中露をけん制する日米韓合同ミサイル防衛演習
岡崎研究所 2016年08月03日(Wed) http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7416
ウォールストリート・ジャーナル紙の2016年6月28日付社説が、同月下旬に行われたハワイ沖での日米韓合同ミサイル防衛演習を中露へのメッセージになったと評価するとともに、日韓が早期にTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備するよう促しています。要旨、次の通り。
中国とロシアに米がアジアから出ていくことはないと知ら
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真珠湾(iStock)
2016年6月28日にハワイ沖で行われた日米韓による初の三国間ミサイル防衛演習は、自由主義世界を勇気づけた。こういう協力を深化させることが、米とパートナー国を北朝鮮の核から防衛し、中国とロシアに米がアジアから出ていくことはないと知らしめるには不可欠である。
三国間演習は、日韓関係が領土と歴史をめぐる議論で緊張していた数年前には想像しがたいものであった。しかし、北朝鮮からの脅威の増大、東・南シナ海における中国の攻撃的姿勢、それに安倍総理と朴槿恵大統領の政治的手腕により、日韓関係は変わった。2014年、日韓は、長年の議論の末、北朝鮮に関する情報を米経由で交換することに合意した。昨年(2015年)両国は、いわゆる慰安婦をめぐる長年の不一致を解決した。日本側は、謝罪を繰り返すとともに犠牲者への補償を手配し、韓国側は、解決を「最終的かつ不可逆」なものとした。
中国は、韓国が米製THAADミサイル防衛システムの配備について協議することを非難しており、今回の演習を注視しよう。
中国は、韓国が米製THAADミサイル防衛システムの配備について協議することを非難しており、今回の演習を注視しよう。
中国は、北東アジアにおける米の同盟国が防衛力強化に投資しているのは、中国のクライアントである北朝鮮が原因であることを知っているが、中国は、金正恩に圧力をかけることを躊躇い続けている。2016年6月22日、北朝鮮は、グアムに到達し得る射程2000マイルの中距離弾道ミサイルを発射した。これは、4月以来5回目の中距離ミサイル発射実験であり、1月には核実験を実施、2月には米本土を脅かし得る大陸間弾道ミサイルを発射している。
韓国の安全保障は、THAAD配備の早期決定にかかっている。日本も同じことが必要であり、THAADの強力な迎撃ミサイルにより、2014年に配備した米製Xバンドレーダーを補強すべきである。韓国の当局者が最近言った通り、北東アジアにおけるミサイル防衛の増強は「生か死か」の問題である。そういうわけで、今回の演習は歓迎すべきものである。
出典:‘A Missile-Defense Message for
China’(Wall Street Journal, June 28, 2016)
http://www.wsj.com/articles/a-missile-defense-message-for-china-1467130316?mod=wsj_review_&_outlook
http://www.wsj.com/articles/a-missile-defense-message-for-china-1467130316?mod=wsj_review_&_outlook
社説は今回の三国間演習の実施に日韓関係の改善が貢献したことを強調していますが、中韓関係の変化も重要な要因と考えられます。中韓関係は最近まで「中韓蜜月」といわれるほど良好でした。昨年(2015年)9月韓国の朴槿恵大統領は、中国の対日戦勝70年の軍事パレードに出席し、良好な中韓関係をアピールしました。韓国の中国接近は、韓国にとっての中国の経済的重要性のためと指摘されてきましたが、北朝鮮ファクターもあったと思われます。韓国は中国が北朝鮮に対する影響力を行使して、北朝鮮の核、ミサイル開発を抑制してくれることを期待していたものと見られます。
