2016年8月11日木曜日

アメリカでの無人攻撃機の意義と運用

米無人機作戦の”縄張り争い”が決着 軍とCIAの対立にオバマ裁定
佐々木伸 (星槎大学客員教授)

20160630日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7166

オバマ米政権のテロとの戦いの柱である無人機作戦について、国防総省と中央情報局(CIA)による“縄張り争い”がこのほど決着した。オバマ大統領の裁定によるもので、国防総省が主導権を掌握する一方で、CIAもパキスタンとアフガニスタンで作戦を続けることが可能になった。

双方のメンツ立てる
 オバマ大統領は就任以来、米地上戦闘部隊を2度と紛争地へ派遣しないことを「オバマ・ドクトリン」として最大公約に掲げてきた。ドクトリンはテロとの戦いについても、武装無人機(ドローン)でテロリストを暗殺する「標的殺害」を秘密裏に推進してきた。

無人機の活動範囲はパキスタン、アフガニスタンからイラクやシリア、ソマリア、リビアなど西南アジアからアフリカにまで拡大した。これまでにイスラム過激派3000人以上を殺害し、パキスタン、アフガン国境の山岳部族地帯を拠点としていた国際テロ組織アルカイダの本部組織をほとんど壊滅に追い込む成果を挙げた。

しかしイエメンで、結婚式の車列が無人機に誤爆され、民間人多数が死傷するなど民間人の巻き添え被害も相当の数に上っている。こうした民間人の被害が高まるにつれ、秘密のベールに包まれた無人機作戦について批判が強まった。このためオバマ大統領は20135月、米国防大学で初めて無人機作戦に関する演説を行い、作戦の透明性を確保していくと言明した。

オバマ大統領はこの演説で、透明性を確保するために国防総省の特殊作戦軍に無人機作戦の主導権を与えることを公約。それ以来、水面下で国防総省とCIAが無人機の所管をめぐって熾烈な縄張り争いを展開してきた。米議会の上下両院の情報委員会も、国防総省派とCIA派に分かれて対立した。
国防総省 vs CIA
 CIA2001年の911(米中枢同時テロ)以降、情報収集・分析機関というよりも、無人機を中心に準軍事的な色彩を強め、これに国防総省が危機感を深めてきた。地域的に見ると、パキスタン、アフガニスタンの山岳地帯はCIAが、イエメンはCIAと国防総省の特殊作戦軍の両者が担当するという仕分けになっていた。
 CIAの改革を検討してきたオバマ大統領は側近であるブレナンCIA長官と無人機の所管について緊密に協議してきた。その結果、米メディアなどによると、CIAにはこれまで通り、パキスタンとアフガニスタンでの無人機作戦の権限を認める代わりに、イエメンでは、CIAに無人機を飛行させてテロリストの探索はさせるものの、標的を殺害するためのミサイル発射は国防総省の特殊作戦軍の決定に委ねる、という決定を下した。
作戦の透明性は困難なままに
 問題はこの裁定によって、大統領が公約した無人機作戦の透明性が確保できるのかどうか、ということだが、CIAがパキスタンとアフガニスタンの作戦権限を保持している限り、透明性の確保は難しいだろう。

なぜなら特殊作戦軍の作戦であれば、作戦実行後にたとえあいまいであっても、事実関係をある程度公表することになる。しかしCIAによる作戦は秘密作戦であり、作戦を遂行したかどうかも含めて詳細を明らかにする必要がなく、パキスタンとイエメンの作戦は民間人の死傷者が出ても闇の中に置かれることになる見通しだ。

これは実は米国にとっても都合の良い面も多い。特殊作戦軍の純軍事作戦ということであれば、作戦に先だってパキスタンやアフガニスタンなどの相手国に事前に通告して了承を得なければならない。そうしないと、主権の侵害ということになるからだ。
しかし、CIAの秘密作戦ということであれば、正式ルートでパキスタンなどから作戦の事前了承を取る必要性がない、というのが米国のテロとの戦いの解釈だ。米国は5月、アフガニスタンのイスラム過激派タリバンの指導者マンスール師がパキスタン南西部にいるところを無人機攻撃で暗殺した。
ドローンの役目は終わらない

