2018年12月18日火曜日

米中経済戦争の行方② ~ファーウェイ事件の顛末~


ファーウェイ事件の恐怖、在米中国人エリート層が逃げ出す日

トランプの真の狙いとは?

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表兼首席コンサルタント)

ファーウェイ(華為)事件と米中貿易戦争とは果たして関連性があるのか。あるとすれば、どのようなものか。トランプ米大統領は1211日、ロイターとのインタビューで、ファーウェイの孟晩舟副会長がカナダで逮捕されたことについて、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。

中国当局によってカナダの元外交官・マイケル・コブリグ氏が拘束された。

不要不急の中国出張を控える理由

 ネットワーク機器開発大手シスコ社は即座に反応し、一部の従業員に、不要不急の中国出張を控えるように社内メール通達を発出した。原因は明白だ。中国がファーウェイ事件の報復に出ることをリスクに捉えたからだ(127日付け英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」オンライン記事)。
 案の定、1211日夜、中国でカナダの元外交官が拘束されたとの一報が舞い込んだ。ファーウェイ副会長の逮捕との関係は分かっていないとはいうが、センシティブなタイミングである以上、様々な憶測が飛び交う。
 中国は立場上、「対等な」報復に出ることがあってもおかしくない時期だ。外国人の身柄拘束は多様な形態が考えられる。腐敗犯罪や独占禁止にかかわる容疑などだけでなく、民事訴訟をもって外国人に出国制限をかけることも不可能ではない。中国「民事訴訟法」第255条では、「被執行人が法律文書に定めた義務を履行しない場合、人民法院は出国制限をし、また関係部門に通達を発してその出国制限に協力要請をすることができる」と定められている。上記条項の司法解釈の規定では、「出国制限される者の具体的範囲としては、被執行人が法人またはその他の組織であった場合、法定代表人、主要な責任者のみならず、財務・会計担当者等債務の履行に直接責任を負う者も含む」となっている。
 さらに、中国の「外国人入国出国管理法」第28条では、外国人が次に掲げる情況の1つに該当した場合、これの出国を禁止すると定めている。(2)未完了の民事案件を抱え、人民法院が出国禁止を決定したとき。(3)労働者の労働報酬の遅配・未払いがあり、国務院の関連部門または省・自治区・直轄市人民政府が出国禁止を決定したとき。(4)法律・行政法規が定めるその他出国禁止の情況。このように、様々な形態によって中国は外国人に出国制限をかけることができるのである。

在米中国人エリート層に激震が走る

 事件の影響が及んだのは、特定業界や企業の外国人だけではない。在米中国人のエリート層にもファーウェイ事件の激震が走る。ファーウェイの孟氏を逮捕できるのなら、自分たちも同じようにされる可能性があると彼たちは考える。米国の制裁対象にならない保障はどこにもないからだ。米中貿易戦争はもはや通商や経済の分野にとどまらない。そんな恐怖が彼たちを襲う。世界からエリートたちを温かく迎え入れる米国の笑顔はもう存在しない。冷徹な司法は彼たちの目には、より政治的色彩を帯びてきたようにも映っている。
 ウェブ上の中国語書き込みを見ると、色々ある――
 在米留学歴をもつ中国人は急用がなければ、しばらくは渡米を控えたいといっている。米国の奨学金をもらった中国人ITエンジニアはiPhoneをやめてファーウェイのスマホに乗り換えたいと憤慨している。エリート層の対米感情の急激な悪化が現れはじめている。
 某AI(人工知能)関連企業の創業者中国人は、10月に米国へ入国する際に審査官から根掘り葉掘り尋問をされたと恐怖をあらわにしている。またシリコンバレーで働く某中国人エンジニアは、米国の出入国にあたっては余計な検査や取り調べを避けるためにも手持ちのノートパソコンからSMS履歴をすべて削除していると告白した。これらの中国人エリートたちは、実は米国にも中国にも疑われる可能性があるからだ。

価値観の葛藤、なぜアメリカが豹変したのか?

