2015年10月10日土曜日

銃社会アメリカの「国防理念」 ~民兵と州軍について~

チョコやジュースの横でライフルを売る国、アメリカ――どうしても銃を手放せない本当の理由
米オレゴン州ローズバーグで、銃乱射事件が起きたアンプクア・コミュニティー・カレッジから避難する学生や職員ら(2015101日撮影)。(c)AFP/Michael Sullivan/The News-ReviewAFPBB News

 先週、アメリカのオレゴン州のコミュニティカレッジで、拳銃とライフル銃で武装した1人の男が9人の学生を射殺する事件が発生した。オバマ大統領は「アメリカはこの種の事件に無感覚になってしまっている」と怒りの声明を発した。
銃に麻痺している社会

 2015年だけでもすでに7件の銃乱射事件が発生している。また、学校で発生した乱射事件は、2011年以降だけでも今回の事件で55件目である。
 乱射事件以外に銃を使った殺人や強盗などは枚挙に暇がなく、アメリカ各地で銃を使った犯罪がひっきりなしに発生している。確かにオバマ大統領が言うように、アメリカ社会は乱射事件に麻痺してしまっているようである。というよりは、銃そのものに対して麻痺してしまっているというべきであろう。
 例えば、ほとんどの州では、重罪を犯したものや精神病歴のある人以外の一般市民は誰でもライフル銃や散弾銃や拳銃を購入することができる。ただし、全くの野放しではなく、ライセンスを持った銃器店で購入する際にFBIと州の警察の犯罪歴照会が必要である。しかし、人口の何十倍もの数の銃器があふれてしまっているため、正規のルート以外でもいくらでも銃を手にすることができる。
アメリカ軍の制式拳銃は6万円ほどで購入できる 
最もポピュラーなタイプのライフル銃

また、銃器店といっても、銃だけを扱っている専門店以外にも、スポーツシューズや野球の道具などを扱っている一般のスポーツ用品店にも銃コーナーが設けられている場合も多い。食料品や衣料品などを扱っている大手スーパーマーケットチェーンにも“立派”な銃コーナーを設置している店すらある。チョコレートやジュースの横で、拳銃やライフル銃が陳列されている光景は、多くの日本人にとっては驚き以外の何物でもあるまい(ただし、カリフォルニア州やハワイ州では規制が厳しく、このような光景は見られない)。
 さらに、麻痺していると考えざるを得ない情景は、銃器店に並んでいる銃の種類である。さすがに、自動ライフル銃や自動拳銃(引き金を引いている間、弾丸が発射され続ける)は禁止されているものの、それらとあまり変わらない半自動ライフル銃や半自動拳銃は合法である。そして、陸上自衛隊でも最近まで装備していなかったと思われる、装甲車輌や超長距離の狙撃に用いる対物狙撃銃が銃器店に置いてあり、一般市民でも購入できるのであるから驚きだ。
世界最強のバレット対物狙撃銃も100万円ほどで販売されている
アメリカ合衆国憲法修正第2条と国防

 このような銃の氾濫に対して、なんとか個人が所有する銃を規制すべきであると考える人々も少なくない。そして、とりわけ乱射事件が発生すると、メディアなどでは銃規制の問題が取り上げられ、一時的には規制派の発言力が強くなるかに見える場合もある。
 しかし、結局は銃規制の強い声は沈静化してしまい、やがて乱射事件が起きてまた騒ぎになる、という一連の流れの繰り返しが続いている。
 なぜ、多くの人々が銃犯罪によって命を落としているのに、銃規制がなされないのか?
 それは、アメリカ合衆国憲法 修正第2条が存在しているからである。修正第2条は、銃保有そのものだけに関する条項というわけではなく、アメリカの国防哲学の根幹に関わる“精神”に関する条項であるため、なかなかその本質を理解することは難しい。
Sedond Ammendment: The U.S. Constitution
(修正第2条:アメリカ合衆国憲法)
A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State, the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.

