2018年2月17日土曜日

米中戦争の時代 ~南シナ海の覇権を掌握する共産中国、揺らぐアメリカ軍の優位~

日米の無策をよそに、中国が南シナ海をほぼ掌握

中国の人工島基地、北朝鮮問題に隠れてますます充実
北村淳
中国東部・江蘇省啓東の港で進水する浚渫船「天鯤号」。人工島の造成に用いるとみられる(2017113日撮影、資料写真)。(c)AFPAFPBB News

 北朝鮮による核・ICBM開発問題、ならびに平昌オリンピックを利用しての南北対話の開始などによって、南沙諸島における中国の武装化が国際社会で目立たなくなってしまっている。そんな状況にますます危機感を強めるフィリピンは、中国人工島建設の進捗状況を物語る写真を数点公開した。それらには、人工島内に建設された“立派な”建造物やレーダーサイト、監視塔、灯台などが鮮明に映し出されている。
「人工島建設は国際貢献」?
 今回フィリピンが公開した写真以外に、米シンクタンクや米国防総省なども南沙諸島の中国人工島建設状況に関する空中写真などを断続的に公表している。
 それらの写真情報によると、かねてより明らかになっていた3つの人工島に設置された3000メートル級滑走路の周辺には、格納整備施設をはじめとする建造物などが着々と整備され、航空基地が完成しつつある。それらの主要人工島だけでなく7つの人工島すべてにさまざまなレーダー設備や通信施設が設置されており、南沙諸島に点在した人工島をネットワーク化した中国人民解放軍の前進軍事拠点(南沙海洋基地群)が完成するのは間近と考えられる。

フィリピンが公開したファイアリークロス礁の状況
フィリピンが公開したジョンソンサウス礁の状況

南沙諸島に地理的に最も近接しているフィリピンが、「中国が南沙諸島で人工島を建設し始めているらしい」との情報をいち早く国際社会に向かって発信したのは、2014年初頭のことであった。まもなく中国当局による人工島建設計画が明らかにされ、実際にいくつかの環礁で埋め立て作業が開始されていることが確認された。
それからわずか4年足らずのうちに、7つもの環礁(それらの多くは満潮時には海面下に水没する暗礁である)が人工島へと生まれ変わってしまった。それら人工島は、本格的滑走路、ヘリポート、港湾施設、強固な(と思われる)建造物群、レーダーサイト、通信施設、監視塔、巨大な灯台などが林立する軍事拠点へと大きく変貌を遂げてしまったのだ。中国当局によると、南沙諸島にナビゲーション設備や気象観測施設を設置することによって、南シナ海での海上交通や航空交通の安全性が格段と高まり、漁業従事者などにとっても操業の安全が確保されるとしている。そして万一、事故や遭難などが発生した場合にも、それら人工島に設置された各種施設を拠点にしていち早い救難活動が展開することができることを強調している。南沙諸島での人工島建設は、まさに「中国による国際貢献の最たるものである」と胸を張っているのだ。
南沙諸島に中国が造成した人工島(黄色)

「軍事施設の設置」が実効支配の証拠に
 南沙諸島を巡って中国と領有権紛争係争中のフィリピンやベトナムをはじめとする南シナ海沿岸諸国や、公海航行自由原則の維持を国是とするアメリカなどは、南沙人工島での軍事施設建設をもちろん非難している。だが、中国側はそうした非難に対して、「中国固有の領土である南沙諸島に軍事的防衛施設を建設するのは、国家主権を守るために当然の権利であり、国家としての義務でもある」と反論している。
 確かに中国側の主張するように、大型灯台、通信施設、レーダーサイト、監視塔、3000メートル級滑走路、ヘリポート、港湾施設などは、ナビゲーション関連施設、気象観測施設、そして救難施設とも見なすことも可能である(そもそも軍事施設はナビゲーション、気象観測、救難行動に有用であり、区別することはできない)。そして、「南沙諸島が中国領なのかフィリピン領なのかベトナム領なのか」といった領有権問題に関する判断とは切り離した場合、「領有権を保持している国家が防衛設備を建設するのは権利であると共に義務である」という“理屈”も、それ自体は荒唐無稽な主張ではない(もちろんフィリピンやベトナムなど係争国にとっては「100%受け入れ難い」主張ではあるが)。

