2018年9月22日土曜日

いよいよ「対中戦」に転じたアメリカ・トランプ政権


米国が国防費を対中戦にシフト、海洋戦力強化へ

国防省の予算要求を連邦議会が一部増額修正
北村淳
米国・ワシントンの連邦議会議事堂

 トランプ政権は、昨年(2017年)末から本年初頭にかけて、アメリカの国防戦略を「世界的対テロ戦争に打ち勝つ」という基本方針から「大国間角逐に勝利する」という方針に大きく変針した。この方針を実施するには、米軍各軍(海軍、空軍、陸軍、海兵隊)が大国間角逐に勝利するための戦略を策定し、必要な作戦概念を生み出し、新戦略に適応した組織の改編を進め、大国間戦争に耐えうる武器装備を整えねばならない。
 一方、先日亡くなったマケイン上院議員が長らく主導してきた連邦議会上院軍事委員会では「各軍における戦略シフトに関する対応は極めて遅い」と指摘し、次のような警告を発している。「アメリカ軍の主敵は市街地戦や山岳砂漠戦でのテロリストやゲリラではなく、強力なハイテク軍事システムを身につけている中国軍やロシア軍となっていることを自覚しなければならない」。
 そして、このような強い危惧を具体的な形で示したのが、このほど成立した国防費に関する2019年会計年度歳出法である。国防総省が提出していた国防予算案を叩き台にして連邦上下両院がそれぞれ策定した国防費歳出案を、上下両院でさらに調整して法令化した法律である。
増額された海洋戦力関係費
 新たな歳出法によると、ホワイトハウスが提出した国防予算要求に対して、海軍省に関しては4.9%増額、空軍省は1.2%増額、陸軍省は0.9%増額ということになった。このように国防費の歳出額が増額された要因は、海軍の艦艇建造費と全軍(海軍、空軍、陸軍、海兵隊)の航空機調達費が大幅に押し上げられたからである。
連邦議会は軍艦建造関連歳出を最も重視して、国防総省の要求に対して10.4%の増額を決定した。このような海軍艦艇建造費の大幅な増額は、「国防総省が算定した建造費では、トランプ政権が打ち出している大海軍建造計画を実現できず、とても中国海軍の大増強やロシア海軍の復活などに対応できない」というシンクタンクなどの研究や提言を議会調査局や軍事委員会が受け入れて、建艦スピードを加速させようとしているためと考えられる。
 艦艇建造費とともに航空機の調達に対しても、連邦議会は国防総省の要求額を大幅に押し上げた。すなわち空軍の航空機調達は5.6%、陸軍の航空機調達は13.7%、海軍・海兵隊の航空機調達は5.5%それぞれ軍当局側の要求に対して増額した。全ての軍種において航空機調達費用が増額されたのは、空軍、海兵隊および海軍が調達することになっているF-35ステルス戦闘攻撃機、州空軍が調達するC-130大型輸送機、それに陸軍のアパッチ攻撃ヘリコプターなど高額機の調達に加えて小型無人機の開発と大量調達を推し進める必要性を連邦議会が痛感しているためである。いずれにせよ、海軍の艦艇と全軍の航空機の調達に莫大な金額の税金を投入するのは、まさに「中国軍/ロシア軍との戦争」に備える海洋戦力の強化をスピードアップさせようという連邦議会軍事委員会の意思が、具体的な形で示されたということに他ならない。
各種対艦ミサイルを搭載して米海軍を待ち受ける中国軍ミサイル爆撃機xxc
大国間角逐に打ち勝つ主役は地上戦力ではない
 海洋戦力とは対照的に、地上戦力すなわち陸軍と海兵隊の予算は厳しく抑制された。陸軍予算は、航空機調達費が13.7%も押し上げられたにもかかわらず、そのほかの多くの分野での要求額は減額され、全体ではわずか0.9%の増額にとどまった。海軍予算の大幅な増額に比べると「大国間角逐に打ち勝つための主役は陸軍ではなく海軍」という流れを如実に示している。
ただし、陸軍よりもさらに衝撃を受けているのは海兵隊だ。国防総省が要求した海軍省予算(海軍の予算と海兵隊の予算)は全体としては4.9%も増額が決定され、とりわけ軍艦建造費と航空機(海軍と海兵隊の各種空機)調達費もそれぞれ大きく増額が認められたものの、海兵隊関連費用は4.9%も減額されてしまった。
 なぜ連邦議会が海兵隊予算を削減したかというと、「海兵隊は大国間角逐への対応が遅れており、このままでは武装蜂起勢力鎮圧部隊となってしまう。このような状況から脱却するための方針を打ち出すまでは、テロリスト相手の戦闘を想定した兵器調達費は押さえ込まねばならない」と考えているからである。
 2001年の911同時多発テロ攻撃以来、長らく続いてきた対テロ戦争において、イラク侵攻戦の時期はともかく、海兵隊や陸軍の多くの部隊は主として低烈度紛争に近い環境での戦闘を続けてきた。
(低烈度紛争は「容易な戦闘」という意味ではない。軍艦や航空機それに戦車などのいわゆる正面装備が戦闘の主役ではなく、歩兵部隊や特殊部隊などが主役となって、ゲリラ戦士や叛乱武装集団などの非正規軍が主たる相手の戦闘を意味する。具体的には、イラクの市街地やアフガニスタンの山岳地帯などでのテロリスト武装蜂起相手の戦闘を指す。)
とりわけ、アメリカの先鋒部隊として、強力なイスラム原理主義武装蜂起集団が支配する困難な地域での低烈度紛争の度重なる激戦に従事し続けてきた海兵隊は、市街地でのゲリラ戦士や武装叛乱集団との戦闘に打ち勝つエキスパートと自他共に認める精鋭部隊へと成長した。そのため、海兵隊の兵器や装備の調達方針も、テロリスト集団相手の低烈度紛争を想定して行われるようになってしまった。
アフガニスタンでパトロール任務中の海兵隊員
イラクでパトロール任務中の海兵隊員
 だが、米軍の主たる任務は「テロリストとの長期低烈度戦闘」から「中国やロシアといった大国との短期高烈度戦争」へとシフトとした。そのため「海兵隊はこれまでの方針から脱却しないと、低烈度紛争への対処専門部隊としての役割だけを果たす存在になりかねない」というのが、上院軍事委員会が海兵隊に投げかけている警告なのだ。
国防予算決定は国防・軍事の論理で
 日本では、防衛省が提示した防衛予算の概算要求に対して、財務省が国防・軍事の論理ではなく財務の論理で圧縮に努め、最終的には財務大臣と防衛大臣がやはり国防・軍事の論理ではなく政治折衝によって妥協を図り、国会ではイデオロギー的に国防費削減が唱えられる。政府提出の国防費に国防・軍事の論理で建設的な修正が加えられることは、まずない。しかし国会に課せられた最大の責務は国家予算の決定であり、与野党ともに事あるごとにシビリアンコントロールを口にしているのであるから、上記の米国防費歳出決定のように、国会が国防・軍事の論理によって日本防衛のための国防予算を調整できるような能力を身につける努力を開始すべきである。
【アメリカとの関係が深い国々の現状は?】
海上自衛隊、日豪加共同巡航訓練を実施

