震災の教訓から発足する水陸両用部隊の残念な実力
陸・海・空の統合を欠いては水陸両用能力といえない
北村淳
2018.3.15(木)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52567
トモダチ作戦で被災地に上陸用舟艇で接近する海兵隊部隊(写真:米海兵隊)
東日本大震災から7年が経過した。その東日本大震災に際して「トモダチ作戦」(Operation Tomodachi:アメリカ軍による東日本大震災被災地救援支援活動の作戦名)に参加したアメリカ海兵隊将校の友人たちが、「もしも自衛隊に我々アメリカ海兵隊的な戦闘能力が備わっていたならば、少なくとも数千名の命を救うことができたに違いない」と残念がっていたことが思い出される。
海兵隊将校たちが残念がっていた理由
海兵隊将校たちが残念がっていたのは無理からぬところであった。なぜならば、海兵隊や筆者らは、東日本大震災の発生よりもはるか以前から「自衛隊によるアメリカ海兵隊的戦闘能力を獲得する必要性」を指摘していたからだ。(参照:2009年発刊の拙著『米軍がみた自衛隊の実力』北村淳2009/5宝島社、『アメリカ海兵隊のドクトリン』北村淳/北村愛子共著2009.2芙蓉書房出版)
それだけではない。大震災発生の1年前にはアメリカ海兵隊太平洋海兵隊司令官シュタルダー中将はじめ幹部たちが、NHKのインタビューに対して「アメリカ海兵隊を特徴づけている戦闘能力は、大規模災害救援活動、とりわけ日本のような島国における救援活動には獅子奮迅の働きをする」と述べていた。日本防衛という主たる任務からだけでなく、災害救援という副次的任務の側面からも、自衛隊は可及的速やかにアメリカ海兵隊的戦闘能力を身につけるべきであると提言していたのだ(参照:拙著『写真で見るトモダチ作戦』北村淳編著2011.6並木書房)。
トモダチ作戦で被災地に上陸した海兵隊部隊(写真:米海兵隊)
そのため、「日本の防衛態勢や災害救援態勢などにアメリカ人がとやかく口を挟む権利はないが、もし自衛隊や日本政府がアメリカ海兵隊的戦闘能力を構築する努力を開始していたならば、数千人とまではいかなくとも少なくとも数百人の尊い命が救えたかもしれない」と残念がっていたわけである。
「水陸両用能力」と「緊急対応能力」
本コラムで「アメリカ海兵隊的戦闘能力」と呼称しているのは、「水陸両用能力(amphibious capability)」と「緊急対応能力(rapid-reaction
capability)」がミックスされた軍事能力である。
「水陸両用能力」というのは、「作戦目的地沖合洋上に展開した強襲揚陸艦などの艦艇から、陸上部隊が海上やその上空を経て陸地に到達して作戦行動を実施する」といった軍事能力を意味する。
あくまで海兵隊は軍事組織である以上、水陸両用能力は戦闘に打ち勝つためのものであることは言うまでもない。とはいうものの、海岸線沿岸地域はもとより沿海地域それに内陸からよりも海洋からアクセスした方が都合が良い地域での各種災害救援活動や人道支援活動などにも、水陸両用能力は大幅に転用可能な軍事能力である。
「緊急対応能力」は、言葉通り緊急時に速やかに現場に駆け付ける能力である。アメリカがカナダとメキシコ以外の国々に軍隊を派遣するにあたっては、海洋を経由する必要がある。したがって、アメリカ軍の緊急対応部隊として派遣されるのは「海洋から海上やその上空を経て陸地に到達する」水陸両用能力を“お家芸”にしている海兵隊である。アメリカにとっての緊急対応部隊である以上、海兵隊は大統領により出動が下命されてから48~72時間以内に世界中のあらゆる場所に先鋒部隊を到着させる能力、すなわち緊急対応能力を備えている。
また、極めて規模の小さい特殊部隊などを除き、数百名単位以上のある程度の規模の部隊を緊急展開させるためには、水陸両用能力は欠かせない。そのため、水陸両用能力と緊急対応能力は表裏一体のものと考えることができる。
そして、それらの能力を遺憾なく発揮するために欠かせないのが陸上部隊(海兵隊)と航空部隊(海兵隊、場合によっては海軍や空軍)、それに水上部隊(海軍)による密接な連携である。地上での作戦行動に従事する海兵隊陸上部隊と、その陸上部隊を作戦目的地沖合まで緊急に運搬し作戦中は支援する海軍部隊、それに艦艇から陸上部隊を地上まで運搬したり地上部隊の作戦中は空中から敵を攻撃したりする航空部隊が、密接に意思疎通をし連携して行動できるような「統合C4I(指揮、統制、通信、コンピュータ、情報)能力」が確立されていることこそが、水陸両用能力と緊急対応能力の大前提となるのだ。