 また、20115月には、パキスタン領内に潜んでいたアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを米海軍特殊部隊シールズが急襲し、暗殺した。両作戦ともパキスタンは表面的には米国に主権を侵害したとして抗議の意を表明したが、その後はうやむやになっている。パキスタンも暗黙の了解事項なのだ。
 タリバンは新指導者を選出して米国に報復を誓い、6月もカブールで自爆テロを起こすなど米軍への攻撃の機会をうかがっている。シリアやイラク、リビアでは軍事的に追い詰められた過激派組織「イスラム国」(IS)が欧州や中東でテロを激化させようと画策している。テロリスト暗殺を実行する無人機の役割はまだまだ終わりそうにない。
【無人機の運用】

アメリカ空軍のMQ-9リーパー無人機、シリアで任務中に墜落

配信日:2016/07/07 13:25
http://flyteam.jp/airline/united-states-air-force/news/article/65576


アメリカ空軍は201675()、シリアでMQ-9リーパー無人機が墜落したと発表しました。この墜落に伴う負傷者、墜落現場で民間の所有物などへの被害の報告はないとしています。

アメリカ空軍の発表で、墜落は敵の攻撃によるものではないとしており、任務での飛行中に機体のコントロールが失われたとしています。また、この墜落により機体は破壊されたものの、敵方に機体が渡ってはいないとしています。この件については、調査委員会で原因を調査、特定していくとしています。



アンダーセンAFBRQ-4グローバルホーク、嘉手納基地に初着陸

配信日:2016/08/05 13:03
http://flyteam.jp/airline/united-states-air-force/news/article/67023
三沢基地に展開したRQ-4



グアムのアンダーセン空軍基地(AFB)に配備されているアメリカ空軍の無人偵察機RQ-4グローバルホークの2機が20168月、沖縄の嘉手納基地に初めて着陸しました。グアムの悪天候を避けるため、嘉手納基地に飛来したものです。
 日本でのRQ-4の展開は、三沢基地で2014年に初めて、続く2015年にも展開しましたが、2016年は三沢飛行場の滑走路補修工事が行われており、現時点で三沢への展開は発表されていません。RQ-4の三沢展開は、グアムの台風シーズンにあわせ、その運用能力を最大限に確保するためと説明されていました。
 嘉手納へ飛来は初めてで、天候不良での予期せぬものとなりました。同飛行場への着陸の様子はRBC琉球放送がとらえており、Youtubeでも閲覧できます。


米軍の最先端ドローン「X-47B」、まさかの開発中止
“空飛ぶロボット兵器”の未来に暗雲


米海軍が将来の戦闘攻撃機として導入を予定していた無人機X-47Bの開発が中止された。レーダーに映らないステルス性を備え、かつ遠隔操縦の必要なく、全自動で多くの作戦行動を行えると期待された新鋭の無人機だったが、2016年年3月に計画中止が発表された。専門家が「将来、有人戦闘機はなくなる」と指摘するなか、最新技術をつぎ込んで誕生した“有望なルーキー”がなぜ落第したのか。(岡田敏彦)

人の操縦なしに自動着艦

 X-47Bは2003年に開発が始まったX-47Aの発展型。米航空機大手ノースロップ・グラマン社が主導し研究開発してきた。その特徴は、操縦士の操作なしで空母に発着艦し目的地への飛行や帰投も可能で、こうした自動飛行ができる無人機(UAV)はX-47Bが史上初だとされている。
 現在米軍が実用化している無人機「RQ-1プレデター」や「MQ-9リーパー」は遠隔操縦方式で、攻撃、偵察ともに地上の誘導基地にいる操縦者による操作が必要だった。
 X-47Bはこうした操作が不要だ。飛行する際も、あらかじめプログラムされたルートをたどるのではなく、目標地点での作戦内容などに応じて人工知能(AI)が自分で最適な飛行経路や高度などを考え、結論を出し、実行する。いわば「空飛ぶロボット兵器」だ。

主武装も未来的で、将来的にはレーザー光線と高出力マイクロ波を採用する案があった。敵地の奥深くに侵入し、発射段階の敵弾道ミサイルを破壊する能力を付与する方針だったのだ。
 革新的なコンセプトのX-47Bは2011年2月に初飛行した。同5月には、当時の海軍将官が「2018年には無人艦載機(X-47B)を運用開始する計画に変更はない」と強調。その後、米CNNテレビ(電子版)などによると、2013年5月には原子力空母「ジョージ・H・ブッシュ」からの射出(発艦)試験に成功し、同7月には航行中の空母への自動着艦という歴史的なミッションに成功していた。
 さらに2015年4月には空中給油にも成功し、海軍当局は「空中給油を自立的に出来れば、無人機の利用範囲と飛行作戦の柔軟性が増す」と高く評価していた。
 にもかかわらず、米海軍は2016年3月10日、「予算上の理由」で開発計画を中止したと明らかにした。最新鋭の“夢の兵器”に予算が付けられなかった理由は、「機械VS人類」の戦いにあった。

