2018年4月20日金曜日

米英仏によるシリア攻撃の実態 ~化学兵器は本当に使用されたのか?~

ミサイルを撃ち込まれたシリアは明日の日本の姿か

報復能力を持たない国は「やられっぱなし」
北村淳
シリア政権軍が制圧した首都ダマスカス近郊・東グータ地区のドゥーマ(2018416日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / LOUAI BESHARAAFPBB News

 アメリカ、イギリス、フランスによるシリアに対する軍事攻撃は、ミサイル戦時代である現在において、外敵の軍事攻撃に対する反撃能力を自前で持たないとまさに「やられっぱなし」になる、ということを如実に物語っている。
シリアへのミサイル攻撃の内容
 アメリカ側の発表では、長距離巡航ミサイルによる連精密射攻撃によって、攻撃目標であったシリアの3カ所の化学兵器関連施設を破壊したという。攻撃側の発射状況と攻撃目標への着弾状況を整理すると、次のとおりである。

シリア、地中海、紅海、ペルシャ湾の位置関係(Googleマップ)


【攻撃側の発射状況】
A:地中海からの攻撃
・アメリカ海軍のバージニア級攻撃型原子力潜水艦ジョン・ウォーナーが、トマホーク長距離巡航ミサイル6発を発射した。
・フランス海軍フリゲート・ラングドック が、SCALP長距離巡航ミサイル3発を発射した。


バージニア級攻撃原潜(写真:米海軍、資料写真)
B:紅海からの攻撃
・アメリカ海軍ミサイル巡洋艦モントレーが、トマホーク長距離巡航ミサイル30発を発射した。
・アメリカ海軍ミサイル駆逐艦ラブーンが、トマホーク長距離巡航ミサイル7発を発射した。
C:ペルシャ湾からの攻撃
・アメリカ海軍ミサイル駆逐艦ヒギンズがトマホーク23発を発射した。
D:シリア領空外の上空からの攻撃
・カタールから発進したアメリカ空軍B-1爆撃機2機(米海兵隊電子戦機の護衛付き)は2000ポンドJASSM-ER長距離巡航ミサイル(射程1000km以上)19発を発射した。
・ヨーロッパ(場所は未確認)から発進したイギリス空軍タイフーンとトーネード(イギリス空軍戦闘機の護衛付き)がストーム・シャドー2900ポンド長距離巡航ミサイル(射程500km以上)を8発発射した。
・ヨーロッパ(場所は未確認)から発進したフランス空軍ラファエル戦闘機(ミラージュ戦闘機の護衛付き)がSCALP巡航ミサイル9発を発射した。


ストーム・シャドーを搭載したイギリス空軍トーネード(写真:英国防衛省)
E:まとめ
・用いられたスタンドオフ(アウトレンジ:敵の反撃圏外からの攻撃)巡航ミサイル合計105
・アメリカ軍が発射したミサイル:85
・イギリス軍が発射したミサイル:8
・フランス軍が発射したミサイル:12
【攻撃目標への着弾状況】
1Barzah研究開発センター・・・壊滅
・米海軍艦艇から発射された57発のトマホークが着弾した。
・米空軍B-1爆撃機から発射された19発のJASSM-ERが着弾した。
2Him Shinshar化学兵器施設・・・破損
・米海軍艦艇から発射された9発のトマホークが着弾した。
・イギリス軍機が発射した8発のストーム・シャドー巡航ミサイルが着弾した。
・フランス海軍フリゲート・ラングドックが発射した3発のSCALP巡航ミサイルが着弾した。
・フランス軍機が発射した2発のSCALP巡航ミサイルが着弾した。
3Him Shinshar化学兵器貯蔵施設・・・破損
・フランス軍ラファエル戦闘機が発射した7発のSCALP巡航ミサイルが着弾した。
シリアの支援国、ロシアはどう動いたか
 今回のアメリカ、イギリス、フランス3カ国によるシリアに対する軍事攻撃を単純化すると以下のような構造となる。
・スタンドオフ攻撃能力を持った国=アメリカ、イギリス、フランス
・報復攻撃能力を持たない国=アサド政権のシリア
・報復攻撃能力を持つ支援国=ロシア
 上述したように、アメリカ海軍艦艇とフランス海軍フリゲートは、シリアからはるかに離れた地中海、紅海それにペルシア湾から長距離巡航ミサイルを発射した。同じく、米・英・仏空軍機はシリア領空から遠く離れた上空から長距離巡航ミサイルを発射した。
一方のシリア軍には、地中海の海中を潜航する米海軍潜水艦を探知し攻撃する能力は皆無である。地中海洋上のフランス海軍フリゲートを攻撃するだけの海軍力も航空戦力も長射程ミサイル戦力も存在しない。紅海やペルシア湾のアメリカ軍艦を攻撃する手段も持ち合わせていないし、シリア領空から数百キロメートルも遠方上空の敵航空機を攻撃するだけの航空戦力や対空ミサイルなどももちろん備わっていない。ただしシリア国内には、ロシア軍が高性能防空ミサイルシステム(S-400S-300)を持ち込んで配備している。しかしながら今回の攻撃では、シリア国内のロシア軍関連目標への被害が生じないように連精密射攻撃の目標が設定されたため、ロシア製高性能防空ミサイルシステムが作動することはなかった。
 もっとも、世界最高水準といわれているS-400防空システムが火を噴いた場合、それがきっかけとなってロシア軍とNATO軍との軍事衝突に発展する可能性も否定できないため、ロシア側は防空システムを作動させなかったとも考えられている。いずれにせよ、アサド政権を公然とサポートしているロシア軍は、迎撃することはしなかったし、攻撃に参加した艦艇や航空機に対して戦闘機や軍艦や長射程ミサイルを繰り出して報復攻撃を加える動きも見せなかった。
 シリアへのミサイル攻撃を受けて、ロシア政府は国連安保理の場で攻撃側3カ国を国連憲章違反を理由に非難する決議案を提出した。しかし、こうした外交的反撃を企てても、米・英・仏がいずれも拒否権も持つ安保理常任理事国であるため、可決する見込みはゼロである(実際に、非難決議案に賛成したのはロシア、中国、ボリビアの3カ国のみで、赤道ギニア、エチオピア、カザフスタン、ペルーの4カ国が棄権したものの、8カ国が反対して否決された)。
 要するに、ロシアや中国が主張するように、たとえアメリカ側の軍事攻撃が国連憲章に違反していたとしても、外敵に対する反撃や報復攻撃を実施する軍事力を自ら持っていないシリアは、軍事的には「やられっぱなし」ということになった。
 また、外交的にも、攻撃側の3カ国が国連安保理常任理事国であるため、やはり「やられっぱなし」という結果である。

