2016年10月15日土曜日

【あくなき米露の情報戦争】先進大国同士の「弾をうたない戦争」

ロシアからのハッキング
【米紙記者にサイバー攻撃】米当局者・ロシアが関与か?
CNN.co.jp2016824()926分配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160824-35087906-cnn-int


(CNN)複数の米当局者によると、ロシアのハッカー集団が米紙ニューヨーク・タイムズの記者などから情報を盗み出す目的でサイバー攻撃を仕掛けていたことが分かったとして、米連邦捜査局(FBI)などが捜査に乗り出した。
これまでの捜査でFBIなどは、ロシアの情報機関がこの攻撃に関与しているとの見方を強めている。ハッカー集団は米国の報道機関のほか、米民主党関連の団体も標的にしてきたという。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙の広報は、「モスクワ支局のシステムも含め、社内システムが不正アクセスされた形跡はない」と説明した。同社の従業員向け電子メールサービスはグーグルに委託しているという。グーグルもFBIもこの問題についてはコメントを避けている。
米情報当局は、ロシアの情報機関が米国の政治とつながる組織から情報を収集する狙いで報道機関やシンクタンクなどを狙って不正侵入を繰り返していると見る。政府関係者と接触のある記者は貴重な情報源とみなされるほか、当局者とのやり取りや記事にならなかった情報も狙われているという。
 米当局者によれば、ニューヨーク・タイムズ紙は民間のセキュリティー専門家に調査を依頼し、米情報機関と連携して被害の程度や不正侵入された経緯を調べている。
史上最大のサイバー攻撃 大戦に発展か?

【ロシアのハッキング指示「他国攻撃の能力ある」米が報復を警告

【ワシントン=加納宏幸】ロシア政府が米大統領選などの選挙に干渉するためハッキングを指示していたと米情報機関が主張している問題で、アーネスト米大統領報道官は20161011日、「オバマ大統領は相応の対抗措置を検討している」と記者団に語り、ロシア側に対する報復を警告した。
 アーネスト氏は「米政府には自国のシステムを防護するだけでなく、他国に対して攻撃を実行するための際立った能力がある」とし、ロシア側へのサイバー攻撃を実施する可能性を示唆した。米メディアによると、米政府はロシアや中国からのサイバー攻撃に対する制裁も検討している。
 米国では民主党やホワイトハウスを狙ったハッキングが多発しており、米情報機関と国土安全保障省は7日の共同声明で、露政府の最高位高官が選挙に干渉するため指示を出したと断言。同党大統領候補、クリントン前国務長官の陣営幹部のメールも流出した。アーネスト氏が対抗措置に言及したことで、米露関係のさらなる悪化は必至だ。

【ハッキングにロシア情報機関が関与米紙報道「FBI捜査」とクリントン陣営 プーチン氏は関与否定

【ワシントン=加納宏幸】米大統領選の民主党候補、クリントン前国務長官の選挙陣営のメールがハッキングされ、内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した問題で、米連邦捜査局(FBI)がロシア情報機関の関与を疑い、捜査していることが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)が20161012日報じ、クリントン陣営もFBIの捜査に協力するとの声明を発表した。
 ウィキリークスは今月7日から同陣営のポデスタ選対本部長らのメールを相次いで公開。同サイトは約5万通以上を保有していると主張している。
 ポデスタ氏は12日の声明で「私の個人メールが非合法的にハッキングされ、他の選挙関連の案件と同じく露政府の仕業であることは明らかだ」と発表。共和党候補、トランプ氏の協力者が事前に公表を知っていた可能性があるとし、同氏とウィキリークス、ロシア政府の関係を疑った。
 米政府は、ハッキングが露政府の最高位高官の指示によるとの見解を示しており、アーネスト米大統領報道官は12日の記者会見で「米国の民主主義の不安定化を狙ったものであり、オバマ大統領は深刻に受け止めている」と述べた。
 これに対し、ロシアのプーチン大統領は12日、「米国はヒステリーになり始めている。彼らは(ハッキングが)ロシアの利益になるというが、全くならない」と関与を否定した。
 公開されたメールでは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に反対するクリントン氏が「再交渉」を視野に入れていることをうかがわせるやり取りが判明。ウォール街の金融機関向けの講演や、私用メール問題で同氏側が当局に照会していたことを示すメールも公表されており、新事実が明らかになれば選挙戦への影響は避けられない。

〈維新嵐〉米露による果てしないサイバー戦の様相が看取されますね。先進国同士、経済的依存関係の強い国同士、軍事同盟を締結している国同士では通常兵器による紛争、実弾を伴った戦争はおこりにくいです。ステルス的な攻撃の応酬になります。

