2015年10月1日木曜日

【危険な対決の場になりつつある宇宙】 国家中枢への「ステルス攻撃」サイバー攻撃

米国と中露の間で宇宙戦争は防げるか?

岡崎研究所 
20150731日(Fri) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5191
画像:iStok

  2015629日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は、社説で、米国と中露の間で宇宙戦争が起きることを防止するために、欧州提案の宇宙活動に関する行動規範の作成に中露が参加することが望ましい、と述べています。
 すなわち、宇宙が危険な対決の場になりつつある。米国は宇宙での中国やロシアなどとの対決に適切な準備ができていないと米国防関係者は述べる。具体的には、国際宇宙ステーションなど地球を回る何千という衛星の安全について懸念が出ている。米国は長い間宇宙で圧倒的な優位を保ってきたが、今や多くの国が衛星を飛ばしている。
 米国防省は、衛星を通じて、戦場で敵の居場所を確定し、軍縮条約の遵守を確認し、あるいはICBMに対し早期警戒を確保している。
 冷戦時代に米ソは限定的な衛星攻撃兵器(ASAT)を開発したことはあるが、今や、中国が、そしてロシアが、活発に電波妨害、レーザー、サイバー武器などを開発している。2007年に中国が初めてASAT実験に成功したが、これが転機になった。更に、中国の専門家が台湾危機の際には中国は米の早期警戒衛星を撃ち落とすだろうと述べたことで、疑念が一層強まった。
 宇宙戦争を防止するには、外交が必要だ。従来この問題を国際的に議論することを拒んできた中国が、米中戦略経済対話で、宇宙協力と衛星衝突回避について定期的に米国と協議することに合意した。今秋のオバマ・習近平首脳会談までに何らかの具体的な前進が見られれば有益だ。
 中国とロシアは、法的拘束力を持つ条約により宇宙での武力行使を禁止することを主張してきたが、専門家は検証が難しいとする。より実際的な方策は、米国とEUが推進している行動規範の作成に中露が参加することである。
 オバマ政権は、防御措置の開発への投資を増やすことにしている。関係者によると、ジャミング対抗措置などの開発のために、向う5年間に、追加的に50億ドルの予算が投入されるだろう。また国防省は高い強靭能力を持つ衛星を開発しようとしている。宇宙対決がエスカレートすれば、すべての大国が損をするだろう、と述べています。

出 典:New York TimesPreventing a Space War(New York Times, June 29, 2015)
http://www.nytimes.com/2015/06/29/opinion/preventing-a-space-war.html?_r=0
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 今後の軍事フロンティアは、宇宙とサイバースペースです。
米国の2015年国家安全保障戦略は、共有スペースのアクセス確保が重要であるとして、空と海の他、サイバーと宇宙について言及し、宇宙空間の平和利用を否定しようとする勢力に対応する必要がある、米国は行動規範の作成など宇宙での国際協力を拡大している、米国の宇宙システムへの攻撃に対する抑止技術も開発すると記述しています。中国の2015年国防白書は、「宇宙での競争」に触れ、中国は宇宙でのダイナミクスに遅れない、中国の宇宙資産を防護していくと述べています。
 622 - 24日の米中戦略経済対話では、宇宙に関する米中定期協議の開始について合意しました。良いことです。
 2008年、欧州は行動規範作りを提案し、その後、米国や日本なども参加し「宇宙活動に関する国際行動規範」の作成交渉を行っています。外務省によると、その中には、衛星衝突、スペースデブリのリスク低減、ASAT実験・行為の制約、通報・協議メカニズム等が含まれているようです。
 宇宙で圧倒的優位を持つ米国としては、中露が主張する法的拘束力を持つ条約の作成には、賛成できません。同時に、米国は、衛星防御措置の開発に乗り出しています。宇宙で攻撃、防御、両面での技術競争が起きることは避けられないように思われます。
 宇宙利用は、民生活動にも深く関係します2012年に外務省も総合政策局に宇宙室を設置し、規範作りなど国際協力に当たっています。
サイバー戦争、宇宙戦争への備えを!
サイバーテロの脅威・情報セキュリティを強化せよ 
慶應義塾大学大学院教授土屋大洋氏

 ※互いに国家中枢を攻撃し、国力の低下を狙うネット空間での「米中サイバー戦争」は、首脳会談でとりあげられるくらい無視できない様相を呈してきました。
 今や先進国同士では、実弾がとびかう前に電子戦やサイバー戦において、相手の動向をつかみ、封じ込めようとする傾向が主流のようです。
 核弾頭や通常兵器の前に、国家や軍の中枢部へのステルス的な攻撃による「戦わずに勝つ」戦い、ということですね。
 そしてやはりサイバー戦の分野でもアメリカは抜け出ている様子が以下の論文からよくわかります。


