2018年2月27日火曜日

アメリカ国防予算案&国防戦略&アジア戦略

【国防予算案概要】

国防費増額の米国、これが最新「買い物リスト」だ

兵員を増強し、主要艦艇、航空機を建造

北村淳

米首都ワシントン近郊にある国防総省のビル(2015423日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / SAUL LOEB AFPBB News

 アメリカの2019会計年度(2018101日~2019930日)の国防予算案の概要が公表された。
 2019会計年度の国防予算総額は6860億ドル(約745000億円、基礎的国防予算6170億ドル、戦時補正予算690億ドル)である。トランプ政権が希望していた7160億ドルには届かなかったものの、2018会計年度の国防費6391億ドル(基礎的国防予算5745億ドル、戦時補正予算646億ドル)から7.5%増額することとなった。今回は、米国の国防費の増額が何に使われるのかをみていこう。
兵員の増強
 海軍の兵員数は、およそ2%にあたる7500名の増員が認められた。この数字が達成されると海軍常備兵力は335400名となる。海軍と同じく陸軍も2%の増員が認められた。もともと兵員数は海軍より陸軍のほうが大きいため、陸軍は11500名が増員され、常備兵力は487500名となる見込みである。
 海兵隊と空軍の兵員数増強は2%には届かず、それぞれ1%に留まった。その結果、海兵隊は1100名の増員となり、常備兵力は186100名となる。空軍は4000名の増員で、常備兵力は329100名となる。米軍全体としては24100名の増員、常備兵力は1338100ということになる。
主要艦艇の建造
 国防費の増額に合わせて、以下のように強力な艦艇の建造が加速されることになる。敵の戦略原潜(核弾道ミサイルを搭載している原子力潜水艦)ならびに敵の攻撃原潜を発見し追尾し、いざというときには撃沈する攻撃原潜(ヴァージニア級攻撃原潜)を2隻。2隻の建造費は74億ドル(およそ8000億円)である。
建造中のヴァージニア級攻撃原潜(写真:米海軍)
海上自衛隊のいわゆるイージス艦の“原型”となったイージスシステム搭載艦であるアーレーバーク級ミサイル駆逐艦を3隻、60億ドルで調達。
 沿海域戦闘艦1隻を13億ドルで建造。沿海域戦闘艦は各種トラブルが多発して建造計画が打ち切りとなっていたが、建造メーカーとの契約上の問題があるため、結局建造することとなった。このほかにも、とりわけ実戦では重要な役割を演ずる給油補給艦2隻(11億ドル)、オスプレイやヘリコプターなどの発着や兵員の補給など“海上に浮かぶ基地”の役目を果たすことになる遠征海洋基地船1隻(7億ドル)などが建造されることになった。
 さらに、これらの新造艦だけでなく、最新鋭ジェラルド・R・フォード級原子力空母とコロンビア級戦略原潜といった新型超高額艦艇の継続開発建造費にそれぞれ18億ドルと37億ドルが投入される。

