2018年12月23日日曜日

戦争の原則とは何か? 共産中国がアメリカにしかける情報戦


戦争の原則(プリンシプル・オブ・ウォー)
軍事学のの基本であり、戦争に勝つための原理、原則である。
大隊の戦術レベルで考えると以下のようになる。


  MASS(マス)
軍事力のサイズが大きいほうが勝つ。数だけではなく、量とともに質も揃えないと勝てない。質量ともにそろえた方が勝つ。

  Unity of Command(ユニティ・オブ・コマンド)
単一の指揮系統があるかどうか。司令官が複数いると現場が混乱する。

  Simplicity(シンプリシティ)
作戦を単純化する。複雑な作戦、戦術は失敗する。

  Surprise(サプライズ)
奇襲である。敵の意表をついて突然攻撃をかけることは、勝つための攻撃の基本である。歴史的にみても「奇襲」をうまく活用して劣勢であった側が勝利を得た事例は数多く存在する。

  Security(セキュリティ)
防諜を含め、敵に奇襲させない、自陣の安全が保障されているということです。勝つための最初の条件といえる。

  Objective(オブジェクティブ)
戦争を遂行するには、目的がないと勝てない。

  Economy of Force(エコノミー・オブ・フォース)
適性な兵力投射のことである。これは経済の問題、戦争にかかる出費の問題である。可能な限り抑制しないといけませんが、適正な兵力は必要です。

  Offensive(オフェンシブ)
戦争は攻撃しないと勝てない。原則がDefensive(ディフェンシブ)になっていると絶対勝てない。軍の常識からしてありえないこと。

  Maneuver(マニューバ)
機動力のこと。タイミングをみながら決め技、必殺技をださなければ勝てない。

これらの項目の中で、最も重要な項目が、オブジェクティブとユニティオブコマンドになる。他の項目は、多少いい加減でも運がよければ勝てる場合があり、また敵失で勝利を得る場合があるが、この二つの要素は絶対に外せないといわれる。


【ゆっくりと戦術解説】
9つの大原則
12の陣形と戦術の核心

世界の戦術・奇策・戦いを紹介

戦争概論解説

次は北村淳氏の論文では、共産中国がアメリカの「虎の子」である原子力潜水艦に対して情報戦をしかける点が述べられています。戦争はその25%が軍事によるものにすぎず、75%がいわゆるハイブリッド戦といわれるものが主流です。軍事大国は、このハイブリッド戦にむけて体制を整えつつあります。


中国海軍、太平洋に米軍原潜監視のセンサー設置か


米戦略原潜基地の入り口に設置された中国製水中音響測定装置

北村淳
米海軍のオハイオ級原子力潜水艦「ミシガン」。原潜の情報が中国の水中センサーによって収集されてしまうのか?(2017425日撮影、資料写真)。(c)AFP/YONHAP AFPBB News