 中国の“理屈”を逆説的に言い換えるならば、中国が南沙諸島の領有権を名実ともに手にするためには、誰の目から見ても「中国が南沙諸島を実効支配している」という状況をつくり出し、維持しなければならない。すなわち、「国家主権がおよぶ領域に軍事的防衛施設が設置されている」ことこそ、「その領域を実効支配している」目に見える形での証拠ということになるのだ。
無力だったアメリカ
 中国が実際に暗礁を人工島に生まれ変わらせ、それらの人工島に様々な施設を建設して多くの人員を“居住”させてしまった場合、現実的問題として、それらの人工島を「元の状態に戻せ」あるいは「人工島を放棄して立ち去れ」といった要求を中国側に突きつけることは、不可能である。それは人工島建設開始当初から誰の目にも明白であった。
 しかしながら、海洋軍事力が中国とは比べることができないほど貧弱なフィリピンや、やはり海軍力が弱体であるベトナムなどは、軍事力を背景にした強硬姿勢をもって中国の南沙人工島建設に対抗することは、とてもできない相談であった。
 そして、フィリピンが軍事的に依存している同盟国アメリカとしても、人工島建設作業そのものは軍事行動とは見なせないため、海軍力を動員しての牽制には無理があった(もっとも、オバマ政権は中国を刺激しない政策をとっていたため、人工島建設作業を軍事的に阻止することなど思いもよらなかった)。
 とはいうものの、アメリカとしては、フィリピンだけでなく日本などアメリカに軍事的に依存している同盟諸国の手前、南シナ海での中国の覇権的拡張行動に対して、なんらかの軍事的牽制を加える姿勢を(たとえポーズであっても)示さないわけにはいかない。そこでオバマ政権およびトランプ政権が実施しているのが、南沙諸島や西沙諸島での「公海航行自由原則維持のための作戦」(FONOP)である。


中国人工島建設を牽制する意図を持ったFONOPは、20151027日の開始以来、合わせて9回(オバマ政権下で4回、トランプ政権になってこれまで5回)実施された。だが、中国による人工島建設そして軍事基地化はまったくFONOPの影響を受けることなく、着実に進んでいる。 それどころか中国側は、「アメリカ海軍によるFONOPにより中国領域が軍事的脅威を受けている」と主張し、「軍事的脅威に対抗するために南沙諸島や西沙諸島の防備を強固にしなければならない」という論理により、対空ミサイルや対艦ミサイルを持ち込み、戦闘機部隊を配備するなどますます大っぴらに南沙人工島の軍備増強を加速している。結果だけを見れば、アメリカの実施している南シナ海でのFONOPは、中国側に対する牽制効果などゼロであり、逆に中国当局に対して南シナ海での軍備増強を実施する口実を与えているだけである。
腹をくくらねばならない日本
 アメリカ当局はこのような事実を無視して、戦略変更をすることなく惰性的にFONOPを続けており、まさに無策と言うしかない。
 南シナ海だけでなく東シナ海でも中国の軍事的脅威と直面している日本としては、アメリカに路線変更(もちろん日本による積極的関与も含めて)を迫る必要がある。それとともに、「尖閣諸島は日本固有の領土である」という事実を「誰の目から見ても日本が実効支配している」という状態を造り出すことによって担保しなければならない。南シナ海での現状は、「アメリカ軍事力への神頼み」あるいは「アメリカ軍事力の威を借る」ことが、中国の膨張主義的海洋進出戦略の前にはもはや無力であることを示しているのだ。
〈管理人より〉確かにFON作戦は、アメリカの積極的な南シナ海の航行路確保のための作戦とはいえません。南シナ海の自由航行の権利をかろうじて主張するだけの意味でしかないかと思います。国際司法裁判所での南シナ海の判決がでた時に中国共産党はかなり「動揺」しています。共産中国から海洋覇権を取り返すためには、渡さないためには、軍事力だけの活用だけではないかと思います。
ぶれない国家戦略と充実する軍事力でアメリカの権益に「挑戦」する共産中国。
 
英戦略研「ミリタリー・バランス2018」

発表

揺らぐ米空軍の優位 中国、新型空対空ミサイル実戦配備へ
中国の次世代ステルス戦闘機「殲20」

【ロンドン=岡部伸】英国の有力シンクタンク国際戦略研究所(IISS)は、2018214日、世界の軍事情勢を分析した報告書「ミリタリー・バランス2018」を発表した。中国が新型長距離空対空ミサイル「PL15」を開発し、2018年に実戦配備するなどロシアとともに空軍力を米国と対等レベルに急速に強化している。同研究所は「冷戦崩壊以降、米国とその同盟国が当たり前に支配してきた空の優位性が揺らぐ」と警告している。
 旧ソ連やロシアの技術を導入して武器製造してきた中国は、国防費を継続的に増やして独自の研究・開発・製造で急速に進歩を遂げ、軍の近代化を進めている。2017年に中国が公式発表した国防費だけでも1505億ドルで日本の460億ドルの約3倍だ。
 中国空軍は、17年に航空宇宙分野で限定された国しか開発できない高性能の短距離空対空ミサイルPL10を導入したが、同研究所は「18年の早い時期に新型長距離空対空ミサイルPL15を実戦配備するだろう」と指摘した。


