FONOPに意味なし?
南シナ海で中国の勝利が濃厚
何度繰り返しても、中国の領有権主張は覆らない
北村淳
2018.3.29(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52682
10回目のFONOPを実施した米海軍駆逐艦「マスティン」(写真:米海軍)
2018年3月23日、アメリカ海軍イージスBMD駆逐艦マスティンが南シナ海南沙諸島の中国人工島周辺海域で「公海航行自由原則維持のための作戦(FONOP)」を実施した。トランプ政権下で6回目の南シナ海でのFONOPであり、オバマ政権下が2015年10月から開始して以降10回目となった。
この2年半の間にFONOPは断続的に実施されている。だが、中国による南沙諸島の7つの人工島ならびに軍事施設を含む各種施設の建設は完成に近づき、人工島を中心とする軍事拠点化も着実に強化されているのが現状だ。
中国は強く抗議
今回、アメリカ海軍マスティンがFONOPを実施したのは、南沙諸島中国人工島の1つであるミスチーフ礁の周辺海域である。海軍情報筋によると、マスティンはミスチーフ礁沿岸から12海里内の海域を通航したという。
ミスチーフ礁など7つの中国人工島を含む南沙諸島は中国固有の領土であるとの立場を取っている中国当局は、米側のFONOPに対して「アメリカが中国当局の許可を得ずに南沙諸島周辺海域に繰り返して軍艦を派遣するのは、中国の主権と安全保障を著しく傷つける行為であり、国際関係の基本的決まりをも踏みにじっているだけでなく、南シナ海の平和と安定を損なうものである」と、強い抗議の声明を発している。
そして、中国海軍はミサイルフリゲート「黄山」と対潜コルベット「六盤水」を派遣して米海軍駆逐艦「マスティン」を追い払ったと主張すると同時に、「アメリカ海軍による違法なFONOPは、単なる軍事的挑発行動にすぎず、中国によるさらなる主権と安全保障を防衛するための軍備を充実させ、南シナ海での防衛能力を強化させるという結果をもたらす」と警告している。
中国海軍フリゲート「黄山」(写真:海上自衛隊)
米国はなぜFONOPを実施するのか
中国の法律である「中国領海法」などの法令によると、「南沙諸島周辺海域や西沙諸島周辺海域をはじめとする中国領海内を外国船舶が通航するには、事前に中国当局に通告しなければならない」と規定されている。中国側はそれを基に、アメリカの南沙諸島や西沙諸島でのFONOPを「違法」と非難しているのである。
これに対してアメリカ当局は、南沙諸島や西沙諸島、それにスカボロー礁などの南シナ海の島嶼環礁の全部または一部に関する領有権を巡っては、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、そして台湾の間で係争中であり、中国による領有権(それら島嶼環礁全部の)の主張を認めないとしている。したがって、アメリカにとっては、南シナ海のそれら島嶼環礁周辺海域はあくまで公海であり、中国国内法の規定がおよぶ道理はないのである。
アメリカとしてこのような立場を明示し、中国による一方的な「南シナ海の大半の海域は中国の領海である」という主張と「中国の領海内を通航するに当たっては事前に通告せよ」という要求を断固として認めないことを行動で示そうというのが、南シナ海でのFONOPということになる。
「公海」ならFONOPを実施しても意味は無い?