日本もシリアの二の舞になりかねない
 今回の、米・英・仏対シリア、それにアサド政権を支援するロシア、という構造を、日本が近い将来に直面するかもしれない状況に当てはめてみると、次のようになるだろう。
・スタンドオフ攻撃能力を持った国=中華人民共和国
・報復攻撃能力を持たない国=日本
・報復攻撃能力を持つ同盟国=アメリカ
 中国人民解放軍は、中国本土地上から、中国本土上空から、中国沿岸海域の海上・海中・上空から、そして広大な西太平洋海中から、日本に対してスタンドオフ攻撃(アウトレンジ攻撃)を敢行するための長距離巡航ミサイルならびに弾道ミサイルを、どんなに少なく見積もっても1200発以上は保有している。
 万が一、中国共産党指導部が対日軍事攻撃を決断し、人民解放軍が800発の各種ミサイルを用いて日本の戦略目標(原子力発電所、火力発電所、石油コンビナートなど)に対するスタンドオフ攻撃を実施したとしよう。10カ所ほどの攻撃目標は灰燼に帰し、数多くの攻撃目標も破壊され機能停止に追い込まれてしまうであろう。もちろん、多大な人的被害も避けられない。そして、永らく続く内戦や中東での戦乱に直面し続けているシリアの人々やシリア政府と違って過去70年にわたって軍事攻撃を体験したことのない日本社会は、中国軍が放った数百発のミサイルが着弾した直後から大パニックに陥り、日本政府は機能停止しかねない。
 人民解放軍は、在日米軍施設に対する攻撃とみなされかねない方向へはミサイル攻撃は実施しない。よって、在日米軍による自衛のための自動的迎撃はなされないであろう。また、中国軍が発射した数百発のミサイルには核弾頭は搭載されていない。したがって、たとえ時のホワイトハウスが対中強硬姿勢を取っていたとしても、米中戦争を覚悟した上で、ひ弱な同盟国日本のために中国に対する報復攻撃を敢行する決断がなされる確率はゼロに近い。
 せいぜいアメリカ政府がなし得ることといえば、中国による対日軍事攻撃は国連憲章に違反しているとの理由で、国連安保理に対中非難決議案を提出することだけである。しかしながら、たとえ過半数の理事国が非難決議案に賛同しても、中国は国連安保理常任理事国であるため、拒否権を発動すれば決議案は葬り去られてしまう。軍事攻撃を受けた日本では、多くの社会的インフラが壊滅し、人的犠牲者も多数発生し、社会的PTSDにも陥ってしまい、それらから立ち直るためには国力を大きく弱体化せざるを得なくなる。そんな状況に追い込まれても、中国に対する反撃・報復能力を持っていない日本は、軍事的にも外交的にも「やられっぱなし」ということになる。いつまでも、敵地攻撃能力云々といったガラパゴス症候群的議論に明け暮れていて、またアメリカの軍事力に対する病理的盲従を続けていて、日本自らの報復攻撃能力を構築しないでいると、シリアと同じく「やられっぱなし」となってしまうことは避けられない。
【管理人より】「敵地攻撃能力」「反撃・報復能力」、独立国ならば等しく保持しているあたりまえの権利を「保持していない」ことは、国家の存続にとって致命的といえるでしょう。
我々の国は同盟国と一緒でなければ国家を守るための抑止的な反撃もできないんでしょうか?

