2016年6月30日木曜日

一触触発!第二次日中戦争勃発か!?事実はなかったことを信じたいところです・・・。公式発表の意図は?

中国軍機、空自機に攻撃動作「ドッグファイト回避、戦域から離脱」空自OBがネットニュースで指摘
2016.6.29 07:07更新http://www.sankei.com/politics/news/160629/plt1606290009-n1.html


 元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田邦男元空将は平成28628日、インターネットのニュースサイトで、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表した。詳しい日時や場所、中国軍機の種別などは記されていない。防衛省幹部は産経新聞の取材に対し、大筋で事実関係を認めたが、「実際にどこまで中国機が空自機に迫ったかが問題だ」と指摘した。
 織田氏は記事で中国軍艦が今月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の接続水域や口永良部島(鹿児島県)周辺の領海などに相次いで侵入した事例に言及し、「これら海上の動きと合わせるように、中国海空軍の戦闘機が航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)機に対し、極めて危険な挑発行動を取るようになった」と指摘した。
 記事によると、中国軍機はスクランブルで出動した空自戦闘機に対し「攻撃動作を仕掛けてきた」ため、空自機は「いったんは防御機動で回避したが、ドッグファイト(格闘戦)に巻き込まれ、不測の状態が生起しかねないと判断し、自己防御装置を使用しながら中国軍機によるミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」という。

http://www.sankei.com/politics/news/160629/plt1606290009-n2.html


 中国軍の挑発行為をめぐっては、平成13年4月、南シナ海の公海上空で、中国軍戦闘機が米軍の電子偵察機に異常接近して接触、墜落し、米軍機は中国・海南島に緊急着陸した。また、25年1月には東シナ海で中国海軍艦が海上自衛隊の護衛艦とヘリコプターに射撃管制用レーダーを照射した。F4戦闘機のパイロットだった織田氏は「武装した戦闘機同士がミサイル射程圏内で遭遇する。戦闘機同士がいったん格闘戦に陥ると、空中衝突やミサイル発射に至る可能性は十分にある」と指摘した。
 織田氏は28日、産経新聞の取材に対し「常識を度外視して、中国軍機が尖閣上空まで近づいてきている。これが常態化すれば領空の安定は守れなくなる」と強調した。織田氏は昭和49年に防大を卒業し、空自に入隊。平成18年から航空支援集団司令官を務め、21年に退官した。
■2年前には中国軍機が異常接近

萩生田光一官房副長官元空将のネットニュースで「中国軍用機の攻撃受けた事実ない」

 萩生田光一官房副長官は平成28629日午前の記者会見で、元航空自衛隊幹部がインターネットのニュースサイトで、東シナ海上空で中国軍機が空自機に攻撃動作を仕掛けたとする記事を発表したことについて「攻撃をかけられたという事実はない」と述べた。
 萩生田氏は「6月17日に中国軍用機が南下し、自衛隊機がスクランブル発進をしたことは事実」とした上で「攻撃動作やミサイル攻撃を受けたというような事実はない」と説明した。
 また、記事に関し「現役(自衛官)の応援の意味も含めての発信だと思うが、国際社会に与える影響も大きい。内容については個人的には遺憾だ」と述べた。

 元航空自衛隊航空支援集団司令官の織田邦男元空将は28日に中国軍機が「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表していた。


《維新嵐》 人民解放軍機が空自機に対し攻撃をかけた事実があるにしろないにしろ、こうしたニュースがでること自体、東シナ海上空が、日中間における緊張状態にあることを示しているかと思われます。きな臭くなってきました。どちらも先制攻撃を否定してますが、真実はどちらかが先に攻撃をかける形になるのでしょう。
戦闘機なら緊急発進の時にガンカメラなど装着して、おこってはいけないのですが不測の事態がおこったときに「証拠」が残るようにカメラ装備は忘れないようにしてほしいです。
 漁船衝突事件の時も我が国の潔白を証明したものは、当時海上保安官だった一色氏の職を賭した動画投稿だったことを忘れてはいけません。イージス艦への攻撃レーダー照射事件も海自側のレーダーによる「証拠」が決め手になって共産中国に謝罪を要求できました。決め手は攻撃をうけた「証拠」を残し、効果的に全世界に公表することです。これも情報戦争でしょう。

航空自衛隊F-15訓練ドッグファイト

海自P-3Cなど、中国海軍ルフ級駆逐艦など3隻の対馬海峡の南下を確認

配信日:2016/06/29 11:40
http://flyteam.jp/airline/japan-maritime-self-defense-force/news/article/65220

ルフ級駆逐艦「113


統合幕僚監部は2016628()627()に中国海軍艦艇が上対馬の北、およそ35キロメートル付近を航行していたと発表しました。海上自衛隊第3ミサイル艇隊所属の「しらたか(PG-829)」と、第1航空群所属のP-3Cが確認しました。

中国海軍艦艇はルフ級駆逐艦「113」、ジャンカイII級フリゲート「576」、フチ級補給艦「889」の計3隻で、上対馬の北から対馬海峡を南下しました。この3隻は622()にも対馬海峡を北上しています。

《維新嵐》 艦船の近海接近は、情報収集、演習など様々考えられますが、およそ我が国の側の海洋防衛の実際を監視、偵察のための行動といっていいのではないでしょうか?紛争抑止の法律も成立し、集団的自衛権の一部行使容認も認められています。フリーパスで通航されることのないよう、貴重な情報をおみやげにされないよう十分な警戒を自衛隊にはお願いしたいです。

【インドネシアの国防事情】例え軍事力は貧弱だとしても、積極的離島防衛で領土、領海、領空を守る

インドネシア大統領、中国の横暴に毅然と抵抗宣言
南シナ海でインドネシアにも及び始めた中国の海洋拡張政策
北村淳

戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)等がある。

南シナ海のナトゥナ諸島沖で、中国の漁船(右)を拿捕するインドネシア艦船。インドネシア海軍が公開(2016621日公開)。(c)AFP/INDONESIAN NAVYAFPBB News

