2018年12月1日土曜日

共産中国による南シナ海の「ミサイル版万里の長城」 どうなる??今後の我が国のサイバーセキュリティ


中国が南シナ海に築いたミサイルの「万里

の長城」

対決する米海軍は戦力の転換が必要に

北村淳

南シナ海・南沙諸島のミスチーフ礁(2017421日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / TED ALJIBEAFPBB News

 中国が南シナ海・南沙諸島の7つの環礁を埋め立て、人工島を建設する作業を邁進していた状況を、当時のアメリカ太平洋軍司令官であるハリー・ハリス海軍大将(現在、駐韓国アメリカ大使)は「great wall of sand」(埋め立ての砂で築き上げる万里の長城)と表現し、中国による南シナ海での支配圏の強化に強い警鐘を鳴らしていた。そして先日、アメリカインド太平洋軍司令官、フィリップ・デイビッドソン海軍大将は、「great wall of sand」と呼ばれた南沙諸島人工島や西沙諸島に、中国軍が地対艦ミサイル(SSM)や地対空ミサイル(SAM)を配備し、アメリカ軍艦艇や航空機の接近を阻止する態勢を固めている状況を「great wall of SAM」と表現し、大いなる危惧の念を表明した。
アメリカ側はたかをくくっていた
 ソ連との冷戦終結後の東アジア方面では、ソ連海軍の脅威が消滅したため、アメリカは大平洋(南シナ海や東シナ海を含む)からインド洋にかけての軍事的優勢をほぼ完全に掌握し続けてきた。それに対して、米ソ冷戦末期頃から近代化努力を開始した中国海軍が、21世紀に入ると急速に戦力強化の姿勢を示し始めた。しかしながら、世界最強の空母戦力を誇っていた(現在も誇っている)アメリカ海軍は、「中国海軍がまともな航空母艦や空母艦載機を手にし、空母部隊を運用できるようになるのは(もし実現できたとしても)相当先のことになる」と考えていた。潜水艦戦力をとっても、やはり世界最大の原子力潜水艦戦力を有していた(現在も有している)アメリカ海軍から見ると「中国海軍の原潜のレベルが米海軍に追いつくのははるか先の未来」と考えていた。要するに、いくら中国が海洋戦力の強化に勤(いそし)しんでも、アメリカ(それに日米)の海洋戦力にとって深刻な脅威になることなど、少なくとも近未来には起こりえないと、アメリカ側はたかをくくっていたのだ。
戦略最優先目標を達成しつつある中国
 ところが、ここで忘れてはならないのは、アメリカの海軍戦略と中国の海軍戦略がまったく異なることである。
 アメリカの海軍戦略は、世界中の海に空母部隊を展開させることによりアメリカの国益と軍事的優勢を維持することを主眼に置いている。一方、中国の海軍戦略は、アメリカ軍とその同盟軍による中国沿岸への接近を阻止することを主眼に置いている。それぞれが必要とする海洋戦力の構成内容や用い方が相違しているのは当然である。
 中国の海軍戦略にとっては、アメリカ海軍に匹敵するレベルの、すなわち世界中の海に進出展開して沿岸諸国を威圧する能力を持つ空母艦隊(巨大航空母艦と高性能艦載機、空母を護衛するイージス巡洋艦とイージス駆逐艦、艦隊の露払いをする攻撃原潜、それに戦闘補給艦)を保有することは必須ではない。なぜならば、そのような空母艦隊が存在しなくとも、中国の戦略主目標である「アメリカ海洋戦力の中国領域への接近を阻止する」ことは可能だからである。実際に中国は、東シナ海や南シナ海を中国大陸沿海域に接近してくる米軍や自衛隊の艦艇や航空機を撃破するための地上発射型対艦ミサイルや対空ミサイルを極めて多数沿岸地域に配備しているだけでなく、アメリカ海軍が警戒を強めている対艦弾道ミサイルまで開発している。また、東シナ海や南シナ海での防衛任務に投入される各種艦艇(攻撃原潜、通常動力潜水艦、駆逐艦、フリゲート、コルベット、ミサイル艇)には、強力な対艦攻撃能力が付与されており、新鋭駆逐艦には高性能防空システムが装備されている。加えて、防空用、そして対艦攻撃用の戦闘機、攻撃機、爆撃機も多数保有している。このような東シナ海から南シナ海にかけての中国本土沿海域への接近阻止態勢に留まらず、中国当局がその大半の主権を主張している南シナ海での軍事的優勢を維持する態勢も、着実に手にしつつある。
