ついに王手、中国が南シナ海人工島にミサイル配備
揺るぎない状況となった中国の南シナ海支配、次はリゾート開発か
北村淳
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は軍事社会学・海軍戦略論・国家論。米シンクタンクで海軍アドバイザーなどを務める。現在安全保障戦略コンサルタントとしてシアトル在住。日本語著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)、『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社)等がある。
2018.5.10(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53041
人工島が建設される前のファイアリークロス礁に停泊する中国漁船(2012年7月17日撮影、フィリピン軍が公開、資料写真)。(c)AFP/WESTCOM〔AFPBB News〕
アメリカ軍関係情報筋によると、中国軍は南シナ海に建設した7つの人工島(すなわち前進軍事拠点)のうちの3つの人工島に、地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムを設置したという。フィリップ・デイビッドソン次期アメリカ太平洋軍司令官は議会で「中国軍は、中国本土から数千マイルも離れた(南シナ海)海域へ軍事力を投射し軍事的影響力を及ぼすことができるようになった。・・・今や中国は、米中戦争を除いては、あらゆるシナリオで南シナ海をコントロールする能力を手にしたのだ」と証言している。今回のミサイル配備は、この証言をさらに補強する動きといえるだろう。
ほぼ完成した中国の人工島基地群
これまでも本コラムでしばしば取り上げているように、2014年春に中国が南沙諸島の岩礁を埋め立てて人工島を建設している状況が確認されてから(本コラム2014年6月26日「着々と進む人工島の建設、いよいよ南シナ海を手に入れる中国」参照)わずか4年もたたないうちに、7つもの「立派な」人工島が誕生し、そのうちの3つの人工島(ファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁)には、戦闘機や爆撃機をはじめとする各種軍用機や大型旅客機が離着陸可能な3000メートル級滑走路が建設されるに至った。
現在は、それぞれの3000メートル級滑走路に加えて軍用機の格納整備施設や、各種レーダー装置をはじめとする管制施設も設置され、航空基地の機能が整っているありさまだ。そして航空基地に隣接して、大型軍艦まで着岸可能な規模の港湾施設も建設されており、海軍艦艇と軍用機が使用可能な本格的な海洋基地が誕生しつつある。
中国軍が支配する南シナ海の領域
それら以外の4つの人工島(ジョンソンサウス礁、クアテロン礁、ヒューズ礁、ガベン礁)にも、レーダー施設や灯台、それにヘリポートや港湾施設が誕生しており、小型の海洋基地化が進んでいる。こうして中国が短期間のうちに生みだした7つの人工島は、中国本土から1000キロメートル以上も離れた南シナ海海上に浮かぶ中国人民解放軍前進展開基地群としての体裁を整えつつある。
中国外務省は「自衛のための兵器」
中国にとっては人工島は“中国の領土”である。そこに誕生させた軍事基地としての施設を防衛するために中国軍が防御兵器を展開するのは、極めて自然の動きといえよう。防御に最適な装備は、地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムである。そして実際に、米軍関係情報筋は、中国軍がファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁に地対艦ミサイルシステムと地対空ミサイルシステムを設置した状況を確認したようである。中国軍が人工島海洋基地に設置したのは、最新鋭で極めて高性能なYJ-12B対艦ミサイルと、やはり高性能なHQ-9B防空ミサイルであるとの情報も流れている。