 ファーウェイ事件で、多くの在米中国人エリート層が少なからずショックを受けている。米国の教育を受け、シリコンバレーで働き、西側の価値観をも受容する人たちである。彼たちはこの事件でアメリカに懐疑を抱き始めた。人種のるつぼといわれる米国は何より、多様性に価値を置いてきた。しかし、トランプ大統領の中国に対する露骨な狙い撃ちによって、このような米国の固有価値観に背馳する一面も露呈した。中国人エリートたちが戸惑うのも無理はない。ニューヨーク・タイムズ系のコラムニスト袁莉氏がこう述べている。「北京にとっても、中国人エリート階級の対米恐怖感と信頼感の欠落によって恐ろしい結果を生む可能性がある。米中貿易に衝突が存在しながらも、双方の経済が緊密につながっている。現下中国経済の減速も相まって、米中のビジネス関係のいかなる停滞も状況を悪化させ得る」
 その通りだ。米中の対立に直面する中国人エリートの大方は普遍的価値観の側面において総じて米国側に立っている。少なくともそのように見える。彼たちは中国がより開放された自由な市場にすべく自国政府にも働きかけているようにも見える。
権威主義体制下で育った中国人はあらゆる領域に及ぶ国家権力にとにかく敏感である。あらゆる領域に政治やイデオロギーが浸透し、彼たちはこのような赤裸々な権力行使に嫌悪感を抱きながら脱出を図り、自由な国であるアメリカにやってきた。彼たちから見れば、孟氏は犯罪者でもなければ、法律上の被疑者。あくまでも米中貿易戦争の犠牲者にすぎない。非常に感性的ではあるけれど。彼たちは、中国人に生まれたこと、あるいは中国からやってきたこと、この出自を「原罪」とされたように感じた瞬間に、固有のアメリカのイメージが崩れ去ったのである。

架橋を撤去し、米中間には「分断」を

 このエリート層をトランプ氏が排除する姿勢を示せば、米中間の架橋が撤去されかねない。こんな馬鹿げたことをなぜトランプ氏がやろうとしているのか。
 いや、じつはまったく馬鹿げたことではない。これはまさにトランプ氏が狙っていたところなのだとさえ思えてならない。中国人エリート層といっても中国の利益を代弁するものもいれば、完全に米国化したものもいる。敵か味方かの弁別が簡単につかない。たとえしようとも莫大なコストがかかるし、正確性も保障されない。ならば、その弁別をいっそ諦めたほうが効率がよい。そこで人材が米国から流出するだろう。米国にとって損失ではないか。さて、何の損失かというと、ITなど科学技術の進歩が停滞するということだ。単純な仮説として、中国がある日技術的に米国を超越した場合、どう対処するかの問題を取り上げてみよう。
 この問題の解決には2通りの方法がある。正確に言えば二段構えである。まずは中国の進歩を抑制し、息の根を止めることである。これは通商の鈍化やサプライチェーンの無効化(中国外のサプライチェーンの立ち上げ)といった手段を講じることだ(129日付け記事「休戦あり得ぬ米中貿易戦争、トランプが目指す最終的戦勝とは」)。数年後に成果が出れば、米国の勝利となる。
 次に、もしこれが失敗した場合、つまり米国の抑制が奏功せず中国が最終的に大成功し、しかも米国を超越した状況になった場合の話。そのときに、べったりした中国依存状態よりも棲み分け状態のほうがよほど有利であることは自明の理である。キーワードは「分断」と「棲み分け」。だから、掛け橋は要らないのだ。いや、邪魔で危険なのだから、早く撤去したほうがよい。トランプ氏はこう考えているのではないか。

トランプがファーウェイ幹部を捕らえた本当の理由



海野素央 (明治大学教授、心理学博士)

今回のテーマは、「ファーウェイ事件とトランプ流ディールパターン」です。中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)が121日、米国の要請によりカナダのバンクーバーの空港で逮捕されました。孟副会長は同月12日に釈放されましたが、イランとの違法取引を行うため、米金融機関に虚偽説明をした疑いがもたれています。ところが、米国の孟氏逮捕の本当の理由は別のところにあるようです。本稿ではファーウェイ事件における同国の思惑と、ドナルド・トランプ米大統領のディールパターンを中心に述べます。

