国が中国を包囲しようとしていると考えている」と述べたのに対し、バイデン氏が日本に触れ、米中の連携がなければ日本の核保有があり得るとの認識を伝えたという。

《維新嵐》 軍事的、政治的と多角的なチャンネルで共産中国の矛をおさめさせようとしています。あくまで対中牽制でしょう。本気で我が国に核兵器保有をおしつけるとも思えません。だいたい我が国の世論は核兵器保有にはアレルギー的な反対論の方が根強いです。


南シナ海米中対立の今

インドネシアも南シナ海での対中警戒を強めています。ある意味「対中包囲網」ができあがっている感があります。

インドネシア、中国に対抗姿勢強める
「中立」から転換・経済水域保護へ特別班発足
中国の漁船に接近するインドネシア海軍艦艇「イマム・ボンジョル」=17日、南シナ海のナトゥナ諸島沖(ロイター)
【シンガポール=吉村英輝】インドネシア政府は2016623日までに、中国が軍事拠点化を進める南シナ海での自国の権益保護に向け、国連海洋法条約に精通した専門家による特別班を結成することを決めた。南シナ海での中国の領有権主張をめぐっては、フィリピンの提訴を受けた常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が近く、結論を出す見通し。「中立」を表明してきたインドネシアが法的措置に乗り出せば、中国には大きな逆風となりそうだ。
 ジョコ大統領は2016623日、南シナ海南端のインドネシア領ナトゥナ諸島沖で海軍艦船を視察し、同行したルトノ外相など主要関係閣僚らと艦上で会議を開いた。
 諸島沖合の排他的経済水域(EEZ)では17日、同国海軍が不法操業の中国漁船を拿捕(だほ)した。だが、中国外務省は19日、現場海域は「中国漁民の伝統的漁場」だと声明で非難した。異例の艦上会議は、「中国の主張を認めることはできず、大統領は事態を深刻に捉えている」(ルフット調整相)との意思表示だ。
ジョコ氏は20日、国際法で認められたナトゥナ諸島周辺海域の権益保護のため、法律家らによる特別班の結成を指示した。中国が南シナ海の9割を管轄していると主張する根拠の「九段線」は、ナトゥナ諸島沖のEEZと重複する。この海域では、インドネシア当局が不法操業中の中国漁船を今年3月に摘発しながら中国海警局の監視船に漁船を奪われ、5月は海軍が出動して拿捕に成功した。
 インドネシア海軍幹部は21日、「(不法操業は)単なる口実に過ぎない」とし、「真の狙いは(同海域には)主権があるとの主張を確立することにある」と指摘。国軍のガトット司令官は、ナトゥナ諸島周辺海域への航空機投入と艦船5隻の派遣を決め、密漁船を“保護”する中国の監視船に対応するとした。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の「盟主」であるインドネシアは、南シナ海の領有権で対立する中国と加盟国の間で「調整役」を担ってきた。だが、不法操業をめぐる摩擦で、中国との緊張が高まるのは避けられない情勢だ。

村井智秀氏 南シナ海の米中対立 米軍との圧倒的な実力差を前に手出しできない中国
直接実弾がとぶような紛争は米中双方ともさけたいという意思が強いはずです。

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