2018年7月28日土曜日

【RIMPAC2018】新たな海洋軍事大国の復権をめざせ!

【RIMPAC 2018】

海上自衛隊のみならず陸上自衛隊も参加中…
https://www.youtube.com/watch?v=ETSa3ro5hbQ


陸自が地対艦ミサイルで米海軍戦車揚陸艦を撃沈

リムパックで初の地対艦ミサイル演習を実施、米軍の狙いとは?

北村淳
陸上自衛隊の地対艦ミサイル(対艦誘導弾)システム「12式地対艦誘導弾」(資料写真、出所:Wikipedia
 2018627日からホノルル周辺海域を中心に開催されている多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)-2018」で、RIMPAC史上初めて陸軍部隊による洋上の軍艦を攻撃する演習(SINKEX)が実施された。この演習こそ、前々回の本コラムで紹介した、中国海軍の目の前で実施したかった自衛隊によるパフォーマンスであった。

RIMPACで初めて実施された地対艦ミサイル演習

 2018年714日に実施されたSINKEXは日本、米国、オーストラリアの3カ国による合同演習である。内容は、オアフ島の隣にあるカウアイ島内に陣取った陸上自衛隊ミサイル部隊ならびにアメリカ陸軍ミサイル部隊が、オーストラリア空軍のP-8ポセイドン哨戒機の上空からの誘導により、カウアイ島北55海里沖洋上に浮かぶアメリカ海軍退役軍艦「Rachine」を、それぞれ地対艦ミサイルを発射して撃沈するというものだ。
 ちなみに陸上自衛隊はメイドインジャパンの12式地対艦ミサイルシステムを使用し、アメリカ陸軍はノルウェー製の対艦ミサイルを米陸軍のミサイル発射車両から発射した。長い歴史を誇るRIMPACで、今回初めて地上軍(陸上自衛隊、米陸軍)が地対艦ミサイルを用いて洋上の軍艦を攻撃する訓練が実施された。
SINKEXで陸上自衛隊が12式地対艦ミサイルを発射した瞬間(写真:米海軍)
SINKEXで米陸軍がノルウェイ製地対艦ミサイルNSMを発射した瞬間(写真:国防総省)
中国の「積極防衛戦略」とは
 今回、初めて地対艦ミサイル演習を実施した最大の理由は、南シナ海と東シナ海における中国の海洋戦力の拡張に、アメリカ海軍を中心とする同盟諸国海軍が伝統的海洋戦力(各種軍艦と航空機)だけで対抗することが困難な状況になりつつあるからである。
 現在、中国海軍が依拠している防衛戦略(ただし核戦略は別レベルである)は「積極防衛戦略」と称されており、アメリカ軍などでは「接近阻止・領域拒否戦略」(A2AD戦略)とも呼称されている。この防衛戦略を一言で言うならば、東シナ海や南シナ海から中国に(核攻撃以外の)軍事的脅威を加えようとする外敵(主としてアメリカ海軍、それに海上自衛隊をはじめとするアメリカの同盟国海軍)を、中国本土沿岸からできるだけ遠方の海上で撃破して中国に接近させないというアイデアである。このように接近を阻止するための目安として中国海軍戦略家たちが設定しているのが、第一列島線と第二列島線という概念である。
第一列島線と第二列島線(白:日米海軍拠点、赤:中国海軍拠点)
「積極防衛戦略」を推し進めるためには、どうしても海軍力と航空戦力の強化に最大の努力を傾注することが必要となる。なぜならば、中国に接近を企てる外敵は、軍艦や軍用機によって海洋を押し渡ってくることになるからである。そのため、中国海軍は次から次へと軍艦の建造に邁進し、海軍と空軍は戦闘機や爆撃機をはじめとする航空戦力の強化も猛スピードで推し進めた。
 ただし、中国軍戦略家たちは、そのような伝統的な海洋戦力だけで、強大なアメリカ海軍やその弟分である海上自衛隊を迎え撃とうとはしなかった。なぜならば、軍艦や軍用機の開発、建造・製造、それに乗組員や整備要員の養成には長い時間がかかるからである。そこで、多数の軍艦や軍用機を生み出しそれらの要員を鍛え上げ、強力な伝統的海洋戦力を構築するのと平行して、比較的短時間で大量に生産することができ、運用要員の育成も容易な、様々な種類の対艦ミサイルの開発にも努力を傾注した。
要するに、中国沿海域に押し寄せてくるアメリカ海軍や海上自衛隊の高性能軍艦や航空機に対して、伝統的な海洋戦力で対決するだけでなく、場合によっては中国本土からあるいは本土上空から各種対艦ミサイルを発射して、アメリカ海軍艦艇や海上自衛隊艦艇を撃破し、中国沿岸域、あるいは第一列島線、さらには第二列島線への接近を阻止してしまおうというわけである。
実際に、中国人民解放軍は、中国本土内から発射する多種多様の地上発射型対艦ミサイル(地対艦ミサイル)や、敵の攻撃を受けることのない中国本土上空の航空機から発射する対艦ミサイル(空対艦ミサイル)、それにやはり敵の攻撃を受けることのない中国本土沿海域の軍艦から発射する対艦ミサイル(艦対艦ミサイル)をずらりと取り揃えている。そのため、第一列島線を超えて中国沿岸に接近を企てる敵艦艇は、多数の対艦ミサイルによる集中攻撃を被る恐れが極めて高い状況になっている。そして、対艦ミサイルとともに、接近してくる航空機を撃破するための各種防空ミサイルの配備も伸展している。
アメリカ側にも必要となった「接近阻止戦略」
 このような中国軍の「積極防衛戦略」に立脚した接近阻止態勢に対して、アメリカ海軍(そしてその同盟軍)としては、正面切って空母艦隊をはじめとする艦艇や航空機を突っ込ませるのは自殺行為に近い。そこで、アメリカ軍やシンクタンクの戦略家の間で、別の方法が真剣に検討され始めているのだ。それは、こちらから中国沿海に接近して攻撃するというアメリカの伝統的な「攻撃による防御」戦略ではなく、中国海軍が設定した第一列島線上で中国海洋戦力の接近を待ち構え、中国軍艦艇や航空機の第一列島線への接近を阻止する方法だ。いわば、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」を実施しようというアイデアである。
アメリカ軍が評価する日本の地対艦ミサイル能力
 では、アメリカ軍は第一列島線でどのような戦力で待ち受けるのか。まずは、第一列島線周辺海域に様々な軍艦を展開させ、第一列島線上にいくつかの航空拠点を確保して航空戦力を配備し、第一列島線周辺海域に空母艦隊を展開させて航空打撃力を準備する、といった伝統的海軍戦略にのっとった方策が考えられる。
一方、中国の戦略を真逆にした「接近阻止戦略」では、第一列島線上に地対艦ミサイル部隊を展開させて、接近してくる中国艦艇を地上部隊が撃破するというオプションが加わることになる。ところが、このような「敵をじっと待ち受ける」受動的な、すなわち専守防衛的な戦略はアメリカ軍は伝統的に取ってこなかった。そのため、専守防衛的な兵器である地対艦ミサイルシステムをアメリカ軍は保有していない。
 地対艦ミサイルを投入しての「接近阻止戦略」が必要であると考え始めたアメリカ海軍や海兵隊それに陸軍の戦略家たちは、地対艦ミサイルの威力を目に見える形でペンタゴンやホワイトハウスに提示する必要に迫られている。そこで登場したのが、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊である。かねてより地対艦ミサイルに特化した部隊を運用している世界でも稀な陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊に、日本が独自に開発し製造している高性能12式地対艦ミサイルシステムをRIMPAC-2018に持ち込んでもらい、大型艦を撃沈するパフォーマンスを実施してもらったというわけだ。