建造中のジェラルド・R・フォード級原子力空母(写真:米海軍)
 上記のように、トランプ政権は莫大な予算を投入して海軍の増強に着手しており、2019会計年度だけでも主力戦闘艦6隻が建造を開始されることになる。ただし、建造に時間がかかる軍艦などの主要兵器の場合、建艦予算が割り当てられるということであり、2019年会計年度内に調達されるわけではない。
 また、トランプ政権が打ち出し法制化された海軍増強策によると、アメリカ海軍の戦闘艦艇数を最低でも77隻は増強しなければならないこととなっている。実際には現有艦艇には近々退役していく艦艇があるため、77隻増強ということは、90隻以上の艦艇を作り続けていかなければならないことを意味している。ということは、もし2019年会計年度のペースで建造され続けた場合、計算上は15会計年度が必要となり、軍艦建造に必要な時間を考えると「355隻海軍」が誕生するのは2035年以降になってしまう。
航空機の調達
 航空戦力も強化される。艦艇ほど単価そのものは超高額ではないものの、極めて高価な航空機も多数調達されることとなる。
 それらのうち“目玉”となるのは、航空自衛隊も調達を開始したF-35ステルス戦闘機である。F-35戦闘機には、空自が購入している空軍仕様のF-35A型、強襲揚陸艦からの垂直離着陸機能が付与されている海兵隊仕様のF-35B型、それに航空母艦からの発着が前提となっている海軍仕様のF-35C型の3種類がある。いずれもすでに運用が開始されてはいるものの、いまだに改良開発中である。これらの3種のF-35戦闘機を合わせて77機、107億ドルで調達する。このほか、
VH-92大統領専用ヘリコプター6機(海兵隊、9億ドル)
F/A-18
艦載戦闘攻撃機24機(海軍、20億ドル)
KC-46
空中給油機15機(空軍30億ドル)
CH-53K
キングスタリオン重輸送ヘリコプター8機(海兵隊、海軍16億ドル)
AH-64E
アパッチ・ガーディアン戦闘ヘリコプター60機(陸軍、13億ドル)
P-8A
ポセイドン対潜哨戒機10機(22億ドル)
などがある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52410?page=4
 さらに、航空機から発射される武器、たとえば統合直接攻撃弾(JDAM:無誘導爆弾に装着して精密誘導爆弾化するための装置)43594個(12億ドル)などが調達される。それらの兵器購入に加えて、新型長距離戦略爆撃機(核爆弾搭載機)B-21Raider」の開発(ノースロップ・グラマン社が研究開発を推進)に23億ドル、核戦略の大転換と連動する形で戦術核搭載航空機発射型巡航ミサイル(LRSO)の開発費に6億ドル、空軍が運用することになる次世代地上発射型大陸間弾道ミサイル「GBSD」の研究開発費に3億ドルが投じられることになった。
開発中のハイテク長距離戦略爆撃機B-21(写真:ノースロップ・グラマン社)
軍用車輌の購入
 軍艦や軍用機のような高額兵器ではないが、国防費の増額に伴って多くの軍用車両も購入される。たとえば、
JLTV 統合軽戦術車輌(陸軍)5113輛(20億ドル)
AMPV
多用途装甲車(陸軍)197輛(8億ドル)
ACV-1.1
水陸両用装甲車(海兵隊)30輛(3億ドル)
M-1
エイブラムス戦車(陸軍、海兵隊)近代化改修費(27億ドル)
などである。

5千両以上の調達が認められたJLTV(写真:米陸軍)

日本への影響は?   
 アメリカ軍がどのような兵器を取り揃えようが、それが自衛隊や日本にとって直接影響を及ぼすわけではない。しかし、たとえばF-35ステルス戦闘機のように、自衛隊が購入すればするほどF-35の単価は低下するため、アメリカ軍が多数取り揃えていくためには、日本にも多数購入してもらった方が望ましいことになる。したがって、F-35に限らず、米軍による高額兵器の調達が加速されると、それらの単価を低下させるために、今後ますます日本政府当局に対する売り込み圧力が強まることは確実である。

〈管理人より〉アメリカからみると東(大西洋)における欧州への国防線は、イギリス、ドーバー海峡、西(太平洋)での国防線は韓国、日本、台湾、38°線~台湾海峡、というところでしょうか?
 イギリスは、情報戦略(エシュロン)と核戦略で重要な同盟国、韓国、台湾は軍事的な意味で共産中国やロシアを抑える同盟国、我が国日本は軍事よりは、アメリカの財布、つまり経済パートナーという位置づけになろうかと思います。
 ただ近年は、共産中国の覇権が急速に拡大する中で、軍事面での支援が希薄な我が国の軍事的な貢献を拡大する方向にあります。