 中国が受注したインドネシアの高速鉄道建設プロジェクトが難航していると伝えられているが、その一方で、両国の間に領海および海洋権益をめぐる問題がにわかに勃発し、緊張が高まっている。
623日、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、南シナ海・ナトゥナ諸島沖のインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」上で主要閣僚や軍首脳とともに閣議を開き、同海域の防衛を強化し、インドネシアの主権を維持することを明言した。
インドネシア海軍コルベットが中国漁船を拿捕
閣議の前の週の2016年617日、ナトゥナ諸島北方沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に12隻の中国漁船が許可を得ずに侵入し、操業しようとしている現場を、インドネシア海軍が発見した。
 インドネシア海軍艦艇が警告を発しながら、中国漁船群に接近したところ、11隻の中国漁船は逃走したが、すでに網を入れていた1隻はインドネシア海軍コルベット「イマムポンジョル383」に捕捉された。その中国漁船はインドネシア軍艦の警告を無視して逃走をはかったため、「イマムポンジョル383」は警告射撃を実施して追跡し、中国漁船を拿捕した。
 今回の事件が発生した水域を含むインドネシアのEEZ内において漁業活動をするには、インドネシア当局の許可が必要である。中国船に限らず、このような許可なき漁船が操業することはできない。そのため、インドネシア海軍による中国魚船拿捕は主権国家にっては何ら問題のない行動である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47211?page=2
しかし、中国漁船を拿捕した「イマムポンジョル383」に対して中国海警局巡視船2隻は「中国漁船は中国の伝統的な漁場で操業していたのであり、何ら違法性はない。直ちに解放せよ」と威嚇的に警告を発した。また、中国政府当局も「インドネシア軍艦の発砲により中国漁民が負傷した。このような武力の行使は国際法に違反する」とインドネシア側の行動を強く非難した。
 実は、今年の3月にも、同海域で違法操業中の中国漁船をインドネシア当局が拿捕しようとした事件が発生している。このときは、取り締まりに当たっていたインドネシア巡視船の取締官が、拿捕して連行しようとした中国漁船に移乗したところ、中国海警局巡視船2隻が急行してきて、拿捕された中国漁船に体当たりを始めたため、取締官たちはインドネシア巡視船に脱出せざるをえなくなってしまった。その結果、インドネシア側が一時拿捕した漁船と違法操業していた乗組員たちは、中国側に奪還されてしまったのである。
 その後も、この海域での中国漁船の違法操業が頻発したため、ジョコ大統領は、それまで海軍艦艇が常駐していなかったナトゥナ諸島周辺海域に海軍コルベットを展開させて、中国漁船に目を光らせる方針に転じたのであった。
ナトゥナ周辺海域も“中国の海”
 中国当局は、以前には明確に「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアに属しており、中国がこれに対して異議を申し立てたことはない」と明言していた。ところが中国政府は、617日の拿捕事件の発生を受けて19日、「ナトゥナ諸島周辺海域は、中国の伝統的な漁場であるだけでなく、中国とインドネシアの海洋権益が重なり合う場所である」と表明するに至った。
 この中国当局の新しい立場は、さすがにナトゥナ諸島の領有権まで主張するものではないものの、「ナトゥナ諸島周辺海域は“中国の海”に属する」という主張を開始し始めたものであるとみなすことができる。
 南シナ海における“中国の海” とは「九段線」という極めて曖昧な領域概念で示されている。その九段線は連続線ではない九つの断片的な線であるため、南シナ海の“中国の海”の境界線が明示されているわけではなく、おおよその範囲が示されているに過ぎない(下の地図)。
九段線とナトゥナ諸島

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで地図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47211


そのように大雑把な九段線から類推すると、ナトゥナ諸島はこれまで中国政府当局が明言して来たように“中国の海”の外側に位置していると考えるのが自然である。しかしながら、今回中国政府が主張し始めたように、ナトゥナ諸島周辺海域の北東部は“中国の海”とオーバーラップしている水域が存在しているとも考えられなくもない。
 もちろん、ここで言う“中国の海”とは、中国共産党政府が勝手に主張している九段線という、極めて大雑把な境界線に基づいた、中国だけが正当性を主張している概念である。インドネシアはじめ中国以外の国が受け入れなければならない国際法的根拠は全く存在しない。
 しかし中国は、自らが勝手に作り出した九段線や“中国の海”などを振りかざして、国際社会に幅広く受け入れられている(そして中国にとって都合の良い部分は中国も援用している)国際海洋法秩序を部分的に否定しようとする海洋権益拡張政策を推し進めている。
 まさに、今回の「ナトゥナ諸島周辺海域の一部は中国の伝統的漁場であり、すなわち“中国の海”に属している」という中国政府の主張は、これまで差し控えていた南シナ海最南端での中国の権益を拡張しておこうという中国政府の姿勢の表れに他ならない。
やがては領有権の主張も
今回、中国政府は「ナトゥナ諸島周辺海域の一部が中国とインドネシアの権益がオーバーラップする水域である」という主張をし始めたが、ナトゥナ諸島の領有権自体については疑義を呈してはいない。
 しかし、ナトゥナ諸島の領有権と同じく、その周辺海域に関しても、かつては“中国の海”に属しているといった主張はしていなかった。したがって、将来的には「ナトゥナ諸島周辺は、伝統的に中国の漁場であっただけではなく、ナトゥナ諸島も歴史的には中国の領域であった」と主張し始める可能性も否定できない。
 実際に、中国では「明朝滅亡後に満州族の支配に抵抗した広東省潮州周辺の漢族が、ナトゥナ諸島に王国を建てて、19世紀にオランダに占領されるまでナトゥナ諸島を支配した」といった“歴史”がまことしやかに語られている。
そこで、ジョコ大統領は閣僚を率いて、中国共産党政府の先手を打つ形でナトゥナ諸島を訪れて、問題となっている海域内の軍艦上で「ナトゥナ諸島の主権はインドネシアにある。その周辺200海里内はインドネシアの排他的経済水域であって、中国の主権が及ぶ水域とオーバーラップする海域は存在しない」というアピールを身をもって成した。このアピールは、今後インドネシアがナトゥナ諸島とその周辺海域での国益を保持していくために必要不可欠な行動であったと言えよう。
日本とは対照的な毅然とした姿勢
ただし、インドネシアの海洋戦力は中国人民解放軍と比較すると極めて貧弱ではるかに劣勢である。中国側がジョコ大統領の対中強硬姿勢をどのように評価し、どのような「次の一手」を繰り出して来るかは分からない。
 とはいうものの、ジョコ大統領はじめインドネシア政府・軍首脳は、中国の横やりに対して毅然として領土領海そして海洋権益を防衛する意思を示したのである。その姿勢は、「尖閣諸島は自国の領域である」と口先で言い立てているのみで、何ら具体的行動に打って出ず、相変わらず「アメリカ頼み」の姿勢から脱却していない日本とは好対照と言わざるをえない。