”攻守統合”部隊を創設した米国 一触即発
の米中サイバー戦

小原凡司 (東京財団研究員・元駐中国防衛駐在官)
20151015日(Thu) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5479
2015925日にワシントンで開かれた米中首脳会談は、習近平夫妻訪米中の民間との交流活動等と併せて、中国では「米中協力」の象徴のように報道された。中国は、米国から一方的に非難される状況を避け、米中が軍事衝突を回避する意図を見せ、米中の協調的姿勢を強調したかったのだ。
 実際、米中首脳会談では、サイバー問題に関して、「両国政府は知的財産に対するサイバー攻撃を実行、支援しない」こと、軍事分野では、「空軍間の偶発的衝突回避のための行動規範」、経済分野においては、「米中投資協定の交渉を加速する」こと、気候変動についても、「中国が2017年に全国で排出量取引を導入」することが合意された。
首脳会談での「米中協調」はみせかけか?(Getty Images
 しかし、中国が強調する「米中協調」を鵜呑みにする訳にはいかないだろう。問題は、サイバー問題や軍事分野における合意が、何ら問題の解決になっていないことだ。それどころか、米国にとっては、中国との衝突に備える内容になっているのではないか、とさえ思える。
 サイバー攻撃に関して、安全保障上のオペレーションや軍事行動に直結するオペレーションに、全く触れられなかった。その結果、米国は中国とのサイバー戦に備えることになるだろう。もともと、米国は、中国に対して、安全保障に関する情報収集を目的とするサイバー攻撃について非難したことはない。
 米国にとって、安全保障に必要な情報収集は、行われて当然の行為なのだ。米国が、中国のサイバー攻撃を許せないのは、産業スパイのように米国企業に実質的な損失を与えたり、「米国の目を潰す」衛星に対する攻撃のように安全保障環境を悪化させるものであったりするからだ。
中国によるサイバー窃盗に「怒りを露わにする」
 相手国が米国の安全を脅かさない限り相手国に損失を与えず、また、自ら安全保障環境を悪化させることのない、米国のサイバー攻撃とは目的が異なる、という訳である。米国務省顧問のスーザン・ライスは、米中首脳会談に先立つ828日に訪中し、習近平主席をはじめ、範長龍中央軍事委員会副主席らと会談した 。中央軍事委員会副主席と会談したことからも、彼女の訪中の主な目的の一つが、安全保障に関わるものであったことは明らかである。
 このとき、彼女は、習近平主席に対して、中国の米国に対するサイバー攻撃に関する詳細な証拠を提示し、中国が米国に対するサイバー攻撃を止めるよう要求したと言われる。しかし、中国は結局、譲歩しなかったようだ。会談後の彼女の発言が、中国のサイバー攻撃を強く非難するものだったからである。
 2015921日に、ジョージ・ワシントン大学で行ったスピーチにおいて、彼女は、中国政府が関与した莫大な数のサイバー窃盗について、「イラついている」と、怒りを露わにした 。彼女は、「これは、経済的かつ安全保障に関わる問題である」とし、「米中二国間に極めて強い緊張を生んでいる」と、中国を非難した。米中首脳会談前に、中国をけん制したものでもある。
 中国は、「中国もサイバー攻撃の被害者である」と繰り返す。中国にとってみれば、産業スパイも、自国の安全保障に直結する問題である。中国には近代化された武器を製造する技術はない。ここからの理論の展開が、日本や米国とは異なる。中国は、最新技術を手に入れる他の手段がないのだから、サイバー攻撃によって窃取しても仕方がない、ということになる。権利意識が先に立つのだ。
 中国は、もちろん、自らがサイバー攻撃による産業スパイに加担しているなどとは言わない。産業スパイが違法だということは理解しているからだ。しかし、実際に口に出さなくとも、同様にサイバー攻撃を世界各国に仕掛けている米国なら、中国の言わんとするところは理解できる、と考えているのではないかとさえ思わされる。建前と本音を使い分けているつもりなのだ。
 日本人には理解されにくいかもしれないが、米国にもその他の国にも、建前と本音はある。それでも、米国の本音は、中国が考えているものとは異なる。中国が、美しい正論で飾った表向きの議論とは別に、水面下で米国と手打ちが出来ると考えているとしたら、危険な目に会うのは中国の方である
サイバー攻撃とサイバー防御を統合
 米国は、口で言っても中国が理解しないのであれば、実力をもって分からせようとするだろう。20155月に、米軍はコンピューター・ネットワーク空間の専門部隊「サイバーコマンド」を発足させた。この部隊は同年10月から本格運用されたが、この部隊が展開する作戦の本質は、「攻守の統合」である。