数年前までは、いくら中国が、南沙諸島の領有権をはじめとして南シナ海の8割以上の海域をカバーする「九段線」の内側海域の主権を主張しても、そのような広大な海域での主権を維持すること、すなわち軍事的優勢を確保するための海洋戦力を手にすることは至難の業である(あるいは、はるか先の未来の話である)と米軍側では考えられていた。もちろん、そのような楽観的予測は誤りであり、中国の海洋戦力建設スピードを見くびってはならないと警鐘を鳴らす勢力も存在したが、少数派に留まっていた。
中国当局は、南シナ海の九段線内は「中国の海洋国土」であると主張している
ところが、中国海洋戦力に対する警戒派が危惧していたように、中国は南沙諸島に7つもの人工島を建設するという方針に打って出た。そして、ハリス太平洋軍司令官(当時)が「great wall of sand」として何らかの強硬な抑制策をとらねばならないと警告していた間にも、中国はそれらの人工島に3カ所の本格的軍用飛行場を含む海洋軍事施設を建設し続けた。こうして人工島の埋め立て作業が確認されてからわずか4年足らずのうちに、南沙諸島人工島基地群や、かねてより実効支配を続けている西沙諸島にも、アメリカ軍艦艇や航空機の接近を阻止するための地対艦ミサイルや地対空ミサイルが展開し、デイビッドソン司令官が「great wall of SAM」と呼称するようなミサイルバリア網が出現してしまったのである。
多くのアメリカ軍関係者たちが考えていたように、今のところ中国海軍はアメリカ海軍に匹敵する巨大空母を中心とする空母艦隊はまだ手にすることはできていない。しかし、中国の海軍戦略にとって最優先事項である「敵海洋戦力に対する接近阻止態勢」は、南シナ海において確立させつつあるのだ。
米海軍は戦力内容の転換が必要に
 これに対してアメリカ海軍は、東シナ海や南シナ海、そして西太平洋で、中国海洋戦力を抑制できるような態勢を確保しなければ、東アジアでの軍事的優勢を維持することができない状況に直面している。
 そのためには、それらの海域上空から米軍側に脅威を加える中国空軍と中国海軍の戦闘機、攻撃機、ミサイル爆撃機などを撃破しつつ、それらの海域で活動する中国海軍攻撃原潜、通常動力潜水艦、駆逐艦、フリゲート、コルベット、ミサイル艇などを打ち破らなければならない。同時に、中国本土沿岸地域、西沙諸島、南沙諸島人工島などの地上に展開している各種ミサイルシステム(移動式発射、コントロール装置に搭載されている)も破壊する必要がある。つまり、アメリカ海軍は強力な防空能力、対艦攻撃能力、対地攻撃能力を身につけて、西太平洋から東シナ海や南シナ海に接近しなければならないのである。ところが米ソ冷戦期以降、アメリカ海軍は空母艦隊を敵の攻撃から防御する戦力の強化には多大な努力を重ねてきたが、敵艦艇や地上移動式ミサイル発射装置などを攻撃する戦力は重視してこなかった。そして近年は、北朝鮮による弾道ミサイル開発に対応して、とりわけ日本周辺海域に展開するイージス巡洋艦やイージス駆逐艦に弾道ミサイル防衛を担わせる態勢を固めていた。したがってアメリカ海軍は、中国海洋戦力と対峙し、万一の際には打ち破るために、弾道ミサイル防衛重視、そして自衛態勢重視というこれまでの基本姿勢をかなぐり捨てて、敵艦・敵地攻撃優先という方針へ転換することが迫られている。その結果、日本は、これまでアメリカ海軍が担ってきていた弾道ミサイル防衛戦力を肩代わりする努力が迫られることになるであろう。その動きについては、稿を改めさせていただきたい。
南シナ海での日米合同訓練