米国のストーリーの仕立て

 ハイテク通信機器の分野で大躍進を遂げているファーウェイは、中国政府及び軍と連携をしており、純粋な民間企業ではありません。この分野で覇権を握る野望を抱いている習近平中国国家主席にとって、ファーウェイは中国企業の中で最重要企業の位置づけといえます。少々乱暴な言い方ですが、米国はその企業の孟副会長を無理やり逮捕したのです。というのは、米国にとって種々のメリットがあるからです。
 例えば、ファーウェイの企業イメージが低下します。さらに、米国はファーウェイの通信機器を使用すると、基地局を通じて機密情報が抜き取られる、大量のデータが盗まれるといった恐れがあると、世界に向かって警告を発することができます。確かに、2017年の基地局市場におけるファーウェイのシェアは第1で、27.9%を占めています。従って、ファーウェイは米国の安全保障上のリスクを高める存在になり得ます。そこで、米国はファーウェイは危険な企業であるというレッテルを貼り、同社に対する人々の警戒心を高め、不安を煽っています。ハイテク通信機器の分野で台頭するファーウェイを叩くためのストーリーを仕立てたわけです。つまり、制裁が科されているイランとの不正取引は表向きの理由であって、本当の理由はファーウェイ進出の阻止にあるのです。

新しい交渉の組み合わせ

 トランプ大統領にもメリットが存在します。中国との通商協議において、孟氏を交渉材料として利用し、多くの譲歩を引き出すことが可能になりました。トランプ氏の視点に立てば、孟氏は中国に対して非常に価値の高い交渉カードです。これまでトランプ大統領は、欧州連合(EU)及び日本に対して、安全保障問題と通商協議をリンクさせて交渉を有利に進めてきました。日本に対する米国製武器購入の圧力は、正に安全保障と対米貿易不均衡の是正の双方を狙ったものです。
 今回、トランプ大統領は新しい交渉の組み合わせによって、中国に対して貿易交渉で有利な立場に立とうとしています。ロイター通信とのインタビューで、孟副会長逮捕に対する介入を示唆しました。その裏側には、中国に対して刑事事件と通商協議を結びつけて、貿易交渉で中国から譲歩を引き出す意図があります。因みに、米中貿易協議において対中強硬派のロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、米CBSテレビのインタビューの中でファーウェイ事件に関して、「刑事司法上の問題と通商協議は別物である」と述べ、トランプ大統領とは異なったアプローチを望んでいます。

トランプ大統領の孟氏利用法

 では、トランプ大統領は具体的にどのようにして刑事事件と通商協議をリンクさせるのでしょうか。トランプ氏が描いている可能性がある筋書を1つ紹介してみましょう。
 トランプ大統領はカナダ政府に対し孟副会長の身柄引き渡しを強く求めます。最終的には、カナダの裁判所が身柄引き渡しを審査し、決定するわけですが、仮に実現すれば舞台はニューヨーク連邦地裁に移ります。米国で、孟副会長は有罪になり、禁固刑が言い渡されます。もしそうなれば、この時点で米中関係はかなり悪化しているでしょう。そこでトランプ大統領は、習主席のメンツを保ち、貸しを作るために、孟副会長に恩赦を与えます。そうすることで、通商協議で中国から最大限の譲歩を引き出せます。これがトランプ流のディールパターンです。以下で、トランプ流パターンについて詳細に説明しましょう。

トランプ流ディールパターン

 トランプ大統領には、ディールパターンが存在します。まず、自ら交渉相手に仕掛けていきます。米中貿易戦争では、トランプ氏から中国製品に対して追加関税をかけました。
 次に、対決姿勢をとり、事態をエスカレートさせ、意図的に危機的状況を作ります。問題解決の糸口が見えないため、交渉相手を含めたステークホルダー(利害関係者)は不安に駆られます。ところが、緊張が高まりピークに達すると、トランプ大統領は対決姿勢を弱めて、一旦引きます。例の中国に対する90日の猶予が、これに当たります。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで121日、米中首脳会談を開催した際、中国製品に対する新たな追加関税の延期及び90日の通商協議の開始に合意しました。トランプ氏との全面対決の回避を探っている交渉相手は、ほっと安堵の胸をなでおろします。このタイミングを狙って、トランプ氏は相手から多くの譲歩を引き出すわけです。
 最後にトランプ大統領は「勝利宣言」を行います。バラク・オバマ前大統領、ジョージ・W・ブッシュ元大統領、ビル・クリントン元大統領など歴代の米大統領が成し得なかった偉業を自分は達成したと豪語するのです。

次の標的は日本?

