2018年9月30日日曜日

共産中国と「対決」する政策をとりはじめたトランプ政権 ~空軍力増強編~


中国との対決に備え、米国が空軍も大増強へ
10年で戦力を25%増強する「386個飛行隊」建設構想
北村淳
米国が現在開発中のB-21爆撃機(写真:ノースロップ・グラマン社)

 ヘザー・ウィルソン米空軍長官は「米空軍は2025年から2030年の間までには戦力を386個飛行隊に拡張しなければならない」と空軍協会の講演で語った。現在米空軍の戦力は312個飛行隊であるから、これから10年前後で空軍戦力を量的に25%ほど増強しようというのである。ウィルソン長官によると、このような空軍戦力の強化は、ジェームス・マティス国防長官が提示したアメリカ国防戦略の大転換、すなわち「テロとの戦い」から「大国間角逐」へという大変針に必要不可欠なものであるという。
386個飛行隊構想と海軍の355隻艦隊建設
ヘザー・ウィルソン米空軍長官

 米空軍が打ち出した386個飛行隊構想は、トランプ政権によって実行に移されている米海軍の355隻艦隊構想を彷彿とさせる。
 米海軍の戦闘艦艇数を355隻に拡大することは、トランプ陣営にとっては選挙公約の1つであった。当初は350隻ということであったが、中国海軍の戦力拡大の目を見張るスピードやロシア海軍再興の兆しなどを考慮すると400隻でも少ないという海軍側からの声なども若干考慮されて355隻艦隊を構築することが法制化された。ただし大統領選挙中、そしてトランプ政権が発足してからしばらくの間は、トランプ政権に中国やロシアと軍事的対決姿勢を固めるという意識はなかった。ただ海軍の常識として、場合によっては強力な敵となるかもしれない中国海軍(ならびにロシア海軍)が軍備増強に邁進しているという現実がある以上、アメリカ海軍もできうる限り増強しておかなければならないという論理に拠っていた(もちろん、対中強硬派の人々は、常に中国との対決を想定していたのであるが)。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54199?page=2
 それ以上に、トランプ大統領にとって「大海軍再建」は、選挙期間中からのスローガンである「偉大なるアメリカの再興」を目に見える形で内外に示すために格好の事業であった。なぜならば、シーパワーであるアメリカの「強さ」は軍事的には強力な海軍力と空軍力を中心とした海洋戦力によって誇示されることになるし、その海洋戦力に裏付けされた強力な海運力によって経済力の「強さ」の一角も支えられるからである。同時に、大量の軍艦の製造はアメリカ製造業の活性化につながり、まさにトランプ大統領(そして米海軍、裾野の広い軍艦建造関連企業と労働者たち)にとっては355隻海軍建設は最高の政策ということになる。
「テロとの戦い」から「大国間角逐」へ
 ただし、トランプ政権と中国との蜜月は1年と持たず、なかなか改善しない米中貿易摩擦へのトランプ大統領の不満が募るとともに、トランプ政権の国防戦略は大転換を遂げるに至った。すなわち、201712月にホワイトハウスが発表した国家安全保障戦略と、それと連動して20181月にペンタゴンが公表した国防戦略概要には、アメリカの防衛戦略は「テロとの戦いを制する」から「大国間角逐に打ち勝つ」ための戦略へと変針することとなったのである。
 大国すなわち軍事大国として具体的に名指ししているのは中国とロシアである。とりわけ中国は、アメリカが打ち勝つべき「大国間角逐」にとっての筆頭仮想敵と定義された。
 このようなトランプ政権の軍事戦略大転換は、355隻海軍建設にとどまらない海洋戦力強化の必要性を前面に押し出すこととなった。これまで17年間にわたってアメリカ軍が戦い続けてきた主敵は武装叛乱集団やゲリラ戦士であった。しかし、そのような陸上戦力が主役であった時代は過ぎ去ろうとしているのだ。「大国間角逐」は、とりわけ中国との直接的軍事衝突や戦争は、主として海洋戦力によって戦われることになるからである。
最大に強化されるのは爆撃機部隊
 ウィルソン長官そして空軍参謀総長デイビット・ゴールドフィン大将によると、米空軍にとって現在のところ最も脅威となりつつあるのは、急速に能力を伸展している中国軍航空戦力(空軍・海軍航空隊)である。