PC使えぬ桜田サイバー担当相が更迭必至な

理由


G20サミット、ラグビーW杯、五輪、万博・・・日本はこれからハッカーの最大の標的になる!

山田敏弘
(国際ジャーナリスト・山田敏弘)
国際ジャーナリスト。1974年生まれ。米ネヴァダ大学ジャーナリズム学部卒業。『FRIDAY』『クーリエ・ジャポン』、英ロイター通信社、『ニューズウィーク』などで活躍。その後、米マサチューセッツ工科大学でフルブライト・フェローとして国際情勢とサイバーセキュリティの研究・取材活動にあたり、帰国後はフリーのジャーナリストとして活躍。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、翻訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など。
海外メディアで報じられる日本がらみの記事のなかで最近、かなり大きく報じられた恥ずかしいニュースがある。世界でよく知られるワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、さらにタブロイド版のニューヨーク・ポスト紙は、それぞれが同じ米AP通信の記事を掲載した。タイトルもどれも全く同じだった。
「日本のサイバーセキュリティ担当大臣はパソコンを使ったことがない」
PC使えぬ人物のサイバー担当相起用は「システムエラー」
 日本でも大きな話題になったが、サイバーセキュリティ基本法改正案の担当閣僚である桜田義孝五輪担当相が、衆院内閣委員会で「自分でパソコンを打つことはありません」と話したことで、大きな話題になった。こんな悪い冗談のような話を海外メディアはこぞって記事にし、英ガーディアンは、「システムエラー」であると見事なタイトルで報じている。
 だが感心している場合ではない。世界的に「日本のサイバー政策トップはパソコンを使うことすらできない」と知れ渡ったのである。もっとも、当の本人はメディアに「いいか悪いかは別として、有名になったんじゃないか」と語ったと報じられている。まさに開いた口が塞がらない。ただこうした桜田大臣の騒動を見ていて、ならば諸外国のサイバーセキュリティ担当の責任者たちは優れているのかと疑問を抱く人もいるはずだ。サイバーセキュリティ分野で政府や軍の責任者を見てみると諸外国の事情はどうなのか。
 米国で著名なサイバーセキュリティ専門のジャーナリストであるキム・ゼッターは、桜田大臣に関するワシントン・ポスト紙の記事をリツイートし、こうメッセージを添えている。「暗号化やサイバーセキュリティなどの政策を担当する米連邦議員の多くが電子メールやスマホを使わないのと大して変わらない」
 ただこう言ってしまえば、世界中の多くの議員たちにも当てはまってしまうはずで元も子もないし、日本の閣僚になるようなベテラン政治家も多くはそうではないだろうか。また他の分野でも状況は似たようなものだろう。またドナルド・トランプ大統領もパソコンを使わないという指摘もあるが、そもそもトランプや日本の安倍晋三首相も担当閣僚ではないので、彼らを責めるのは筋が違うだろう。
 問題は、桜田大臣のように国のサイバーセキュリティに責任のある立場の人物が、それを担うのに適材がどうかということだ。とはいえ、桜田大臣のようなサイバー担当者が世界にいるのかを比較するのは難しい。大臣のような責任者を置いていない国もあるし、この分野では情報機関や軍部がかなり力を持っている国などもあるからだ。そこで例えば世界最強のサイバー国家である米国がどうサイバーセキュリティ政策を進めているのかを見てみたい。
 米国のサイバー政策界隈にはさすがに桜田大臣ような人物はいない。実は、米国では20184月から、ホワイトハウスでサイバー政策を専門に担当していた人たちが相次いで退職している。ホワイトハウスでトップを務めていたのが、NSA(国家安全保障局)の元幹部であり、米国でも選りすぐりの凄腕ハッカー集団を率いていたロブ・ジョイスだった。だが彼も今では退職し、NSAに復職した。また彼の直属の上司であった国土安全保障及び対テロ担当大統領補佐官のトム・ボサートもジョイスより少し先に離職している。
 在任時は、ジョイスとボサートが政権のサイバー政策を担っていた。実は、当時新しく政権入りしたばかりだったジョン・ボルトン大統領補佐官が自分の影響力を行使するために、このサイバー担当のポストを撤廃するのに動いたと言われている。ジョイスらの退職後は、その役割は別の担当者が引き継いでいるとされる。ただもちろん、ジョイス時代よりも「サイバー政策は後退した」(政府関係者)と弱体化が指摘されており、今はその穴埋めをNSAやサイバー軍が埋めるようになっていると聞く。
 また米国でインフラなどへのサイバー攻撃対策を担当するのは、キルステン・ニールセン国土安全保障長官だ。名古屋へ留学経験があるニールセンは近々更迭されるとの噂も出ているが、彼女はトランプ政権で長官に就任する前、米ジョージ・ワシントン大学のサイバー・国土安全保障委員会センターの上級メンバーだったことから、サイバー分野にも精通している長官である。
英国では、テロ・犯罪担当大臣がサイバーセキュリティを担当
 ちなみに軍部を見ると、サイバー軍と、凄腕ハッカーらを抱えるNSAのトップは日系人のポール・ナカソネ陸軍中将で、もともと陸軍のサイバー部隊を率いていたサイバー戦のプロ。彼の上司にあたるジェームズ・マティス国防長官もトランプ政権に入る前からサイバーセキュリティの重要性については深く理解しており、例えば2009年には、統合戦力軍司令官時代に応じた雑誌のインタビューでもサイバー攻撃との戦いについて知見を見せている。
