2016年10月29日土曜日

【情報戦争の裏側】首相直属の情報機関を創設せよ! ~総合的な国家による情報戦略が安全保障の要となる~

「首相直属」で情報収集
テロ対策で対外情報機関の創設も
2015.02.05http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150205/plt1502051830002-n1.htm
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人やヨルダン空軍パイロットの殺害事件を受け、国連安全保障理事会は非難声明を発表、米軍を中心とする有志連合は「イスラム国壊滅」に向けて大攻勢を仕掛ける構えだ。一方、日本では、激動する世界情勢の中で、国民の生命と財産を守るため、首相直属の対外情報機関の創設を求める声が強まっている。米国のCIA(中央情報局)や、英国のMI6(秘密情報局)のような組織を創設することで、残忍・狡猾な国際テロ集団などと対峙しようという構想だ。
 「政府の情報機能を強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要だ。ご指摘のような対外情報機関の設置については、さまざまな議論のあるものと承知している」
 安倍晋三首相は20152月4日の衆院予算委員会でこう答弁した。警察官僚OBで「外事警察のプロ」である自民党の平沢勝栄衆院議員の「対外情報機関を創設すべきではないか」という質問に答えた。
 先進主要国で、国際テロや大量破壊兵器、諸外国の政情などの海外情報を収集・分析する情報機関がないのは日本だけだ。同じ敗戦国であるドイツですら、BDN(ドイツ連邦情報局)を持っている。現在でも、外務省や防衛省、警察庁、公安調査庁などが、情報収集や分析にあたっているが、人員や予算面の限界や、省庁の縦割りの弊害などが指摘されてきた。
 こうしたなか、日本人10人が犠牲となるアルジェリア人質事件(2013年1月)が発生した。国際テロの情報収集力不足など、日本の危機管理上のさまざまな問題点が浮かび上がった。

この事件を受け、対外情報機関創設の機運が高まり、超党派の衆院議員団は昨年1月、英国を訪問し、国外情報を収集するMI6や、テロリストやスパイを監視するMI5(情報局保安部)などを視察した。MI6は、映画「007シリーズ」で、ジェームズ・ボンドが活躍した組織である。
 視察後、参加議員の多くは、「紛争回避やテロ防止、防衛力強化のためには、対外情報機関は不可欠だ」「他国の情報に頼るのは独立国のすることではなく危険だ」と感想を語った。
 自民、公明両党は2014年4月、対外情報機関の創設に向けて協議を進めることを確認した。そして、日本人にテロの脅威を改めて実感させた今回の事件を契機に「早急に詰めないといけない」(石破茂地方創生担当相)との声が高まっている。
 
日本の「情報のプロ」たちは対外情報機関の創設には賛成だが、外務省主導ではなく、首相直属の組織を提案する。
 
初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏は「『外交一元化』の名のもと、重要情報は外務省に集中してきたが、その情報を外務省が官邸に入れないケースが多々あった」と指摘し、こう続ける。
 
「安倍首相は今回、この苦しみを数カ月間にわたって味わい続けたのではないか。過去にも、重要な情報を外務省が握りつぶしていたことが後に発覚し、当時の小泉純一郎首相が激怒したことがある。戦前は首相直属の情報機関があったが、GHQ(連合国軍総司令部)の意向で廃止された。海外での日本人誘拐や身代金要求の多発が予想される今こそ、これを復活させなければならない」

元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏も「外務省の領事部や中東アフリカ局に、邦人保護で活躍できる人材がおらず、今回の事件では事実上何もできなかった。首相直属の対外情報機関を作らない限り、国際テロに対峙することなどできない」と語る。
 
対外情報機関を創設するメリットは、テロ対策だけにとどまらない。
 
前出の佐々氏は「慰安婦問題などで、中国や韓国が虚偽の情報を国際社会に流布するのを防ぐため、新機関に“日本の悪口探し班”を設けることも必要だ。各国の閣僚らの発言を常時チェックし、首相や官房長官の名で国連総会などで反論する態勢を作る。そうすれば『うかつに悪口を言えばすぐ反論してくる国』という認識が国際社会に定着する。ともかく、世論も熟してきている。安倍首相は、安全保障法制整備の次は、対外情報機関の創設に本気で取り組むはずだ」と語る。
 
「国民を守る」という、国家として当然の責務を果たすための態勢を整えなければならない。

【「内閣情報局」設置構想が再浮上】
極めて低い日本のインテリジェンスの総合力
2015.02.17http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150217/plt1502171140001-n1.htm
「内閣情報局」設置構想が再び浮上している。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(ISIL)による日本人殺害脅迫事件を受けた、安倍晋三首相の国会答弁が引き金となった。安倍首相は2015年2月4日の参院予算委員会で次のように語った。
 「政府の情報機能を強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要だ」-。
 政府の情報収集・分析力強化を図るため米中央情報局(CIA)のような対外情報機関の設置に関して「さまざまな議論があると承知している」と、答弁したことが大きい。
 これに呼応するかのように、初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏も直近の『文藝春秋』(3月号)で内閣情報局創設を提言した。
 では、わが国にはどのような情報組織(機関)があるのか。

 まず、内閣官房に内閣情報調査室(内閣情報官・北村滋=1980年警察庁入庁)がある。

 外務省-国際情報統括官組織(国際情報統括官・岡浩=82年外務省)。

 防衛省-統合幕僚会議情報本部(情報本部長・宮川正=82年旧防衛庁)。

 法務省-公安調査庁(長官・寺脇一峰=78年法務省)

 警察庁-警備局外事情報部(外事情報部長・瀧澤裕昭=82年警察庁)。

 これ以外にも内閣官房に関連組織(機関)がある。昨年1月に発足した国家安全保障局(局長・谷内正太郎=69年外務省)と、内閣危機管理室(内閣危機管理監・西村泰彦=79年警察庁)である。



国家の危機管理に当たって不可欠なのは、単なる情報収集の機能ではなく、インテリジェンスの総合力である。
 それは「シギント」と呼ばれる通信傍受や衛星監視で収集・分析した情報と、「ヒューミント」と呼ばれる人間的要素の情報を総合した「情報力」を意味する。
 ところが、わが国の場合、総合的な情報力といえるようなものは端的に言って皆無に近い。
 情報を扱う政府機関はいくつもあるが、いずれも情報を収集・分析・評価する能力、つまりインテリジェンス機能は極めて低く、情報を総合化する仕組みが不十分なのだ。
 自前のインテリジェンスと情報管理体制を持たないに等しい。こうしたことから内閣情報局構想が浮上したのだ。
 縦割り組織の弊害は古くて新しい問題である。それにしても、現有の内閣情報調査室約170人、内閣危機管理室約70人、国家安全保障局約70人ではわびしすぎる。やはり「ヒトとカネ」なのだ。 (ジャーナリスト・歳川隆雄)

「国家中央情報局」の必要性

早急に国家情報局を内閣に設置すべき


【官邸の情報戦略を強化して早急に取り組んでほしいこと】

【自衛隊特殊部隊臨戦、対テロ極秘任務】北朝鮮拉致被害者「奪還」も
2015.02.06http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150206/plt1502061830002-n1.htm

イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害事件を受け、安倍晋三首相が、自衛隊による邦人救出に向けた法整備に意欲を示している。日本人が海外でテロ組織などに拘束された場合、その救出を他国に頼るしかない“情けない現状”が浮き彫りになったからだ。実現へのハードルは高いが、仮に自衛隊の救出命令が出されれば、特殊部隊が出動する。その作戦遂行能力はどのくらいあるのか。専門家が分析した。 
 