配信日:2018/09/2013:15 https://flyteam.jp/airline/japan-maritime-self-defense-force/news/article/100050
海上幕僚監部は、2018916()から918()にかけて、オーストラリア連邦北方海域において、日豪加共同巡航訓練を実施したと発表しました。この訓練で各種戦術訓練を実施しています。
参加部隊は、海上自衛隊がヘリコプター搭載護衛艦「さざなみ(DD-113)」で、オーストラリア海軍がフリゲート「ニューキャッスル(FFG06)」でした。
なお、「さざなみ」はSH-60J/K哨戒ヘリコプター最大2機搭載でき、「ニューキャッスル」にはS-70Bシーホークが搭載されています。
※共同合同軍事訓練
海自、ベトナム海軍への親善訪問を実施
海上自衛隊は、2018917()から921()までベトナム海軍への親善訪問を実施しています。訪問部隊は第1潜水隊群の潜水艦「くろしお(SS-596)」で、人員は約80名です。
ベトナム海軍潜水艦部隊などへの親善訪問により、ベトナム海軍との相互理解を促進し、防衛協力・交流の進展を図るのが目的で、表敬などが実施されます。
913()には、今回派遣されたベトナム海軍への親善訪問部隊と「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」の合同で、南シナ海において共同対潜戦訓練を実施しています。訓練では潜水艦「くろしお」をはじめ、SH-60K7機とMCH-1012機搭載可能の護衛艦「かが(DDH-184)」とSH-60J/K哨戒ヘリコプター搭載の護衛艦「いなづま(DD-105)」、すずつき(DD-117)」が参加しています。
※日越親善
かが・いなづま・すずつき、ベトナム海軍と南シナ海で対潜戦訓練
海上自衛隊は2018913()、「平成30年度インド太平洋方面派遣訓練部隊」と「ベトナム海軍親善訪問部隊」で共同訓練を実施しました。南シナ海で行われたもので、主要訓練項目は対潜戦訓練です。
参加部隊は、日本側がヘリコプター搭載護衛艦「かが(DDH-184)」とSH-60J/K哨戒ヘリコプター搭載の護衛艦「いなづま(DD-105)」、「すずつき(DD-117)」、ベトナム海軍への親善訪問部隊が潜水艦「くろしお(SS-596)」でした。この訓練では、対潜戦訓練の実施を通じて、戦術技量の向上を図っています。詳しくは、海上自衛隊のウェブサイトを参照ください。
※日越対潜共同訓練
【管理人より】我が国は、日米同盟を背景にして、アジアの国々と連携し、共産中国と対峙できるのか?

【関連書籍】
※国防を学びましょう。そしてこれからのこの国の行く末をみんなで考えましょう。

もはや自衛官への人権侵害『平和バカの壁』
(平成30年)8月半ば、埼玉県で自衛隊主宰のイベントが共産党鴻巣市委員会などの要請で中止された。北朝鮮情勢や立て続けに起こる災害に対応する自衛隊。その迷彩服や装甲車が戦争を想起させるという。
 よく平気でそんなことが言えるものだと驚かされるが、いまだそこここにある日本人の非常識な発言や行動。親日の日本バカ2人が、テレビが流し日本人が話す会話の正体を暴き出す。
 よく耳にする「殺すより殺される方がいい」「誰が日本を攻める?」「話し合え」「日本は平和主義」などの会話はなぜ生まれるのか。侵略者のプロパガンダ、日本の平和主義は不戦主義のこと、などと著者は一刀両断する。
 特に著者が強調するのが、日本が自衛隊をリスペクトしていない異常事態だ。国民が自衛官の制服を知らず行き過ぎた文民統制で縛り、人口減少を国防問題として捉えずに、力をことさら忌避する。大学の軍事研究忌避問題や、募集への非協力は自衛官に対するもはや人権侵害だと著者は指摘する。
 米国と比較して「平和」に隠された壁を探っていく本書。米国では国防に与党も野党もない。全国民が自衛隊に感謝と敬意を表し日本が正常化するために必読だ。(ケント・ギルバート、ロバート・D・エルドリッヂ著/産経新聞出版・880円+税)


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