しかし、最近の北朝鮮の一連の核、ミサイル実験の実施で、韓国はこの期待が幻想であったことが分かったのではないでしょうか。韓国は一連の実験に関し北朝鮮を強く非難するとともに、中国と一定の距離を置くようになりました。今回の三国間演習への参加がその一例であり、THAADの韓国配備に向けた動きが今一つの例です。韓国が、中国が北朝鮮に核、ミサイルの開発を抑制するよう圧力を加えることを期待していたとすれば、北朝鮮に対する中国の影響力を過大評価していたと言わざるを得ません。
THAADに関しては、米国は2014年頃より韓国への配備を提案してきましたが、韓国は中国の強い反対があって躊躇していました。中国はTHAADシステムに含まれるXバンドレーダーが、1000キロを超える探知距離を持ち、中国領にまで及ぶことに強い懸念を持っているものと見られます。THAADのXバンドレーダーはグアム島設置のXバンドレーダーとデータリンクされ、日米所有のイージス艦のレーダーと連携すると言われています。
しかし、最近になって韓国の態度が変わり、カーター米国防長官は去る2016年3月22日、米議会の公聴会で、米韓両国が韓国へのTHAADの配備につき原則合意した、と述べました。他方、韓国の韓民求国防長官は、2016年6月初めのシャングリラ対話で、THAADは配備されれば、北朝鮮のミサイルに対応する能力の向上に役立つと述べ、2016年6月29日には韓国国会での質疑で、「年内に結論が出るのではないか」と述べたと報じられています。
韓国国内には現在でも対中配慮からTHAADの配備に消極的な向きがあるようですが、政府は配備を決めたようです。配備計画がすんなり進んでいないのは、対中配慮からではなく、地域住民の反発が予想されることから、配備の場所の選定の問題があるためと報じられています。
韓国が対中配慮にこだわらず、米国との関係を再び重視するようになったのは、日本としても歓迎すべきことです。韓国の安全保障のカギを握っているのは米国で、安全保障は中国と米国を天秤にかける問題ではありません。日本も、今後とも米韓と安全保障面での協力を強化すべきです。
《維新嵐》 RIMPACとほぼ同時期に行われているこの演習ですが、太平洋での自由主義、資本主義の価値観を有する国々の海軍力のスキルアップとその中核にある日米韓の連携強化を同時に図ったという点で意義の深いイベントだったかと考えられます。
演習の狙いは共産中国の海洋覇権主義に対するアメリカの「国防圏」の主張にあるのでしょう。共産中国のアジアでの覇権主義は、第二次大戦時にアメリカが獲得してきたアジアでの「権益」、「国防圏」を脅かす行為になりますから、演習を通じてアメリカの存在感は主張しておかなければなりません。そういう意味からも日韓の連携と韓国の共産中国からのひきはがしには大きな意味がありますね。
THAAD迎撃ミサイル
- アメリカの弾道ミサイル防衛では、ミッドコース段階からターミナル段階において敵弾道ミサイルを迎撃する。ただ韓国への配備については、「仮想敵」である共産中国や北朝鮮に近いため最初の迎撃段階(ブースト段階)に弾道ミサイルを撃墜することを狙いとしているように考えられる。従ってアラスカへの配備とは目的が違うものと思われる。
THAAD迎撃ミサイルだけではないアメリカのアジア配備の最新型攻撃兵器
B-1Bランサー戦略爆撃機をグアムに前方展開
(アメリカ太平洋軍)
アメリカ太平洋軍(PACOM)は2016年8月6日(土)から、グアムのアンダーセン空軍基地にB-1Bランサー戦略爆撃機を配備すると発表しました。B-1Bのグアム展開は2006年4月以来のことです。
B-1Bのグアム配備は、マイノット空軍基地から前方展開しているのB-52ストラトフォートレスと交代するもので、PACOMエリアでのB-1Bの展開は10年ぶりです。エルズワース空軍基地から約300名の航空兵を帯同します。
アメリカ空軍は、武器搭載能力、攻撃能力から、PACOMとアジア・太平洋地域の同盟国やパートナーに信頼できる航空機だと説明しています。また、この前方展開は、インド・アジア太平洋地域の安定と安全に対し、アメリカの継続的なコミットメントを示す行動でもあるとしています。