「海外で邦人が危険な状況に陥ったときに、救出も可能にするという議論を、これから行っていきたい」
 
安倍首相は2015年2日の参院予算委員会でこう強調した。人質事件が、日本人2人の殺害映像が公開されるという凄惨(せいさん)な結末を迎え、海外での自衛隊による邦人救出は通常国会の主要な論点に浮上している。

 国家にとって「自国民の保護」は重要な使命である。米国では、陸軍特殊部隊(通称グリーンベレー)や、陸軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊(同デルタフォース)、海軍特殊部隊(同シールズ)。英国では、陸軍特殊空挺部隊(同SAS)などが、海外での救出任務に当たっている。
 自衛隊が邦人救出に乗り出す場合、専門家の間で投入の可能性が高いと予測されているのが、陸上自衛隊習志野駐屯地(千葉県)に置かれている特殊部隊「特殊作戦群(特戦群)」だ。
 ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処が主任務だが、訓練の内容などは明らかにされておらず、隊員は家族にさえ特戦群に所属していることを告げてはならないという。


軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「海外での人質救出に出向くのは、特戦群以外にない。十分な作戦遂行能力を持っている。あとは政治判断だ」と指摘し、続けた。
 「対ゲリラ戦闘は、正規の戦闘とは大きく異なる。相手は組織の体をなした『軍隊』ではないので、どんな配置で戦いを挑んでくるかも予想しにくい。こうした状況に対応するには、高度なメンタル面の鍛錬も必要になるが、特戦群ではそうした訓練も行われている」
 特戦群では、北朝鮮による日本人拉致被害者の奪還を念頭に、離島に上陸して一般人にまぎれて目的地へと潜入する訓練なども行われているとされる。「砂漠、ジャングルなど、日本国内にない環境での訓練の充実と、語学に習熟した隊員の確保が必要」(井上氏)という課題はあるが、救出ミッションに挑む最有力候補といえそうだ。
 同じ習志野駐屯地の精鋭部隊「第1空挺団」も実力は高い。

 元韓国国防省北韓分析官で拓殖大客員研究員の高永●(=吉を2つヨコに並べる)(コウ・ヨンチョル)氏は「秘密裏の人質救出作戦にも対応できるよう、非常に厳しい訓練を積んでいる。相当の能力がある」とみる。
 このほか、米海軍シールズを参考に、海上自衛隊江田島基地(広島県)に創設された特殊部隊「特別警備隊(特警隊)」も高度な訓練を積んでおり、「救出作戦に適任」との指摘もある。
 ただ、元陸上自衛官で安全保障研究家の濱口和久氏は「特戦群も第1空挺団も特警隊も、極めて高い能力を持っているが、作戦遂行のためには、まずは『情報』が必要だ」といい、続けた。


 「今回の人質事件でも、日本政府はイスラム国について十分に情報を得ることができていなかった。情報もなく、単に『人質を救出せよ』というミッションを与えられても、部隊の能力は発揮できない。現地での人脈に通じた人材の育成などが必要ではないか」
 米国のCIA(中央情報局)や、英国のMI6(秘密情報局)のような、対外情報機関の創設が急務というわけだ。

 課題は他にもある。

 2014年7月の安保法制に関する閣議決定では、邦人救出の条件として「受け入れ国の同意」と「国に準ずる組織がいない」ことを掲げている。安倍首相は参院予算委での答弁で、「(今回の人質事件では)シリアが同意することはあり得ない」「法的要件を整えてもオペレーションができるのかという大問題もある」と指摘している。
 特殊部隊の経験者はどう思うのか。
 前出の海自・特警隊の創設準備に携わり、即応部隊を率いる小隊長を務めた伊藤祐靖(すけやす)氏に聞いた。伊藤氏は、沖縄・与那国島を舞台に、人質を取った武装集団に元特殊部隊隊員が立ち向かう姿を描いた、麻生幾氏の小説『奪還』(講談社文庫)のモデルにもなった人物である。
 伊藤氏は「作戦遂行能力があろうがなかろうが、やるならやる。(最高指揮官である首相が決断し、救出命令が出たら)何をしてでもやる」と語った。

《維新嵐》 精神論では海外の邦人救出はできません。国家的な情報戦略が駆使できる情報機関とのタイアップがあって、ピンポイントでの特殊作戦がうまくいくのです。要は、CIAのようなヒューミントによる情報機関のエージェント確保と無人機の活用でしょう。


【ヒューミントによる情報戦略を学ぶための参考文献】

決して目立ってはいけない、生々しく描かれるスパイの姿
『最高機密エージェント』

中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)

ノンフィクションの力というものを強く感じさせられた本である。スパイというと映画「007」に代表される派手なアクションものを想像してしまうが、本書に出てくるスパイ像はそうしたものとは全く無縁の、言わば対極にある存在である。いかに隠密裏に機密情報を交換するかが勝負であり、決して目立ってはいけない存在なのである。
電話の盗聴、手紙の開封、タイプライターに仕掛けまで…
 自分の認識不足を恥じ入るばかりだが、本書を読むと、冷戦時代のアメリカと旧ソ連がいかに激しく対立していたのかということが、あらためてよく理解できる。冷静な筆致だが、内容は実にスリリングである。そうした意味で映画のような光景が目に浮かぶが、これは映画ではなく、実際に起きたことである。ワシントンポストの編集幹部で、ピューリッツアー賞も受賞した敏腕記者が、機密解除された公電など一級の情報を組み合わせて構成した。それだけに描かれるスパイの姿は実に生々しい。
 読み進めるにつれ、当時のアメリカにとって「使える」スパイを確保することがいかに重要なミッションであったことかがわかる。核、レーダー技術、航空装備、兵器開発計画など、アメリカがソ連から入手したい機密情報は山ほどあり、それをどう手に入れるかに躍起になっていた。ソ連からみればそうした情報をどう守るか。激しい攻防が、モスクワのKGB(国家保安委員会)周辺のごく狭いエリアで展開される。
 利用価値の高いスパイをなかなか得られない時期のアメリカの焦り。なんとかそれを得た後に、どう「育成」し欲しい情報を確実に手に入れるか。一連の活動を相手に悟られず、いかに秘密裏に進めるか。綱渡りのように緊迫する場面がいくつも出てくる。
 CIAの職員がスパイに接触するにあたり、KGBの監視をどう「まく」か。それがいかに大変なことなのかもよくわかる。当時のモスクワでは、アメリカに関するあらゆることがKGBの監視下に置かれている中で、電話の盗聴や手紙の開封はおろか、タイプライターに特殊な仕掛けをして、内容を盗み取ることにいたるまで「何でもあり」の世界である。KGBの監視を逃れる手法の一端が詳しく紹介され、「監視探知作業」という言葉があることも本書で初めて知った。それらは実に根気のいる、手のかかる作業である。

