真珠湾攻撃75周年式典・安倍総理は訪問すべきか?
岡崎研究所
2016年06月13日(Mon)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6977
米タフツ大学フレッチャースクールのプリスタップが、フォーリン・アフェアーズ誌ウェブサイトに2016年5月10日付で「安倍は真珠湾を訪問すべきである」との論説を寄せ、安倍総理の真珠湾訪問を推奨しています。プリスタップの論旨、次の通り。
パールハーバーのアリゾナ記念館
日本におけるG7首脳会議の際のオバマ大統領の広島訪問は、核不拡散体制を強化し、米日同盟を強化し、米のアジアへのリバランスを支援することになる。北朝鮮の核実験、南シナ海での中国の行動がある中、タイミングが良い。米退役軍人、ワシントンの共和党員、アジア地域諸国などは、広島訪問は広島、長崎への原爆攻撃への公的な国家謝罪ととられることを恐れている。理由は理解できる。こんなに感情が渦巻く場所を訪問し、反省の念を示さないのは難しいし、謝罪に見えることさえ、太平洋戦争での何万の米兵士の犠牲の名誉を汚す。 また、これは日本の第二次大戦の歴史を書き換えようとする超国家主義者に信用を付与する。日本は戦時中の行為とどう折り合いをつけるか苦労してきた。日本の超国家主義者は南京虐殺、バターン死の行進、慰安婦などを釈免しようとしてきた。安倍自身、慰安婦についての言語を柔らかくするように、1996年の国連報告の一部を取り消すことを求めた。 オバマの広島訪問が、米日関係の新しい章を開くとの正しいメッセージを発することが重要である。出来るだけ党派性を排除するべきである。そのためにも、安倍総理は今年末の真珠湾攻撃75周年の記念式典に参加すべきである。これは安倍に戦略的利益になる。 真珠湾記念式典への参列は中韓が問題にする靖国参拝から注意をそらすことを助ける。また、慰安婦についての談話の再検討が呼び起こした批判も静まろう。 安倍は最近、歴史につき和解的な姿勢を見せている。日本は韓国に830万ドルを元慰安婦支援財団に出す。安倍は「次の世代までこの問題を引き延ばさない」と述べたし、米議会で戦争中の米国人の犠牲者を追悼した。真珠湾訪問はこの延長線上でなされるべきで、広島、長崎が孤立してあるのではないことを示すことになろう。 真珠湾訪問は隣国に憲法再解釈による自衛隊の活動範囲を拡大した安保法案を受け入れさせる助けにもなろう。彼が歴史に向き合うことを示せることになる。 最後に広島訪問と真珠湾訪問は感情面で米日関係を強化する。オバマと安倍はそれぞれの国の歴史に向き合い、歴史論争の多いアジアでの模範例を示せる。これは双方の指導者にとり、やるのが正しいことである。 ケリーは未来志向を強調し、広島訪問で謝罪せずに大きな人類の悲劇について考えることが可能であることを示した。オバマと安倍はその例に倣うべきである。出典:Zach Przystup,‘Abe Should Visit Pearl Harbor’(Foreign Affairs, May 10, 2016) https://www.foreignaffairs.com/articles/japan/2016-05-10/abe-should-visit-pearl-harbor
オバマ大統領の広島訪問が核軍縮につながるとか、核不拡散の強化になるといった効果はないでしょう。しかし、核兵器の使用に伴う惨事にスポットライトが当たることにより、核は使用してはいけないとの意識が強化されることはいいことであると思います。
オバマの広島訪問の最も意義のある点は、日米間に原爆の使用について存在する認識ギャップ(昨年のピューの世論調査で、米では正当とする人56%、日本では正当でないとする人79%)が相当埋まることで、日米関係が強化されることにあります。
この論説はオバマの広島訪問とセットで安倍総理の真珠湾訪問を推奨したものです。理由づけには異論もありますが、発想の基本については、賛成できます。
謝罪を求めるとか強要するとかは品のないこと
米国人は、広島、長崎の話に対しては、真珠湾の不意打ちを想起させてくる場合が多くあります。日米関係が戦争の痛手から強固な同盟になったことを示す意味で、安倍総理の真珠湾訪問を真剣に考えたらいいと思います。日米関係の強化になるからです。
日本人の中には、軍事目標を攻撃した真珠湾と文民攻撃をした広島、長崎は違うとの意見が強く、それはそれで正しいです。しかし、広島、真珠湾はともに太平洋戦争のシンボルの面があり、同列に扱うのではありませんが、日本側も反省すべき点は素直に反省したらよく、それは日米関係に良い影響を与えるでしょう。
米国は、また、今度は東京などへの無差別爆撃(実行したルメイ将軍自身、戦争犯罪だった言っている)への反省も示せばよいでしょう。ただし、謝罪を求めるとか強要するとかは品のないことです。相互にこういう行動を交換していくことで、日米同盟は感情面で強化されることになります。
《維新嵐》安倍総理は、ハワイ真珠湾を公式訪問する必要はない
オバマ大統領が広島を公式訪問した背景には、一つには、かつてチェコのプラハにおいて「核兵器廃絶をめざします宣言」を行ったことが色濃くあるように思います。
核兵器を今すぐなくします、といったのではありません。「これから将来のアメリカの核戦略は、核兵器をなくしていく方向で進めていきます」という意味の宣言である。
「核兵器のない平和な世界の実現」戦略とでもいえるアメリカのオバマ政権の国家戦略によって、新たに核兵器を保有し、大国をめざす国はすべて立場が悪くなりました。
オバマのプラハ宣言のすぐ後に北朝鮮が核実験を実施したことは、まさにオバマ政権に対するアンチテーゼといえるでしょう。インドやパキスタンも事情は北朝鮮と同様の部分があるかもしれません。
核兵器が国家の外交力、軍事力の要となって、政治的な生命線になっている国にとっては、とういていオバマ大統領の戦略を受け入れることはできないわけです。
結果このアメリカの核兵器のない平和な世界の実現戦略によって、オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞し、授賞式では堂々と平和秩序を守るためには、軍事抑止力が不可欠なことを宣言しました。戦争の大義も世界の平和秩序のためなら認められます。
核兵器廃止をアメリカの「道義的責任」とすることで、被爆地へのアメリカ大統領の公式訪問を受けれる動きは加速したといえます。
いわば核兵器廃絶をめざして「連帯」を作り出すことで、覇権主義の核大国を抑止する狙いが、あるように思えてくるのです。
日本側が強く求めてきたアメリカ大統領の被爆基地訪問が無事に実現したのなら、核兵器に対するアメリカ人の意識もこの機会に変化させるべきである。
具体的には、真珠湾を訪問するのでなく、原爆を広島へ、長崎へ投下したB-29爆撃機がアメリカ国内のスミソニアン航空博物館に展示されているとのことから、どうせ訪問するなら、被爆直後の広島や長崎の様子を写した写真展示をB-29の近くにディスプレイさせてから、アメリカ大統領とともに回るべきである。
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