ようやく発足する「水陸機動団」
海兵隊将校たちが悔しがっていたように、東日本大震災発生当時、残念ながら自衛隊には水陸両用能力は備わっておらず、当然ながらその水陸両用能力を生かして被災地に駆けつける緊急対応能力も備わっていなかった。
陸上自衛隊は大震災以前より「三陸海岸で大規模災害が起きた場合には、遠野付近に前進拠点を設置して扇状に三陸海岸沿岸に点在する被災地に救援部隊を派遣する」といった計画を立案していた。だが、そもそも内陸部から遠野に部隊が到達することすら手間取ってしまったため、役には立たなかった。
日本国防当局が、東日本大震災発生時に水陸両用能力が欠落していたことから深刻な教訓を得たのかどうかは定かではないが、東日本大震災後、自衛隊に水陸両用能力を構築する動きが生じた。スピードを重視する海兵隊から見れば、極めて緩やかな動きだったが、ようやく2018年3月下旬に、陸上自衛隊に水陸両用作戦に投入される「水陸機動団」が発足する運びとなっている。
依然として欠落している「統合C4I能力」
とはいえ、現代戦における水陸両用能力とは、上記のように「作戦目的地沖合洋上に展開した強襲揚陸艦などの艦艇から、陸上部隊が海上やその上空を経て陸地に到達して作戦行動を実施する」能力であり、水陸機動団が発足しただけではとても本格的な水陸両用能力が誕生したとは見なせない。
なによりも、水陸機動団と連携する海上自衛隊、陸自ヘリコプター部隊(新設されるオスプレイ部隊)それに航空自衛隊を連携させる「統合C4I能力」が確立されていないのでは、似非(えせ)水陸両用能力としかみなせない。
それ以上に問題なのは、「水陸両用能力を、どのような目的で、どのようにして運用するのか?」という、いわゆるドクトリンが打ち出されないままに水陸両用部隊が編成されている点である。
防衛白書(平成29年版)には「平成29年度末に新編される水陸機動団は、万が一島嶼を占拠された場合、速やかに上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦を行うことを主な任務とする陸自が初めて保有する本格的な水陸両用作戦部隊です。」との解説が明示されている。しかしながら、現代の水陸両用戦闘においては、敵が占領している島嶼に接近上陸する「強襲上陸作戦」などは不可能に近い作戦とされている。米海兵隊をはじめとする水陸両用作戦に従事する軍事組織は、強襲上陸作戦以外の水陸両用作戦や海洋を経由しての緊急展開作戦に対応するための組織編成と教育訓練それに装備調達を実施しているのが現状だ。
東日本大震災から得た教訓を生かし、米海兵隊的能力を身につけていこうとするならば、自衛隊独自の水陸両用作戦に関するドクトリンを打ち出すとともに、「水陸両用能力」と「緊急対応能力」の出発点となる「統合C4I能力」(平たく言えば、陸自、海自、空自の密接な協力関係)を確立しなければならない。
〈用語解説〉(「ウィキペディア」より引用)
C4Iシステム(C Quadruple I system シー・クォドルプル・アイ・システム、英: Command Control Communication Computer Intelligence system)は、軍隊における情報処理システム。指揮官の意思決定を支援して、作戦を計画・指揮・統制するための情報資料を提供し、またこれによって決定された命令を隷下の部隊に伝達する。すなわち、動物における神経系に相当するものであり、部隊の統制や火力の効率的な発揮に必要不可欠である。
水陸機動団
(すいりくきどうだん、英称:Amphibious Rapid
Deployment Brigade)は、2013年(平成25年)に策定された平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について(25大綱)に基づき、陸上自衛隊に新編される予定の部隊。
水陸両用作戦を強く意識した部隊であり、新たに編成される陸上総隊直轄の部隊となる予定である。
陸上総隊、平成30年3月27日に発足 島嶼防衛に「不可欠」
2018.2.6 19:46更新http://www.sankei.com/politics/news/180206/plt1802060048-n1.html
政府は平成30年3月6日の閣議で、全国の陸自部隊を一元的に指揮する陸上総隊を3月27日に新設する政令を決定した。離島防衛部隊「水陸機動団」も同時に発足する。全国の部隊を一元指揮する部隊として、海自には自衛艦隊、空自には航空総隊があるが、陸自には該当する部隊がなかった。