有人から無人へ

 世界的には、次期主力戦闘機は無人機になるとの予測がある。無人機のメリットは、人が耐えられないような高G(重力加速度)を伴う機動が可能となり、格闘戦において有人機より機敏な行動が可能となるからだ。

さらに重要な点として、敵の地対空ミサイル基地などの戦闘機にとって極めて危険なターゲットに対し、人的損失を考慮することなく攻撃できるという利点もある。しかしこれは、戦闘機操縦者にとって諸手を挙げて歓迎できる話ではない。
 米空軍では、ベトナム戦争以来こうした敵ミサイル基地の攻撃、つまり敵防空網制圧という特殊任務専用の「ワイルドウィーゼル」(野イタチ)機を開発、運用してきた。F-105GサンダーチーフやF-4GファントムIIなど、過酷な任務をこなすため、レーダー妨害装置など高度な電子戦装備を設けた専用機がワイルドウィーゼル任務に充てられてきた。
 ちなみに米空軍三沢基地に駐留する第35戦闘航空団所属機の垂直尾翼に大きく描かれたテイルコード「WW」は、ワイルド・ウィーゼル任務に当たってきた伝統に由来する。
 米海軍もEA-6Bプラウラーといった、特殊な電子戦機で敵防空網制圧任務を行ってきた。
 こうした過酷で特殊技能と並外れた勇気を必要とする任務を遂行することは、戦闘機操縦者にとっては栄誉でもある。誰も出来ない困難な任務を遂行してのけることは、戦闘機操縦者が自身の優秀性を示すうえで最も確実かつ誰の目にも見える“チャンピオンベルト”であり“金メダル”なのだ。

無人機は、この誇りをエヴィエイター(米海軍航空機操縦者)から奪うものではないか-。X-47B計画の裏では、こうした考えが、米海軍の空母航空団の戦闘機操縦者とそのOBにして軍高官となった者たちの間に広がっていたのだ。
 さらに大きな危機も見え隠れしていた。現在の米海軍主力戦闘機はF/A-18ホーネットとスーパーホーネットで、後継機にはF-35が決定している。そのF-35の後継機として、X-47B(の実用型)は有力候補に挙がっていた。現実化すれば、米海軍空母には無人機だけが配備され、有人機はなくなってしまう。将来、米海軍から「戦闘機操縦者」という職種を根絶する可能性を含んでいたのだ。海軍内部から積極的な計画推進の声が出ないのは当然だ。
 そんななか、X-47Bの欠点も明らかになった。


 成功の陰で

2013年7月に無人機として初めて空母への着艦に成功したX-47Bだが、この際は着艦に4回チャレンジしている。1回目と2回目は成功したが、3回目は着艦直前に中止。4回目は空母への着艦コースにのる前にAIが中止を決め、陸上の飛行場に着陸していた。X-47Bに搭載されている3機のAIが着艦までの飛行経路について、それぞれ違う結論を出したため“多数決”で結果を出すことができず、着艦中止の判断を下したとされている。

一部では3回目と4回目を「着艦失敗による事故を未然に回避した」と褒める声もあったが、X-47Bに与えたコマンド(命令)は「着艦しろ」なのだから、実験が成功裏に終わったとは言い難いだろう。
 空母は常に位置と移動方向を変え、気温や高度は航空機の速度に影響を与える。さらに波で上下左右揺れる空母の甲板も問題なら、レーダーに映らないことを重視した結果として垂直尾翼も水平尾翼もないことによる操縦性の特異さ、問題を複雑にする。
 こうした問題を解決するためには、膨大な実験を伴うプログラムの開発とフィードバック、新しい誘導機器の開発が必要だ。
 しかし、米国では海軍のみならず軍全体の予算がオバマ政権下で強制的に削減され続けている。昨年末の米海軍の艦艇数は272隻。同海軍は「第一次世界大戦以降で最低の数字」と訴えていた。2020年代には308隻に増やす計画があるが、予算削減の流れは変わる気配がない。こうした状況下で、X-47Bの開発を続けなければならない必然性は乏しい。
 結局、X-47B開発計画は中止となり、かわりに戦闘・攻撃能力がなく、偵察もしくは空中給油だけが可能な無人機「MQ-25スティングレイ」の実用化を進めることが決まった。小型で簡易かつ安価なMQ-25なら、“人のライバル”となるには力不足ではあるが、だからこそ空母に居場所ができるかもしれない。