アメリカサイバー軍がある、メリーランド州フォートミード基地でサイバー軍部隊員とNSA職員に講演した、マイケル・ロジャース海軍提督(左)とアシュトン・カーター国防長官(Getty Images
 同じ10月、JTFGNOJoint Task Force Global Network Operations:米軍情報通信網の防護を専門にする部隊)がサイバーコマンドに編入・統合されたことを記念する式典において、核戦力なども統括する戦略軍司令官ケビン・チルトン空軍大将は、「我々はこれまでネットワークの防護と攻撃の機能を分けて考えてきた。しかし陸海空軍では防護と攻撃は一体だ。新コマンドの立ち上げで、攻守の任務を統合する」と述べたと報じられている。
 米国は、サイバー攻撃とサイバー防御を統合し、その境界をなくす。サイバー攻撃は、サイバー・オペレーションの一部として、今後、さらに積極的に展開されていくことになる。中国が、米国が許容できないサイバー攻撃を止めないのであれば、米国は、中国に対するサイバー攻撃を強化し、「中国に身をもって教えてやる」ということだ。
世界でサイバー戦を戦う米国
 米国は、サイバー・オペレーションに関して、同盟国との協力の強化も追及している。カーター米国防長官は、2015624日、NATOのサイバー・ディフェンスにおける協力の強化を訴えた 。米国のNATOとのサイバー・ディフェンスに関する協力は、ロシアをにらんだものである。ウクライナのクリムキン外相は、20153月に訪日した際、ロシアは、正規軍や民兵、情報操作、経済的圧力などを組み合わせた「ハイブリッド戦争」をしかけていると述べている 。
 米国は、世界でサイバー戦を戦っている。いや、サイバー・スペースは、時間や地理的距離の束縛を受けない。世界であろうが、限られた地域であろうが、ネットワークに接続されていれば関係ないのだ。サイバー戦を戦うためには、ネットワーク上にある各国との協力が不可欠である。
 それにもかかわらず、米国とNATOのサイバー・ディフェンスに関する協力が主としてロシアを対象にしたものになっているのは、現在の軍事作戦では、サイバー攻撃が実際の軍事攻撃等と複合して用いられるためであり、欧州諸国に対する軍事的脅威がロシアだからである。
 現在の戦闘は、ネットワークによる情報共有や指揮を基礎にしている。実際の戦闘では、指揮・通信・情報に関わるシステムやネットワークを無効化することが、第一に行われる。その手段が、ジャミング(電子妨害)であり、サイバー攻撃である。実際の武器とサイバー攻撃は、複合されて使用されるのだ。ハイブリッド戦が通常の戦闘になっている現在、サイバー攻撃に対する脅威認識は、その後に続く、武力行使の可能性によって高められるのである。
 米国は、主として中国をにらんで、日本ともサイバー・セキュリティーに関する協力を強化したいと考えている。20154月にニューヨークで開かれた2プラス2ミーティングで合意された、新しい日米ガイドラインに関して、米国高官は、「宇宙とサイバーという二つの領域が、米国との協力を拡大できる領域である」と述べている 。
 しかし、日本は現段階で、サイバー空間における米国との協力を強化することは難しいだろう。日本では、これまで、サイバー・オペレーションに関して、安全保障の観点で議論されてこなかった。企業の情報や個人情報をいかに守るかという、サイバー・セキュリティーだけが焦点にされていたのでは、米国や他の同盟国とのサイバー・オペレーションでの協力などおぼつかない。
 日米は、201411月の首脳会談で、同盟深化の一環として、サイバー分野での協力強化でも合意している。しかし、その後の進展がほとんどないことについて、日本のメディアは、防衛省幹部が、「能力でも技術でも大人と子ども以上の開きがあり、具体的な協力分野が見つからない」と説明した、と報じている。
 日本は、サイバー空間の利用に関して、ようやく安全保障の観点を取り入れたばかりである。これから、認識の面で他国に追いつき、実際に米国や米国の同盟国と協力を強化するためには、並々ならぬ努力を続けていかなければならない。
※我が国のサイバー戦への動きは、アメリカに比べると確かに見劣りするものがありますが、多くの攻撃をうけている実態から、官民あげてサイバーセキュリティへのとりくみ、実践が行われています。自衛隊にもサイバー防衛隊がたちあがっていますが、今後この分野の比重が増し、より組織的な拡充がはかられることになると考えられます。