 おそらく、今回のSINKEXを皮切りに、アメリカ陸軍でも、アメリカ海兵隊でも、地対艦ミサイル部隊の創設へと舵を切っていくことになるものと思われる。それに対して、陸上自衛隊は四半世紀前から地対艦ミサイル運用に特化した地対艦ミサイル連隊を保有しているし、日本独自に開発製造している地対艦ミサイルシステムを手にしている。そのため、現在アメリカ軍戦略家たちが検討している中国に対する「接近阻止戦略」(拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』地対艦ミサイル部隊が人民解放軍を殲滅す 講談社+α新書687-2c参照)を推進して行くに当たって、日本の地対艦ミサイル技術やノウハウは、アメリカにとっても大いに有益なものとなることは必至だ。


〈管理人より〉我が国は、地対艦ミサイル大国といえそうですね。確かに沿岸から、ホーミングして敵艦に一撃必殺で命中させる点は、防衛戦略の基本といえますね。RIMPACの演習は海軍力だけでなく、陸上自衛隊の着上陸能力、展開力のスキル向上に不可欠の演習になりましたね。



【深まる各国との安全保障関係】

日仏安全保障関係は新たな段階に

岡崎研究所
 2018713日(日本時間14日)、フランスを訪問中の河野太郎外務大臣は、フランスのフロランス・パルリ軍事大臣とともに、「日本国の自衛隊とフランス共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定」(略称:日・仏物品役務相互提供協定(日仏ACSA))に署名した。この協定は、日仏両国の国内手続きを経て、発効する。
この日仏ACSAにより、自衛隊とフランス軍との間で、物品・役務の提供が円滑かつ迅速にできるようになる。具体的には、災害や共同訓練、国連PKO(平和維持活動)の際に、物資や食糧、燃料、弾薬等及びサービスを相互に融通できるようになる。この協定は、自衛隊とフランス軍との間の緊密な協力を促進し、国際社会の平和構築や安全保障に積極的に寄与するのに役立つものである。
参考:外務省「日・仏物品役務相互提供協定(日仏ACSA)の署名」平成30714
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_006238.html
 日本は、既に、米国、英国、豪州とACSAを締結している。今回、フランスと締結したことで、日仏間の安全保障関係がより緊密になるとともに、日米豪英仏が共に行う多国間の共同軍事演習等もより円滑にやりやすくなる。
 714日、フランスの革命記念日の軍事パレードに、日本国の代表として、陸上自衛隊が初めて参加して、共に行進をした。フランス全土や世界中から集まった人々が、フランス軍とともに、シャンゼリゼ大通りを行進する自衛隊員に声援と拍手をおくった。フランス政府及びフランス国民は、自衛隊の参加、フランスとの国際協力を積極的に評価した。
 今年は、日仏国交160周年の節目の年であり、文化的行事として、同日、パリ市内では、「ジャポニズム」の開会式も、河野外務大臣出席のもとに開催された。が、意外にも、フランスの一般の人々は、陸上自衛隊が革命記念日の軍事パレードに参加していることは知っていても、日仏交流160周年のことはそれ程知られていなかった。日仏交流の観点からも、フランス人が関心を持ち団結を示し熱くなる革命記念日の軍事パレードに、少人数でも日本の自衛隊が参加したことには、日本の存在を示すのに大きな意義があった。
 もう一つ、自衛隊のフランス訪問が重要だった理由は、今年が第一次世界大戦終結1918年から丁度100周年にあたる年だからだ。日本は、フランスとともに戦い、戦勝国の五大国の一員として、戦後処理や戦後の国際秩序の構築に務めた。革命記念日の前日等にパリの軍事学校内で開催された光のショーのタイトルは、「1918年、新世界」であり、フランスの歴史にとって、第一次世界大戦が重要であることは明らかだった。
 ACSAが日仏関係のみならず、多国間の安全保障協力にとっても重要だと上記したが、今年のフランス外交を振り返っても、その事は明白である。本年1月、マクロン大統領は、インドに国賓として招かれ、仏印共同声明では、仏印防衛協力の強化も謳われた。4月には、米国にもマクロン大統領は国賓として訪問した。さらに、5月、豪州にもマクロンは赴き、ターンブル首相との間で、インド太平洋地域の安全保障協力で仏豪両国が協力することを約束した。
 このようなフランス外交の流れは、日本外交の方向性と一致する。
 2018年126日に東京で開催された日仏外務・防衛閣僚会合(「22」)を受けて、今回のACSA署名に至った。その間、2月には、フランスの軍艦が東京晴海に寄港し、海上自衛隊がホストした。このように、海上でも陸上でも日仏の軍事関係者が協力する時代に、今回のACSAは必要不可欠なものなのだろう。

フランス革命記念日パレード2018
我が国の自衛隊員も参加しました。




2018年7月20日金曜日

ステルス戦闘機F-35をめぐる諸問題

なぜ日本は米国から国防費増額を強要されないのか

F-35を買わないドイツと、気前よく買う日本の違い

北村淳
ベルギー・ブリュッセルで行われたNATO首脳会議後に記者会見するドナルド・トランプ米大統領(2018712日撮影)。(c)AFP PHOTO / Brendan SMIALOWSKIAFPBB News