第五の戦場サイバー戦争最前線 ハッカーも雇ず守るだけの日本


【アメリカCIAロシアへ「前例のないサイバー攻撃」準備か?
大統領選介入に報復

 安全保障会議に出席したロシアのウラジーミル・プーチン大統領。アルメニアのセルジ・サルキシャン大統領。

 ロシア政府が米大統領選に介入するためサイバー攻撃を指示したと米政府が非難している問題で、米NBCテレビは20161014日、中央情報局(CIA)がロシアへの「前例のないサイバー攻撃」を行う準備を行っていると報じた。複数の情報当局者の話としている。
報道によると、CIAはロシア指導部を困らせるためにサイバー空間で実行できる手段について、ホワイトハウスに報告するよう求められている。CIAは標的の選択を始めており、報復実行に必要なさまざまな準備を行っているという。
 ただ、オバマ政権高官の間では、実際に攻撃を実行すべきかどうか意見が分かれているという。
 米側がロシアに報復措置を行えば、ロシアが反撃するのは必至で、シリア情勢を巡り対立する米露関係が一層悪化するのは避けられない。(共同)

《維新嵐》米露の政治的対立は、シリア問題への介入のあり方にも原因を求めることができそうです。もはやハッキングや標的型攻撃に代表されるサイバー攻撃に関しては、先進国間での軍事的攻撃と同じ意味をもつようになってきました。シリアでの米露対立は以下の記事に詳しいです。
 シリアを地中海への外港として位置付けるロシアの介入、欧州へのロシアの影響力拡大を防ごうとするアメリカとの対立がベースにあるものと思われます。お互いの国の「国防圏」の境にあればこんな感じですね。はっきりいって日露の経済協力と北方領土の問題にはどうでもいいことです。

サイバー攻撃によって「核の大惨事」が起こる恐れも 米露の元軍指揮官ら警告

米露対立深刻化 泥沼の中東情勢
高橋和夫

すでに軍艦も出港。米の誤爆に激怒のプーチン、米ロ戦争を決意か?
20161013 150http://news.livedoor.com/article/detail/12140862/

停戦中に起こったアメリカによるシリアへの空爆。米側は誤爆だと弁明しましたが、ロシアは意図的に行ったものだとの見方を示し、これを境に米ロ関係は急激に悪化、という最悪の事態に直面しています。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者でモスクワ在住の北野幸伯さんによると、当地の国営メディアは「ロシアはアメリカと戦争をする準備を始めた」と報じたとのことなのですが…、この先一体どのような展開が待ち受けているのでしょうか。

ロシアは、アメリカと戦争する準備を開始した


ロシアには「言論の自由がない」といわれます。そのとおり。しかし、ロシアのメディアも、使い方によってはいろいろ役に立つことがある。というのは、国営テレビのニュースで報じられる内容は、クレムリンの方針と完全に一致している。つまり、クレムリンの意志を知りたければ、ロシア国営メディアのニュースを見ればいいということになります。
先日(201610月9日)、ロシア国営テレビRTRの「ヴェスティ ニデーリ」で、仰天情報が流れていました。「ロシアは、アメリカと戦争する準備を開始した」というのです。

混迷するシリア情勢


2011年から内戦がつづいているシリア。ロシア、イランは、アサド現政権を支持しています。一方、アメリカ、欧州、サウジアラビア、トルコなどは、「反アサド派」を支援しています。
2013年8月、オバマは、「シリアに軍事介入する!」と宣言しました。もちろん「アサド政権を打倒するため」です。しかし、当初賛成していたイギリスもフランスも反対にまわり、結局翌9月、戦争をドタキャンして、世界を驚かせました。アメリカは、「シェール革命」で世界一の産油・産ガス国になっている。それで、中東への関心が薄れているのです。
「反アサド派」は分裂し、そこから出てきた「イスラム国」(IS)が勃興した。彼らは、外国人を捕まえて公開処刑し、それをネットに流すなどして、世界を恐怖に陥れました。
2014年8月、アメリカはISへの空爆を開始します。しかし、「ISはアサド政権とも戦っている」ということで、アメリカの空爆は気合が入りません。ISは、ますます勢力を拡大していきます。
2015年9月、今度はロシアがIS空爆に参加。ロシアの目的は、アメリカとは逆に「アサド政権をISから守ること」。それで、ISの石油インフラを容赦なく破壊しつくした。ISは弱体化し、メンバーの多くが、難民にまぎれて欧州にわたった。そして、欧州では毎週のようにISのテロが起こるようになっていきます。
さて、アメリカの優先順位は、中東からアジアにシフトしています。特に2015年3月の「AIIB事件」(=イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国など親米諸国がアメリカの制止を無視して中国主導AIIB参加を決めたこと)の後、アメリカは「中国バッシング」に全力を注ぐようになっていた。それで、ウクライナ問題はおさまった。
シリアでは2016年2月、アメリカとロシアの努力で、停戦が実現しました。しかし、後に崩壊。それでも、アメリカのケリー国務長官とロシアのラブロフ外相は、「付き合い始めたばかりの彼氏彼女」のごとく、頻繁に会い、しょっちゅう電話し、シリア和平の話し合いを続けてきました。