〈時間と距離の感覚を身につけ、隙間を通り抜ける目を養う〉
〈どこで曲がるか、どこで停止するか。身振り手振り、外見、錯覚など、ごく些細なことにも気を配った〉
KGBは怪しいと見ると獲物を狩り出すために車も人員もどんどん追加投入してくる〉
 こうした環境下での活動である。特殊な訓練を受けないととても対応できないことがわかる。
いきなり接触「役立つ情報がある」
 さらに驚くのは、スパイ自らがアメリカ側に接触を図ってくる場面の描写である。ガソリンスタンドで、あるいは街角で、いきなり「役立つ情報がある」と接触してくる。接触された方は「ワナではないか」と最初は警戒するのが当然だ。しかし、そうした中に驚くほど良質な情報を持った「本物」がいるのも確かである。次第に彼らの「価値」に気づいて、取り込んでゆく経過も詳細に描かれる。スパイの多くに、ソ連という国への義憤や私怨、絶望などの動機があるのも興味深い。
 情報収集機器の開発や進歩が、諜報活動に大きな影響を与えていることも示される。機密資料を撮影するための小型のペンダント型のカメラや、緊急時にスパイが自殺するための毒入りカプセルなど、あらゆる武器が登場する。ただ、そうしたものをスパイに支給することをアメリカ本国のCIAがなかなか決断できない様子も繰り返し描かれ、諜報活動の困難さを象徴している。事がうまく運べばよいが、失敗してスパイが相手側の手に落ちた場合のリスクも非常に高いからである。しかし、リスクを取らないと、望むような最高機密が得られないのもまた事実である。
 当時も今も、時代によって形を変えて、諜報活動は続いているはずだ。おそらく永遠になくならない活動であろう。ただそれを担っているのは感情を持った生身の人間である。本書でもスパイ本人はもちろんスパイと接触するCIAスタッフなど様々な人物が登場し、それぞれの場面で一人の人間としての感情が吐露される。秘密情報戦の中で人がどんな心理状態におかれ、何を考えるのか。そうした面からも興味深い力作である。

テロは「情報」で防ぐ、厳しい情報戦の中で日本は
『情報機関を作る』

中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)
20160707日(Thuhttp://wedge.ismedia.jp/articles/-/7216

「日本の話を聞きたいと言いつつ、あなたにも外国の情報機関のような人が接触してくるかもしれませんよ」
 海外駐在や留学に出る前に、ある人からこう言われた言葉が鮮明に記憶に残っている。「そんなことが本当にあるのなあ」とも思ったが、実際には自分のような者にはそうしたことは全くなかった。だが、本書を読むとメディアの関係者などもそういう対象になりうるということがわかる。
必要だが、創設はそう簡単ではない

 日本における情報機関の必要性は長年指摘されてきたが、なかなかできていないのが実情だ。先日もバングラデシュの首都ダッカで7人の日本人が命を落とす痛ましいテロ事件があったばかりだが、世界各地に日本人がいて、テロ事件などに遭遇する危険が常にある中で、高度な情報収集能力の有無が国民の生命や財産をはじめとする多くの国益を決定的に左右する。テロに限らず、安全保障、内政、財政、金融、企業活動なども含めて情報の大切さは論を待たない。秘密情報を狙う他国の動きが活発になる中、我が国としても情報収集に出遅れることはあってはならないのである。
 著者も指摘しているが、各地で頻発するテロ事件が示すように、暴力の行使という恐怖で一定の政治的要求を満たそうとすることが目的であるテロ行為は、話し合いでの解決などは有り得ない。故に、情報をもって対抗し、未然防止を図るしかない。
 情報機関というととかく「007」のようなスパイ映画を連想しがちだが、本書を読むと、実はもっと地味で、目立たないが、勝負するときにはしっかり勝負する存在であることがわかる。
 <日本以外の主要国はすべて備えている。我が国も早急にこの組織を作るべきなのである>というのが本書全体を貫く考え方だが、同時に、〈情報機関の創設と一口にいっても、そんななまなかな話ではない〉と難しさを指摘する。

 警視総監など警察の要職をつとめた著者だけにその言葉は重い。著者は〈自身で直接、某国情報機関員をリクルートしたことがある〉と書いているが、そうした経験も踏まえて「ヒューミント」と呼ぶ人から集める情報の大切さを説く。つまり高度な機密情報の「取材」である
 リクルートするノウハウは何か、この種の工作にどんな人材が適しているか、などが課題になるが、著者は「自前の情報があってこそ」と説く。
 〈各国(友好国)との間柄は、例えていうと“同業組合”のようなものだ。組合の決まり事がいろいろある。ギブ・アンド・テイク(交換)の原則である〉
 〈手持ち情報がない時は、あとから“お返し”するのがこの世界でも常識となる〉
 こうしたことが自前の情報機関を持つべき理由だとしている。同時に自国の防諜体制をいかに作り上げるかが課題になることも指摘する。
 具体的な情報収集にあたっての手法や、それに関連して旧ソ連や中国などが得意とする「ハニートラップ」の詳細などについても詳しく述べられている。人間の持つ様々な弱みや欲望を突く形で情報を取ろうとする相手が攻めてくることがわかる。上海総領事館で起きた館員自殺事件など過去の具体的な事例なども示されている。また著者がある大物政治家に指南したハニートラップを受けないための方法なども興味深い。
待ち構えているであろう長い道のり
 このほか、数あるスパイ小説の中でもフレデリック・フォーサイスとジョン・ル・カレのスパイ小説が考えさせられるという指摘も興味深い。ル・カレが一時期、情報機関に身を置いていたということは本書で初めて知ったが、小説ながらある種のリアリティーをもっていることはそうした背景を知れば理解も深まる気がする。
 さらに、映画「ジャッカルの日」が、かつて警視庁が要人警備の警察官の士気を高めるべく、封切り前に映画館から借りてきて警備部隊に見せたことや、旧ソ連のKGBもそれを見て参考にしたことなども紹介されている。スパイ小説は現実とはだいぶ違うはずだが、映像にすると、また別の意味で参考になる部分もあるということだろうか。最近はやりの「見える化」の効用なのかもしれない。

旧ソ連やロシアのスパイが、国の体制に絶望する形で情報をアメリカやイギリスなど事実上の「敵国」に流していた過去の事例なども興味深い。英国にひそかに機密情報を流していたロシアのスパイが、自分に嫌疑がかけられたのを知り、亡命を決意し、国境までの間に用意された多数の関門をかいくぐって協力者の車のトランクにひそんでフィンランドに脱出するくだりなどは、映画を見ているような緊張感にあふれた記述である。旧ソ連や現在のロシアは自国の機密情報が抜ける国であると同時に、必死になって防諜しなければならない国であることがわかる。同時に米英という国々は、あらゆる手段を尽くして旧ソ連・ロシアの情報を集め、いまも分析を続けている国なのだということを痛感する。
 本書を読み続けていると、こうした現実をまざまざと突きつけられる。国際情報戦の厳しさを実感するとともに、日本がそれに伍してやってゆくにはハードルが高く、長い道のりが待ちかまえているという印象が強い。しかし現実がこうである以上、対応せざるをえない。日本ができるところを少しずつ、著者のいう「トロでなくコハダ」、つまりトロ(米国情報)のように派手ではないが、味わい深いコハダ(日本情報)で渋く職人芸を見せる部分でやるしかないのだろう。まさに「千里の道も一歩から」である。



2016年10月28日金曜日

【アメリカはアジアでの海洋権益を守ることができるのか?】4回目のFON作戦、深まる対中不信、進まない朝鮮半島の非核化

オバマの腑抜けFONOP、“中国の”島に近づかず

はるか沖合を通航するだけ、米海軍周辺からは怒りの声

北村淳
2016.10.27(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48218
4回目となるFONOPを実施したアメリカ海軍イージス駆逐艦ディケーター(出所:Wikipedia