 トランプ大統領はNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国(とりわけドイツやフランスなどEUを牽引する西ヨーロッパ諸国)に対して国防費増額を執拗に要求している。先週のNATO総会でも「NATO諸国が国防費の目標最低値として設定しているGDP2%はアメリカの半分であり、アメリカ並みに4%に引き上げるべきである」と主張した。特にドイツへの姿勢は厳しい。ドイツはNATO加盟国の中でも経済力も技術力もともに高く、実際にアメリカの一般の人々も「メルセデスやBMWのような各種高級機械をアメリカに輸出している先進国」と認識している。そんなドイツの国防費がGDP1%にすぎないことに対して、トランプ大統領は極めて強い不満を露骨に表明した。
 一方、日本に対する姿勢は異なる。日本はNATO加盟国ではないものの、ドイツ同様に経済力も技術力も高く、アメリカの一般の人々も「自動車や電子機器などをアメリカに輸出している先進国」と認識しており、やはりドイツ同様に第2次世界大戦敗戦国である。このようにドイツと日本は共通点が多いが、これまでのところ(トランプ政権が発足してから1年半経過した段階では)、日本に対しては、「日本の国防費はGDPのたった1%と異常に低い。少なくとも2%、そして日本周辺の軍事的脅威に目を向けるならば常識的にはアメリカ並みの4%程度に引き上げなければ、日米同盟の継続を見直さねばなるまい」といった脅しは避けてきている。
 なぜドイツに対しては強硬に国防費の倍増どころか4倍増を迫り、日本に対しては(これまでのところ)そのような強硬姿勢を示さないのであろうか?
その原因の1つ(あくまで、多くの要因のうちの1つにすぎないが)として考えられるのが、大統領選挙期間中以来トランプ大統領が関心を持ち続けてきているステルス戦闘機「F-35」の調達問題である。
↓F-35Aの日本向け1号機(写真:ロッキード・マーチン社)

F-35への関心が高いトランプ大統領

 トランプ大統領は2016年の大統領選挙期間中から、将来アメリカ各軍(空軍、海軍、海兵隊)の主力戦闘機となるF-35の調達価格が高すぎるとロッキード・マーチン社を非難していた。2017年に政権が発足した後は、さらに強い圧力をかけ始めたため、結局、F-35の価格は大幅に値引きされることとなった。F-35最大のユーザーとなるアメリカ軍は、合わせて2500機近く(空軍1763機、海兵隊420機、海軍260機)を調達する予定である。トランプ大統領がその調達価格を値下げさせたことにより、国防費を実質的に増額させたことになったわけである。
 このほかにも、トランプ大統領はこれまで数度行われた安倍首相との首脳会談後の記者会見などで、必ずといってよいほど「日本がF-35を購入する」ということを述べている。
 米朝首脳会談直前のワシントンDCでの日米首脳会談後の共同記者会見においても、「日本は(アメリカから)莫大な金額にのぼる、軍用ジェット(すなわちF-35のこと)やボーイングの旅客機、それに様々な農産物など、あらゆる種類のさらなる製品を購入する、と先ほど(首脳会談の席上で)安倍首相が述べた」とトランプ大統領は強調していた。
要するに、F-35という戦闘機はトランプ大統領にとって大きな関心事の1つなのだ。

F-35の共同開発参加国が機体を調達

 F-35統合打撃戦闘機は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発し、アメリカのノースロップ・グラマン社とイギリスのBAE社が主たる製造パートナーとしてロッキード・マーチン社とともに製造している。
F-35のシステム開発実証段階では、アメリカ政府が幅広く国際パートナーの参画を呼びかけたため、イギリス、イタリア、オランダ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェイ、トルコが参加した。後に、イスラエルとシンガポールもシステム開発実証に参画したため、F-3511カ国共同開発の体裁をとって、生み出されたことになる。
 パートナーとして開発に参加した国々は、それぞれ巨額の開発費を分担することになるため、当然のことながらF-35を調達することが大前提となる。要するに、共同開発として多数の同盟国を巻き込むことにより、アメリカ軍以外の販売先も確保する狙いがあったわけである。
 開発参加国は、分担金の額や、調達する予定のF-35の機数などによって、4段階に分類された。最高レベルの「レベル1」パートナーはイギリスであり、F-35B138機調達することになっている。
F-35には3つのバリエーションがあるため、正式にはF-35統合打撃戦闘機と呼称されている。3つのバリエーションとは、主としてアメリカ空軍の要求に基づいて開発された地上航空基地発着用のF-35A、アメリカ海兵隊の要求に基づいて短距離垂直離発着能力を持ち強襲揚陸艦での運用が可能なF-35B、アメリカ海軍の要求に基づき設計された航空母艦での発着が前提となるF-35Cである。このほかにもカナダ軍用にはCF-35、イスラエル軍用にはF-35Iが製造される予定となっているが、基本的にはA型、B型、C型ということになる。)
「レベル2」パートナーはイタリアとオランダであり、それぞれ90機(F-35A60機、F35B30機)85機調達することになっていた。その後、オランダは調達数を37機へと大きく削減した。

「レベル3」パートナーは、オーストラリア(F-35A72機)、カナダ(F-35AベースのCF-3565機、F-35の大量調達に疑義を呈していたトルドー政権が発足したため、選挙公約どおりにF-35の調達はキャンセルされ、現在再検討中である。)、デンマーク(F-35A27機)、ノルウェイ(F-35A52機)、トルコ(F-35A100機)である。遅れてシステム開発に参加したイスラエル(F-35AベースのF-35I50機)とシンガポール(調達内容検討中)は「SCPパートナー」と呼ばれている。