太平洋方面での中国軍との戦いは、航空戦力を持たない中東方面のテロリストとの戦闘とは完全に様相が異なり、米空軍の徹底した戦力の再構築が必要となる。そのため、空軍では戦力見直しと再構築についての検討作業を半年以上にわたって続けてきた。
 このほど公表した386個飛行隊構想はあくまで中間報告であって、来年(2019年)3月頃を目途に、より詳細な戦力強化策を完成させるということである。たしかに、今回の386個飛行隊構想では、単に20252030年までに増加させる飛行隊の数が示されただけである。それぞれの組織の具体的内容、たとえば航空機の種類や戦力などは来年3月に提示されるものと思われる。ただし、空軍内部で検討されている飛行隊を増加させる草案からも、太平洋方面を主たる戦域として中国と戦うための布石が読み取れる。
 20252030年までに、米空軍で最大の規模になるのはC2ISR(指揮・統制・諜報・監視・偵察)部門と戦闘機部門であり、それぞれ62個飛行隊となる。現在、55個飛行隊と最大規模の戦闘機部門は7個飛行隊の増加(13%の増強)となる。一方、現在40個飛行隊であるC2ISR部門は22個飛行隊の増加(55%の増強)ということになる。
C2ISR部門に次いで飛行隊数の増加が望まれているのが空中給油飛行隊だ。現在40個飛行隊のところ14個飛行隊の増加(35%の増強)が考えられており、輸送機部門とならび54個飛行隊となる。飛行隊そのものの数はそれらに比べると少ないものの、増強率が56%と最も高いのが爆撃機部隊だ。現在9個飛行隊のところ14個爆撃飛行隊が目指されている。
このように、爆撃機部門、C2ISR機部門、空中給油機部門をとりわけ重視しているのは、各種長射程ミサイルと並んで空軍の長距離攻撃戦力こそが中国と戦火を交える際には先鋒戦力となり勝敗の趨勢を握ることになると考えられているからである。なぜならば、中国軍は対艦弾道ミサイルをはじめ多種多様の接近阻止領域拒否態勢を固めている。なんらの接近阻止戦力も保有していないテロリスト集団との戦いにおいては無敵の存在であった空母打撃群を、中国軍が手ぐすねを引いて待ち構えている東シナ海や南シナ海の戦域に先鋒戦力として送り込むわけにはいかないというわけだ。ウィルソン空軍長官やゴールドフィン空軍参謀総長が述べているように、いまだ空軍は戦力大増強の基礎となる新戦略も具体的な装備や組織案も打ち出してはいない。だが、ホワイトハウスやペンタゴンが打ち出した「大国間角逐」に打ち勝つため、中国を主たる仮想敵とした空軍戦力大増強策を検討中であることだけは確かなようである。
中国攻撃には不安が伴うB-52爆撃機(写真:米空軍)
焦るアメリカ、我関せずの日本
 米国では財政的観点から「空軍の386個飛行隊建設など夢物語にすぎない」と批判するシンクタンク研究者も少なくない。しかしながら海軍の355隻艦隊建設構想に対してもシンクタンクの研究者たちからは同じような批判が加えられていた。ともかくトランプ政権下では、夢物語かどうかは、蓋を開けてみなければわからない状況だ。いずれにせよ、日本の軍事的保護者であるアメリカ軍が、中国人民解放軍とりわけその海洋戦力の増強に深刻な脅威を感じて国防戦略そのものを大転換させ、海軍力大増強に踏み切り、空軍力の大増強の検討も進めている。それにもかかわらず、中国海洋戦力と直接最前面で対峙することになる日本では、あいかわらず国防政策最大の課題といえば憲法第9条云々といった状態が続いている。
今こそ日本を取り巻く軍事的脅威を直視する勇気を持たなければ、気がついたときには“軍事的保護者”が変わっていた、という状況になりかねない。
〈管理人より〉我が国自衛隊は、第二次大戦、朝鮮戦争以降、アメリカの西の国防圏の最前線を守るための局地的軍隊ですね。海軍は対潜作戦を主体としたブラウンウォーターネイビー。アメリカ軍が「対中戦」を想定した戦略に転換したのなら、軍事で米軍にリンクするわが自衛隊の国防戦略に変化があっても仕方ありません。もし米軍色を少しでも減らしたければ、自衛隊を「国防軍」と改革するのです。
《共産中国VS日米同盟》
米空軍B52、東シナ海と南シナ海上空を飛行