20161021日、アメリカ海軍イージス駆逐艦ディケーターが南シナ海西沙諸島の永興島(ウッディー島)とトリトン島(中建島)それぞれの沿海域を航行して「航行自由原則維持のための作戦」(FONOPを実施した。
5カ月ぶりに実施された4回目のFONOP
今回のディケーターによるFONOPは、オバマ政権がようやくゴーサインを出して20151027日に行われた第1回「南シナ海でのFONOP」以来、4回目のFONOPとなる(なお、アメリカは南シナ海だけでなく世界中の海でFONOPを実施している。本稿での「FONOP」は南シナ海で実施されたFONOPを意味する)。
 第1回目のFONOPでは、イージス駆逐艦ラッセンが、中国が人工島を築き3000メートル級滑走路を建設していた南沙諸島スービ礁の沿岸から12海里内海域を通航した(現在、スービ礁の滑走路はすでに完成している)。
 それからおよそ3カ月後の2016130日、西沙諸島のトリトン島12海里内海域で、イージス駆逐艦カーティス・ウィルバーによって第2回目のFONOPが実施された。その後、中国は、西沙諸島が多大な軍事的脅威を被ったとして、地対艦ミサイルや地対空ミサイルをトリトン島などに配備した。
 再び3カ月と10日が経った510日、イージス駆逐艦ウィリアムPローレンスが南沙諸島のファイアリークロス礁沿岸12海里内海域を通航して、第3回目のFONOPを行った。スービ礁同様にファイアリークロス礁も中国が暗礁を埋め立てて誕生させた南沙人工島の1つで、やはり3000メートル級滑走路や大型艦船が使用できる港湾設備も建設されている。
 その後5カ月が経過しても一向に第4回目のFONOPが実施されないため、オバマ政権の弱腰の対中姿勢を嘆いていた米海軍関係の戦略家たちは怒り心頭に達していた。彼らは次のように主張する。
「中国の南シナ海の軍事的支配を牽制するためのFONOPならば、そもそも1カ月に1度でも少なすぎる。極論すれば、1日おきに軍艦やら軍用機を派遣するとともに、中国による領有権を暗に認めないことを示すために、何らかの軍事的デモンストレーションを実施するくらいの覚悟が必要だ」
 そのような状況下で、フィリピンのでドゥトルテ大統領が中国を公式訪問したタイミングで、5カ月と1週間ぶりにようやく第4回目のFONOPが決行されたのである。
これまでのFONOPとの違い
これまで実施された3度のFONOPでは、「中国の領海」と中国当局が定義している海域(スービ礁沿岸12海里内、トリトン島沿岸12海里内、ファイアリークロス礁沿岸12海里内)を米海軍駆逐艦が航行した。
 ただし多くの海軍戦略家たちは、アメリカ軍艦がそれらの海域をただ単に通過しただけでは、「もともと国際法上軍艦に付与されている無害通航権を行使しただけに過ぎない形だけのFONOPであり、中国に対して何らインパクトを与えることにはならない」と批判していた。
 ところが、今回のFONOPでは、駆逐艦デュケーターは永興島やトリトン島の12海里“領海線”にすら近づかず、それらの“中国の島嶼”のはるか沖合を通過しただけである。そのため、海軍関係の対中強硬派の人々の(オバマ政権に対する)驚きと怒りと失望はかなり大きいものとなっている。


アメリカがFONOPを実施した島嶼環礁


FONOPの当初の意図は何だったのか
国連海洋法条約によると、領海は「海岸線(基線)から12海里」ということになっている。そして海岸線が複雑に入り組んでいる場合などは、現実の海岸線ではなく入り組んだ海岸線や海岸線から至近距離にある島などの適当な地点を直線で結び、その直線を基線として領海を設定することが認められている(直線基線)。
直線基線の例(出所:海上保安庁)


ただし、領海の範囲があまりにも広大になるよう意図した直線基線は認められない。だが、少なからぬアメリカの国際海洋法の専門家たちは、「中国は南沙諸島や西沙諸島での領海を設定するにあたって、直線基線を大ざっぱに用いて、極めて広大な領海を設定している」と指摘している。

 それを踏まえて、国際法の専門家の中には次のように4回目のFONOPを擁護する者もいる。「アメリカが今回のFONOPで永興島やトリトン島の沿岸から12海里以上離れた海域を航行したのは、中国が直線基線を過度に用いていることに対して警告をするためである。12海里は根本的な問題ではない」
 しかしながら、もしオバマ政権がそのような意図によってディケーターにFONOPを実施させたのならば、それは中国当局による“直線基線の設定の仕方”に対する警告ということになり、中国による南シナ海の島嶼(少なくとも西沙諸島)の領有権の主張が正当であることを前提としていることになる。
 つまり、西沙諸島に対するベトナムや台湾の領有権の主張をアメリカが無視し、中国の領有権の主張を認めた上で、しかしながら「直線基線の引き方に問題がある」と技術的な疑義を呈するためにFONOPを実施したことになるのだ。
 そもそも南シナ海でのFONOPにオバマ政権がゴーサインを与えたきっかけは、中国が南沙諸島に7つもの人工島を建設し、それらを軍事拠点化しようとしている動きを牽制するためであった。そして究極的には、南沙人工島に加えて、すでに軍事拠点が出来上がっている永興島を中心とする西沙諸島や、軍事拠点の建設が始まるものとみなされているスカボロー礁など、南シナ海全域にわたる中国による軍事的支配に対してストップをかける、というのがアメリカ当局の意図であった。

しかしながら、直線基線に対する警告のためにFONOPを実施したとなると、アメリカ側の中国による南シナ海の軍事的支配に待ったをかけるという警告の意図は消え失せてしまうことになる。
 多くのアメリカ海軍関係戦略家たちが驚き、かつ失望しているように、イージス駆逐艦ディケーターが永興島やトリトン島の遙か沖合を通過しただけのFONOPは、中国に対して何らのメッセージを与えることにはならないのだ。
「オバマ政権は“臆病者”」と考える中国
オバマ政権により認可されて実施されてきたFONOPは、実際のところ中国側に対して脅威を与えるどころか、何ら牽制にすらなり得ない程度の“腰の引けた”レベルのものである。そして、今回のFONOPでは12海里海域に入り込むことすらしなかった。
 対中強硬派の戦略家たちは、この状況に対して次のように危惧している。「こんなFONOPが“アメリカの強い軍事的覚悟を見せつけた”状態であるならば、中国共産党指導者たちはアメリカ側を『臆病者集団』と侮り始めかねない」
 敵側を「なかなか油断ならない」と警戒している場合には、戦争や軍事衝突が勃発することは極めてまれである。だが、敵側を「たいしたことはない」「臆病者」「弱虫」と侮蔑している場合にこそ戦争につながっていくということを、古今東西の歴史は雄弁に物語っている。

《維新嵐》 共産中国が人工島を建設した南シナ海の島嶼群は、既に国際仲裁裁判所にて「法的根拠なし」「違法」の判決がだされています。つまり共産中国の南シナ海への海洋覇権主義に正当な大義名分はありません。法的に保障されていないのなら、遠慮しなくともアメリカは航行自由のための作戦をさらに数多く、堂々とすべきであるとは思います。
 さらに下の論文はさらに米中関係の将来を心配させる内容です。実効効果のある対処ができないものなのでしょうか?