F-35を買わないドイツ、気前よく買う日本

 以上のように、現時点でパートナーである同盟諸国は合わせて600機前後のF-35ステルス戦闘機を購入する予定になっている。
しかしながらNATOEUのリーダー的存在であるドイツもフランスも、ともにF-35を購入する予定はない。ドイツ空軍ではF-35に関心を示したことがあったが、F-35推進派の空軍首脳は更迭されてしまった。
 このようにF-35ステルス戦闘機を購入する予定がないドイツに対して、トランプ政権は強烈に国防費増額を迫っている(65機が予定されているF-35の購入をキャンセルしたカナダのトルドー首相とも、トランプ大統領は対立を深めている。)一方、NATO加盟国ではないもののやはりアメリカの同盟国である日本は、ドイツ同様にF-35の開発には協力しなかった。しかし、ドイツのメルケル政権と異なり、安倍政権はF-35の購入に積極的であり、すでに42機のF-35Aの調達が決定し、すでに引き渡しも開始されている。F-35開発パートナー諸国以外でF-35の購入、すなわち純然たる輸入を決定した国は日本と韓国(F-35A40機調達予定)だけである。
 そして、日本は調達する42機のうち最初の4機を除く38機は日本国内で組み立てる方式を採用した(ただ組み立てるだけであるが)。その組み立て工場(三菱重工業小牧南工場)は、今後世界各国で運用が開始されるF-35戦闘機の国際整備拠点となることが、アメリカ国防総省によって決定されている。
上記のように「安倍総理が日米首脳会談の席上でF-35の追加購入を口にした」とトランプ大統領が述べているということは、すでに調達が開始されている42機のF-35Aに加えて、かなりの数に上るF-35を調達する約束をしたものとトランプ大統領は理解しているに違いない。首脳会談で一国の首相が述べた事柄は、一般的に公約とみなされる。さらに米軍内では、日本国内で流布している海兵隊使用のF-35Bを調達する可能性も噂として広まっており、アメリカ側では期待している。
 日本はドイツと違って、トランプ大統領が関心を持っているアメリカにとっての主力輸出商品の1つであるF-35を気前よく購入している。したがって、安倍政権がトランプ大統領に対してF-35を積極的に調達する姿勢をアピールしている限りは、トランプ政権も「日本に対して国防費を4倍増しなければ日本防衛から手を退く」といった脅しはかけてこないだろうとも考えられるのだ。
【我が国の海空防衛戦略
鹿児島・馬毛島を海・空自拠点に 
中国脅威防衛強化 F15戦闘機展開
馬毛島 種子島の西約12キロにあり、面積約8平方キロ、周囲約16キロの無人島。土地が平らで大規模な造成が不要な上、開発会社がX字形に滑走路2本を造成している。政府は平成23年から土地買収について開発会社と交渉してきたが、会社側が賃貸契約を求めたり、政府の想定を相当上回る売却額を提示したりしたため合意に至っていない。
陸上離着陸訓練(FCLP) 米空母艦載機が陸地の滑走路を空母甲板に見立てて離着陸する訓練で、パイロットの空母着艦資格の取得に不可欠。昭和57年から厚木基地(神奈川県)で行われていたが、騒音の深刻化で代替施設が確保されるまでの暫定措置として平成3年から硫黄島(東京都)で実施され、恒久措置として馬毛島への移転が検討されている。
防衛省が、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地となっている鹿児島県西之表(にしのおもて)市の馬毛(まげ)島を海上・航空両自衛隊の拠点として活用する方針を固めたことが平成307月14日、分かった。中国の脅威を踏まえた南西防衛強化の一環で、訓練に加え、有事での空自戦闘機の分散配置の拠点にする。馬毛島の土地買収に向けた調整と並行し、活用方法の検討を加速させる。
 現行の態勢では米軍横須賀基地(神奈川県)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンの洋上展開前に、FA18戦闘攻撃機などの艦載機パイロットが陸上離着陸訓練を行う。艦載機は3月、厚木基地(同県)から岩国基地(山口県)に拠点を移しており、岩国基地から馬毛島に展開し実施する。期間は年間2週間程度で残りは滑走路が空く。
 そのため防衛省は海・空自の航空機訓練に活用。海自は鹿屋(かのや)航空基地(鹿児島県)のP3C哨戒機、空自は新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)のF15戦闘機が馬毛島に展開し、離着陸や防空などの訓練を行うことを想定する。
 空自は短距離滑走離陸・垂直着陸が可能なF35Bを導入し、新田原基地に配備することを検討。海自もヘリ搭載護衛艦いずもをF35Bの離着艦可能な空母に改修することを検討しており、F35Bといずもが馬毛島を拠点に訓練をすることも視野に入れている。
南西防衛では空自戦闘機の拠点を増やすことが課題。南西方面で唯一の拠点の那覇基地の滑走路が破壊されれば現状では代替拠点がないためで、馬毛島を代替拠点とする。事前にF15を馬毛島に分散配置すれば那覇基地が攻撃されてもF15の壊滅を避けられる。
 一方、沖縄県の基地負担軽減で、米軍普天間飛行場のオスプレイの訓練の一部を馬毛島に移す案もある。
 防衛省は馬毛島を買収する方針だが、土地を所有する開発会社との交渉は難航。開発会社は債権者から破産を東京地裁に申し立てられ、地裁は先月15日付で保全管理命令を出した。今月中にも破産手続きを始めるか判断する。防衛省は破産手続きに入れば買収の実現可能性が高まるとみている。

【強化される我が国の離島防衛!?】
「離島奪還」ではなく、「離島へ展開」して敵の上陸を阻止する、という戦略こそ陸上自衛隊のとるべきスタンスでしょう。上陸を企む侵攻勢力に上陸させないために、電子戦、サイバー戦の能力をあわせて戦略的に組み込み、向上させるべきですね。
【速報版】16式機動戦闘車MCV LCACから上陸!陸上自衛隊&海上自衛隊 https://www.youtube.com/watch?v=0t4g4GB2j2M
 74式戦車の姿勢制御を初めて見る米陸軍兵士達 
https://www.youtube.com/watch?v=On1Hn0UlydE

太平洋を挟んでむきあうアメリカ合衆国との「海洋国家」としての政治的、軍事的な連携は不可欠です。

【F-35A戦闘機に早くも「制空」ライバルが出現】
ロシア最新鋭ステルス機「SU57」来年配備へ 
日本の頼みの綱「F35」より優位に?