【アメリカ国家戦略】

テロとの戦いの間、中露を増長させてしまった米国

岡崎研究所
 米国防総省は2018119日、10年ぶりに「国防戦略(NDS)」を発表した。今回のNDSは、中露を名指ししつつ「今や安全保障上の関心事はテロではなく国家間の戦略的競争である」と明確に記述し、注目を浴びた。公開版のサマリーのイントロダクションが、今回のNDSの思想をよく表しているので、以下にその要旨を紹介する。
  我々は、長年続いたルールに基づくグローバルな秩序の衰退に特徴づけられる、世界的無秩序の高まりに直面している。今や、テロではなく国家間の戦略的競争が、米国の国家安全保障上の主要な関心事である。
 中国は、南シナ海の地形を軍事化しつつ近隣国を略奪的経済手段で脅迫している、戦略的競争相手である。ロシアは、近隣国の国境を侵し、近隣国の経済、外交、安全保障上の決定に拒否権を獲得しようとしている。国連による非難、制裁にも拘わらず、北朝鮮の無法な行為と向こう見ずなレトリックは続いている。イランは、暴力の種をまき続け、中東の安定にとり最大の脅威となっている。ISISは、物理的なカリフ国としては打倒されたが、テロ組織としては存続している。
 急速な技術革新、あらゆる作戦領域における敵からの挑戦、米国史上最長となる武力紛争に起因する軍の即応体制への影響が、複雑さを増す安全保障環境を定義づけている。こうした環境では自己満足は許されない。我々は、殺傷力の高い、弾力性のある、迅速に適応できる統合軍を展開するために何が最も重要なのか、困難な選択と順位付けをしなければならない。米軍は今や、戦場で勝利を約束されてはいない。
 より殺傷力の高い、弾力性のある、革新的な統合軍が、強固な同盟・パートナーと相まって、米国の影響力を維持し、自由でオープンな国際秩序を守るのに好ましいパワー・バランスを保証することになろう。我々の軍の態勢、同盟およびパートナーシップの構造、国防総省の近代化が相まって、紛争における優位と力を通じた平和の維持に必要な能力を提供するだろう。この戦略に失敗すれば、米国のグローバルな影響力は低下し、同盟国・パートナー国の間の調和は損なわれ、市場へのアクセスが低下し、我々の繁栄は衰退することになる。我々の軍の即応体制の回復と近代化のための持続的で予測可能な投資がなければ、急速に米軍の軍事的優位は失われる。
出典:‘Summary of the 2018 National Defense Strategy of The United States, United States Department of Defense, January 19, 2018)
 戦略には、まずもって、正確な情勢認識が不可欠である。その点、2018年版のNDSの「安全保障上の最大の関心事はテロではなく国家間の競争である」との認識は適切である。さらに本文では「米国の繁栄と安全にとり中心的な挑戦は、修正主義勢力(注:中国とロシア)による長期的、戦略的競争である」とも明言している。その通りであろう。今回のNDSの認識は、国際秩序、戦争、平和を決定するのは国家間のパワー・ポリティクスであるという当然の現実に立ち返ったものと評価できる。9・11の後、その衝撃があまりにも大きかったせいもあろうが、テロとの戦いに力点が置かれ過ぎてきた。しかし、その間、中国は大規模な軍拡を敢行し海洋進出を強め、ロシアはジョージアやウクライナで侵略的行為をするなどしている。国家間の戦略的競争は存在したにもかかわらず、それを直視してこなかった。オバマ政権は、米ロ関係の「リセット」や、アジアへの軸足移動の掛け声倒れなどで、かえって中国やロシアを増長させたように思われる。
 今回のNDSは、戦略環境について正しい認識を示した点だけでも評価に値するが、具体的なアプローチも常識的で妥当である。
 まず、米軍の能力向上の面では、核兵器、サイバー及び宇宙における能力、C4ISR(指揮、統制、通信、コンピューター、情報、監視、偵察)能力、ミサイル防衛の強化などである。このうち、サイバー空間における国際的ルールは未確立の部分が多い。NATOがサイバー空間の国際法について研究した文書「タリン・マニュアル」を発表するなどしてリードしているが、日米間でもよく協議する必要があるのではないか。
 2番目の柱は、同盟とパートナーシップ構造である。これには、インド太平洋における同盟とパートナーシップの拡大、NATO同盟の強化、中東における永続的なコアリションの形成、西半球における優位の維持、アフリカにおけるテロ対処支援が含まれる。インド太平洋における同盟とパートナーシップは、我が国が精力的に取り組んでいる日米豪印の防衛協力、「自由で開かれたインド太平洋戦略」などとも整合的であり、当然、歓迎できる。NATO同盟の強化についてのくだりでは、NATO条約第5条(相互防衛)へのコミットメントが死活的に重要である、と述べている。トランプは就任当初、NATO条約第5条へのコミットメントを明言しようとせず問題となった。そうした懸念を払しょくする意図と思われ、よく気を配って書かれた文書であるとの印象を受ける。
 ただ、一つの大きな懸念材料として、予算の問題がある。マティス国防長官はNDS発表の記者会見で、「議会は予算決定の運転席に座るべきで、予算管理法の観客席に座っているべきではない。米軍の優位を維持するには予測可能な予算が必要だ」と述べている。

〈管理人より〉イラク戦争は、アメリカにとって「大義のない戦争」であり、フセイン政権が倒された後、大量破壊兵器がみつからなかったこと、戦闘停止からイラクの戦後処理にかけて、超大国アメリカの「警察機能」の低下と信頼性の低下を招いた戦争と考えると政策的には失敗であったといえるのではないでしょうか?