ただし国際海洋法によると、軍艦が他国の領海内を沿岸国に軍事的脅威を与えるような行為(ミサイルの照準を合わせたり、機関砲の砲門を沿岸に向けたり、艦載機によって偵察飛行したり、といった軍事行動)をせずに、ただ単に他国の領海内を通航するだけの「無害通航」は認められている。
したがって、南シナ海でFONOPを実施する米海軍艦艇が「無害通航」の範囲内で中国人工島沿岸12海里内海域を通航した場合には、人工島をはじめとする南シナ海に浮かぶ島嶼環礁が中国領であろうがあるまいが、領有権紛争とは無関係にFONOPを実施する艦艇は国際法上は全く合法ということになる。
ということは、FONOP実施艦艇が「無害通航」を繰り返しているかぎり、中国の領有権の主張に関してはFONOPは直接には何の影響も与えないことになる。
これまでの10回の南シナ海FONOPでは米海軍駆逐艦は、「無害通航」の範囲内で12海里内海域を速やかに通過しただけである。もっとも、アメリカの伝統的外交方針として、第三国間の領有権紛争には関与しないという原則があるため、FONOPを実施しても領有権紛争には関与しないというのが米政府の基本姿勢だ。
とはいうものの、アメリカ側が事前通告なしに人工島などの12海里内海域に繰り返し接近して中国側に警告しているのは、「中国の領海と認めたうえで、事前通告を求めている中国国内法が国際海洋法に照らして違法だから」ではなく「中国国内法の規定があろうがなかろうが、そもそも中国の領海と認めていない」からである。言い換えると「公海上を通航するのに中国当局に事前通告する必要などあり得ないし、中国側から非難される言われもない」から、中国が生み出した人工島の12海里内海域に軍艦を派遣しているのである。ということは、公海上であるならば、「無害通航」などは必要なく、軍事演習を実施しようが、軍事的威嚇とみなされるような活動をしようが、誰に遠慮をすることもないということにもなる。
そこで、少なからぬ米海軍関係者などの間から、南シナ海で米海軍艦艇を中国当局が中国領と主張している人工島や島嶼環礁に接近させても、「無害通航」の範囲内で通過しているかぎり、FONOPなど実施してもしなくても意味が無い、という批判が生ずるのも無理からぬところである。
あと数年で勝敗は決する
実際のところ、「意味が無い」どころか、米海軍が「無害通航」とみなせる範囲内でのFONOPを実施すればするほど、中国側は「アメリカによる軍事的挑発を受けた」ことを口実として、ますます大っぴらに、そして加速度的に、南沙諸島人工島や西沙諸島の軍備を増強しているというのが現実だ。
中国がそれらの島嶼環礁を要塞化すればするほど、米海軍が南シナ海でのFONOPにおいて軍事的威嚇行動を実施することなどますますできなくなり、「無害通航」に遵い12海里以内海域をできるだけ直線的にかつ速やかに通航するのが関の山といった状況になってしまう。
このような悪循環を断ち切るには、軍事衝突覚悟で、「無害通航」とはみなせないFONOPを実施するしかないが、トランプ政権には、中国との経済戦争の危険を冒す覚悟はあっても、中国との軍事衝突の危険を冒す覚悟はないであろう。したがって、あと数年後も経たないうちに南シナ海での軍事的優勢は完全に中国のものとなることは避けられない趨勢である。
関連動画
〈管理人より〉アメリカのFON作戦は軍事作戦ですが、これはアメリカが共産中国にできる精一杯の「抗議行動」ともいえるように思います。見方を変えれば南シナ海の「自由航行権」がアメリカにとっては、最低限確保されればいい、ともみえてきます。
直接の軍事攻撃はアメリカはとれないでしょう。共産中国とは、局地的な武力衝突も避けたい、というのがアメリカの本音のはずです。それくらい米中の経済相互依存関係は根が深い、ということです。お互いが必要としあっている国家同士、益のない武力戦争などおこって、お互いの収益減少につながるようなことはしないはずです。そう考えると現代は、経済の相互依存が武力戦争の抑止になっていると気づかされます。
【我が国が誇るヘリ専用空母いずもは今後どうあるべきか?】
ヘリ搭載型護衛艦いずもは、その規模から「ヘリ搭載空母」と呼んでも全く違和感はない存在感があります。しかしその竣工当時から、このいずもにF-35Bのような垂直離着陸型の戦闘機を搭載できるように改装する話はつきません。我が国の海上自衛隊は、旧ソ連、今やロシアや共産中国の原潜を攻撃する能力をもち、哨戒する力が備わっています。原潜なみの攻撃力をもつといわれる海自の潜水艦も含めてすべての艦艇が「対潜戦」を想定して建造されているのです。そこに時代の流れ的な限界を感じて、固定翼戦闘機を備えた基幹空母とするのか、機動部隊構想はアメリカ第七艦隊にまかせて、あくまで対潜戦想定の海軍で増強を継続していくのか、国民の議論はつきることはないでしょう。
「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由
防衛予算の8%を費やして中国を喜ばせるだけ?