ロシアの最新鋭ステルス戦闘機「SU57」が来年にも軍に配備される見通しだ。露政府系メディア「RT」は平成30年6月30日、「クリボルチコ国防副大臣が『初量産の12機のSU57の引き渡し契約が結ばれ、来年にも配備される』と述べた」と伝えた。これに合わせるようにRTは同月25日、「(米国の最新鋭ステルス機)F35とSU57、どちらが優れている?」と題した記事を掲載。日本も導入するF35は今後の国防の要であり、日本人として気にならないわけはない。露メディアの目から見た両機の優劣は-。(外信部 小野田雄一)

高性能をアピール
 SU57は露航空機メーカー「スホイ」が開発した戦闘機で、開発段階では「PAK-FA(パクファ)」「T50」などとも呼称。旧式化しつつある主力戦闘機「SU27」や「MiG29」の後継機として、2000年代から開発が進められていた。
 SU57は、レーダーでの捕捉が困難なステルス性能を備える「第5世代ジェット戦闘機」に分類される。現在、ステルス機の国産開発に成功したのは米国と中国のみとされ、SU57が配備されれば、ロシアは3番目の国産ステルス機保有国となる(イランも国産開発に成功したと主張しているが、専門家は疑問視)。
RTが軍事ジャーナリストや軍関係者の話として伝えたところでは、SU57は高いステルス性能、高性能レーダーと超音速クルーズ機能を備える上、高い機動性を持ち、どんな高度や距離での戦闘もこなせる。さらに敵の迎撃圏外から攻撃できる専用ミサイルも搭載。搭載兵器の性能は前世代から1・5~2倍向上しているという。
 さらに同じ空域にいる他の戦闘機とネットワーク化され、「(僚機が発射したミサイルの誘導など)作戦空域内のプラットホームの役割も果たせる」とした。
F35を圧倒?
 こうした性能が事実なら、ロシアの脅威を感じつつもステルス機を持っていない国々には脅威となる。
 旧西側諸国内で対抗できる戦闘機と目されているのは、米軍が開発した最新鋭ステルス機であるF22とF35だ。ただ、F22は世界最強との呼び声が高いものの、軍事機密保持などの観点から米国外に輸出されておらず、生産ラインも既に閉鎖。再生産の可能性は低い。
 一方、F22よりも新型で、電子装備面で優れるとされるF35は一定の開発が既に終わり、輸出も順次行われている。日本も計42機(一部は既に配備済み)の導入を決定しているほか、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州諸国にも配備が進められていく見通しとなっている。
 RTもこうしたF35に注目しており、6月25日、F35とSU57を比較する記事を掲載した。記事の執筆者は退役大佐という。
同大佐は軍事ウオッチャーの話として、「両機体はコンセプトが全く異なる。F35は低コストの軽戦闘機であり、(高性能だが高価な)F22を補完する戦闘機だ。一方、SU57は制空用の大型戦闘機として設計されており、速度・高度・各種センサー・武装搭載量・航続距離・機動性でF35を上回っているとみられる」と述べた。
「情報が足りない」
 一方で、この記事は謙虚ともいえる姿勢も見せている。
 記事によると、現代の空戦では、第一次世界大戦や第二次大戦時のような戦闘機同士のドッグファイト(接近戦)は行われない以上、機動性や武装搭載量は往年ほど重要ではないとも指摘。「本当に重要なのは武装搭載量と射程のバランス、レーダー性能などだが、第5世代戦闘機にはそれらに関して公開されたデータが存在しない」とした。
 さらに現代の戦闘機の能力は、早期警戒レーダーや人工衛星とのデータリンクなど支援環境によっても大きく左右されるが、それらに関する確たるデータも存在しないとした。
 記事の結論は「そうしたデータが公にされることは決してない以上、両機の優劣に関しては推測しか可能ではなく、メディアで比較するのは適切ではない」と、いささか拍子抜けともいえるものとなっている。
人類にとって最良は
 ただ、これまでにも軍事専門家やインターネット上のマニアらの間では、両機の優劣に関する議論が盛んに行われてきた。
 西側の軍事ウオッチャーの間では一般に「ステルス機開発で長い歴史を持つ米国に比べ、ロシアの歴史は浅い。仮にF35が単純な性能でSU57に劣っても、運用環境や電子装備性能などの総合力でF35の方が優位に立つ」という見方が大勢を占めているようだ。
 結局のところ、RTの記事が指摘するように、どちらの戦闘機が総合的に優秀かは実際に戦闘が起きなければ分からないのが実情だ。しかし、それが判明するときは世界のどこかで戦争や紛争が起きているということでもある。世界最強の戦闘機をめぐる議論には一種のロマンがあるが、人類にとっては、その答えは永遠に出ない方がよさそうだ。

【F-35Aのデータを盗られたかな?】


ロシアハッカーが日本攻撃 
2018年5月、複数の物流企業をターゲット 予行演習か
米情報セキュリティー会社「ファイア・アイ」は平成30719日、ロシア政府が支援しているとみられるハッカー集団「サンドワームチーム」が5月初旬に、日本の複数の物流企業に対し、サイバー攻撃を仕掛けていたとする分析を発表した。企業名や攻撃が成功したかどうかなどは明らかにしていない。
 ファイア・アイによると、ロシア傘下のハッカー集団による日本攻撃が明確になったのは初めて。このハッカー集団は、主にウクライナに挑発的な攻撃を繰り返しており、これまでに電力供給が停止する事態も起きている。近年は、攻撃対象を米国やほかの欧州諸国にも広げているという。
 日本を狙った動機は不明。第三国の別の対象を攻撃する「踏み台」として利用しようとしたのか、今後の日本攻撃のための「予行演習」など複数の可能性が考えられるとしている。
【管理人より】予行演習にしろ、本番にしろ機密情報をハッキングしようとしたわけですから、由々しき事態です。やはり仮想敵国より外交、軍事で優位にたとうとするには、国家機関によるサイバー攻撃により、中枢部を狙われます。
対サイバー攻撃「防御」訓練