相互不信を高める米中

岡崎研究所

中国の国際協調派の代表格である北京大学国際研究学院院長王緝が、China US focus2016919日付けで掲載された論説で、米中関係の本質と難しさを指摘しています。論旨、次の通り。
3つの脆弱性とリスク

 中米関係は徐々に成熟しているが、依然として脆弱であり、戦略的判断ミスのリスクを孕んでいる。脆弱性とリスクは三点にまとめられる。
 1)経済や貿易、文化、グローバルガバナンス面では相互協力は深化。だが、アジア太平洋地域の安全保障面では、戦略的競争が高まっている。
 2)メディアは、戦略的な競争の側面をポジティブなニュースよりも多く取り上げ、ソーシャルメディアが普及したことにより、大衆の関心を高めている。
 3)多くの中国人にとって、米国は最大の戦略的脅威であり、容易に米国も中国を同様に脅威と見なしていると考えてしまう。中国の台頭は米国が世界で直面している大きな挑戦のうちの一つに過ぎない。長期的には、米国が中国を最大の戦略的脅威とみなすことを防止することが中国の対米政策の目標となるべきである。
 中米関係は「新常態」に入った。競争と協力の双方が同時に大きくなり、国内要因が外交に大きな影響を与えるようになった状態である。しかし、だからと言って、中米関係が「量的変化から質的変化へと変わった」、「負のスパイラルに入った」などと結論づけるのは間違っている。
多くの分野において、中米は同じルールを堅持している。だが、新常態においては、原則やルールをめぐる争いが中米対立の焦点となり始めている。政治面において、中国は「国際関係の民主化」を支持している。それは国際システムの中での国レベルでの民主化である。一方米国は「リベラル国際秩序」を支持し、「世界の民主化」を推し進めている。これは個人の自由と権利に関するものであり、両者は異なる考え方である。
 経済面において、米国は国有企業の制限、労働基準の向上、情報の自由化、環境の保護、知的財産権の保護などの国際ルールの強化を目指している。しかし、国有企業の制限など一部のルールは中国にとって受け入れられないものである。米国がやろうとしているのは、中国の国内および対外経済政策を統制し、米国のみが得をするルールを作り守ろうとしていることである。両国の経済モデルの不一致はかつてよりも大きな障害となっている。
 国際安全保障面において、中国の人たちは南シナ海を「先祖伝来の自分の海」だと考えている。南シナ海は中国の主権、領土保全に直結する問題だと考えている。それに対して米国は南シナ海が国際的な海であり、国際法に基づく航行の自由があると主張する。地政学的な闘争が論争の背後に隠れている。サイバーに関しても両国の焦点はずれている。
 新常態においては何がなされるべきなのだろうか。筆者(王)はかつて2012年にリバソールとの共著で“中米戦略的不信”に関する報告書を執筆している。その中で、政府、シンクタンク、市民社会が対話をし、相互疑念を緩和すべきだと論じた。しかし、4年経った今日、互いに対する疑念や不信は緩和されるどころかより増幅され、深刻になっている。戦略的相互不信の増大は中米関係の新常態に埋め込まれているようである。
 2012年の報告において、相互不信を緩和する手段が有効でない場合でも、両国の指導者は、相手の長期的な意図に関する深い不信の下で、それでもなお、協力を最大化し、緊張と対立を最小化しなければならないと結論した。新常態において、両国は自らの国民に対して、対立を回避し、協力を追求するという戦略的な意図を明らかにすることに努めなければならない。それは両国政府が幾度となく互いに確認したことであり、混乱した世論の干渉を抑え、国内の政治的な合意を形成することにつながる。
 キッシンジャーは『中国』という本の中で、中米両国が「共進化(co-evolution)」の関係を築くべきだと提案している。筆者は、「共進化」は「平和的な競争」をも意味していると考える。どちらがより国内問題を上手く処理し、国民を満足させられるかというのが最も意味のある競争である。
出典:Wang Jisi,China-U.S. Relations Have Entered A New Normal”’(China US focus, September 19, 2016
http://www.chinausfocus.com/foreign-policy/china-u-s-relations-have-entered-a-new-normal/
 バランスのとれた意見であると言えるでしょう。しかし、何をなすべきかについては弱いと言わざるを得ません。「自らの国民に対して、対立を回避し、協力を追求するという戦略的な意図を明らかにすることに努めなければならない」と言っているだけです。最後はキッシンジャーのco-evolution に逃げ込んでいます。そして「どちらがより国内問題を上手く処理し、国民を満足させられるかというのが最も意味のある競争である」ということで締めくくっています。これが、中国の国際協調派の限界でしょう。
中国側とのすりあわせ
 米中の戦略的対立が、ますますルール作りに集約されているという判断は正しいです。現状は、それぞれが自分の意見の言いっ放しで終わっています。中国は、どこをどう変えたいと思っているのか整理して、国際社会に自分の考えを問う必要があります。中国自体が未整理の部分も多くあります。例えば国有企業について、国有企業改革はほとんど進んでおらず、むしろ大型合併を進め、寡占化が進んでいます。それは「市場に資源配分の決定的役割を与える」という党の決定との整合性の面で疑問符がつきます。国際社会としては、具体的事項についてすりあわせを行うことで、中国の真意を探ることが不可欠になりました。
 習近平は、ようやく人民解放軍をほぼ掌握できたようです。対日関係を含む対外関係は、少しは落ち着いてくるでしょう。来秋の中国共産党の党大会後には、中国側との「すりあわせ」ももっと意味のあるものとなるでしょう。

《維新嵐》  習近平が共産中国の最高責任者として地位を確立し全軍を掌握できることはある意味のあることであろうが、政治的、軍事的圧力がこれからも続くことはないでしょうか?


北朝鮮の非核化、見込み少ない=米国家情報長官
BBC News

ジェイムズ・クラッパー米国家情報長官は20161025日、北朝鮮の非核化を目指す取り組みは「おそらく成功しない」と述べた。
ニューヨークで講演したクラッパー長官は、米国ができることは北朝鮮の核能力抑制に留まると語った。
米国が長年目標としてきた非核化政策の実現性について、米政府関係者が公に疑念を示すのはまれだ。
しかし、米国務省は政策に変更はないとしている。
専門家らは、国際社会からの非難や厳しい経済制裁にも関わらず、北朝鮮の核・ロケット開発が近年急速に進んでいるようだと指摘している。
北朝鮮は先月、過去最大で5回目となる核実験を実施した。国際社会は強く反発し、韓国は「自滅行為」だと非難した。
クラッパー長官は2014年に平壌を訪問している。
外交問題評議会が主催したセミナーでクラッパー長官は、北朝鮮指導部が「被害妄想」に陥っており、核兵器が「生き残りの道」だと考えていると語った。「したがって、核能力の放棄という考えは、どんな形であっても、彼らにとってあり得ない」。
クラッパー長官は、金正恩朝鮮労働党委員長に対しては、核兵器を制限させる経済的なインセンティブを提案する方が良いと語った。
これに対し国務省は、米国は6カ国協議の再開を依然として目指していると述べた。北朝鮮は2009年に協議から離脱している。
米国は、韓国に地上配備型迎撃ミサイルシステム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」を近く配備しようとしているが、中国と北朝鮮は反発している。
米韓両政府は、THAADの配備は北朝鮮の脅威に対する防衛措置だと主張している。

《維新嵐》 北朝鮮の核兵器による攻撃を受ける前に、外交力、情報力を発揮して彼らにミサイルを打たせない努力、攻撃オプションの確立は不可欠でしょう。六か国協議は、北朝鮮に極秘裏に核ミサイルを研究し、開発させる隙を与えるだけの代物です。何も話が進まないうちに北朝鮮は核実験をおこない強制しました。