(規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるので、人民が武器を保有し携帯する権利は、これを侵してはならない。)


修正第2条の起源はアメリカ合衆国憲法本文より古く、アメリカ合衆国がイギリスから独立する際に、独立13州がそれぞれの州の憲法に定めていた条項にある。
 例えばバージニア州では、武器取り扱い訓練を受けた州人民、すなわち「規律ある民兵」こそが自由な州を防衛する「適切な、自然な、そして安全な主体」である、と宣言していた。同様にペンシルバニア州では、「人民は、彼ら自身と州を防衛するための武器を保有する権利を有する。平時においては常備軍は自由にとって危険な存在であるため、それを維持すべきではない。そして、軍隊は人民の権力のもとに厳格に従属させられ、かつ管理されなければならない」と宣言された。
 このように「各州の防衛の主体は民兵組織であって、常備軍は危険である」という思想はバージニア州やペンシルバニア州にとどまらず、アメリカ合衆国を建国に導いたリーダーたちに幅広く共有されていた思想であった。つまり、個人的にも自分の身は自分で武装して守り、集団的にも州の独立も自ら武装して守り、州の集合体である国家の独立も自ら武装して守るというわけである。
 結局、1787年にアメリカ合衆国憲法が制定(発効は1788年)された際には、アメリカ合衆国議会に陸軍ならびに海軍を設置し管理監督する権限が定められたため、国家の常備軍設置への道筋が実質的に認められた形になった。同時に民兵組織は各州の権限であることも明示された(ただし、憲法には連邦常備軍の内容に関する規定はない)。
 しかしながら、トーマス・ジェファーソンをはじめとする強力な中央集権国家体制に反対する「反連邦派」と呼ばれる人々は、人民の権利に関する憲法修正条項(信教の自由、言論の自由、出版の自由、集会の自由、財産権の保障、公開裁判の権利、人民の武装の自由、不当な逮捕の禁止、残虐な刑罰の禁止など)を提案し、それらのうちの10箇条が連邦議会で承認されて憲法に追加された(1791年発効)。それらの修正条項は「権利の章典」と呼ばれており、その第2条が「修正第2条」である。
「国家の常備軍は、それが人民の抑圧の道具として用いられてしまう可能性があるために極力排除すべきであり、戦時には規律ある民兵を動員して国家を守りぬこう」というのが修正第2条の根底に流れている防衛思想なのである。そして、防衛するためには武器が必要であるという必然的理由から、個々の人民にも武装する権利が認められたのである。
民兵なき現代でも生き続ける修正第2

 修正第2条が憲法化された当時は、個々の人民が武装して自分自身や家族だけでなく民兵組織の構成員となって国家を防衛することが、この条項の明らかな目的であった。実際に、アメリカ独立戦争ではマスケット銃を手にした人民からなる民兵組織がイギリス正規軍と戦闘を交えたのだった。当時の戦闘においては、個人が保有する小銃や短銃であっても、それなりに威力を発揮しえたのである。
独立戦争でイギリス軍と戦う民兵部隊

しかしながら、時代の変遷とともに、兵器は急速に発展し、ライフル銃や拳銃などで武装した市民を集めた民兵組織程度ではとても国家の防衛などはできなくなった。ミサイルが飛び交う現代においては、民兵を動員して国防戦を戦うなど思いもよらないアイデアである。
 そのため、個々人の銃器の所有や携行をできるだけ幅広く規制しようとするオバマ大統領をはじめとする銃規制派の人々は、修正第2条を以下のように解釈する。
 条文にある「人民が武器を保有し携帯する権利はこれを侵してはならない」という部分は、あくまで民兵組織を構成する個々人を前提としているものである。現代において民兵的組織と考えられるのは州軍である。そのため、修正第2条はそのような公的に認められた武装組織を構成する個々人の武器保有を認めるものだ、という解釈になる。
 このような修正第2条の解釈は「集団的自衛権説」と呼ばれている。当然、一般の人々が自由に武器を持つ権利は規制されてしかるべき、ということになる。
 これに対して、修正第2条を根拠に人民が武器を保有する権利を主張する人々は、修正第2条の「人民が武器を保有し携帯する権利」は個々人が自然に有する権利であると主張する。したがって、「個別的自衛権説」と呼ばれている。
 そして、確かに民兵で国家を防衛する時代ではなくなったかもしれないが、個々の武装したアメリカ市民こそが「民兵となってでも国家を守り抜く」という覚悟を持っていることこそが、アメリカ建国の基本理念の1つであると考えるのだ。


すなわち修正第2条擁護派の人々にとっては、個々のアメリカ市民が武器を所有することを禁ずるということは、個人レベルでも州レベルでも連邦レベルでも「自分の身は自分で守る」というアメリカ建国の精神を損なうことを意味し、絶対に認めるわけにはいかないということになるのである。
「憲法第9条」以上に解決困難な「修正第2条」