【シリア攻撃で使用された攻撃兵器】

先制攻撃(第一撃)は艦船からの巡航ミサイル攻撃ですね。配信記事からみてみましょう。

米英仏がシリア攻撃 化学兵器施設にトマホーク、トランプ米大統領「邪悪で卑劣」
【ワシントン=加納宏幸、ロンドン=岡部伸】トランプ米大統領は13日夜(日本時間14日午前)、シリアのアサド政権が同国の首都ダマスカス近郊・東グータ地区で化学兵器を使用したと断定し、米軍に化学兵器関連施設への精密攻撃を命じたと発表した。英国、フランスとともに米東部時間午後9時から複数の施設に対する攻撃を実施した。化学兵器使用を理由にした同政権への攻撃は昨年4月に次ぎ2回目となる。
 ロイター通信は、攻撃には巡航ミサイル「トマホーク」が使われたと報じた。また、シリア人権監視団(英国)の話として、ダマスカスのシリア軍基地や科学研究施設が攻撃されたとしている。シリア軍は13発のミサイルを撃ち落としたと主張しているという。
ダンフォード米統合参謀本部議長は記者会見で、攻撃対象は化学兵器開発関連の研究施設や貯蔵施設とした。BBC放送などは英空軍の攻撃機トーネード4機がシリア中部ホムスの西約24キロの軍施設を巡航ミサイルで攻撃したと伝えた。英国防省は攻撃が「成功したとみられる」との暫定評価を明らかにした。
 トランプ氏は攻撃は化学兵器の生産、拡散、使用の抑止が目的で、「アサド政権が化学物質の使用を中止するまで対応を続ける」と述べた。マティス国防長官は攻撃は「1回限り」としたが、再使用があれば攻撃するとの認識を示した。
 また、トランプ氏は、シリアの行動を「邪悪で卑劣な行為」だと強く非難。「怪物による犯罪だ」とアサド大統領を批判した。アサド政権を支援するロシアも同政権の化学兵器使用に責任があると指摘した。
 英国のメイ首相は声明で、攻撃以外に「選択肢がなかった」と強調。攻撃はシリアの体制転換を目指すものではないとも説明した。フランスのマクロン大統領も、米英とともにシリアの化学兵器工場への攻撃を実施したと発表した。
 トランプ氏は化学兵器使用疑惑を受け、アサド政権やその後ろ盾のロシア、イランに「大きな代償」を払わせると警告し、9日午前の閣議で「48時間以内」に重大な決断をするとしていた。トランプ政権は昨年4月にも猛毒の神経剤サリンが使われたとして、化学兵器の保管場所とされたシリア中部の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃した。
 アサド政権は化学兵器使用を否定しているが、マティス米国防長官は13日夜の記者会見で、東グータでの攻撃について「塩素剤が使用されたと確信している。サリンの可能性も排除しない」とした。ホワイトハウスも、ヘリコプターから「たる爆弾」で塩素剤が投下され、サリン使用時にみられる症状も確認されたとする報告書を発表した。

「トマホーク」「ストームシャドー」「B1戦略爆撃機」「ラファール戦闘機」…米英仏、多様な兵器使用

シリアのアサド政権による化学兵器使用への報復として、米英仏3カ国が関連施設3カ所にミサイル100発以上を撃ち込んだ。約1年前の米軍単独の攻撃と比べ使用兵器数を倍増。シリアの後ろ盾のロシアとの偶発的衝突の回避に腐心しつつ、アサド政権を軍事力で威嚇し化学兵器使用を断固許さない決意を示す狙いがあった。
 攻撃は14日午前3時55分(日本時間同9時55分)に始まった。東地中海に米海軍の駆逐艦少なくとも3隻が展開し、巡航ミサイル「トマホーク」約100発を発射。空爆には遠距離から精密攻撃が可能なB1戦略爆撃機が加わった。
 英軍はキプロス島の基地からトーネード戦闘機4機を発進させ、空中発射型の巡航ミサイル「ストームシャドー」で爆撃。フランス軍はフリゲート艦4隻とミラージュ戦闘機、ラファール戦闘機を出撃させた。
 米国の昨年4月の攻撃はシリア中部のシャイラト空軍基地1カ所に標的を絞ったが、今回は首都ダマスカス近郊の研究施設や中部ホムスの化学兵器保管庫など3カ所に攻撃対象を拡大した。(共同)

【ロシアも最新鋭の装備で対抗する】

ロシア、最新鋭戦闘機「スホイ35」や地対空ミサイル「S400」で米英仏に対抗

 米英仏がシリアに軍を駐留させるロシアとの意図しない衝突を避けようと細心の注意を払ったことがうかがえる。ロシア軍の主要拠点の北西部ヘメイミーム空軍基地や西部タルトスの海軍基地などを攻撃から除外。ロシアが配備した最新鋭の地対空ミサイルシステム「S400」などによる反撃を避けるため、長射程ミサイルを主軸とした短時間の精密攻撃が採用された。
 ロシアはヘメイミームとタルトスの基地周辺に移動式防空システム「パンツィリS1」や、S400を配備。最新鋭戦闘機スホイ35や爆撃機スホイ24など巡航ミサイルの発射能力を持つ空軍力も展開する。ロシア国防省は、米英仏が今回発射した103発のミサイルのうち、71発をシリア軍が迎撃したと主張。英政府は作戦の「成功」を強調したが、実際の戦果は乏しい可能性もある。
 元米陸軍中将の米シンクタンク「戦争研究所」上級研究員ジェームズ・デュビック氏は「われわれが限定的で精密な攻撃と考えていても、ロシアなどの反撃を正当化する根拠を与えかねない」と米露衝突のリスクに懸念を示した。(共同)


【米英仏によるシリア攻撃の実態】

シリア攻撃はトランプの茶番被害は3人のけが人だけ?