2018.3.28(水)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52667
2017年末から、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」級を、F-35B戦闘機を搭載可能な「空母」として改修する話が相次いで報道されている。2018年3月2日の参議院予算委員会では、小野寺五典防衛大臣が「いずも」でF-35Bの運用が可能かどうかを調査していることを明らかにした。
しかし単刀直入に言って、いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策である。以下ではその4つの理由について論じよう。
(1)高額な改修費がかかる
第1の問題点は、高額な改修費である。この点に関して、「Defense News」誌で日本関連記事を数多く執筆していたカイル・ミゾカミ氏が、技術誌「Popular Mechanics」で具体的な論考を行っている。彼の主張は以下のとおりである。
いずも空母化を日本政府が決断した場合、(1)F-35Bの離着陸時の排気ガスの高熱に耐えうるための甲板の耐熱コーティング、(2)艦首の邪魔な近接防御火器システムの撤去、(3)F-35特有の部品管理システムALISの艦船版の組み込み、(4)1隻につき艦載機たるF-35B12機の導入などが必要になる。これらの改造費として、船舶の改修費が5億ドル、F-35Bが14億ドルかかる。
要するに「いずも」「かが」を空母化すれば、約38億ドル(約4000億円)の予算がかかるのである。これは日本の年間防衛費の7.7%に匹敵するコストである。装備品の調達コストで見れば14.6%を占めることになる。しかも、補修パーツ対空ミサイル・誘導爆弾・航空燃料等の積載増加により、艦内のスペースが食われることになり格納能力も低下すると指摘している。
いずもの空母化ですらこれなのだから、一説に言われている「おおすみ」級の後継艦でより本格的な「空母」(実態は強襲揚陸艦に過ぎないが)を建造すれば、コストは柔軟性と余裕に乏しい防衛費をさらに圧迫するだろう
(2)政治的効果が見込めない
第2の問題点は、その改修費に見合う政治的効果が見込めないことである。
政治的効果を発揮できないことは、隣国の中国の「遼寧」を見れば分かる。「遼寧」は24機の戦闘機を中心に艦載しているが、これに政治的な影響力があるだろうか。先日も台湾海峡を航行したが、何か具体的な影響をもたらしたのだろうか。我々は「遼寧」を脅威に感じているだろうか? 決してそんなことはない。
なぜか。それは第1に「遼寧」が米空母に比べるとあまりに小型であり、なおかつ中国の空母が「現在」は1隻しか存在しないからである。そして第2に、トータルの武力が劣るからだ。米空母が大きな政治的効果を発揮するのは、単体での巨大さや艦載機数や空母の数の多さもさりながら、その後の米軍の大規模な武力行使の先駆けとなる存在だからだ。だが、中国にはそのいずれもない。タイの空母「チャクリ・ナルエベト」、インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」についても同様のことが言える。
日本も同様だ。「いずも」を空母化したところで、F-35Bとはいえせいぜい10機前後と米軍の強襲揚陸艦(ワスプ級は6~20機搭載可能)以下の艦載機でしかない。しかも「いずも」「かが」のたった2隻である。「おおすみ」級の後継艦を入れても4隻では、常時1~2隻の展開がやっとだろう。強襲揚陸艦の1隻や2隻に何の政治的効果があるのか。なお、米軍の強襲揚陸艦は世界中を移動しているが、その1隻の動向が注目されることはない。しかも、「いずも」空母化で海自のその他の戦力は予算・人員を吸収され弱体化するので抑止・対処力も低下する。
また、ネット上の一部では、日本の空母が東南アジア諸国との訓練や協力を図れば大きな政治的効果があるという声も聞かれるが、これについても、強襲揚陸艦でしかない“自称”空母である必然はない。政治的影響力を拡大させようとするならば、装備移転や能力構築の方がはるかに効果・効率的(経済成長も見込める)だろう。