 このように、個人による銃の保有をめぐっての対立は、単に銃が社会に氾濫していることによって引き起こされる悲劇をどう減らすのか? といった問題にとどまらず、「軍隊の本質は民兵組織であるべきだ」というアメリカ軍建軍の精神や、「個人レベルでも国家レベルでもあくまで自主防衛を主軸に据える」という防衛思想とも複雑に絡み合った国家レベルの問題ということができる。
 銃規制というものが豊臣秀吉の刀狩り以降社会の隅々に至るまで深く浸透している日本の多くの人々から見れば、ひっきりなしに銃犯罪が起きているアメリカで依然として銃の所有が認められていることは奇異に感じられるであろう。
 しかし、修正第2条に関する対立はアメリカ国家存立の精神や国防の基本哲学に関する対立をも含んでおり、日本国憲法第9条を巡る対立以上に解決困難な問題なのである。

《維新の嵐コメント》「国軍」よりも「民兵」の自主的な判断、あくまで「個別的自衛権」において「国防」を果たしていくという思想が、銃社会アメリカの根本にあるということがよくわかりました。
 アメリカ社会において、「連邦軍」(=「国軍」)よりも州軍の方が、身近で「重要視」されているとみられる事例をあげさせていただきます。
 北村氏がいわれるように、我が国は豊臣秀吉の刀狩り令、徳川幕藩体制により、武器は「公儀」といわれる幕府中央政府や地方の藩政府が管理される形で歴史が積み重ねられてきたため、民兵や地方軍を武装化する発想にはなりません。
 しかし我が国の国土の特性を生かして、「防衛戦略」を実行していくためには、「国軍」格である自衛隊と連携する形で、さらに組織化された地方軍があった方が、より効果的な抑止力を担保できるように思います。

2015.05.12 15:00  『真実を探すブログ』 http://saigaijyouhou.com/blog-entry-6455.html

 アメリカのテキサス州で「米連邦政府が演習に紛れてテキサス占領に乗り出す」というような噂が拡大して騒動になっています。事の発端は米軍が今年7月から9月に予定している国内で実施予定の大規模な軍事演習です。

元々、独立志向の高いテキサス州は共和党が抑えていることもあり、民主党のオバマ大統領に危機感を持っていました。そんな情勢下で
「オバマ大統領が司令官の米軍が占領に来る」等と噂が広がった結果、遂にはテキサス州のアボット知事(共和)が州兵に軍の動向を監視するよう命じる事態になっています。

ホワイトハウスは「憲法上の権利が侵されることは決してない。知事が何を考えているのか見当もつかない」と述べていますが、今もテキサス州では警戒ムードが継続中です。

軍がテキサス占領?=うわさ広まり騒動に-米
 【ワシントン時事】米連邦政府がテキサス占領に乗り出す-。米軍が今年7月から9月にかけて国内で実施予定の大規模訓練をめぐり、こんなうわさがインターネットで広まり、テキサス州のアボット知事(共和)が州兵に軍の動向を監視するよう命じる騒動に発展している。
 この訓練は、陸海など4軍の特殊部隊がテキサス、ユタなど7州を舞台に展開する「ジェード・ヘルム15」。民有・公有双方の土地を利用する特殊部隊向けとしては最大規模の訓練で、テキサス州には約1200人が派遣される。

 だが、訓練プログラムでは同州が「敵地」に想定されていることから、保守的で独立不羈(ふき)を好む州民感情を刺激。最高司令官がリベラル色の濃いオバマ大統領ということもあり、「軍が戒厳令を敷いて州を占領する」とする陰謀論がささやかれ始め、知事は先月28日、私的財産権などが侵害されないよう州兵に訓練の監視を指示した。


 これに対しホワイトハウスは「憲法上の権利が侵されることは決してない。知事が何を考えているのか見当もつかない」(アーネスト大統領報道官)と懸念を一蹴している。



アメリカの州兵と国軍

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/1831894.html

 アメリカには州兵というものがあるみたいですが
国軍との違いはどこにあるのでしょうか?
州の利害が対立したときに内乱のもとにならないのでしょうか?