 では、トランプ大統領は中国に与えた90日の猶予が終了する1931日に、米中貿易戦争の勝利宣言を行うのでしょうか。率直に言って、その可能性は低いといえます。
 知的財産権侵害、強制的技術移転、中国政府による企業への巨額の補助金、米軍へのサイバー攻撃など課題が山積しており、これらを90日間の通商協議で、すべて解決することは極めて困難だからです。しかも、中国側がこれらの諸問題に対して、トランプ大統領が満足できる提案を出せるかは、まったく不透明です。加えて、20年米大統領選挙も絡んできます。米中貿易戦争に勝利して、次の大統領選挙に立候補する民主党候補及び共和党候補にはない業績作りをしたいトランプ大統領ですが、1931日に勝利宣言を行うのはあまりにも早すぎます。というのは、再選を狙った大統領選挙は20113日だからです。
 米中貿易戦争は、大統領選挙の期間、トランプ大統領にとって支持基盤にアピールできる好材料です。そこで、トランプ氏は中国に対する対決姿勢の強弱を巧みに使い分けながら、米中間に横たわる諸問題の解決を引き延ばしていく可能性が高いでしょう。それは中国にとって非常に厄介な問題ですが、逆に日本にとっては好都合なことです。仮に来年の31日に米中貿易戦争における勝利宣言を行ってしまえば、トランプ大統領は20年大統領選挙に向けて日米自由貿易協定を業績の一つに掲げようと、日本に対して同協定の締結を本格的に迫ってくるからです。
 結局、孟副会長逮捕と米中貿易戦争の行方は、日米貿易問題に影響を及ぼすということです。たとえ日本が次の標的になっても、トランプ流ディールパターンを見抜けば、同大統領の言動に対して不必要な過剰反応を示す必要はないでしょう。
東大生が徹底解説!ファーウェイ&ZTE排除

【環球異見】ファーウェイ事件と米中冷戦環球時報(中国)「5Gの野望は妨げられない」
株式会社 産経デジタル
2018/12/17 11:04 https://www.msn.com/ja-jp/news/money/【環球異見】ファーウェイ事件と“米中冷戦”-環球時報%ef%bc%88中国%ef%bc%89%ef%bc%95%ef%bd%87の野望は妨げられない」/ar-BBR3HdS?ocid=spartandhp#page=2