紛争不介入の思惑浮き彫りに

佐々木伸 (星槎大学客員教授)
 米英仏3カ国が2018414日未明、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとして武力行使に踏み切った。しかし、アサド氏に対するトランプ米大統領の強硬な言葉とは裏腹に、攻撃はロシアやイランに被害が出ないよう抑制された出来レースのような趣が強く、アサド政権の戦争継続能力に「なんら影響のない茶番(ベイルート筋)。かえって米欧の及び腰が浮き彫りになった。profile

新しいレッドライン
 攻撃が行われたのはシリア現地時間の14日午前4時。ほぼ1年前の米単独攻撃では標的は1カ所だったが、今回はダマスカス近郊の科学研究所、中部ホムス県の兵器工場、貯蔵所など化学兵器に関連した施設3カ所が標的となった。発射された巡航ミサイルも前回のほぼ2倍の105(米発表)に上った。
米軍は地中海上の艦船3隻とB1戦略爆撃機が、英軍はキプロスの基地から発進したトーネード戦闘機4機、潜水艦1隻が、仏軍はミラージュ戦闘機とフリゲート艦4隻がそれぞれ作戦に参加した。英仏が攻撃に賛同し、西側主要国の結束を示すことができたのはトランプ大統領にとっては大きな成果だった。
 しかし、ダンフォード米統合参謀本部議長によると、ロシア側にはシリアでの衝突を回避するホットラインを通じて、事前に通告していたといい、ロシア軍は標的周辺から退避するなどして被害はなし。イラン関係者やアサド政権軍にも大きな損害はなかった。シナリオ通りに出来レースが実施された感が強い。茶番と言われても否定はできない面があるだろう。
 とはいえ、ロシアのプーチン大統領は「国際法違反の侵略」、イランの最高指導者ハメネイ師も「戦争犯罪」と米英仏を強く非難した。トランプ大統領から「けだもの」「怪物」と罵られたアサド氏は「蛮行」と反発する一方、攻撃が行われたその朝、何もなかったかのように、大統領府に通常通り出勤する姿を動画で公表、攻撃にたじろぐことのない大物風に振る舞った。
 ミサイル攻撃の人的被害は3人のけが人だけとされており、この程度の攻撃ではイランやロシアなどからの報復もないだろう。トランプ政権がロシア軍との対決激化を招ねかないよう配慮したあまり、肝心の標的だったアサド政権の戦争継続能力を削ぐ効果はほとんどなかったのが実情だ。
むしろ、攻撃はアサド政権に打撃を与えるというより、米欧の「レッドライン」(超えてはならない一線)を示すことが目的だったように見える。逆に言うと、化学兵器を使用しない通常兵器であれば、どんな攻撃でも、どんなに民間人に死傷者が出ようとも米欧は容認するというシグナルでもある。アサド氏がそのように受け取ったとすれば、今後も焼夷弾のような樽爆弾など、残虐な殺戮兵器が使われ続けることになるのは確実だ。
戦略なき「ミッション完了」
 トランプ大統領は攻撃の後、「完璧な攻撃だった」「ミッションは完了した」と宣言し、攻撃が成功したことを誇示した。しかし「ミッションとはそもそも何だったのか」(米紙)、大きな疑問が残る。アサド政権の化学兵器の壊滅に使命を限定すれば、確かにその化学兵器製造能力は今回の攻撃で弱体化したのは事実だが、化学兵器を他に隠匿していないという保証はない。
 最も重要なことはこの攻撃が、50万人以上の国民が犠牲になり、1000万人以上が難民化しているシリア内戦を、終結に導く一助となるかどうかだ。だが、その可能性は小さい。アサド政権だけではなく、ロシア、イランの米国に対する反発が強まり、双方の対立の激化は免れまい。
 トランプ氏の思い描くミッションには元々、シリアの平和や安定の確保などが含まれているとは思えない。トランプ氏が米第一主義の観点から折に触れて言ってきたのは、2001年の米中枢同時テロ以降に始まった米国の中東介入は「人命とカネの無駄遣いだった」というものであり、4月に入ってからもシリアからの早期撤退論を語っていた。
 大統領は数日前に遊説先で、シリアの内戦について「他の連中に面倒を見させておけばいい」と本音をのぞかせ、内戦終結や政治決着に主導権を発揮するつもりのないことを明らかにした。さらに攻撃の際の発表でも「中東はやっかいな場所だ。米国は友人ではあるが、地域の運命はその国の国民自身に委ねられる」と突き放した。そこには、米国の利益にならない地域から1日も早く撤退したい、との思惑がにじむ。
包括的な戦略が欠如
 厄介事に手を染めたくないというのはトランプ氏に限ったことではない。英国のメイ首相も「攻撃が内戦への介入や政権交代を目指したものではない」ことを強調している。総じて言えるのは、特にトランプ大統領には「世界の不安定要因であるシリア問題にどう対処するのか、包括的な戦略が欠如している」(アナリスト)ことだ。今回攻撃に踏み切ったのは、シリア政策での弱腰を非難してきたオバマ前大統領に単に対抗するためだったのではないか。
 トランプ氏が「ミッション完了」という言葉をどんな意味で使ったのかは分からない。20035月、イラク戦争でフセイン独裁政権を打倒した時の大統領ブッシュ氏は米空母アブラハム・リンカーンの艦上で「ミッション完了」を宣言、勝利を内外に誇った。
しかし、米国はその直後から過激派組織「イスラム国」(IS)の前身だったスンニ派勢力とのテロとの戦いに苦しみ、イラクから米軍が完全撤退を果たしたのは8年後の2011年のことだった。トランプ氏が思惑通り、シリア紛争からきれいさっぱりと手を洗うのはそう簡単ではない。