その点で日本は中国、韓国の後塵を拝している。中国はタイ、ミャンマー、バングラデッシュなどに兵器を輸出している他、タイとの間では無人機を含む軍需製品の現地生産まで調整が進んでいる。韓国も、トラックや潜水艦をインドネシアに、インドにはK-9自走砲を、フィリピンにはFA-50戦闘機を輸出している。こうした武器輸出や能力構築は、維持整備や教育訓練もセットになっている。そのため、輸出先の軍事組織が輸出元のシステムで何十年も稼働し、教育担当の軍人を配置できるメリットがあるのである。
中国や韓国は既にそうした状況を作り上げつつあるのに、我が国は無縁である。現在はパプアニューギニアの軍楽隊支援、法律等の勉強会の開催、TC-90供与など、きわめてシャビーな活動しか行っていない。しかも、外務省と海保が巡視船をマレー、ベトナム、フィリピン等にODA等により供与していることを考えれば防衛省自衛隊の装備移転の遅れは際立っている。
こうした状況を考えれば、強襲揚陸艦が東南アジア諸国に短期間寄港するより、武器輸出や能力構築を進めた方が、はるかに持続的で高い影響を誇ることができるのは明白である。しかも、日本の経済的な利益にもつながる。つまり、「いずも」「かが」に約4200億円を充てるよりも、その予算を今後10年間の防衛装備品の移転や供与支援に充てる方がよほど効果的だろう。
(3)軍事的効果が乏しい
第3の問題点は、軍事的効果が乏しいということだ。
まず、空母化した「いずも」は戦局が圧倒的に有利でなければ投入できない。例えばフォークランド紛争においてアルゼンチン軍は空母を前線に投入できなかった。あまりにも虎の子過ぎる戦力は活用できないのだ。もし日中紛争時にいずもが撃沈されれば国内外の世論がどうなるか想像してみほしい。もしくは温存しすぎた挙句、戦局が決定的に不利となり、その無策への批判を恐れて戦艦「大和」のように沖縄にでも特攻させるのがオチだろう。
費用対効果の悪さも問題である。ここで比較対象となるのは中国のA2/AD戦力だ。中国は米軍の地域における戦力と来援戦力を叩き潰すための戦力を重点的に整備している。内容は、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー攻撃、ゲリラコマンド攻撃、潜水艦戦力等の強化である。
中国の対艦弾道ミサイルDF-21は、1ユニット6~12億円。それに対していずもは1隻1200億円であり、空母化すれば3300億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を225~550発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。たしかにDF-21対艦弾道ミサイルの命中率には議論があるが、大量の発射でカバーできるし、母港に停泊中であれば命中率は問題ではなくなる。そもそも自衛隊はドローン攻撃に対して110番通報しかできない現状では、「いずも」もドローンで一部機能を無力化されかねない。甲板上のF-35Bを破壊されれば目も当てられないことになる。
他方、南西諸島の島々は、下地島をはじめ滑走路(弾道ミサイルを吸引するおとりとしても)として活用できる余地がある。また、民間空港の有事転用の訓練や装備は空自にはほとんどなく、これも改善の余地がある。そして、米軍や自衛隊の保有する空中給油機を使えば、海上基地がなくとも展開可能である。KC-767空中給油機(1機223億円)を増勢する方が効果的であろう。
(4)海自をさらに疲弊させる
第4の問題は海上自衛隊の疲弊を加速化させかねないことだ。
海自ではダメージコントロールを中心に省力化が進まないのに、艦艇を大型化し、艦艇を増勢し、様々な任務を増やした結果、充足率は危機的な状況である。しかも、予算要求上の都合から艦艇不適の人間も艦艇の充足率に含めてしまっており、見かけ上の充足率より実は低くなっている。そして、それはさらなるブラック化、充足率の悪化を招くという悪循環に陥っているのである。そのため近年の一部艦艇では、地方総監部が行うべき事務業務を艦艇でも行うという中世のような勤務が行われている。