 ちなみに、インドネシア政府は、中国による海洋侵攻戦略の脅威に対抗するために、ナトゥナ諸島並びに周辺海域の軍備を増強するとともに、国防費を100兆ルピアから250兆ルピアに増額するという。

《維新嵐》 我が国の政府と違って非常に国軍の力を活用しようという国家意思をひしひしと感じます。離島防衛のポイントの一つは、該当の島を「無人島にしておかない。」ということもあるのではないでしょうか?
我が国の場合で思い出させることは、尖閣諸島は個人所有資産から東京都が買い取ろうという動きがありました。小笠原諸島の管理ノウハウをもつ東京都が一部とはいえ、尖閣諸島を管理していたなら、当時の都知事石原慎太郎氏のコメントにもありましたが、調査の後、港湾施設などの施設を構築し、公務員を常駐させるプランがありました。横からかっさらう形で当時の野田内閣を中心とする霞が関官僚軍団が尖閣諸島を買取り、相変わらず無人島にして放置しているも同然です。
もう日中首脳会談の「棚上げ」の時代は過ぎました。尖閣諸島を無人島にせずに「有人化」すべきでしょう。財務省の役人をボランティアで交代で常駐させるアイディアもありかと思います。国際法規に違わない、国内法にも矛盾しないように領有権の主張はすべきです。国防は軍事だけではない。
ちなみにナトゥナ諸島に展開させる部隊については、以下のような規模になります。

【インドネシア・中国牽制へ基地整備】ナトゥナ諸島、予算を承認国防相「レーダーや無人機なども配備」

 インドネシア国会は2016628日、南シナ海の南端にある同国領ナトゥナ諸島の軍事基地整備に向けた補正予算を承認した。軍艦や軍用機、兵士の今後の増派に対応するための措置。ナトゥナ諸島沖では、中国漁船の違法操業が相次ぎ、両国の緊張が高まっている。インドネシアは周辺の警備を強化し、中国をけん制する狙いだ。
 インドネシアの今年の国防費は当初予算から約6・6%増の約106兆ルピア(約8250億円)となった。リャミザルド国防相は同日、記者団に「もっと多くの海兵隊や特殊部隊が駐留し、レーダーや無人機なども配備される。(武器などの)装備も新しくなるだろう」と述べた。中国が南シナ海の大部分を管轄していると主張する根拠の境界線「九段線」は、ナトゥナ諸島沖のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と一部が重なっている。
 リャミザルド氏は昨年末、800人規模の駐留兵士を約2000人に増員すると明らかにした。(共同)

《維新嵐》 インドネシアもアメリカの軍事支援をあてにしていないということはないでしょう。それでも大国共産中国の海洋覇権主義に対抗するために自国国防軍を活用する動きをみせています。
 ちなみにフィリピンは国際司法裁判所を使って解決しようとしています。





劣勢を承知の上で国防の覚悟を示したインドネシア

中国の横暴に対抗、南シナ海周辺で8カ国が軍事演習を実施

北村淳
2016.10.13(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48096


南シナ海に面したフィリピン・サンバレス州サンアントニオ沖で、米比合同演習に参加した米海兵隊の水陸両用強襲車(AAV7)(2016107日撮影、資料写真)。(c)AFP/TED ALJIBEAFPBB News
中国の海洋覇権確保の勢いが止まらない南シナ海周辺で、中国に脅威を受けている国々をはじめとする各国の軍隊が盛んに軍事演習を行っている。
同時期に実施された「フィブレックス」「ベルサマ・リマ」
ここのところオバマ政権の対中弱腰姿勢が続いてきたが、2016103日と4日、アメリカ太平洋艦隊は強襲揚陸艦と2隻の駆逐艦による対潜水艦戦、対空戦闘の演習を南シナ海で実施した。それに引き続き、4日から12日にかけて、フィリピンの南シナ海沿岸域で、アメリカ海兵隊とフィリピン海兵隊による米比合同水陸両用戦演習「PHIBLEX(フィブレックス) 33」が実施された。
 フィリピンのドゥテルテ大統領の暴言によってアメリカとフィリピンの間にはギクシャクした雰囲気が漂っているものの、毎年実施されているフィブレックスは予定通りに実施された。ただし、ドゥテルテ大統領によると、今回の合同演習でアメリカ軍との合同演習は最後になるかもしれないということだ。
 また、米国とフィリピンの海兵隊同士の合同演習が行われているこの時期に、フィリピン国防大臣は、南シナ海でのアメリカ海軍との共同パトロールからは手を退く方針を打ち出した。したがって、フィブレックスでは敵による上陸侵攻への対抗戦闘などの演習を行ってはいるものの、中国に対する抑止効果は薄くなってしまっている。