防衛省は陸上総隊について「島嶼(とうしょ)部に対する攻撃や大規模災害など陸海空の自衛隊が統合運用により全国レベルで機動的に対応すべき事態がますます想定される中、陸自の全国の部隊を一元的に運用するために不可欠だ」としている。
〈管理人より〉水陸機動団の新編は、「陸上総隊」という形で我が国の陸軍組織をトランスフォームする中での一環であることがわかります。我が国の水陸両用戦部隊は緒についたばかりです。今後のカスタマイズにかかっているといえるでしょう。もっと早くに着手すべきだったかとは思いますが、行政のすることですから、むしろ安倍内閣でよくやってくれたというところでしょう。
「水陸両用戦」「併用戦」の能力は、「海洋国家」の国防戦では必須かつ不可欠な戦術であろうと考えられます。第二次大戦後に「警察予備隊」という極めて国防軍事力が制約された時期にも一番に実現、再現されていなければならないことでした。「併用戦」ドクトリンは、今後防衛省や陸自でカスタマイズされるべき重要な課題ですが、民間シンクタンクでも十分議論されていくべき課題であると考えます。
トモダチ作戦 東日本大震災の裏話
ケント・ギルバート
【「敵対国」には多角的に圧力をかけてくるアメリカ】
北朝鮮に圧力をかけ続ける米国
ハリス太平洋軍司令官の発言
2018年3月15日 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12137
ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、2018年2月14日、米下院軍事委員会において米太平洋軍の兵力態勢に関する公聴会で発言した。そのうち、北朝鮮に関する部分を紹介する。概要は以下の通り。
北朝鮮の脅威はますます深刻なものになっている。国際社会の非難や国連安保理の制裁にもかかわらず、北朝鮮の核と弾道ミサイル技術は向上した。北朝鮮は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)は米国のみを、中距離弾道ミサイル(IRBM)はグアムのみを標的にしていると述べた。ミサイル実験のうち2回は日本の領土の上空を通過し、不必要に日本国民を危険にさらした。北朝鮮は2017年9月、地下施設で6回目、最大規模の核実験を行った。
北朝鮮は核・ミサイル技術を向上させ、昨年11月29日のICBMの実験後、金正恩は、核保有国宣言をした。その性能について疑問視する声もあるが、彼の言動と現実のギャップが縮まっていることは事実である。北東アジアの同盟国である韓国と日本は既に北朝鮮の射程に入っていたが、いまや米国本土も射程に入ろうとしている。太平洋軍及び国防省は、国務省が主導している大統領の最大限の圧力を支持する。誰も北朝鮮との紛争は望まないが、米国と同盟諸国は、いかなる軍事的事態にも対処できるようにしておかなければならない。
2017年の国連安保理決議2321、2356、2371、2375、2397を超えて、国際社会は北朝鮮を外交的、資金的に孤立させてきた。ティラーソン国務長官らの努力もあり、各国は北朝鮮との貿易を削減し、北朝鮮の海外資産の凍結等を行なった。特に中国の役割は重要で、中国は北朝鮮の貿易の90%以上を占める。中国は国連安保理決議を履行したが、まだ中国には出来ることがあり、行うべきだと思う。ロシアの貢献も十分ではない。制裁が効いてきているにもかかわらず、北朝鮮は軍拡を続け、国民を苦しめ、指導部のみが良い思いをしている。
北朝鮮の過剰な通常兵力も、金正恩政権の強圧的行動を可能にしている。2450万人という人口世界第52位の北朝鮮が約120万人という世界第4位の兵力を有している。対称的に、世界第53位の人口の豪州は6万人以下の兵力である。北朝鮮は長距離ロケットや大砲の開発を自慢し、短距離ミサイルは非武装地帯を超えて韓国及び在韓米軍に向けられている。これらのシステムで北朝鮮は化学兵器、生物兵器を運搬することも可能だ。また、良く訓練され規律正しい特殊部隊が北朝鮮にはある。更に、北朝鮮は、海軍に長距離対艦ミサイルを配備し、将来的には潜水艦発射型ミサイルを持とうとしている。
出典:‘STATEMENT OF ADMIRAL HARRY B. HARRIS
JR., U.S. NAVY COMMANDER, U.S. PACIFIC COMMAND BEFORE THE HOUSE ARMED SERVICES