このような現状で空母化や空母の導入を行い、海外への展開を増加させるというのは、自衛隊を破滅に追い込むだけである。
「個別の装備品」議論から脱却せよ
そもそも、個別の装備品の導入が最初に議論されるというところに、日本の安全保障論議の欠陥がある。例えば、治水行政を語る際に「このブルドーザーやダムを導入すれば良い」というような議論があるだろうか。医療行政を語る際に「このレントゲン機器を導入すべきだ」といような議論があるだろうか。企業の経営戦略を論じる際に「この工作機械を導入するべきだ」で始まる議論があるだろうか。どの分野の政策議論でも、個別の装備の導入が議論の入口になることはない。ところが防衛分野だけがその種のいきなり手段から議論に入って、目的や目標を後付けで語るか無視するような議論を繰り広げている。要するに空母導入の政治的・軍事的意味を単独で云々すること自体が児戯に等しいのだ。
諸外国では、現在の戦略環境や作戦環境を議論した上で、戦略と作戦構想を設計し、その上でいかなるドクトリンを採用し、それに見合った装備は何かという議論をしている。だが、我が国だけはなぜか個別の議論が必要か否かが最初に出てきてしまう。だが、それは日本の戦略・作戦環境に最適な戦略と作戦構想とその延長のドクトリンを整理・議論した上で行われてしかるべきものである。
不毛ないずも空母化論争は打ち止めにして、そろそろ、兵器評論や論争ではなく、戦争指導も含めた戦争全般に関する議論こそ始めるべきだろう。兵器評論はその後だ。
〈管理人より〉部谷氏に同感です。兵装に一喜一憂するよりも我が国独自の「国防戦争ドクトリン」こそまず確立すべきと考えます。また仮想敵国の分析と評価を的確に行うためにシギント、オシントを効果的に収集する体制が不可欠でしょう。
【アメリカは軍事攻撃に慎重だが、サイバ
ー攻撃に対しては姿勢は厳しい!?】
イランが世界の大学にサイバー攻撃
米、9人起訴 知的財産窃取→革命防衛隊が利用か
2018.3.24 00:45 http://www.sankei.com/economy/news/180324/ecn1803240004-n1.html
【ワシントン=加納宏幸】米司法省は2018年3月23日、米国や日本を含む世界22カ国の大学約320校や米国の政府機関や企業などにサイバー攻撃を仕掛け、知的財産を盗んだとしてイランの革命防衛隊と関係がある「マブナ研究所」に勤めるイラン人9人を起訴したと発表した。被害は34億ドル(約3575億円)に上るとされ、米メディアによると、国家が関わるハッキングで起訴された案件としては最大規模だという。
大学教員のメール・アカウントに侵入して学術情報を入手するなどの手法で盗まれたデータが、イラン政府や革命防衛隊によって使われたという。ローゼンスタイン司法副長官は声明で、大学関係者にコンピューター・ネットワークの安全確保を呼びかけた。
これに関連し、米財務省はマブナ研究所と起訴されたイラン人ら10人を制裁対象に加えた。同省によると大学約320校のうち144校は米国で、日本のほか中国、韓国、英国、イスラエルなどの大学も侵入を受けたという。
サイバー攻撃に制裁 イランが学術データ盗む
毎日新聞2018年3月24日 大阪夕刊https://mainichi.jp/articles/20180324/ddf/007/030/026000c
【ワシントン会川晴之】米財務省は2018年3月23日、イランに対する追加制裁を発表した。米国をはじめ日本を含む21カ国の大学にサイバー攻撃を仕掛け、大量の学術データを盗み取った企業1社と10個人を対象に指定した。これを受けて米司法省は同日、この企業と9個人を訴追した。