 一方で同じく2016104日から、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス5カ国の軍隊(海軍、陸軍、空軍)による「Bersama Lima(ベルサマ・リマ) 16」演習も南シナ海南部で実施されている。
 これら5カ国間には5カ国防衛取極(FPDA)」が存在し、マレーシアあるいはシンガポールが軍事攻撃を受けた場合には、締約国は協議の上、何らかの行動を起こすことが取り決められている。
 この合同軍事演習の目的は、5カ国の軍隊間の相互信頼、そして相互運用能力の醸成である。特に今年の合同演習では、中国による南シナ海への覇権拡大の勢いに対して、5カ国で牽制の意思を表示するという狙いがある。
インドネシアがナトゥナ諸島で演習を実施した理由
フィブレックスやベルサマ・リマと平行して、インドネシアでもインドネシア軍始まって以来の大規模な軍事演習(「Angkasa Yudha(アンカサ・ユダ)」)が実施された。かつてはインドネシアと中国との間には領域紛争がなかったため、インドネシア軍が中国の侵略を想定した軍事演習を行うことはなかった。しかし、今年になって大きく事情が変わったため、インドネシアが大規模軍事演習を実施したことは注目を集めている。
 今回のインドネシア軍の演習は、この種の演習の常で、公的には「定期的な演習」である。だが実際には、6月に開かれたナトゥナ諸島周辺海域の軍艦上の主要閣僚会議で“ジョコウィ”(ジョコ・ウィドド)大統領が示した「ナトゥナ諸島周辺海域を中国の海洋侵出の魔手から守り抜く」という防衛方針に沿った行動の一環であることは明らかである。
 なぜならば、もともとこの演習はスマトラ島東方海上のブリトゥン島で実施される計画だったのだが、中国によるナトゥナ諸島周辺海域への領域拡張意思の表明(本コラム2016630日「インドネシア大統領、中国の横暴に毅然と抵抗宣言」参照)があったために、ナトゥナ諸島で実施されることになったからだ。
 今回の演習には海軍艦艇は参加しなかったため統合海洋演習ではなかったものの、戦闘機、輸送機、各種ヘリコプターなどの空軍航空機合わせて70機と2000名の空軍将兵が参加しての過去最大規模の軍事演習であった(日本での報道では、海軍艦艇それも空母が参加したと伝えられているが、そもそもインドネシア海軍は空母など保有していない)。Su-27Su-30(ともにロシア製)、F-16A/C(アメリカ製)といったインドネシア空軍の主力戦闘機による空中戦演習や、沿海域への爆弾投下演習、それに占領された航空施設の奪還演習なども含んだ実戦的演習が繰り広げられた。
インドネシア空軍Su-27戦闘機
インドネシア空軍F-16戦闘機

国防の覚悟を示す必要性を知るインドネシア
 中国はナトゥナ諸島の領有権を主張しているわけではない。またインドネシアは南沙諸島に対する領有権を主張していない。そのため、インドネシアと中国の間には、南シナ海での領土・領海を巡るトラブルは存在しない。
 しかし、中国が南シナ海の大半を「中国の主権的海域」と主張する根拠となっている「九段線」の最南端付近海域はナトゥナ諸島周辺海域とオーバーラップしているとも考えられなくはない。なんと言っても九段線という曖昧きわまる“境界線”で囲った海域の範囲は、不明瞭の一語に尽きる。
 そのよう明確さのかけらもない境界海域に関して、中国側が「中国とインドネシアの主権的海域は一部がオーバーラップしている」と言い出したため、インドネシア側が警戒を強めているのは理の当然と言えよう。
 南シナ海や東シナ海での中国による海洋覇権確保のプロセスを観察すれば、相手側の軍事的弱点あるいは軍事的に弱腰な姿勢をついて中国の支配権を主張し続け、アメリカの軍事的関与が低下した状況が生じた隙に、場合によっては戦闘をも含んだ軍事力の直接行使によって、中国の実効支配領域に組み込んでいることは、誰の目にも明らかだ。
 インドネシアはそのような事態を少しでも抑止するために、自らが保持する航空戦力を最大限に投入してでもナトゥナ諸島周辺海域は守り抜く「覚悟」を中国側に見せつけたのだ。その際、中国人民解放軍海洋戦力との大規模な本格的軍事衝突になればひとたまりもない(注)ことは百も承知である。
(注:たとえば、インドネシア空軍はSu-27Su-30を合わせて16機、F-16A/C16機、それらより旧式の戦闘機を21機保有しているのに対して、中国空軍はSu-27とそれと同等のJ-11を合わせて250機ほど、F-16と拮抗するJ-10250機以上、中国海軍はSu-2724機、アメリカのF/A-18に匹敵するJ-1550機以上と桁違いの数の戦闘機を保有している。また、中国軍はインドネシア軍が保有していない早期警戒管制機や空中給油機それにミサイル爆撃機なども多数保有している。)
 いくら口先だけで「領土や領海を守る」と宣伝しても、中国の海洋拡張政策にブレーキをかけることは不可能である。インドネシアやベトナム(本コラム2015625日「中国の圧倒的な軍事力に立ち向かうベトナム」、2016818日「中国の海洋進出にロケット弾を向けるベトナム」)と同様に尖閣諸島という中国との主権衝突に直面している日本も、場合によっては軍事力を繰り出してでも自国領域は守り抜くとの強固な「覚悟」を行動を持って示さねばなるまい。

《維新嵐》 「男には負けるとわかっていても戦わなければならない時がある。」とは、松本零士氏の代表作品である『キャプテン・ハーロック』でハーロック自身が語っていた言葉ですが、南シナ海の大半を自国の「領海」と無謀な主張をする共産中国という国家があり、その領海のラインの根拠とされた「九段線」なる海の境界が、まことに周辺国にとってはあやふやで、受け入れがたいものである以上、自国権益を守るために持てる「戦力」が劣勢であったとしても、インドネシアという巨大なイスラム国家を防衛するためには、もてるミリタリーパワーを境界に集約しなければならない、その点での覚悟は行動からよく感じることができます。
漁船を体当たりされただけでびびりあがって、せっかく逮捕した「民兵」を航空機のビジネスクラスで「送還」するどこかの国よりは、よほど気概があるかと思います。
FPDA(5ケ国防衛取極め)との連携がインドネシア政府にとって対中防衛の鍵となるということかな?こうした国に投資を継続していきたいものですね。

米印合同軍事演習ガルーダ・シールド(陸軍演習)




2016年6月26日日曜日

終わりがみえないアフガニスタン戦争 

911から15年 終わらないアフガン戦争
岡崎研究所 20160616日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/6981