【アメリカ・アジア戦略】

中国が台湾を取ることは困難であろう

岡崎研究所
 ワシントン・ポスト紙元北京支局長のポンフレットが、中国が台湾を取ることは困難であるとする最近の研究を紹介しつつ、米台が台湾防衛に引き続きコミットする必要があると論じています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/paylessimages/flowgraph/Tatyanash/ Meilun/Ingram Publishing)

 201813日、習近平は、軍の会議で初めて「戦闘態勢」を命じた。中国では、中国が2020年までに軍事的手段で台湾を奪取すると予測する人達もいる。一方、トランプ政権は、米台関係の強化を約束し、米海軍の艦船の台湾への寄港を示唆した。長年、米国の専門家達は、台湾の「事実上独立した民主国家」という地位は、巨大中国の台頭で維持できなくなると考えてきた。ヘンリー・キッシンジャーもその一人である。
 しかし、近年、米国の専門家達は、中国が台湾を吸収するという想定に疑問をもち始めている。最近、ハワイの東西センターのDenny Roy上席研究員、とタフツ大学のMichael Beckley教授は、それぞれの研究で、中国が台湾を取れる能力及び意思について疑問を呈した。
 両者は、台湾の歓心を買うという点で中国の政策は失敗していると指摘する。台湾を標的にしたミサイル配備、台湾の人権活動家の投獄といった脅しは、統一への台湾の反対を強めた。昨年の世論調査では、台湾人の4分の3が中台は別の国と考え、一つの国とした者は14%だけだった。台湾人の半数が中国人とみなした20年前からは大きな変化だ。20161月には、独立派の民進党が初めて立法院で多数を獲得し、同党の蔡英文も総統選で勝利した。台湾との親善に失敗したら、中国は経済的梃子を使い得るのか。中国は台湾の最大の貿易相手国兼対外投資先だ。しかし、中国が台湾への投資を止めれば、台湾人の反感を買う。
 さらに、RoyBeckleyは、中国の継戦能力を疑問視する。Royは、中国が台湾に対して軍事的手段をとれば、中国経済は打撃を受け、たとえ戦争に勝利したとしても、米国がアフガンやイラクで直面したような状況に陥ると指摘する。Beckleyは、中国による攻撃を検討し、封鎖、侵略、戦略爆撃、いずれも成功の見込みはないとする。台湾は15万の兵士を直ちに動かす能力を持っているし、台湾の海岸線の10%しか上陸に適さない。米国が台湾防衛に乗り出せば、8隻の米潜水艦により人民解放軍の上陸侵攻部隊の40%が沈められる。
 現在、中国は軍事予算の3分の1を台湾奪取戦争の準備に充てている。RoyBeckleyは、米台政府には台湾の安全保障で協働し続ける義務があると主張する。 台湾は防衛費を継続的に増額する必要がある。昨年7月、蔡英文総統は、防衛予算を年3%増額し得ると述べたが、米国は台湾が防衛費を倍増することを望んでいると米政府高官は述べた。
 トランプ政権も台湾防衛強化の努力を継続する必要がある。12月に発表された国家安全保障戦略は、米台の強い紐帯の維持にコミットした。今や、米海兵隊が米国在台協会を防衛しようとし、大使館の態様が強くなる。昨年2月、初めて台湾の立法委員のグループが国務省の歓迎を受け、6月にはトランプ政権は14億ドルの対台湾武器売却を発表した。しかし、まだ出来ることはある。中台間ゲームの勝利は、まだ決まっていない。
出典:John Pomfret Can China really take over Taiwan? (Washington Post, January 5, 2018)
https://www.washingtonpost.com/news/global-opinions/wp/2018/01/05/can-china-really-take-over-taiwan/
 中国が経済的にも、軍事的にも、台湾を中国の望む条件で統一するということはきわめて困難である、とワシントン・ポスト紙元北京支局長のポンフレットが論じています。ポンフレットは、米国の二人の専門家の研究を例にとりながら、台湾問題についての最近の米国人専門家たちの見解を紹介しています。興味深い論評です。
 これまで、米国の専門家たちの中では、台湾の「事実上独立した国家」という地位は、いずれ中国の経済力、軍事力の増大とともに維持できなくなるとの見方が一般的でした。その代表的人物はヘンリー・キッシンジャーで、彼は台湾と中国の「再統一は不可避」と主張していました。また、米国が台湾を放棄することにより、中国との友好関係を維持することが得策である、と主張した者もいました。しかし、ポンフレットは、現在の米国の専門家たちは、中国が台湾を取れる能力をもつことには疑問を呈するようになってきた、と言います。
 他方、台湾問題は、中国にとっては、「核心的利益」の最右翼に位置する重大事です。台湾を統一することが困難であっても、独立に向かう動きを無視することは到底考えられません。そのような観点から、2020年には「軍事的手段」を用いてでも、中国は台湾を奪取しようとするだろう、との中国人の研究者の見方も一概に無視することはできないでしょう。
 現に、台湾周辺では中国軍機の活動が活発化していること、また、中国の空母「遼寧」が台湾周辺を航行して軍事的な威圧活動を行うこと、などが常態化しつつあります。習近平体制としては、「中華民族の偉大な復興」というスローガンのもとに、優先事項として、台湾統一を位置付けていることは、想像に難くありません。カリスマ性に欠ける習が、名実ともに毛、鄧に次ぐ指導者としての権威を確実にするためには、なんらかの実績を残す必要があります。台湾対岸の福建省で十年以上勤務した経験を持つ習近平にとっては、とくに台湾問題において目に見える実績を上げたいところでしょう。
 「台湾の歓心を買うという点では、中国の政策は失敗している」とポンフレットは指摘します。中国の打ち出す硬軟両様の方策も、台湾人の歓心を買うことが出来ず、逆に、中台間の距離は拡大する方向にあるというのが今日の実態でしょう。昨年の台湾における世論調査の結果が引用されているとおり、いまや台湾人の4分の3が中台は別の国であると考えており、両者が一つの国に属するとするものは14%にすぎません。これは、20年前の調査で、台湾人の約半数が自らを「中国人」と考えていた状況からの大きな変化を示しています。ビジネスの世界では、中国は台湾にとっての最大の貿易、投資の相手先で、台湾にとって中国の存在が重要であることに変わりはありません。が、台湾人にとっては、中国の実態を知れば知るほど、自由で民主主義の定着した台湾と中国の違いを認識せざるを得ません。
 トランプ政権になってから、一時、米中間において「一つの中国」をめぐり、米中間の確執が表面化しました。しかし、その後は、北朝鮮をめぐる緊張状況に対処するために、米中間の交渉・駆け引きが続いており、台湾問題は喫緊の課題としては浮上していないようです。ただし、今後については、台湾をめぐり米中間の緊張状況が浮上する可能性は考えられます。特に、最近、米国議会において「国防授権法」が通過したことや、「台湾旅行法」が議論されていることを見れば、それは明らかであります。日本にとっても、いかに日台間の交流の一層のレベル・アップを図るかということが今後の主要な課題となるものと思われます。