2度目のシリア停戦崩壊と、米ロ対立


2016年9月9日、アメリカとロシアは、2度目の「シリア停戦」で合意します。9月12日、停戦合意が発効しました。ところが9月17日、事件が起こります。
① <シリア誤爆>米露の確執、拡大必至 国連で非難応酬
毎日新聞2016年9月18日(日)2246分配信
【ニューヨーク会川晴之、モスクワ真野森作】
内戦が続くシリアの東部デリゾールで17日、米国主導の有志国連合による誤爆とみられる攻撃でシリア軍が60人以上死亡する事件が起きた。今後、シリアのアサド政権を支援するロシアと、その排除を目指す米国の確執が強まるのは確実だ。12日に停戦が始まったばかりのシリアの和平を目指す取り組みは、再び岐路に立たされた。
アメリカの空爆で、ロシアが支援するアサド軍の兵士が60人以上死んだ。アメリカは、「誤爆だ」と説明しましたが、ロシア側はこれを信じていない。カーター国防長官が、「停戦をぶち壊すために、わざとやらせた」というのが、ロシアの見方です。
「ヴェスティ ニデーリ」によると、アメリカ国防総省は、シリア内戦の継続とアサド政権打倒を目指している。アメリカ国務省のケリーさんは、「反アサド派が体制を立て直す時間を稼ぐためにウソをついている」。つまり、カーター国防長官が、ケリー国務長官をあやつっていると。
私の見方は違います。
オバマとケリーさんは、中国問題に集中するために、シリア内戦を終わらせたい。それで、ロシアと共に和平を推進する。ところが、国防総省は、和平に反対している。国防総省はオバマの意志に反しているが、レームダック・オバマは動けない。
2016年9月19日、アサドは「停戦終了」を宣言します。
② アサド政権軍、「停戦終了」を宣言 アレッポで空爆再開
朝日新聞デジタル2016年9月20日(火)1256分配信
シリアのアサド政権軍は19日、米国とロシアの仲介による合意で今月12日に発効した停戦が終了したと宣言する声明を発表した。反体制派も停戦が守られていないとアサド政権を批判した。北部アレッポで政権軍かロシア軍によるとみられる空爆が行われた模様で、死傷者が出たとみられる。停戦が完全に崩壊すれば2度目となり、内戦終結へ向けた和平協議の再開は一層困難になると予想される。
1週間の短い停戦でした。ここからアメリカとロシアの「和解ムード」は、急速に変化していきます。国連安保理は、米ロの「非難合戦」の場と化した。
③ ロシア、国連でのシリア緊急会合めぐり英米に反発
AFP=時事2016年9月26日(月)2028分配信
AFP=時事】戦闘が再燃しているシリア情勢をめぐる国連安全保障理事会(UN Security Council)の緊急会合で、シリアで「蛮行」と戦争犯罪を行っているとしてロシアを非難した米国と英国に対し、ロシア側は26日、強く反発した。
10月3日、アメリカは「ロシアとの停戦協議をやめる」と発表します。
④ 米、シリア停戦協議中止 「ロシアが約束守らず」
朝日新聞デジタル201610月4日(火)1345分配信
事実上停戦が崩壊しているシリア内戦を巡り、米国務省は3日、ロシアとの停戦に向けた協議を中止すると発表した。米ロが仲介した停戦は今年2月に続いて再度、名実ともに失敗に終わった。