〈管理人より〉シリアでは化学兵器による市民を狙った攻撃が実際に行われています。これはどんな理屈をこねまわしても決して許されることない、国際法上の違反行為です。そしてシリア国民に化学兵器を使用した張本人がアサド政権でまちがいないでしょう。

シリア空爆 ロンドン市民の反応は? 
BBC News 2018年4月16日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12544 https://youtu.be/Qk6YZPcfDoY
 シリアの化学兵器による攻撃疑惑を受けて、米英仏は14日に対シリアの共同軍事作戦を実施した。調査会社YouGovが英紙タイムズの委託で行った世論調査では、英国のシリア空爆参加に賛成したのは全体の2割で、43%が反対した。 BBCはロンドンの街頭で、英国の空爆参加について人々に意見を聞いてみた。
提供元:https://www.bbc.com/japanese/video-43779676

ドゥーマの少女が証言 シリア化学兵器疑惑 
BBC News 2018年4月16日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12542 https://youtu.be/FaBjX65EDKw
 シリアの首都ダマスカス近郊のドゥーマで化学兵器による攻撃が疑われるなか、医療施設で治療を受けていた少女が自らの経験を語った。 15日に母親と共に取材に応じたマーサさん(7)は、家族と地下に隠れていた時に「たる」が落ちてきたと話した。
提供元:https://www.bbc.com/japanese/video-43779673