 【ニューヨーク=黒瀬悦成】米国防総省は平成30926日、核兵器搭載可能な米空軍のB52戦略爆撃機が今週、中国の軍事拠点化が進む南シナ海や、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐり日中が対立する東シナ海の上空を飛行したことを明らかにした。中国の覇権的海洋進出に対抗する狙いが込められているのは確実だ。
 国防総省によると、B52が東シナ海上空を飛行したのは25日夜。米CNNテレビの報道では、航空自衛隊の戦闘機の先導で尖閣諸島付近や、中国が東シナ海に設定した防空識別圏内を飛行したとされる。
 同省は飛行に関し、「地域の同盟・パートナー諸国との即応能力や相互運用能力の向上のための通常任務だ」と指摘した上で、「米軍は国際法で認められた飛行や航海、作戦行動を自身が選ぶ時間と場所で展開していく」と強調した。南シナ海上空の飛行に関しては「今週初めに行われた」とし、具体的な日付は明らかにしなかった。
 マティス米国防長官は26日、今回の飛行について「正常を外れた活動では一切ない」と強調した上で「米中の軍同士は戦略的関係にあり、両国ともその必要性を認識している」と述べ、中国が関係を悪化させるような対抗措置をとってくる可能性は低いとの考えを示した。
空自戦闘機とB52が東シナ海・日本海で共同訓練 中国を牽制
日本海上空で米空軍のB52戦略爆撃機と航空自衛隊の2機のF2戦闘機が共同訓練する

 航空自衛隊は平成30930日、米空軍のB52戦略爆撃機1機と空自の戦闘機計16機が27日に東シナ海や日本海上空で共同訓練をしたと発表した。B52は米領グアムから南シナ海上空を通って飛来したとみられ、中国を強く牽制(けんせい)する狙いがある。
 空自などによると、B52は東シナ海上空で、那覇基地(沖縄県)のF15戦闘機と編隊の確認などを訓練。その後、日本海上空で築城基地(福岡県)のF2戦闘機、小松(石川県)、千歳(北海道)各基地のF15と順次訓練をした。米空軍は今週に入り、中国が軍事拠点化を進める南シナ海や、日中が沖縄県の尖閣諸島を巡り対立する東シナ海の上空でB52を飛行させている。
小野寺防衛相「日米の絆と高い能力を示すため」 
空自機・米爆撃機訓練公表を説明
小野寺五典防衛相は平成30928日午前の記者会見で、航空自衛隊の戦闘機と米空軍のB52戦略爆撃機が東シナ海上空などで行った共同訓練について「日米同盟の抑止力と対処力を強化するため」と説明した。訓練を公表した目的に関しては「日米の連携強化が図られ、その絆を示すことは、地域の安定化に向けた日本の意志と高い能力を示す効果がある」と強調した。
 B52は核兵器を搭載可能だが、小野寺氏は「米側は非核三原則にかかる日本の立場を十分理解している。米国が核兵器を搭載した戦略爆撃機をわが国に飛来させたり領空を通過させたりすることは想定されない」と述べた。
空自戦闘機と米爆撃機、尖閣周辺空域で共同訓練 
防衛省、初の公表…中国を牽制
防衛省は平成30年9月28日、航空自衛隊の戦闘機と米空軍のB52戦略爆撃機が、27日に東シナ海から日本海上空にかけて共同訓練を行ったと発表した。防衛省が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海上空での空自機とB52の共同訓練を公表するのは初めて。B52は核兵器を搭載可能で、周辺海空域での挑発行動を継続する中国を牽制する狙いがある。
 防衛省によると、訓練に参加した空自機は千歳(北海道)、小松(石川県)、那覇(沖縄県)の各基地に所属するF15戦闘機計12機と築城基地(福岡県)のF2戦闘機4機。米グアムの空軍基地に配備されているB521機の飛行に合わせ、各空自基地から順次発進し、編隊を組みながら飛行した。中国が東シナ海に設定した防空識別圏内にも入ったとみられる。
 空自機とB52の共同訓練は、平成29年8月と今年7月に日本海上空で実施したことが明らかになっている。
尖閣有事で「弾切れ」の恐れ 
極秘シナリオから浮かび上がる防衛戦略の
「重大な欠陥」
 中国の高圧的な海洋進出を受け、尖閣諸島(沖縄県石垣市)が占拠される恐れが強まる中、陸海空3自衛隊の統合運用による対処力の強化が待ったなしの課題となっている。防衛省が極秘に検討した有事シナリオでは中国軍が尖閣諸島のみならず、石垣・宮古両島にも同時に侵攻してくる事態を想定。そのとき懸念されるのが自衛隊の継戦能力で、現状では「弾切れ」になりかねない。(社会部編集委員 半沢尚久)
統合防衛戦略
 有事に3自衛隊が一体的に対処するための運用指針となる「統合防衛戦略」が初めて正式文書として年内に策定される見通しだ。年末に改定される防衛力整備の基本指針「防衛計画の大綱」の基礎になるもので、統合防衛戦略では中国と北朝鮮の脅威への対処能力を高める構想が焦点となる。