2016年10月25日火曜日

【国益のために】軍事と経済は車の両輪。

TPPは米国の本気度のリトマス試験紙

岡崎研究所
20161021http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7975

 2016919日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのラックマンが、南シナ海での米比共同パトロールを中止するとのフィリピン大統領の発言やTPPの米議会承認が不透明になってきたことを受け、米国のアジア重視戦略は沈みかけていると述べています。論旨は次の通りです。

南シナ海を中国の湖にする
 フィリピンのドゥテルテ大統領は、米比共同海洋パトロールの中止を発表し、また、「中国は今や力を持ち当該地域で軍事的優越性を持っている」と述べた。これは米政府を困らせるだろう。オバマは、米国がアジア太平洋で圧倒的な軍事力を保有することを確約してきた。2011年の演説で明言し、その後、海軍のアジア配備を強化するとともに東アジアを定期的に訪問した。
ドゥテルテは、米国の覇権に挑戦した格好だが、同氏の米中軍事バランスの評価は疑わしい。米国は11隻の空母を保有し、中国は1隻しか持っていない。
 ここ1年、中国は南シナ海で人工島を建設し、南シナ海の9割に対する領有権主張を強固にしようとした。米国は中国の行動を直接止めることはできなかったが、軍事化する「島」の水域に艦船を航行させることにより中国の主張を拒否する立場を明らかにした。
 オバマ政権は南シナ海の重要性を強調してきた。ヒラリーは2011年の寄稿文で世界の物流の半分が南シナ海を通ると述べた。米国は中国が南シナ海を「中国の湖」にしようとしているのではないかと恐れている。
 米国は、南シナ海は国際法の問題であり権力闘争ではないと指摘してきたが、それは正しい。この法の支配戦略の中でフィリピンは極めて重要だった。7月にフィリピンは国際仲裁裁判で勝訴した。中国には大きな敗北だった。しかしドゥテルテが公然とオバマを侮辱し米国との共同パトロールを縮小するのであれば、オバマもフィリピンの法的権利を擁護し難くなる。日本は、米国と海洋パトロールをすると発表したが、日本との連携はこの問題が国際法の問題というよりも中国との権力闘争だとの印象を強めることになる。
 さらにTPPの問題がある。安倍総理は米議会でTPPの長期的な戦略的価値は莫大なものがあると述べた。安倍とオバマの思い入れにも拘らずTPPは救われないようだ。トランプもクリントンも反対している。オバマはそれでも任期中に議会を通そうとするだろうが、目下承認の可能性は小さい。
 TPPが失敗すればアジアの同盟国はひどく失望するだろう。最近訪米したシンガポールのリー・シェンロン首相は、TPPは米国の信頼性と本気度のリトマス試験紙だと述べた。
今、米国では長期的な思考は不可能だ。オバマは自分の最重要政策であるアジア重視戦略が太平洋の波間に沈むのを見ながら任期を終えねばならないという悲しい状況になっている。
出典:Gideon RachmanAmericas Pacific pivot is sinking’(Financial TimesSeptember 19, http://www.ft.com/cms/s/0/12473188-7db4-11e6-8e50-8ec15fb462f4.html?siteedition=intl#axzz4L2NV3CK

 上記の論説は、沈鬱な評価ですが、今の現実なのでしょう。しかし、実際、米国のアジア重視戦略が沈みかけているとは思われません。国際関係は常に「何とか切り抜ける」他ないことが多くあります。ここ数年、アジアはその戦略のお陰で何とか均衡と安定を保ってきました。欧州などの国際社会も何とかアジア情勢の重大さを理解してきています。アジア重視戦略がなかったとしたら、中国の行動や振る舞いはもっとひどいものになっていたのではないでしょうか。
 フィリピンについては、心配が現実になってきたとの感があります。ドゥテルテ大統領による米比共同パトロールの中止は強く懸念されます。しかし注意をしながら、対比エンゲージメントの維持、強化を続けていくことが重要です。ドゥテルテの大統領任期は、弾劾などがなければ2022年まで続きます。幸い、ヤサイ外相やロレンザーナ国防相などは今のところ強固であるようなのが救いです。フィリピンも単独で対中外交が可能とは思っていないでしょう。対比経済協力も強化していく必要があります。
今年を逃せば、来年の批准は一層難しくなる
 TPPの批准を来年1月までの米議会の会期中に行うことは段々不可能になってきていると多くの人々が考えているようです。しかしオバマ大統領は、それを推進する立場を変えず、920日の国連総会演説でもTPPに言及しています。今年を逃せば、来年の批准は一層難しくなるでしょう。大統領選挙の興奮が終わり、米国が直面する課題について正気を取り戻し、来年1月までの間に議会が承認することが強く望まれます。
 貿易協定は常に米国の国内政治上大きな問題となってきました。それでも最後は何とかディールが行われ、議会の承認を得ることに成功してきました。NAFTA然り、米韓などのFTA然りです。厄介ではありますが、その時々の政権にとって何らの貿易課題を避けることは政治的にできません。次期大統領がクリントンになれば、国内実施法、関係国とのサイド合意等を通じてTPPを動かすことを容認するのではないでしょうか。

 他のTPP11カ国は米国議会承認を支援することが重要です。そのためには、先ずそれぞれの国内手続きを早期に進めることが大事です。それは米国による再交渉の誘惑を阻止することにもなります。日本による早期承認は大きな貢献になるでしょう。そして、11カ国が集団で米議会などに働きかけていくことも重要ではないでしょうか。関係国が単独で動くよりも11カ国が共同で行動する方が効果的です。11カ国が議会などに共同書簡を出すことも考えられます。


《維新嵐》私論TPP
 TPPという環太平洋圏における自由貿易協定については、誤解のないようにしておきたいのですが、アメリカという国の発案でゴリ押しで始まったわけではありません。アメリカもまたTPPに乗っかった国であるという前提を忘れてはいけません。
 およそ歴史をふりかってみても自由貿易で儲からなかった例はないように思います。たいていその時代の為政者の権益になりますが、TPPは一定の国際ルールの下で行い、我が国もそのルールメイクの上で重要な役回りを果たしており、十分存在感もありますから、これで不利益を被るとは考えられません。我が国はTPPのルールをコントロールできる立場にあるわけです。
 またよくいわれるところではありますが、TPP加盟国ではその経済的なつながりを守るために軍事的な協力関係も深まってきます。まさにこれが本音でしょう。経済と軍事のつながりを強化することにより自由主義の貿易圏の秩序を担保するのがTPPといえます。
 確かに日米でも国内法の成立に手間取ってはいますが、地域の中小企業の利益にも大きく影響してくることなので、やめるわけにはいかないでしょう。まさに論文にあるように関係国で関連法を成立させ、アメリカ議会に働きかけることです。
 ネットワークビジネスでたき火の法則というノウハウがありますが、TPPの一大市場となりうるアメリカの政治中枢である議会に認めさせるために関係国で早期に関係法を成立させ、たき火ならぬ周囲からアメリカ議会に行動を促すことでしょう。


「平成28年度日米共同統合演習 Keen Sword17/28FTX

日米共同統合演習・航空機260機が参加

配信日:2016/10/24 20:52
http://flyteam.jp/airline/japan-air-self-defense-force/news/article/70559
防衛省統合幕僚監部は20161021()、自衛隊と米軍による実動演習「平成28年度日米共同統合演習 Keen Sword17/28FTX」を1030()から1111()までの日程で実施すると発表しました。

共同統合演習は、武力攻撃事態、武力攻撃予測事態における島嶼防衛を含む自衛隊の統合運用要領と米軍との共同対処要領、重要影響事態における対応措置要領を演練し、その能力の維持・向上を図る目的で実施するものです。