【米英仏に加えてイスラエルも参戦!】

シリア空軍基地への空爆、イスラエルが実施=シリアとロシア
BBC News
 シリア中部ホムスに近い軍用飛行場が空爆を受けたことをめぐり、シリア政府と同盟国のロシアは201849日、イスラエルが空爆を実施したと述べた。空爆はT4と呼ばれているティヤス空軍基地が標的となった。英国に拠点を置くシリア人権監視団は、複数の国籍の戦闘員14人が死亡したと明らかにした。複数の国籍とはこの場合、イラン人やイランが支援するイスラム教シーア派の民兵を意味する。
 シリア国営通信は軍事筋の話として、イスラエルによるT4へのミサイル攻撃を防空警備システムが迎撃したと報道。ミサイルを発射したのは、レバノン領空を飛ぶイスラエルF15戦闘機だと伝えた。
ロシア国防省は、発射されたミサイル8発のうち5発が迎撃されたが、3発が空軍基地の西側に到達したと明らかにした。過去にシリアを空爆したことがあるイスラエルはコメントしていない。シリアは当初、米国とが空爆を実施した疑いがあるとしていた。これに先立ちシリアでは、ダマスカス近郊の反体制派支配地域にあるドゥーマに対する攻撃で化学兵器が使われた疑いが出ており、国際社会の懸念が高まっていた。
ドナルド・トランプ米大統領はツイッターで、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領を「けだもの」と呼び、同盟国のイランやロシアと共にアサド大統領が「大きな代償を払うことになる」と警告した。
「シリアで無謀な化学攻撃があり、女性や子供を含め、大勢が死んだ。残虐行為のあった地域は封鎖され、シリア軍に包囲されているので、世界はまったく立ち入れない。プーチン大統領とロシアとイランに、けだものアサドを支援した責任がある。大きな……
……代償を払うことになる。医療支援と査察のため、ただちに地域を開放しろ。またしても何の理由もない人道的な大惨事だ。病んでる!」(太文字は原文で大文字による強調箇所)
一方、ドゥーマに残っていた反政府勢力は降伏し、シリア政府との合意に基づき、バスによる退避を行っている。
イスラエルが関与した可能性は?
イスラエルは今年2月、シリアを標的とした大規模な空爆を実施している。
攻撃はイランのドローン(無人飛行機)によるイスラエル空域侵入を受けたもので、さらに、最初の空爆でイスラエルのF16戦闘機が撃墜されたことを受けて、再び空爆を行った。
イスラエル軍はイランとイランの革命防衛隊はティヤス空軍基地を長らく使用してきており、イスラエルに敵対的で、シリア政府軍と同盟関係にあるレバノンのイスラム教シーア派集団、ヒズボラなどへの武器提供に使われていると指摘している。イスラエル軍は、自国空域を侵入したドローンも、この基地から飛ばされていたと主張している。
ドゥーマでの攻撃との関連性は?
 トランプ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は8日、共同声明を出し、疑われる化学兵器使用に「強力な共同の対抗措置で連携する」と表明した。
米政府高官は、米国はシリア政府軍の基地を空爆していないとしている。国防総省は発表文で、「現時点で、国防総省はシリアで空爆は実施していない」とした上で、「しかし、我々は状況を注視しており、シリアあるいは別の場所で、化学兵器の使用者の責任を問うために現在行われている外交努力を支持している」と述べた。
フランスも同様に空爆を否定している。
国営シリア・アラブ通信(SANA)は、ティヤスへの空爆について「米国による攻撃の疑い」と報じていたが、その後米国への言及を削除した。米国は20174月に、巡航ミサイル「トマホーク」59発をシリアのシュアイラート空軍基地に向けて発射した。反政府勢力が支配する北西部イドリブ県ハンシャイフンで化学兵器による攻撃が行われたことを受けた。
ドゥーマで何が起きたのか?
医療関係者らによると、7日のドゥーマへの攻撃で数十人が死亡している。
「ホワイト・ヘルメッツ」として知られるボランティア団体「シリア民間防衛隊」が撮影したビデオでは、家屋内に複数の男女と子供たちが遺体となって横たわる様子が映っている。遺体の多くは口から白い泡を出している。しかし、何が実際に起きたのか、死者数について独立的に確認できていない。
国連安全保障理事会は、ドゥーマでの化学兵器使用疑惑に関する緊急会合を9日に開く予定。シリアとロシアは化学兵器による攻撃を否定している。両国は、ドゥーマを支配する反体制派「ジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)」と撤退について合意が得られたとしている。
ロシアは、ドゥーマでの軍事行動は終了したと述べた。合意に基づき、8000人の戦闘員、家族・親族の4万人がバス100台で破壊された町から撤退した。反体制派勢力によって人質にされていた人々も解放された。これにより、政府軍は東グータ全体を掌握した。
アナリストらは、アサド大統領にとって、2016年に北部の主要都市アレッポの陥落以来の軍事的成功になったと指摘した。何週間にもわたる政府軍の攻撃で1600人以上が死亡した。

〈管理人より〉今回のシリアへの攻撃は、アサド政権側が自国民に対して化学兵器を使用したことに端を発していますが、政治の上ではどのように決断され、実行されるに至ったのか、配信記事からうかがうことができます。ロシア云々というより、シリア・アサド政権の「暴挙」に対して堪忍袋の緒が切れた、といった方が強いように感じます。

米、アサド政権の化学兵器使用「証拠ある」
【ワシントン=加納宏幸】米国務省のナウアート報道官は13日の記者会見で、シリアの首都ダマスカス近郊・東グータ地区での化学兵器使用疑惑に関し、同国のアサド政権が実施したと判断できる証拠を米政府が持っているとし、同政権による化学兵器攻撃があったことを「非常に強く確信している」と述べた。
 7日に実施された攻撃には塩素ガス弾に猛毒サリンのような神経剤が組み合わせて使われたとの報道もある。ナウアート氏は化学兵器の種類について特定を急いでいると述べた。「証拠」の内容や確認した時期は明らかにしなかった。
 サンダース大統領報道官も13日の記者会見で、アサド政権に「化学兵器攻撃の責任があると強く確信している」と語った。また、アサド政権を支援しているロシアにも「化学兵器攻撃の実施を止めなかった責任がある」と強調。露政府は疑惑を「でっち上げ」などと否定しているが、サンダース氏は「私たちの情報によると全く逆だ」とした。