COMMITTEE ON U.S. PACIFIC COMMAND POSTURE’February14,,2018
http://docs.house.gov/meetings/AS/AS00/20180214/106847/HHRG-115-AS00-Wstate-HarrisJrH-20180214.pdf)
上記は、2月14日に米下院軍事委員会で行われた公聴会でのハリス米太平洋軍司令官の発言の一部である。朝鮮半島では、2月9日に平昌オリンピックの開会式があり、文在寅韓国大統領は、安倍総理とペンス米副大統領の他に、北朝鮮の金正恩労働党委員長の妹である金与正氏を来賓として迎えた。北朝鮮は「微笑み外交」を演出し、韓国はそれに応じるように宥和的態度を示した。そんな最中でも、米国議会は、朝鮮半島を管轄する米太平洋軍トップの司令官をワシントンに招いて公聴会を開催した。どんな時でも、的確な情報を得て、それをもとに議論し法律を立案していく米国議員の姿勢は、さすが民主主義大国のアメリカ合衆国である。
内容に関しては、特に目新しいものはないが、米国が北朝鮮の脅威を緊迫したものとして捉え、国務省を中心に圧力を強化している段階ではあるが、軍としてはどんな事態にも対処できるよう準備している、という決意が伝わる発言だった。核兵器、化学兵器、生物兵器という大量破壊兵器を北朝鮮が有していること、近距離、中距離、長距離全てのミサイルが米国や同盟諸国に脅威であること、特殊部隊を含めた通常兵力も脅威となりうること、簡潔な発言の中にも、これら全てが語られた。どれをとっても侮れないものであるとの分析である。また、国連安保理制裁や米国を含む各国の圧力は効いてはいるものの、中国やロシアの役割は大きいのに、十分には役割を果たしていないと述べている。
この公聴会の冒頭、ハリス司令官は、超党派で防衛費の増額を承認してもらったことに感謝の意を表した。国際情勢が緊迫する中、財政赤字が膨らんでも米国は防衛費の増額を決定した。日本でも、防衛費の増額を超党派で合意することができるのだろうか。対北朝鮮政策でも重要な要素である。
この公聴会から約10日後の2月23日、トランプ政権は、北朝鮮に対する新たな独自制裁措置を発表した。国連安保理決議を逃れて、北朝鮮が石油や石炭を密輸するのを助けている中国や台湾、シンガポールを拠点とする運輸会社やパナマやタンザニア船籍の船に対して、米国が取引を禁止し、米国内の資産を凍結するというものだ。56の企業等が制裁対象となり、過去最大級のものと言われている。平昌五輪の最中であっても、米国は北朝鮮に圧力をかけ続けている。一貫した姿勢である。トランプ大統領は、この制裁発表を受け、その他の国も米国のような制裁措置を行なって圧力を強めてほしいと述べた。果たして日本はどうするのか。国会での議論が待たれる。
平昌五輪の閉会式は2月25日に行われ、北朝鮮側からは韓国を通して、米国と直接対話がしたい旨が伝えられていたようだ。2月26日、トランプ大統領はホワイトハウスで、州知事らを前に、北朝鮮の非核化のために条件が整えば対話の用意はある、と述べた。すなわち、対話のための対話は行わないという従来の姿勢は崩していない。また、トランプ大統領は、この20年過去の大統領達は、北朝鮮の核開発を阻止することができなかったが、当時の方がまだやりやすかったはずで、現在の状況はもっと厳しいとの認識を示した。確かに、今思えば、その通りだろう。
過去最大のサイバー攻撃が行われる
2018年03月03日 08:02 https://jp.sputniknews.com/incidents/201803034633995/
スプートニク日本
ソフトウェアプロジェクトのためのホスティングサービス「GitHub」は「過去最大」のサイバー攻撃の標的になった。サイト「Wired」が報じた。
DDoS攻撃ピーク時のトラフィックは1.35Tbpsに達した。以前最大級の攻撃だったのは2016年に起きた、DNSサービスを提供する会社「Dyn」へのDDoS攻撃で、1,2Tbpsに達した。DDoS攻撃によりサイト「GitHub」はオフラインになったが、10分足らずで復旧した。
〈管理人より〉DDOS攻撃も容量の上で「進化」しているといえますね。どこの誰の攻撃かはわかりませんが、ハッカー或いはハッキング組織の技量がうかがえます。
ゲーム会社にDDOS攻撃、16歳を書類送検
DDOS攻撃に関する誤った認識として最大のものは何だと思いますか?
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