 統合防衛戦略の策定は2度目だ。最初は統合幕僚監部が中心となって平成24年に取りまとめに着手し、26年までに策定作業を終えた。戦略文書は自衛隊制服組トップの統合幕僚長に報告されたが、内部文書にとどめていた。
 内部文書どまりだったとはいえ、「重要な転機であったことに変わりはない」(自衛隊OB)と指摘される。統合防衛戦略の策定にあたり、将来起きうる有事シナリオを練り、シナリオに基づき3自衛隊の防衛力を一元的に整備し、運用指針も定める手法が初めて採用されたからだ。
それまで3自衛隊は共通の有事シナリオに基づく防衛力整備や運用指針に関する検討を行っていなかった。そのため3自衛隊ごとに脅威の分析が異なり、統合運用に適さない装備を導入する弊害があった。
対中シナリオ
 最初の統合防衛戦略の策定作業で極秘に練られた有事シナリオのうち、対中有事に関するものは3通りあるとされる。(1)尖閣(2)尖閣と石垣・宮古両島(3)それらに加えて台湾-への侵攻の3種類で、次のようなシナリオを念頭に置いている。
 《尖閣侵攻》
 中国海警局の船が尖閣周辺で海上保安庁の巡視船と「偶発的」に衝突。これをきっかけに中国は海警局の船を大挙送り込み、空母など海軍艦艇も威圧し巡視船は後退を余儀なくされる。
 海保の増援船艇や海自艦艇が展開する前に中国側は空挺(くうてい)部隊などを尖閣に上陸させる。偶発を装った意図的な衝突から一気に尖閣を奪取する事態だ。
 《尖閣と石垣・宮古 同時侵攻》  
 尖閣のみならず、石垣島と宮古島にも同時か波状的に侵攻してくる。「中国は尖閣と石垣・宮古をひとつの戦域ととらえている」(自衛隊幹部)ためだ。
 中国側は海軍艦艇を集結させ周辺海域を封鎖。戦闘機も宮古島にある空自のレーダーサイトをミサイル攻撃し、混乱に乗じ潜入した特殊部隊が宮古空港と石垣空港を占拠する。空港を奪えば自衛隊は増援部隊や装備・物資を輸送する拠点が失われてしまう。
《尖閣・石垣・宮古と台湾同時侵攻》 
 中国は台湾統一の機会をうかがい、自衛隊と米軍の行動を阻止するため、台湾に近く空港のある石垣島や宮古島を制圧することが想定される。台湾への侵攻は海上封鎖や戦闘機・ミサイル攻撃、特殊部隊や水陸両用の上陸作戦が中心となる。
継戦能力
 こうした有事シナリオを踏まえれば、自衛隊が組織的戦闘を継続できる継戦能力の担保が欠かせない。とりわけ陸自で離島奪還作戦を担う水陸機動団や中国海軍艦艇を警戒する地対艦ミサイル部隊が切れ目なく対処することが求められる。
 ただ、防衛省幹部は「重大な欠陥がある」と漏らす。陸自の「補給処」が沖縄にひとつもないからだ。
 補給処は火砲などの弾薬や燃料のほかに車両、化学・通信・衛生の装備を保管したり、整備したりする後方支援拠点。北海道、東北、関東、関西、九州に置き、支処と出張所が全国に27カ所もあるが、沖縄には支処も出張所もない。
 物資は必要に応じ九州と本州から輸送し、車両や装備の整備も九州などに送っており、現状では有事の際もこうした輸送が必要。沖縄に備蓄している弾薬の不足は特に深刻だという。沖縄に補給処機能が皆無なのは、かつて南西方面が脅威の「正面」ではなかったためだが、最大の正面となって久しい。新たな統合防衛戦略と防衛計画の大綱の策定過程で継戦能力の欠陥を放置することは許されず、補給拠点となる宮古空港と石垣空港の補完機能も整備すべきだ。
〈管理人より〉南西諸島は対中戦略の最前線であり、防衛主力は沖縄本島にあることを考えると兵站線の確保は必須命題でしょう。尖閣諸島の防衛のためにも「補給」拠点の確立は最優先にやってしかるべきと考えます。もう冷戦時代の戦略を一生懸命守っても意味はありません。軍事戦略こそイノベーションが不可欠でしょう。



【共産中国の侵攻を阻止せよ!防衛戦略の主役、地対艦ミサイル】米軍のグレートバリア戦略
【海から勝利する!】水陸両用能力を強化する日米合同ディスカッション(呉基地) https://www.youtube.com/watch?v=inaoaEZV800
陸自:12式地対艦誘導弾(SSM) 米軍も注目する能力と装備
https://www.youtube.com/watch?v=6PTj1GpPsDY
12式地対艦誘導弾初参加!! 平成27年度 富士総合火力演習 後段演習 https://www.youtube.com/watch?v=4RPDd6aABHE



日米の対中戦略の主力兵器12式地対艦誘導弾。南西諸島にこの装備を大量に配備して、共産中国の海軍力の抑止とするという「グレートバリア戦略」は効を奏するか?





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