シリアの首都ダマスカスで爆発音、軍基地と化学研究施設に攻撃
20184144/14() 10:58配信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180414-00000012-jij_afp-int
AFP=時事】(更新、写真追加)在英のNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」は、米国などがシリアの首都ダマスカスとその周辺で14日未明に、シリア軍の基地と化学研究施設を攻撃したと明らかにした。 これに先立ちダマスカスにいるAFPの記者は14日未明、複数の大きな爆発音が聞こえたと伝えていた。シリア国営テレビも米国がフランス、英国と共同でシリアに攻撃していると伝えた。【翻訳編集】 AFPBB News
<米英仏>シリア攻撃「正義の力」 化学兵器施設標的 
20184/14() 11:24配信   https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180414-00000029-mai-int
 【ワシントン高本耕太、カイロ篠田航一、ニューヨーク國枝すみれ】シリアの首都ダマスカス近郊での化学兵器使用疑惑を受け、米英仏3カ国は13日、シリアのアサド政権への軍事攻撃を実施した。トランプ米大統領はホワイトハウスで演説し、シリアの化学兵器関連施設を標的にしたピンポイント(精密)攻撃を命令したと発表した。「3カ国は残忍な蛮行に対する正義の力を行使した」と述べ、「シリア政権が化学兵器使用をやめない限り、対抗手段をとり続ける用意がある」と警告した。
 国防総省の発表によるとシリアへの攻撃は現地時間14日午前4時に開始された。標的は、ダマスカスの化学兵器研究開発拠点▽中部ホムスの貯蔵施設▽ホムスの化学兵器作戦の司令部--の3カ所。シリア国内に駐留するロシア軍に対し攻撃前の対象の通知はなかったという。記者会見したダンフォード統合参謀本部議長は「標的は破壊された」と述べた。
 今回の攻撃は、国連安全保障理事会決議や米国議会の承認を経ていないが、トランプ氏は演説で攻撃は「化学兵器の製造と拡散、使用を抑止する行動だ」と指摘、「抑止力の確立は米国の死活的国益に直結する」と強調した。また、アサド政権を支援するロシアに対しては「2013年にシリアの化学兵器全廃を保証していた」と指摘。「アサド政権の化学兵器使用と今日の報復措置は、ロシアによる失敗の結果だ」と非難した。
 マティス米国防長官はシリアの東グータ地区での化学兵器使用を確認したのは12日と説明。また、化学兵器の種類に関して「塩素ガスが使われたことは確信している」と述べた。
 英仏両国政府も攻撃決定を発表。メイ英首相は「軍事的手段以外の選択肢はなかった」と述べ、マクロン仏大統領は攻撃の対象は「アサド政権の持つ化学兵器能力だ」と強調した。
 米国がシリア攻撃を発表した13日夜(シリア時間14日未明)、シリアの首都ダマスカスの市民は毎日新聞の取材に「爆音で目が覚めた」などと話した。午前4時ごろ、「ズン」という地鳴りのような音が響き、「首都の近くで攻撃があった」と市民は知ったという。
 ロイター通信は米当局者の話として巡航ミサイル「トマホーク」による攻撃が実施されたと報じた。米CNNテレビは、シリア領空外からの遠隔空爆も用いられたと伝えている。国営シリア・アラブ通信は速報で「わが国の防空システムが侵略に対抗し、ミサイルを撃ち落とした」と伝えた。

 攻撃直前の13日に開かれた国連安保理会合では、シリア攻撃を正当化しようとする米英仏とシリアの後ろ盾であるロシアとが激しく対立し、会合に参加したグテレス国連事務総長は「(中東に)冷戦が戻った。エスカレーションを防止する仕組みはもう存在しないようだ」と悲嘆していた。
マティス米国防長官「攻撃は1回限り」再び化学兵器使用なら追加
【ワシントン=加納宏幸】マティス米国防長官は13日夜(日本時間14日午前)の記者会見で、米軍が英仏両国とシリアのアサド政権に対して実施した今回の攻撃は「1回限り」のものだと説明。その一方で、同政権が再び化学兵器を使用すれば、追加攻撃も辞さないとの認識を示した。
 またマティス氏は、シリアの首都ダマスカス近郊・東グータ地区で7日に行われた化学兵器攻撃について、「塩素剤が使用されたと確信している。(猛毒の神経剤)サリンの可能性も排除しない」と述べた。
 東グータで使われた化学兵器をめぐっては、ホワイトハウスも13日、サリンや塩素によるとみられる症状が報告されていると明らかにした。

秩序乱すロシアへ警告 米英仏のシリア攻撃

2018/4/14 21:09https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29406780U8A410C1MM8000/
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米英仏によるシリア軍への攻撃はアサド政権の後ろ盾となるロシアのプーチン大統領に対する警告にほかならない。シリア内戦への軍事介入、ウクライナ侵攻、そして米欧に仕掛けるサイバー攻撃や工作活動などロシアの「悪意に満ちた行動」に歯止めを掛けるため軍事行動で結束してみせた。