2018年7月15日日曜日

新局面を迎えた「米中戦争」 ~RIMPAC2018から拒否された中国海軍~

リムパック不参加の中国海軍に見せたかったもの

ノーマルな状態に戻った一方で、残念な事態も

北村淳
中国遼寧省大連の港を出る中国初の国産空母「001A型」(2018513日撮影、資料写真)。(c)AFPAFPBB News

 2年に一度、アメリカ海軍が主催して太平洋沿岸諸国を中心とした多数の諸国の海軍が参加してホノルルを中心に行われる多国籍海軍合同演習「RIMPAC(リムパック)」が、2018627日から開催された。
RIMPACを引っかき回した中国海軍
 今年のRIMPACRIMPAC-2018)にまつわる最大の話題は、RIMPAC-2014RIMPAC-2016に参加して艦隊を派遣してきた中国が、直前になって除名されたことである。
RIMPAC参加国の変遷
 トランプ政権が誕生した昨年(2017年)春には、オバマ政権によってRIMPACに招待された中国海軍をRIMPACから追い出そうという動きが浮上した。というのは、アメリカ海軍が主催するRIMPACは、太平洋沿岸地域のアメリカの同盟諸国や友好諸国の海軍の相互理解を醸成しつつ共同作戦能力などを涵養するというのが本来の趣旨だからだ。ところがオバマ政権下では、中国に対するいわゆる関与政策(ある程度の妥協には目をつぶってでも、中国をできる限り民主主義陣営引き入れようとする政策)派が国務省だけではなく国防総省でも力を得ていた。彼らの「太平洋沿岸国である中国をRIMPACに参加させることにより、アメリカ海軍とその同盟諸国・友好諸国の海軍と中国海軍との間に信頼関係を生み出させ、海洋における不慮の衝突を防止するだけでなく、中国の侵攻主義的海洋政策にブレーキをかけさせよう」という、まさに関与政策的理由によって、海軍上層部もペンタゴンも、中国海軍をRIMPACに招待したのであった。
しかし、RIMPAC-2014に参加した中国海軍は、多国籍海軍合同演習に正式参加した艦艇以外にも電子情報収集艦を演習海域に派遣して、アメリカ空母をはじめとする演習参加国艦艇の各種情報収集にあたらせた。まさに、RIMPACに参加した海軍仲間の信義を踏みにじったのである。
 続いてRIMPAC-2016に参加した中国海軍は、またもや問題を起こした。RIMPACでは、合同演習に参加している各国海軍が自国の艦艇でのレセプションに参加国代表たちを招待し合うことが慣例になっている。だが、中国海軍は中国軍艦でのレセプションに海上自衛隊代表を招待しようとしなかった。主催者であるアメリカ海軍がその情報をキャッチし、事前に中国側に厳重注意をしたため、結果的には海上自衛隊も招待されることとなった。この事件に対してアメリカ海軍は、海軍の風上にも置けない中国海軍の態度に激怒した。RIMPAC-2014に引き続きまたもや海軍の信義則を蔑ろにした中国海軍のRIMPAC参加は打ち切るべきであるとの声が、連邦議会からも上がった。
 しかしながらRIMPAC-2016閉幕後、オバマ政権そしてペンタゴンは再び中国海軍を次回のRIMPAC-2018へ招待した。アメリカ海軍内外の対中強硬派は「いい加減にしろ」と激怒したものの、トランプ政権が誕生したからといってオバマ政権が発した中国海軍への招待が取り消されることはなかった。
ところが、中国がRIMPACに参加し始めた2014年から、人工島の建設をはじめとする中国の露骨な南シナ海侵略は勢いを増す一方であった。アメリカ海軍の対中強硬派たちは「RIMPACに中国海軍を参加させることによって、南シナ海や東シナ海での中国海軍の傍若無人な行動は収まるどころか、ますます周辺諸国を圧迫し続けており、国際海洋法原則なども紙切れに書いた文字になりつつある」と主張していたが、まさにその批判が実証されることとなったのである。そして今年春になって、対中強硬派で側近を固めたトランプ大統領は、ようやく中国との対決姿勢を明確に打ち出すに至った。その結果、中国海軍による南シナ海での侵略的行動を理由として、中国海軍に対するRIMPACへの招待をついにキャンセルしたのである。
中国“除名”でRIMPACの注目度が低下
 アメリカ海軍などの対中強硬派は、RIMPACが「参加国にとって最大の仮想敵である中国海軍が参加しない」ノーマルな姿に立ち返ったことに胸をなで下ろしている。しかしながら、中国を“除名”したことで2つほど残念な事態が生じた。
 その1つは、国際社会のRIMPACへの関心が薄れたことだ。
 異分子であり(そもそも仮想敵が合同演習に加わるという異常事態なのであるから、中国海軍は異分子以外の何物でもなかった)かつトラブルメーカであった中国海軍が参加していないため、一般のメディアにとってRIMPAC-2018は「普通の多国籍海軍合同演習」にしかすぎなくなってしまった。そのため、「中国の排除」というニュース以降、RIMPAC-2018に対する注目度は極めて低調になった(もちろん、軍事演習であるRIMPACにとって、本来はメディアや一般の人々の注目度は関係ないのであるが)。
中国に見せたかった日本の地対艦ミサイルの威力
 2つ目は、日本の強力な地対艦ミサイルの実力を中国海軍に見せつけることができなくなったことである。
RIMPACは多国籍海軍の合同演習としてスタートしたが、参加国や演習内容の拡大につれて、海兵隊や海軍陸戦隊をはじめとする水陸両用作戦に関与する陸上部隊も組み込まれるようになった。これまで海上自衛隊だけを参加させてきた日本も、水陸両用作戦能力の構築に踏み切ったために、RIMPAC-2014からは陸上自衛隊を参加させるようになった。
そして、南シナ海や東シナ海で戦力増強著しい中国海軍と対峙するためには海軍力に加えて地対艦ミサイルや多連装長距離ロケット砲などの地上軍も投入しなければならないと考え始めたアメリカ大平洋軍司令部は、陸上自衛隊が運用しているメイド・イン・ジャパンの地対艦ミサイルシステムに目を付けた。そこで、RIMPAC-2018に陸上自衛隊が地対艦ミサイルを持ち込み「敵艦撃沈演習」を実施するよう、日本側に提案した。
 陸上自衛隊の12式地対艦ミサイルの命中精度の高さに、米軍側は舌を巻いている。米海軍や米海兵隊の対中強硬派は、RIMPACに参加する中国海軍の目の前で、そうした日本の超高性能な地対艦ミサイルが仮想敵艦(日本にとっての仮想敵艦は中国軍艦である)を海底に叩き込む演習を実施するのはこのうえもなく「痛快」であり、「中国側も日本の地対艦ミサイルの威力を思い知るであろう」と、大いに期待していた。しかし、中国海軍がRIMPAC-2018から排除されたことで、その期待は泡と消えた。

 日本にとっても、メイド・イン・ジャパンの地対艦ミサイルの威力を直接中国側に見せつけられなかったことは残念至極であった。高精度の地対艦ミサイルシステムを九州から与那国島までずらりと並べることで、中国海軍が東シナ海から西太平洋へは自由に抜け出ることができなくなるという警告を突きつけることができる(拙著『トランプと自衛隊の対中軍事戦略』講談社新書、参照)。だが、残念ながらその機会が失われてしまったからである。
陸上自衛隊・12式地対艦ミサイル

RIMPAC2018 12式対艦ミサイル発射映像

〈管理人より〉我が国が誇る陸自の12式対艦ミサイルについては、人民解放軍にとっては、「脅威」となる兵装であるがゆえに当然データを収集し、兵装としての効果について分析していることでしょう。そうした我が国防衛の切り札となる兵装について、わざわざ「仮想敵国」にみせてやる必要はないでしょう。むしろ非公式に把握されているであろうことが予想される分、「秘匿」しておくべきかと思います。詳しくはみせたくないしろものです。