ニューヨーク・タイムズ紙は2016512日付社説で、タリバンとの政治交渉を実現するためにパキスタンに圧力をかけるべき時だと主張しています。社説の要旨、次の通り。
 911から15年になるがアフガニスタンの戦争は終結していない。責任の大半はパキスタンにある。330億ドルを支援し関係再構築の試みを何回かしてきたが、パキスタンは虚偽に満ちた、危険なパートナーのままだ。
責任はパキスタンにある
iStock
 アフガン駐留米軍の兵員数がどうなろうと、問題の核心は長期の平和はタリバンとの交渉によってしか達成できないということである。その交渉のカギを握るのはパキスタンだ。
 パキスタンの軍隊と諜報機関は長年タリバンとハッカニ・ネットワークを支持してきた。それでパキスタンの権益を守り、同時にインドの影響力増大を防ごうとしてきた。米国の圧力によりパキスタン軍は最近一部地域で対タリバン軍事作戦を行ったが、ハッカニは未だ自由に動いている。専門家によればパキスタン軍はハッカニをタリバンの指導部に組み込むことを目論んでいるという。
 パキスタンのやっている二重のゲームに長年米国は不満を持ってきたが、それは一層悪くなっている。コーカー上院外交委員長は8機のF16のパキスタン売却に対する米国援助付与を差し止めたが、賢明なことである。パキスタンは米国の援助なしで戦闘機を購入することはできるが購入額は約3.8億ドルから7億ドルに増える。
 アフガニスタンのガニ大統領もパキスタンに対する姿勢を硬化させている。ガニはタリバンとの交渉のためにパキスタンと関係改善に努めてきたが、暴力の増大を受けて見切りをつけた。4月にガニはパキスタンが同国内でタリバン指導者に軍事行動をとらない場合は安保理に提起するといった。
 パキスタンに圧力をかけるべきだが関係断絶は賢明でない。米国とパキスタンは引き続き諜報を共有しているし、パキスタンは米国の無人機の使用を許している。パキスタンは世界で最も急速に核兵器保有を増やしているので、米国は対話を維持し核兵器が過激派に渡らないようにする必要もある。
 昨年のアフガニスタン文民・軍人の死者数は2001年のタリバン崩壊以来最大になった。2014年に大統領に就任したガニはカルザイよりは信頼できるが、同政府は政治抗争、汚職、財政枯渇、高い軍人犠牲者数のために十分機能していない。
 このような情勢のためオバマは米軍を現状で維持し、場合によっては政策を変更してタリバンとの直接的な戦闘をすることにするかどうかにつき難しい決断を迫られている。16カ月前オバマは「米国の歴史の中で最も長い戦争は責任ある終結に近づいている」と述べたが、それは楽観過ぎた。如何にタリバンを政治交渉に引き込むことができるか。それはパキスタンによる戦争助長を止めさせることができるかどうかにかかっている。
出典:‘Time to Put the Squeeze on Pakistan’(New York Times, May 12, 2016
http://www.nytimes.com/2016/05/12/opinion/time-to-put-the-squeeze-on-pakistan.html
過去15年、アフガニスタンでは多くの軍事作戦が行われ、日本を含め多くの国が莫大な援助をつぎ込みました(日本だけでも約58億ドルの支援を実施)。しかし、国際社会の努力が無益だったということでは決してありません。国際社会の支援がなかったらアフガニスタンはもっと酷いことになっていたでしょう。また、完全には上手くいっていませんが、15年間の過程を通じてアフガニスタンは文明的な政治のやり方に触れてきたという学習効果は大きいです。
 パキスタンの問題はつとに指摘されていることです。社説は、アフガニスタン問題の大半の責任はパキスタンにあると厳しく批判しています。米国も手を焼くほどですから、パキスタン軍組織は驚くべき深淵さを持っているのでしょう。しかし、パキスタンの手強さのもう一つの側面は、その複雑な地政学的位置と、それを利用する政治力であるように思われます。パキスタンは依然として中国と深い関係を維持しています。中国は、パキスタンとインドの競争関係を利用し、アフガニスタンへの影響力を強め中国のプレゼンスは格段に高くなっています。更に、パキスタンはインドと並んで核を保有しています。
トランプは撤退を主張
 アフガニスタンから米軍が撤退するわけにはいきません。撤退すれば今までの努力が元も子もなくなります。オバマは201510月、16年末までに駐留米軍を撤退させるとの方針を撤回、16年の大半は9800人の駐留規模を維持し、大統領の任期末の171月時点でも5500人を残すと発表しました。当初、15年末までに5500人に減らす予定でした。オバマはこのまま約1万人を維持していくのか、あるいは昨年の発表通り5500人に削減するのかどうかを決断しなければなりませんが、削減できる状況ではありません。

 そしてオバマの後は次の大統領が決めることになります。クリントンは、昨年のオバマの決定を支持するとともに、アフガニスタンの民主主義と安全保障にコミットすると述べています。他方、トランプは13年頃には、アフガニスタンから撤退すべきだ、米国は多大の金を浪費している、と主張していましたが、今年3月の共和党討論会では、当面アフガニスタンに残るべきだと見解を変えています。また、パキスタンには厳しい見方をしているようです。
《維新嵐》 2001年の911同時多発テロ以降、首班と目されたウサマ・ビンラディンをかくまったとして、ほとんど一方的にブッシュ政権下のアメリカがアフガニスタンになだれこみ、タリバン政権に「報復戦争」とでもいうべき惨憺たる戦争をしかけました。正規軍による戦闘では、ほとんど勝敗はついているんではないでしょうか?タリバン首謀者もビンラディン本人も殺害されたわけですが、戦争自体はおさまってはいない様子がこの記事からうかがわれます。アメリカ合衆国の西の国防線の端であり、対イランの最前線に位置するアフガニスタンは、アメリカにとっては「親米政権」を打ち立てて、イラクと同様イラン包囲の要として拠点化したいという思惑があったのではないでしょうか?
しかし時代は、アメリカとイランの融和が進み、共産中国の海洋覇権主義とむきあって空軍、海軍力を投射していかなければならない現実を考えるとアジアむけの戦力をアフガニスタンにはりつけておく状態にはアメリカ政府もつらいものがあるでしょう。正直、ここまで戦ったわけですから、アメリカの希望を盛り込む形でタリバンと講和できないだろうか、とは思います。
今後どういう展開をみせるのでしょうか?撤退の時期の見定めが難しい地域といえます。