米国の要請を受けたカナダが、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)、孟晩舟(もう・ばんしゅう)容疑者を逮捕(その後保釈)し、一方で中国当局がカナダ人男性を相次ぎ拘束した事件。米中欧メディアはいずれも次世代移動通信システム(5G)をめぐる「覇権戦争」が根底にあると分析。米中の対立は今後、世界が再び分断される第2次冷戦に発展する懸念も強まっている。
ウォールストリート・ジャーナル(米国)「貿易ルール悪用は代償伴う」
 米有力紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国当局によるカナダ人男性2人の拘束に先立つ6日付の社説で、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)である孟晩舟(もう・ばんしゅう)容疑者の逮捕は、「『中国に国際貿易規範の悪用をやめさせる試み』と理解するのがふさわしい」と論じた。
 社説は、オバマ前政権下の2012年に米下院情報特別委員会が、華為や中興通訊(ZTE)がスパイ活動や情報窃取に使われる可能性があると警告していたことを紹介。米当局が孟容疑者の逮捕に関わる対イラン制裁違反を16年から疑っていたとの報道も引き、「なぜ米国はすぐに行動し、中国にメッセージを送らなかったのか」と疑問を投げかけた。
 また、「中国とファーウェイに法執行を通じ(国際貿易で規範の悪用は)代償が伴うとの教訓を与える必要がある」と指摘した。
 孟容疑者の逮捕を受け、中国がカナダや身柄拘束を要請した米国への何らかの報復に出ることは、米国では予測の範囲内だった。
 米主流メディアは、原則論として事件を貿易戦争の取引材料に使おうとしたトランプ大統領に苦言を呈している。しかし一方で、次世代移動通信システム(5G)で中国が覇権を握ることが今後、さらなるサイバー攻撃や情報窃取を生むとの懸念では、米政権と認識を共有している。
 トランプ氏は中国との貿易交渉のため、今回の事件に「介入」する可能性にも言及した。米中対立が今後、第2次冷戦に発展する懸念もある。
 ただ、米通商代表部(USTR)のカトラー元次席代表代行は、このトランプ発言に先立つニューヨーク・タイムズ紙(電子版)への寄稿で、中国の知的財産権侵害に取り組む必要性を強調しつつも、事件を交渉カードに使うことには「効き目はないだろう」と指摘していた。(ワシントン 加納宏幸)
環球時報(中国)「5Gの野望は妨げられない」
 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語版)は8日付の1面で、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)、孟晩舟容疑者が米国の要請によりカナダで逮捕された事件について、
「中国は第5世代(次世代移動通信システム=5G)の競争をあきらめない」との見出しで、今回の問題を論評した。
 5Gは現行の4Gに比べ通信速度が100倍とされる。あらゆるモノやサービスがインターネットにつながるIoTや人工知能(AI)、自動運転など先端産業を支える技術で、先陣争いが始まっている。
 同紙は、華為を始めとする中国の5G技術について「米国や欧州よりすでに優位に立っている」と指摘。米国やその同盟国が市場から華為を閉め出したとしても、5Gをめぐる「中国の野望を妨げることはできない」と断じた。
 米中の対立は今や、通商問題にとどまらず、安全保障やイデオロギー、先端技術をめぐる覇権争いの様相を呈している。
 中国の覇権奪取に向けた道しるべとなるのが、長期的な産業政策「中国製造2025」。官民一体となって「製造強国」を実現し、米国を追い抜く野心的な国家戦略で、5Gこそそれを支える柱である。
 4日付の同紙は、米国が問題視する「中国製造2025」について、「1日の米中首脳会談終了後に発表された米ホワイトハウスの声明には言及がなかった」と指摘。「両国が妥協の可能性を模索している」と楽観的な見通しを示していた。
 しかし実際には、1日の時点で「中国製造2025」の中核企業である華為の孟容疑者が逮捕されていた。「米中間の対立を解消させる魔法のつえはない」(3日付の中国英字紙チャイナ・デーリー)のだ。
 孟容疑者は保釈されたものの、カナダ当局の監視下にある。環球時報(英語版)は13日付社説で、「カナダは米国の覇権主義と距離を置くべきだ」と主張、孟容疑者の身柄を米国に引き渡さず、完全に釈放するよう求めた。(北京 藤本欣也)
フィナンシャル・タイムズ(英国)「情報盗まれるゾッとする現実」
 中国による通信機器を通じたスパイ活動に、米国が強い危機感を示した今回の事件をめぐり、英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は7日の論説記事で、「世界中で(情報が)盗まれるというゾッとする新たな現実によって、スパイ行為が正体を現した」と指摘した。
 影に潜んでいたスパイ活動の問題が、今回の事件で明らかになり、市民生活に影響を与える課題であることも示している。
 同紙は英国、カナダ、オーストラリアの諜報機関幹部が、中国の活動に関する警鐘を鳴らすことに積極的になっていると分析。3カ国の諜報機関幹部が同様に、次世代移動通信システム(5G)について「信頼される企業だけで運用されるべきだ」と主張していることを紹介した。
 欧州においても5Gを使ったシステムは、携帯電話だけでなく自動車や冷蔵庫など生活のあらゆる場面に組み込まれ、便利さや生活環境の改善で期待されている。
 記事では、スパイ活動による軍事的な脅威だけでなく、「人々の生活」を守る上でも信頼できる通信網が必要であるとの認識を、英国政府などが示していることを強調した形だ。
 また、英紙ガーディアン(電子版)の6日の論説記事は、「西側の諜報機関が繰り返しインフラに華為技術(ファーウェイ)が関与することへの懸念を取り上げている」として今回の対立構造が「中国」対「米国+同盟国」であることを読み解いた。
 米国に続き、5Gの通信網整備から中国製品を排除したニュージーランドとオーストラリアに加え、諜報機関幹部がスパイ活動の危険性に言及したカナダと英国の5カ国が、機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」のメンバー国であることにも言及している。
 英BBC放送(電子版)は7日、中国の主要企業が「中国共産党政権の影響力」に縛られないかが問われていることを指摘している。(坂本一之)




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