台湾を見習え 日本に決定的に欠ける報復攻撃力
中国の対日ミサイル攻撃に「やられっぱなし」になる日本
北村淳
2018.12.13(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54923
総統任期4年間の中間選挙(統一地方選挙)で台湾・台北の投票所を訪れた蔡英文総統(2018年11月24日撮影、資料写真)。(c)CHANG
Hau-an / POOL / AFP〔AFPBB News〕
2018年11月に実施された台湾の統一地方選挙では、蔡英文総統率いる与党・民主進歩党が国民党に敗北した。選挙大敗の責任を取って民主進歩党党首を辞任した蔡英文総統は、2020年の総統選に向けての党勢立て直しに取り組むこととなった。このように政治的には中国寄り勢力の反攻が、少なくとも今回の統一地方選挙においては進展していると言ってよい。だが、台湾軍による中国に対する軍事的抵抗姿勢の努力は緩められてはいない。というよりは、トランプ政権による反中国・親台湾政策の推進により、台湾軍の対中国戦力の強化は進展しつつある。その一例が、かねてより台湾軍が配備している雄風IIE巡航ミサイルの改良作業である。
中国本土を攻撃する雄風IIE巡航ミサイル
雄風IIE巡航ミサイルは対地攻撃用の長距離巡航ミサイルである。「イスラエル製対艦ミサイルを改造して生み出された雄風I対艦ミサイルの改良型である『雄風II対艦ミサイル』の派生型である」としばしば誤って伝えられているが、実際には雄風II対艦ミサイルとは別物であり、台湾の政府機関である国家中山科学研究院によって独自に開発されたものである。
雄風IIE対地攻撃用長距離巡航ミサイル(初期型)
雄風IIE巡航ミサイル(以下、HF-IIE)は中国本土を攻撃する兵器であることから、軍事的にも政治的にも台湾の最高機密の1つとされている。そのため詳細情報は公にされていないが、2001年には開発プロジェクトが開始されており、2004年から2005年頃には実戦的テストが成功し、2008年には実戦配備されたと言われている。その後明らかになった情報によると、HF-IIE Block-1と呼ばれている初期型のHF-IIEは、200キログラムの弾頭(非核高性能爆薬弾頭)を搭載して、巡航速度マッハ0.85(およそ時速1040キロメートル)、最大射程距離600キロメートルとされている。ただし、最大射程距離を伸ばす改良は続けられており、1000キロメートルのバージョンも配備されているともいわれている。そして先月(11月)明らかになった情報によると、最大射程距離を1200キロメートルに延長させた新型のHF-IIE巡航ミサイルが、少なくとも100発以上調達されることとなり、既にそのための予算136億台湾ドルが計上されたということである。
最大射程600キロメートルである初期型HF-IIEの場合、射程圏に入る地域は福建省、浙江省の全域と広東省の一部である。攻撃可能な航空基地や海軍施設は台湾海峡を隔てた福建省の数カ所に留まり、上海のような重要戦略目標は射程圏外ということになる。
HF-IIEの最大射程距離が1200キロメートルになると、射程圏に入る地域は福建省、浙江省、広東省、江蘇省、安徽省、江西省の全域、湖南省の大半、それに湖北省、河南省、山東省、広西壮族自治区の一部を含む広大な地域に広がり、20カ所以上の航空施設を含む中国軍重要拠点を攻撃することが可能になる。また、上海市、広州市や深セン市といった沿海部大都市だけでなく武漢市や長沙市といった内陸部も射程圏内に収めることになる。
台湾から1200キロメートル射程圏
圧倒的な戦力差がある中国と台湾
こうして台湾軍は間もなく、中国本土の広域を射程圏に収める改良型HF-IIEを手にすることになる。一方、対する中国軍の台湾攻撃態勢の現状はどのようなものなのであろうか?