オバマがアフガン撤退を見直した理由

岡崎研究所 20160810日(Wedhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7454

アフガン駐留米軍の撤退計画をオバマが見直したことにつき、ワシントン・ポスト紙の201676日付社説が、これを高く評価するとともに、クリントンとトランプはアフガンについてどうするつもりなのかはっきりすべきである、と言っています。要旨、次の通り。
遺産に固執しなかったオバマ
オバマは、4年前の再選を目指す選挙運動で、米にとり「戦争の潮流は退きつつある」と主張したが、76日、その潮流が戻ってきた現実をついに認めた。オバマはかつて、20171月までに少数の米兵を除いてアフガンから撤退させることを熱望していた。しかし今回、8400人(秋には5500人にするとしていた)を遺産として残すことにした。立場の変更は、タリバンによる不安定の増大を含むアフガン情勢はさらなる撤退を正当化し得ないとのペンタゴンとNATO同盟国の主張を受けたものである。オバマは、遺産として望んだことに固執するのではなく、彼らの助言を受け入れた。称賛に値する。
 部隊の拡大は、オバマが説明した通り、3つの重要な結果をもたらす。第一に、米軍は、アフガン軍のタリバンに対する抵抗力を強化し続けることができる。タリバンは、昨年、政府軍に多大な犠牲を強いながら、いくつかの領域を獲得した。米軍が駐留するアフガンの東と西にある2つの重要な基地は、閉鎖されずに残る。米の約束は、米軍以外に6000人の兵士を送り込んでいるNATO率いる41カ国の有志連合による軍事的関与の拡大にも道を開くことになろう。ワルシャワでのNATOサミットでは、有志連合からアフガン軍への2020年までの資金提供の約束が期待される。
 さらに決定は、オバマが指摘する通り、タリバンに「この紛争を終わらせて外国軍を撤退させる唯一の道は、永続的な政治的解決を通じて以外にない」と認めさせることになる。かつて、オバマの米軍撤退のタイムテーブルは、タリバンの指導者に、米軍の撤退によりカブール政府が崩壊するのを待てばよい、と期待させたはずである。今や、米とNATOの新たなコミットメントにより、ガニ大統領は、和平交渉を開始する力を得たかもしれない。
 最後に、オバマの動きは、後任大統領に比較的安定した軍事状況を引き継ぎ、米の対アフガン関与についての自らの判断を下すことを可能にさせるだろう。ヒラリー・クリントンはアフガンについてほとんど何も語っていない。他方、トランプは自己矛盾している。両人とも11月までに、就任したならばどうするのか、説明しなければならない。
 オバマは、2300人の死者を含む、アフガンにおける15年間の米の投資と犠牲を、任期中に破滅的な終わらせ方をしないための、最小限のことは実施した。後任の大統領は、オバマの恣意的な撤退タイムテーブルの設定という誤り、そして、それを改めた政治的勇気の双方から学んで然るべきである。
出典:‘Mr. Obama makes the right call in his final commitment to Afghanistan’(Washington Post, July 6, 2016
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/a-final-commitment-to-afghanistan/2016/07/06/6b83c14c-43a0-11e6-bc99-7d269f8719b1_story.html
オバマの勇気を称賛
 今回、オバマは退任時、駐アフガン米軍を8400人残すとの決定をしました。任期中にほぼ完全撤退するとの選挙運動中の公約を変更したのですが、社説は、こういう変更をしたオバマの勇気を称賛しています。公約違反を咎めてはいません。
 撤退予定の公表は敵の期待に大きな影響を与えます。いつまで頑張ればいいのかを敵に示すことになり、戦局に大きな影響を与えることになります。それに、撤退の判断は現地の状況にかかわるので、タイムテーブルを前もって示すこと自体、賢明とは言えません。オバマ大統領が撤退のタイムテーブルを前もって示したことは過ちでした。これをいま変更したのは勇気ある決断と言ってよいでしょう。自分のレガシー残しなどを考慮外に置いたとすれば、これも立派なことです。
 タリバンがこの決定にどう対応するかはまだ分かりません。和平交渉に出てくるか、どうせ米は引き下がると見て、攻勢を強めてくるか、分かりません。しかし、後任の大統領に色々な決定の可能性を残したことは確実です。ただし、それがクリントン、トランプにとって歓迎できることかどうかは分かりません。難しい決定を先送りしたという面もあるからです。

 アフガン政府軍は今なお弱体であり、タリバンとの交渉に持ち込めるような力があるのか、疑問です。今回の決定で和平交渉が始まるかどうかについては、否定的に考えるべきでしょう。15年以上支援してきても、ものにならない政府軍に期待しても、どうしようもない気もします。米国の資源も限られているので、アフガンにどれほど注力するかはよく考えるべき論点でしょう。
オバマはタリバンが任期中にカブールに凱旋するのを避けたい、NATO同盟国も参加している戦闘を放棄する形になることを避けたかった、との解釈もあり得ますが、動機を詮索してもあまり意味はありません。ともあれ、この決定によりアフガンの現状は今しばらく続くことになりました。

2016年6月25日土曜日

【共産中国の軍事的脅威にどう対処するのか?】アメリカのFON作戦を逆手にとる共産中国 ~ 日本政府は国際海洋法を盾に領海侵入を阻止できるか?

日本の接続水域と領海を航行した中国海軍の狙い
日米の失策が招いてしまった中国の対日「FONOP
日米印合同海軍演習「マラバール2016」。日本の領海に侵入した中国海軍のスパイ艦は合同訓練の情報収集に従事していた(写真:アメリカ海軍)

201668日から9日にかけて、中国海軍フリゲートが尖閣諸島周辺の日本接続水域内を航行した。そして引き続き15日には、中国海軍情報収集艦(スパイ艦)が口永良部島周辺の日本領海内を航行し、翌日16日には同艦が北大東島周辺の日本接続水域内を航行した。
統幕長の声明の数日後にスパイ艦が領海に
日本政府は、1回目の事案に関しては外務次官が夜中に駐日中国大使を呼びつけて厳重な抗議を行ったが、2回目と3回目の事案に対してはアジア大洋州局長が駐日中国公使に懸念を伝達するにとどめた。
 また、1回目の事案を受けて自衛隊のトップである統幕長は(接続水域内航行よりも日本にとってさらに深刻な脅威である)領海内航行といった事態が生じた場合には、中国艦艇に対して断固たる姿勢で対処すると明言した。この統幕長の声明は、「海上警備行動」の発令を防衛大臣に求め海自艦艇や航空機を出動させて中国艦の日本領海内航行を妨害することを意味する。
 しかしながら、このような声明を発した数日後に、中国海軍スパイ艦が実際に日本領海内を航行する事態が生じた。その際、「海上警備行動」は発令されなかったし、海自艦艇や航空機が中国海軍スパイ艦の日本領海内航行を妨げようとする試みもなされなかった。
日本領海を航行した中国海軍東調級電子偵察船(写真:防衛省)