【「過熱化」する米中サイバー戦争
アメリカも共産中国のシステムインフラや機密文書にハッキングしているから、むこうからハッキングされるとわかる、ということもあるんでしょう。
米軍無人機「リーパー」の文書、闇サイト販売 サイバー攻撃で窃取
 米軍の無人攻撃機の訓練に関する手順書などがサイバー攻撃で窃取され、闇サイトで販売されていたことが20187月11日、米情報分析会社の調査で分かった。無人機に関する最新技術などが悪用される可能性があるという。米軍も調査している。
 情報分析会社「レコーデッド・フューチャー」によると、盗まれたのは米軍のMQ9無人機リーパーの手順書や無人機の運用に関わる要員のリストなどで、先月に闇サイトで売り出されていた。
 手順書などはリーパーが配備されている米西部ネバダ州の空軍基地に所属する米兵のコンピューターから盗まれたとみられ、同社は真正の米空軍の文書であることを確認したという。脆弱性のあるネットワーク機器を通じてデータ窃取されたとみられる。
 米軍の機密窃取が最近相次いで明らかになっており、米海軍が導入を目指す対艦ミサイルに関する機密を中国政府のハッカーが窃取したと報じられていた。(ワシントン 共同)
【こちらもさらに過熱化!?米中経済戦争】
米中の国家戦略の狭間で、双方の生産農家や関連事業者は泣きたい気持ちでしょうね。いや悲鳴をあげているかも・・・。
米中関税戦争、ハイテクをめぐる覇権争いも

岡崎研究所
2018615日、トランプ政権は、中国からの輸入品 1,102 品目、500億ドル相当に対して、25%の制裁関税を課すと発表した。まず 76日に340 億ドル分に関税を課し、残りの160億ドル分については、後に関税を課すとしている。 
注目されるのは、4月に発表された原案と比べて、ハイテク関連品を重視したものとなっていることである。原案からテレビなどの消費者向け汎用品などを削除し、その代わりに、光ファイバー、計測機器、電子部品の製造装置などハイテク産業関連品目が追加された。 
 これは、「中国製造2025年」(「メイド・イン・チャイナ 2025」)を念頭に置いてのことと報じられている。 
 「中国製造2025年」は、中国政府が2015 年に発表した産業高度化に向けた長期戦略である。低コストで大量生産する現在の「製造大国」から、2025年に「製造強国」、建国百周年の 2049年に「世界トップ級の製造強国」を目指すとしている。トランプ政権は、「中国製造2025年」を、ハイテク分野で米国に追い付き追い越そうとしている戦略とみなしている。USTRのライトハイザー代表は、そのために中国政府がハイテク企業に補助金を出したり、外国企業から先端技術を奪おうとしたりしているのは問題である、と批判した。 
 615日に米国が追加した制裁関税対象品目は、中国が「中国製造2025年」で重点投資する分野の産業関連である。 
 このように、トランプ政権の対中制裁関税付与は、当初の貿易赤字削減から、ハイテク分野での米中の覇権争いの様相を呈してきている。 
 トランプ政権は「中国製造2025年」自体を批判しているが、産業政策それ自体は批判されるべきものではない。欧州諸国も日本も実施してきた。問題は、その手段として、巨額の補助金を交付したり、知的所有権を侵害したり、中国に進出した外国企業に技術移転を強要したりすることである。これらの不正な手段は批判されるべきである。 
 実際、この中国の不正なやり方に関しては、日本や欧州諸国も認識を共有している。73日付の当コラムでも、「日米欧三極が表明した中国への懸念」と題して取り上げた。
 しかしながら、中国への対抗措置として、関税を使うのは、報復を招くことも含み賢明なこととは思えない。理想的には、中国の不正手段によるハイテク産業育成について、共通の利害を持つ欧州、日本やカナダなどの諸国と米国が協力して、中国に働きかけるのが望ましいだろう。もちろん、日米欧三極通商大臣会合等の試みはあるが、トランプ政権は、貿易問題となると、協力どころか、鉄鋼・アルミニウムに対する関税付与などで同盟諸国とも対立している。 
 いずれにしても、米中の関税戦争は、貿易赤字問題に加えて、ハイテクをめぐる米中の覇権争いの要素が加わり、妥協は容易ではない。米中両国とも関税戦争の弊害は理解していても、当分の間は、話し合いによる落としどころの探り合いをしながらも、貿易戦争の回避は難しいだろう。

ハイテクをめぐる米中の確執

岡崎研究所

2018731日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/13477

 トランプ政権は、中国の米国からの技術取得に焦点を当て、中国が米国の知的財産権を不当に侵害していたとして、通商法301条に基づき、中国のハイテク関連商品を含む対米輸出品に報復関税を課するとともに、中国の米ハイテク企業への投資規制のみならず、米国の対中技術輸出の規制も図ろうとしている。 