もし、それらの高性能ミサイルが3つの人工島に配備されたのならば、それぞれの人工島から400キロメートル圏内の海域に近づいた艦船は、撃沈される危険にさらされることになる。また、200キロメートル圏内空域に接近した航空機は、撃墜される危険にさらされる。このような動きに関して中国外務省は、「それらの地対艦ミサイルシステムも地対空ミサイルシステムも、中国の主権的領域を防衛するための完全に自衛的な兵器である。中国の主権を侵害しようとする行為さえ企てなければ、いかなる艦艇や船舶、そして航空機に対しても脅威になることはあり得ない」という声明を発している。
「南沙諸島や南沙諸島に中国が建設した人工島が紛れもなく中国の領土であり、南沙諸島周辺海域を含む南シナ海の大部分が中国の主権的海域である」という主張はさておいて、地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムが防御的兵器であることは、たしかに事実である。
次のステップは民生施設の建設か
中国は、着実にかつ急速に人工島を建設し、それらを海洋基地化し、ついには防衛のための地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムを設置するに至った。次のステップは、軍事的な自衛手段を強化しつつ、民生施設を建設する作業を開始するものと思われる。すでに灯台や気象観測施設といった民生用途にも用いられる施設が人工島基地群に誕生しているが、今後は、海洋研究施設、漁業関連施設、クルーズシップ受け入れ施設、海洋リゾート施設などの建設に着手し、軍事施設とリゾートが隣接する状態を創り出すことになるであろう。
小さな人工島(といっても、アメリカ海軍の重要拠点である真珠湾海軍施設がすっぽり収まるほどの広さはあるのだが)に、軍事施設とリゾート施設それに民間研究所などがひしめき合っていたのでは、超高性能精密攻撃兵器を手にしているアメリカ軍といえども、中国軍の地対艦ミサイルシステムや地対空ミサイルシステムを攻撃することは至難の業ということになる。
縮尺を同じにしたスービ礁とパールハーバー海軍基地(シュガート氏作成)
その結果、中国人工島基地群に艦艇や航空機を接近させることは不可能となり、デイビッドソン次期米太平洋軍司令官が危惧しているように、南シナ海は中国の軍事的コントロールに服する、という状況がさらに定着することは確実だ。そして、そのような状況の具体的影響をアメリカ以上に被るのは、日本であることは言うまでもない。
〈管理人〉南シナ海支配と台湾の統一は共産中国にとっては、リンクした政治的課題といえます。
共産中国の海洋覇権の行方
台湾周辺演習は海峡危機の再来か
中国シャープパワーの真の狙いは?
2018.5.8 07:00更新https://www.sankei.com/premium/news/180508/prm1805080007-n1.html
随伴艦とともに航行する中国の空母「遼寧」。写真を配信したロイター通信は、撮影日は4月18日、撮影場所は西太平洋で、提供写真としている。だが、台湾の国防部は遼寧がバシー海峡を通過して西太平洋に進出したのは19日夜としている。
中国が台湾周辺で「軍事演習」の情報を相次いで発表し、台湾の蔡英文政権への圧力を強めている。海空軍による一部演習には台湾への威嚇効果があるものの、蔡政権は定例の訓練を実態以上に誇張した「心理戦」「世論戦」と分析、台湾の主要メディアも過度な反応を控えている。当初は1995~96年の台湾海峡危機の再来を予想する声があったが、現状はほど遠い。
南シナ海観艦式後に続々発表
中国当局が「台湾海峡での実弾射撃演習」の第1弾を発表したのは2018年4月12日夕。福建省海事局が2018年4月18日に同省泉州市の沖合に約200平方キロの航行禁止区域を設定した。