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで中国海軍スパイ艦の写真をご覧いただけます。共産中国の情報収集艦
“虎の威”ではなくなりつつある米海軍
中国海軍スパイ艦が日本領海内を航行する前日の14日、防衛大臣はアメリカ太平洋艦隊のスコット・スウィフト司令官と東京で会談し、東シナ海での活動を活発化させる気配を示している中国海軍艦艇に対して、日米の連携を強化することを確認し合ったばかりであった。
 もっとも、スウィフト司令官にとっての「日米連携」とは、「日米共同訓練などをさらに充実させることによって、日米両海軍の連携を強化させ、その結果として中国海軍に対処していこう」といった米軍側の基本姿勢を意味していた。それに対して日本側は、「アメリカ軍という“虎の威”を借りて中国海軍の動きを抑止しよう」といったこれまで通りの期待を込めての「日米連携」であったようである。
 しかしながら、南シナ海や東シナ海をもはや“ホームグラウンド”としつつある中国海軍にとって、アメリカ海軍はもはや“虎の威”とは映っていない。
 アメリカ太平洋艦隊は、中国海軍を“脅かす”目的を持って空母2隻を中心とする強力な艦隊をフィリピン海に展開させていた。それにもかかわらず、中谷防衛大臣とアジア太平洋海域を統括するスウィフト司令官の会談の直後に、中国海軍のスパイ艦が日本の領海内を航行した。そのスパイ艦は、明らかに日本・アメリカ・インド海軍により実施されていた合同訓練の情報収集に従事していた。
中国政府を正面切って批判できないアメリカ
日本のみならずアメリカまでもが中国海軍に“なめられた”形となってしまったわけだが、アメリカは中国海軍の日本接続水域内航行や領海内航行に対しては、日本政府の肩を持って中国海軍や中国政府を正面切って批判できないジレンマに直面している。
なぜならば、アメリカ政府は南シナ海において中国をターゲットにした「FONOP」(航行自由原則維持のための作戦)を実施しているからだ。
本コラムで幾度か取り上げたように、アメリカ政府は第三国間の領域紛争には介入しないことを外交鉄則に掲げている。そのため、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島に対する中国の領有権主張に直接反対することは差し控えている。その代わりにアメリカ政府は、中国政府の「南沙諸島や西沙諸島の周辺の“中国領海”に接近あるいは進入しようとする外国艦船は、事前に中国政府の許可を得なければならない」という主張に対して、「そのような中国政府の方針は、国際海洋法の大原則である航行自由原則を踏みにじるものである」と主張する。その主張に基づいて、航行自由原則を中国側に遵守させるためのFONOPを太平洋艦隊に実施させているのである。
 具体的には、アメリカ軍艦や哨戒機を、南沙諸島や西沙諸島の“中国領海”内の海域や空域を通航させて、中国側を威圧し国際法を遵守させようというものだ。201510月、20161月と5月の合計3回ほど実施されている。
 しかし、中国に対して遠慮がちなオバマ政権は、米海軍などの対中強硬派が主張するように「中国側を威圧して国際法を遵守させる」作戦には難色を示し、「軍事的威圧にはならないように、国際法に則った『無害通航権』を行使するレベルでの示威行動」に限定してしまった。そのため、対中FONOPはさしたる効果を上げていない。
それどころか、中国はこのような中途半端なFONOPを逆手に取り、日米同盟切り崩しの“対日FONOP”を開始した。
日本政府も国際海洋法を一部制限、口を閉ざす米国
69日から16日にかけての中国軍艦の接続水域航行、領海内航行に対して、日本政府は次のような対応を見せた。
1)日本政府は、少なくとも中国軍艦に対しては国際法上の航行自由原則ならびに無害通航権を国際法上の条件ではなく日本政府の判断のもとで制限する方針である。
2)それらの制限は尖閣諸島周辺海域では著しく強化され、日本政府は同海域の日本領海内では中国軍艦の無害通航権は一切認めない。
3)同様に、日本政府は尖閣諸島周辺海域の日本接続水域内では、中国軍艦に対しては航行自由原則をも制限する。
 つまり、日本政府が国際海洋法を一部制限する姿勢が明らかになったのだ。
 もちろん、これは尖閣諸島の領有権を巡って日中間が紛争中であるために、日本政府が尖閣諸島周辺海域での中国軍艦の動きにとりわけ神経をとがらせている結果であることは、アメリカ側としても十分理解できる。
 しかしながら、そのような日本政府の姿勢は、一見したところ、南シナ海での中国政府による国際海洋法の一部制限と類似している。そのため、南シナ海で中国に対して圧力をかけようとしているアメリカ側の「正当化の根拠」と真っ向から衝突してしまう。そもそも南シナ海におけるアメリカのFONOPは、国際海洋法の大原則である航行自由原則を中国政府が認めないことに対抗して実施されているのだ。
 だからこそ、南シナ海でのアメリカ海軍のFONOPを苦々しく思っている中国は、日本の接続水域や領海にまで軍艦を乗り入れることにより、日本よりも、FONOPを実施しているアメリカを困惑させようとしたのであろう。
 実際に、今回発生した一連の日本接続水域や日本領海での中国軍艦の活動に対しては、アメリカ政府は口を閉ざしている状態だ。

 この期に及んでも日本当局の指導者には「“アメリカと協力”して対処策を打ち出す」といった第三者的態度をとる者が見受けられる。しかし、中国が核兵器を持ち出さない限りは東シナ海沿岸域の防衛は日本自身の問題であり、アメリカが乗り出してくる問題ではないことは、アメリカ政府による今回の対応が雄弁に物語っている。

《我が国政府の対応》
軍艦侵入で中国が勝手に国際法解釈「国際海峡を航行」
中谷防衛相「中国側の独自の主張は受け入れられない」

2016.6.18 10:52更新 http://www.sankei.com/politics/news/160618/plt1606180018-n1.html