一言で言うならば「中国軍の台湾攻撃戦力は、圧倒的に強力である」ということになる。
中国軍は、台湾全域を射程圏に納めている弾道ミサイル(東風11、東風15、東風16、東風21Cなど:いずれもロケット軍が装備し、地上移動式発射装置から発射される)と長距離巡航ミサイル(東海10、長剣10、紅鳥1、紅鳥2など:ロケット軍、空軍、海軍が装備し、地上移動式発射装置、航空機、駆逐艦などから発射される)を、2000発前後も配備している。もし中国が、アメリカ軍が名付けた「短期激烈戦争」を台湾に対して敢行した場合には、開戦劈頭で1000発以上の各種長射程ミサイルが台湾全域の軍事施設、政府関連施設、重要インフラに降り注ぐことになる。
また中国海軍は世界最大数とも言われている各種機雷を保有しており、台湾周辺にビッシリと機雷を敷設して、台湾の海上交通を完全に遮断してしまう能力も保持している。そして海軍戦力そのものも、また空軍と海軍の航空戦力も、中国軍が台湾軍を圧倒的に凌駕している。要するに、中国軍による台湾上陸が開始される以前に「短期激烈戦争」の勝敗が決してしまうことは必至である。
中国に「二の足を踏ませる」ことになるHF-IIE
このように圧倒的な台湾攻撃能力を手にしている中国軍に対して、台湾軍がHF-IIEのような中国本土攻撃用ミサイルを数百発を手にして立ち向かったとしても効果的打撃を加えることが不可能であることは、台湾当局は百も承知だ。すなわち、台湾が開発を続けているHF-IIEは、中国に対する先制攻撃手段や反攻手段としては位置づけられていないことは明白である。そうではなく、HF-IIEは中国に対する報復攻撃手段なのである。
もちろん、中国軍が台湾へミサイル連射攻撃を仕掛けた場合、台湾軍が中国本土の戦略目標に対して200~300発のHF-IIEを撃ち込んで報復攻撃を加えたとしても、戦局そのものを好転させることはできない。しかしながら、軍事的重要施設、共産党指導者関連施設、重要基幹産業施設などをピンポイントに破壊する報復攻撃能力を台湾側が保有していることは、中国軍そして共産党指導者が台湾に対する軍事攻撃実施を決断するに際して「二の足を踏ませる」効果があることには疑いの余地がない。圧倒的戦力を擁する敵に対して、反撃して撃破するだけの戦力を手にすることができないまでも、HF-IIEのような効果的な報復攻撃戦力を手にすることは、国防の責に任ずる政府・国防当局にとっては最低限の義務と言えよう。
日本にも必要な報復攻撃戦力
台湾同様に日本も、中国人民解放軍の1000発を超える各種長射程ミサイル(東風21C、東風26などの弾道ミサイル、ならびに東海10、長剣10、紅鳥2、紅鳥3などの長距離巡航ミサイル)の脅威に直面し続けている(参照:拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』講談社α新書)。そして、そのような対日攻撃用ミサイル戦力は、ますます強化されている。
中国人民解放軍の対日攻撃概念図
しかしながら日本国防当局は、台湾国防当局と違い、報復攻撃戦力を手にする努力を怠っている。国会でも、「敵基地攻撃論」といった的外れな議論が浮上しても、それが報復攻撃戦力構築へとは発展しない。このまま報復攻撃力を手にしないでいると、中国は「二の足を踏む」ことなく自らの都合に合わせて日本に大量のミサイルを撃ち込むことができ、日本は「やられっぱなし」のまま屈服させられることになる。日本政府・国会は、取り返しがつかない状況に立ち至る前に、報復攻撃戦力を手にする努力を開始すべきである。
〈管理人〉まさに共産中国が我が国にミサイル攻撃をしかけようとすると、様々な場所から複数の攻撃ポイントを選べるというわけですな。よくこんなところで暮らしてますな。恫喝されないように共産中国のミサイルを無力化することも国家安保戦略のうちでしょう。
台湾空軍
【サイバー戦の時代・アメリカによるサイバー攻撃への報復攻撃の理想と現実】
焦点:米国はサイバー攻撃に軍事報復も視野、実行には高い壁
[ワシントン31日ロイター] 米国防総省は、他国からのサイバー攻撃で甚大な被害を受けた場合、現実世界での武力報復に出る可能性もあると警告している。しかし、これは口で言うほど簡単なことではない。米防衛大手ロッキード・マーチンにも大規模なサイバー攻撃が仕掛けられたことが発覚し、専門家の間では、そうしたハッカーによる攻撃がどこから行われたかを即座に把握するのは極めて難しいとの声が上がっている。手口を高度化させたハッカーらは、自分たちの足跡を隠すことができ、あたかも別の場所から攻撃を仕掛けたように見せることも可能だ。また、武力行使に踏み切るには適法性をめぐる壁もある。経済制裁やサイバー空間での報復といった別の対応の方が、軍事行動よりは適切ではないかと専門家らはみている。
ワシントンを拠点とするシンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のクリスティン・ロード氏は「サイバー攻撃に対する報復には多くの課題がある」と指摘。「特定の攻撃を外国政府など特定の関係者に結び付け、(ハッカーの)帰属を確定するのは非常に難しい」と述べた。