12日には海南省沖とみられる南シナ海で「中国史上最大規模」の観艦式を習近平国家主席(共産党中央軍事委員会主席)臨席で実施したばかり。式には空母「遼寧」を含む艦艇48隻や航空機76機、要員約1万人が参加していた。16日に台湾の立法院(国会に相当)で一部非公開で行われた外交・国防委員会では、立法委員(国会議員)から18日の「演習」に、これらの艦艇が合流する可能性はないのかとの質問が出た。
だが、台湾の情報機関「国家安全局」や国防部(国防省)は、少なくとも2007年以降、毎年実施している連隊規模の火砲の射撃訓練を誇大に宣伝した「文攻武嚇」で、艦艇が参加する可能性は低いと指摘。野党、中国国民党委員の「演習は頼清徳行政院長(首相)が『私は実務的な台独工作者(台湾独立を主張する政治家)だ』と発言したからではないのか」と詰問する声がむなしく響いた。
手厚い中国官製メディア
18日には、台湾の複数のテレビ局が演習地点周辺で実況中継を行ったが、断続的な砲声以外は確認できなかったようだ。だが、中国国営中央テレビ(CCTV)は同日夜から、攻撃ヘリが昼夜16時間の海上射撃訓練を実施したと繰り返し報道。中国寄りの台湾メディアは、台湾海軍が「非対称戦略」の一環で採用している高速フリゲート艦「沱江」や高速ミサイル艇の撃破を目指したものだと解説した。
このほか、中国空軍の爆撃機、轟(H)6Kなどが18~21日の3日間連続で台湾を「周回」する形で飛行した。H6Kは巡航ミサイル「長剣(CJ)10」2発を搭載しており、CCTVは早期警戒機、空警(KJ)500も同時に飛行していたことを示唆。記者が別の航空機でH6Kに同行する映像も放映した。また、中国国防省は21日、遼寧の艦隊が20日に台湾南東沖の西太平洋上で艦載機、殲(J)15も参加した対抗演習を実施したと発表したが、ここにも同行記者がいた。
中国海事局は21日、浙江省舟山群島で24、25の両日、実弾射撃演習を行うと公表した。台湾の国防部はこれについても、航行禁止海域は50平方キロと狭く、16、17の両年とも実施した火砲の射撃訓練だと指摘した。
台湾海峡危機との差は歴然
一連の中国の「演習」について、中国寄りの台湾メディアや一部香港メディアの中には「台湾海峡危機の再演」(上海台湾研究所副所長)などと報じるものもある。
だが、目下の規模は、米国が2個の空母打撃群を派遣した第3次台湾海峡危機とは雲泥の差と言って良い。当時の中国軍の演習は1996年7月の弾道ミサイル「東風(DF)15」6発の台湾北部沖への発射に始まり、96年3月の初の総統直接選投票日直前まで約8カ月で計7回の演習が断続的に続いた。上陸演習時には師団規模の部隊が投入され航行禁止海域も約6000~1万平方キロと桁違いの広さで設定された。参加要員は96年3月だけで約15万人とされる。
与党、民主進歩党寄りの台湾紙、自由時報は19日付で、民進党関係者の話として、今回の演習は「小コスト、小規模、小部隊」の「三小」で台湾の世論を攪乱しようとしたものだと指摘。翌20日付では「中国が台湾を、(圧力や世論工作などを通じて相手国の抵抗力を弱める)シャープパワーの実験場にしようとしている」との記者の特別寄稿を掲載した。この見立てが正しければ、中国軍が実施する「演習」の規模は、今後も中国当局や官製メディアが宣伝するほどには大きなものにはならないとみられる。ただ、台湾の研究者によると、中国の軍事演習の「最盛期」は6、7月とされる。中国側が台湾内外の反応をみながら、徐々に演習の規模を引き上げていく可能性は否定できない。
〈管理人〉共産中国が台湾周辺海域の制海権、制空権を完全に掌握すれば、南シナ海の支配を手にしたのも同然といえるでしょう。台湾の支配と南シナ海支配を共産中国は同時に進めていますね。尖閣諸島の拠点化もその一連の動きの中にありますね。
2014年の米比合同演習フィブレックス
島の奪還想定し上陸訓練 米軍とフィリピン軍が演習
自衛隊も参加 「中国牽制の意図ない」
2018.5.7 16:48更新https://www.sankei.com/world/news/180507/wor1805070010-n1.html
フィリピン軍と米軍の合同演習「バリカタン」