 【無人機の必要性】

それでも必要な無人機攻撃
岡崎研究所 20160805日(Frihttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7419
米シンクタンクCSISJames Andrew. Lewis上席副所長は、201675日付の同研究所のサイトで、無人機による攻撃は、一般市民に被害を与えるリスクはあるが、反乱グループに聖域を与えないための重要な手段である、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。
テロはそのために使われる一つの戦術
 無人攻撃の対象をテロリストと称しているが、より正確には、シャリア法に基づく国を作るために現存の政府を倒そうとしている反乱グループとして理解すべきである。テロはそのために使われる一つの戦術である。
 反乱を成功させる重要な要素は聖域である。もし聖域が他国の領土にある場合には、その国は領土を他国の攻撃に使用することを禁じる国際法を遵守していないことを意味する。この点が、自衛権と並んで、無人攻撃の合法性の議論に含まれなければならない。
 反乱グループを打ち負かすのに、聖域を与えないことが重要であり、そのためには無人攻撃が最善である。当然ながら反乱グループは無人機の使用をやめさせるため政治的手段を講じようとするだろう。よく使われる手段は一般市民の死傷者の数を膨らませ、西側の世論に働きかけることである。しかし米国が一般市民に死傷者が出るリスクを取らなければ、テロによる一般市民の死傷者の出るリスクが増える。
 無人機攻撃の反対派は、無人機の攻撃の数とテロリストの襲撃の数との間には明確な関係は無いと批判する向きがあるが、反乱グループとの戦いは簡単なものではない。通常の航空機で爆撃することや何もしないことはより望ましくない。無人機は正統な防衛手段であり、簡単には終わらない困難な紛争でたちの悪い敵に対処するのに必要である。
出典:James Andrew. Lewis Drone Strikes: Complicated but Necessary (CSIS,
July 5, 2016)
https://www.csis.org/analysis/drone-strikes-complicated-necessary
最近、無人機による反政府グループなどへの攻撃が脚光を浴びています。さる5月には、米無人機が、パキスタンに潜伏していたタリバンの最高指導者マンスールを殺害して注目を集めました。
 無人機による攻撃批判の一番の理由は、一般市民を巻き添えにする死傷です。この問題は、世論に訴えやすいので、無人機攻撃批判派がよく材料に使います。論説は、もし無人機攻撃をしなければ、テロリストは一般市民を攻撃するので、ある程度の犠牲を払って無人攻撃するのはやむを得ないと言っています。これはあまり説得力のある議論とは思えず、一般市民の巻き添えに対する非難は続くと思われますが、巻き添えを最小限にするための努力はしつつも、ある程度は割り切らざるを得ないのでしょう。
 無人機による攻撃で特に問題とされるのが、他国の領土での攻撃です。最近の目立った例では、タリバンの最高指導者マンスールのパキスタン領内での米無人機による殺害があります。米国の目的はタリバンのアフガニスタンでの活動を抑えこむことですが、マンスールがパキスタン領内に隠れていたので、パキスタン領内で無人機で殺害しました。
 他国の領土での無人機の殺害については、国際法上の主権侵害の問題が生じます。2012年、国連の人権問題調査官は、米国のパキスタンでの無人機による攻撃は、パキスタンの主権の侵害である、と述べました。これに対しては、パキスタンがタリバンにパキスタン領内に聖域を許し、そこからタリバンがアフガニスタンを攻撃しているのは、パキスタンがアフガニスタンの主権を尊重していないことを意味し、米国のパキスタン領の攻撃を主権侵害という資格はないとの議論があります。 
 また、「9.11」の直後、米国議会は「軍事力行使権限法」を可決し、「9.11」を計画し、許可し、実施しまたは支援した国、組織、個人に対し、すべての必要かつ適切な力を使用することを米軍に許可しました。タリバンへの対策をこの法律に基づくものとみれば、米国にとって自衛権の発動であり、パキスタン領内のタリバン攻撃も国際法上違法ではない、との解釈もあります。
 他国の領土での無人機の使用の国際法上の問題は、一概に違法といえない面があり、今後とも議論が行われるでしょう。このように無人機による攻撃は、一般市民巻き添えの問題、他国の領土に対するものの場合には主権侵害の問題を抱えていますが、米国はその攻撃が有効であるので、これらの問題に対処しつつ、今後とも攻撃を続け、さらには強化していくと思われます。


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