コープ・ノース2018、グアムではじまる

 2018/02/16 12:35
https://flyteam.jp/airline/united-states-navy/news/article/90653
コープ・ノース2018

 アメリカ太平洋軍は2017214()から、アメリカ、日本、オーストラリアの3カ国が参加し、グアムのアンダーセン空軍基地で「コープ・ノース18(COPE NORTH 18)」を開催しています。
「コープ・ノース18(COPE NORTH 18)」演習は、アメリカ空軍、アメリカ海軍、アメリカ海兵隊、航空自衛隊、オーストラリア空軍(RAAF)が参加し、アメリカ軍が2,000名超、空自とRAAFをあわせ850名規模で、演習には全体で100機超、飛行隊21個が参加します。公開された画像には、韓国空軍も入っています。
 訓練は、戦闘機による戦闘訓練、ファラロン・デ・メディニラ対空地射爆撃場での空対地射爆撃訓練をはじめ、多数の演練項目が予定されています。訓練のうち日米豪人道支援、災害救援共同訓練を皮切りとし、C-130H45-1073」が公開されるなど各航空兵力を動員します。
「コープ・ノース」は三沢基地で1978年に実施されていた訓練を1999年にアンダーセン空軍基地に移転し、インド・アジア太平洋地域の安全保障を高める狙いから、毎年実施されています。
なお、空自はF-15J/DJ8機、F-2A6機、U-125A2機、E-2C2機、C-130H2機、KC-767J1機、計21機に加え、人道支援・災害救援共同訓練に小牧の第1輸送航空隊と航空機動衛生隊の約100名とC-130H2機、U-125A2機を派遣しています。
 また、日本のアメリカ軍基地からは、嘉手納のアメリカ空軍第18航空団(18WG)と、岩国基地所属のアメリカ海兵隊第12海兵航空群(MAG-12)から人員660名程度、F-1512機程度、F/A-188機程度、空中給油機が2機、早期警戒管制機が2機が参加、単独で三沢の第35航空団(35FW)から人員は300名程度、F-1614機程度、派遣されています。
 〈管理人より〉アメリカ、日本、韓国の海洋権益を既にもつ国々の軍事演習ですね。大陸国家に対してのメッセージ性も同時に有しています。


コープノース・グアム2018


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