財務省によると、この企業は2013年ごろテヘラン市内で設立された「マブナ・インスティテュート」。少なくとも米国の144大学や行政機関に加え、日本や韓国、英国、スイスなど21カ国の176大学などにサイバー攻撃を仕掛けた。司法省によると、約8000人の教員から、31テラバイトに達するデータを盗み取った。攻撃は13年から始まり、17年12月まで続いた。
トランプ米大統領は、欧米中露など主要6カ国とイランが15年に結んだ核合意を批判し、5月にも破棄することを目指している。追加制裁も、弾道ミサイル打ち上げなどを理由に、2017年2月以後、相次いで実施している。
米、イラン人9人を起訴--22カ国の大学を狙ったサイバー攻撃で
Alfred Ng (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 吉武稔夫 (ガリレオ)
2018年03月26日 11時04分https://japan.zdnet.com/article/35116658/
米司法省は米国時間2018年3月23日、米国内外の大学数百校にサイバー攻撃を仕掛けたとして9人のイラン人を起訴したと発表した。
起訴された9人のイラン人
提供:FBI
提供:FBI
マブナ研究所(Mabna
Institute)と特定されているこの集団は、22カ国の大学320校を攻撃したとされている。そのうち144校は米国の大学だ。Rod Rosenstein司法副長官は記者会見で、ハッカーらは大学から研究データを盗み出し、利益を得るためにイランで売却していたと述べた。
「学術機関は、外国のサイバー犯罪者の主な標的になっている。大学がアイデアの行き交う場や調査研究の原動力として繁栄できるのは、研究データが窃盗から守られている場合だけだ」(Rosenstein氏)
さらに23日、米財務省はこれらイランのハッカー容疑者らのほか、10人目としてBehzad Mesri容疑者も対象に加えて制裁を発表した。Mesri容疑者もイラン人で、2017年夏のHBOに対するサイバー攻撃とテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のエピソード流出に関連して起訴されている。
今回の起訴は、司法省が米国に対するサイバー攻撃の取り締まりを続ける中で行われた。
司法省によると、マブナ研究所のハッカーらは、米連邦エネルギー規制委員会、米労働省、国連も標的にしていたという。司法省はまた、民間企業47社にも影響を与えたこれらの攻撃の多くがイラン政府の意を受けたものだと述べた。
Rosenstein氏によると、ハッカーらが盗み出して売却したとされるデータや知的財産に大学側が費やした金額は合計34億ドル(約3600億円)に達するという。ハッカー集団には約31.5テラバイト超のデータを大学から盗み出した容疑がかけられており、教授らを狙ってフィッシング攻撃を仕掛けていたと当局は述べている。
検察当局によると、起訴された9人はこの攻撃で8000以上の教授らの電子メールアカウントをハッキングしたという。この攻撃では、10万件以上のアカウントを標的にしていた。
ニューヨーク州南部地区のGeoffrey Berman検察官は今回のケースを、「司法省が起訴した中で最大級の国家ぐるみのハッキング攻撃の1つ」と呼んだ。
9人のハッカーは、Mesri容疑者とともに米連邦捜査局(FBI)の最重要指名手配犯リストに記載されることになった。Mesri容疑者は2017年11月から同リストに名を連ねている。(この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。)
【管理人より】社会インフラ、人的インフラを破壊し、殺戮する武力戦争よりも狙ったデータを窃取したり、ネットワークを破壊するサイバー攻撃が現代の主流の戦争といえるでしょう。もう前世紀以来の戦略爆撃論に端を発したような大量破壊、大量無差別殺戮による戦争形態は、相互経済関係が深化した現代国際社会ではありえない状態になってきているといえます。
サイバー攻撃については、名和先生のお話しが参考になります。
研究界サイバーセキュリティ
サイバーディフェンス研究所 名和利男先生
0 件のコメント:
コメントを投稿