アメリカとの対立を激化させるロシア


ここから、ロシアは、あらゆる面で強硬になっていきます。
まずプーチンは10月3日、「余剰プルトニウムの処分に関する米国との合意」を停止する大統領令を出した。
⑤<ロシア>米との合意停止 余剰プルトニウム処分で
毎日新聞201610月4日(火)1243分配信
【モスクワ杉尾直哉、ワシントン会川晴之】ロシアのプーチン大統領は3日、米露の核軍縮合意により生じた余剰プルトニウムの処分に関する米国との合意を停止する大統領令を出した。「米国の非友好的な行動の結果、状況が根本から変化した」としている。
「米国の非友好的な行動の結果、状況が根本から変化した」
この「非友好的な行動」とはなんでしょうか?
プーチン氏は3日、米露合意を破棄する法案を露下院に提出した。提出理由として、米側が余剰プルトニウムを発電で消費せず、合意に違反して「貯蔵」しようとしていると指摘。さらに、米国による東欧・バルト3国の軍備強化ウクライナ問題を巡る対露制裁ロシア国内の人権侵害に対して米国が制裁を科す「マグニツキー法」(12年成立)――などを列挙した。
(同上)
恐ろしいのは、プーチンが、「状況が『根本から』変化した」と言っていること。ロシア国営テレビRTRの「ヴェスティ・ニデーリ」は、「アメリカでは、プランBが検討されている」と報じています。
「プランB」とは何でしょうか? 米軍が、直接アサド軍を攻撃し、アサド政権を打倒すると。イラクと同じパターンですね。そうなると、アサドを支援している、「ロシア軍とも戦争になる」のではないでしょうか????
司会者のキシリョフさんは、
アメリカ軍がアサド軍を攻めるロシア軍は、アサド軍側についてアメリカ軍と戦う
こういう可能性があると断言します。10月4日、クリミアのセヴァストーポリから、3隻の軍艦が出港しました。キシリョフさんは、「プランBに備えて」と断言。つまり、「アメリカ軍と戦うため」ということ。続いてロシアは、シリアに地対空ミサイル「S300」を配備します。
⑥ロシア、シリアに最新鋭の地対空ミサイル配備
読売新聞201610月5日(水)2256分配信
【モスクワ=花田吉雄】インターファクス通信によると、ロシア国防省は4日、シリア国内のロシア海軍の補給拠点がある北西部タルトゥスの海軍基地に最新鋭の地対空ミサイル「S300」を配備したと発表した。露国防省報道官は声明で「海軍基地の防衛のためで、脅威となるものではない」としている。一方、米国防総省のクック報道官は4日の記者会見で、ロシアが掃討対象としているイスラム過激派組織が航空戦力を保持していないとして、「何が目的なのか疑問を持たざるを得ない」と疑念を示した。
アメリカからは、「反アサド派は、航空戦力をもっていない」「なぜS300を配備するのか?」と当然の疑問が出ています。
これ、キシリョフさんによると、「アメリカが、アサド軍を攻撃しようとしているから」、つまり、「アメリカがアサド軍を空爆したら、撃ち落とすぞ!」と警告している。要するに、「ロシアは、アサドを守るためにアメリカ軍と戦う用意があるぞ!」と脅している。
10月9日、国連安保理は、アレッポ上空の軍用機飛行禁止と空爆停止を求める決議案を採決し、ロシアは拒否権を行使しました。
⑦安保理、シリア空爆停止否決 露が拒否権行使
産経新聞20161010日(月)7時55分配信
【ニューヨーク=上塚真由】国連安全保障理事会は8日、シリア北部アレッポ上空の軍用機飛行禁止と空爆停止を求める決議案を採決し、常任理事国のロシアが拒否権を行使して否決された。シリア情勢をめぐっては、アサド政権軍の後ろ盾となるロシアと、反体制派を支援する米国の対立が激化しており、安保理の機能不全も深刻化している。
空爆しているのは、ロシアが支持するアサド軍ですから。
そして、10日、ロシアはシリアの海軍基地を「恒久化する」と発表します。
⑧ シリア海軍基地を恒久化=ミサイルなど搬入─ロシア
時事通信1010日(月)2245分配信
【モスクワ時事】タス通信によると、ロシア国防省高官は10日、地中海沿岸のシリア西部タルトゥスに恒久的なロシア海軍基地を設置する方針を明らかにした。

米ロ関係悪化の影響


このように米ロ関係は急速に悪化してきました。どんな影響があるのでしょうか?
まずアメリカですが、ロシアとの和解を主張しているトランプさんには、不利に働きそうです。2回目のトランプーヒラリー討論でも、ヒラリーはロシアを非難しましたが、トランプは、「プーチンとIS掃討で協力するべきだ」という従来の主張を繰り返しました。
日本ですが、アメリカが「プーチン訪日をやめろ!」と圧力をかけてくる可能性があります。あるいは、あまりにもレームダック化が進み、黙認になるかもしれませんが。
そして、米ロ対立でもっとも得をするのが中国です。またもや「戦う二虎(米ロ)を、山頂から眺める」、ナイスなポジションにつける中国。愚かなのは、「真の強敵の存在」に気づかない米ロですね。
image by: Oleg Pchelov / Shutterstock.com『ロシア政治経済ジャーナル』著者/北野幸伯







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