演習には陸海空の3自衛隊とアメリカ陸海空軍と海兵隊が参加、自衛隊からは人員約25,000名、艦艇等約20隻、航空機約260機が、アメリカ軍からは人員約11,000名が参加します。演習の日本の周辺海空域や自衛隊基地、在日米軍基地、グアム、北マリアナ諸島とその周辺海空域などです。

参加部隊は、水陸両用作戦や複合的な経空脅威への対処、日米共同による空域及び海域を防衛するための作戦、重要影響事態における捜索救助活動を実施、イギリス軍、オーストラリア軍、カナダ軍、韓国軍からオブザーバーの参加を受け入れも予定されています。

《維新嵐》 TPPの自由主義経済圏を「守る」ために各国は軍事的な結びつきを強めるでしょう。兵器の売買もされることになるでしょうし、合同訓練も実施されていくはずです。
肝は、共産中国を自由主義経済市場に封じ込めること、軍事的な包囲網を形成すること。共産中国経済を自由主義経済に取り込むことです。末はロシアをも取り込めると理想的なんですがね。


2016年10月24日月曜日

【中国論スペシャル】いま「紅い大国」を考えてみよう!

虚言国家・中国が自滅を避けられぬワケ
「南シナ海の2000年間支配」に「抗日戦勝利」
2016.10.24 01:00http://www.sankei.com/premium/news/161024/prm1610240002-n1.html

 主権を半ば外国に奪われ、国土を蹂躙された歴史を抱えながら、2千年もの長きにわたり350万平方キロ近い「自国の海」を有すると主張する、うさん臭い国家が存在する。

《中華人民共和国》

 習近平・国家主席は2014年12月、南京大虐殺記念館での記念式典において、以下の談話を発表した。

 「抗日戦争に勝利し、中華民族は外国の侵略に対し不屈に抵抗する『叙事詩』を書いた。近代以降、中国が外国の侵略に遭ってきた民族の『屈辱を徹底的に洗い流した』。中華民族としての自信と誇りを著しく増大させた。中国共産党は、民族復興を実現するという正しい道を切り開くべく重要な土台を創造した」
 「中国共産党が『恥辱の世紀』に終止符を打った」
 気取り過ぎて、まどろっこしいだけでなく、「叙事詩」と表現する割に歴史を粉飾・捏造し、屈辱ではなく「史実を徹底的に洗い流した」。だから、談話は分かり難いことこの上ない。過去の経緯・発言に照らし、習国家主席はこう言いたいのだろう。
 「古い文明を持つ中国だが、数世紀の間、先進的技術を備えた西洋に圧倒され、特にアヘン戦争敗戦以降は、半ば植民地化された。不安定な国情は日本が仕掛けた侵略戦争で極に達し、世界のどの国も体験しえなかった1世紀を迎えた。戦争→領土割譲→革命…。相次ぐ混乱に終止符を打ったのは中国共産党だった。1949年の中華人民共和国建国で『恥辱の世紀』は終わりを告げ、中華民族の再興劇が始まったのだ」


「恥辱の世紀」、あるいは「恥辱の百年」は1840年のアヘン戦争~1945年の抗日戦勝利~1949年の中華人民共和国建国までを指す。
 「抗日戦勝利」自体の大ウソは後半で暴くとして、まずは「抗日戦勝利」を強調したいがため、「屈辱の世紀」を認めた結果、発覚してしまった大ウソを突いてみる。
 中国は南シナ海に《九段線》なる破線を勝手に引き、破線の内側を「中国の海」と宣言し、人工島を造成し、軍事基地化に邁進。南シナ海の「支配は2千年も続いている」との理由を振りかざし、軍事基地化を止めない。
 「海洋の支配権」は国際法上や国際慣行上の様々な要件を満たさねば、認められない。「歴史的支配権」にせよ、「他国の黙認」をはじめ「他国が知り得る継続的権利行使」などの証明が不可欠だ。中国が権利を主張する南シナ海の海域は、他国との係争となっているケースが多く、「黙認」はおろか「否認」されている有り様だ。他国が知り得る継続的行使に至っては「南シナ海で、中国は2千年前より活動。島々を発見・命名し、資源を調査し、開発し、主権の権利を継続的に行使してきた最初の国家である」と、ことある毎に威張るが、中国以外に知る国はあるまい。
 アヘン戦争開戦に反対した英国の政治家ウィリアム・グラッドストン(1809~98年)の議会演説を思い出した。清国側に正義があったか否かは議論が分かれるが、支那人の本質を見事に看破している。いわく-。
 「なるほど支那人には愚かしい大言壮語と高慢の習癖があり、それも度を越すほど。でも、正義は異教徒にして半文明な野蛮人たる支那人側にある」


半植民地国家なのに大洋を支配?

 国際法上や国際慣行上の要件を満たそうと、これでもかと「継続的」を連呼している。
 アレ? そうなると「屈辱の百年」の間も南シナ海を支配していたことに…。南シナ海は358万平方キロで内、中国が主張する九段線の内側は9割近くを占める。「屈辱の百年」で自国の領土さえ満足に統治できなかった支那が、大洋を支配していたとは、よほど強大な海軍力を保有していたのだろうか。
 アヘン戦争中、清国軍のジャンク船が英海軍軍艦に吹き飛ばされるシーンを描いた絵は余りに有名だが、小欄の錯覚に違いない。
 2014年9月、習国家主席は《抗日戦争勝利記念日》にあたり、共産党・政府・軍の幹部を前に重要講話を行った。
 「偉大な勝利は永遠に中華民族史と人類の平和史に刻まれる」
 頭が混乱した小欄はインターネット上で、東京湾に投錨した米戦艦ミズーリの艦首寄り上甲板において、1945(昭和20)年9月2日に撮られた写真を探していた。大日本帝國政府全権・重光葵外相(1887~1957年)らが、艦上で行われた降伏文書署名に使った机の向こうに、連合軍将星がズラリと並ぶ一枚を思い出したためだ。米国▽英国▽ソ連▽豪州▽カナダ▽フランス▽オランダ▽ニュージーランドに混じり、中華民国(国民党)軍の軍服は確認したが、共産党系軍人は見いだせなかった。


 そのはずで、地球上に中華人民共和国なる国が現れるのは降伏調印後、中国大陸を舞台に国民党と共産党の内戦が始まり、共産党が勝って国民党を台湾に潰走させた前後。降伏調印後4年以上もたっていた。
 1937年に勃発した支那事変が大東亜戦争(1941~45年)へと拡大する中、精強な帝國陸海軍と戦ったのは専ら国民党軍で、国共内戦時に国民党軍の損害は既に甚大であった。これが共産党系軍勝利の背景だ。
 腐敗した国民党は人民の支持を喪失した。地主はもちろん、ささやかな自作農の金品も強奪、最後は残酷なやり方で処刑し、支配者が誰かを示す《一村一殺》を行い、天文学的数字の犠牲者を積み上げた共産党系軍の方がまだしも、貧者の支持を得たらしい。腐敗と残忍性は、時代やイデオロギーに関係なく「中華文明」の一大特性だが、敗色濃くなるや軍紀を無視し逃走する、弱兵の存在も「文明」の一端に加えねばならない。
 支那事変~大東亜戦争中、共産党系軍は一部が遊撃(ゲリラ)戦を行いはしたが、帝國陸海軍と国民党軍の戦闘を可能な限り傍観し、戦力温存に専心。同じく帝國陸海軍から逃げ回った国民党軍の「退嬰的戦法」をはるかに凌駕した。実際、初代国家主席・毛沢東(1893~1976年)は「力の七割は共産党支配地域拡大、二割は妥協、一割が抗日戦」と指導。帝國陸軍が中華民国首都・南京を陥落(1937年)させると、祝杯の大酒を仰いでいる。