B-1Bのグアム配備は、マイノット空軍基地から前方展開しているのB-52ストラトフォートレスと交代するもので、PACOMエリアでのB-1Bの展開は10年ぶりです。エルズワース空軍基地から約300名の航空兵を帯同します。
アメリカ空軍は、武器搭載能力、攻撃能力から、PACOMとアジア・太平洋地域の同盟国やパートナーに信頼できる航空機だと説明しています。また、この前方展開は、インド・アジア太平洋地域の安定と安全に対し、アメリカの継続的なコミットメントを示す行動でもあるとしています。
(出典:配信日:2016/08/02 21:52http://flyteam.jp/airline/united-states-air-force/news/article/66845)
グアムのアンダーセン空軍基地にB-1Bランサーを配備
マイノット基地からグアムへ前方展開していたB-52。今回B-1B爆撃機と交代した。
アメリカ空軍、B-2スピリット爆撃機をアンダーセン空軍基地に展開
配信日:2016/08/12 21:41
http://flyteam.jp/airline/united-states-air-force/news/article/67256
B-2スピリット爆撃機
アメリカ空軍は2016年8月9日(火)、グアムのアンダーセン空軍基地にB-2スピリット爆撃機を3機、配備したと発表しました。ホワイトマン空軍基地の機材を前方展開したもので、アンダーセン基地での展開中に出撃訓練などを実施します。
アメリカ空軍は世界中の同盟国やパートナーと協力し、世界各地での安全保障を支援するアメリカのコミットメントで、デモンストレーションを通じ、「いつ、どこででも、習熟度の高い状態を維持し、常にグローバルに攻撃能力を提供する準備が整っていることを実証する」ものとコメントしています。
なお、アンダーセン基地へのB-2スピリットの展開は短期間になる模様です。
爆撃機3機種が展開
アメリカ空軍はこの3機種の戦略爆撃機の同時展開で、太平洋地域での統合運用は初めてで、グアムでこうした任務を行うことでそれぞれの役割、任務を最大化して運用するとしています。
このうち、ホワイトマン空軍基地から前方展開したB-2は短期間の任務となる見込みですが、アンダーセン基地では太平洋地域の状況を把握し、この地域での同盟国との連携を深めます。特に、B-2はステルス性能の高さから、敵からの認識されにくく、亜音速で飛行する高速な速度、7,000マイルを無給油で飛行できる航続距離、高度5万フィートを飛行できるなど、抑止力を発揮します。
なお、アンダーセン基地へのB-2スピリットの展開は短期間になる模様です。
アンダーセン空軍基地、B-1B、B-2、B-52の戦略
爆撃機3機種が展開
配信日:2016/08/13 21:24
http://flyteam.jp/airline/united-states-air-force/news/article/67382
グアムのアンダーセン空軍基地に戦略爆撃機3機種が展開
EA6Gグラウラー飛行の下でのB-2スピリット
アメリカ空軍は2016年8月12日(金)、アンダーセン空軍基地に展開する戦略爆撃機3機種の画像を公開しました。マイノット空軍基地のB-1Bランサー、ホワイトマン空軍基地のB-2スピリット、そしてアンダーセン空軍基地で任務を行うB-52ストラトフォートレスです。B-2スピリットがアンダーセン基地に展開するのはこれが初めてで、アメリカ空軍は歴史的な任務体制だと紹介しています。
アメリカ空軍はこの3機種の戦略爆撃機の同時展開で、太平洋地域での統合運用は初めてで、グアムでこうした任務を行うことでそれぞれの役割、任務を最大化して運用するとしています。
このうち、ホワイトマン空軍基地から前方展開したB-2は短期間の任務となる見込みですが、アンダーセン基地では太平洋地域の状況を把握し、この地域での同盟国との連携を深めます。特に、B-2はステルス性能の高さから、敵からの認識されにくく、亜音速で飛行する高速な速度、7,000マイルを無給油で飛行できる航続距離、高度5万フィートを飛行できるなど、抑止力を発揮します。
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