【英仏の決断】
対露でそれぞれの思惑…慎重論押し切った英国、衝突回避姿勢にじむフランス

 【ロンドン=岡部伸、パリ=三井美奈】米国が単独で実施した昨年4月のシリア攻撃とは異なり、今回は英国とフランスが軍事作戦に参加した。シリアのアサド政権を擁護するロシアとの対立を背景に、英政府が国内の慎重論を押し切り参加に踏み切った一方、フランスは対露関係悪化を回避したい姿勢をにじませた。
 「化学兵器を使用しても責任を問われないと考える者への明確なシグナルだ」。メイ英首相はシリアへの空爆実施について説明した14日のテレビ演説で、英南部での元スパイ襲撃事件に関与したと英国が指摘するロシアを牽制(けんせい)した。
 欧州連合(EU)離脱に伴い、地域での存在感低下が懸念される英国。2014年のウクライナ危機以降、サイバー攻撃や選挙介入などロシアによる欧州への攻勢が相次いで指摘される中、ロシアへの強硬姿勢を貫く事で影響力を回復する狙いがあるとみられる。
 ただ、攻撃に際し議会の承認が必要だったとする声も強まっており、今後野党労働党を中心に首相を追及する動きも出てきそうだ。
 一方、マクロン仏大統領は14日の声明で、化学兵器を使用した民間人虐殺を非難しつつ、シリア攻撃は化学兵器施設を対象とした限定的なものだと強調した。
 攻撃に先立ち13日には、プーチン露大統領と電話で会談。国連安保理でのロシアの拒否権行使に遺憾の意を示す一方、シリア安定化でロシアに協力する意欲を伝えた。
 背景には元スパイ襲撃事件をめぐって米欧とロシアが対立する中、シリア攻撃で双方の亀裂が決定的となり、中東不安定化につながることへの強い懸念がある。パルリ仏国防相は14日の記者会見で、シリア攻撃について「対立は望まず、事態の悪化は防ぎたい。ロシアには事前に通告した」と述べた。

【シリア攻撃】メイ英首相声明「新たな化学兵器使用阻止」「政権転覆が目的ではない」
シリア攻撃 英首相が声明発表
2018414 1254 http://news.livedoor.com/article/detail/14578278/
 【ロンドン=岡部伸】英首相官邸は20184月14日、メイ首相が米国、フランスとともにシリアへの攻撃を開始したとの声明を発表した。
 声明の中でメイ氏は、シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区で子供を含む75人の死者が出たことは「純粋に恐怖」と非難。アサド政権は化学兵器を使用して来た歴史があり、英情報機関が集めた重要なインテリジェンスによると、今回もアサド政権による攻撃の可能性が「極めて高い」ため、「アサド政権の化学兵器使用能力を低下させ、新たな使用を阻止することが重要」と指摘した。
 その上で、あらゆるチャンネルを通じて外交努力を尽くしたが、「攻撃以外に選択肢がなかった」と述べた。
 またメイ氏は、「空爆は限定的で標的を絞ったもので、内戦に介入するものではなく、アサド政権を転覆させるもののではない」と指摘し、就任後初めて軍に攻撃を命じたが、「英国の国益に資する」と判断したからだと強調した。

〈管理人〉共産中国は、北朝鮮への軍事攻撃への影響を懸念、ロシアの主張は国連で否定されています。どこが化学兵器を使用したにせよ、多くの子供達を含むシリア国民が大変な目にあったわけです。アサド政権が主導していないとしても、国民への非人道的な攻撃としてとめるだけの義務は絶対あります。

中国、朝鮮有事への影響懸念 露に配慮、対話呼びかけ
【北京=藤本欣也】中国外務省は14日、米英仏のシリア攻撃について「国連安全保障理事会を通さない一方的な軍事行動は国際法違反である」と批判するコメントを発表した。背景には、朝鮮半島でも同じことが起きかねないとの危機感や、「全面的な戦略パートナーシップ」を結ぶロシアへの配慮がある。今後、北朝鮮問題同様、シリア問題でも対話による解決を強く求めていく構えだ。
 外務省の華春瑩報道官は同日、シリアでの化学兵器使用疑惑に関し、「全面的で公正、かつ客観的な調査を実施しなければならない」と主張、シリア問題の政治的解決を関係各国に呼びかけた。
 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)も同日、米英仏のシリア攻撃について
(1)国連の決議に基づかない軍事行動である
(2)米国には虚偽の情報に基づきイラク戦争を始めた前科がある-などと批判的に報じた。
 中国が懸念するのは「朝鮮半島で同様の事態が発生すること」(外交筋)だ。米朝首脳会談が決裂した場合、トランプ米政権が北朝鮮への攻撃に踏み切る可能性が取り沙汰されている。
 習近平国家主席には昨年4月の訪米中にトランプ大統領がシリア攻撃を開始、対北朝鮮制裁への協力を迫られた苦い思い出もある。
 現在、米中両国は貿易摩擦や台湾、南シナ海問題をめぐり対立している。対照的に中露両国は「全面的な戦略パートナーとして、国際情勢が複雑になればなるほど協力を強化する必要がある」(中国の王毅国務委員兼外相)と緊密な関係を維持している。
 環球時報(電子版)は14日、「ロシア軍が駐留するシリアへの攻撃」は「ホッキョクグマを平手打ちする」ことであり、「傲慢な行動は極めて危険だ」と批判した。

シリア攻撃を非難する露の決議案否決…安保理
20184/15() 3:10配信 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180415-00050008-yom-int
 【ニューヨーク=橋本潤也】国連安全保障理事会は20184月14日(日本時間15日未明)、米英仏がシリアの化学兵器関連施設を攻撃したことを受け、ロシアの要請で緊急会合を開いた。
 米英仏によるシリア攻撃を「国際法と国連憲章に違反する」と非難するロシア提出の決議案が採決にかけられたが、賛成は安保理15か国のうち、ロシア、中国、ボリビアの3か国のみで、採択に必要な9票に足りず、否決された。









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