 従って「偉大な勝利」など有り得ない。「永遠に中華民族史と人類の平和史に刻まれる」べきは、人民大殺戮と非戦ならぬ徹底した「避戦」であった。
 「避戦」は、毛が周到に練り上げた大戦略《持久戦論》の重要構成要素だった。ただ、持久戦論は図らずも、共産党系軍が最後の最後まで日本に勝利できなかった動かぬ証拠を歴史に刻んでしまう。持久戦論は以下のような前提に立つ。

 《日本は軍事・経済力共に東洋一で、中国は速戦速勝できない。だが、日本は国土が小さく、人口も少なく、資源も乏しい。寡兵をもって、広大な中国で、多数の兵力に挑んでいる。一部の大都市/幹線道路などを占領しうるに過ぎず、長期戦には耐えられない。敵後方で『遊撃戦』を展開し、内部崩壊を促せば、中国は最後に勝利する》

 持久戦論によると、戦争は3つの段階を踏む。

(1)敵の戦略的進攻⇔自軍の戦略的防御(1937~38年)
(2)彼我の戦略的対峙 敵の戦略的守勢⇔自軍の反攻準備期間(1938~43年)
(3)自軍の運動戦・陣地戦=戦略的反攻⇒敵の戦略的退却⇒殲滅(1943~45年)


正史に向き合えぬ哀れ

 ところが、(3)段階に当たる1944年~45年にかけ、帝國陸軍は50万の兵力で対中戦争最大の作戦《大陸打通作戦》を実行し、戦略目的達成はともかく、作戦通りの地域を占領、勝利した。結局、支那派遣軍は1945年の終戦時点でも100万以上の兵力を有し、極めて優勢だった。第二次世界大戦(1939~45年)における帝國陸海軍々人の戦死者240万の内、中国戦線での戦死は46万人。日本敗北は毛が主唱する「遊撃戦」の戦果ではない。米軍の原爆を含む圧倒的軍事力がもたらしたのである。習国家主席は盧溝橋事件77年を迎えた2014年7月、抗日戦争記念館での式典時、わが国をいつものごとく批判した。
 「歴史の否定や歪曲、美化を決して許さない」「確固たる史実を無視している」
 「30万人の犠牲者を出した南京大虐殺」などと虚説をタレ流す自国に問うべき言葉だろう。自問を日本にぶつけるのは、正史に向き合えぬ自信の無さ故。哀れだ。
 歴史のみならず現実にも向き合わない。今年6月にシンガポールで開かれた英・国際戦略研究所(IISS)が主催するアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に臨んだ、中国人民解放軍統合参謀部副参謀長の孫建国・海軍上(大)将の発言もひどかった。
 「長年にわたる中国と沿岸諸国の努力で、南シナ海情勢は全体的に安定している。中国はルールとメカニズムに従い意見の相違を克服し、ウィン・ウィンの相互関係を実現し、航行と上空飛行の自由、そして平和と安定を維持する。二国間対話で紛争を解決する」


 南シナ海で一方的に人工島を造成、軍事基地化し、海上交通路の大要衝で緊張を高めている加害国が、どの口で言うのか。しかも、日本や米国などは南シナ海問題の当事国ではなく「口出しするな」を声高に叫ぶ。が、南シナ海問題をめぐり、スロベニアやモザンビーク、ブルンジなど遠く離れた小国の支持を取り付けようと狂奔しているのは中国だ。
 一方、米国のアシュトン・カーター国防長官は日本やインドといった同盟国・友好国が参加する多層型安全保障ネットワークに言及した上で断じた。
 「中国の南シナ海での行動は、中国自らを孤立させている。こうした行動が続くのなら、中国は『孤立の長城』に自身を封じ込める」
 これに対し、孫上将は「過去も現在も未来も孤立することはない。中国が問題を起こしているわけではない」と反論した。
 カーター国防長官は間違いなく、米政府・軍に影響力を持つ現代を代表する戦略家、戦略国際問題研究所(CSIS)のエドワード・ルトワック上級顧問に学んでいる。著書《自滅する中国/なぜ世界帝国になれないのか=芙蓉書房》の助けを借りて、博士氏の対中分析を論じてみる。


 《自滅する中国》に通底する論理的支柱の一つは、一方的に勝ち続けることで相手の反動を呼び起こし、結局は自らを滅ぼしてしまう逆説的論理《勝利による敗北》。政治・軍事・経済・文化・移民など、あらゆる分野での国際常識を逸脱した台頭・侵出はひっきょう、周辺諸国はじめ諸外国の警戒感や敵がい心をあおる。中立的立場の国はもとより、友好国の許容限度をも超え、離反を誘発。敵対関係にあった国同士の呉越同舟さえ促す。そうした国々は公式・非公式に連携・協力し、場合によっては同盟関係構築へと関係を昇華させる。国際情勢は中国にとって次第次第に不利になり、自国の大戦略・野望をくじく結末を自ら引き寄せる。
 例えば、日本はベトナムに経済支援を実施→ベトナムはロシアから潜水艦を購入→同型潜水艦を運用するインド海軍が、ベトナム海軍乗員を訓練する-互いに意図しなかった構図を生んだ。全て中国の脅威の“お陰”だ。
 さらにルトワック博士は、中国経済鈍化=軍拡の鈍化を狙った、中国を脅威と捉える国々による対中経済・通商包囲網の構築を進言する。カーター国防長官が、日本やインドといった同盟国・友好国の多層型安全保障ネットワークに言及した点にも、ルトワック博士の影響を感じる。


漢民族に戦略の才なし

 自国のパワー増大がもたらす、反中包囲網によるパワーの減退という皮肉な状況の回避には「軍の拡大を遅らせる」以外にないが、中国には無理。中国は他国への挑発的大戦略を止められない。
 なぜなら、中華思想に魅入られた中国に「対等」なる感覚はゼロ。冊封体制や朝貢外交に代表される「上下関係」が全てだ。加えて、2500年以上前の春秋戦国時代に著わされたとされる《孫子の兵法》にもあるごとく、陰謀やだまし合いを当然のように繰り返してきた。漢民族は狡猾な策略こそが知恵だと信じて疑わず、欧米や日本などは権謀術数によって操れ、優位に立てると過剰なまでに確信する。
 しかし、それは同一文化内では通用するものの、異文化に強要すれば自国の崩壊を招く。自然、モンゴルやトルコ系王朝、満州族に敗戦を喫し、過去千年の間、漢民族が大陸を支配したのは明王朝(1368~1644年)時代ぐらい。ルトワック博士は自信を持って断じている。

「漢民族に(彼ら自身が思っているような)戦略の才はない」


【ルトワック氏の対中戦略論についての関連動画】






 国家の主権と独立を守るために、国家レベルでの「戦略」は不可欠です。そして「国家戦略」とは、軍事力だけの要素で語られるものではありません。
 また省益や企業の利益に左右されるものでもありません。多くの国民、草莽のみなさんが幸せに平和秩序の保たれた生活を送れるようにあるものといえるでしょう。
 多くの日本人が今こそ自分たちのくらしがどうよくなるか、について学ぶことが求められているといえます。