 ここまで見ても、米国のサイバー政策を担う幹部に「パソコンを使ったことはない」という人物がいるはずもないことがわかるだろう。
少し他の国も見てみたい。基本的に世界でも米国のように防衛や攻撃、犯罪などサイバーといっても担当は分かれている場合は少なくない。また首相府などに専門施設を置いている国も少なくない。首相府にサイバー分野を取り仕切る国家サイバー局があるイスラエルでは、そのトップに情報機関でもサイバーセキュリティに携わっていた人物が就いている。英国では、テロや犯罪などの担当大臣が、サイバーセキュリティ担当も担っている。英国については最近、サイバーセキュリティ専門の閣僚を任命すべきとの議論も出ていたが、現時点でそのアイデアは見送られている。またオーストラリアはサイバーセキュリティに特化した大臣を置いていない。
 そのほか、シンガポールは首相府にサイバーセキュリティ局を置いており、そのトップは英ロンドン大学キングス・カレッジで電子・電気工学を学び、米ハーバード大学への留学経験もある専門家である。いずれにせよ、コンピューターを使ったことがないという人がこうしたサイバーセキュリティ関連組織のトップになるという話は筆者は聞いたことがない。
今回の件で感じるのは、桜田大臣のようにサイバーセキュリティを理解していない人が担当大臣になったことが、笑い話にもなってしまい、日本にとっていかにマイナスかが十分に認識されていないのではないかということだ。既に述べた通り、世界に「日本のサイバー政策トップはパソコンを使うことすらできない」と知れ渡ったと書いたが、影響はそれだけではない。国境も関係なく攻撃が繰り広げられるサイバーセキュリティの世界では他国との協力も不可欠だ。そして日本はよくサイバー意識の高いイスラエルやエストニアといった国々と協力関係を築いていると世界に向けて喧伝している。だが今後、サイバーセキュリティを軽視し、知識もない大臣を任命する日本との協力は「大丈夫か?」と世界から言われかねない。また、全くの素人がサイバーセキュリティ担当大臣を務める日本は不幸であると、外国人たちが他人事として嘲笑していることは間違いない。
国際イベント目白押しの日本はハッカーの最大の標的になる
 また国内に目を向けても、サイバーセキュリティはサイバー犯罪、経済問題、テロ、サイバー戦争などとつながっていく問題であり、専守防衛を国是とする日本では、どんなサイバー攻撃を受ければ個別的または集団的自衛権を行使できるのかなど憲法問題にもつながる重要課題である。今年末に改訂する防衛大綱でもサイバー防衛が注目されているにも関わらず、サイバーセキュリティ担当大臣がUSBが何かもよくわかっていないようでは笑えない。
 特に日本では、これからG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)やラグビー・ワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会、大阪万博と世界的に目立つ国際的なイベントも続く。しかもこうしたイベントでは、過去のケースから見ても、国家系ハッカーたちの格好の標的になり、ハッカーらは早い段階から攻撃の準備を始めていることがわかっている。攻撃側よりも圧倒的に不利な防御サイドはかなりの準備が必要になり、すぐにでも議論を加速する必要がある。にもかかわらず、担当大臣は、国会の答弁でニヤニヤと「スマホは極めて便利なので1日何回も使っている」と話し、ドヤ顔でスマホを見せている場合ではない。彼を担当大臣に選んだ安倍首相も、サイバーセキュリティの重要性をわかっていないのではと指摘されても仕方がない。さすがに、日本のサイバーセキュリティの司令塔とも言われる内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のセンター長である防衛省出身の前田哲氏は、パソコンを触ったことがあるだろうし、他国の水準から見るとサイバーセキュリティに精通した人物に違いないはずだ。桜田大臣は、前田センター長というサイバーセキュリティの先生からしっかりとサイバーセキュリティについて教えてもらったほうがいいかもしれない。とはいえ、やはりパソコンを触ったことのないサイバーセキュリティ担当大臣は歓迎されるべきではない。「今から勉強してください」と言えるような時間的猶予はないのだから。
 海外の新聞社などによる報道の余韻が残っている今ならまだ、名誉回復のチャンスはある。サイバーセキュリティ担当大臣を今すぐに入れ替えるべきではないだろうか。
こういう子供むけの啓発動画からみせて、ステップアップさせていかないとならないでしょう。しかし「サイバー戦争」が世界的に苛烈化することに伴って、素人で担当大臣がつとまるわけがないことは、子供でもわかる理屈でしょう。
 政党の派閥関係で国務大臣人事を決めることは、もうやめてほしい。
官僚にバカにされない。その道の専門家でお願いしますよ。
しかし東京五輪はとても楽しみなのに、サイバー攻撃でどういう被害がでるのか、と考えるとこんな人事では正直怖いです。




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