射程約300キロ、全長6メートル近いミサイルで、配備されると戦闘機のように迅速に動けない空中給油機や早期警戒管制機(AWACS)が標的となる。このため米空軍のカーライル司令官は、「PL15は深刻な脅威」と警戒。中国の軍拡が、米国の国防力を増強させる要因となっている。
 また中国が独自に開発した第5世代ステルス戦闘機、殲(J)20を配備させた。これまでステルス戦闘機で武装する能力を持っていたのは米国と同盟国だけだった。同研究所は「最新長距離空対空ミサイルとステルス機配備を受け、東シナ海や南シナ海の海洋権益拡大に向けた中国軍の活発化が懸念される」と分析した。
 ロシアも資金投入してソ連末期から中座していた空対空ミサイルの開発を再興。1982年に開発を始めた中距離ミサイルR77は、ソ連崩壊で量産を停止していたが、約30年ぶりにロシア軍がシリアでスホイ35に搭載した。
 また80年代から開発をしながら予算不足で中断していた長距離ミサイルR37も21世紀になって開発を再開、2016年にミグ31に搭載されているのが確認された。


中国のPL15に次ぐ長い射程でAWACSを遠距離から撃ち落とす狙い。これまで自由に飛行できた空域も、安全ではなくなり、米国が南シナ海で実施する「航行の自由」作戦への影響も懸念される。
 同研究所は、「中国はロシアの技術を踏襲、欧米に対抗できるように両国が協力して開発を進めている」と分析。「2020年半ばまでに中国はさらに高性能の長距離空対空ミサイルを開発する。開発した先端兵器をアフリカなどに売却しており、世界の安全保障環境が一変する恐れがある。米国と同盟国は空軍の戦略、技術のみならず航空宇宙技術開発の見直しまで迫られる」と警告している。
〈管理人より〉アメリカはサイバー空間でも攻撃の対象となっています。

 アメリカの軍事力を相殺するための手段、経済力をそぐこと。これも軍事攻撃の手段といえるでしょう。サイバー攻撃はもはや軍事攻撃といえますね。

米欧の選挙は今後もサイバー攻撃受ける 米情報長官 
BBC News 
 2018年2月14日http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11969 

 ダン・コーツ米国家情報長官は2018年2月13日、他の米情報機関トップと共に上院情報委員会の公聴会に出席し、ロシアなどによる「やむことのない妨害的なサイバー作戦」は今後も欧米の選挙を攻撃してくるだろうと警
告した。
提供元:http://www.bbc.com/japanese/video-43053959

https://youtu.be/HrpqH7Gavqs?t=64 


米大統領諮問機関報告

サイバー攻撃による米経済への被害は年間最大11兆円超 
【ワシントン=黒瀬悦成】米大統領に経済政策を助言するホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)は2018216日、米国へのサイバー攻撃に関する報告書を発表した。それによると、サイバー攻撃が2016年に米経済にもらたらした被害額は570億~1090億ドル(約6兆~11兆6千億円)に上った。実行者にはロシアや中国、イラン、北朝鮮といった国々が含まれていると指摘し、公的機関と民間企業による対策強化が「死活的に重要だ」と訴えた。
 報告書は米通信会社の2017年の分析として、サイバー攻撃のうち18%で外国政府の関連グループ、51%で犯罪組織が関与していると指摘。外国が絡む攻撃では特に中国が積極的だとし、13年の分析で経済関連の電子情報を盗み取るスパイ行為の96%に中国が関係していたとした。
 具体的な事例としては、米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35に関する技術データを中国が盗み出し、自前のステルス戦闘機J31の開発でデータを活用した疑いがあると紹介。事実とすれば、中国はステルス技術の開発期間とコストを大幅に圧縮することができたことになると強調した。

 報告書はまた、銀行の電子決済や証券市場などの金融部門と、発電所や送電システムなどの電力インフラがサイバー攻撃の標的となった場合、米経済は壊滅的な打撃を受けると指摘。安全保障分野でも国防総省の電力の85%が民間会社から提供されているとし、電力が遮断されれば米国内外での活動や本土防衛に打撃を受けると警告した。

〈管理人より〉F-35のソフトウェアへのハッキングは、アメリカのセキュリティクリアランスを保持した人物を共産中国が買収しての所業でしょう。共産中国は未だアメリカのシークレット、トップシークレット情報にアクセスすることはできていません。「借り物の技術」を彼らがどう活用することができるのか?
SIGINTの管理の強化、ハッキングの技術的な向上についても国防力の底上げにはなるでしょうね。

0 件のコメント:

コメントを投稿