最近の代表例は、香港に本社を置くBroadcom社によるQualcomm社買収の差し止めである。Qualcomm社は、スマートフォン向けプロセッサーの世界最大の米半導体メーカーであり、トランプ政権はQualcomm社が中国の手にわたることに危機感を抱き、財務省傘下の対米外国投資委員会が、安全保障上問題であるとして買収を差し止めたものである。 
 中国の最近の技術革新の進展は著しいが、ハイテク産業の振興には依然として外国、特に米国の技術を必要としている。技術革新の推進は、先進工業国に追いつこうとした日本、韓国、台湾も積極的に行ったが、これら諸国がある段階から開放経済の下で、民間主導で推進したのに対し、中国はあくまで国家主導で行おうとしているのが特徴である。 
 米国は、中国のハイテク産業の推進を米国に対する挑戦と受け止め、危機感を抱いているが、現状では中国のハイテク関連対米投資は、2017年で、Tencent社によるUberへの80億ドルの投資を含め、130億ドルに過ぎなかった。 
 また、米国の対中技術輸出も、2017年で300億ドルにとどまった。米国の対中貿易の総額が 7000億ドルを超えることに照らせば、たいした額ではない。 
 また、中国による米国技術の取得がすべて不正な手段で行われているわけでもない。 
 しかし、今後ハイテクを巡る米中の確執は高まることが予想される。
 焦点の一つは、5Gである。5Gは次世代のワイヤレスの基準で、今後のテレコム分野の動向を左右する基幹技術と見られており、中国は「中国製造2025」で最重要分野の一つと位置づけている。 
 米関連団体の報告によれば、中国で大手スマートフォンメーカーの華為技術(ファーウェイ)が 5G の研究開発を積極的に進めていること、政府が支援していることから、現時点では5Gで中国がわずかではあるが米国をリードしているとのことである。トランプ政権が危機感を抱くのも無理はない。 
 Qualcomm社の買収差し止めも、Qualcomm社が5Gの研究開発に巨額の支出をしてきたことが、一つの理由と考えられている。 
 このような状況を「技術保護主義」というのは行き過ぎの感じがするが(注:628日付ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したモルガン・スタンレー社グローバル戦略部長のルシール・シャーマ氏の言葉、)ハイテクを巡る米中の確執が今後も続き、あるいは拡大することは十分考えられる。 
 技術の戦いは安全保障に関わってくる。日本としては米中の技術の戦いは他人事ではない。日本も、米国同様、自国の先端技術を保護する必要があるだろう。日本の技術が中国に取得されたり、先端技術の企業が中国に買収されたりしたら、それは日本の経済発展にかかわるばかりではなく、日本の安全保障にもかかわって来る。米国の議会は、これらのことに、行政府以上に厳しい態度をとることもある。日本の国会は、過去に、議員立法で科学技術基本法を成立させたが、今後、「技術立国の日本」を守り、維持、発展させることを、より真剣に議論する必要があろう。

 


 【進む宇宙空間の軍事利用・宇宙軍を再編強化したい?アメリカ】

「宇宙軍」を創設したいトランプ

岡崎研究所

2018618日、トランプ米大統領は、「米国を守るには宇宙で優越しなければならない」として、国防総省に対し、米軍第6の組織(陸海空、海兵隊、沿岸警備隊に続く)となる「宇宙軍」創設に必要なプロセスを直ちに開始するよう指示した。トランプが「宇宙軍」の創設について言及したのは今年3月、5月に続いて、今回で3回目となる。
現在、米国では、宇宙における軍事関連活動は、空軍が予算関連を所掌し、統合軍レベルでは戦略軍が運用を担当している。冷戦期には、宇宙は主にソ連の核・ミサイル活動の監視や早期警戒、米国の核ミサイルの指揮統制・ターゲティングなど、主に戦略レベルの運用を主としてきた。冷戦後、宇宙は、GPSを用いた精密誘導攻撃や軍種横断の統合作戦など、戦術レベルの行動においても欠かせない領域となってきている。
 宇宙の戦略的・戦術的重要性については中国やロシアがよく理解している。両国は、米国の宇宙における優位を切り崩せれば、米国の戦略・戦術上の優位を覆すことが可能であるという観点から、対宇宙能力に力を注いでいる。中国は制空権の宇宙版ともいうべき「制天権」の概念を掲げ、2007年には衛星破壊実験を実施し、2015年には宇宙の軍事利用やサイバー空間での作戦を行う戦略支援部隊を発足させるなどしている。ロシアも航空宇宙軍を創設し、軍事衛星の打ち上げ、ミサイル防衛などを担っている。
 一方、宇宙空間の利用者が増えたことで、衛星軌道が混雑したり、デブリ(宇宙ゴミ)が増えるなどして、宇宙空間の安全な利用を目的とした恒常的な宇宙状況監視(space situational awareness:SSA)の重要性が指摘されている。これらを実施するには宇宙に配備するセンサー衛星の数を増やしたり、それらを支える地上インフラに投資することが必要になる。また、宇宙配備センサーはミサイル防衛にも有効となる。
 しかし、宇宙活動を所掌する空軍は、戦闘機や爆撃機などの正面装備の開発取得を重視しており、必ずしも宇宙分野に優先的な投資配分が行われていない。そうした事情に鑑み、空軍から宇宙機能を独立させて、予算や取得、運用にかかる権限の自律性を高めるべし、という議論が出てくる。これは決して不思議なことではない。
 他方、「宇宙軍」独立反対論者の主な主張は、既に空軍内で事実上の宇宙軍機能はある、陸海空の統合作戦でも大変なのに「宇宙軍」を増やすと統合化がより難しくなり権限争いになる、独立させても軍内部の指揮権限を整理するだけなので大幅な予算増は望めない、といった点が挙げられる。マティス国防長官をはじめ、国防総省の上層部は慎重な意見であった。
 2018会計年度においては、下院が、空軍内部の組織として「宇宙部隊」を組織すべしという条項を盛り込んだ国防授権法案を通したのに対し、上院では「宇宙部隊」を独立させるべきではないという法案を通した。両院調整段階では独立は成立せず、今年中に国防総省が「宇宙軍」独立のための研究とロードマップの策定をするということで妥協した経緯がある。
 こうした状況にトランプが業を煮やして今回の指示発表ということになったようである。トランプの発言は、研究とロードマップ作製の作業をより加速させることになろう。しかし、マティス国防長官は、「宇宙軍」の創設について、法制化や綿密な計画が必要で時間と労力がかかるとしている。宇宙の戦略的・戦術的重要性、限られたリソースなどを総合的に勘案して、ベストの解を導きだすには慎重に取り組む必要があると思われる。ただ、癇癪持ちのトランプが、米軍の宇宙への取り組みを加速させることになるのか、かえって混乱させるのか、不安な面がある。
 なお、日本の宇宙について考察すると、民生利用者が大きな権限を持っており、安全保障面での取り組みは依然として小さい。自衛隊は今年からようやく、シュリーバー演習という米戦略軍主催の多国間机上演習に公式参加できるようになったが、米側には「日本側には宇宙の軍事活動についてきちんと議論できる人が少なすぎる」という不満があるという。米国の「宇宙軍」創設問題と直接関係があるわけではないが、これを良い機会に、日本でも宇宙の安全保障における利用に関する省庁間協力を加速させ、防衛省に予算と人材をしっかり手当てすることが求められているのではないだろうか。
トランプ政権・宇宙戦争プログラム発動!?

〈管理人より〉アメリカは絶対に認めないでしょうが、いわゆる地球製UFOといわれるTR-3Bアストラに代表される異星人と共同開発?したといわれる兵装が、本当にアメリカのものであるとすると。アメリカは宇宙戦略で優位にたつことに対してエンドレスな予算配分をしているのかもしれません。インテリジェンスに関わるところ、監視、偵察についての宇宙戦略はアメリカの独断場でしょうね。