マニラのフィリピン軍司令部で開会式が開かれる。
フィリピン軍と米軍の定期合同演習「バリカタン」が2017年5月7日、フィリピン各地で始まった。中国が進出する南シナ海の沿岸では、島を奪還する想定の上陸訓練も実施。フィリピン軍は「通常の演習の一環」として、中国牽制の意図はないと強調した。
演習は18日までで、一部には自衛隊とオーストラリア軍も参加する。マニラのフィリピン軍司令部で開かれた開会式で、ロレンザーナ国防相は「安全保障上の脅威に対処するため、各軍や自衛隊の相互運用性に焦点を当てたい」と述べた。
上陸訓練は、南シナ海に面したルソン島西部サンバレス州で実施する。同州沖には、フィリピンと中国が領有権を争うスカボロー礁(中国名・黄岩島)がある。
今回は化学兵器による攻撃への対処訓練も加え、計8千人以上が参加。災害時の緊急対応や人命救助などの演習も実施し、自衛隊は約20人が施設補修と医療プログラムに参加する。(共同)
〈管理人〉日米比豪によるフィリピンでの共同軍事演習。牽制の意図はないといっても共産中国に気を使った言い方、としか思えませんね。この軍事演習を行うこと自体が、南シナ海、台湾支配をめざす共産中国の「牽制」効果を期待してのことでしょう。
共産中国の動きが速かったこともありますが、アメリカやフィリピンの政治的な動きが遅かったことは否めません。
しかし南シナ海は共産中国だけの海ではありません。国際公共財である海洋に一つの国家の主権が排他的なスタンスをとることは許されません。軍事力の示威は必要不可欠なことです。
進むイギリスとの軍事的協調関係
〈管理人〉我が国は、イギリスと「準軍事同盟」関係になっています。海洋国家である日米英が接近しています。南シナ海は共通の権益防衛という側面もあるのでしょう。
海上自衛隊は2018年4月27日(金)から4月28日(土)まで、関東南方海域でイギリス海軍と共同訓練を実施します。この訓練は、戦術技量の向上、イギリス海軍との連携強化が目的です。訓練項目は対潜戦訓練、模擬洋上給油訓練、航空機相互発着艦訓練、戦術運動等です。
海上自衛隊は2018年4月27日(金)から4月28日(土)まで、関東南方海域でイギリス海軍と共同訓練を実施しました。関東南方海域で行われたもので、訓練項目は、対潜戦訓練、模擬洋上給油訓練、航空機相互発着艦訓練、戦術運動などで、海上自衛隊の戦術技量の向上とイギリス海軍との連携強化を図りました。
進むイギリスとの軍事的協調関係
〈管理人〉我が国は、イギリスと「準軍事同盟」関係になっています。海洋国家である日米英が接近しています。南シナ海は共通の権益防衛という側面もあるのでしょう。
海自「すずなみ」と「ときわ」、イギリス海軍と共同訓練を実施
2018/04/23 12:05https://flyteam.jp/news/article/93537
参加艦艇は、海上自衛隊の護衛艦「すずなみ(DD-114)」と補給艦「ときわ(AOE-423)」です。「すずなみ」にはSH-60J/K哨戒ヘリコプターが搭載されています。また、P-3Cや潜水艦も参加します。
イギリス海軍の参加艦艇は、23型フリゲート「サザーランド(F81)」で、4月11日(水)にアメリカ海軍の横須賀基地へ入港しています。
海上自衛隊、イギリス海軍と関東南方海域で共同訓練 P-1が参加
2018/05/07 16:55 https://flyteam.jp/news/article/94031
海自2艦と英フリゲート「サザーランド」
参加した部隊は、海上自衛隊の護衛艦「すずなみ(DD-114)」と補給艦「ときわ(AOE-423)」と潜水艦で、イギリス海軍からは23型フリゲート「サザーランド(F81)」が参加しました。なお、「すずなみ」にはSH-60J/K哨戒ヘリが搭載されています。
また、当初P-3Cの参加が予定されてましたが、訓練にはP-1が参加しています。詳しくは、海上自衛隊のウェブサイトを参照ください。
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