 ファーウェイ副会長逮捕事件によって米中関係だけでなくカナダ・中国関係もギクシャクしている。実は中国、カナダ、アメリカの間に波風を立てている問題はその事件だけではない。カナダの海洋研究機関が設置した水中音響測定装置を巡って、中国、カナダ、アメリカを巻き込んで疑心暗鬼が続いているのだ。
大平洋海底に新たに設置された水中センサー網
 カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリアにある州立ビクトリア大学は、「カナダ海洋ネットワーク」(Ocean Network Canada、以下「ONC」)という海洋研究機構を主導している。ONCでは、カナダ西岸沖の北太平洋を中心に、カナダ北岸沖の北極海やカナダ東岸沖の北大西洋などの海中に水中音響測定装置をはじめとする各種センサーを多数設置して、それらのセンサーを水中ケーブル網で接続した大規模なネットワークを施設している。このネットワークによってリアルタイムで収集された様々な海洋環境データは、カナダだけでなく国際的な海洋科学研究に役立てられている。
ONCが施設しているネットワーク
本拠地であるビクトリア大学に近接するバンクーバー島西岸沖合の大平洋海底には海洋ネットワークの中で最も充実した「ネプチューン」と呼ばれる水中センサー網が設置されている。そのネプチューンうちのエンデバー地区と呼ばれる海域の海底に、本年(2018年)夏、4基の最新鋭高性能水中センサーが新たに設置された。それらの高性能水中センサーを開発したのは中国科学院に所属する「三亜深海科学与工程研究所」(Sanya Institute of Deep Sea Science and Engineering、以下「三亜深海研究所」)の研究者である。実際に大平洋の海中に設置されている装置そのものは三亜深海研究所が所有している。
設置したのは中国の三亜深海研究所
 これまでも、ONCは北太平洋に水中センサーを設置して研究活動を実施してきた。しかし、今回の水中センサー設置に対してアメリカ海軍情報局関係者をはじめとする米海軍関係者たちからは、「アメリカの安全保障にとって極めて深刻な事態に発展しかねない」との警戒の声が上がっている。
 第1の理由は、その高性能水中音響測定装置を開発し、実際に設置(海底に設置するため高度な技術が必要)し、保有しているのが三亜深海研究所だからだ。三亜深海研究所は、中国科学院に属しているというだけでなく、三亜深海研究所が位置する海南島の三亜市には、中国海軍にとり最も重要な潜水艦基地である兪林海軍基地があるからである。現時点では、三亜深海研究所と中国海軍の繋がりが確認されているわけではない。しかしながら「神以外は全てを疑い監視せよ」をモットーとするアメリカ海軍情報局関係者たちにとり、中国海軍潜水艦部隊の最重要拠点である三亜市を本拠とする三亜深海研究所が開発した水中センサー設置を警戒するのは無理からぬところである。
米海軍原潜が必ず通過するファンデフカ海峡
 そして第2の理由は、中国製高性能センサーが設置された海域が、アメリカ海軍にとっては「驚くべき海域」だからである。ONCネプチューンのエンデバー海域は、ブリティッシュ・コロンビア州西岸のバンクーバー島南岸と、アメリカのワシントン州西部のオリンポス半島北部を隔てているファンデフカ海峡の太平洋口沖合の海域である(下の地図)。
ファンデフカ海峡の位置(Googleマップ)ファンデフカ海峡の拡大地図。海峡を抜けた米海軍原潜は必ずエンデバー海域を通らなければならない
カナダとアメリカの国境をなすファンデフカ海峡の大陸側内海の北側は、カナダ西部最大の都市であるバンクーバーに至るジョージア海峡が広がっており、南側にはアメリカ北西部最大の都市であるシアトルに至るピュージェットサウンドという複雑に入り組んだ海域になっている。そのピュージェットサウンドには、アメリカ海軍の重要拠点であるエバレット海軍基地(原子力空母の母港)、ブレマートン海軍施設(原子力空母や原子力潜水艦のメンテナンスや修理能力を有する)、そしてバンゴール潜水艦基地(戦略原潜、攻撃原潜の母港)が点在している。
そのバンゴール基地を本拠地としている戦略原潜(オハイオ級原子力潜水艦)が、中国やロシアによる米国とその同盟国に対する核攻撃を抑止するために核弾道ミサイルを搭載して(それぞれのオハイオ級戦略原潜には24基のトライデント弾道ミサイルが搭載される)太平洋に出動する際には、バンゴール基地からピュージェットサウンドを北上し、ファンデフカ海峡を西航して太平洋に出ることになる。すなわち、バンゴール基地から出動する米海軍戦略原潜は、中国製高性能水中センサーが設置されているエンデバー地区を通過しなければ大平洋での作戦行動はできないのだ。カナダの大学が運用しているという名目にはなっているものの、米海軍戦略原潜が避けて通れない海域の海底に高性能水中センサーを設置しているのは、中国海軍が本拠地としている三亜市の中国企業である。米海軍関係者たち、とりわけ「神以外は全てを疑い監視せよ」をモットーとするアメリカ海軍情報局関係者たちが、疑いの目を向けないわけにはいかないのは当然と言えよう。
疑いを捨てきれない米海軍関係者たち
 ONCの研究者やカナダやアメリカの海洋科学者たちによると、ONCネプチューンのエンデバー海域に設置された中国製水中音響測定装置によって、潜水艦の行動を分析することは極めて困難であるという。しかしながら、たとえONCには純科学的なデータしかもたらせなくとも、センサーを開発し所有している三亜深海研究所は別のデータを入手できる仕組みになっている可能性も否定できない、と米海軍関係者たちは考えている。その場合、三亜深海研究所が得たデータは中国海軍が手にすることになるのは当然だ。もちろん、そのデータがONCネプチューンで潜水艦の行動を監視するために有用かどうかは明らかではない。ただし、この種のセンサーによって得られる水中環境データは非軍事的(純科学的)にも軍事的にもともに極めて貴重であることは間違いない。そのため、米海軍としては、トランプ政権に働きかけて、カナダ政府に中国製水中音響測定装置の撤去を要請する可能性もある。ファーウェイ副会長逮捕でもめているカナダ・中国・アメリカの三国間に、新たな難題が加わるかもしれない。
〈管理人〉これも米トランプ政権がしかける対中国への経済戦争による中国側の反動反発になるのでしょう。
【音響インテリジェンスの解説】
次世代潜水艦ソナーの研究試作
超音波システムの技術 キャビテーションの原理




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