 2013/04/18 日本外国特派員協会主催 松原実穂

子サイバーセキュリティ・アナリスト、 パシフィック

フォーラムCSIS客員研究員 記者会見

 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/74776


 2013418日(木)、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、日本外国特派員協会主催「松原実穂子サイバーセキュリティ・アナリスト、 パシフィックフォーラムCSIS客員研究員 記者会見」が開かれた。

 冒頭松原氏は、前月韓国の銀行やテレビ放送局で起こったサイバー攻撃に触れ、ATMなどに物理的な障害を与えたことや、異なるオペレーションシステムにわたって被害が発生したこと、諜報活動だけでなく妨害行為を目的とした攻撃であったことなど、事件の特質を明らかにした。また、2003年アメリカで起こった原子力発電所へのサイバー攻撃は、5時間にわたって安全管理システムを麻痺させたことから、福島原発問題を抱える日本にも大きな示唆を与える事件として紹介した。
【記事関連リンク】松原美穂子記者会見

サイバーセキュリティアナリスト松原美穂子氏
NHKプロフェッショナル仕事の流儀 サイバーセキュリティ技術者 名和利男の経歴や凄さ、講演情報など。

最近はサイバー攻撃に関する事件がたびたびニュースになっています。年金機構の情報漏洩やいろいろな会社における会員情報の流出など。どれも国家や会社の運営の根幹を揺るがすような事態です。それを防ぐために国や会社のセキュリティの専門家が多く私たちの知らないところで活躍してくれています。そんなひとりが、今回サイバーディフェンス研究所の技術者 名和利男さん。業務の性質上、なかなか取材されることがないと思いますが、今回プロフェッショナル仕事の流儀に取り上げられるとのことで調べてみました。

  最初は自衛隊でキャリアをスタートさせています。(1991年 旧防衛庁 海上自衛隊 第1護衛艦隊 護衛艦さわゆき 電測員)自衛隊出身ということもあって、サイバー面からみた安全保障に関する提言や、セキュリティ人材育成の支援など、政府や大企業からひっぱりだこです。下世話目線で、出身地や高校や大学、家族などを調べてみたのですが、わかりませんでした。勝手な勘ですが、防衛大学卒とかなんでしょうかね。その技術は高く、サイバーセキュリティ技術者の中でも特に優れたトップガンと呼ばれる一人だそうです。


  サイバーディフェンス研究所に所属していますが、並行してアメリカのファイア・アイというセキュリティ会社のCTOも務められています。
余談ですが、サイバーディフェンス研究所は、国の機関かと思っていたら株式会社なんですね。2001年設立のITベンチャーのようですが、伊藤忠傘下後、今はNECの子会社になっています。買収額は十数億円とのことです。

サイバー攻撃に備えるには?

最近のサイバー攻撃は、ウィルスソフトなどの検知ソフトを入れていても気づかない位巧妙化しています。一日100万個を超えるウィルスが一日で生み出されている現状では、どうしても後追いになってしまうそうです。
個人の端末がウィルスにかかったという程度ならまだかわいいですが、ネットバンキングなどがやられてしまうと考えただけでもぞっとしますね。また、最近の電力自由化でスマートグリッドなどが注目されていますが、電力を制御するデータセンターなどが攻撃されてしまうとライフラインが壊滅状態になるなどの恐れもあるそうです。これにはお金儲けでなく国を守るという使命感がないと出来ませんよね。
個人レベルで出来ることは、素性の分からないアプリやサイトには近づかないことが一番ですかね。会社のPCなどでは絶対関係ないサイトに行かない方がいいですよね。

講演は?

名和さんは色々なところで講演をしたり、メディアに出演して啓発活動をしています。一般人が聴けるものは少ないと思いますが、検索してチェックすると出てきますので、興味のある方は是非。講演の模様も公開されているものがありましたので、紹介します。

まとめ

日経の記事に出ていた名和さんの言葉は印象的でした。それは、「私は昨晩、6時間寝てしまったから、すでに専門家でなくなってしまった」という言葉。ちょっと過激な発言ですが、これくらいの気概で取り組んでいる名和さんの姿勢に頭が下がります。今後も頑張って欲しいなと思います。

サイバーセキュリティ研究所名和利男氏


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