 中国海軍が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海での活動を活発化させている。中国側は、国際法を独自に解釈して一連の航行を正当化しようとしており、日本政府内で警戒感が広がっている。
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は17日の記者会見で、「一方的にわが国周辺海域での行動をエスカレートさせている中国軍の活動全般について懸念している」と批判。これに対し、中国国防省は17日に談話を発表し、「日本側は、中国海軍艦艇の合法的活動について、理由もなく再三あおり立てており、理解できない」と反論した。
 また、中国側は15日に鹿児島県口永良部島沖の日本領海に侵入したことについて、独自の主張を展開。華春瑩報道官は17日の記者会見で「(航行した)トカラ海峡は国際航行に使われている国際海峡で、国連海洋法条約に基づく通航権を行使した」と正当化。華氏は同海峡が国際海峡である根拠は示さなかったが、「(日本は)国際法をよく勉強すべきだ」とも述べた。
 中谷元(げん)防衛相は同日の記者会見で「国際航行に使用されている海域には該当しない。中国側の独自の主張は受け入れられない」と切り捨て、「通常、領海内に軍艦が入るときには事前の連絡や通報があってしかるべきだ」と指摘した。
 ただ、今回の航行が国際法上認められた「無害通航」に当たるかどうかは「分析中だ。無害通航でないとは言い切れないし、無害通航だとも言い切れない」と述べるにとどめた。

《維新嵐》 我が国政府は、共産1中国の情報監視艦艇の「無害通航権」を認めることになるのでしょうか?我が国政府のスタンスははっきりしていると思います。

《アメリカ海軍の対応》
米、中国牽制へ駆逐艦3隻を派遣
2016.6.25 11:52更新 http://www.sankei.com/world/news/160625/wor1606250038-n1.html

 米海軍は2016624日までに、南シナ海にイージス駆逐艦3隻を派遣し、警戒監視活動を始めたことを明らかにした。南シナ海の領有権争いをめぐっては7月にも国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所の判断が出るとみられている。米国は3隻の派遣により、南シナ海で人工島を造成し、軍事拠点化を進める中国を牽制する狙いとみられる。
 3隻が、中国が領有権を主張する島々の12カイリ(約22キロ)内に艦船を派遣する「航行の自由」作戦を展開するかは不明。米海軍は「海賊行為や不法行為のような国際法に対する挑戦」に関して「海洋安全保障上の作戦を実行する用意がある」としている。
 米海軍によると、今回派遣されたのはイージス駆逐艦の「スプルーアンス」「ディケーター」「マンセン」の3隻。4月27日にハワイの真珠湾を出発し、6月22日までに南シナ海で警戒監視活動を始めた。(共同)

《維新嵐》 南シナ海、東シナ海の自由航行の権利を守るためにアメリカも妥協のないスタンスを貫いていますね。

米バイデン副大統領が習近平国家主席に発言
「日本は一晩で核保有可能」
 【ワシントン=加納宏幸】ジョー・バイデン米副大統領が中国の習近平国家主席に北朝鮮核・ミサイル問題での協力を求めた際、「日本が明日にでも核を保有したらどうするのか。彼らには一晩で実現する能力がある」と発言したことが23日、分かった。
 バイデン氏が米公共放送(PBS)のインタビューで語った。

 習氏との協議の時期は明らかにしなかったが、習氏が「中国軍は米国が中国を包囲しようとしていると考えている」と述べたのに対し、バイデン氏が日本に触れ、米中の連携がなければ日本の核保有があり得るとの認識を伝えたという。

《維新嵐》 軍事的、政治的と多角的なチャンネルで共産中国の矛をおさめさせようとしています。あくまで対中牽制でしょう。本気で我が国に核兵器保有をおしつけるとも思えません。だいたい我が国の世論は核兵器保有にはアレルギー的な反対論の方が根強いです。


南シナ海米中対立の今

インドネシアも南シナ海での対中警戒を強めています。ある意味「対中包囲網」ができあがっている感があります。

インドネシア、中国に対抗姿勢強める
「中立」から転換・経済水域保護へ特別班発足
中国の漁船に接近するインドネシア海軍艦艇「イマム・ボンジョル」=17日、南シナ海のナトゥナ諸島沖(ロイター)
【シンガポール=吉村英輝】インドネシア政府は2016623日までに、中国が軍事拠点化を進める南シナ海での自国の権益保護に向け、国連海洋法条約に精通した専門家による特別班を結成することを決めた。南シナ海での中国の領有権主張をめぐっては、フィリピンの提訴を受けた常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が近く、結論を出す見通し。「中立」を表明してきたインドネシアが法的措置に乗り出せば、中国には大きな逆風となりそうだ。
 ジョコ大統領は2016623日、南シナ海南端のインドネシア領ナトゥナ諸島沖で海軍艦船を視察し、同行したルトノ外相など主要関係閣僚らと艦上で会議を開いた。
 諸島沖合の排他的経済水域(EEZ)では17日、同国海軍が不法操業の中国漁船を拿捕(だほ)した。だが、中国外務省は19日、現場海域は「中国漁民の伝統的漁場」だと声明で非難した。異例の艦上会議は、「中国の主張を認めることはできず、大統領は事態を深刻に捉えている」(ルフット調整相)との意思表示だ。
ジョコ氏は20日、国際法で認められたナトゥナ諸島周辺海域の権益保護のため、法律家らによる特別班の結成を指示した。中国が南シナ海の9割を管轄していると主張する根拠の「九段線」は、ナトゥナ諸島沖のEEZと重複する。この海域では、インドネシア当局が不法操業中の中国漁船を今年3月に摘発しながら中国海警局の監視船に漁船を奪われ、5月は海軍が出動して拿捕に成功した。
 インドネシア海軍幹部は21日、「(不法操業は)単なる口実に過ぎない」とし、「真の狙いは(同海域には)主権があるとの主張を確立することにある」と指摘。国軍のガトット司令官は、ナトゥナ諸島周辺海域への航空機投入と艦船5隻の派遣を決め、密漁船を“保護”する中国の監視船に対応するとした。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の「盟主」であるインドネシアは、南シナ海の領有権で対立する中国と加盟国の間で「調整役」を担ってきた。だが、不法操業をめぐる摩擦で、中国との緊張が高まるのは避けられない情勢だ。

村井智秀氏 南シナ海の米中対立 米軍との圧倒的な実力差を前に手出しできない中国
直接実弾がとぶような紛争は米中双方ともさけたいという意思が強いはずです。