合衆国軍は連邦全体の国防や他国との戦争の任務遂行するために存在し、最高司令官は大統領です。
 州兵は州ごとの治安維持や災害事業に関わるということです。こちらの最高司令官は州知事です。イラクにアメリカ軍が派遣され、その中に州兵も含まれていますが、州兵は有事の際には大統領令により合衆国軍に組み込まれ海外に派兵されることもあります。しかし今回のイラクには相当数の州兵が各州から派遣されたことで、人員が不足しているという事態も起こっています。例えばこの夏のニューオーリンズのハリケーン災害では災害救助や治安維持に対処する州兵が足りないという事態も起こり、連邦軍の派遣も検討されましたが、現在の合衆国の法律では連邦軍が国内の治安維持活動ができないという問題も起こり、様々な問題を引き起こしました。州内の治安維持活動に当たる軍隊は州兵だけが出来ることなのです。
 また余談ですが、ブッシュ大統領がベトナム戦争時に州兵にいたということで、ベトナムに派遣されるのを避けるために州兵に志願したという噂が流れ民主党議員から非難されたこともあります。
州の利害が対立して州同士がが内乱が起こるということはありえませんが、州知事が連邦政府に反旗を起こし、強権的に州兵に連邦軍との戦闘をさせる可能性はあります。しかしアメリカは民主主義国家なのでそういった独裁的な危険に満ちた知事はその前に民衆から支持を得られないでしょう。
 まず指揮の問題ですが、平時の治安維持・災害救助の時は州知事の指揮に服することになっています。
 制服組のトップにAdjutant Generalというおっさん(この御時世、おばさんもいるかも知れませんが)がおり、こやつが幕僚としてアドバイスをします。この時は、連邦側つまり国防総省や米陸空軍は直接の指揮権を州兵に行使することは出来ません。
 一方、戦争やそのほかの国家的緊急事態が発生すると、州兵は大統領令によって動員され、連邦陸空軍、ひいては大統領の指揮下におかれます。
 この大統領令は州知事の許諾をまったく必要としません。
 じゃあ、内戦になったらどうなるかは、多分、「戦争時・国家的緊急事態」って奴になりますから、大統領の指揮下に入ると言うことに成ると思います。
 これ、一応の前例があります。
 1962年、公民権運動の一環で、黒人がミシシッピ州立大に入学しようとします。ところが州知事が、州兵を動員して入学を阻止。これに対抗するケネディが大統領命令によって、州兵を連邦軍の指揮下に編入して対抗しました(この時はFBI=これも連邦の組織=を支援するために連邦指揮下に置くという名目だった気がしますが)。
 ただ、どこぞの州が本気で反乱を起こすならこんなものは無視するでしょうが、合衆国成立当時と比べて、連邦政府の権限は強いですから。
また、州兵空軍がある理由ですが、州兵は基本的に陸軍の組織です(海軍は費用や専門性などから州で養える組織ではありませんし、陸軍は植民地自衛のための民兵が基になっているが、海軍は違うという歴史的経緯もあります)。
 米空軍は米陸軍航空隊が分離独立して出来た組織なので、この時合わせて州空軍も置かれることになりました(1947年)。なお、本土防空にあたっているのは全て州兵空軍です。

解答2 州兵というのは、日本でいうと消防団のような、ボランティアに近い性格のものだそうです。
週一回の訓練があり、そのかわり何ドルかの報酬があるそうです。
また、奨学金がもらえるなどの優遇があるため、参加する進学希望者も多いと聞きました。
それでもいざとなれば、太平洋戦争やイラク戦争に派遣されるのですから大変ですね。

解答3 州兵はアメリカの陸軍、空軍の組織の一部です。海軍と海兵隊にはありません。元来は陸軍だけの組織でしたが、空軍は陸軍航空隊から独立発展した経緯から州兵を持ちます。
州によって若干の違いはありますが、基本的に常備部隊ではなく必要に応じて召集される第二線の予備部隊です。州内の治安や防衛を任務にしていますが、イラク戦争のように、場合によっては正規軍の一部として州外、国外に派兵されることもあります。
元来は州に属する軍隊でしたが、第一次世界大戦以降、州兵の動員、命令権は合衆国大統領に一本化されているようです。

解答4アメリカは、「連邦国家」なので、極端な話、「主権を有する国家」同士の連合体といえます。ですから、独立国である各州において軍事組織である州軍が存在するのは、自然な話です。連邦軍は、連邦全体の利益のために結成されたものであって、州兵とは目的が異なります。ただ、例外的に内線に陥った例としては、「civil war」(アメリカ南北戦争)がありますので、「内乱の元になるケース」も「皆無」とまでは言い切れません。ですが、最近ではそんな発想自体、無いのではないかと思います。


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