ホワイトハウスは先月発表した報告書で、米政府はサイバー空間での敵対行為には「ほかの脅威と同様に」対応すると明言。米国防総省は現在、6月に発表を予定しているオバマ政権のサイバー戦略に関する報告書をまとめており、その中でサイバー攻撃に対する武力報復の可能性を認めている。国防総省のデーブ・ラパン副報道官は「米国を狙ったサイバー攻撃への対処には、サイバー空間での対応だけに限らない。あらゆる適切な選択肢が検討される」と述べた。サイバー攻撃の脅威は、米軍との関係が深い防衛大手ロッキードにも仕掛けられたことが分かり、再び懸念が高まっている。ロッキードは、5月21日に受けた「執拗な」サイバー攻撃が、世界中のハッカーから頻繁に受けている攻撃の一部だとの見方を示した。国防総省は、米国のコンピュータネットワークに侵入を試みた外国の情報機関は100を超えると推測している。当局者らによれば、米国の政府機関、企業、大学からは毎年、米議会図書館を何度も満たすことができるほどの情報が持ち出されている。
<後手に回る対応>
複数の現役および元国家安全保障当局者によると、米情報機関は、ロッキードへのサイバー攻撃だけに特別な懸念を抱いている様子はないようだ。ある当局者は、軍事産業や政府機関を狙った同様のサイバー攻撃は日常的に起きていると語る。
ただ、サイバー空間での脅威に関するオバマ政権の動きについては、十分なスピードに欠けているとの指摘もある。民間コンサルティング会社サイバー・ディフェンス・エージェンシーのSami Saydjari代表は、中国やロシアなどの「目覚ましい戦略的進歩」を引き合いに出し、「米国は概して、かなり後手に回っている」と述べた。
サイバー空間での米国の権益に対するスパイ行為に関して言えば、中国が有力な「容疑者」として浮上することが多いが、アナリストらは、ハッカーの偽装能力により、中国政府が背後にいると証明するのは難しいと指摘する。中国政府は、サイバー攻撃への関与を一切否定している。
米国防総省が発表する報告書では、ハッカーがウォール街の全金融データを消去した場合や、米北東部を停電にした場合、軍艦のデータを盗み出した場合など、具体的な想定に言及することはないとみられる。
ラパン副報道官は「必ずしも『もしこうなったらこうする』と段取りを決めるわけではない。繰り返しになるが、要はサイバー攻撃を受けた場合、われわれにはいかなる対応も取る権利があるということだ」と語った。
ドナルド・トランプ政権でもスタンスは基本的に変わらないです。ただいきなりリアルな軍事力を投入するのではなく、声明を発することで警告していますね。
「今後は報復と北朝鮮に警告」サイバー攻撃に強い姿勢、トランプ政権中露牽制も
2017.12.20 07:20更新https://www.sankei.com/world/news/171220/wor1712200009-n1.html
米政府が今年5月の攻撃について北朝鮮の犯行であると確認したのは、核実験などとともにサイバーテロについても手加減せず、制裁や報復を行う強い姿勢を示すためだ。近年、北朝鮮のハッカー集団の関与が疑われるサイバー攻撃が増加。攻撃能力が向上したという指摘もあり、危機感が高まっていた。
今年に入り、北朝鮮が支援しているとされるハッカー集団のサイバー攻撃が相次いで報告。5月のワナ・クライの攻撃のほか、インターネットバンキング利用者や韓国の仮想通貨取引所を標的に金銭の窃取を狙う手口も確認されている。
元韓国国防省北朝鮮情報分析官で拓殖大客員研究員の高永●(=吉を2つヨコに並べる)(コ・ヨンチョル)氏は「これまで北朝鮮の犯行と完全に断定することは難しく、制裁などにつなげられなかった。それをよいことに北朝鮮が攻撃を連発している」と指摘。米政府の発表で「北朝鮮の仕業である『証拠』はつかんだと国際社会にアピールし、『今後は、容赦せず報復する』と北朝鮮に警告した形だ」と解析する。
米政府がサイバー攻撃に圧力をかける姿勢を強調する背景には、国内で広がる北朝鮮の攻撃能力への警戒感がある。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は10月15日、「世界はかつて北朝鮮のサイバー能力を嘲笑した。もはや、笑えない」という見出しで記事を掲載。「(サイバーの)戦闘能力を成長させた」という専門家の声を紹介した。同月10日には北朝鮮とみられるハッカー集団が米電力会社にサイバー攻撃を仕掛けたという調査も発表され、人命にかかわるインフラに被害を与えようとする危機が判明した。
一方、北朝鮮にネット接続サービスを提供しているとされる中国やロシアへの「牽制」という指摘もある。田中達浩・元陸上自衛隊通信学校長は「米政府の発表は、北朝鮮へのサイバー攻撃の支援が取り沙汰された中露に『協力は許さない』というメッセージを暗に送った」と分析した。(外信部 板東和正)
世界のサイバー戦争
〈管理人〉情報戦には情報戦で報復する、という形が理想のように思えますが、どうでしょうか?
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